(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1シール部材と前記第2シール部材の一部は、オーバーラップして設けられている、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱交換器のシール構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、圧縮機の高圧縮化による性能の向上が図られており、より高温の流体を扱うようになってきている。
しかしながら、上記従来技術のシール構造では、リアシールに用いているゴムの耐熱性(シリコンゴムの場合は例えば200℃)の限界を超えてしまうことがあり、圧縮機の高性能化に対応できない場合がある。一方、耐熱性の高いゴムを使用する手段もあるが、例えばフッ素ゴム等は高価であり、コストの関係で採用し難いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、より高温の流体を扱うことのできる熱交換器のシール構造及び圧縮機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、熱交換器が抜き出し可能に挿入された筐体の内部空間を気密に仕切る熱交換器のシール構造であって、前記熱交換器は、矩形箱状であり、前記熱交換器に設けられ、外側に向かって厚みが順次薄くなるように複数枚の金属製の板状部材を重ね合わせてなるシール部材を有し、前記シール部材として、前記熱交換器の挿入方向に対する側面に設けられた第1シール部材と、前記挿入方向と交差する先端面に設けられた第2シール部材と、を有する、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、熱交換器の挿入方向に対する側面に設けられた第1シール部材と、熱交換器の挿入方向奥側の先端面に設けられた第2シール部材とが、共に、耐熱性に優れた金属製のシール部材で構成されるため、ゴムの耐熱性を超える高温の流体でも対応が可能となる。また、シール部材は、外側に向かって厚みが順次薄くなるように複数枚の金属製の板状部材を重ね合わせる構成のため、シール部材に十分な剛性を与えて挿入時の折れ曲がりなどを防止すると共に、それを確実に筐体の内部空間に弾性的に当接させてシール性を大いに高めることができる。
【0009】
また、本発明においては、前記第1シール部材は、前記先端面よりも前記挿入方向奥側に延設されて、前記内部空間の形状に沿って変形するためのスリットが形成された角シール部を有する、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、第1シール部材にスリットを形成することで、その先端面から延設された部位が、熱交換器の挿入の際に挿入方向奥側で内部空間に当たり、その形状に沿って柔軟に変形し易くさせることができる。これにより、第1シール部材と第2シール部材とを共に剛性のある金属製のものにした場合であっても、角部におけるシール性を確保することができる。
【0010】
また、本発明においては、前記スリットは、前記板状部材のそれぞれに、厚み方向で非連続となる配置で設けられている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、スリットを厚み方向で非連続とすることで、スリットを設けることによるシール性の低下を抑制することができる。
【0011】
また、本発明においては、前記板状部材は、幅が大きくなる順に重ね合わされており、前記スリットは、前記板状部材の幅の小さくなる順に、前記挿入方向奥側にオフセットして設けられている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、シール性を確保する最も幅の大きな板状部材の内側の支持を挿入方向奥側に向かって徐々になくしていくことができるため、根元の剛性を保ちつつその先端を変形させ易くし、それを確実に筐体の内部空間に弾性的に当接させてシール性を大いに高めることができる。
【0012】
また、本発明においては、前記板状部材は、幅の小さくなる順に、前記角シール部における前記挿入方向の長さが短くなっている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、シール性を確保する最も幅の大きな板状部材の内側の支持を挿入方向奥側に向かって徐々になくしていくことができるため、根元の剛性を保ちつつその先端を変形させ易くし、それを確実に筐体の内部空間に弾性的に当接させてシール性を大いに高めることができる。
【0013】
また、本発明においては、前記第2シール部材の先端の向きを前記挿入方向に対して斜めにするためのサポート部材を有する、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、熱交換器の挿入の際、第2シール部材の先端が挿入方向奥側で筐体の内部空間に当接するときに、第2シール部材の先端の向きが斜めになっていることから、内部空間の形状に沿って滑るようにして変形させることができる。このため、熱交換器の挿入の際に、第2シール部材が異常な形状で変形してシール性を損なうといった事態を回避できる。
【0014】
また、本発明においては、前記第1シール部材と前記第2シール部材の一部は、オーバーラップして設けられている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、第1シール部材と第2シール部材の一部を重ねることで角部におけるシール性を確保することができる。
【0015】
また、本発明においては、先に記載の熱交換器のシール構造を有する、ことを特徴とする圧縮機を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、高性能でより高温の流体を扱うことのできる圧縮機が得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、より高温の流体を扱うことのできる熱交換器のシール構造及び圧縮機が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の装置について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、本発明の熱交換器のシール構造を圧縮機に適用した場合を例示する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態における圧縮機1の概略構成を示す斜視図である。
本実施形態の圧縮機1は、流体を圧縮する第1段圧縮機2と、一段階圧縮された流体さらに圧縮する第2段圧縮機3と、を具備する2段圧縮機である。第1段圧縮機2及び第2段圧縮機3は、ラジアルインペラによって流体を遠心圧縮するターボ圧縮機であり、同軸接続されたラジアルインペラが不図示の電動機によって同期駆動するようになっている。
【0020】
第1段圧縮機2は、吸入管4を備えている。吸入管4を通過した流体は、第1段圧縮機2に入力される。第1段圧縮機2で一段階目の圧縮が行われると、この圧縮流体はインタークーラー(熱交換器)20Aを通って冷却され、第2段圧縮機3に入力される。第2段圧縮機3で二段階目の圧縮が行われると、この圧縮流体はアフタークーラー(熱交換器)20Bを通って冷却され、吐出管5に接続された不図示の産業用機械等に供給される。
【0021】
インタークーラー20A及びアフタークーラー20Bは、鋳造のケーシング(筐体)10に対して抜き差し可能に挿入されている。ケーシング10には、仕切壁11によって第1の内部空間12及び第2の内部空間13が区画形成されている。第1の内部空間12及び第2の内部空間13は、ケーシング10の中に隣接して形成されている。第1の内部空間12には第1のガスクーラーたるインタークーラー20Aが、第2の内部空間13には第2のガスクーラーたるアフタークーラー20Bがそれぞれ所定の隙間をもって収容されている。
【0022】
内部空間12,13は、水平方向に延在する直方体状とされ、その一端は開放されて挿入口16,17とされると共に、その挿入方向奥側に位置する他端は閉塞されている。インタークーラー20Aとアフタークーラー20Bは、プレートフィン型とされてフロントヘッダ23が共用とされている。フロントヘッダ23は、挿入口16,17周囲のケーシング10の外壁にボルト止めされる。これにより、インタークーラー20A及びアフタークーラー20Bは、内部空間12,13のそれぞれにおいて所定の位置に支持されるようになっている。
【0023】
図示するように、吸入管4から送られてきた流体は第1段圧縮機2で一段階圧縮され、通路6を通じて第1の内部空間12に送られてインタークーラー20Aで最初の冷却がなされ、また、この流体は通路7を通じて第2段圧縮機3に送られ、二段階圧縮されて所定の高圧とされた後に通路8を通じて第2の内部空間13に送られ、アフタークーラー20Bによる最終的な冷却がなされるが、内部空間12,13内では、互いに反対方向となるように内側から外側に向かって流体が流通されるようになっている。
【0024】
このように、インタークーラー20Aとアフタークーラー20Bの上流側は高温側H、下流側は低温側Lとされており、内部空間12,13においてこれら高温側Hと低温側Lとを気密に仕切るためのシール構造Aが設けられている。
次に、このシール構造Aについて、
図2〜
図7を参照して説明する。ここで、
図2に示すように、インタークーラー20Aは、フロントヘッダ23が共用とされてアフタークーラー20Bと同様の構成がなされるため、以下ではアフタークーラー20B側の構成についてのみ説明を行い、インタークーラー20A側の構成についての説明は割愛することとする。
【0025】
図2は、本発明の実施形態におけるインタークーラー20A及びアフタークーラー20Bを下方から視た斜視図である。
図3は、本発明の実施形態におけるケーシング10の内部空間13の形状を示す斜視図である。
図4は、本発明の実施形態における第1シール部材21を示す構成図である。なお、
図4は、
図2の矢視a1に対応する。
図5は、本発明の実施形態における第2シール部材22を示す構成図である。なお、
図5は、
図2の矢視a2に対応する。
図6は、
図1に示す領域kの拡大図である。
図7は、本発明の実施形態における角シール部47の構成を示す斜視図である。
【0026】
図2に示すように、フロントヘッダ23からはバンドル24が延出して設けられている。バンドル24は、長方形状のプレートフィン25をクーラー長手方向に沿って多数平行に並べ、これらに図示しない冷却管を貫通させて両者を一体的に溶接することによって形成されている。バンドル24は、長手方向に延出された矩形箱状に形成されており、そのバンドル24のフロントヘッダ23が設けられる側と反対側の端部にはリアヘッダ26が設けられている。
【0027】
バンドル24には、バッフル27,28がバッフルリテーナ31により挟持されて着脱自在に設けられている。バッフル27,28は、バンドル24の長手方向(挿入方向)に対する側面であって、上下の対面の関係にある側面29a,29bを形成している。リアヘッダ26は、バッフル27,28を含むバンドル24よりもその断面が大きく、バンドル24に対し上下左右に突出している。リアヘッダ26は、挿入方向と直角に交差する先端面30を形成している。
【0028】
アフタークーラー20Bの側面29a,29bには、その長手方向(挿入方向)に沿って第1シール部材21が設けられている。また、アフタークーラー20Bの先端面30には、挿入方向と直交する直交方向に沿って第2シール部材22が設けられている。第1シール部材21及び第2シール部材22は、直列に連なるように配置されている。この第1シール部材21及び第2シール部材22は、アフタークーラー20Bに設けられ、
図4及び
図5に示すように、複数枚の金属製の板状部材を順次重ね合わせてなるシール部材である点で構成が共通する。
【0029】
図3に示すように、内部空間13は、挿入されるアフタークーラー20Bの第1シール部材21及び第2シール部材22の位置に合わせてこれらを挟むよう一対の凸部38が形成されている。一対の凸部38は、底面部、奥側の側面部、及び不図示の上面部に連続的に形成されている。一対の凸部38の内側には溝39が形成され、一対の凸部38の外側にはドレン溝40が形成されている。
【0030】
溝39は、底面部と側面部との間、側面部と不図示の上面部との間において曲げ角度が直角となった角部39aを有する。角部39aは、ケーシング10が鋳造で形成されることから、
図6に示すように、滑らかなカーブ形状となっている。
ドレン溝40は、
図3に示すように、低温側Lに形成されており、アフタークーラー20Bを流通する過程で生じたドレン水を低温側Lで回収するものである。なお、ドレン溝40に溜められたドレン水は不図示のドレン排出管を通り内部空間13から排出される。
【0031】
第1シール部材21は、側面29a,29bにそれぞれ設けられているため、以下では側面29bに設けられた第1シール部材21のみについて説明する。
第1シール部材21は、
図4に示すように、側面29bから外側に向かって厚みが順次薄くなるように複数枚の金属製の板状部材41a,41b,41cを順次重ね合わせてなるシール部材である。本実施形態の第1シール部材21は、薄い(0.2mm程度)のSUS(ステンレス鋼)板を重ね合わせて形成されている。なお、第1シール部材21は、SUSに限らず、耐熱性、剛性及びバネ性を備えれば他の金属材であってもよい。
【0032】
第1シール部材21は、幅方向一端面を合わせつつ、幅が大きくなる順に板状部材41a,41b,41cを順次重ね合わせて形成されている。このように、第1シール部材21は、アフタークーラー20Bの長手方向(挿入方向)に延在する帯状に形成されて、側面29bに対して立設すると共に、その先端までの長さが板状部材41a,41b,41cの順に大きくなるよう形成されている。第1シール部材21は、L字状に曲げられたシール取付板42に対して、複数のボルト42a,ナット42bによって締結固定されている。
【0033】
図4に示す挿入状態では、外側に位置された板状部材41cが、溝39の内底面との弾性的な当接によりきつく曲げられ、その曲がりによって内側の板状部材41a,41bも曲げられると同時に板状部材41cに当接方向への押付力を付加するようになっている。そして突出長が順次短くされることで、取付側から当接側にかけて順次剛性が弱まる方向となり、取付側は剛性大となって変形が少なく、逆に当接側は軟らかく変形して当接シールを確実とする。また、挿入状態では、高温側Hに曲げ中心を置くアール状となることで、高温側Hの高圧を利用して押付力をより高めることができるようになっている。
【0034】
第2シール部材22は、
図5に示すように、先端面30から外側に向かって厚みが順次薄くなるように複数枚の金属製の板状部材43a,43b,43cを順次重ね合わせてなるシール部材である。本実施形態の第2シール部材22は、薄い(0.2mm程度)のSUS(ステンレス鋼)板を重ね合わせて形成されている。なお、第2シール部材22も同様にSUSに限らず、耐熱性、剛性及びバネ性を備えれば他の金属材であってもよい。
【0035】
第2シール部材22は、幅方向一端面を合わせつつ、幅が大きくなる順に板状部材43a,43b,43cを順次重ね合わせて形成されている。このように、第2シール部材22は、アフタークーラー20Bの短手方向(挿入方向と直交する方向)に延在する帯状に形成されて、先端面30に対して立設すると共に、その先端までの長さが板状部材43a,43b,43cの順に大きくなるよう形成されている。
【0036】
第2シール部材22は、L字状に曲げられたシール取付板44に対して、曲げ角度が鈍角に曲げられたサポート部材45と共に複数のボルト44a,ナット44bによって締結固定されている。サポート部材45は、第2シール部材22の先端の向きを挿入方向(
図5において紙面上下方向)に対して斜めにするためのものである。なお、サポート部材45は、第2シール部材22の押付力を確保するために、第2シール部材22を塑性域で屈曲させるものではなく、弾性域で曲げる(ガイドする)ものである。
【0037】
図5に示す挿入状態では、外側に位置された板状部材43cが、溝39の内底面との弾性的な当接によりきつく曲げられ、その曲がりによって内側の板状部材43a,43bも曲げられると同時に板状部材43cに当接方向への押付力を付加するようになっている。そして突出長が順次短くされることで、取付側から当接側にかけて順次剛性が弱まる方向となり、取付側は剛性大となって変形が少なく、逆に当接側は軟らかく変形して当接シールを確実とする。また、挿入状態では、高温側Hに曲げ中心を置くアール状となることで、高温側Hの高圧を利用して押付力をより高めることができるようになっている。
【0038】
図6及び
図7に示すように、第1シール部材21の一端部は、先端面30よりも挿入方向奥側(紙面右側)に延設されており、第2シール部材22の内側に潜り込むようにして、オーバーラップ(
図6において点線で示す)している。このように、第1シール部材21と第2シール部材22の一部を重ねることで、バネ性や圧力差によって第1シール部材21と第2シール部材22とが押し付け合って、第1シール部材21と第2シール部材22との間からの流体の漏れを防止することができるようになっている。
【0039】
第1シール部材21は、先端面30よりも挿入方向奥側に延設されて、内部空間13の角部39a(
図6参照)の形状に沿って変形するためのスリット46が形成された角シール部47を有する。スリット46は、挿入方向と直交する方向に、第1シール部材21の突出端(幅端)から直線状に当接側から取付側に延びて形成されている。このスリット46は、
図7に示すように、第1シール部材21を構成する板状部材41a,41b,41cのそれぞれに形成されている。
【0040】
スリット46は、板状部材41a,41b,41cのそれぞれに、厚み方向で非連続となる配置で設けられている。本実施形態のスリット46は、挿入方向奥側にオフセットして設けられている。詳しくは、板状部材41cに設けられたスリット46aは、挿入方向において最も手前側であって、先端面30の近傍の位置に配置されている。板状部材41cの内側の板状部材41bに設けられたスリット46bは、スリット46aよりも挿入方向奥側に所定距離をあけてオフセットして配置されている。板状部材41bの内側の板状部材41cに設けられたスリット46cは、スリット46bよりもさらに挿入方向奥側に所定距離をあけてオフセットして配置されている。
【0041】
角シール部47は、内部空間13の角部39aの形状に沿って三次元的に変形するものである。
図7に示す符号Pは、内部空間13の形状に沿って押し付けられる部分の境界線を表している。板状部材41cのスリット46cは、板状部材41bによって塞がれずに貫通する貫通部46c1がある。この貫通部46c1は、内部空間13に押し付けられる領域に形成されている。このように、本実施形態では、貫通部46c1を内部空間13に押し付けられる領域に形成することで、貫通部46c1からの流体の漏れを防止することができるようになっている。
【0042】
続いて、上記構成のシール構造Aの作用について説明する。
【0043】
アフタークーラー20B(インタークーラー20Aも以下同じ)の挿入に際しては、フロントヘッダ23を持って内部空間13内に押し込むことになるが、このときシール取付板42あるいはリアヘッダ26が凸部38上を摺動し、第1シール部材21が溝39の内底面上を摺動する(
図4参照)。アフタークーラー20Bの重量がかかる各当接部は硬質、すなわち金属同士であるため、摩擦抵抗を減じて挿入を大幅に容易とすることができる。特に、凸部38でアフタークーラー20Bの重量を受け、第1シール部材21には重量をかけず変形も少ないため、第1シール部材21の変形による摩擦抵抗の増大を防ぎ、少ない力で挿入が可能となる。
【0044】
アフタークーラー20Bが奥まで挿入されると、第2シール部材22の先端が内部空間13の奥側に当接する。第2シール部材22の先端の向きは、サポート部材45によって挿入方向に対して斜めに調整されている(
図5参照)。このように、本実施形態では、アフタークーラー20Bの挿入の際、第2シール部材22の先端が挿入方向奥側でケーシング10の内部空間13に当接するときに、第2シール部材22の先端の向きが斜めになっていることから、内部空間13の形状に沿って滑るようにして変形させることができる。このため、アフタークーラー20Bの挿入の際に、第2シール部材22が異常な形状で変形してシール性を損なうといった事態を回避できる。なお、第1シール部材21は、溝39の底面上を摺動しながら挿入されるため形状を制御でき、異常な形状で変形することはない。
【0045】
また、アフタークーラー20Bが奥まで挿入されると、第1シール部材21の先端面30よりも挿入方向奥側に延設された角シール部47が内部空間13の角部39aに当接する(
図6参照)。第1シール部材21は、先端面30よりも挿入方向奥側に延設されて、内部空間13の形状に沿って変形するためのスリット46が形成された角シール部47を有する。このように、本実施形態では、第1シール部材21にスリット46を形成することで、その先端面30から延設された部位が、アフタークーラー20Bの挿入の際に挿入方向奥側で内部空間13に当たり、その形状に沿って柔軟に変形する。したがって、第1シール部材21と第2シール部材22とを共に剛性のある金属製のものにした場合であっても、角部39aにおけるシール性を確保することができる。
【0046】
スリット46は、板状部材41a,41b,41cのそれぞれに、厚み方向で非連続となる配置で設けられている(
図7参照)。すなわち、角シール部47の板状部材41a,41b,41cにはシールが変形しやすい様なスリット46a,46b,46cを入れているが、シール性を確保するために、それぞれのスリット位置は挿入方向でずらして配置させている。このように、本実施形態では、スリット46を厚み方向で非連続とすることで、スリット46を設けることによるシール性の低下を抑制することができる。
【0047】
また、スリット46は、板状部材41a,41b,41cの幅の小さくなる順(41c、41b、41aの順)に、挿入方向奥側にオフセットして設けられている。このように、本実施形態では、シール性を確保する最も幅の大きな板状部材41cの内側の支持を挿入方向奥側に向かって徐々になくしていくことができるため、根元の剛性を保ちつつその先端を変形させ易くし、それを確実にケーシング10の内部空間13に弾性的に当接させてシール性を大いに高めることができる。すなわち、第2シール部材22と略同様に、内部空間13の奥側に当接してシール性を高めることができる。
【0048】
このように、本実施形態では、アフタークーラー20Bの挿入方向に対する側面29a,29bに設けられた第1シール部材21と、アフタークーラー20Bの挿入方向奥側の先端面30に設けられた第2シール部材22とが、共に、耐熱性に優れた金属製のシール部材で構成されるため、ゴムの耐熱性を超える高温の流体でも対応が可能となる。また、第1シール部材21及び第2シール部材22は、外側に向かって厚みが順次薄くなるように複数枚の金属板を重ね合わせる構成のため、第1シール部材21及び第2シール部材22に十分な剛性を与えて挿入時の折れ曲がりなどを防止すると共に、それを確実にケーシング10の内部空間13に弾性的に当接させてシール性を大いに高めることができる。
【0049】
したがって、上述の本実施形態によれば、アフタークーラー20B(インタークーラー20Aも同様)が抜き出し可能に挿入されたケーシング10の内部空間13を気密に仕切るシール構造Aであって、アフタークーラー20Bは、矩形箱状であり、アフタークーラー20Bに設けられ、外側に向かって厚みが順次薄くなるように複数枚の金属製の板状部材41a,41b,41cを重ね合わせてなるシール部材を有し、該シール部材として、アフタークーラー20Bの挿入方向に対する側面29a,29bに設けられた第1シール部材21と、該挿入方向と交差する先端面30に設けられた第2シール部材22と、を有するという構成を採用することによって、ゴムの耐熱性を超える高温の流体を扱うことができ、圧縮機1の高性能化に対応することができる。
【0050】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0051】
例えば、本発明は、
図8に示すような変形例を採用することができる。
図8は、本発明の別実施形態における角シール部47の構成を示す斜視図である。
図8に示すように、板状部材41a,41b,41cは、幅の小さくなる順(41c、41b、41aの順)に、角シール部47における挿入方向の長さが短くなっている。この構成によれば、シール性を確保する最も幅の大きな板状部材41cの内側の支持を挿入方向奥側に向かって徐々になくしていくことができるため、上記実施形態よりも柔軟にケーシング10の内部空間13に当接させてシール性を大いに高めることができる。
【0052】
また、例えば、上記実施形態では、第1シール部材21及び第2シール部材22を3枚の金属板で構成したが、本発明はこの構成に限定されず、2枚以上であればよい。例えば、金属板の厚みが小さければ3枚より多い枚数で第1シール部材21及び第2シール部材22を構成することができる。
【0053】
また、例えば、上記実施形態では、熱交換器のシール構造をターボ圧縮機に適用した場合を例示したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えばスクリュー圧縮機にも適用することができる。