特許第5987685号(P5987685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5987685マイクロ波無電極ランプ及びこれを使用した光照射装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987685
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】マイクロ波無電極ランプ及びこれを使用した光照射装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 65/04 20060101AFI20160825BHJP
   H01J 61/52 20060101ALI20160825BHJP
   H05B 41/24 20060101ALI20160825BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20160825BHJP
   F21V 29/50 20150101ALI20160825BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20160825BHJP
【FI】
   H01J65/04 B
   H01J61/52 L
   H05B41/24 N
   F21S2/00 681
   F21V29/02 300
   F21V29/02 510
   F21V29/02 100
   F21Y101:00 300
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-284097(P2012-284097)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-127383(P2014-127383A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000192
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135965
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 要泰
(74)【代理人】
【識別番号】100100169
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和明
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 静二
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−055706(JP,A)
【文献】 特開平10−050112(JP,A)
【文献】 特開平06−013052(JP,A)
【文献】 特開平10−149803(JP,A)
【文献】 特開平02−021503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 23/00−27/00、29/00、31/00、
31/04−37/00、99/00、
H01J 61/50−65/08、
H05B 41/24−41/282
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波発振器と、該マイクロ波発振器に付属するアンテナと、該アンテナからのマイクロ波エネルギーを受けて発光する無電極ランプと、該無電極ランプから放射される光を制御する楕円面あるいは放物面の形状を有する反射鏡と、矩形の筐体と、該筐体に装着された冷却用送風ダクトとを有する光照射装置において、
前記無電極ランプは放電容器と該放電容器の両端の突起部を有し、前記突起部には回転翼が装着され、前記冷却用送風ダクトから供給された冷却用空気が前記回転翼に衝突することによって、前記無電極ランプは中心軸線周りに回転することを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光照射装置において、
前記無電極ランプの両端の突起部に形成された被係合部が、前記筐体の内壁に形成された係合部に係合されることによって、前記無電極ランプは中心軸線周りに回転することを特徴とする光照射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光照射装置において、
前記筐体の内壁に形成された係合部には前記無電極ランプの軸線方向に沿って伸縮するバネが装着されていることを特徴とする光照射装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光照射装置において、
前記回転翼は、前記無電極ランプの両端の突起部に装着された円筒部と該円筒部より半径方向外方に延びるブレードと該ブレードの先端に設けられた空気受部とを有することを特徴とする光照射装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光照射装置において、
前記回転翼は、前記無電極ランプの両端の突起部より半径方向外方に延びるブレードと該ブレードの先端に設けられた空気受部とを有することを特徴とする光照射装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光照射装置において、
前記無電極ランプの放電容器と突起部は石英ガラス製であり、前記回転翼はセラミック製であることを特徴とする光照射装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光照射装置において、
前記冷却用送風ダクトからの冷却用空気は、前記無電極ランプの消灯時にも供給されることを特徴とする光照射装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光照射装置において、
前記冷却用送風ダクトからの冷却用空気の供給量は、前記無電極ランプへの供給電力の大きさに応じて変化させることを特徴とする光照射装置。
【請求項9】
放電容器と該放電容器の両端の突起部を有するマイクロ波給電方式のマイクロ波無電極ランプにおいて、前記突起部には直径方向両側に延びる回転翼が装着されていることを特徴とするマイクロ波無電極ランプ。
【請求項10】
請求項9記載のマイクロ波無電極ランプにおいて、
前記回転翼は、前記無電極ランプの両端の突起部に装着された円筒部と該円筒部より半径方向外方に延びるブレードと該ブレードの先端に設けられた空気受部とを有することを特徴とするマイクロ波無電極ランプ。
【請求項11】
請求項9記載のマイクロ波無電極ランプにおいて、
前記回転翼は、前記無電極ランプの両端の突起部より半径方向外方に延びるブレードと該ブレードの先端に設けられた空気受部とを有することを特徴とするマイクロ波無電極ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波給電方式のマイクロ波無電極ランプ、及び、これを使用する光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波無電極ランプを搭載する光照射装置は、マイクロ波発振器とマイクロ波空洞を備え、マイクロ波空洞には放電管(発光管)として無電極ランプが設けられている。マイクロ波空洞には、更に、無電極ランプからの放射光を方向付けする反射鏡が設けられている。マイクロ波無電極ランプを搭載した光照射装置は、インク、塗料、樹脂等の硬化処理又は紫外線殺菌に用いられている。特許文献1には、可視光線及び紫外線を放射させるマイクロ波無電極光源装置が開示されている。
【0003】
マイクロ波発振器からのマイクロ波によってマイクロ波空洞に定在波が生成される。無電極ランプ内に、定在波の2つの腹とその間の1つの節が生じる。定在波の腹の部分の温度は比較的高く、節の部分の温度は比較的低い。無電極ランプの軸線方向の温度は不均一となる。
【0004】
無電極ランプは、適切に冷却される必要がある。無電極ランプの冷却不足、過冷却、及び、不均一冷却は、ランプ寿命の低下の原因となる。そこで、無電極ランプに対して様々な冷却方法が提案されている。特許文献2には、2つの反射パネルとその間の中間部材の間に形成されたスロットを経由して、空気を流すことによって無電極ランプを冷却する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平3−37277号公報
【特許文献2】特表2003−531463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のマイクロ波無電極ランプを搭載する光照射装置に設けられた冷却機構は、無電極ランプの軸線方向の温度の均一化を目的としており、無電極ランプの外周面の円周方向の温度の均一化を目的とするものではない。従って、従来の技術では、無電極ランプの外周面の円周方向の温度は必ずしも均一ではなかった。例えば、特許文献2に記載された冷却方法では、無電極ランプの外周面のうち、冷却用空気が直接衝突する側は十分に冷却されるが、その反対側では、冷却用空気が直接衝突しないため冷却不足となる。
【0007】
また、無電極ランプを交換するとき、通常、その外周面を手で掴んで装置から取り外し、又は、取り付ける。そのとき、意図しないで、無電極ランプの外周面が汚染される場合がある。例えば、無電極ランプの外周面にナトリウム等を含むアルカリ成分が付着することがある。無電極ランプは石英製である。ランプの点灯中は高温となるため、付着したアルカリ成分が石英ガラスを侵食する可能性がある。従って、無電極ランプを交換するとき、外周面に手が触れないことが好ましい。
【0008】
そこで本発明の目的は、無電極ランプの外周面の温度を円周方向に沿って均一化することができ、更に、無電極ランプを交換するとき、外周面をアルカリ成分等によって汚染されることがないマイクロ波無電極ランプを使用した光照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、マイクロ波発振器と、該マイクロ波発振器に付属するアンテナと、該アンテナからのマイクロ波エネルギーを受けて発光する無電極ランプと、該無電極ランプから放射される光を制御する楕円面あるいは放物面の形状を有する反射鏡と、矩形の筐体と、該筐体に装着された冷却用送風ダクトとを有する光照射装置において、
前記無電極ランプは放電容器と該放電容器の両端の突起部を有し、前記突起部には回転翼が装着され、前記冷却用送風ダクトから供給された冷却用空気が前記回転翼に衝突することによって、前記無電極ランプは中心軸線周りに回転する。
【0010】
本発明の実施形態によると、前記光照射装置において、
前記無電極ランプの両端の突起部に形成された被係合部が、前記筐体の内壁に形成された係合部に係合することによって、前記無電極ランプは中心軸線周りに回転してよい。
【0011】
本発明の実施形態によると、前記光照射装置において、
前記筐体の内壁に形成された係合部には前記無電極ランプの軸線方向に沿って伸縮するバネが装着されてよい。
【0012】
本発明の実施形態によると、前記光照射装置において、
前記回転翼は、前記無電極ランプの両端の突起部に装着された円筒部と該円筒部より半径方向外方に延びるブレードと該ブレードの先端に設けられた空気受部とを有してよい。
【0013】
本発明の実施形態によると、前記光照射装置において、
前記回転翼は、前記無電極ランプの両端の突起部より半径方向外方に延びるブレードと該ブレードの先端に設けられた空気受部とを有してよい。
【0014】
本発明の実施形態によると、前記光照射装置において、
前記無電極ランプの放電容器と突起部は石英ガラス製であり、前記回転翼はセラミック製であってよい。
【0015】
本発明の実施形態によると、前記光照射装置において、
前記冷却用送風ダクトからの冷却用空気は、前記無電極ランプの消灯時にも供給されてよい。
【0016】
本発明の実施形態によると、前記光照射装置において、
前記冷却用送風ダクトからの冷却用空気の供給量は、前記無電極ランプへの供給電力の大きさに応じて変化させてよい。
【0017】
本発明によると、放電容器と該放電容器の両端の突起部を有するマイクロ波給電方式のマイクロ波無電極ランプにおいて、前記突起部には直径方向両側に延びる回転翼が装着されてよい。
【0018】
本発明の実施形態によると、前記マイクロ波無電極ランプにおいて、
前記回転翼は、前記無電極ランプの両端の突起部に装着された円筒部と該円筒部より半径方向外方に延びるブレードと該ブレードの先端に設けられた空気受部とを有してよい。
【0019】
本発明の実施形態によると、前記マイクロ波無電極ランプにおいて、
前記回転翼は、前記無電極ランプの両端の突起部より半径方向外方に延びるブレードと該ブレードの先端に設けられた空気受部とを有してよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、マイクロ波無電極ランプを使用した光照射装置において、無電極ランプの外周面の温度を円周方向に沿って均一化することができ、更に、無電極ランプを交換するとき、外周面をアルカリ成分等によって汚染されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A図1Aは、本実施形態に係るマイクロ波無電極ランプを使用した光照射装置の一例を示す概略斜視図である。
図1B図1Bは、図1Aの光照射装置を正面から見た概略正面図である。
図2図2は、本実施形態に係る光照射装置の筐体の前側内部の断面構成を示す図である。
図3図3は、本実施形態に係る光照射装置に使用されるランプの一例である直管型無電極UVランプを示す図である。
図4図4は本実施形態の無電極ランプの両側の突起部に設けられた回転翼の構造の例を示す図である。
図5A図5Aは、本実施形態の無電極ランプの両側の突起部に設けられる回転翼の断面構成の例を示す図である。
図5B図5Bは、回転翼の端面構成の例を説明する図である。
図6図6は、回転翼の他の例を説明する図である。
図7図7は、回転翼の構造の他の例を説明する図である。
図8A図8Aは、本実施形態の無電極ランプの両端の軸受構造の例を説明する図である。
図8B図8Bは、本実施形態の無電極ランプの両端の軸受構造の他の例を説明する図である。
図8C図8Cは、本実施形態の無電極ランプの両端の軸受構造の更に他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る無電極ランプ及びこれを使用した光照射装置の実施形態に関して、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施形態は、例示であって、本発明を何等限定するものではないことを承知されたい。
【0023】
図1A及び図1Bは、本実施形態に係るマイクロ波無電極ランプを使用した光照射装置の一例を説明する図である。図1Aは、光照射装置10の斜視図である。図1Bは、図1Aの光照射装置10を正面から見た概略正面図である。図示のように、光照射装置10のランプ軸線方向に沿ってX軸、光照射装置10からの発光方向(矢印方向)に沿ってZ軸、X−Z面に垂直方向にY軸を設定する。
【0024】
光照射装置10は、矩形の筐体4を有し、筐体4の後側内部にマイクロ波発振器3(図示なし)が設けられ、筐体4の上側には冷却用送風ダクト6(図1Bでは省略)が取り付けられている。光照射装置10は、更に、マイクロ波発振器3に付属するアンテナ8と、アンテナ8からのマイクロ波エネルギーを受けて発光する無電極ランプ12と、無電極ランプ12の軸線に沿って配置された反射鏡14を有する。反射鏡14によって囲まれた空間は、マイクロ波空洞5を形成している。無電極ランプ12は、マイクロ波空洞5に配置されている。
【0025】
尚、本実施形態の無電極ランプ12では、両端の突起部に回転翼が設けられているが、図1A及び図1Bでは、その図示は省略されている。更に、本実施形態では、無電極ランプ12の両端の突起部に形成された被係合部は、筐体4の両側の内壁に形成された係合部に係合するように構成されているが、その構造は図1A及び図1Bでは、省略されている。
【0026】
マイクロ波は、波長1m〜100μm、周波数300MHz〜3THzの電磁波を指し、電波の中で最も短い波長域である。マイクロ波発振器3として、マグネトロン、クライストロン、進行波管(TWT)、ジャイロトロン、ガンダイオードを用いた回路等がある。本実施形態では、マイクロ波発振器としてマグネトロンを使用する。マグネトロンは、発振用真空管の一種であり、強力なノンコヒーレントマイクロ波を発生する。身近なところでは、マグネトロンは、レーダーや電子レンジに使われている。本実施形態では、電子レンジ、好ましくは業務用電子レンジに使用されているマグネトロンを使用する。なお、電子レンジでは周波数2,450MHzが使用されているが、これは技術的な制限によるものではなく、法的規制によるものである。
【0027】
図2は、本実施形態に係る光照射装置10の筐体4の前側内部の断面構成を示す。反射鏡14は、代表的には、被照射面に集光させる楕円面反射鏡、被照射面に平行光を当てる放物面反射鏡等が有る。楕円面も放物面も少なくとも1つの焦点を有する。楕円面反射鏡は、焦点が1直線上に無数に並ぶ樋型楕円面反射鏡でも、焦点が1つしか無い回転楕円面反射鏡でもよい。放物面反射鏡についても同様である。図2の実施例では、反射鏡14は樋型楕円面反射鏡であり、無電極ランプ12は直管型で、その中心軸が前記楕円面反射鏡の焦点に位置するように配置されている。なお、無電極ランプと反射鏡との位置関係に関しては、必ずしも無電極ランプの中心(中心軸)が焦点位置に一致している必要は無く、ランプ設置の位置的誤差等も考慮して、ランプ本体の中央部分が焦点を含む位置に配置されてさえいればよい。
【0028】
反射鏡14の筐体4の前面には光出射口2が形成され、光出射口は導電性メッシュ16によって覆われている。導電性メッシュ16は、マイクロ波に対しては不透過性であるが、マイクロ波空洞からの照射光121、即ち、可視光線及び紫外線に対しては透過性である。
【0029】
マイクロ波発振器3から発生したマイクロ波は、アンテナ8を介して放射され、マイクロ波空洞5に供給され、そこで定在波を形成する。マイクロ波空洞5に配置された無電極ランプ12の内部にプラズマを励起する。プラズマが放射する可視光線或いは紫外線は、照射光121として反射鏡14を反射し、又は、直接、光出射口2に向かって放射され、導電性メッシュ16を通過して、被照射面に照射される。
【0030】
冷却用送風ダクト6からの冷却用空気61は、反射鏡14の孔141を介してマイクロ波空洞5に供給される。冷却用空気61は無電極ランプ12の外周面に衝突し、無電極ランプ12を冷却する。無電極ランプ12の両端には回転翼20が装着されている。冷却用空気61は、無電極ランプ12の外周面と回転翼20に衝突する。それによって無電極ランプ12は中心軸線周りに回転する。冷却用空気61は無電極ランプ12の外周面の一方の側に衝突するが、無電極ランプ12は回転しているので、冷却用空気61が実際に衝突している部分は常に移動している。即ち、冷却用空気61が実際にランプ外周面に衝突している部分は常に変動しており、同一部分に衝突していない。そのため、無電極ランプ12の外周面の温度は円周方向に沿って均一化される。回転翼20の構造及び軸受構造については後に詳細に説明する。
【0031】
本実施形態では、光照射装置10には、冷却用送風ダクト6から冷却用空気61の供給を制御する制御装置(図示なし)が設けられている。制御装置は、冷却用空気61の供給を無電極ランプ12の点灯に連動させる。例えば、無電極ランプ12の温度が高いときに、冷却用空気61を供給し、無電極ランプ12の温度が低いときには、冷却用空気61を少量供給するように制御する。従って本実施形態では、無電極ランプ12の温度が高いときに、冷却用空気61を供給するから、無電極ランプ12は中心軸線周りに回転し、無電極ランプ12の外周面の温度は円周方向に沿って均一化される。無電極ランプ12の温度が低いときにも、冷却用空気61を少量供給するから、無電極ランプ12は常時回転する。
【0032】
図3に、無電極ランプ12の一例として、直管型の無電極ランプを示す。直管型の無電極ランプ12は、円筒状の放電容器12Aとその両端の突起部12Bからなる。本実施形態では、突起部12Bに回転翼が設けられているが、図3では省略されている。回転翼については後に説明する。無電極ランプ12の軸線方向長さは約150mm、外径約11mmである。放電容器の両端の突起部12Bを筐体の両側の内壁の係合部に係合させることによって、無電極ランプ12はマイクロ波空洞内に保持される。無電極ランプの形状として、単純な直管型以外に、中央部が狭小になった直管型、球形が用いられてよい。
【0033】
無電極ランプ12は石英ガラス製である。放電容器の内部には、不活性ガスと発光物質が封入されている。本例の無電極ランプ12では、不活性ガスとして20torrのアルゴン(Ar)が封入されてよい。発光物質として45mgの水銀が封入されてよい。この場合、無電極ランプ12は、出力1,800Wの紫外線照射ランプ(UVランプ)として使用される。尚、発光物質は水銀に限定されない。例えば、水銀とハロゲン化金属等を封入してもよい。この場合には、無電極ランプはメタルハライドランプとなる。
【0034】
マグネトロンを発振させると、2,450MHzのマイクロ波エネルギーがマイクロ波空洞5に供給され定在波が形成される。マイクロ波が無電極ランプ12の放電容器12Aと結合されて内部にプラズマが励起される。発光物質から可視光線或いは紫外線が放射される。
【0035】
無電極ランプ12を点灯すると、放電容器12Aの内部に、破線で示すように、2つのプラズマ領域13が形成される。プラズマ領域13は、腹131とその両側の節132を有する定在波を形成する。この定在波の波長は、λ=伝播速度/周波数=2.99×10(m/s)/2.45GHz≒123mmとなる。無電極ランプの放電容器12Aの軸線方向長さは、一波長の長さに略等しく形成されている。
【0036】
定在波の腹131の部分は比較的温度が高く、比較的強い発光をする。ここはホットゾーン12a、12bと呼ばれる。定在波の節132の部分は比較的温度が低く、封入物質の蒸発が阻害され、又は、再凝縮が起こることがある。従って、非常に弱い発光となる。無電極ランプ12の放電容器12Aの温度分布は軸線方向に沿って不均一となる。
【0037】
図4は本実施形態の無電極ランプ12の放電容器12Aの両側の突起部12Bに設けられた回転翼20の構造の例を示す。本実施形態の回転翼20は、円筒部23とその円周面に設けられた1対の翼21A、21Bを有する。1対の翼21A、21Bは、直径方向両側に点対称に設けられている。翼21A、21Bは、様々な形状が可能である。図示の例では、翼21A、21Bは、半径方向外方に延びるブレード211A、211Bと、その先端の空気の流れを捕獲するための空気受部212A、212Bを有する。ブレード211A、211Bは平板でもよいがプロペラ型であってもよい。
【0038】
円筒部23の端面に被係合部25が設けられている。回転翼20の被係合部25を筐体の両側の内壁の係合部に係合させることによって、無電極ランプ12はマイクロ波空洞内に保持される。
【0039】
回転翼20は、セラミック製であってよい。回転翼20を製造するには、円筒部23、翼21A、21B及び被係合部25を別個に製造し、それらを結合してもよいが、一体的に製造してもよい。こうして製造されたセラミック製の回転翼20を、石英製の無電極ランプ12の両側の突起部12Bに固定的に装着する。
【0040】
冷却用送風ダクト6からの冷却用空気61は、無電極ランプ12の放電容器12Aの外周面に衝突するが同時に回転翼20に衝突する。それによって、無電極ランプ12は軸線周りに回転する。本実施形態によると、回転翼20は衝撃型水車と同様な機能を有する。
【0041】
図5A及び図5Bを参照して回転翼20及び円筒部23の構造の例を説明する。回転翼20は、円筒部23とその円周面に設けられた1対の翼21A、21Bを有する。翼21A、21Bは、半径方向外方に延びるブレード211A、211Bと、その先端の空気の流れを捕獲するための空気受部212A、212Bを有する。円筒部23の端面23Aに被係合部25が設けられている。
【0042】
円筒部23には軸線方向の円筒状の穴24が形成されている。この穴24に無電極ランプ12の突起部12Bを係合させることによって、回転翼付き無電極ランプ12が形成される。
【0043】
図6を参照して回転翼20の構造の他の例を説明する。本実施形態では、円筒部25の外周面に4つの翼21A、21B、21C、21Dが回転対称に、即ち、90°の間隔にて設けられている。
【0044】
図7を参照して回転翼20の構造の更に他の例を説明する。本実施形態では、回転翼20は、無電極ランプ12の突起部12Bに直接接続された1対の翼21A、21Bを有する。1対の翼21A、21Bは、直径方向両側に点対称に設けられている。尚、本実施形態でも、2対の翼、即ち、4つの翼を90°の間隔にて回転対称に設けてもよい。
【0045】
図8A図8Cを参照して、無電極ランプ12の両端の軸受構造の例を説明する。図8Aに示す例では、無電極ランプ12側の軸部は、回転翼20の円筒部23の端面に設けられた被係合部25によって構成される。本実施形態では、被係合部25は円錐形状の突起であるが、他の形状も可能である。例えば、被係合部25は円筒状の突起であってもよい。筐体4側の軸受部は、その内壁40に形成された係合部41によって構成される。本実施形態では、係合部41は、突設部41Bとそれによって囲まれた凹部41Aを有する。凹部41Aに被係合部25が係合する。
【0046】
図8Bに示す例では、筐体4側の軸受部は、その内壁40に形成された係合部41によって構成される。本実施形態では、係合部41は、内壁40に形成された凹部41Aを有する。凹部41Aに被係合部25が係合する。
【0047】
図8Cに示す例では、無電極ランプ12側の軸部は、その両端の突起部12Bによって構成される。筐体4側の軸受部は、その内壁40に設けられた穴42に配置された係合部41によって構成される。本実施形態では、係合部41は、突設部41Bとそれによって囲まれた凹部41Aを有する。凹部41Aに無電極ランプ12の突起部12Bが係合する。内壁40の穴42には、係合部41とバネ41Cが配置されている。係合部41はバネ41Cの伸縮によって軸線方向に移動可能である。無電極ランプ12を交換するとき、無電極ランプ12を中心軸線に沿って移動させることによって、筐体4の一方の内壁のバネ41Cが伸び、筐体4の他方の内壁のバネ41Cが縮む。こうして、バネ41Cの伸縮を利用することによって、無電極ランプ12の取り外し、又は、装着が可能となる。尚、係合部にバネを設ける機構は、図8A及び図8Bの例に適用してもよい。
【0048】
本実施形態は、次のような利点・効果を奏する。
(1) 無電極ランプ12の両端には回転翼20が装着されている。冷却用空気61は無電極ランプ12の放電容器12Aの外周面に衝突するが同時に回転翼20に衝突する。それによって無電極ランプ12は中心軸線周りに回転する。冷却用空気61は無電極ランプ12の外周面の一方の側に衝突するが、無電極ランプ12は回転するので、無電極ランプ12の外周面の温度は均一化される。
【0049】
(2) 無電極ランプ12は、冷却用空気61を利用して回転する。従って、無電極ランプ12を回転させるためのモータ、及び、駆動機構を設ける必要はない。そのため、簡単な機構によって、無電極ランプ12の外周面の温度を円周方向に沿って均一化させることができる。
【0050】
(3) 無電極ランプ12の点灯と冷却用空気61の供給を連動させることによって、無電極ランプ12を回転させることができる。即ち、無電極ランプ12が点灯しているときのみ、無電極ランプ12の外周面の温度を円周方向に沿って均一化させることができる。更に、ランプ消灯時にも冷却風を吹き付けて冷却しておくことで、ランプが十分に冷却され、再点灯し易くなる。
【0051】
(4) ランプへの供給電力の大きさに応じて、供給する冷却風量を可変すると、ランプ表面温度の高い(供給電力大)時に供給風量を多くし、ランプ表面温度の低い(供給電力小)時に供給風量を少なくできる。そのため、ランプ冷却時においてランプ表面を冷やし過ぎるのを防ぐことができ、かつ省エネが図れる。
【0052】
(5) 無電極ランプ12を交換するとき、両端の回転翼20を手で掴んで取り付又は取り外すことができる。従って、無電極ランプ12の交換時に、放電容器12Aの外周面にアルカリ成分等が付着することがない。無電極ランプ12の寿命を長くすることができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の範囲はこれらの実施の形態によって制限されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者であれば容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0054】
1…マイクロ波、2…光出射口、3…マイクロ波発振器、4…筐体、5…マイクロ波空洞、6…冷却用送風ダクト、8…アンテナ、10…光照射装置、12…無電極ランプ、12A…放電容器、12B…突起部、12a、12b…ホットゾーン、13…プラズマ領域、14…反射鏡、16…導電性メッシュ、20…回転翼、21A、21B、21C、21D…翼、23…円筒部、24…穴、25…被係合部、40…内壁、41…係合部、41A…凹部、41B…突設部、41C…バネ、42…穴、61…冷却用空気、121…照射光、131…腹、132…節、141…孔、211A、211B…ブレード、212A、212B…空気受部
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C