(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光受信部は、光信号及び局部発振光が入力され、前記光信号と前記局部発振光とを干渉させることにより前記光信号を位相分離し、前記位相分離した光信号に対応するアナログ電気信号を出力し、
アナログ/デジタル変換部は、前記アナログ電気信号をデジタル信号に変換し、
処理部は、前記デジタル信号を用いてデジタル信号処理を行い、
前記光信号の光強度と、前記光受信部で前記アナログ電気信号が生成できるか否かと、前記光受信部から出力される前記アナログ電気信号の振幅と、を検出し、
検出結果に基づいて、前記光受信部に前記光信号が入力しているか否か、又は、局部発振光光源、前記光受信部、前記アナログ/デジタル変換部もしくは前記処理部の故障を検出する、
受信器の故障検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0013】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1にかかる受信器100について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる受信器100の構成を模式的に示すブロック図である。また、
図2は、
図1に示す受信器100の構成を詳細に示すブロック図である。受信器100は、コヒーレント光受信部1、デジタル信号処理部(Digital Signal Processor:以下、DSPと表記する)2、局部発振光光源(LO光源とも称する)3、故障検出部4及びアナログ/デジタル変換部(Analog to Digital Converting Unit:以下、A/D変換部と表記する)50を有する。
【0014】
コヒーレント光受信部1は、偏光ビームスプリッタ(Polarization Beam Splitter:以下、PBSと表記する)11及び12、90°ハイブリッド21及び22、光電変換器(O/E:Optical/Electrical converter)31〜34、トランスインピーダンスアンプ(TransImpedance Amplifier:以下、TIAと表記する)41〜44を有する。
【0015】
PBS11には、送信器(図示せず)から、DP−QPSK光信号L_Qが入力する。PBS11は、入力したDP−QPSK光信号L_Qを、直交する2つの偏波成分(水平偏波L_TE及び垂直偏波L_TM)に分離する。具体的には、PBS11は、入力したDP−QPSK光信号を、互いに直交する水平偏波L_TEと垂直偏波L_TMとに分離する。水平偏波L_TEは90°ハイブリッド21に入力し、垂直偏波L_TMは90°ハイブリッド22に入力する。
【0016】
局部発振光光源3は、PBS12に局部発振光LOを出力する。局部発振光光源3は、例えば半導体レーザを用いることができる。本実施の形態では、局部発振光光源3は、所定の周波数を有するCW(Continuous Wave)光を出力するものとする。PBS12は、局部発振光LOを、直交する2つの偏波成分(水平偏波局部発振光LO_TE及び垂直偏波局部発振光LO_TM)に分離する。水平偏波局部発振光LO_TEは90°ハイブリッド21に入力し、垂直偏波局部発振光LO_TMは90°ハイブリッド22に入力する。
【0017】
90°ハイブリッド21は、水平偏波局部発振光LO_TEを用いて、水平偏波L_TEを検波し、I(In-phase:同相)成分(以下、TE−I成分)と、I成分と位相が90°異なるQ(Quadrature:直交)成分(以下、TE−Q成分)と、を検波光として出力する。90°ハイブリッド22は、垂直偏波局部発振光LO_TMを用いて、垂直偏波L_TMを検波し、I成分(以下、TM−I成分)及びQ成分(以下、TM−Q成分)を検波光として出力する。
【0018】
光電変換器31〜34は、電源5から電源供給を受け、90°ハイブリッド21及び22が出力する4つの光信号(TE−I成分、TE−Q成分、TM−I成分及びTM−Q成分)のそれぞれを光電変換する。そして、光電変換器31〜34は、光電変換により生成した差動アナログ電気信号を、それぞれTIA41〜44に出力する。具体的には、光電変換器31は、TE−I成分を光電変換し、生成した差動アナログ電気信号をTIA41に出力する。光電変換器32は、TE−Q成分を光電変換し、生成した差動アナログ電気信号をTIA42に出力する。光電変換器33は、TM−I成分を光電変換し、生成した差動アナログ電気信号をTIA43に出力する。光電変換器34は、TM−Q成分を光電変換し、生成した差動アナログ電気信号をTIA44に出力する。光電変換器31〜34は、例えば電源5から電源供給を受けるフォトダイオードにより構成される。すなわち、光電変換器31〜34は、光信号が入力することにより、電流が流れる構造を有する。なお、図面の簡略化のため、
図1では電源5を省略している。
【0019】
TIA41〜44は、光電変換器31〜34が出力する差動アナログ電気信号を増幅し、増幅した差動アナログ電気信号をそれぞれA/D変換部50のA/D変換器51〜54に出力する。
【0020】
A/D変換器51〜54は、入力される差動アナログ電気信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をDSP2に出力する。DSP2は、入力するデジタル信号を処理し、外部にTE−I成分、TE−Q成分、TM−I成分及びTM−Q成分を示す復調信号を出力する。
【0021】
故障検出部4は、光信号モニタ部61、局部発振光光源制御部(LO光源制御部とも称する)62、直流電流モニタ部63、AC振幅モニタ部64及び判定部65を有する。
【0022】
光信号モニタ部61は、入力するDP−QPSK光信号L_Qの光強度を検出する。光信号モニタ部61での光信号モニタ値M
sigは、光信号モニタ部定数aを正の値、P
sigをDP−QPSK光信号の光強度として、以下の式(1)で表される。
【数1】
そして、光信号モニタ部61は、光信号モニタ値M
sigを示すモニタ信号SIG1を判定部65に出力する。
【0023】
局部発振光光源制御部62は、判定部65からの制御信号CON及び直流電流モニタ部63からのモニタ信号SIG2に応じて、局部発振光光源3の局部発振光LOの出力動作を制御する。
【0024】
直流電流モニタ部63は、光電変換器31〜34が光信号をアナログ電気信号に変換する際に発生させる電流をモニタする。これにより、直流電流モニタ部63は、光電変換器31〜34が光信号をアナログ電気信号に変換する際に発生する電流信号の大きさを示す直流電流モニタ値M
DCを検出する。直流電流モニタ値M
DCは、直流電流モニタ部定数cを正の値、P
LOを局部発振光LOの光強度として、以下の式(2)で表される。
【数2】
【0025】
そして、直流電流モニタ部63は、直流電流モニタ値M
DCを示すモニタ信号SIG2を判定部65に出力する。直流電流モニタ部63は、例えば、コヒーレント光受信部1に正常にDP−QPSK光信号L_Qが入力している状態で、光電変換器31〜34が電流を出力していない場合、すなわち正常に光電変換動作が行われていない場合には、モニタ信号SIG2として「HIGH」を出力する。一方、正常に光電変換動作が行われている場合には、直流電流モニタ部63は、モニタ信号SIG2として「LOW」を出力する。
【0026】
AC振幅モニタ部64は、TIA41〜44のAC電圧振幅をモニタする。AC振幅モニタ部64でのAC電圧振幅モニタ値M
ACは、AC振幅モニタ部定数bを正の値として、以下の式(3)で表される。
【数3】
【0027】
そして、AC振幅モニタ部64は、AC電圧振幅モニタ値M
ACを示すモニタ信号SIG3を判定部65に出力する。AC振幅モニタ部64は、例えば、コヒーレント光受信部1に正常にDP−QPSK光信号L_Qが入力し、かつ、光電変換器31〜34にて正常に光電変換動作が行われている状態で、A/D変換器51〜54の出力での振幅が0又は所定の値より小さい場合には、モニタ信号SIG3として「HIGH」を出力する。一方、A/D変換器51〜54の出力での振幅が所定の値以上で正常である場合には、AC振幅モニタ部64は、モニタ信号SIG3として「LOW」を出力する。
【0028】
判定部65は、制御信号CONを局部発振光光源制御部62に出力する。また、判定部65は、モニタ信号SIG1〜SIG3に応じて、故障発生位置を判定する。判定部65は、例えば、モニタ信号SIG1のレベルに応じて、DP−QPSK光信号L_Qの光強度を判定する。判定部65は、例えば、モニタ信号SIG2が「HIGH」である場合には異常を検出し、「LOW」である場合には異常なし判定する。判定部65は、例えば、モニタ信号SIG3が「HIGH」である場合には異常を検出し、「LOW」である場合には異常なしと判定する。換言すれば、判定部65は、モニタ信号SIG1〜SIG3のレベルと所定の値との大小関係を検出することにより、異常の有無を検出することができる。
【0029】
続いて、受信器100の故障検出動作について説明する。デジタルコヒーレント通信では、送信器(不図示)が正常にDP−QPSK光信号L_Qを出力している場合でも、受信器100を含む通信システムの故障により、受信器100から復調信号が正常に出力されない場合がある。このような場合に故障検出動作を行うことで、受信器100の内部及び外部における故障原因を特定することが可能となる。
【0030】
図3は、実施の形態1にかかる受信器100の故障検出動作を示すフローチャートである。また、
図4は、故障個所を表示した受信器100のブロック図である。以下では、上述の式(1)〜(3)で示す光信号モニタ部定数a、AC振幅モニタ部定数b、直流電流モニタ部定数cが予め把握できているものとする。すなわち、故障発生が無い正常時における光信号モニタ値M
sig、直流電流モニタ値M
DC、AC電圧振幅モニタ値M
ACが予め判明しているものとする。
【0031】
まず、故障検出動作を開始するにあたり、受信器100にDP−QPSK光信号L_Qを入力する(
図3のステップS1)。
【0032】
この状態で、光信号モニタ部61が正常にDP−QPSK光信号L_Qの光強度を検出できるか否かを判定する(
図3のステップS2)。具体的には、判定部65は、光信号モニタ部61から出力されるモニタ信号SIG1の信号レベルを所定値と比較する。
【0033】
モニタ信号SIG1の信号レベルが所定値以下であれば、判定部65は、DP−QPSK光信号L_Qを出力する送信器(図示せず)から光信号モニタ部61までの間(
図4の故障箇所A)に断線等の故障があるものと判定する(
図3のMODE1)。そして、判定部65は判定結果を出力する。
【0034】
モニタ信号SIG1の信号レベルが所定値よりも大きければ、判定部65は、光信号モニタ部61が正常にDP−QPSK光信号L_Qの光強度を検出していると判定する。そして、判定部65は、制御信号CONにより、局部発振光光源3からの局部発振光LOの出力を停止させる(
図3のステップS3)。
【0035】
この状態で、直流電流モニタ部63が正常に直流電流値を検出できるか否かを判定する(
図3のステップS4)。具体的には、判定部65は、直流電流モニタ部63から出力されるモニタ信号SIG2の信号レベルを所定値と比較する。局部発振光LOはオフであるので、DP−QPSK光信号L_Qの一部が、90°ハイブリッド21及び22を介して光電変換器31〜34に入力される。従って、受信器100が正常であれば、入力されるDP−QPSK光信号L_Qに応じた電流が光電変換器31〜34に流れる。
【0036】
モニタ信号SIG2の信号レベルが所定値以下であれば、判定部65は、DP−QPSK光信号L_Qが光信号モニタ部61へ分岐される分岐部から光電変換器31〜34までの間(
図4の故障箇所B)に断線等の故障があるものと判定する(
図3のMODE2)。そして、判定部65は判定結果を出力する。
【0037】
モニタ信号SIG2の信号レベルが所定値よりも大きければ、判定部65は、正常に光電変換器31〜34にDP−QPSK光信号L_Qが入力されていると判定する。そして、判定部65は、制御信号CONにより、局部発振光光源3からの局部発振光LOの出力を再開させる(
図3のステップS5)。
【0038】
この状態で、直流電流モニタ部63が正常に直流電流値を検出できるか否かを、再度判定する(
図3のステップS6)。具体的には、判定部65は、直流電流モニタ部63から出力されるモニタ信号SIG2の信号レベルを所定値と比較する。局部発振光LOはオンであるので、受信器100が正常であれば、光電変換器31〜34には、それぞれTE_I成分、TE_Q成分、TM_I成分及びTM_Q成分が入力される。
【0039】
モニタ信号SIG2の信号レベルが所定値以下であれば、判定部65は、局部発振光光源3から光電変換器31〜34までの間(
図4の故障箇所C)に断線等の故障があるものと判定する(
図3のMODE3)。そして、判定部65は判定結果を出力する。
【0040】
モニタ信号SIG2の信号レベルが所定値よりも大きければ、判定部65は、光電変換器31〜34には、それぞれ正常にTE_I成分、TE_Q成分、TM_I成分及びTM_Q成分が入力されていると判定する。
【0041】
次に、TIA41〜44の出力におけるAC振幅を正常に検出できるか否かを判定する(
図3のステップS7)。具体的には、判定部65は、AC振幅モニタ部64から出力されるモニタ信号SIG3の信号レベルを所定値と比較する。局部発振光LOはオンであるので、TE_I成分、TE_Q成分、TM_I成分及びTM_Q成分に応じて光電変換器31〜34のそれぞれから出力される電圧信号がTIA41〜44に入力される。従って、受信器100が正常であれば、TIA41〜44では、入力される電圧信号が増幅される。
【0042】
モニタ信号SIG3の信号レベルが所定値以下であれば、判定部65は、DP−QPSK光信号L_Qと局部発振光LOとの間に波長ズレが有るものと判定する(
図3のMODE4)。そして、判定部65は判定結果を出力する。
【0043】
モニタ信号SIG3の信号レベルが所定値よりも大きければ、判定部65は、TAI41〜44の出力からA/D変換器51〜54までの間、又はDSP2(
図4の故障箇所D)に断線等の故障が有るものと判定する(
図3のMODE5)。そして、判定部65は判定結果を出力する。
【0044】
以上のように、受信器100は、受信器100の内部及び外部において、故障の有無を判断できる。更に、受信器100は、受信器100の内部及び外部において、故障原因を特定することができる。
【0045】
また、受信器100のようにコヒーレント受信を行う場合には、A/D変換部50への入力には、受信感度が最良になるための最適なAC振幅が存在する。AC振幅、DP−QPSK光信号の光強度及び局部発振光LOの光強度の関係は、上記の式(1)〜(3)にて示した通りである。
【0046】
受信器100を組み込んだトランシーバの出荷直後では、最大の受信感度が得られるよう、DP−QPSK光信号の光強度及び局部発振光LOの光強度は最適に設定されている。しかし、長期間トランシーバが使用された場合、局部発振光光源3の劣化やコヒーレント光受信部1内の光伝搬部(例えば90°ハイブリッド)の劣化が起こることで、強度比がずれてしまう現象が生じ得る。ここで、局部発振光光源3の劣化とは、局部発振光光源3の出力強度設定値に対して実際のコヒーレント光受信部へ入力される局部発振光LOの光強度が低下することを指す。また、90°ハイブリッドの劣化とは、90°ハイブリッドの光伝搬損失の増大を指す。これらの劣化を補うには、局部発振光光源3の出力強度設定値を適切な値にまで上げてやればよい。例えば、光信号モニタ部61と直流電流モニタ部63とを用いて、A/D変換部50に対してAC振幅が最適になる局部発振光光源3の光強度が求まる。そして、求めた光強度を、、局部発振光光源3の出力強度設定値として設定すればよい。
【0047】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、受信器100に入力される光信号はDP−QPSK光信号に限らず、他の変調方式により変調された光信号が入力されてもよい。また、2偏波多重に限らず、3偏波以上の多重信号の受信に応用することも可能である。
【0048】
上述の実施の形態においては、光電変換器が差動アナログ信号を出力する例について示したが、必ずしも差動構成である必要はない。
【0049】
また、コヒーレント光受信部1の構成は例示に過ぎず、DP−QPSK信号から2偏波のそれぞれについてI成分及びQ成分を分離できるならば、光電変換部の電流値及び増幅器のAC振幅をモニタできる限り、他の構成とすることができる。