(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987569
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/613 20140101AFI20160825BHJP
H01M 10/6566 20140101ALI20160825BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20160825BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
H01M10/613
H01M10/6566
H01M10/6563
H01M2/10 E
H01M2/10 S
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-195979(P2012-195979)
(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2013-84583(P2013-84583A)
(43)【公開日】2013年5月9日
【審査請求日】2015年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2011-217523(P2011-217523)
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 稔
(72)【発明者】
【氏名】楠 寿樹
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 洋
【審査官】
田中 寛人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−092624(JP,A)
【文献】
特表2011−520226(JP,A)
【文献】
特開2008−251378(JP,A)
【文献】
特開2004−306726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 10/52−10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャンクションボックス収容部と電池収容部を有する電池パックケースと、
前記電池収容部内に収容してなる複数の電池と、
前記ジャンクションボックス収容部を覆う遮蔽部材と、
を備え、
前記電池パックケースは、吸気部と排気部とを有し、
前記電池のうち、少なくとも一部は、前記ジャンクションボックス収容部に対して排気部側に配置されることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、絶縁性を有する材料からなり、少なくとも前記ジャンクションボックス内の電子部品を被覆することを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、少なくとも前記ジャンクションボックス内の制御装置を被覆するジャンクションボックスカバーを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記遮蔽部材は、さらに、前記ジャンクションボックス内の、前記ジャンクションボックスカバーによって覆われていない領域を被覆する補助カバーを備えることを特徴とする請求項3に記載の電池パック。
【請求項5】
前記遮蔽部材は、さらに、前記ジャンクションボックス収容部に沿って配置されるガイドプレートを備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パック、特に、収容される電池セルの冷却構造に特徴を有する電池パックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電池パックとして、ジャンクションボックスを備えると共に、バッテリー(電池セル)を冷却するためのバッテリー用冷却ファンを備えたものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記従来の電池パックでは、ジャンクションボックスと電池セルとが完全に分離されたレイアウトになっている。また、電池セルを効果的に冷却するのが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−24510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ジャンクションボックスを内蔵し、かつ、電池セルを効果的に冷却することのできる電池パックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
電池パックを、
ジャンクションボックス収容部と電池収容部を有する電池パックケースと、
前記電池パックケースの電池収容部内に収容してなる複数の電池と、
前記ジャンクションボックス収容部を覆う遮蔽部材と、
を備え、
前記電池パックケースは、吸気部と排気部とを有し、
前記電池のうち、少なくとも一部は、前記ジャンクションボックス収容部に対して排気部側に配置されるように構成したものである。
【0007】
ここで、ジャンクションボックス収容部は遮蔽部材によって覆われているとは、ジャンクションボックス収容部の全体を覆うもののほか、ジャンクションボックス収容部の周囲に囲いを設けるだけの構成をも含む。要するに、ジャンクションボックス収容部内への空気の流入を防止できるものであれば、その構成の違いは問わないことを意味する。
【0008】
前記構成により、ジャンクションボックス収容部内への空気の流入を抑制して、冷却を必要とされる電池への空気の供給を安定させることができ、電池表面に沿って流動する空気量を十分に確保することが可能となる。
また、遮蔽部材によってジャンクションボックス収容部を回避して排気部側へと流動する空気流れの途中に電池が位置することになり、この電池は通過する空気によって冷却される。
【0011】
前記遮蔽部材は、絶縁性を有する材料からなり、少なくとも前記ジャンクションボックス内の電子部品を被覆するのが好ましい。
【0012】
この構成により、ジャンクションボックス内の電子部品等の絶縁性を確保しつつ、空気の流入を防止して電池の冷却を効果的に行わせることができる。
【0013】
前記遮蔽部材は、少なくとも前記ジャンクションボックス内の制御装置を被覆するジャンクションボックスカバーを備えるのが好ましい。
【0014】
この構成により、ジャンクションボックス内の特定の電子部品をジャンクションボックスカバーによって先に被覆しておくことができる。
【0015】
前記遮蔽部材は、さらに、
前記ジャンクションボックス内の、前記ジャンクションボックスカバー
によって覆われていない領域を被覆する補助カバーを備えるのが好ましい。
【0016】
この構成により、ジャンクションボックス内の特定の電子部品をジャンクションボックスカバーによって被覆した後、他の電子部品を補助カバーで後に被覆することができるので、組立作業性を向上させることができる。
【0017】
前記遮蔽部材は、さらに、前記ジャンクションボックス収容部に沿って配置されるガイドプレートを備えるのが好ましい。
【0018】
この構成により、ジャンクションボックス収容部内への空気の流入を、より一層効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、遮蔽部材を設けることによりジャンクションボックス内への空気の流入を防止するようにしたので、電池パックケース内にジャンクションボックスを備えた構成であるにも拘わらず、各電池に対して集中的に空気を供給することができ、効果的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る電池パックの斜視図である。
【
図2】
図1から電池パックカバーと、電池モジュールの一部を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2から電池モジュールを除去した分解斜視図である。
【
図5】
図2に電池モジュールを追加した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
図1及び
図2は、本実施形態に係る電池パックを示す。この電池パックは、電池パックケース1に、複数の電池モジュール2とジャンクションボックス3(Junction Box)とを収容し、電池パックカバー4で閉鎖したものである。
【0023】
電池パックケース1は、
図3に示すように、上面が開口する略箱体形状で、内部空間が所定間隔で配置した2枚の仕切壁5a、5bと、仕切部6とで、第1電池収容部7と、第2電池収容部8a、8bとに3分割されている。電池パックケース1の両端内面部、仕切壁5a、5b及び仕切部6は、仕切カバー9a、9b、9c、9d、9eによってそれぞれ覆われている。そして、両仕切壁5a、5bの間は、ジャンクションボックス3が配置されるジャンクションボックス収容部10(以下、JB収容部と記載する)となっている。
【0024】
電池パックケース1の両側部には、
図5に示すように、側壁と電池モジュール2との間に側方空気流路(第1側方空気流路11及び第2側方空気流路12)がそれぞれ形成されている。各空気流路11、12は、各電池収容部7、8a、8bと連通している。以下、各側方空気流路11、12で分割された領域を、空気流れの上流側から順に、第1領域13、第2領域14及び第3領域15とする。
【0025】
電池モジュール2は、
図6に示すように、電池モジュールケース16内に複数の電池セル17を所定間隔で収容し、電池モジュールカバー18で覆ったもので、前記各電池収容部7、8a、8bに複数個が並設された電池モジュール群19(第1モジュール群19a、第2モジュール群19b、第3モジュール群19c)として収容される。
【0026】
前記電池セル17は直列に電気接続されている。各電池セル17は、リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池であり、図示しないが、例えば、電池容器内に発電要素を収容し、蓋体で封止した構成となっている。電池モジュールケース16には、複数の開口がそれぞれ形成され、各電池セル17の間に空気を流動させ、各電池セル17を冷却できるようになっている。
【0027】
電池モジュール2は、側縁の両端部に正極と負極からなる固定電極部2a、2bがそれぞれ露出している。ここでは、電池モジュール2を全て同一構造とし、電池パックケース1内に配置する際の方向を異ならせるようにしている。
【0028】
ジャンクションボックス3は、
図3に示すように、上面が開口する箱状のボックス本体20内に、図示しない制御装置やセンサ、バスバー等を収容したもので、バスバーにはワイヤハーネス(図示せず)が接続されている。制御装置では、バスバーを介して電池セル17からの電力を電池パックが搭載される車両側へと供給し、ワイヤハーネス(図示せず)を介して電池セル17の電力残量を検出し、車両側の制御装置と通信することにより管理する。
【0029】
このように、電池パックケース1内にJB収容部10を配置することにより、JB収容部10から各電池セル17までの距離を短くすることができる。このため、JB収容部10側から各電池セル17までの配線が複雑化することを防止することができる。
【0030】
ボックス本体20は、上面部の一部を残して、絶縁性に優れた合成樹脂材料からなるジャンクションボックスカバー21と補助カバー22によって覆われている。
【0031】
ジャンクションボックスカバー21は、ジャンクションボックス3の中央部分に配置される、主要な電子部品である制御装置等を覆うためのもので、両側壁から突出した舌片21aを、仕切カバー9を介して仕切壁5a、5bにそれぞれネジ止めされている。
【0032】
ジャンクションボックスカバー21の周囲3辺には、仕切壁5a、5b(JB収容部10)に沿ってそれぞれ延び、後述する基板カバー27に沿うように連結されたガイドプレート23a、23bが配置されている。ガイドプレート23a、23bの両端部にはガイドブロック24a、24bの一端部がそれぞれ連続し、これらガイドブロック24a、24bの他端部の間には、補助プレート25が配置されている。ガイドプレート23a、23bは、電池パック内を流動する空気(冷却風)がジャンクションボックス3内へと流入することを防止し、各電池モジュール2へと十分に流動可能とする。
【0033】
補助カバー22は、ジャンクションボックス3の一端側、すなわち、漏電センサ、バスバー等が配置される、ガイドプレート23a、23b側の全領域を覆うためのもので、前記ジャンクションボックスカバー21と同様に、両側壁から突出した舌片を、仕切カバー9を介して仕切壁5a、5bにそれぞれネジ止めされている。補助カバー22は、漏電センサ等の電子部品や、バスバー等の配線部分を完全に覆い、絶縁性を確保する。補助カバー22の上面には基板26が設けられ、この基板26は基板カバー27によって覆われている。基板カバー27の上面位置は、電池パックケース1の上面位置とほぼ同じ高さに設計されている。
【0034】
電池パックカバー4は、
図1に示すように、電池パックケース1の上方開口部を覆う板状体で、対角位置に吸気部36と排気部37がそれぞれ形成されている。吸気部36は、矩形状の開口を有し、車内のエアコンに接続され、冷風が供給されるようになっている。
【0035】
次に、前記構成からなる電池パックに於ける空気の流動状態について説明する。
【0036】
吸気部36から供給された空気の一部は第1側方空気流路11の第1領域13へと流入する。第1領域13に流入した空気の一部は、第1電池収容部7を第2側方空気流路側に向かって流動する。これにより、第1電池収容部7に配置された電池モジュール群19の各電池セル17が冷却される。第1領域13に流入した空気の残りは、遮蔽部材であるジャンクションボックスカバー21と補助カバー22とにガイドされながら流動し、第1側方空気流路11の第2領域14及び第3領域15に至る。そして、第2領域14へと至った空気は電池収容部8aへと流動し、第3領域15へと至った空気は電池収容部8bへと流動する。つまり、遮蔽部材によって方向変換された空気は、ジャンクションボックス3に対して排気部37側に配置された各電池モジュール2の各電池セル17へと流動し、これら各電池セル17を冷却する。
【0037】
各電池収容部7、8a、8bでは、流動する空気が、各電池モジュール2の各電池セル17の隙間を流動して冷却する。各電池収容部7、8a、8bを流動した空気は、第2側方空気流路12へと流動する。第1領域13に至った空気は第2領域14へ流動した後、第2領域14に至った空気は第3領域15へと流動した後、排気部37から流出する。
【0038】
このように、吸気部36から供給された空気は、電池パック内の領域を万遍なく流動するが、ジャンクションボックス3内への流入は阻止されている。ジャンクションボックス3内での発熱量は、電池セル17に比べて非常に小さい。したがって、ジャンクションボックス3内に流動する空気量を抑えて各電池セル17を通過する空気量を確保することにより、各電池セル17の冷却を効果的に行うことができる。
【0039】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0040】
例えば、前記実施形態では、ジャンクションボックス3の上面部分をジャンクションボックスカバー21と補助カバー22とで覆うようにしたが、一体物の1つのカバーで覆うことも可能である。
【0041】
また、カバーは、断熱性に優れた材料で構成することにより、電池セル17からの伝熱を抑制するようにしてもよい。
【0042】
また、カバーの一部に開口部や隙間を形成することにより、電池セル17の冷却に悪影響を与えない範囲で、冷却風の一部をジャンクションボックス3内に取り入れて、電子部品を積極的に冷却することも可能である。
【0043】
また、前記実施形態では、電池パックケース1内に複数の電池セル17を収容するように構成したが、必ずしもこの構成に限らず、たとえ1つの電池セル17が収容される構成であっても、本発明の構成を採用することが可能である。
【0044】
また、前記実施形態では、電池パックケース1のJB収容部10をジャンクションボックスカバー21と補助カバー22とで覆うようにしたが、電池パックカバー4の一部で覆うようにしてもよい。例えば、電池パックカバー4の一部を変形させて、ジャンクションボックス3の中央部分に配置された制御装置等を覆うと共に、ジャンクションボックス3の一端側の全領域を覆うようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る電池パックには、リチウムイオン電池のほか、鉛蓄電池等、種々の電池を採用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…電池パックケース
2…電池モジュール
3…ジャンクションボックス
4…電池パックカバー
5a、5b…仕切壁
6…仕切部
7…第1電池収容部
8a、8b…第2電池収容部
9…仕切カバー
10…JB収容部
11…第1側方空気流路
12…第2側方空気流路
13…第1領域
14…第2領域
15…第3領域
16…電池モジュールケース
17…電池セル
18…電池モジュールカバー
19…電池モジュール群
20…ボックス本体
21…ジャンクションボックスカバー(遮蔽部材)
22…補助カバー(遮蔽部材)
23a、23b…ガイドプレート(遮蔽部材)
24a、24b…ガイドブロック
25…補助プレート
26…基板
27…基板カバー
36…吸気部
37…排気部