特許第5987585号(P5987585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5987585長尺基材搬送装置、これを備える有機エレクトロルミネッセンス素子の製造装置、および、長尺基材位置調整方法、これを含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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  • 特許5987585-長尺基材搬送装置、これを備える有機エレクトロルミネッセンス素子の製造装置、および、長尺基材位置調整方法、これを含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987585
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】長尺基材搬送装置、これを備える有機エレクトロルミネッセンス素子の製造装置、および、長尺基材位置調整方法、これを含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/14 20060101AFI20160825BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20160825BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160825BHJP
   B65H 23/038 20060101ALI20160825BHJP
   B65H 23/022 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   B65H23/14
   H05B33/10
   H05B33/14 A
   B65H23/038 Z
   B65H23/022
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-205207(P2012-205207)
(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-58389(P2014-58389A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年3月6日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代高効率・高品質照明の基盤技術開発/有機EL照明の高効率・高品質化に係る基盤技術開発」共同研究 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100178032
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰男
(74)【代理人】
【識別番号】100167885
【弁理士】
【氏名又は名称】森木 健三
(72)【発明者】
【氏名】野崎 敦夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸明
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−019060(JP,A)
【文献】 特開平10−001243(JP,A)
【文献】 特開2011−178490(JP,A)
【文献】 特開2009−227447(JP,A)
【文献】 国際公開第01/005194(WO,A1)
【文献】 特開平11−347656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/00 − 23/34
B65H 26/00 − 27/00
H05B 33/00 − 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の搬送ローラを用いたロールツーロール方式で、可撓性の長尺基材を搬送し、前記長尺基材の表面に機能層のパターニング等の処理が行われる際には前記長尺基材の搬送を停止させる長尺基材搬送装置であって、
前記パターニング等の処理を行う場所で、停止した前記長尺基材における当該パターニング等の処理を行う部分の張力を維持する張力維持手段と、
前記長尺基材における前記パターニング等の処理を行う部分に対して長手方向の前後それぞれの部分の前記長尺基材の張力を低下させる張力低下手段と、
前記張力低下手段による前記前後それぞれの部分の張力の低下の後、前記長尺基材における前記パターニング等の処理を行う部分の位置補正を行う位置補正手段と、を備え、
前記張力低下手段は、前記長尺基材の一方の面のみに接触して搬送方向を変化させる搬送ローラであり、前記長尺基材から離れて前記長尺基材の張力を低下させる方向へ移動可能である
ことを特徴とする長尺基材搬送装置。
【請求項2】
前記張力維持手段は、前記パターニング等の処理を行う場所における前記長尺基材の長手方向の両端それぞれに配置された、前記長尺基材を挟持する部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の長尺基材搬送装置。
【請求項3】
前記張力維持手段および前記位置補正手段は、前記パターニング等の処理を行う場所における前記長尺基材の長手方向の両端それぞれに配置された、前記長尺基材を挟持する部材としての前記搬送ローラとニップローラである
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の長尺基材搬送装置。
【請求項4】
前記張力維持手段および前記位置補正手段は、前記パターニング等の処理を行う場所における前記長尺基材の幅方向の両端それぞれに配置された、前記長尺基材を挟持するテンター手段である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の長尺基材搬送装置。
【請求項5】
前記複数の搬送ローラのうち、前記長尺基材における前記パターニング等の処理を行う面に接する前記搬送ローラは、前記長尺基材におけるパターン成膜部に対応する部分が窪んで非接触になっている段付ローラであり、
前記長尺基材は、厚さが50〜200μmの樹脂フィルムである
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の長尺基材搬送装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の長尺基材搬送装置を備える有機エレクトロルミネッセンス素子の製造装置。
【請求項7】
複数の搬送ローラを用いたロールツーロール方式で、可撓性の長尺基材を搬送し、前記長尺基材の表面に機能層のパターニング等の処理が行われる際には前記長尺基材の搬送を停止させる長尺基材搬送装置による長尺基材位置調整方法であって、
前記長尺基材搬送装置において、
張力維持手段が、前記パターニング等の処理を行う場所で、停止した前記長尺基材における当該パターニング等の処理を行う部分の張力を維持し、
張力低下手段が、前記長尺基材の一方の面のみに接触して搬送方向を変化させる搬送ローラであり、前記長尺基材から離れる方向へ移動することで前記長尺基材における前記パターニング等の処理を行う部分に対して長手方向の前後それぞれの部分の前記長尺基材の張力を低下させ、
位置補正手段が、前記張力低下手段による前記前後それぞれの部分の張力の低下の後、前記長尺基材における前記パターニング等の処理を行う部分の位置補正を行う
ことを特徴とする長尺基材位置調整方法。
【請求項8】
前記張力維持手段は、前記パターニング等の処理を行う場所における前記長尺基材の長手方向の両端それぞれに配置された、前記長尺基材を挟持する部材である
ことを特徴とする請求項7に記載の長尺基材位置調整方法。
【請求項9】
前記張力維持手段および前記位置補正手段は、前記パターニング等の処理を行う場所における前記長尺基材の長手方向の両端それぞれに配置された、前記長尺基材を挟持する部材としての前記搬送ローラとニップローラである
ことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の長尺基材位置調整方法。
【請求項10】
前記張力維持手段および前記位置補正手段は、前記パターニング等の処理を行う場所における前記長尺基材の幅方向の両端それぞれに配置された、前記長尺基材を挟持するテンター手段である
ことを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の長尺基材位置調整方法。
【請求項11】
前記複数の搬送ローラのうち、前記長尺基材における前記パターニング等の処理を行う面に接する前記搬送ローラは、前記長尺基材におけるパターン成膜部に対応する部分が窪んで非接触になっている段付ローラであり、
前記長尺基材は、厚さが50〜200μmの樹脂フィルムである
ことを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の長尺基材位置調整方法。
【請求項12】
請求項7から請求項11のいずれか一項に記載の長尺基材位置調整方法を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールツーロール方式で搬送する長尺基材の位置補正(蛇行補正)を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロールツーロール方式で長尺基材を搬送するとともに、その長尺基材に機能層のパターニング等の処理(機能層のパターン成膜(ウエット、ドライ)、機能層のパターン除去、シート部材の貼合、シート断裁など)を行う技術が多く用いられている。例えば、近年、発光素子として注目されている有機EL(Electro-Luminescence)素子についても、ロールツーロール方式での製造が多く行われるようになってきた。その場合、ロール状に巻かれた長尺基材を繰り出してその長尺基材上に有機EL構造体を形成し、その長尺基材を再度ロール状に巻き取り、その後、その長尺基材を所定の大きさに分割することで有機EL素子を製造する。ロールツーロール方式による製造は、連続生産が可能なので生産効率を向上させることができるというメリットがある。
【0003】
また、特許文献1には、ロールツーロール方式による有機ELディスプレイ製造装置全体を真空チャンバ内に設け、フレキシブル基板上に発光材料や陰極材料を蒸着にてパターン成膜する技術について開示されている。
【0004】
なお、ロールツーロール方式の場合、長尺基材に対してパターニング等を行う際に、長尺基材における該当部分の位置補正を適宜行うことによって高精度に位置調整(アライメント)する必要がある。
特に、有機EL素子は複数並べて大面積平面発光体とすることがあり、パターニング等の位置調整が悪いと平面発光体間の非発光部の幅が大きくなり、商品価値が低下するため、高精度の位置調整が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第01/05194号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術を含む従来技術では、ロールツーロール方式の場合、長尺基材の張力を低くすると、搬送ローラに対して長尺基材が押し付けられる力が弱すぎて、搬送ローラと長尺基材との間に適切な摩擦力が発生せず、長尺基材の搬送自体が不安定になる(簡単に大きくずれる等)という問題がある。一方、長尺基材の張力を高くすると、長尺基材の搬送自体は比較的安定するが、搬送ローラと長尺基材との間の摩擦力が大きいため、位置補正を適切に行いにくいという問題がある。
特に、有機EL素子をパターン成膜する場合、成膜部(パターン成膜部)は薄膜であり、前記成膜部にダメージを受けない様に、搬送ローラの機能層と接触する部分を窪ませて非接触にした段付きローラを使用することがあるが、この場合、張力が高いと基材が窪みに食い込み基材が動きにくくなるために、さらに位置補正を行いにくくなる。
【0007】
そこで、本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、ロールツーロール方式で長尺基材を高精度に位置補正することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記課題は、下記の手段により達成される。
【0009】
(1)複数の搬送ローラを用いたロールツーロール方式で、可撓性の長尺基材を搬送し、前記長尺基材の表面に機能層のパターニング等の処理が行われる際には前記長尺基材の搬送を停止させる長尺基材搬送装置であって、前記パターニング等の処理を行う場所で、停止した前記長尺基材における当該パターニング等の処理を行う部分の張力を維持する張力維持手段と、前記長尺基材における前記パターニング等の処理を行う部分に対して長手方向の前後それぞれの部分の前記長尺基材の張力を低下させる張力低下手段と、前記張力低下手段による前記前後それぞれの部分の張力の低下の後、前記長尺基材における前記パターニング等の処理を行う部分の位置補正を行う位置補正手段と、を備え、前記張力低下手段は、前記長尺基材の一方の面のみに接触して搬送方向を変化させる搬送ローラであり、前記長尺基材から離れて前記長尺基材の張力を低下させる方向へ移動可能であることを特徴とする長尺基材搬送装置。
【0010】
(2)前記張力維持手段は、前記パターニング等の処理を行う場所における前記長尺基材の長手方向の両端それぞれに配置された、前記長尺基材を挟持する部材であることを特徴とする前記(1)に記載の長尺基材搬送装置。
【0011】
(3)前記張力維持手段および前記位置補正手段は、前記パターニング等の処理を行う場所における前記長尺基材の長手方向の両端それぞれに配置された、前記長尺基材を挟持する部材としての前記搬送ローラとニップローラであることを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載の長尺基材搬送装置。
【0012】
(4)前記張力維持手段および前記位置補正手段は、前記パターニング等の処理を行う場所における前記長尺基材の幅方向の両端それぞれに配置された、前記長尺基材を挟持するテンター手段であることを特徴とする前記(1)から前記(3)のいずれか一項に記載の長尺基材搬送装置。
【0013】
(5)前記複数の搬送ローラのうち、前記長尺基材における前記パターニング等の処理を行う面に接する前記搬送ローラは、前記長尺基材におけるパターン成膜部に対応する部分が窪んで非接触になっている段付ローラであり、前記長尺基材は、厚さが50〜200μmの樹脂フィルムであることを特徴とする前記(1)から前記(4)のいずれか一項に記載の長尺基材搬送装置。
【0014】
(6)前記(1)から前記(5)のいずれか一項に記載の長尺基材搬送装置を備える有機エレクトロルミネッセンス素子の製造装置。
【0015】
(7)複数の搬送ローラを用いたロールツーロール方式で、可撓性の長尺基材を搬送し、前記長尺基材の表面に機能層のパターニング等の処理が行われる際には前記長尺基材の搬送を停止させる長尺基材搬送装置による長尺基材位置調整方法であって、前記長尺基材搬送装置において、張力維持手段が、前記パターニング等の処理を行う場所で、停止した前記長尺基材における当該パターニング等の処理を行う部分の張力を維持し、張力低下手段が、前記長尺基材の一方の面のみに接触して搬送方向を変化させる搬送ローラであり、前記長尺基材から離れる方向へ移動することで前記長尺基材における前記パターニング等の処理を行う部分に対して長手方向の前後それぞれの部分の前記長尺基材の張力を低下させ、位置補正手段が、前記張力低下手段による前記前後それぞれの部分の張力の低下の後、前記長尺基材における前記パターニング等の処理を行う部分の位置補正を行うことを特徴とする長尺基材位置調整方法。
【0016】
(8)前記張力維持手段は、前記パターニング等の処理を行う場所における前記長尺基材の長手方向の両端それぞれに配置された、前記長尺基材を挟持する部材であることを特徴とする前記(7)に記載の長尺基材位置調整方法。
【0017】
(9)前記張力維持手段および前記位置補正手段は、前記パターニング等の処理を行う場所における前記長尺基材の長手方向の両端それぞれに配置された、前記長尺基材を挟持する部材としての前記搬送ローラとニップローラであることを特徴とする前記(7)または前記(8)に記載の長尺基材位置調整方法。
【0018】
(10)前記張力維持手段および前記位置補正手段は、前記パターニング等の処理を行う場所における前記長尺基材の幅方向の両端それぞれに配置された、前記長尺基材を挟持するテンター手段であることを特徴とする前記(7)から前記(9)のいずれか一項に記載の長尺基材位置調整方法。
【0019】
(11)前記複数の搬送ローラのうち、前記長尺基材における前記パターニング等の処理を行う面に接する前記搬送ローラは、前記長尺基材におけるパターン成膜部に対応する部分が窪んで非接触になっている段付ローラであり、前記長尺基材は、厚さが50〜200μmの樹脂フィルムであることを特徴とする前記(7)から前記(10)のいずれか一項に記載の長尺基材位置調整方法。
【0020】
(12)前記(7)から前記(11)のいずれか一項に記載の長尺基材位置調整方法を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ロールツーロール方式で長尺基材を高精度に位置補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態の長尺基材搬送装置において、長尺基材の搬送中および搬送停止直後の様子を示す図である。
図2】本実施形態の長尺基材搬送装置において、図1の後の状態として、搬送ローラとニップローラで長尺基材を挟んだ状態を示す図である。
図3】本実施形態の長尺基材搬送装置において、図2の後の状態として、機能層のパターン成膜が行われる成膜エリア(以下、成膜エリアと称する。)の前後の搬送ローラを移動することで成膜エリアの前後の長尺基材の張力を低くした状態を示す図である。
図4】本実施形態の長尺基材搬送装置において、図3の後の状態として、成膜エリアの位置調整と成膜をする場合の様子を示す図である。
図5】本実施形態の長尺基材搬送装置において、図4の後の状態として、成膜エリアの前後の搬送ローラを移動することで成膜エリアの前後の長尺基材の張力を回復させた状態を示す図である。
図6】本実施形態の長尺基材搬送装置において、図5の後の状態として、ニップローラを搬送ローラから離れるように移動することで長尺基材を解放し、長尺基材を搬送する様子を示す図である。
図7】本実施形態の長尺基材搬送装置を用いて搬送される長尺基材を元上に製造される有機EL素子の概略模式図である。
図8】本実施形態の変形例の長尺基材搬送装置において、長尺基材における成膜エリアの幅方向の両端それぞれに配置された4つずつのテンター手段で長尺基材を挟持した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する。)について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図1図6において、(a)は本実施形態の長尺基材搬送装置を下から見た様子を示す図で、(b)はその長尺基材搬送装置を横から見た様子を示す図である。
【0024】
図1に示すように、長尺基材11を搬送する長尺基材搬送装置100は、巻取りロール1、巻出しロール2、搬送ローラ3〜8、ニップローラ9,10、位置センサ21,22を備えて構成される。なお、図1では、長尺基材搬送装置100において、長尺基材11の搬送中および搬送停止直後の様子を示している。
【0025】
なお、本実施形態では、ロールツーロール方式で、図7に示すように、可撓性の長尺基材11の表面(図1の下側の面)に、機能層のパターニング(蒸着等によるパターン成膜)が行われる、つまり、第1電極12、有機層13、第2電極14からなる有機EL構造体が積層されることで、有機EL素子41が製造される場合について説明する。
【0026】
長尺基材11は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等の可撓性を有する素材から形成される樹脂フィルムである。
【0027】
第1電極12は、陽極であって、例えば、インジウムチンオキサイド(ITO)、インジウムジンクオキサイド(IZO)、金、銀、酸化錫、酸化亜鉛等の導電性材料による電極である。
【0028】
有機層13は、発光層を含む数nm〜数μmの有機化合物又は錯体等の有機材料からなる単層、または複数の層である。有機層13は、例えば、陽極と接する正孔輸送層、発光材料を備える発光層、陰極と接する電子輸送層の三層等からなる。また、有機層13は、フッ化リチウム層や無機金属塩の層、またはそれらを含有する層などが任意の位置に配置された構成であってもよい。
【0029】
第2電極14は、陰極であって、例えば、アルミニウム、ナトリウム、リチウム、マグネシウム、銀、カルシウム等の金属材料からなる電極である。
【0030】
図1に戻って長尺基材搬送装置100の説明を続ける。
巻取りロール1は、成膜等の処理後の長尺基材11をロール状に巻き取ったロール(元巻)である。
巻出しロール2は、成膜等の処理前の長尺基材11がロール状に巻かれているロール(元巻)である。
搬送ローラ3〜8は、巻取りロール1と巻出しロール2の間に位置し、搬送される長尺基材11が通過すべき経路をガイドするローラである。
【0031】
なお、搬送ローラ3〜8のうち、搬送ローラ4,7は、長尺基材11におけるパターニングを行う部分(図1(b)の「成膜エリア」に対応する部分。以下、「長尺基材11における成膜エリアの部分」と称する。)に対して長手方向の前後それぞれの部分の長尺基材11の張力を低下させる張力低下手段としての役割も果たす(詳細は図3で後記)。
【0032】
また、搬送ローラ3〜8のうち、搬送ローラ5,6は、それぞれ、ニップローラ9,10とともに、張力低下手段(搬送ローラ4,7)による前記前後それぞれの部分の張力の低下の後、長尺基材11における成膜エリアの部分の位置補正を行う位置補正手段としての役割も果たす(詳細は図4で後記)。なお、この位置補正には、長尺基材11の幅方向の補正、長尺基材11の長手方向の前後方向の補正、長尺基材11の上面視で回転方向の補正のいずれも含む。
【0033】
ニップローラ9,10は、それぞれ、搬送ローラ5,6とともに、パターニングを行う場所(図1(b)の「成膜エリア」)で、停止した長尺基材11における成膜エリアの部分の張力を維持する張力維持手段としての役割を果たす。
【0034】
位置センサ21,22は、長尺基材11における近い側のエッジの位置を検出するセンサである。
【0035】
このような長尺基材搬送装置100では、複数の搬送ローラ3〜8を用いたロールツーロール方式で、巻出しロール2としてロール状に巻いた可撓性を有する長尺基材11(例えば樹脂フィルム)を繰り出して搬送し、長尺基材11の表面に機能層のパターニングが行われる際に長尺基材11の搬送を停止させ、停止した長尺基材11の位置補正を行う。以下、図1図6を参照して時系列的に説明する。
【0036】
前記したように、図1では、長尺基材搬送装置100において、長尺基材11の搬送中および搬送停止直後の様子を示している。
【0037】
次に、図1に示すように長尺基材11が停止した後、図2に示すように、ニップローラ9,10を成膜エリア側に移動させることで、搬送ローラ5とニップローラ9、搬送ローラ6とニップローラ10で、それぞれ、長尺基材11の該当部分を挟み、長尺基材11における成膜エリアの部分の張力が維持された状態で長尺基材11を固定する。
【0038】
次に、図2に示すように長尺基材11における成膜エリアの部分の張力が維持された状態で長尺基材11が固定された後、図3に示すように、搬送ローラ4,7をそれぞれ図示の斜め下方向に移動させることで、長尺基材11における成膜エリアの部分の前後の部分を低張力化する。これにより、長尺基材11における成膜エリアの部分を位置補正のために動かしやすくなる。なお、搬送ローラ4,7を移動させる距離は、長尺基材11の素材の特性(弾力性など)に基づいて予め決定しておいてもよいし、あるいは、搬送ローラ4,7の周辺に長尺基材11の張力を検出するセンサを設けておいてその張力が所定の閾値以下になったことにより搬送ローラ4,7の移動を停止させることで決定してもよい。
【0039】
次に、図3に示すように長尺基材11における成膜エリアの部分の前後の部分を低張力化した後、図4に示すように、搬送ローラ5とニップローラ9の組、および、搬送ローラ6とニップローラ10の組の両方あるいは片方を動かすことで、長尺基材11における成膜エリアの部分の位置補正を行う。この位置補正を行う際は、位置センサ21,22による長尺基材11における近い側のエッジの位置の検出結果を用いればよい。なお、図4では、長尺基材11における成膜エリアの部分を少し図面の上方に移動させることで、位置補正を行ったものとしている。また、この位置補正の後、長尺基材11における成膜エリアの部分のパターニング(成膜)を行う。
【0040】
次に、図4に示すように長尺基材11における成膜エリアの部分の位置補正および成膜を行った後、図5に示すように、搬送ローラ4,7を元の位置(図1の位置)まで移動させて、長尺基材11における成膜エリアの部分の前後の部分を張って、張力を回復させる。なお、この成膜エリアにおけるパターニング(パターン成膜)が終わった後は、長尺基材11における成膜エリアの部分が位置補正後の位置状態を厳密に維持できていなくても問題はない。
【0041】
次に、図5に示すように搬送ローラ4,7を元の位置まで移動させた後、図6に示すように、ニップローラ9を搬送ローラ5から離れるように移動させ、ニップローラ10を搬送ローラ6から離れるように移動させることで、長尺基材11を解放し、長尺基材11の搬送を開始する(図1の状態に戻る)。
【0042】
このような図1図6に示した一連の動作を、長尺基材搬送装置100における1つ以上の成膜エリアそれぞれで行うことで、ロールツーロール方式で長尺基材11を高精度に位置補正しながらパターニング(成膜)を行うことができる。また、成膜エリアが複数の場合、位置補正をしないと長尺基材11における幅方向のずれが積算するおそれがあるが、本実施形態の手法によれば、パターニングのたびに位置補正を行うので、高精度の位置補正を実現できる。
【0043】
なお、すべてのパターニングを終えた長尺基材11は順次、巻き取られる。巻取りロール(元巻)1(巻き取られた長尺基材11)は、別工程で所定のサイズに切断されることで、有機EL素子が完成する。なお、最後のパターニングの後に、長尺基材11を保護膜で被覆する処理を行うようにしてもよい。
【0044】
次に、図8を参照して、長尺基材搬送装置100の変形例について説明する。変形例の長尺基材搬送装置100は、図1と比較して、ニップローラ9,10が除かれ、代わりに8つのテンター手段31(張力維持手段、位置補正手段)が配置されている。
【0045】
8つのテンター手段31は、パターニングを行う場所(図1の「成膜エリア」)における長尺基材11の幅方向の両端それぞれに4つずつ配置されている。8つのテンター手段31がそれぞれ長尺基材11を挟持し、長尺基材11を外側に所定の力で引っ張ることで、長尺基材11における成膜エリアの部分の張力を維持することができる。また、長尺基材11を挟持した8つのテンター手段31を一括して移動させることで、長尺基材11における成膜エリアの部分の位置補正をすることができる。なお、このテンター手段31を用いた位置補正によれば、ニップローラ9,10を用いた位置補正と比較して、低コストなどのメリットが考えられる。
【0046】
以上で本実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
例えば、搬送ローラ3〜8のうち、長尺基材11における機能層の成膜面に接触する搬送ローラ4,7(図1参照)は、長尺基材11におけるパターン成膜部に対応する部分が窪んで機能層と非接触になっている段付ローラであり、かつ、長尺基材11は、厚さが50〜200μmの樹脂フィルムであってもよい。その場合、従来技術では、段付ローラである搬送ローラ4,7の段の部分が長尺基材11に若干食い込むことになり、長尺基材11の位置補正のための動きをスムースに行うことが困難であるが、本実施形態の手法では、長尺基材11の位置補正時に、位置補正する部分の前後の張力を低下させることで、長尺基材11の位置補正のための動きをスムースに行うことが容易になる。また、厚さが50〜200μmという薄い樹脂フィルムの場合、強度の問題もあって高張力のまま位置補正を行うことが好ましくないが、本発明の手法により、低張力で樹脂フィルムにダメージを与えることなく位置補正を行うことができる。
【0047】
また、長尺基材11の搬送を停止させてから行う処理としては、機能層のパターニング(パターン成膜(ウエット、ドライ))のほか、機能層のパターン除去、シート部材の貼合、シート断裁など、多くの処理(機能層のパターニング等の処理)が適用可能である。
また、テンター手段31は、8つでなくても、張力維持手段および位置補正手段として充分に機能できるのであれば、他の個数であってもよい。
また、長尺基材11の素材は、樹脂に限定されず、アルミ等の金属であってもよい。
【0048】
また、長尺基材11の位置補正の際、位置センサ21,22で長尺基材11のエッジを検出する代わりに、長尺基材11に予め付与したマークを検出する方法を採用してもよい。
また、ニップローラ9,10とテンター手段31とを併用してもよい。
【0049】
また、ロールツーロール方式でキャンローラを用いる場合、キャンローラの前後で長尺基材を搬送ローラとニップローラで挟持固定し、長尺基材をキャンローラから浮かせることで張力を低下させるようにしてもよい。
その他、各部や各手段の具体的な構成について、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 巻取りロール
2 巻出しロール
3 搬送ローラ
4 搬送ローラ(張力低下手段)
5 搬送ローラ(張力維持手段、位置補正手段)
6 搬送ローラ(張力維持手段、位置補正手段)
7 搬送ローラ(張力低下手段)
8 搬送ローラ
9,10 ニップローラ(張力維持手段、位置補正手段)
11 長尺基材
12 第1電極
13 有機層
14 第2電極
21,22 位置センサ
31 テンター手段(張力維持手段、位置補正手段)
41 有機EL素子
100 長尺基材搬送装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8