特許第5987549号(P5987549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5987549建設部材の設置精度の測定システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987549
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】建設部材の設置精度の測定システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 11/06 20060101AFI20160825BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   G01C11/06
   G01C15/06 T
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-178610(P2012-178610)
(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公開番号】特開2014-35341(P2014-35341A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】池田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】坂上 肇
【審査官】 ▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4604681(JP,B2)
【文献】 特開2009−053126(JP,A)
【文献】 特開2002−021329(JP,A)
【文献】 特開2006−119005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 11/00−11/06
G01C 15/00
G01B 11/00−11/30
E04G 21/14−21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置に設置される建設部材の複数の所定地点に予め設けられた複数のマーカーと、
前記複数のマーカーを撮影するステレオカメラと、
前記ステレオカメラで撮影された画像から前記複数のマーカーを抽出するマーカー抽出部と、
前記マーカー抽出部で抽出された前記複数のマーカーの位置を求め、その前記複数のマーカーの位置に基づいて、前記建設部材の設計上の設置位置に対する誤差である位置誤差、前記建設部材の設計上の設置状態を基準とする倒れ角、及び、前記建設部材の設計上の設置状態を基準とするねじれ角の少なくとも一つを求める設置精度演算部と
を備える建設部材の設置精度の測定システムであって、
前記設置精度演算部は、前記マーカー抽出部で抽出された前記複数のマーカーの位置に基づいて、前記建設部材の基準軸の両端の設計上の位置に対する誤差を求め、その両端の誤差に基づいて、前記倒れ角を求める建設部材の設置精度の測定システム
【請求項2】
所定位置に設置される建設部材の複数の所定地点に予め設けられた複数のマーカーと、
前記複数のマーカーを撮影するステレオカメラと、
前記ステレオカメラで撮影された画像から前記複数のマーカーを抽出するマーカー抽出部と、
前記マーカー抽出部で抽出された前記複数のマーカーの位置を求め、その前記複数のマーカーの位置に基づいて、前記建設部材の設計上の設置位置に対する誤差である位置誤差、前記建設部材の設計上の設置状態を基準とする倒れ角、及び、前記建設部材の設計上の設置状態を基準とするねじれ角の少なくとも一つを求める設置精度演算部と
を備える建設部材の設置精度の測定システムであって、
前記設置精度演算部は、前記マーカー抽出部で抽出された前記複数のマーカーの位置に基づいて、前記建設部材の基準軸の一端の設計上の位置に対する誤差を求め、その一端の誤差と既知である他端の誤差とに基づいて、前記倒れ角を求める建設部材の設置精度の測定システム
【請求項3】
前記複数のマーカーのうちの少なくとも2点のマーカーは、前記建設部材の基準軸に対する位置関係が既知であって横方向に離間して配され、
前記設置精度演算部は、前記マーカー抽出部で抽出された前記2点のマーカーの位置と当該2点のマーカーの設計上の位置と前記基準軸の設計上の位置とに基づいて、前記位置誤差と前記ねじれ角とを求める請求項1又は2に記載の建設部材の設置精度の測定システム。
【請求項4】
所定位置に設置する建設部材の複数の所定地点に複数のマーカーを予め設ける工程と、
前記所定位置に設置された前記建設部材の前記複数のマーカーをステレオカメラで撮影する工程と、
前記ステレオカメラで撮影した画像から前記複数のマーカーを画像処理により抽出するマーカー抽出工程と、
抽出した前記複数のマーカーの位置を求め、その前記複数のマーカーの位置に基づいて、前記建設部材の設計上の設置位置に対する誤差、前記建設部材の設計上の設置状態を基準とする倒れ角、及び、前記建設部材の設計上の設置状態を基準とするねじれ角の少なくとも一つを求める設置精度演算工程と
を備える建設部材の設置精度の測定方法であって、
前記設置精度演算工程では、前記マーカー抽出工程で抽出した前記複数のマーカーの位置に基づいて、前記建設部材の基準軸の両端の設計上の位置に対する誤差を求め、その両端の誤差に基づいて、前記倒れ角を求める建設部材の設置精度の測定方法
【請求項5】
所定位置に設置する建設部材の複数の所定地点に複数のマーカーを予め設ける工程と、
前記所定位置に設置された前記建設部材の前記複数のマーカーをステレオカメラで撮影する工程と、
前記ステレオカメラで撮影した画像から前記複数のマーカーを画像処理により抽出するマーカー抽出工程と、
抽出した前記複数のマーカーの位置を求め、その前記複数のマーカーの位置に基づいて、前記建設部材の設計上の設置位置に対する誤差、前記建設部材の設計上の設置状態を基準とする倒れ角、及び、前記建設部材の設計上の設置状態を基準とするねじれ角の少なくとも一つを求める設置精度演算工程と
を備える建設部材の設置精度の測定方法であって、
前記設置精度演算工程では、前記マーカー抽出工程で抽出した前記複数のマーカーの位置に基づいて、前記建設部材の基準軸の一端の設計上の位置に対する誤差を求め、その一端の誤差と既知である他端の誤差とに基づいて、前記倒れ角を求める建設部材の設置精度の測定システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱等の建設部材の設置精度を測定するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柱の設置精度を測定するシステムとして、三次元測量器(トータルステーション)を用いて、柱に設けた同じ高さで柱芯に対する位置関係が既知の2点のターゲットの座標を測定して、その座標から柱芯の座標、柱の設計上の設置状態を基準とするねじれ角を求めるシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4604681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三次元測量器は高価であり、また、三次元測量器によるターゲットの座標の測定は、専門の技術者でなければ実施することが難しい作業である。さらに、三次元測量器によるターゲットの座標の測定では、同時に2点以上のターゲットの座標を測定することができないことから測定に要する時間や手間が長大になる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、柱等の建設部材の設置精度を安価なシステムにより容易かつ迅速に測定できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る建設部材の設置精度の測定システムは、所定位置に設置される建設部材の複数の所定地点に予め設けられた複数のマーカーと、前記複数のマーカーを撮影するステレオカメラと、前記ステレオカメラで撮影された画像から前記複数のマーカーを抽出するマーカー抽出部と、前記マーカー抽出部で抽出された前記複数のマーカーの位置を求め、その前記複数のマーカーの位置に基づいて、前記建設部材の設計上の設置位置に対する誤差である位置誤差、前記建設部材の設計上の設置状態を基準とする倒れ角、及び、前記建設部材の設計上の設置状態を基準とするねじれ角の少なくとも一つを求める設置精度演算部とを備え、前記設置精度演算部は、前記マーカー抽出部で抽出された前記複数のマーカーの位置に基づいて、前記建設部材の基準軸の一端の設計上の位置に対する誤差を求め、その一端の誤差と既知である他端の誤差とに基づいて、前記倒れ角を求める
また、本発明に係る建設部材の設置精度の測定システムは、所定位置に設置される建設部材の複数の所定地点に予め設けられた複数のマーカーと、前記複数のマーカーを撮影するステレオカメラと、前記ステレオカメラで撮影された画像から前記複数のマーカーを抽出するマーカー抽出部と、前記マーカー抽出部で抽出された前記複数のマーカーの位置を求め、その前記複数のマーカーの位置に基づいて、前記建設部材の設計上の設置位置に対する誤差である位置誤差、前記建設部材の設計上の設置状態を基準とする倒れ角、及び、前記建設部材の設計上の設置状態を基準とするねじれ角の少なくとも一つを求める設置精度演算部とを備え、前記設置精度演算部は、前記マーカー抽出部で抽出された前記複数のマーカーの位置に基づいて、前記建設部材の基準軸の一端の設計上の位置に対する誤差を求め、その一端の誤差と既知である他端の誤差とに基づいて、前記倒れ角を求める。
【0007】
前記建設部材の設置精度の測定システムにおいて、前記複数のマーカーのうちの少なくとも2点のマーカーは、前記建設部材の基準軸に対する位置関係が既知であって横方向に離間して配されてもよく、前記設置精度演算部は、前記マーカー抽出部で抽出された前記2点のマーカーの位置と当該2点のマーカーの設計上の位置と前記基準軸の設計上の位置とに基づいて、前記位置誤差と前記ねじれ角とを求めてもよい。
【0010】
また、本発明に係る建設部材の設置精度の測定方法は、所定位置に設置する建設部材の複数の所定地点に複数のマーカーを予め設ける工程と、前記所定位置に設置された前記建設部材の前記複数のマーカーをステレオカメラで撮影する工程と、前記ステレオカメラで撮影した画像から前記複数のマーカーを画像処理により抽出するマーカー抽出工程と、抽出した前記複数のマーカーの位置を求め、その前記複数のマーカーの位置に基づいて、前記建設部材の設計上の設置位置に対する誤差、前記建設部材の設計上の設置状態を基準とする倒れ角、及び、前記建設部材の設計上の設置状態を基準とするねじれ角の少なくとも一つを求める設置精度演算工程とを備え、前記設置精度演算工程では、前記マーカー抽出工程で抽出した前記複数のマーカーの位置に基づいて、前記建設部材の基準軸の両端の設計上の位置に対する誤差を求め、その両端の誤差に基づいて、前記倒れ角を求める
また、本発明に係る建設部材の設置精度の測定方法は、所定位置に設置する建設部材の複数の所定地点に複数のマーカーを予め設ける工程と、前記所定位置に設置された前記建設部材の前記複数のマーカーをステレオカメラで撮影する工程と、前記ステレオカメラで撮影した画像から前記複数のマーカーを画像処理により抽出するマーカー抽出工程と、抽出した前記複数のマーカーの位置を求め、その前記複数のマーカーの位置に基づいて、前記建設部材の設計上の設置位置に対する誤差、前記建設部材の設計上の設置状態を基準とする倒れ角、及び、前記建設部材の設計上の設置状態を基準とするねじれ角の少なくとも一つを求める設置精度演算工程とを備え、前記設置精度演算工程では、前記マーカー抽出工程で抽出した前記複数のマーカーの位置に基づいて、前記建設部材の基準軸の一端の設計上の位置に対する誤差を求め、その一端の誤差と既知である他端の誤差とに基づいて、前記倒れ角を求める
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、柱等の建設部材の設置精度を安価なシステムにより容易かつ迅速に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る柱の設置精度の測定システムを示す図である。
図2】ステレオカメラによるステレオ画像認識の原理を説明するための図である。である。
図3】PCのハードウェア構成を示す図である。
図4】柱の設置精度を測定する手順を示すフローチャートである。
図5】他の実施形態に係る柱の設置精度の測定システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る柱1の設置精度の測定システム10を示す図である。この図に示すように、測定システム10は、柱1に取り付けられた複数のマーカーボード2と、現場の所定位置に配された基準マーカーボード2A、2Bと、マーカーボード2及び基準マーカーボード2A、2Bを撮影するステレオカメラ12と、ステレオカメラ12によって撮影された画像に基づいて柱1の設置精度を求める処理を実行するPC20とを備えている。マーカーボード2及び基準マーカーボード2A、2Bは、黒色の円であるマーカーM、基準マーカーM、Mが記された白色の板である。
【0014】
図2は、ステレオカメラ12によるステレオ画像認識の原理を説明するための図である。この図に示すように、ステレオカメラ12によるステレオ画像認識は、平行等位に設置された2台のカメラ12L、12Rで対称点Pを同時に撮影し、各カメラ12L、12Rで得られた画像上での対称点Pの位置(x,y)、(x,y)の違い(視差d)から、その対称点Pの3次元の位置(X,Y,Z)を認識する技術である。なお、平行等位とは、左右のカメラ12L、12Rの光軸を平行にして撮像面を一致させ、更に撮像面の横軸(X軸)も一致させた配置である。
【0015】
図2に示すように、(X,Y,Z)を左のカメラ12Lの焦点を原点とした実際の空間の座標系、(x,y)、(x,y)をそれぞれ左のカメラ12L、右のカメラ12Rの撮像面上で夫々の光軸との交点を原点とした座標系とし、X軸,x軸,x軸を全て左のカメラ12Lの焦点から右のカメラ12Rの焦点に向う方向に一致させた場合、実際の空間の対称点P(X,Y,Z)は、下記(1)式で表される。
【0016】
図3は、PC20のハードウェア構成を示す図である。この図に示すように、PC20は、画像取込部21、画像処理部22、演算処理部23、入力部24、表示部25、及びこれらを接続するバス26とを備えている。画像取込部21は、ビデオキャプチャボード等であり、ステレオカメラ12で撮影されたステレオ画像のデータおよび3次元点群データを取り込む。画像処理部22は、画像取込部21で取り込まれたステレオ画像のデータからマーカーM、基準マーカーM、Mを画像処理により抽出する。
【0017】
また、演算処理部23は、CPUや演算処理用のプログラムを格納したメモリ等を備え、画像処理部22で抽出された基準マーカーM、Mのステレオカメラ12の座標系での3次元点群データからステレオカメラ12の設置位置を算出する。また、演算処理部23は、画像処理部22で抽出されたマーカーMの現場ローカル座標系での3次元点群データから、柱1の設置位置や設置角度(倒れ、ねじれ)を算出する。また、入力部24は、キーボードやタッチパネル等であり、オペレータがデータや指示を入力するのに用いられる。さらに、表示部25は、演算処理部23による演算結果等を表示するモニタである。
【0018】
図4は、柱1の設置精度を測定する手順を示すフローチャートである。まず、図1に示すように、ステレオカメラ12と基準マーカーボード2A、2Bとを、柱1を設置する現場に設置する(ステップ1)。ここで、測定システム10では、柱1を設置する現場の所定地点を原点とする現場ローカル座標系(x,y,z)が設定されており、基準マーカーボード2A、2Bは、現場ローカル座標系(x,y,z)内の既知の所定位置(基準マーカーM、Mの座標が(xm1,ym1,zm1),(xm2,ym2,zm2)となる位置)に、被撮像面がy軸、z軸に対して平行になるように設置する。
【0019】
次に、画像取込部21が、ステレオカメラ12からステレオ画像のデータおよび3次元点群データを取り込む(ステップ2)。そして、上述のステレオカメラ12の座標系(X,Y,Z)を、現場ローカル座標系(x,y,z)に変換する処理を実行する(ステップ3〜4)。本処理は、入力部24で処理実行の指示が入力されると実行される。
【0020】
まず、画像処理部22が、画像取込部21が取り込んだステレオ画像のデータから基準マーカーM、Mを抽出し、演算処理部23が、ステレオカメラ12の座標系(X,Y,Z)内での基準マーカーM、Mの3次元点群データから基準マーカーM、Mの座標値(楕円の中心点の座標値)を算出する(ステップ3)。次に、演算処理部23が、ステップ3における算出結果に基づいて、下記(2)式より、ステレオカメラ12の座標系(X,Y,Z)から現場ローカル座標系(x,y,z)に座標変換を行う(ステップ4)。
【0021】
次に、柱1の設計情報を入力部24で入力する(ステップ5)。ここで、柱1の設計情報としては、柱芯の座標、柱の高さ等である。そして、図1に示すように、柱1に取り付けた複数のマーカーMをステレオカメラ12で撮影して柱1の設置精度を求める処理を実行する(ステップ6〜11)。本処理は、入力部24で柱1の設計情報が入力されると実行される。
【0022】
まず、画像処理部22が、画像取込部21が取り込んだステレオ画像のデータから複数のマーカーMを抽出し、演算処理部23が、現場ローカル座標系(x,y,z)内での複数のマーカーMの3次元点群データから複数のマーカーMの座標値(楕円の中心点の座標値)を算出する(ステップ6)。次に、演算処理部23が、設計情報が入力された柱1と抽出されたマーカーMとを対応付けする処理を実行する(ステップ7)。当該処理は、抽出されたマーカーMを設計情報が入力された柱1のうちの何れかに割り当てる指示が入力部24で入力されると当該指示にしたがって実行される。
【0023】
ここで、柱1の芯の下端の位置の設計値との誤差値(σlxlylz)が既知である場合には、図1に示すように、2点のマーカーMを柱1の上部に設け、上記誤差値(σlxlylz)が未知の場合には、図5に示すように、各2点のマーカーMを柱1の上部と下部とに設ける。ここで、マーカーMは、柱1の芯及び上下両端に対して位置関係が既知の所定地点に配置する。
【0024】
そして、柱1の芯の下端の誤差値(σlxlylz)が既知であり、2点のマーカーMを柱1の上部に設けている場合には、柱1の芯の下端の誤差値(σlxlylz)を入力部24で入力する(ステップ8、9)。演算処理部23は、柱1の芯の下端の誤差値(σlxlylz)が入力部24で入力されると、柱1の上部の芯の座標値と設計値との誤差値(σuxuyuz)と、柱1のx方向(y軸周り)の倒れ角θ、y方向(x軸周り)の倒れ角θ及び柱芯の周りのねじれ角θを算出する(ステップ10)。本ステップでは、柱1のx方向の倒れ角θ、y方向の倒れ角θは、下記(3)式により算出される。
【0025】
一方、柱1の芯の下端の誤差値(σlxlylz)が未知であり、2点のマーカーMを柱1の上部及び下部に設けている場合には、演算処理部23は、柱1の上部及び下部の芯の座標値と設計値との誤差値(σuxuyuz)、(σlxlylz)と、柱1のx方向の倒れ角θ、y方向の倒れ角θ及びねじれ角θを算出する(ステップ11)。本ステップでは、柱1のx方向の倒れ角θ、y方向の倒れ角θは、上記(3)式により算出される。
【0026】
また、ステップ10、11において、柱1の芯の上下両端の誤差値(σuxuyuz)、(σlxlylz)と、ねじれ角θは、下記(4)〜(7)式により算出される。なお、柱1の上側を例に挙げて説明するが、柱1の下側についても同様に算出される。
まず、2点のマーカーMの実際のxy座標での位置(x´,y´)、(x´,y´)と、2点のマーカーMの設定上のxy座標での位置(x,y)、(x,y)から下記(4)式が成立する。
【0027】
また、2点のマーカーMの設計上のxy座標での位置(x,y)、(x,y)が極座標に変換されると、下記(5)式で表される。
【0028】
そして、上記(4)、(5)式からねじれ角θと柱1の上部の芯の誤差値(σuxuyuz)とが夫々下記(6)、(7)式で表される。
【0029】
次に、演算処理部23は、柱1の芯の上下両端の誤差値(σuxuyuz)、(σlxlylz)と、柱1のx方向及びy方向の倒れ角θ、θ及び芯の周りのねじれ角θの算出値とが管理値内であるか否かを判定する(ステップ12)。柱1の芯の上下両端の位置の誤差値(σuxuyuz)、(σlxlylz)、x方向及びy方向の倒れ角θ、θ及び芯の周りのねじれ角θが管理値外である場合には、柱1の位置や鉛直度や柱芯周りの回転位置の調整が実施され(ステップ13)、その後、上述のステップ6〜12が繰り返し実施される。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係る柱1の設置精度の測定システム10では、柱1の複数の所定地点に設けた複数のマーカーMがステレオカメラ12で撮影され、PC20の画像処理部22が、撮影画像からマーカーMを抽出する。そして、当該測定システム10では、演算処理部23が、抽出された複数のマーカーMの位置を求め、その複数のマーカーMの位置に基づいて、柱1の設計上の設置位置に対する誤差(σuxuyuz)、(σlxlylz)、柱1の設計上の設置状態を基準とするx方向及びy方向の倒れ角θ、θ及び芯の周りのねじれ角θを求める。
【0031】
ここで、ステレオカメラ12はトータルステーションに比して安価であり、専門の技術者でなくとも容易に使用できる。特に、本実施形態に係る測定システム10では、ステレオカメラ12の設置位置及び設置角度に応じて座標変換が実施されるため、ステレオカメラ12の設置精度は要求されず、ステレオカメラ12の設置も容易である。また、ステレオカメラ12によれば、同時に2点以上のマーカーMの位置を測定することができるため、測定に要する時間や手間を省くことができる。即ち、本実施形態に係る測定システム10によれば、柱1等の建設部材の設置精度を安価なシステムにより容易かつ迅速に測定することができる。
【0032】
また、本実施形態に係る測定システム10では、柱1の芯に対する位置関係が既知であって横方向に離間して配された2点のマーカーMをステレオカメラ12で撮影し、PC20の演算処理部23が、抽出された2点のマーカーMのxy座標での位置(x,y)、(x,y)と当該2点のマーカーMの設計上のxy座標での位置(x´,y´)、(x´,y´)と、柱1の芯の設計上のxy座標での位置とに基づいて、柱1の芯の上端又は両端の設計上の位置に対する誤差(σuxuyuz)、(σlxlylz)と、柱1の設計上の設置状態を基準とする芯の周りのねじれ角θを求める。さらに、演算処理部23が、抽出された複数のマーカーMの位置に基づいて、柱1の芯の下端の位置の誤差(σlxlylz)が既知である場合には上端のみ、柱1の芯の両端の誤差が未知である場合には上下両端の位置の誤差を求め、柱1の芯の上下両端の誤差(σuxuyuz)、(σlxlylz)に基づいて柱1の設計上の設置状態を基準とするx方向及びy方向の倒れ角θ、θを求める。以上により、柱1の設置位置の誤差(σuxuyuz)、(σlxlylz)、x方向及びy方向の倒れ角θ、θ及び芯の周りのねじれ角θを精度よく測定することができる。
【0033】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0034】
例えば、上述の実施形態では、建設部材としての柱1の設置精度を測定したが、設置精度を測定する建設部材としては杭や梁や壁材等の他の建設構造材やガラス等の非構造材等も挙げられる。また、上述の実施形態では、設置位置の誤差、倒れ角、ねじれ角の全てを測定したが、何れか一つのみを測定するだけにしてもよい。また、上述の実施形態では、複数の柱1の設置精度を同時に測定する例を挙げて本発明を説明したが、柱1の設置精度を一本ずつ測定してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 柱(建設部材)、2 マーカーボード、2A、2B 基準マーカーボード、10 測定システム、12 ステレオカメラ、12L、12R カメラ、20 PC、21 画像取込部、22 画像処理部(マーカー抽出部)、23 演算処理部(設置精度演算部)、24 入力部、25 表示部、26 バス、M マーカー、M、M 基準マーカー
図1
図2
図3
図4
図5