特許第5987480号(P5987480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987480
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】サービスディスコネクタの保護構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20060101AFI20160825BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   B60K1/04 Z
   B62D25/20 G
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-124814(P2012-124814)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-248969(P2013-248969A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【復代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(72)【発明者】
【氏名】喜田 裕万
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 郁央
(72)【発明者】
【氏名】定平 誠二
(72)【発明者】
【氏名】神本 一朗
(72)【発明者】
【氏名】元木 正紀
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−344950(JP,A)
【文献】 特開2012−091636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフロア下にバッテリユニットが配設された電気自動車であって、
キックアップ部の後方のリヤフロア上面に配設された後席シートと、
上記バッテリユニットに内蔵されるバッテリモジュールを電気的に遮断するためのサービスディスコネクタと、を備え、
該サービスディスコネクタは、上記後席シートの下方に配設された上記バッテリモジュールと上記リヤフロアとの間に配設され、
上記後席シートからの荷重を受けると共に、該荷重を、上記サービスディスコネクタを迂回して伝達させる荷重伝達経路を形成する荷重伝達構造が上記バッテリユニット内の上記サービスディスコネクタ近傍に配設され、
上記荷重伝達構造は、上記サービスディスコネクタを上記バッテリモジュールに取付けるためのブラケットと、
上記サービスディスコネクタを覆う蓋部材と、
該蓋部材を上記バッテリユニットに取り付けるための取付部材とにより構成され、
該取付部材には、上記荷重の入力に伴い、上記ブラケットの上端に向かって上記荷重を伝達可能な位置であり、かつ上記バッテリユニットにおける上記ブラケットの上端の上方部分よりもさらに上方位置に配置された部位を備え、
上記サービスディスコネクタの上端と上記蓋部材との間の上下方向の間隔は、ブラケットの上端と、上記バッテリユニットにおける該ブラケットの上端の上方部分との間の上下方向の間隔よりも大きく設定された
サービスディスコネクタの保護構造。
【請求項2】
上記後席シートの略中央部下方に上記サービスディスコネクタが配設された
請求項1記載のサービスディスコネクタの保護構造。
【請求項3】
上記ブラケットは、上下方向に延びて上記荷重を下方に伝達させる荷重伝達部を上記サービスディスコネクタの前方に有する
請求項1または2記載のサービスディスコネクタの保護構造。
【請求項4】
上記バッテリモジュールは、車幅方向に複数並設され、
上記ブラケットにより車幅方向に連結される
請求項1〜3のいずれか一項に記載のサービスディスコネクタの保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体のフロア下にバッテリユニットが配設された電気自動車のサービスディスコネクタの保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気自動車等の電動車両では、複数のバッテリモジュールが車室フロアの下側にユニット化された状態で搭載されると共に、車両のメンテナンス時等にバッテリモジュールを電気的に遮断するためのサービスディスコネクタ(サービスプラグともいう)が備えられている。
【0003】
例えば特許文献1には、サービスディスコネクタの保護構造として、車両後方から荷重が入力された際に、サービスディスコネクタを前方に移動させるための空間(非干渉領域)を設けることで、他の車体部材との干渉を回避できるようにしたものが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、サービスディスコネクタの操作レバーを車室内側から操作することができるように構成したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−28059号公報
【特許文献2】特開2009−83601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載されている電気自動車では、サービスディスコネクタの防水性が必ずしも充分ではなく、その保護性能には改善の余地があった。
【0007】
この発明は、バッテリモジュールの搭載性を確保しつつ、サービスディスコネクタの保護性能を向上させることができる保護構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のサービスディスコネクタの保護構造は、車体のフロア下にバッテリユニットが配設された電気自動車であって、キックアップ部の後方のリヤフロア上面に配設された後席シートと、上記バッテリユニットに内蔵されるバッテリモジュールを電気的に遮断するためのサービスディスコネクタと、を備え、該サービスディスコネクタは、上記後席シートの下方に配設された上記バッテリモジュールと上記リヤフロアとの間に配設され、上記後席シートからの荷重を受けると共に、該荷重を、上記サービスディスコネクタを迂回して伝達させる荷重伝達経路を形成する荷重伝達構造が上記バッテリユニット内の上記サービスディスコネクタ近傍に配設され、上記荷重伝達構造は、上記サービスディスコネクタを上記バッテリモジュールに取付けるためのブラケットと、上記サービスディスコネクタを覆う蓋部材と、該蓋部材を上記バッテリユニットに取り付けるための取付部材とにより構成され、該取付部材には、上記荷重の入力に伴い、上記ブラケットの上端に向かって上記荷重を伝達可能な位置であり、かつ上記バッテリユニットにおける上記ブラケットの上端の上方部分よりもさらに上方位置に配置された部位を備え、上記サービスディスコネクタの上端と上記蓋部材との間の上下方向の間隔は、ブラケットの上端と、上記バッテリユニットにおける該ブラケットの上端の上方部分との間の上下方向の間隔よりも大きく設定されたものである。
【0009】
この構成によれば、後席シートの下方の空間を利用してバッテリモジュールを複数搭載することができ、これによって、バッテリモジュールの搭載性を確保することができる。
【0010】
そして、後席シートの下方に配設されたバッテリモジュールとリヤフロアとの間にサービスディスコネクタを配設したことで、これを比較的高い位置に配置することができる。このため、サービスディスコネクタの防水性向上を図ることができ、その結果、サービスディスコネクタの保護性能を向上させることができる。
【0011】
さらに上述したように、上記後席シートからの荷重を受けると共に、該荷重を、上記サービスディスコネクタを迂回して伝達させる荷重伝達経路を形成する荷重伝達構造が上記バッテリユニット内の上記サービスディスコネクタ近傍に配設することにより、後席シートに着座した乗員のサブマリン現象によって発生する荷重からサービスディスコネクタを保護することができる。
【0012】
また上述したように、上記荷重伝達構造は、上記サービスディスコネクタを上記バッテリユニットに取付けるためのブラケットを備えたものであるため、新たな部材を追加することなく荷重伝達構造を構成することができる。
【0013】
また上述したように、上記荷重伝達構造は、上記サービスディスコネクタを覆う蓋部材と、該蓋部材を上記バッテリユニットに取り付けるための取付部材とを備え、該取付部材は、上記荷重の入力に伴い、上記ブラケットの上端に向かって上記荷重を伝達可能な位置に配設されたものであるため、上記荷重がサービスディスコネクタに入力されることを確実に回避できる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記後席シートの略中央部下方に上記サービスディスコネクタが配設されたものである。
【0015】
この構成によれば、サービスディスコネクタへのアクセスを車両の左右両側から容易に行うことができる
【0016】
の発明の一実施態様においては、上記ブラケットは、上下方向に延びて上記荷重を下方に伝達させる荷重伝達部を上記サービスディスコネクタの前方に有するものである。
【0017】
この構成によれば、後席シートから下方に向かう上記荷重をより円滑に伝達、分散させることができる。そして、サブマリン現象の発生時には、乗員のヒップポイントが前方かつ下方に変位することから、サービスディスコネクタの前部に荷重伝達部を配設することにより、上記荷重を上下方向に延びる荷重伝達部でより効果的に受け止めることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記バッテリモジュールは、車幅方向に複数並設され、上記ブラケットにより車幅方向に連結されるものである。
【0019】
この構成によれば、車両走行時におけるバッテリモジュールの振動を抑制することができる。このため、バッテリモジュールの損傷、及びバッテリモジュールの振動に起因する騒音を抑制することができる
【発明の効果】
【0020】
の発明によれば、後席シートの下方の空間を利用してバッテリモジュールを複数搭載することができ、これによって、バッテリモジュールの搭載性を確保することができる。
【0021】
そして、後席シートの下方に配設されたバッテリモジュールとリヤフロアとの間にサービスディスコネクタを配設したことで、これを比較的高い位置に配置することができる。このため、サービスディスコネクタの防水性向上を図ることができ、その結果、サービスディスコネクタの保護性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るサービスディスコネクタの保護構造を備えた車両のバッテリユニットを示す斜視図。
図2】バッテリユニットの上側カバー部材を外した状態を示す斜視図。
図3】バッテリユニットの分解斜視図。
図4】バッテリユニットの側断面図。
図5】荷重伝達構造の側断面図。
図6】サブマリン現象発生時の状態を示す側断面図。
図7】サブマリン現象発生時における荷重伝達構造の状態を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、車両用バッテリユニットの空調構造の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、例示である。図1は、電動車両(本実施形態では、電気自動車であり、以下、単に車両という)の車室フロアパネル1(車室フロアを構成する)の下側に搭載されたバッテリユニット21を示す。この車両は特に、内燃機関を搭載した既存の車両を電気自動車に改造したコンバージョンEV(Electric Vehicle)である。この車両についての前、後、左、右、上及び下を、それぞれ単に前、後、左、右、上及び下という。また、図中、矢印Fは車両の前方、矢印Rは車両の後方を示す。
【0024】
上記車室フロアパネル1は、図1に示すように、フロントフロア部1aと、該フロントフロア部1aよりも上側の高さ位置に位置するリヤフロア部1bとから構成されている。フロントフロア部1aとリヤフロア部1bとの間には、図1に二点鎖線で示すように、段差状のキックアップ部1cが設けられ、このキックアップ部1cにより、リヤフロア部1bの高さ位置がフロントフロア部1aよりも高くなっている。
【0025】
キックアップ部1cの後方のリヤフロア部1bの上面には、図1に示すような後席シート2Rが配置されており、フロントフロア部1aの後部の上面が、該後席シート2Rに着座した乗員の足置き場Sである。フロントフロア部1aの前部の上面には、前席シートとしての運転席シート及び助手席シート(共に図示せず)が車幅方向(左右)に並んで配置される。
【0026】
次に、図1図5を参照して、バッテリユニット21の構造を詳細に説明する。尚、以下に説明するバッテリユニット21についての前、後、左、右、上及び下は、それぞれ、バッテリユニット21が上記車両に搭載された状態での前、後、左、右、上及び下のことであり、上記車両についての前、後、左、右、上及び下と同じである。
【0027】
上記バッテリユニット21は、図1〜5に示すように、複数のバッテリモジュール221と、該複数のバッテリモジュール221を支持する支持部材としてのフレーム部材30と、上側カバー部材23及び下側カバー部材24とを有している。すなわち、車室フロアパネル1の下側に、複数のバッテリモジュール221がユニット化された状態で搭載されている。バッテリユニット21は、上記リヤフロア部1bの下側に搭載された収容部21aを有している。
【0028】
収容部21aは、該収容部21aにおける複数のバッテリモジュール221を支持するフレーム部材30を有し、このフレーム部材30は、車幅方向に延びる前部及び後部、並びに、上記前部及び後部の車幅方向両端部同士をそれぞれ連結する左右一対の側部を含む枠状に形成されている。
【0029】
上記上側カバー部材23及び下側カバー部材24は、上記複数のバッテリモジュール221の周囲を覆っている。すなわち、上側及び下側カバー部材23,24間に、バッテリモジュール221が収容される空間が形成されている。また、フレーム部材30の一部は、上側カバー部材23の周縁部と下側カバー部材24の周縁部との間から外側にはみ出しており、これにより、フレーム部材30の外側面の一部が外気に面している。
【0030】
上側カバー部材23の上面は、リヤフロア部1bの高さ位置に対応して、フロントフロア部1aの上面よりも上側の高さ位置に位置しており、収容部21aは、この上側カバー部材23と下側カバー部材24とにより、概略直方体の箱状をなしている。
【0031】
また、下側カバー部材24は、図4に示すように、車体後方かつ上方に傾斜するように形成されている。これにより、例えば、縁石等に乗り上げる等して車両が後方かつ下方に傾斜したとしても、下側カバー部材24の後部が路面に接触しないような構成になっている。そして、下側カバー部材24上には、スポンジ等からなる断熱材40が敷設され、この断熱材40上にバッテリモジュール221が載置されている。断熱材40の後部は、この下側カバー部材24の形状に対応して、前部よりも相対的に肉薄に形成されており、これにより、バッテリモジュール221が略水平に載置されるような構成になっている。
【0032】
収容部21aに搭載されるバッテリモジュール221は、フロントフロア部1aの上面よりも相対的に上下方向の高さが高く、概略直方体の箱状に構成された収容部21aにおいて、図2〜4に端的に示すように、車幅方向に4つ並んで配置されると共に、その各々について上下方向に3つ積層されており、収容部21a、すなわち後席シート2Rの下方には、バッテリモジュール221が合計で12個配置されている。
【0033】
また、収容部21aには、図2図3に示すように、車幅方向に並んで配置されたバッテリモジュール221、221間の隙間を上方から覆う金属製のカバー板50が配設されている。そして、カバー板50は、バッテリモジュール221、221の上面にネジ留め等することで、所定位置に固定され、車幅方向に並んで配置された最上位のバッテリモジュール221、221、…同士、より具体的には、互いに隣接するバッテリモジュール221、221同士がカバー板50、50、…により連結される。
【0034】
また、収容部21aには、複数のバッテリモジュール221の上部前側に、図2図5に示すようなブラケット51が配設されている。ブラケット51は、車幅方向に延びる平板状の部材であり、車幅方向に並んで配置された最上位の全てのバッテリモジュール221、221、…同士を共通に連結している。
【0035】
そして、バッテリモジュール221とリヤフロア部1bとの間には、後述するサービスディスコネクタ52(以下、コネクタ52と略記する。)、ヒューズ53、及びケーブル54が配設されている。
【0036】
このうち、コネクタ52は、車両のメンテナンス時等にバッテリモジュールを電気的に遮断するための電源遮断装置であり、ケーブル54によりヒューズ53やバッテリモジュール221に接続されている。ブラケット51は、コネクタ52やヒューズ53をバッテリモジュール221に取付けるための部材であり、コネクタ52は、ブラケット51への取付けによって、後席シート2Rの略中央部下方に配設されている。
【0037】
また、ブラケット51は、その前後端部において、上下方向に延びる荷重伝達部としての前壁部51a、後壁部51bを有している。このうち、前壁部51aは、コネクタ52、ヒューズ53の前方に形成され、これらの前部を覆っている。一方、後壁部51bは、ブラケット51の車幅方向全幅に亘って形成されており、この後壁部51bには適宜の間隔を隔てて複数のクリップ55、55、…が取付けられている。前述のケーブル54は、このクリップ55、55、…により所定位置に固定されている。
【0038】
また、上側カバー部材23には、図1図3〜5に示すように、前述のコネクタ52、ヒューズ53の位置に対応してサービス孔23a、23aが形成されている。このサービス孔23a、23aは、内燃機関を搭載した既存の車両においてリヤフロア部の下方に配設された燃料タンクをメンテナンスするために形成されたサービス孔を利用したものである。
【0039】
本実施形態では、上側カバー部材23に枠部材60が取付けられており、この枠部材60にサービス孔23a、23aが形成されている。枠部材60は、図5に示すように、その周縁部に鍔部60aを有しており、特に、前側の鍔部60aは、ブラケット51の前端部に形成された前壁部51aよりも前方まで延びている。
【0040】
また、枠部材60には、コネクタ52、ヒューズ53を上方から覆う蓋部材61がボルト、ナット等の締結部材62によって取付けられており、枠部材60は、蓋部材61をバッテリユニット21に取付けるための取付部材として機能している。
【0041】
ここで、コネクタ52の上端と蓋部材61との間の上下方向の間隔は、ブラケット51の前壁部51aの上端と上側カバー部材23との間の上下方向の間隔よりも大きく設定されている。
【0042】
また、リヤフロア部1bには、蓋部材61の位置に対応して、サービス孔10が形成されると共に、蓋部材61の上方を覆う蓋部材11がボルト、ナット等の締結部材12によって取付けられている。
【0043】
本実施形態に係る車両では、コネクタ52やヒューズ53にメンテナンスの必要が生じた場合、先ず、後席シート2Rのシートクッション2Raを取外す。そして、締結部材12、62を外して2つの蓋部材11、61を開けることにより、サービス孔23a、23aからコネクタ52、ヒューズ53にアクセスすることができるようになっている。
【0044】
また、図1では便宜上図示を省略したが、車両には、図4に二点鎖線で示すように、後席シート2Rに対応して3点式のシートベルト70が備えられており、このシートベルト70によって後席シート2Rに着座した乗員Mを拘束している。具体的には、シートベルト70は、ラップベルト70a及びショルダーベルト70bを有し、これらが乗員Mの腰部の左右2点と肩1点の合計3点で乗員Mを拘束することにより、乗員Mの腰部及び上半身部をそれぞれ拘束するようになっている。なお、図中の点HPは、後席シート2Rに着座した乗員Mの左右の大腿骨頭の中間位置となるヒップポイントを示している。
【0045】
ところで、乗員の上半身がシートベルトにより拘束された状態で車両衝突が発生した時、慣性力によって乗員が前方に押し出されることに伴い、乗員の下半身が前方に移動してシートクッションとシートベルトとの間からすり抜けるいわゆるサブマリン現象が生じることがある。図6、7は、サブマリン現象が発生した時の状態を示しており、図6図7では、乗員Mの下半身が前方に移動することに伴い、ヒップポイントHPが、図4に示す通常状態に比べて前方かつ下方に変位している。
【0046】
本実施形態では、前述したサブマリン現象が発生すると、ヒップポイントHPが前方かつ下方に変位することに伴い、図6、7中太矢印で示すように、後席シート2Rのシートクッション2Raからコネクタ52の周辺に対して大きな荷重が入力される。そして、リヤフロア部1b、蓋部材11の一部が上記荷重により下方に凹むと共に、枠部材60、蓋部材61が、凹んだ蓋部材11に押圧されて下方に変位する。
【0047】
この時、コネクタ52の上端と蓋部材61との間の上下方向の間隔が、ブラケット51の前壁部51aの上端と上側カバー部材23との間の上下方向の間隔よりも大きく設定されているため、図6図7に示すように、蓋部材61がコネクタ52に接触する前に上側カバー部材23が前壁部51aの上端に当接する。そして、上側カバー部材23が前壁部51aの上端に当接することで、枠部材60、蓋部材61の変位が抑制され、その結果、蓋部材61とコネクタ52との接触が回避される。
【0048】
また、上記荷重の入力に伴って上側カバー部材23が前壁部51aの上端に当接した時には、枠部材60の前側の鍔部60aがブラケット51の前壁部51aよりも前方まで延びていることにより、鍔部60a(枠部材60)と前壁部51aの上端とが上側カバー部材23を介して上下方向に重なることになる。そして、図7に矢印で示すように、上記荷重が、枠部材60(鍔部60a)からブラケット51の前壁部51aの上端に向かって伝達される。このため、上記荷重は、コネクタ52を迂回するように、蓋部材61、枠部材60(鍔部60a)、ブラケット51(前壁部51a)を介して下方のバッテリモジュール221に伝達される。
【0049】
つまり、上側カバー部材23が前壁部51aの上端に当接した時、上記荷重を、コネクタ52を迂回して伝達させる荷重伝達経路が形成される。本実施形態では、これら蓋部材61と、枠部材60と、ブラケット51とにより、後席シート2Rからの荷重を受けると共に、上記荷重伝達経路を形成する荷重伝達構造80が構成されている。
【0050】
このように、本実施形態では、キックアップ部1cの後方のリヤフロア部1bの上面に配設された後席シート2Rの下方にバッテリモジュール221を設けることで、後席シート2Rの下方の空間を利用してバッテリモジュール221を複数搭載することができ、これによって、バッテリモジュール221の搭載性を確保することができる。
【0051】
そして、後席シート2Rの下方に配設されたバッテリモジュール221とリヤフロア部1bとの間にコネクタ52を配設したことで、これを比較的高い位置に配置することができる。このため、コネクタ52の防水性向上を図ることができ、その結果、コネクタ52の保護性能を向上させることができる。
【0052】
また、コネクタ52を、後席シート2Rの略中央部下方に配設したことで、コネクタ52へのアクセスを車両の左右両側から容易に行うことができる。
【0053】
また、後席シート2Rからの荷重を受けると共に、該荷重を、コネクタ52を迂回して伝達させる荷重伝達経路を形成する荷重伝達構造80を配設したことで、後席シート2Rに着座した乗員Mのサブマリン現象によって発生する荷重からコネクタ52を保護することができる。
【0054】
また、コネクタ52をバッテリユニット21(バッテリモジュール221)に取付けるためのブラケット51により荷重伝達構造80を構成したことで、新たな部材を追加することなく荷重伝達構造80を構成することができる。
【0055】
また、ブラケット51が、上下方向に延びて上記荷重を下方に伝達させる荷重伝達部としての前壁部51aを有することで、後席シート2Rから下方に向かう上記荷重をより円滑に伝達、分散させることができる。そして、サブマリン現象の発生時には、乗員MのヒップポイントHPが前方かつ下方に変位することから、コネクタ52の前方に前壁部51aを配設することにより、上記荷重を上下方向に延びる前壁部51aでより効果的に受け止めることができる。また、本実施形態では、この前壁部51aでコネクタ52の前部を覆っているため、コネクタ52の防水性をより向上させることができるという利点もある。
【0056】
また、バッテリモジュール221を車幅方向に複数並設すると共に、これらをブラケット51により車幅方向に連結したことで、車両走行時におけるバッテリモジュール221の振動を抑制することができる。このため、バッテリモジュール221の損傷、及びバッテリモジュール221の振動に起因する騒音を抑制することができる。
【0057】
また、ブラケット51の前壁部51aの上端に向かって上記荷重を伝達可能な位置に枠部材60(具体的には、鍔部60a)を配設したことにより、上記荷重がコネクタ52に入力されることを確実に回避できる。
【0058】
なお、上述した実施形態では、上下方向に延びて上記荷重を下方に伝達させる荷重伝達部を前壁部51aで構成することとしたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、この荷重伝達部を、所定間隔を隔てて車幅方向に並設された柱状部で構成してもよい。
【0059】
また、上下方向に延びる前壁部51aをブラケット51に形成する代わりに、ブラケット51の底面前部に向かって下方に延びる縦壁部を枠部材60の前部に形成してもよい。この場合、荷重伝達部を縦壁部で構成することができ、後席シート2Rから荷重が入力された時には、上記縦壁部の下端がブラケット51の底面前部に当接することで、上述した実施形態と同様の荷重伝達経路を形成することができる。
【0060】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、荷重伝達部は、前壁部51aに対応し、
以下同様に、
取付部材は、枠部材60に対応し、
バッテリユニットにおけるブラケットの上端の上方部分は、上側カバー部材23に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0061】
1b…リヤフロア部
1c…キックアップ部
2R…後席シート
21…バッテリユニット
23…上側カバー部材
51…ブラケット
51a…前壁部
52…サービスディスコネクタ
60…枠部材
61…蓋部材
80…荷重伝達構造
221…バッテリモジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7