(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987559
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】表示操作装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/968 20060101AFI20160825BHJP
H03K 17/96 20060101ALI20160825BHJP
H03K 17/78 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
H03K17/968
H03K17/96 K
H03K17/78 R
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-189793(P2012-189793)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-49860(P2014-49860A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 辰朗
(72)【発明者】
【氏名】和田 正巳
【審査官】
柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−072668(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/089363(WO,A1)
【文献】
特開2006−164672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/968
H03K 17/78
H03K 17/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通する平面上に、バックライトで照射するように構成された平面型のディスプレイと、発光部と受光部を含む光学素子とが配置された表示操作装置において、
前記受光部から出力される変換電気信号のレベル変化を検出して反射物の有無を識別判定する判定回路と、
前記バックライトと前記発光部の発光時間が互いに重ならないように発光駆動タイミングを制御するとともに、前記バックライトの動作中は前記判定回路が反射物の有無の判定動作を行わないように制御するタイミング制御手段、
を設けたことを特徴とする表示操作装置。
【請求項2】
前記光学素子は赤外線タッチスイッチであることを特徴とする請求項1に記載の表示操作装置。
【請求項3】
前記光学素子は光通信用デバイスであることを特徴とする請求項1に記載の表示操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示操作装置に関し、詳しくは、簡略な構成による誤動作防止の改善に関する。
【0002】
たとえば、プロセス制御システムにおけるプラント配管路などの設置現場に実装されるフィールド機器には、オペレータが現場でパラメータ設定などを手動操作するスイッチ機構として赤外線タッチスイッチが組み込まれたものがある。
【0003】
図5は、フィールド機器で用いられている従来の赤外線タッチスイッチが組み込まれた表示操作装置の一例を示す構成説明図である。
図5において、平面型のディスプレイ1は、その上部両端下面に設けられたバックライト2で照射するように構成されている。ディスプレイ1と共通する平面上の下部領域には、同一構成の3個の赤外線タッチスイッチ3が設けられている。
【0004】
各赤外線タッチスイッチ3は、赤外線の発光部31と受光部32が上下方向に隣接するように配置されるとともに、これら発光部31と受光部32の外周を囲むように光遮蔽物33が設けられている。
【0005】
図6は、
図5の赤外線タッチスイッチ3の駆動回路例図である。発光部31は、タイミング制御回路4から発光部駆動回路34に入力される発光部駆動信号s1に基づき、センサ光としての赤外光Irを発光させる。センサ光Irは、たとえばオペレータの指などの反射物35により反射して、受光部32に到達する。
【0006】
受光部32は、反射物35により反射したセンサ光Irを受光し、センサ光Irの強度に応じてレベルが変化する変換電気信号を判定信号s2として判定回路36に出力する。
【0007】
判定回路36は、判定信号s2のレベル変化を検出することにより、反射物35の有無を識別判定する。
【0008】
バックライト2は、タイミング制御回路4からバックライト駆動回路21に入力されるバックライト駆動信号s3に基づき駆動されてバックライトBLを発光し、ディスプレイ1を照射する。このバックライト駆動信号s3としては、たとえばPWM信号を用いる。PWM信号の周期やパルス幅を調整することにより、ディスプレイ1における表示の明るさを調整できる。
【0009】
図7は、
図6における発光部駆動信号s1とバックライト駆動信号s3の一例を示すタイミングチャートである。(a)は発光部駆動信号s1を示している。発光部駆動信号s1は、周期Taで、少なくとも1回以上発光した後に非発光となる状態を繰り返す。(b)はバックライト駆動信号s3を示している。バックライト駆動信号s3は、前述のようにPWM信号であり、周期Tbで、発光と非発光を繰り返す。
【0010】
非特許文献1には、オン,オフの判定レベルの個別調整を不要にする赤外線タッチスイッチの技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−273721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、受光部31は、センサ光としての赤外光Irもバックライト2のバックライトBLも受光できることから、バックライトBLが受光部31に到達して入射されると判定信号s2のレベルが変化する。この結果、判定回路36は、反射物35の有無の識別を誤ってしまい、赤外線タッチスイッチとしての誤動作につながるおそれがある。
【0013】
そこで、受光部31にバックライトBLが到達して入射しないように、光遮蔽物33を設けることで、バックライトBLを遮蔽している。
【0014】
しかし、光遮蔽物33は、各赤外線タッチスイッチ3における赤外線の発光部31と受光部32の外周を囲む光遮蔽機能とバックライトBLの光遮蔽機能を兼ね備えていなければならない。
【0015】
バックライトBLの受光部31への入射を完全に遮蔽するためには、たとえば発光部31と受光部32の外周を隙間なく完全に取り囲むようにたとえばモールドにより一体成形された光遮蔽用個別部品を準備して、赤外線タッチスイッチの組立工程にこれら光遮蔽用個別部品を実装するための工程を追加しなければならず、部品点数や組立工数が増加してコストが高くなってしまうという問題がある。
【0016】
なお、この問題は、発光部と受光部を含む赤外線タッチスイッチに限るものではなく、バックライトで照射するように構成された平面型のディスプレイと、発光部と受光部を含む光学素子とが共通する平面上に配置された表示操作装置に共通するものであって、赤外線タッチスイッチの代わりに発光部と受光部とで構成される光通信用デバイスが配置された表示操作装置についても発生するおそれがある。
【0017】
本発明は、このような従来の問題点に着目したものであり、その目的は、バックライトを遮蔽するための光遮蔽物を用いることなくバックライトに起因する発光部と受光部を含む光学素子の誤動作を確実に防止できる表示操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このような課題を達成する請求項1の発明は、
共通する平面上に、バックライトで照射するように構成された平面型のディスプレイと、発光部と受光部を含む光学素子とが配置された表示操作装置において、
前記
受光部から出力される変換電気信号のレベル変化を検出して反射物の有無を識別判定する判定回路と、
前記バックライトと前記発光部の発光時間が互いに重ならないように発光駆動タイミングを制御する
とともに、前記バックライトの動作中は前記判定回路が反射物の有無の判定動作を行わないように制御するタイミング制御回路、
を設けたことを特徴とする。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1に記載の表示操作装置において、
前記光学素子は赤外線タッチスイッチであることを特徴とする。
【0020】
請求項3の発明は、請求項1に記載の表示操作装置において、
前記光学素子は光通信用デバイスであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
これらにより、バックライトの受光による誤動作を防止回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】
図1における発光部駆動信号s1とバックライト駆動信号s3の具体例を示すタイミングチャートである。
【
図4】本発明の他の実施例を示すブロック図である。
【
図5】従来の赤外線タッチスイッチが組み込まれたフィールド機器の一例を示す構成説明図である。
【
図6】
図5の赤外線タッチスイッチ3の駆動回路例図である。
【
図7】
図6における発光部駆動信号s1とバックライト駆動信号s3の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明について、図面を用いて説明する。
図1および
図2は本発明の一実施例を示すブロック図であり、
図6と共通する部分には同一の符号を付けている。
図1および
図2と
図6との相違点は、バックライト駆動回路21を介したタイミング制御回路4によるバックライト2の駆動制御にある。
【0024】
具体的には、タイミング制御回路4は、バックライト2の発光時間と発光部31の発光時間が重ならないように、バックライト2と発光部31の駆動タイミングを制御する。
【0025】
図1は発光部31が発光駆動されて赤外線タッチスイッチ3が動作中でバックライト2が休止している状態を示し、
図2はバックライト2が発光駆動されて発光部31が非発光で赤外線タッチスイッチ3が休止している状態を示している。
【0026】
図1に示す赤外線タッチスイッチ3の動作中は、タイミング制御回路4からのバックライト制御信号s3によってバックライト2を非発光とするようにバックライト駆動回路21を制御する。
【0027】
一方、
図2に示すバックライト2の動作中は、赤外線タッチスイッチ3の判定回路36が判定動作を行わないように、タイミング制御回路4からの判定制御信号s4によって判定回路36を制御する。
【0028】
図3は
図1および
図2における発光部駆動信号s1とバックライト駆動信号s3の具体例を示すタイミングチャートであり、(a)は発光部駆動信号s1を示し、(b)はバックライト駆動信号s3を示している。
【0029】
赤外線タッチスイッチ3は、発光部駆動信号s1は周期Taで少なくとも1回以上発光した後に非発光となる状態を繰り返す。
【0030】
赤外線タッチスイッチ3において、発光部駆動回路34からの発光部駆動信号s1によって発光部31からセンサ光としての赤外光Irを発光させると、センサ光Irが指などの反射物35で反射して受光部32に到達する。
【0031】
受光部32は、反射物35で反射したセンサ光Irを受光し、センサ光Irの強度に応じてレベルが変化する変換電気信号を判定信号s2として判定回路36に出力する。
【0032】
判定回路36は、判定信号s2のレベル変化を検出して、反射物35の有無を識別判定する。
【0033】
一方、バックライト駆動信号s3は、発光部駆動信号s1が非発光の区間において、周期Tbでバックライト2が発光と非発光を繰り返すように駆動し、ディスプレイ1を照射する。なお、バックライト駆動信号s3としては、従来と同様にたとえばPWM信号を用いる。
【0034】
すなわち、タイミング制御回路4は、バックライト2の発光時間と発光部31の発光時間が重ならないように、発光部駆動信号s1とバックライト駆動信号s3のタイミングを制御する。
【0035】
このように、タイミング制御回路4により、バックライト2が発光中は赤外線タッチスイッチ3が動作せず、赤外線タッチスイッチ3が動作中の場合にはバックライト2は発光しないように相補的に駆動されるので、従来のようにバックライトが赤外線タッチスイッチ3の受光部31に入射されることによって赤外線タッチスイッチ3が誤動作するおそれはなく、
図6に示すように従来は不可欠であったバックライトBLを遮蔽するための光遮蔽物33は不要になる。
【0036】
これにより、各赤外線タッチスイッチ3を構成する発光部31と受光部32の外周を囲む光遮蔽物33は、少なくとも各赤外線タッチスイッチ3の領域を視覚的・触覚的に識別できる程度であればよく、従来に比べてその構造を大幅に簡略化できる。
【0037】
なお、上記実施例では、発光部と受光部を含む光学素子が赤外線タッチスイッチの例について説明したが、これに限るものではなく、たとえば
図4に示すような光通信用デバイスであってもよい。
【0038】
図4において、バックライト2がバックライトBLを発光する間は、タイミング制御回路4から光通信用デバイス駆動回路5に出力する光通信用デバイス駆動回路制御信号s5を制御して光通信用デバイス6を非動作とし、光通信用デバイス6を動作させる間は、タイミング制御回路4からバックライト駆動回路21に出力するバックライト制御信号s3を制御してバックライト2を非発光とする。
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、バックライトを遮蔽するための光遮蔽物を用いることなくバックライトに起因する発光部と受光部を含む光学素子の誤動作を確実に防止できる表示操作装置を実現でき、特にフィールド機器の表示操作部として好適である。
【符号の説明】
【0040】
1 ディスプレイ
2 バックライト
21 バックライト駆動回路
3 赤外線タッチスイッチ
31 発光部
32 受光部
33 光遮蔽物
34 発光部駆動回路
35 反射物
36 判定回路
4 タイミング制御回路
5 光通信用デバイス駆動回路
6 光通信用デバイス