(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施の形態)
(構成)
図1は、本実施形態に係る走行支援装置が適用されるシステムの構成を示す図である。
図中、符号1は路側インフラ設備である。路側インフラ設備1は、信号機2と、信号制御機3と、光ビーコン通信機4A,4Bと、車両感知器5A,5Bと、情報提供判定装置6とを備える。
【0009】
信号制御機3は、信号機2の灯色状態を制御すると共に、信号機2の情報(灯色状態、灯色残秒時間等)を情報提供判定装置6に出力する。
光ビーコン通信機4Aは、信号交差点間の1区画において、下流側の信号交差点から離れた上流位置の路上に設置する。ここでは、光ビーコン通信機4Aを、上記1区画における上流側の信号交差点の流出部に設置した場合について示している。また、光ビーコン通信機4Bは、光ビーコン通信機4Aと同様に下流側の信号交差点から離れた上流位置で、且つ光ビーコン通信機4Aの設置位置よりも下流位置の路上に設置する。
【0010】
これら光ビーコン通信機4A,4Bは、車両Caが搭載する車載器10と通信可能となっている。車載器10は、光ビーコン通信機4A,4Bに対し車両Caを識別するための識別情報(車両ID)を含むアップリンク情報を送信する。光ビーコン通信機4A,4Bは、車載器10が送信するアップリンク情報を受信すると共に、情報提供判定装置6で生成した走行支援情報を、車載器10に対してダウンリンク情報として送信する。情報提供判定装置6で生成する走行支援情報については後で詳述する。
【0011】
車両感知器5Aは、光ビーコン通信機4Aと共架もしくは並設し、自身の設置位置での交通流を感知する。また、車両感知器5Bは、光ビーコン通信機4Bと共架もしくは並設し、自身の設置位置での交通流を感知する。
車両感知器5A,5Bは、超音波式や光学式等の車両感知器であり、
図2(a)及び(b)に示すように路面に対して電波や光を送信し、その反射波を受信するまでの時間を計測する。そして、
図2(a)に示すように計測地点に車両が存在する場合と、
図2(b)に示すように計測地点に車両が存在しない場合とで、反射波を受信するまでの時間に違いがあることを利用して、車両の有無を判定する。この車両感知器5A,5Bは、自身の計測地点を通過する車両の車頭時間、速度等の感知データを取得可能となっている。
【0012】
図3は、車載器10の構成を示すブロック図である。
この
図3に示すように、車載器10は、ビーコンアンテナ11と、カーナビゲーションシステム12とを備える。
ビーコンアンテナ11は、光ビーコン通信機4A及び4Bと光波による無線通信を行い、走行支援情報を含む情報を受信する。そして、ビーコンアンテナ11は、受信した情報をカーナビゲーションシステム12に出力する。
【0013】
カーナビゲーションシステム12は、ナビゲーションECU21と、ディスプレイ22と、スピーカ23とを備える。ナビゲーションECU21は、制御プログラムに従って動作するマイクロコンピュータを中心として構成した電子制御ユニットである。
ナビゲーションECU21は、光通信部24と、CAN通信部25と、処理部26と、HMI制御部27とを備える。
光通信部24は、ビーコンアンテナ11が受信した光ビーコン通信機4A,4Bからの情報を入力し、処理部26に出力する。
【0014】
CAN通信部25は、CANで通信される自車両の車速情報、ウィンカー情報(方向指示器の作動状態)、アクセル開度情報、ブレーキON/OFF情報などの車両Caの走行状態を入力し、処理部26に出力する。
処理部26は、光通信部24やCAN通信部25から情報を収集する。そして、処理部26は、これらの収集した情報に基づいて車両Caの走行を支援する走行支援処理を実行する。例えば、処理部26は、走行支援処理として光通信部24から入力した走行支援情報をHMI制御部27へ伝達する処理を行う。
HMI制御部27は、処理部26から入力した走行支援情報を、ディスプレイ22に出力すると共に、予め用意してある音声情報をスピーカ23に出力する。このようにして、乗員に走行支援情報を提示する。
【0015】
次に、情報提供判定装置6で実行する、走行支援情報の生成処理を含む情報提供判定処理について説明する。
図4は、情報提供判定装置6で実行する情報提供判定処理手順を示すフローチャートである。
先ずステップS1で、情報提供判定装置6は、光ビーコン通信機4Aで情報提供対象の車両Ca(以下、単に対象車両Caともいう)の車載器10からのアップリンク情報を受信したか否かを判定する。そして、アップリンク情報を受信していない場合にはそのまま待機し、アップリンク情報を受信するとステップS2に移行する。
【0016】
ステップS2では、情報提供判定装置6は、光ビーコン通信機4Aで受信したアップリンク情報を取得し、これをメモリ等に記憶してからステップS3に移行する。上記ステップS2では、例えば車両IDをアップリンク情報の受信時刻と対応付けて記憶する。
ステップS3では、情報提供判定装置6は、上記アップリンク情報を送信した対象車両Caが交通流の先頭を走行しているか否かを判定する。ここでは、車両感知器5Aによって対象車両Caを感知する前に、車両感知器5Aによって車頭時間が所定時間以下となる車両を感知している場合、対象車両Caは交通流の先頭を走行していないと判断する。
【0017】
そして、このステップS3で、対象車両Caが交通流の先頭を走行していないと判断した場合にはステップS4に移行し、対象車両Caが交通流の先頭を走行していると判断した場合には、後述するステップS5に移行する。
ステップS4では、情報提供判定装置6は、走行支援情報として、車群を形成するための運転操作を促す車群形成要求情報を生成する。この車群形成要求情報は、交差点に車両がランダムに到着する通常の車群(一様ではない流れ)から、交差点に車両が一様に到着する理想的な車群(一様な流れ)を形成するためのものである。
【0018】
車群形成要求情報は、このステップS4では、先行車両との車間距離を保持して追従走行することを指示する情報(車間距離保持情報)とする。そして、これを光ビーコン通信機4Aからのダウンリンク情報として設定し、後述するステップS6に移行する。これにより、光ビーコン通信機4Aは、対象車両Caの車載器10に対して上記車間距離保持情報を配信する。
【0019】
ステップS5では、情報提供判定装置6は、車群形成要求情報として、対象車両Caの推奨速度に関する情報(推奨速度情報)を生成する。本実施形態では、対象車両Caの走行路線の規制速度Vrに予め設定した所定速度α(数km/h〜十数km/h)を加算した値を、推奨速度Vpとする(Vp=Vr+α)。この推奨速度Vpの値は、予め格納しておく。
【0020】
そして、このステップS5では、情報提供判定装置6は、この推奨速度情報を光ビーコン通信機4Aからのダウンリンク情報として設定する。これにより、光ビーコン通信機4Aは、対象車両Caの車載器10に対して上記推奨速度情報を配信する。
次にステップS6では、情報提供判定装置6は、光ビーコン通信機4Bで対象車両Caの車載器10からのアップリンク情報を受信したか否かを判定する。そして、アップリンク情報を受信していない場合にはそのまま待機し、アップリンク情報を受信するとステップS7に移行する。
【0021】
ステップS7では、情報提供判定装置6は、光ビーコン通信機4Bで受信したアップリンク情報を取得し、これをメモリ等に記憶してからステップS8に移行する。上記ステップS7でも、上述したステップS2の処理と同様に、車両IDをアップリンク情報の受信時刻と対応付けて記憶する。
ステップS8では、情報提供判定装置6は、前記ステップS2で記憶したアップリンク情報と、前記ステップS7で記憶したアップリンク情報とに基づいて、対象車両Caの旅行時間Taを算出する。具体的には、アップリンク情報に含まれる車両IDと、当該車両IDに対応付けて記憶したアップリンク情報の受信時刻と基づいて、対象車両Caが光ビーコン通信機4Aの設置地点を通過してから光ビーコン通信機4Bの設置地点を通過するまでの時間を算出し、これを2地点間の旅行時間Taとする。
【0022】
次にステップS9では、情報提供判定装置6は、前記ステップS8で算出した旅行時間Taが許容範囲内であるか否かを判定する。ここでは、旅行時間Taが、対象車両Caが上記2地点間を予め規定した速度よりも低い速度で走行している(推奨速度Vp前後で走行している)と判断できる時間であるか否かを判定する。
なお、本実施形態では、対象車両Caの旅行時間Taが許容範囲内であるか否かを判定する場合について説明したが、対象車両Caの旅行速度が予め規定した速度よりも低いか否かを直接判定するようにしてもよい。この場合、旅行時間Taと、光ビーコン通信機4Aの設置地点から光ビーコン通信機4Bの設置地点までの距離とに基づいて、対象車両Caの旅行速度を算出する。
【0023】
そして、対象車両Caが予め規定した速度よりも低い速度で走行していると判断した場合には、旅行時間Taが許容範囲内であるとしてステップS10に移行する。一方、対象車両Caが予め規定した速度以上で走行してい
ると判断した場合には、旅行時間Taが許容範囲外であるとして、後述するステップS13に移行する。
ステップS10では、情報提供判定装置6は、走行支援情報として、車群を維持するための運転操作を促す情報(車群維持情報)を生成する。ここで、車群維持情報は、例えば現在車速(又は推奨車速Vp)を維持するための情報や、先行車両が存在する場合には先行車両との間の車間距離を保持するための情報、車群形成要求に従って走行したことで車群形成に成功したことを示す情報等である。
【0024】
そして、この車群維持情報を光ビーコン通信機4Bからのダウンリンク情報として設定し、ステップS11に移行する。これにより、光ビーコン通信機4Bは、対象車両Caの車載器10に対して上記車群維持情報を配信する。
ステップS11では、情報提供判定装置6は、車両感知器5Bの感知データに基づいて、対象車両Caを先頭とする車群を検出する。ここでは、車両感知器5Bで検出した車頭時間が予め設定した閾値時間(例えば、7秒)未満であるとき、後続車両は先行車両と同一の車群を形成する車両であると判断する。そして、検出した車群の情報として、車群の平均速度、車群構成台数、車群長さ(先頭車両から最後尾車両までの長さ)等を検出する。
【0025】
次にステップS12では、情報提供判定装置6は、前記ステップS10で検出した車群の情報をもとに、対象車両Caの前方にある信号機2(前方信号機)の現示を制御する信号制御を行い、情報提供判定処理を終了する。ここで、信号制御は、
図5に示すように、車群を形成する先頭車両Caで信号機2の青信号を開始し、前記ステップS
10で検出した車群を形成する最後尾車両Cbで信号機2の青信号を終了する処理である。
【0026】
ステップS13では、情報提供判定装置6は、車群形成要求情報を生成する。ここで、車群形成要求情報は、ステップS3〜S5で説明したように、対象車両Caが交通流の先頭にいる場合には推奨速度情報であり、対象車両Caが交通流の先頭にいない場合には車間距離保持情報である。そして、これを光ビーコン通信機4Bからのダウンリンク情報として設定し、情報提供判定処理を終了する。これにより、光ビーコン通信機4Bは、車載器10に対して上記推奨速度情報を配信する。
【0027】
(動作)
次に、第1の実施形態の動作について説明する。
先ず、
図6に示すように、対象車両Caを先頭とする交通流が、光ビーコン通信機4Aを通過する場合について説明する。この交通流は、
図6に示す時点で一様な車群を形成していない、まばらな車群であるものとする。また、交通流を形成する車両のうち、光ビーコン通信機4Aと通信可能な路車間通信機能を有する車載器10を搭載した車両は、先頭の対象車両Caの1台のみであるものとする。
対象車両Caが光ビーコン通信機4Aの通信エリア内に到達すると、対象車両Caは車両IDを含むアップリンク情報を光ビーコン通信機4Aに送信する。光ビーコン通信機4Aがこれを受信すると(
図4のステップS1でYes)、情報提供判定装置6は、光ビーコン通信機4Aが受信したアップリンク情報を取得する(ステップS2)。
【0028】
また、対象車両Caが光ビーコン通信機4Aにアップリンク情報を送信するのとほぼ同時に、車両管理機5Aは対象車両Caを検出する。対象車両Caは交通流の先頭にいるため、車両感知器5Aは、対象車両Caを検出する前に他車両を検出していない。
したがって、情報提供判定装置6は、この車両感知器5Aの感知データをもとに、対象車両Caが交通流の先頭にいると判断する(ステップS3でYes)。すると、情報提供判定装置6は、車群の形成を促す情報として対象車両Caの推奨速度Vpに関する推奨速度情報を生成する(ステップS5)。そして、光ビーコン通信機4Aは、この推奨速度情報を対象車両Caに対して送信する。
【0029】
対象車両Caの車載器10が上記推奨速度情報を受信すると、車載器10は、これをディスプレイ22やスピーカ23を用いて運転者に提示する。例えば、
図6に示すように、推奨速度情報を速度メータの表示を用いて提示する。これにより、運転者は、車群を形成するためには速度調整が必要であることを認識することができる。
推奨速度情報を受けて、運転者が推奨速度Vp前後で走行するべく速度調整を行うと、先頭にいる対象車両Caの走行速度に合わせて後続車両も速度調整を行う。これにより、対象車両Caを先頭車両とする一様な車群が形成される。
【0030】
そして、
図7に示すように、そのまま対象車両Caが光ビーコン通信機4Bの通信エリア内に到達すると、対象車両Caは車両IDを含むアップリンク情報を光ビーコン通信機4Bに送信する。光ビーコン通信機4Bがこれを受信すると(ステップS6でYes)、情報提供判定装置6は、光ビーコン通信機4Bが受信したアップリンク情報を取得する(ステップS7)。
【0031】
すると、情報提供判定装置6は、光ビーコン通信機4A及び4Bを介してそれぞれ取得したアップリンク情報をもとに、対象車両Caが光ビーコン通信機4Aを通過してから光ビーコン通信機4Bを到達するまでの旅行時間Taを算出する(ステップS8)。このとき、対象車両Caは、推奨速度Vp前後で光ビーコン通信機4Aの設置位置から光ビーコン通信機4Bの設置位置までの間を走行しているため、旅行時間Taは許容範囲内となる(ステップS9でYes)。
したがって、情報提供判定装置6は、車群を維持するための情報として、対象車両Caの現在速度を保持するための情報や車群形成に成功したことを示す情報を生成する(ステップS10)。そして、光ビーコン通信機4Bは、この車群維持情報を対象車両Caに対して送信する。
【0032】
対象車両Caの車載器10が上記車群維持情報を受信すると、車載器10は、これをディスプレイ22やスピーカ23を用いて運転者に提示する。例えば、
図7に示すように、現在車速を保持するための情報を速度メータの表示を用いて提示する。これにより、運転者は、自車両の速度調整により車群形成を実現することができたことを認識することができる。また、車群を維持するためにダメ押しで情報提供を行うことができるので、前方信号機手前で車群が乱れるのを抑制することができる。
【0033】
対象車両Caを先頭とする車群が車両感知器5Bの真下を通過すると、車両感知器5Bは当該車群を形成する各車両を検出する。すなわち、対象車両Caが光ビーコン通信機4Bにアップリンク情報を送信するのとほぼ同時に、車両感知器5Bは、車群の先頭車両である対象車両Caを検出する。そして、その後は、車頭時間が予め設定した閾値時間(例えば、7秒)未満となる複数(
図7の例では7台)の車両を検出する。車両感知器4Bは、車群の最後尾車両Cbを検出した後は、上記閾値時間以上、車両を検出しない。
【0034】
そこで、情報提供判定装置6は、この車両感知器5Bの感知データをもとに、
図7の二点鎖線に示す対象車両Caを先頭車両とする車群を検出し、当該車群の平均速度、車群構成台数、車群長さ等の車群情報を検出する(ステップS11)。そして、情報提供判定装置6は、検出した車群情報をもとに、当該車群が前方信号機2を青信号で通過できるよう信号現示を制御する(ステップS12)。具体的には、先頭車両Caの前方信号機2への到着に合わせて青信号を開始し、最後尾車両Cbの前方信号機2の通過に合わせて青信号を終了する。
【0035】
このように、信号交差点から離れた上流位置で、対象車両Caに対して車群の形成を促す情報を提供し、その車群形成要求情報に従って走行した対象車両Caについては、前方信号機2を停止せずに通過できるというインセンティブ(走行特典)を与える。したがって、車群形成要求を受けた運転者の車群形成に協力する行為を助長することができる。
車群の到着/通過に合わせた信号制御を実現するためには、車群を適切に検出する必要がある。
図8(a)に示すように、まばらな車群を形成して複数台の車両が走行している場合には、車群検出を適切に行うことができず信号制御を適用することができない。
【0036】
これに対して本実施形態では、
図8(b)に示すように、交通流の先頭にいる対象車両Caに対して、車群形成要求として対象車両Caの推奨速度Vpに関する情報を提示する。このとき、車群形成要求を受けた運転者が速度調整を行って、対象車両Caを推奨速度Vpで走行すると、この対象車両Caがペースメーカーとなって、
図8(c)に示すように一様な車群を形成する。
【0037】
これにより、
図8(d)に示すように、車群を形成する先頭車両Caと最後尾車両Cbとを適切に検出することができ、二点鎖線で示す車群を適切に検出することができる。そのため、検出した車群情報をもとに、車群の到着/通過に合わせた信号制御を実現することができる。すなわち、本システムを適用することにより、交差点に車両がランダムに到着する通常の車群を、次の交差点では、交差点に車両が一定間隔で到着する一様な車群とすることができる。このように、路車協調により車群を形成することで、適切な信号制御が可能となる。その結果、円滑な車群走行を実現することができ、渋滞の解消が期待できる。
【0038】
次に、車載器10を搭載した対象車両Caが交通流の先頭にいない状態(交通流の中にいる状態)で、当該交通流が光ビーコン通信機4Aを通過する場合について説明する。
この場合、車両感知器5Aは、対象車両Caを検出する前に他車両を検出する。そのため、情報提供判定装置6は、この車両感知器5Aの感知データをもとに、対象車両Caが交通流の先頭にいないと判断する(ステップS3でNo)。すると、情報提供判定装置6は、車群の形成を促す情報として先行車両との間の車間距離を保持するための情報を生成する(ステップS4)。そして、光ビーコン通信機4Aは、この車間距離保持情報を対象車両Caに対して送信する。
【0039】
対象車両Caの車載器10が上記車間距離保持情報を受信すると、車載器10は、これをディスプレイ22やスピーカ23を用いて運転者に提示する。これにより、運転者は、車群を形成するためには先行車両との間の車間距離を保持する必要があることを認識することができる。
車間距離保持情報を受けて、対象車両Caの運転者が、先行車両との間の車間距離を保持するべく速度調整を行うと、対象車両Caに合わせて後続車両も速度調整を行う。これにより、
図9に示すように、少なくとも対象車両Caが走行する車線では、対象車両Caを含む一様な車群が形成される。
【0040】
そして、そのまま対象車両Caが光ビーコン通信機4Bの通信エリア内に到達すると、対象車両Caはアップリンク情報を光ビーコン通信機4Bに送信し、情報提供判定装置6は、光ビーコン通信機4Bを介して当該アップリンク情報を取得する(ステップS7)。
すると、情報提供判定装置6は、光ビーコン通信機4A及び4Bを介してそれぞれ取得したアップリンク情報をもとに、対象車両Caの旅行時間Taを算出する(ステップS8)。このとき、対象車両Caの先行車両が推奨速度Vp前後で走行している場合には、その先行車両と一定の車間距離を保って走行している対象車両Caの走行速度も推奨速度Vp前後となる。したがって、この場合には、対象車両Caの旅行時間Taは許容範囲内となる(ステップS9でYes)。
【0041】
そのため、情報提供判定装置6は、車群を維持するための情報として、そのまま先行車両との車間距離を保持するための情報を生成する(ステップS10)。そして、光ビーコン通信機4Bは、この車群維持情報を対象車両Caに対して送信する。対象車両Caの車載器10が上記車群維持情報を受信すると、車載器10は、この車群維持情報をディスプレイ22やスピーカ23を用いて運転者に提示する。例えば、
図9に示すように、現在車速を保持するための情報を速度メータの表示を用いて提示する。
【0042】
次に、情報提供判定装置6は、車両感知器5Bの感知データをもとに、
図9の二点鎖線に示す対象車両Caを先頭車両とする車群を検出し、当該車群の平均速度、車群構成台数、車群長さ等の車群情報を検出する(ステップS11)。そして、情報提供判定装置6は、検出した車群情報をもとに、当該車群が前方信号機2を青信号で通過できるよう信号現示を制御する(ステップS12)。
【0043】
このように、対象車両Caが交通流の中にいる場合には、車群の形成を促す情報として先行車両との間の車間距離を保持する情報を提示することで、一様な車群の形成が期待できる。そのため、車群を適切に検出することができ、車群の到着/通過に合わせた信号制御を実現することができる。このとき、対象車両Caを先頭車両として車群に対して信号制御を適用するので、車群形成に協力した対象車両Caは、前方信号機で停止せずに確実に通過することができる。
【0044】
次に、車載器10を搭載した複数台(ここでは3台)の対象車両Ca1〜Ca3が交通流の中にいる状態で、当該交通流が光ビーコン通信機4Aを通過する場合について説明する。ここでは、対象車両Ca1〜Ca3は、何れも交通流の先頭にはいないものとし、交通流の先頭側から対象車両Ca1、対象車両Ca2、対象車両Ca3の順に配置しているものとする。また、対象車両Ca3は交通流の最後尾車両であるものとする。
【0045】
この場合、情報提供判定装置6は、車両感知器5Aの感知データをもとに、対象車両Ca1〜Ca3がそれぞれ交通流の先頭にいないと判断する(ステップS3でNo)。そのため、情報提供判定装置6は、車群の形成を促すための情報として車間距離保持情報を生成し(ステップS4)、光ビーコン通信機4Aは、これを対象車両Ca1〜Ca3の各車載器10に対するダウンリンク情報として送信する。
【0046】
対象車両Ca1〜Ca3の車載器10が上記車間距離保持情報をそれぞれ受信すると、各車載器10は、この車間距離保持情報をディスプレイ22やスピーカ23を用いてそれぞれの運転者に提示する。このとき、車間距離保持情報を受けて、対象車両Ca2と対象車両Ca3の運転者のみが、先行車両との間の車間距離を保持するべく速度調整すると、
図10に示すように、対象車両Ca2と対象車両Ca3とを含む一様な車群が形成される。
【0047】
そのまま対象車両Ca1が光ビーコン通信機4Bの通信エリア内に到達すると、情報提供判定装置6は、光ビーコン通信機4A及び4Bを介してそれぞれ取得した対象車両Ca1からのアップリンク情報をもとに、対象車両Ca1の旅行時間Taを算出する(ステップS8)。このとき、対象車両Ca1が推奨速度Vpを比較的大きく上回る速度で走行している場合には、対象車両Ca1の旅行時間Taは許容範囲外となる(ステップS9でNo)。
【0048】
そのため、情報提供判定装置6は、車群の形成を促すための情報として車間距離保持情報を生成する(ステップS13)。そして、光ビーコン通信機4Bは、この車間距離保持情報を対象車両Ca1に対して送信する。例えば、
図10に示すように、車間距離を保持するために速度調整が必要であることを速度メータの表示を用いて提示する。すなわち、対象車両Ca1の運転者に対して、再度、車群形成要求を送信する。
このように、光ビーコン通信機4Aから対象車両Ca1へ車群形成要求を送信しているにもかかわらず、運転者がそれに従わず車群形成を実現できていない場合には、再度、対象車両Ca1に対して車群形成要求を送信することができる。
【0049】
その後、対象車両Ca2が光ビーコン通信機4Bの通信エリア内に到達すると、情報提供判定装置6は、同様に対象車両Ca2の旅行時間Taを算出する(ステップS8)。このとき、対象車両Ca2が推奨速度Vp前後で走行しており、対象車両Ca2の旅行時間Taが許容範囲内である場合には(ステップS9でYes)、対象車両Ca2に対して、車群形成に成功したことを示す情報を含む車群維持情報を提供する。例えば、
図10に示すように、現在車速を保持するための情報を速度メータの表示を用いて提示する。これは、対象車両Ca3についても同様である。
【0050】
そのため、この場合には、情報提供判定装置6は、車両感知器5Bの感知データをもとに、
図10の二点鎖線に示す対象車両Ca2を先頭車両とする車群を検出し、当該車群の平均速度、車群構成台数、車群長さ等の車群情報を検出する(ステップS11)。このように、車群の中に旅行時間Taが許容範囲内となる対象車両が複数存在する場合には、より先頭側にいる対象車両(ここでは対象車両Ca2)を先頭とする車群を検出する。そして、情報提供判定装置6は、検出した車群情報をもとに、当該車群が前方信号機2を青信号で通過できるよう信号現示を制御する(ステップS12)。
このように、交通流の中に対象車両が複数台存在する場合には、全ての対象車両に対して光ビーコン通信機4Aから車群形成要求情報を送信する。そして、車群形成要求情報を送信した全ての対象車両について旅行時間Taの判定を行い、旅行時間Taが許容範囲内である対象車両については確実にインセンティブを与えるようにする。
【0051】
なお、
図1において、光ビーコン通信機4Aが第1通信手段に対応し、光ビーコン通信機4Bが第2通信手段に対応し、車両感知器5Aが第1車両感知器に対応し、車両感知器5Bが第2車両感知器に対応している。また、
図3において、ビーコンアンテナ11及びカーナビゲーションシステム12が情報提示手段に対応している。
さらに、
図4において、ステップS4及びS5が車群形成要求情報生成手段に対応し、ステップS8が旅行時間算出手段に対応し、ステップS9〜S12が
特典供与手段に対応している。そして、ステップS10が車群維持情報生成手段に対応し、ステップS11が車群検出手段に対応し、ステップS12が信号制御手段に対応している。
【0052】
(効果)
第1の実施形態では、以下の効果が得られる。
(1)情報提供判定装置6は、車群を形成するための運転操作を促す車群形成要求情報を生成し、光ビーコン通信機4Aはこれを送信する。そして、車両Caに搭載した車載器10は、光ビーコン通信機4Aが送信した車群形成要求情報を受信し、当該車群形成要求情報を提示する。
このように、路側に設置した光ビーコン通信機4Aから送信した車群形成要求情報を車載器10で受信し、運転者に提示する。これにより、車群形成要求情報を受けた運転者が車群を形成するための運転操作を行うのを促す。したがって、路車協調による一様な車群形成を実現することができる。
【0053】
(2)情報提供判定装置6は、車群形成要求情報として、車両Caの推奨速度Vp(=Vr+α)に関する情報を生成する。
これにより、車群形成要求を受け取った運転者は、車群を形成するための車速情報を適切に認識することができる。また、車両Caの推奨速度Vpを規制速度Vrに準じた速度とするので、車両Caが推奨速度Vpで走行した場合に後続車両がこれに続きやすくなり、一様な車群を形成しやすくなる。
【0054】
(3)情報提供判定装置6は、車両感知器5Aの感知データに基づいて、車両Caが交通流の非先頭車両であると判断したとき、車群形成要求情報として、車両Caの先行車両との間の車間距離を保持するための情報を生成する。
このように、車両Caが交通流の中にいる場合には、自由に速度調整を行えない場合があることを考慮し、車群形成要求情報として、先行車両との間の車間距離を保持するための情報を送信する。車両Caが先行車両との間の車間距離を一定に保てば、後続車両もこれに続いて一定の車間距離を保って追従走行することが期待できる。したがって、車両Caがペースメーカーとなって車群を形成することができる。
【0055】
(4)車載器10は、車両Caの識別情報(車両ID)を含むアップリンク情報を送信し、光ビーコン通信機4A及び4Bは、車両Caが自身の通信エリア内に到達したときにこれを受信する。情報提供判定装置6は、光ビーコン通信機4A及び4Bで受信した車両IDに基づいて、車両Caの旅行時間Taを算出する。そして、情報提供判定装置6は、算出した旅行時間Taが許容範囲内にあるとき、その車両Caに対して走行特典を与える。
このように、光ビーコン通信機4Aの設置位置と光ビーコン通信機4Bの設置位置との間の旅行時間Taを判定することで、車群形成要求情報を受けた運転者が、当該車群形成要求に従って運転操作を行ったかどうかを確認することができる。そして、車群形成要求に従って運転操作を行った対象車両Caに対してはインセンティブを与える。これにより、運転者の車群形成に協力する行為を助長することができる。
【0056】
(5)情報提供判定装置6は、車両Caの旅行時間Taが許容範囲内にあるとき、車両感知器5Bの感知データに基づいて、車両Caを先頭とした車群を検出する。そして、情報提供判定装置6は、車両Caの走行特典として、車両Caを先頭とした車群が前方信号機を青で通過できるように信号制御を行う。
このように、路車協調により形成した車群が、前方信号機2で停止することなく青信号で通過できるように信号制御す
るので、円滑な車群走行を実現することができる。
【0057】
(6)情報提供判定装置6は、車群を維持するための運転操作を促す車群維持情報を生成し、光ビーコン通信機4Bは、車両Caの旅行時間Taが許容範囲内にあるとき、その車群維持情報を送信する。そして、車両Caに搭載した車載器10は、光ビーコン通信機4Bが送信した車群維持情報を受信し、当該車群維持情報を提示する。
このように、車群形成要求に従って運転操作を行った車両Caに対して、形成した車群を維持するための情報を提示するので、形成した車群が前方信号機2の手前で乱れるのを抑制することができる。したがって、車群の到着/通過に合わせた信号制御を適切に行うことができる。
【0058】
(7)情報提供判定装置6は、車群維持情報として、車両Caの現在車速を維持するための情報を生成する。
これにより、形成した車群が乱れるのを適切に抑制することができる。
(8)情報提供判定装置6は、光ビーコン通信機4Bは、車両Caの旅行時間Taが許容範囲外にあるとき、車群形成要求情報を送信する。そして、車両Caに搭載した車載器10は、光ビーコン通信機4Bが送信した車群形成要求情報を受信し、当該車群維持情報を提示する。
このように、車群形成要求に従って運転操作を行っていない車両Caに対しては、再度、車群形成要求情報を提示する。したがって、車群形成の実現率を向上させることができる。
【0059】
(9)車群を形成するための運転操作を促す車群形成要求情報を生成し、当該車群形成要求情報を、信号交差点から離れた上流位置の路上に設置された通信機から送信する。そして、車両に搭載され、路車間通信機能を有する車載器は、通信機が送信した車群形成要求情報を受信し、これを提示する。
このように、路側から送信した車群形成要求情報を車載器10で受信し、運転者に提示する。これにより、車群形成要求情報を受けた運転者が車群を形成するための運転操作を行うのを促す。したがって、路車協調による一様な車群形成を実現することができる。
【0060】
(変形例)
(1)上記実施形態においては、光ビーコン通信機4A及び車両感知器5Aを信号交差点の流出部に設置する場合について説明したが、前方信号機2から離れた上流位置であれば、設置位置を任意に選定することができる。但し、対象車両Caが車群形成要求を受けてから前方信号機2に到達するまでの間に一様な車群を形成する必要があるため、一様な車群の形成に要する距離を確保するようにする。
【0061】
(2)上記実施形態においては、
図6に示すように、対象車両Caが信号機2の停止線手前にいるときに、車載器10が光ビーコン通信機4Aからの車群形成要求情報に加えて、信号機2の灯色状態等を受信可能である場合には、以下の処理を行うこともできる。
例えば、対象車両Caが交通流の先頭にいる状態で、信号機2の停止線手前で赤信号待ちをしているとき、車載器10は、車群形成要求情報である推奨速度情報と併せて、急な発進を抑制するための急発進抑制情報を提示する。これにより、信号機2が赤信号から青信号へ切り替わった際の対象車両Caの急発進を抑制し、対象車両Caを先頭とする車群の形成をより確実に行うことができる。
【0062】
(3)上記実施形態においては、対象車両Caが光ビーコン通信機4Aを通過する際、当該対象車両Caが交通流の最後尾を走行していると判断できた場合には、光ビーコン通信機4Aから車群形成要求情報を送信しないようにすることもできる。これは、仮に対象車両Caが車群を形成するために速度調整を行ったとしても、後続車両が存在しないため、当該対象車両Caを先頭とした車群を形成することができないためである。ここで、対象車両Caが交通流の最後尾を走行しているか否かは、光ビーコン通信機4Aの設置位置よりも上流側に設置した車両感知器の感知データに基づいて判断する。これにより、不必要な情報提供を行わないようにすることができ、運転者の煩わしさを低減することができる。