(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記P型半導体層の前記界面におけるマグネシウム(Mg)の濃度は、前記第2のN型半導体層におけるケイ素(Si)の濃度の半分以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.実施形態:
図1は、半導体装置10の構成を模式的に示す断面図である。半導体装置10は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置10は、電力制御に用いられ、パワーデバイスとも呼ばれる。
【0015】
半導体装置10は、基板110と、第1のN型半導体層120と、P型半導体層130と、第2のN型半導体層140とを備える。半導体装置10は、NPN型の半導体装置であり、第1のN型半導体層120と、P型半導体層130と、第2のN型半導体層140とが順に接合した構造を有する。
【0016】
半導体装置10の基板110には、MOCVD装置を用いた結晶成長によって、第1のN型半導体層120と、P型半導体層130と、第2のN型半導体層140とが順に積層した状態で形成されている。他の実施形態では、基板110と第1のN型半導体層120と間に真性半導体層(アンドープ半導体層)が形成されてもよいし、第1のN型半導体層120とP型半導体層130との間に真性半導体層が形成されてもよい。
【0017】
図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。
図1のXYZ軸のうち、X軸は、基板110に対して第1のN型半導体層120が積層する積層方向に沿った軸である。X軸に沿ったX軸方向のうち、+X軸方向は、基板110から第1のN型半導体層120に向かう方向であり、−X軸方向は、+X軸方向に対向する方向である。
図1のXYZ軸のうち、Y軸およびZ軸は、Z軸に直交すると共に相互に直交する軸である。Y軸に沿ったY軸方向のうち、+Y軸方向は、
図1の紙面左から紙面右に向かう方向であり、−Y軸方向は、+Y軸方向に対向する方向である。Z軸に沿ったZ軸方向のうち、+Z軸方向は、
図1の紙面奥から紙面手前に向かう方向であり、−Z軸方向は、+Z軸方向に対向する方向である。
【0018】
半導体装置10の基板110は、Y軸およびZ軸に沿って広がる板状をなす。本実施形態では、基板110は、窒化ガリウム(GaN)から主になると共に、第1のN型半導体層120よりも高い濃度でケイ素(Si)をドナーとして含有する。基板110は、半導体装置10の各半導体層を定着および支持可能に構成された部位であればよく、他の実施形態では、例えば、ケイ素(Si)から主になる部位であってもよい。
【0019】
基板110は、界面111と、界面112とを有する。基板110の界面111は、Y軸およびZ軸に平行かつ−X軸方向を向いた面である。基板110の界面112は、Y軸およびZ軸に平行かつ+X軸方向を向いた面であり、界面111に背向する。界面112は、第1のN型半導体層120に隣接する。
【0020】
本実施形態では、基板110の界面111には、ドレイン電極とも呼ばれる電極210が形成されている。本実施形態では、電極210は、チタン(Ti)からなる層にアルミニウム(Al)からなる層を積層した構造を有する電極である。他の実施形態では、電極210は、TiおよびAlの他、白金(Pt)、Co(コバルト)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、金(Au)等の導電性材料の少なくとも1つからなる電極であってもよい。
【0021】
基板110の厚さは、界面111と界面112との間におけるX軸方向に沿った距離であり、本実施形態では、320μm(マイクロメートル)である。他の実施形態では、基板110の厚さは、300μm〜1mm(ミリメートル)の範囲から選択される他の値であってもよい。
【0022】
半導体装置10における第1のN型半導体層120は、基板110に積層した状態で形成され、Y軸およびZ軸に沿って広がる層をなす。第1のN型半導体層120は、窒化ガリウム(GaN)から主になると共に、ケイ素(Si)をドナーとして含有する。第1のN型半導体層120は、「n
-−GaN」とも呼ばれる。
【0023】
第1のN型半導体層120は、界面121と、界面122とを有する。第1のN型半導体層120における界面121は、Y軸およびZ軸に平行かつ−X軸方向を向いた面である。界面121は、基板110に隣接する。第1のN型半導体層120における界面122は、Y軸およびZ軸に平行かつ+X軸方向を向いた面であり、界面121に背向する。界面122は、P型半導体層130に隣接する。
【0024】
第1のN型半導体層120の厚さは、界面121と界面122との間におけるX軸方向に沿った距離であり、本実施形態では、10μmである。他の実施形態では、第1のN型半導体層120の厚さは、5〜15μmの範囲から選択される他の値であってもよい。
【0025】
半導体装置10のP型半導体層130は、第1のN型半導体層120に積層した状態で形成され、Y軸およびZ軸に沿って広がる層をなす。P型半導体層130は、窒化ガリウム(GaN)から主になると共に、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含有する。P型半導体層130は、「p−GaN」とも呼ばれる。
【0026】
P型半導体層130は、界面131と、界面132とを有する。P型半導体層130の界面131は、Y軸およびZ軸に平行かつ−X軸方向を向いた面である。界面131は、第1のN型半導体層120に隣接する。P型半導体層130の界面132は、Y軸およびZ軸に平行かつ+X軸方向を向いた面であり、界面131に背向する。界面132は、第2のN型半導体層140に隣接する。
【0027】
本実施形態では、P型半導体層130の界面132には、第2のN型半導体層140に加え、Pボディ電極とも呼ばれる電極230が形成されている。本実施形態では、電極230は、ニッケル(Ni)からなる層に金(Au)からなる層を積層した構造を有する電極である。他の実施形態では、電極230は、NiおよびAuの他、白金(Pt)、Co(コバルト)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)等の導電性材料の少なくとも1つからなる電極であってもよい。
【0028】
P型半導体層130の厚さは、界面131と界面132との間におけるX軸方向に沿った距離であり、本実施形態では、1μmである。他の実施形態では、P型半導体層130の厚さは、0.3〜2μmの範囲から選択される他の値であってもよい。
【0029】
半導体装置10における第2のN型半導体層140は、P型半導体層130に積層した状態で形成され、Y軸およびZ軸に沿って広がる層をなす。第2のN型半導体層140は、窒化ガリウム(GaN)から主になると共に、第1のN型半導体層120よりも高い濃度でケイ素(Si)をドナーとして含有する。第2のN型半導体層140は、「n
+−GaN」とも呼ばれる。
【0030】
第2のN型半導体層140は、界面141と、界面142とを有する。第2のN型半導体層140における界面141は、Y軸およびZ軸に平行かつ−X軸方向を向いた面である。界面141は、P型半導体層130に隣接する。第2のN型半導体層140における界面142は、Y軸およびZ軸に平行かつ+X軸方向を向いた面であり、界面141に背向する。
【0031】
本実施形態では、第2のN型半導体層140の界面142には、ソース電極とも呼ばれる電極240が形成されている。本実施形態では、電極240は、チタン(Ti)からなる層にアルミニウム(Al)からなる層を積層した構造を有する電極である。他の実施形態では、電極210は、TiおよびAlの他、白金(Pt)、Co(コバルト)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、金(Au)等の導電性材料の少なくとも1つからなる電極であってもよい。
【0032】
第2のN型半導体層140の厚さは、界面141と界面142との間におけるX軸方向に沿った距離であり、本実施形態では、0.2μmである。他の実施形態では、第2のN型半導体層140の厚さは、0.1〜0.5μmの範囲から選択される他の値であってもよい。
【0033】
本実施形態では、第1のN型半導体層120とP型半導体層130との各表面にわたって絶縁膜330が形成され、第1のN型半導体層120とP型半導体層130と第2のN型半導体層140との各表面にわたって絶縁膜340が形成されている。本実施形態では、絶縁膜330,340は、酸化アルミニウム(Al
2O
3)からなる層である。他の実施形態では、絶縁膜330,340は、アルミニウム(Al)のシリケート化合物からなる層であってもよいし、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)等の各酸化物、または、これらのシリケート化合物からなる層であってもよい。本実施形態では、絶縁膜330を形成する物質と、絶縁膜340を形成する物質とは、同じ物質であるが、他の実施形態では、相互に異なる物質であってもよい。
【0034】
本実施形態では、ゲート電極とも呼ばれる電極250が、第1のN型半導体層120とP型半導体層130と第2のN型半導体層140との各表面にわたって、絶縁膜340を間に挟む状態で形成されている。本実施形態では、電極250は、ニッケル(Ni)からなる層に金(Au)からなる層を積層した構造を有する電極である。他の実施形態では、電極250は、NiおよびAuの他、白金(Pt)、Co(コバルト)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、ポリシリコン等の導電性材料の少なくとも1つからなる電極であってもよい。
【0035】
図2は、半導体装置10における各半導体層におけるドーパントの濃度分布を示す説明図である。
図2には、各半導体層におけるドーパントの濃度分布を示す3つの片対数グラフが図示されている。
図2では、各グラフの横軸は、各半導体層におけるX軸に沿った位置を示し、各グラフにおける横軸の縮尺は、各半導体層の厚さに応じた縮尺である。
図2では、各グラフの縦軸は、対数目盛を用いて各ドーパントの濃度を示し、各グラフ間で縦軸の縮尺は同じである。
【0036】
図2の紙面左側には、第1のN型半導体層120におけるSiの濃度分布を示すグラフが図示されている。横軸に表される位置x
n1は、界面121からX軸に沿って+X軸方向に進んだ距離を示す。界面121では、位置x
n1は値「0」をとり、界面122では、位置x
n1は値「dn1」をとる。縦軸に表される濃度y
n1は、位置x
n1におけるSiの濃度を示す。濃度y
n1は、式f(x
n1)を用いて表される。界面121では、濃度y
n1は値「f(0)」をとり、界面122では、濃度y
n1は値「f(dn1)」をとる。
【0037】
本実施形態では、濃度y
n1は、第1のN型半導体層120の全域にわたって一定であり、値「f(0)」と値「f(dn1)」とは等しい。本実施形態では、濃度y
n1は、第1のN型半導体層120の全域にわたって8×10
15cm
-3である。他の実施形態では、濃度y
n1は、第1のN型半導体層120に要求される耐電圧特性、第1のN型半導体層120の厚さ、および他の半導体層との関係に基づいて設計された他の値であってもよい。他の実施形態では、濃度y
n1は、位置x
n1に応じて異なる値であってもよい。
【0038】
図2の紙面右側には、第2のN型半導体層140におけるSiの濃度分布を示すグラフが図示されている。横軸に表される位置x
n2は、界面141からX軸に沿って+X軸方向に進んだ距離を示す。界面141では、位置x
n2は値「0」をとり、界面142では、位置x
n2は値「dn2」をとる。縦軸に表される濃度y
n2は、位置x
n2におけるSiの濃度を示す。濃度y
n2は、式h(x
n2)を用いて表される。界面141では、濃度y
n2は値「h(0)」をとり、界面142では、濃度y
n2は値「h(dn2)」をとる。第2のN型半導体層140における濃度y
n2の平均値は、第1のN型半導体層120における濃度y
n1の平均値よりも高い。
【0039】
本実施形態では、濃度y
n2は、第2のN型半導体層140の全域にわたって一定であり、値「h(0)」と値「h(dn1)」とは等しい。本実施形態では、濃度y
n2は、第2のN型半導体層140の全域にわたって4×10
18cm
-3である。他の実施形態では、濃度y
n2は、第2のN型半導体層140に要求される電気的特性(例えば、キャリア濃度、移動度、シート抵抗、抵抗率など)、第2のN型半導体層140の厚さ、および他の半導体層との関係に基づいて設計された他の値であってもよい。他の実施形態では、濃度y
n2は、位置x
n2に応じて異なる値であってもよい。
【0040】
図2の紙面中央には、P型半導体層130におけるMgの濃度分布を示すグラフが図示されている。横軸に表される位置x
pは、界面131からX軸に沿って+X軸方向に進んだ距離を示す。界面131では、位置x
pは値「0」をとり、界面132では、位置x
pは値「dp」をとる。縦軸に表される濃度y
pは、P型半導体層130におけるMgの濃度を示す。濃度y
pは、式g(x
p)を用いて表される。界面131では、濃度y
pは値「g(0)」をとり、界面132では、濃度y
pは値「g(dp)」をとる。P型半導体層130は、次の式1〜3を満たす。
【0042】
式1は、P型半導体層130におけるMgの総数が、第1のN型半導体層120におけるSiの総数よりも多いことを示す。式2は、P型半導体層130の厚さが、第1のN型半導体層120の厚さよりも小さいことを示す。式3は、界面132における濃度y
pである値「g(dp)」が、2×10
18cm
-3以下であることを示す。
【0043】
本実施形態では、位置x
pが値「0」から値「dp」へと増加するに連れて、濃度y
pは、値「g(0)」から値「g(dp)」へと減少する。本実施形態では、値「g(0)」は、2×10
19cm
-3であり、値「g(dp)」は、1×10
18cm
-3である。
【0044】
Mgの混入による第2のN型半導体層140の劣化を抑制する観点から、界面132における濃度y
pである値「g(dp)」は、第2のN型半導体層140における濃度y
n2の平均値よりも低い。本実施形態では、値「g(dp)」は、第2のN型半導体層140における濃度y
n2の半分以下(すなわち、2×10
18cm
-3以下)である。
【0045】
図3は、Mgの混入によるN型半導体層の劣化を評価した結果を示す表である。
図3の評価試験では、発明者は、試料S1および試料S2を用意し、各試料について、N型半導体層におけるホール効果に関する電気的特性として、キャリア濃度と、移動度と、シート抵抗と、抵抗率とを測定した。試料S1は、Mgを含有するP型半導体層を隣接させた状態でN型半導体層を形成した試料である。試料S2は、試料S1との比較のために、真性半導体層を隣接させた状態でN型半導体層を形成した試料である。
【0046】
図4は、
図3の評価試験に用いた試料S1および試料S2の構成を模式的に示す断面図である。
図4には、
図1と同様に、XYZ軸が図示されている。
【0047】
試料S1は、基板810と、アンドープ半導体層820と、P型半導体層830と、N型半導体層840とを備える。試料S1の基板810には、MOCVD装置を用いた結晶成長によって、アンドープ半導体層820と、P型半導体層830と、N型半導体層840とが順に積層した状態で形成されている。
【0048】
試料S1の基板810は、単結晶サファイアからなり、Y軸およびZ軸に沿って広がる板状をなす。基板810とアンドープ半導体層820との間には、窒化アルミニウム(AlN)からなるバッファ層815が形成されている。試料S1のアンドープ半導体層820は、基板810の+X軸方向側に形成され、窒化ガリウム(GaN)から主になる真性半導体層であり、「アンドープGaN」とも呼ばれる。試料S1のP型半導体層830は、アンドープ半導体層820の+X軸方向側に形成されたp−GaNである。P型半導体層830の厚さは、0.7μmである。P型半導体層830におけるMgの濃度は、全域にわたって1.8×10
18cm
-3である。試料S1のN型半導体層840は、P型半導体層830の+X軸方向側に形成されたn
+−GaNである。N型半導体層840の厚さは、0.2μmである。N型半導体層840におけるSiの濃度は、全域にわたって6×10
18cm
-3である。
【0049】
試料S2は、基板910と、アンドープ半導体層920と、アンドープ半導体層930と、N型半導体層940とを備える。試料S2の基板910には、MOCVD装置を用いた結晶成長によって、アンドープ半導体層920と、アンドープ半導体層930と、N型半導体層940とが順に積層した状態で形成されている。
【0050】
試料S2の基板910は、単結晶サファイアからなり、Y軸およびZ軸に沿って広がる板状をなす。基板910とアンドープ半導体層920との間には、窒化アルミニウム(AlN)からなるバッファ層915が形成されている。試料S2のアンドープ半導体層920は、基板910の+X軸方向側に形成されている点を除き、試料S1のアンドープ半導体層820と同様である。試料S2のアンドープ半導体層930は、アンドープ半導体層920の+X軸方向側に形成されたアンドープGaNである。アンドープ半導体層930の厚さは、0.7μmである。試料S2のN型半導体層940は、アンドープ半導体層930の+X軸方向側に形成されている点を除き、試料S1のN型半導体層840と同様である。
【0051】
図3の説明に戻り、
図3の結果から、第2のN型半導体層140に対応するN型半導体層に隣接する半導体層が、Mgを含有するP型半導体層である場合、N型半導体層の電気的特性であるキャリア濃度、移動度、シート抵抗および抵抗率がそれぞれ劣化することが確認された。
図3の結果から、P型半導体層830におけるMgの濃度が1.8×10
18cm
-3である場合、試料S1のN型半導体層840のキャリア濃度は、試料S2のN型半導体層940と比較して6.3×10
17cm
-3低下することが確認された。
図3の結果から、N型半導体層840の厚さが0.2μm程度であれば、N型半導体層840のキャリア濃度は、P型半導体層830におけるMgの濃度の半分程度、低下すると考えられる。
【0052】
図5は、試料S1におけるMgの濃度分布を分析した結果を示すグラフである。発明者は、二次イオン質量分析計(SIMS:Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometer)を用いて
図5の結果を得た。
図5のグラフでは、横軸は、試料S1の+X軸方向側からX軸に沿った深さを示し、縦軸は、対数目盛を用いてMgの濃度を示す。
図5の領域R1は、N型半導体層840が存在する範囲を示す。
図5の領域R2は、P型半導体層830が存在する範囲を示す。
図5の領域R3は、アンドープ半導体層820が存在する範囲を示す。
図5に施されたハッチングは、SIMSによってMgを検出可能な下限値である8×10
15cm
-3以下の範囲を示す。
図5の結果から、N型半導体層840に混入したMgは、P型半導体層830に隣接する側から+X軸方向側に向かうに連れて、P型半導体層830におけるMgの濃度から徐々に減少することが確認された。
【0053】
図3および
図5の結果から、Mgの混入による第2のN型半導体層140の劣化を抑制する観点から、界面132における濃度y
pは、第2のN型半導体層140における濃度y
n2よりも低いことが好ましく、第2のN型半導体層140における濃度y
n2の半分以下とすることが更に好ましい。
【0054】
図6は、半導体装置10の製造方法を示す工程図である。半導体装置10を製造する際には、まず、製造者は、MOCVD装置の反応室に基板110を配置する(工程P122)。
【0055】
反応室に基板110を配置した後(工程P122)、MOCVD装置は、製造者の操作に基づいて、ケイ素(Si)を混合した原料ガスを用いた結晶成長によって、基板110上に第1のN型半導体層120を形成する(工程P124)。本実施形態では、原料ガスは、トリメチルガリウム(TMGa:Tri-Methyl-Gallium)と、アンモニア(NH
3)と、水素(H
2)とを含有するガスであり、MOCVD装置の配管を通じて反応室に供給される。工程P124では、MOCVD装置は、反応室に供給される前の原料ガスに対してSiを混合する。
【0056】
基板110上に第1のN型半導体層120を形成した後(工程P124)、MOCVD装置は、製造者の操作に基づいて、マグネシウム(Mg)を混合した原料ガスを用いた結晶成長によって、第1のN型半導体層120上にP型半導体層130を形成する(工程P126)。工程P126では、MOCVD装置は、反応室に供給される前の原料ガスに対してMgを混合する。工程P126では、P型半導体層130の界面132におけるMgの濃度が、第2のN型半導体層140におけるSiの濃度よりも低くなるように、MOCVD装置は、P型半導体層130を形成する間、原料ガスに混合されるMgの量を調整する。
【0057】
第1のN型半導体層120上にP型半導体層130を形成した後(工程P126)、MOCVD装置は、製造者の操作に基づいて、ケイ素(Si)を混合した原料ガスを用いた結晶成長によって、P型半導体層130上に第2のN型半導体層140を形成する(工程P128)。工程P128では、MOCVD装置は、反応室に供給される前の原料ガスに対してSiを混合する。工程P128では、第2のN型半導体層140におけるSiの濃度が、第1のN型半導体層120よりも高くなるように、MOCVD装置は、原料ガスに混合されるSiの量を調整する。
【0058】
P型半導体層130上に第2のN型半導体層140を形成した後(工程P128)、製造者は、半導体装置10の中間製品をMOCVD装置から取り出し、各半導体層に対して電極を形成する(工程P150)。本実施形態では、工程P150では、電極210,230,240,250、および絶縁膜330,340が、それぞれ形成される。電極を形成した後(工程P150)、半導体装置10が完成する。
【0059】
以上説明した実施形態によれば、P型半導体層130の界面132におけるMgの濃度が、第2のN型半導体層140におけるSiの濃度より低いため、第2のN型半導体層140の形成時におけるMgのメモリ効果および拡散に起因する第2のN型半導体層140へのMgの混入を抑制することができる。具体的には、第2のN型半導体層140の形成に先立ってP型半導体層130の界面132を形成する際(工程P126)に、原料ガスに混合するMgの量を抑制するため、第2のN型半導体層140を形成する際(工程P128)に、メモリ効果による第2のN型半導体層140へのMgの混入を抑制することができる。また、P型半導体層130の界面132におけるMgの濃度を抑制するため、第2のN型半導体層140を形成する際(工程P128)に、P型半導体層130から第2のN型半導体層140へのMgの拡散を抑制することができる。これらの結果、第2のN型半導体層140の電気的特性を向上させることができる。
【0060】
また、P型半導体層130の界面132におけるMgの濃度が、第2のN型半導体層140におけるSiの濃度の半分以下であるため、第2のN型半導体層140の電気的特性を十分に向上させることができる。また、P型半導体層130の界面132におけるMgの濃度が、2×10
18cm
-3以下であるため、第2のN型半導体層140の電気的特性を十分に向上させることができる。
【0061】
B.変形例:
P型半導体層130におけるMgの濃度分布は、前述の式1〜3を満たす限り、種々の態様で実現することができる。
【0062】
図7は、第1変形例のP型半導体層130におけるMgの濃度分布を示すグラフである。上述した第1実施形態では、P型半導体層130に分布するMgの濃度y
pは、
図2の紙面中央に示す式g1(x
p)を用いて表されるが、第1変形例では、
図7に示す式g1(x
p)を用いて表される。このように、第1変形例は、濃度y
pが式g1(x
p)を用いて表される点を除き、第1実施形態と同様である。第1変形例では、濃度y
pは、位置x
pが値「0」から値「d1」までの間をとる範囲では、値g1(0)を維持し、位置x
pが値「d1」から値「dp」までの間をとる範囲では、値g1(0)よりも小さな値g1(dp)を維持する。第1変形例では、値g1(0)は、2×10
18cm
-3よりも大きい。第1変形例では、値g1(dp)は、1×10
18cm
-3である。
【0063】
図8は、第2変形例のP型半導体層130におけるMgの濃度分布を示すグラフである。上述した第1実施形態では、P型半導体層130に分布するMgの濃度y
pは、
図2の紙面中央に示す式g1(x
p)を用いて表されるが、第2変形例では、
図8に示す式g2(x
p)を用いて表される。このように、第2変形例は、濃度y
pが式g2(x
p)を用いて表される点を除き、第1実施形態と同様である。第2変形例では、位置x
pが値「0」から値「d2」を経て値「dp」へと増加すると、濃度y
pは、値「g2(0)」から値「g2(d2)」まで徐々に増加した後、値「g2(d2)」から値「g2(dp)」まで徐々に減少する。第2変形例では、値g2(0)および値「g2(d2)」は、2×10
18cm
-3よりも大きい。第2変形例では、値「g2(dp)」は、1×10
18cm
-3である。
【0064】
図9は、第3変形例のP型半導体層130におけるMgの濃度分布を示すグラフである。上述した第1実施形態では、P型半導体層130に分布するMgの濃度y
pは、
図2の紙面中央に示す式g1(x
p)を用いて表されるが、第3変形例では、
図9に示す式g3(x
p)を用いて表される。このように、第3変形例は、濃度y
pが式g3(x
p)を用いて表される点を除き、第1実施形態と同様である。第3変形例では、位置x
pが値「0」から値「d3」を経て値「dp」へと増加すると、濃度y
pは、値「g3(0)」から値「g3(d2)」まで徐々に増加した後、値「g3(d3)」から値「g3(dp)」まで徐々に減少する。第3変形例では、値g3(0)は、値「g3(d2)」と同程度の値である。第3変形例では、値「g3(d3)」は、2×10
18cm
-3よりも大きい。第3変形例では、値「g3(dp)」は、1×10
18cm
-3である。
【0065】
図10は、第4変形例のP型半導体層130におけるMgの濃度分布を示すグラフである。上述した第1実施形態では、P型半導体層130に分布するMgの濃度y
pは、
図2の紙面中央に示す式g1(x
p)を用いて表されるが、第1変形例では、
図10に示す式g4(x
p)を用いて表される。このように、第4変形例は、濃度y
pが式g4(x
p)を用いて表される点を除き、第1実施形態と同様である。位置x
pが値「0」から値「d4」を経て値「dp」へと増加すると、濃度y
pは、値「g4(0)」から増減を繰り返して値「g4(dp)」となる途中、値「g4(dp)」よりも小さい最低値「g4(d4)」をとる。第4変形例では、値g4(0)は、2×10
18cm
-3よりも大きい。第4変形例では、値「g4(dp)」は、1×10
18cm
-3である。
【0066】
C.他の実施形態:
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。