(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
チャンバ内に配置されたテンプレートと、このテンプレートの下方位置に、基板上にインプリント材料層が形成されてなる被処理物を搬送する搬送機構と、前記インプリント材料層を硬化処理する硬化処理手段とを具えてなるナノインプリント装置であって、
前記テンプレートのパターン面に対向するよう配置される、真空紫外光を出射する紫外光ランプを具え、
前記テンプレートと前記紫外光ランプとの間に、入射角が17〜40°の範囲から選択された特定の角度θを超える斜行光を遮断若しくは減衰するフィルタが配置されていることを特徴とするナノインプリント装置。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップやバイオチップの製造においては、従来のフォトリソグラフィーおよびエッチングを利用したパターン形成方法に比較して低コストで製造することが可能な方法として、ナノインプリント技術が注目されている。
このナノインプリント技術を利用したパターン形成方法においては、パターンを形成すべき基板例えばウエハ上に、液状の光硬化型または熱硬化型のレジストよりなるナノインプリント材料を塗布することによってナノインプリント材料層を形成し、このナノインプリント材料層に対して、形成すべきパターンのネガとなるパターンが形成された石英ガラスよりなるテンプレート(モールド)を接触させ、この状態で、ナノインプリント材料層を硬化処理し、その後、得られた硬化樹脂層からテンプレートを離型する工程が行われる(特許文献1および特許文献2参照。)。
【0003】
このようなパターン形成方法においては、テンプレートの表面にレジスト残渣などが存在すると、得られるパターンに欠陥が生じるため、テンプレートの表面を洗浄処理することが必要である。
而して、テンプレートを洗浄処理する方法としては、テンプレートのパターン面を水等の洗浄剤に浸漬させた後、テンプレートのパターン面に紫外光を照射することにより、洗浄剤を光励起して酸素ラジカルやOHラジカル等のラジカルを生成させ、このラジカルによってレジスト残渣を分解除去する方法(特許文献3参照。)が知られている。
然るに、このような洗浄法においては、テンプレートのパターン面を洗浄剤に浸漬させたときに、洗浄剤中にレジスト残渣が分散されることにより、後続のテンプレート洗浄処理において、洗浄剤中に分散したレジスト残渣によって二次汚染が生じる、という問題がある。
また、テンプレートを洗浄処理するために、テンプレートをナノインプリント装置から取り外し、テンプレートの洗浄処理が終了した後、当該テンプレートをナノインプリント装置に取り付ける作業が必要となり、従って、パターン形成工程を長時間にわたって停止しなければならないため、生産効率が低下する、という問題がある。
【0004】
このような問題を解決するため、光照射装置によってテンプレートの表面に真空紫外光を照射することにより,当該テンプレートの表面を洗浄処理する光洗浄処理装置が提案されている(特許文献4参照。)。
このような光洗浄処理装置においては、エキシマランプによってテンプレートの表面に真空紫外光を照射することにより、当該真空紫外光のエネルギーによってレジスト残渣が分解されると共に、空気中の酸素に真空紫外光が照射されることにより生じたラジカル酸素、オゾン等の活性酸素によって分解物が酸化してガス化される結果、テンプレートの表面に存在するレジスト残渣が除去される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の光洗浄処理装置においては、テンプレートの表面からレジスト残渣を十分に除去することが困難であることが判明した。このような問題は、本発明者らが鋭意検討重ねた結果、以下の理由によるものと推定される。
光照射装置におけるエキシマランプから出射される光は、全方位に向かって進む放散光であるため、テンプレートのパターン面に対して様々な入射角で照射される。
而して、
図13に示すように、テンプレート1のパターン面に照射される光のうち、当該パターン面に対して大きく傾斜した方向から入射される斜行光L2は、テンプレート1のパターン面における凸部Tに照射された後、当該凸部Tを透過して凹部Hに照射される。このとき、パターン面における凸部Tを介して凹部Hに照射される斜行光L2は、テンプレート1を構成する石英ガラス中を伝播することによって、その位相が変化する。そのため、パターン面の凹部Hにおいては、凸部Tを透過して照射される斜行光L2と、凹部Hに直接照射される、当該斜行光L2以外の光L1とが重畳することによって、相殺的干渉が生じる。その結果、パターン面の凹部Hに照射される真空紫外光のエネルギーが減衰するので、当該凹部H内に残存するレジスト残渣を十分に除去することが困難となる。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その第1の目的は、
ナノインプリントに用いられるテンプレートに付着したレジスト残渣などの異物を十分にかつ確実に除去することができる
テンプレート洗浄用光照射装置を提供することにある。
本発明の第2の目的は、欠陥の少ないパターンを確実に形成することができるナノインプリント装置を提供することにある。
本発明の第3の目的は、ナノインプリントに用いられるテンプレートのパターン面を光洗浄処理するテンプレート洗浄方法であって、テンプレートに付着したレジスト残渣を十分にかつ確実に除去することができるテンプレート洗浄方法を提供することにある。
本発明の第4の目的は、欠陥の少ないパターンを確実に形成することができるパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の
テンプレート洗浄用光照射装置は、筐体と、この筐体内に配置された、真空紫外光を出射する紫外光ランプとを具えて
なり、ナノインプリントに用いられるテンプレートのパターン面を光洗浄処理するテンプレート洗浄用光照射装置において、
テンプレートと紫外光ランプとの間に、入射角が
17〜40°の範囲から選択された特定の角度
θを超える斜行光を遮断若しくは減衰するフィルタが配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の
テンプレート洗浄用光照射装置においては、前記筐体は紫外光透過窓部材を有し、
前記フィルタが、前記紫外光透過窓部材と前記紫外光ランプとの間に配置されていることが好ましい。
【0010】
本発明のナノインプリント装置は、チャンバ内に配置されたテンプレートと、このテンプレートの下方位置に、基板上にインプリント材料層が形成されてなる被処理物を搬送する搬送機構と、前記インプリント材料層を硬化処理する硬化処理手段とを具えてなるナノインプリント装置であって、
前記テンプレートのパターン面に対向するよう配置される、真空紫外光を出射する紫外光ランプを具え、
前記テンプレートと前記紫外光ランプとの間に、入射角が
17〜40°の範囲から選択された特定の角度
θを超える斜行光を遮断若しくは減衰するフィルタが配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のテンプレート洗浄方法は、ナノインプリントに用いられるテンプレートのパターン面を光洗浄処理するテンプレート洗浄方法であって、
前記パターン面に対して、入射角が
17〜40°の範囲から選択された特定の角度
θを超える斜行光を遮断若しくは減衰するフィルタを介して、真空紫外光を照射する真空紫外光照射工程を有することを特徴とする。
【0012】
本発明のパターン形成方法は、パターンを形成すべき基板上にインプリント材料を塗布することによってインプリント材料層を形成し、
当該インプリント材料層に、上記のテンプレート洗浄方法によって洗浄処理されたテンプレートを押圧し、この状態で、当該インプリント材料層を硬化処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の
テンプレート洗浄用光照射装置によれば、
テンプレートと紫外光ランプとの間に、入射角が
17〜40°の範囲から選択された特定の角度
θを超える斜行光を遮断若しくは減衰するフィルタが配置されていることにより、紫外光ランプから出射されてフィルタに入射された真空紫外光のうち、その入射角が特定の角度
θを超える斜行光が、フィルタによって遮断若しくは減衰されると共に、斜行光以外の光が
テンプレートに照射される。このため、
テンプレートに照射される真空紫外光のエネルギーが、光の相殺的干渉によって減衰することを防止または抑制することができ、その結果、
テンプレートに対して高いエネルギーの真空紫外光を照射することができる。従って、
テンプレートに付着したレジスト残渣などの異物を十分にかつ確実に除去することができる。
【0014】
本発明のナノインプリント装置によれば、テンプレートと紫外光ランプとの間に、入射角が
17〜40°の範囲から選択された特定の角度
θを超える斜行光を遮断若しくは減衰するフィルタが配置されていることにより、テンプレートの光洗浄処理において、紫外光ランプから出射された真空紫外光のうち、テンプレートに入射したときにその入射角が特定の角度
θを超える斜行光が、フィルタによって遮断若しくは減衰され、斜行光以外の光がテンプレートに照射される。このため、テンプレートに照射される真空紫外光のエネルギーが、光の相殺的干渉によって減衰することを防止または抑制することができ、その結果、テンプレートに対して高いエネルギーの真空紫外光を照射することができる。従って、テンプレートに付着したレジスト残渣を十分にかつ確実に除去することができるので、その後のナノインプリント工程において、インプリント材料層にテンプレートを押圧することにより、欠陥の少ないパターンを確実に形成することができる。
【0015】
本発明のテンプレート洗浄方法によれば、テンプレートのパターン面に対して、入射角が
17〜40°の範囲から選択された特定の角度
θを超える斜行光を遮断若しくは減衰するフィルタを介して真空紫外光を照射することにより、紫外光ランプから出射された真空紫外光のうち、テンプレートに入射したときにその入射角が特定の角度
θを超える斜行光が、フィルタによって遮断若しくは減衰され、斜行光以外の光がテンプレートに照射される。このため、テンプレートに照射される真空紫外光のエネルギーが、光の相殺的干渉によって減衰することを防止または抑制することができ、その結果、テンプレートに対して高いエネルギーの真空紫外光を照射することができる。従って、テンプレートに付着したレジスト残渣を十分にかつ確実に除去することができる。
【0016】
本発明のパターン形成方法によれば、インプリント材料層に、上記のテンプレート洗浄方法によって洗浄されたテンプレートを押圧することにより、欠陥の少ないパターンを確実に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の光照射装置の一例における外観の構成を示す説明用斜視図であり、
図2は、
図1に示す光照射装置の内部の構成を示す説明用断面図である。
この光照射装置30は、ナノインプリント装置におけるテンプレートの表面を光洗浄処理するために用いられるものであって、後述する紫外線透過窓部材11が、テンプレートのパターン面に間隙を介して対向するよう配置されて使用される。この例の光照射装置30は、外形が略直方体状の筐体10を有し、この筐体10内には、ランプ収容室S1および回路室S2が隔壁12を介して並ぶよう形成されている。筐体10におけるランプ収容室S1を形成する部分の上面には、例えば石英ガラスよりなる紫外光透過窓部材11が、枠状の固定板13によって固定されて設けられている。
筐体10におけるランプ収容室S1内には、波長200nm以下の真空紫外光を放射するエキシマランプ20が、紫外光透過窓部材11に対向するよう配置され、紫外光透過窓部材11とエキシマランプ20との間には、入射角が特定の角度を超える斜行光を遮断する斜行光遮断フィルタ35が配置されている。一方、筐体10における回路室S2内には、昇圧トランス25などが配置されている。また、
図1において、15は、ランプ収容室S1内に例えば窒素ガスなどのパージ用ガスを供給するためのパージ用ガス流通管である。
【0019】
図3は、エキシマランプ20の斜視図であり、
図4は、
図3に示すエキシマランプ20の説明用断面図である。このエキシマランプ20は、内部に放電空間Sが形成された全体が扁平な板状の放電容器21を有し、この放電容器21の両端には口金24が設けられ、当該放電容器21の放電空間S内には、エキシマ用ガスが気密に封入されている。放電容器21の一面には、網状の高電圧側電極22が配置され、当該放電容器21の他面には、網状のアース側電極23が配置されており、高電圧側電極22およびアース側電極23の各々は、高周波電源(図示省略)に接続されている。そして、エキシマランプ20は、放電容器21における高電圧側電極22が配置された一面が、筐体10における紫外光透過窓部材11と対向するよう配置されている。
【0020】
放電容器21を構成する材料としては、真空紫外光を良好に透過するもの、具体的には、合成石英ガラスなどのシリカガラス、サファイアガラスなどを用いることができる。
高電圧側電極22およびアース側電極23を構成する材料としては、アルミニウム、ニッケル、金などの金属材料を用いることができる。また、高電圧側電極22およびアース側電極23は、上記の金属材料を含む導電性ペーストをスクリーン印刷することにより、或いは上記の金属材料を真空蒸着することにより、形成することもできる。
放電容器21の放電空間S内に封入されるエキシマ用ガスとしては、真空紫外光を放射するエキシマを生成し得るもの、具体的には、キセノン、アルゴン、クリプトン等の希ガス、または、希ガスと、臭素、塩素、ヨウ素、フッ素等のハロゲンガスとを混合した混合ガスなどを用いることができる。エキシマ用ガスの具体的な例を、放射される紫外光の波長と共に示すと、キセノンガスでは172nm、アルゴンとヨウ素との混合ガスでは191nm、アルゴンとフッ素との混合ガスでは193nmである。
また、エキシマ用ガスの封入圧は、例えば10〜100kPaである。
【0021】
斜行光遮断フィルタ35は、
図5に示すように、入射角が特定の角度θを超えて当該斜行光遮断フィルタ35に入射される斜行光L2を遮断すると共に、当該斜行光L2以外の光、すなわち入射角が特定の角度θ以下で当該斜行光遮断フィルタ35に入射される光L1を透過する特性を有するものである。
ここで、斜行光遮断フィルタ35における光の透過および遮断の分岐点となる特定の角度θは、テンプレート1のパターン面における凸部の高さ、凸部の幅および隣接する凸部間の離間距離などを考慮して適宜設定されるが、17〜40°の範囲から選択されることが好ましい。この特定の角度θが過小である場合には、テンプレート1のパターン面における凹部に直接照射され得る光も遮断されるため、エキシマランプ20から出射される光の利用効率が低くなり、好ましくない。一方、特定の角度θが過大である場合には、テンプレート1におけるパターン面の凸部を透過して凹部に照射される光の割合が高くなるため、当該パターン面の凹部に照射される真空紫外光のエネルギーが、光の相殺的干渉によって減衰することを十分に抑制することが困難となることがある。
【0022】
図6は、斜行光遮断フィルタ35の一例における構成を示す説明図である。この例の斜行光遮断フィルタ35は、隔壁36によって形成された多数の六角形の孔36Hを有するハニカム構造体によって構成され、隔壁36の内壁面には、光反射防止処理が施されている。
斜行光遮断フィルタ35を構成するハニカム構造体の隔壁36の材質としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、クロムなどの金属材料、或いはステンレス、真鍮などの合金材料を用いることができる。
【0023】
また、斜行光遮断フィルタ35を構成するハニカム構造体の隔壁36の厚みは、10〜1000μmであることが好ましい。この厚みが過小である場合には、十分な強度を有するハニカム構造体を得ることが困難となることがある。一方、この厚みが過大である場合には、当該斜行光遮断フィルタ35におけるエキシマランプ20側の表面において、隔壁36の端面に遮られる光の量が多いため、エキシマランプ20から出射される光の利用効率が低くなり、好ましくない。
【0024】
また、斜行光遮断フィルタ35における孔36Hの内壁面に施される光反射防止処理としては、黒色無電解ニッケルメッキ(フォスブラック)処理、硬質アルマイト処理、クロメート処理、黒アルマイト処理、黒染め処理などを利用することができる。
【0025】
この斜行光遮断フィルタ35においては、孔36Hによって光路が形成され、各孔36Hにおけるエキシマランプ20側の開口から光路内に進入した光のうち、斜行光は、隔壁36の内壁面に吸収されることによって遮断される。一方、斜行光以外の光は、光路を通過して孔36Hにおけるテンプレート1側の開口から出射される。
このような斜行光遮断フィルタ35においては、孔36Hの径と孔36Hの長さ(斜行光遮断フィルタ35の厚み)とを調整することによって、上記の特定の角度θを設定することができる。
斜行光遮断フィルタ35を構成するハニカム構造体の一例における寸法を挙げると、孔36Hの径が2.5mm、孔36Hの長さが7mm、隔壁36の肉厚が0.25mmである。この斜行光遮断フィルタ35においては、入射角が17°を超える斜行光を遮断することができる。
【0026】
上記の光照射装置30によれば、被照射物であるテンプレート1とエキシマランプ20との間に、斜行光遮断フィルタ35が配置されていることにより、エキシマランプ20から出射されて斜行光遮断フィルタ35に入射された真空紫外光のうち、その入射角が特定の角度を超える斜行光が、斜行光遮断フィルタ35によって遮断されると共に、斜行光以外の光がテンプレート1のパターン面に照射される。このため、テンプレート1のパターン面に照射される真空紫外光のエネルギーが、光の相殺的干渉によって減衰することを防止または抑制することができ、その結果、テンプレート1のパターン面に対して高いエネルギーの真空紫外光を照射することができる。従って、テンプレート1のパターン面に付着したレジスト残渣などの異物を十分にかつ確実に除去することができる。
【0027】
図7は、本発明のナノインプリント装置の一例における内部の構成の概略を示す説明図である。
図7において、1はテンプレート、2は、テンプレート1を保持する保持部材、3はチャンバである。4は、被処理物である基板Wをテンプレート1の下方位置に搬送する搬送機構であって、この搬送機構4には、基板Wを保持するチャック4aが設けられている。5は、基板Wの表面に液状の光硬化型レジストよりなるインプリント材料を塗布することによってインプリント材料層を形成するインクジェット方式による塗布手段、6は、基板W上に形成されたインプリント材料層に紫外光を照射することによって当該インプリント材料層を硬化処理する硬化処理手段である。30は、テンプレート1のパターン面に真空紫外光を照射する、
図1および
図2に示す構成の光照射装置であり、この光照射装置30は、当該光照射装置30をテンプレート1のパターン面に間隙を介して配置されるよう搬送する搬送アーム(図示省略)に固定されている。
【0028】
テンプレート1を構成する材料としては、硬化処理手段6からの紫外光を透過し得るもの、例えば合成石英ガラスを用いることが好ましい。
硬化処理手段6における紫外光光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、LED、蛍光ランプなど、光硬化型レジストを構成する紫外線硬化樹脂の反応に有効な波長300〜400nmの光を主として放射する光源などを用いることができる。
【0029】
このようなナノインプリント装置においては、
図8(a)に示すように、搬送機構4におけるチャック4aに保持された基板Wを、当該搬送機構4によって塗布手段5の下方位置に移動させ、当該塗布手段5によって基板Wの表面に液状の光硬化型レジストよりなるインプリント材料を塗布することにより、基板W上にインプリント材料層P1を形成する。次いで、
図8(b)に示すように、搬送機構4によって、インプリント材料層P1が形成された基板Wをテンプレート1の下方位置に移動させて所要の位置に位置合わせする。そして、
図9(a)に示すように、テンプレート1を下方に移動させることにより、当該テンプレート1を、基板W上に形成されたインプリント材料層P1に接触させて押圧し、この状態で、硬化処理手段6によって、インプリント材料層P1にテンプレート1を介して紫外光を照射することにより、インプリント材料層P1を硬化させる。その後、
図9(b)に示すように、得られた硬化層P2からテンプレート1を離型させることにより、基板Wに対するパターン形成が達成される。
【0030】
このような基板Wに対するパターン形成が終了すると、真空紫外光照射工程を含むテンプレートの光洗浄処理が開始される。
具体的には、
図8(c)に示すように、搬送機構4によって、基板Wが、テンプレート1の下方位置からその側方位置に移動されて退避されると共に、光照射装置30がテンプレート1の下方位置に搬送され、その紫外光透過窓部材11(
図2参照)がテンプレート1のパターン面に間隙を介して対向するよう配置される。そして、光照射装置30におけるエキシマランプ20(
図2参照)を点灯させることにより、エキシマランプ20からの真空紫外光が斜行光遮断フィルタ35(
図2参照)および紫外光透過窓部材11を介してテンプレート1のパターン面に照射され、以て、テンプレート1の光洗浄処理が達成される。ここで、紫外光透過窓部材11の外面とテンプレート1のパターン面との間の離間距離は、例えば0.3〜10.0mmである。
その後、光照射装置30が搬送されてテンプレート1の下方位置から退避され、後続の基板Wに対するパターン形成が実行される。
【0031】
上記ナノインプリント装置によれば、
図1および
図2に示す光照射装置30が設けられていることにより、テンプレート1の光洗浄処理において、当該光照射装置30におけるエキシマランプから出射された真空紫外光のうち、テンプレート1に入射したときにその入射角が特定の角度を超える斜行光が、当該光照射装置30における斜行光遮断フィルタによって遮断され、斜行光以外の光がテンプレート1に照射される。このため、テンプレート1に照射される真空紫外光のエネルギーが、光の相殺的干渉によって減衰することを防止または抑制することができ、その結果、テンプレート1に対して高いエネルギーの真空紫外光を照射することができる。従って、テンプレート1に付着したレジスト残渣を十分にかつ確実に除去することができるので、その後のナノインプリント工程において、インプリント材料層にテンプレート1を押圧することにより、欠陥の少ないパターンを確実に形成することができる。
【0032】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されず、以下の[1]〜[4]に示すような種々の変更を加えることが可能である。
[1]光照射装置30においては、真空紫外光ランプとして、エキシマランプの代わりに低圧水銀ランプを用いることができる。
[2]斜行光遮断フィルタ35を構成するハニカム構造体の孔36Hの形状は、六角形に限定されず、三角形、四角形、またはその他の多角形であってもよい。
【0033】
[3]斜行光遮断フィルタ35は、入射角が特定の角度以下である光を透過すると共に、入射角が特定の角度を超える光を遮断する特性を有するものであれば、ハニカム構造体よりなるものに限定されず、例えば以下に示す構成のものを用いることができる。
【0034】
図10は、斜行光遮断フィルタの他の例における構成を示す説明用断面図である。この例の斜行光遮断フィルタ35は、全体が板状のものであって、例えば合成石英ガラスよりなる断面が例えば六角形の多数の柱状の光透過性部材38を有し、これらの光透過性部材38は、同一平面上に沿って蜂の巣状に並ぶよう配置されている。隣接する光透過性部材38の間の界面には、光反射防止膜39が形成され、光透過部材38の各々は、光反射防止膜39を介して一体的に気密に接合されている。
光反射防止膜39の厚みは、例えば1〜100μmである。
この斜行光遮断フィルタ35において、光透過部材38の各々によって光路が形成され、各光透過部材38におけるエキシマランプ側の端部から光路内に進入した光のうち、斜行光は、光反射防止膜39に吸収されることによって遮断される。一方、斜行光以外の光は、光路を通過して光透過部材38におけるテンプレート側の端部から出射される。
このような斜行光遮断フィルタ35においては、光透過部材38の幅と光透過部材38の高さ(斜行光遮断フィルタ35の厚み)とを調整することによって、上記の特定の角度θを設定することができる。
この斜行光遮断フィルタ35の一例における寸法を挙げると、光透過部材38の端面の一辺の幅が2mm、光透過部材38の高さが7mm、光反射防止膜39の厚みが1μmであるである。この斜行光遮断フィルタ35においては、入射角が17°を超える斜行光を遮断することができる。
【0035】
このような斜行光遮断フィルタ35は、例えば以下のようにして製造することができる。
先ず、棒状の合成石英ガラスを切削加工することにより、
図11(a)に示すように、断面が例えば六角形のロッド38Aを形成する。得られたロッド38Aの周面に対して、例えばクロメート処理を施すことにより、
図11(b)に示すように、ロッド38Aの周面に光反射防止膜39を形成する。その後、このロッド38Aをその長手方向に垂直な方向に切断することにより、
図11(c)に示すように、それぞれ周面に光反射防止膜39が形成された多数の光透過部材38を作製する。次いで、
図11(d)に示すように、得られた光透過部材38の各々を、同一平面上に沿って蜂の巣状に並ぶよう配置し、この状態で、光透過部材38の各々を例えば型枠などによって固定する。そして、これらの光透過部材38を、例えば800℃の温度で熱処理することによって互いに接合することにより、
図10に示す斜行光遮断フィルタ35が得られる。
【0036】
このような斜行光遮断フィルタ35を具えた光照射装置によれば、斜行光遮断フィルタ35における光反射防止膜39の厚みが極めて小さいものであるため、斜行光遮断フィルタ35におけるエキシマランプ側の表面において、光反射防止膜39によって遮られる光の量が小さく、従って、高い光の利用効率が得られる。
また、
図10に示す斜行光遮断フィルタ35は、多数の光透過部材38の各々が光反射防止膜39を介して一体的に気密に接合されてなる板状のものであるため、筐体における紫外光透過窓部材として用いることができる。このような構成によれば、筐体内に斜行光遮断フィルタ35を配置することが不要となるため、光照射装置の設計において大きい自由度が得られる。
【0037】
[4]本発明においては、入射角が特定の角度を超える斜行光を遮断する斜行光遮断フィルタの代わりに、入射角が特定の角度を超える光を減衰する斜行光減衰フィルタを用いることができる。
図12は、斜行光減衰フィルタの一例における構成を示す説明用断面図である。この例の斜行光減衰フィルタ40は、多数の開口41Kを有する複数のメッシュ41が積重されて構成され、メッシュ41の各々の表面には、光反射防止処理が施されている。
この斜行光減衰フィルタ40において、メッシュ41の各々は、その開口41Kが隣接するメッシュ41の開口41Kの直上または直下に位置するよう積重され、各メッシュ41における互いに対応する開口41Kによって、光路が形成されている。そして、最もエキシマランプ側に配置されたメッシュ41の開口41Kから光路内に進入した光のうち、積み重ねられたメッシュ41の目に対して直下方向の光は、メッシュ41を構成する線材によって遮蔽されないためにそのまま通過することができるが、光の入射角が大きくなると、当該光はメッシュ41を構成する線材によって遮られるので、上述した遮断または減衰作用があるフィルタが得られる。メッシュ41は線径、目の開きによって適宜構成することができる。この斜行光減衰フィルタ40においては、入射角が特定の角度を超える斜行光の少なくとも一部、具体的には入射角が比較的小さい斜行光が、メッシュ41の表面に吸収されることによって遮断される。
【0038】
このような斜行光減衰フィルタ40においては、メッシュ41の開口41Kの幅、メッシュ41の厚みおよびメッシュ41の数を調整することによって、上記の特定の角度θを設定することができる。
斜行光減衰フィルタ40を構成するメッシュ41の具体例を示すと、線径が0.8mm、開口41Hの幅が1.8mm、開口41Hのピッチが2.6mmであるステンレス製の平織り#10メッシュ、線径が0.5mm、開口41Hの幅が0.5mm、開口41Hのピッチが1.0mmであるステンレス製の平織り#25メッシュなどが挙げられる。
そして、平織り#10メッシュを例えば3枚積重することによって、例えば入射角が30°超でかつ50°以下の範囲の斜行光を遮断することが可能な斜行光減衰フィルタ40を構成することができる。
上記のようにメッシュ41を3枚積み重ねた場合には、斜行光以外の光は、光路を通過して最もテンプレート側に配置されたメッシュ41の開口41Kから出射される。斜行光についてメッシュ41の目の開きに対して水平、平織方向から角度成分を解析すると、角度約41度(39〜42度)の角度成分については、積み重ねられたメッシュ41を設けないときに比較して約18%しか透過せず、約82%の光の減衰効果がある。また、角度が約61度(59〜63度)の角度成分については、積み重ねられたメッシュ41を設けないときに比較して約38%しか透過せず、約62%の光の減衰効果がある。
それ以外の角度成分については遮断される。メッシュ41の積み重ねの水平方向(角度が90度)に近い角度成分については、漏れ光などが懸念される。すなわち、このような入射角が比較的大きい斜行光は、隣接するメッシュ41間の間隙を介して漏光として通過する可能性がある。然るに、入射角が比較的大きい斜行光については、筐体10(
図2参照)の紫外光透過窓部材11(
図2参照)から出射されてからテンプレートのパターン面に到達するまでの距離が極めて長く、当該斜行光の大部分が紫外光透過窓部材11とテンプレートとの間に存在する空気中の酸素によって吸収されるので、入射角が比較的大きい斜行光を遮断することができなくても、光の相殺的干渉は十分に抑制されると考えられる。一方、斜行光以外の光は、光路を通過して最もテンプレート側に配置されたメッシュ41の開口41Kから出射される。
上記のように、斜行光を遮断する遮蔽物が壁状のものでなくても、メッシュを複数枚積み重ねることによって、斜行光の減衰効果を得ることができる。
【実施例】
【0039】
〈実施例1〉
図1〜
図4および
図5に示す構成に従い、下記の仕様の光照射装置を作製した。
[筐体]
ランプ収容室の寸法が250mm×100mm×80mmであり、紫外光透過窓部材は、合成石英ガラス製で、その縦横の寸法が60mm×60mm、厚みが5mmである。
[エキシマランプ]
放電容器の材質は合成石英ガラスで、その内部にキセノンガスが封入され、発光長が50mm、発光幅が40mm、出力が15Wのものである。
また、このエキシマランプは、筐体内において、放電容器における高電圧側電極が配置された一面が光透過窓部材と対向するよう配置されており、光透過窓部材の表面における真空紫外光の放射強度が80mW/cm
2 である。
[斜行光遮断フィルタ]
斜行光遮断フィルタは、隔壁によって形成された多数の六角形の孔を有するハニカム構造体によって構成され、孔径が2.5mm、孔の長さが7mm、隔壁の肉厚が0.25mmである、この斜行光遮断フィルタは、入射角が17°を超える斜行光を遮断するものである。
【0040】
また、凹凸の幅がそれぞれ30nmで、凸部の高さが100nmのライン状パターンが形成された、パターン面におけるパターン領域の寸法が10mm×10mm、凹部における厚みが6mmの石英ガラスよりなるテンプレートを作製した。
【0041】
上記のテンプレートを用い、以下のようにしてナノインプリントによるパターン形成を行った。
基板上に、硫黄元素およびリン元素を含む物質が含有されてなる液状の光硬化型レジストよりなるインプリント材料を塗布することによって、当該基板上に厚みが100nmのインプリント材料層を形成し、このインプリント材料層に、上記のテンプレートを押圧し、この状態でインプリント材料層の硬化処理を行い、その後、得られた硬化層からテンプレートを離型した。このパターン形成操作を同一のテンプレートを用いて合計100回行った。
【0042】
そして、テンプレートのパターン面に、紫外光透過窓部材が3mmの間隙を介して対向するよう、上記の光照射装置を配置した後、光照射装置におけるエキシマランプを点灯させ、テンプレートのパターン面に対して、照度が80mW/cm
2 、照射時間が20分間の条件で、真空紫外光を照射することにより、テンプレートの洗浄処理を行った。この洗浄処理において、テンプレートのパターン面の温度は30℃であった。
そして、洗浄処理されたテンプレートを用いて上記のパターン形成操作を行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察した。そして、硬化層における単位面積(100μm
2 )当たりのパターン欠陥(パターンの凸部が欠けた欠陥)の数(以下、「パターン欠陥数」という。)を測定したところ、0個/100μm
2 であった。
【0043】
〈比較例1〉
斜行光遮断フィルタを設けずに光照射装置を作製し、この光照射装置を用いたこと以外は実施例1と同様にして、上記テンプレートを用いた100回のパターン形成操作、テンプレートの洗浄処理、および洗浄処理されたテンプレートを用いたパターン形成操作を行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察した。そして、硬化層における単位面積(100μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定したところ、35個/100μm
2 であった。
【0044】
〈比較例2〉
テンプレートの洗浄処理において、真空紫外光の照度を80mW/cm
2 から200mW/cm
2 に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、上記テンプレートを用いた100回のパターン形成操作、テンプレートの洗浄処理、および洗浄処理されたテンプレートを用いたパターン形成操作を行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察した。そして、硬化層における単位面積(100μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定したところ、30個/100μm
2 であった。
【0045】
以上の結果から明らかなように、実施例1に係る光照射装置によれば、斜行光遮断フィルタが設けられているため、テンプレートに残留したレジスト残渣が十分に除去され、その結果、洗浄処理後におけるテンプレートを使用してナノインプリントを行ったときに、パターン欠陥のないパターンが形成されることが理解される。
これに対して、比較例1に係る光照射装置においては、斜行光遮断フィルタが設けられていないため、テンプレートに残留したレジスト残渣が十分に除去されず、その結果、洗浄処理後におけるテンプレートを使用してナノインプリントを行ったときに、パターン欠陥のないパターンが得られなかった。
また、比較例2の結果より、光照射装置に斜行光遮断フィルタが設けられていない場合には、洗浄処理において、テンプレートのパターン面に大きい照度の真空紫外光を照射しても、テンプレートに残留したレジスト残渣を十分に除去することが困難であることが確認された。