特許第5987711号(P5987711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987711
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】二次電池システムおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20160825BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20160825BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   H02J7/02 H
   H01M10/48 P
   H01M10/44 Q
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-15504(P2013-15504)
(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公開番号】特開2014-147261(P2014-147261A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立本 雄平
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 孝
(72)【発明者】
【氏名】田村 友伸
(72)【発明者】
【氏名】谷村 康隆
(72)【発明者】
【氏名】平口 寛
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−520408(JP,A)
【文献】 特開2008−148486(JP,A)
【文献】 特開平10−051972(JP,A)
【文献】 特開2000−311721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/42−10/48
H02J7/00−7/12、
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池を直列に接続してなる組電池と,前記組電池の充放電を制御する電池制御部とを有する二次電池システムにおいて,
前記複数の二次電池はいずれも,
充電時には満充電に近づくほど電圧が上昇することと,
充電開始から満充電に至る充電期間中に,電圧上昇率がより低い低上昇期間と,前記低上昇期間後の,電圧上昇率がより高い高上昇期間とを示すことと,
満充電を超えてさらに充電すると電圧が低下することとを満たすものであり,
前記組電池には,前記組電池の全体電圧を検出する電圧検出部が接続されており,
前記電池制御部は,
前記複数の二次電池の少なくとも1つにて前記高上昇期間が開始したときである高上昇開始時後に前記電圧検出部が取得した電圧値の変化に基づいて,前記組電池を構成する二次電池のうち,前記高上昇開始時後に新たに満充電に到達したものの個数を指標する値である満充電値を導出する満充電値導出部と,
前記満充電値導出部が満充電値を導出する度に,その満充電値を積算して満充電値積算値を算出する満充電値積算部と,
前記満充電値積算部が算出した満充電値積算値に基づいて前記組電池を充電する充電電流を規制する充電電流規制部とを有し,
前記充電電流規制部は,
前記満充電値積算値が予め定めた第1閾値以上となった場合には,充電電流を減少させるとともに,
前記満充電値積算値が前記第1閾値より高い予め定めた第2閾値以上となった場合には,充電電流を終了させるものであることを特徴とする二次電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の二次電池システムにおいて,
前記電池制御部は,
充電中に前記電圧検出部が取得した電圧値に基づいて前記組電池の全体電圧の上昇率を取得する上昇率取得部と,
上昇率が予め定めた第1基準値未満から以上となったときを前記高上昇開始時と判断する高上昇開始時決定部とを有し,
前記満充電値導出部は,
前記高上昇開始時から電圧値のピークに至るまでの間の予め定めた基準時における上昇率が,前記第1基準値より高い予め定めた第2基準値より高い場合には,
前記ピーク後の低下が見られたときに,その低下の程度に基づいて満充電値を導出し,
前記基準時における上昇率が前記第2基準値以下である場合には,
前記高上昇開始時から前記低下に至るまでの電圧値の積算値に基づいて満充電値を導出するものであることを特徴とする二次電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の二次電池システムにおいて,
前記第1基準値は,
前記二次電池単体の前記低上昇期間における電圧の上昇率の最大値以上,前記二次電池単体の前記高上昇期間の初期における電圧の上昇率以下の値であり,
前記第2基準値は,
前記二次電池単体の前記高上昇期間の初期における電圧の上昇率よりも高く,2つの前記二次電池の前記高上昇期間が重なったときの前記高上昇期間の初期における前記組電池の電圧の上昇率よりも低い値であることを特徴とする二次電池システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の二次電池システムにおいて,
前記二次電池は,ニッケル水素二次電池であることを特徴とする二次電池システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の二次電池システムを有する電源部と,前記電源部より電力の供給を受けて動作する画像形成部とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,二次電池を複数備える二次電池システムおよび画像形成装置に関する。さらに詳細には,複数の二次電池を直列に接続してなる組電池を有する二次電池システムおよびその二次電池システムを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,ニッケル水素二次電池などに代表される二次電池は,携帯電話やノート型パソコンなどのポータブル電子機器を始めとする様々な電子機器の電源として用いられている。また,様々な用途の電源として利用される際には,その用途に応じた出力を得るため,複数の二次電池を組み合わせた組電池として用いられる。
【0003】
ここで,二次電池の満充電容量や内部抵抗などの電池特性は,その二次電池の製造時における品質のばらつきによって異なることがある。また,組電池における二次電池の温度は,その配置によって異なることがある。そして,二次電池は,温度によって劣化の進行度合いが異なる。よって,組電池を繰り返し充放電させることにより,組電池を構成する各二次電池の,満充電容量に対する残電池容量の割合である蓄電率にばらつきが生じることがある。
【0004】
各二次電池の蓄電率がばらついている組電池を充電させた場合,二次電池ごとに,満充電になるタイミングが異なる。そして,組電池の充電の開始時に蓄電率が低かった二次電池の満充電のタイミングに合わせて組電池の充電を停止させた場合には,組電池の充電の開始時に蓄電率が高かった二次電池は過充電となってしまう。
【0005】
一方,組電池の充電の開始時に蓄電率が高かった二次電池の満充電のタイミングに合わせて組み電池の充電を停止させた場合には,組電池の充電の開始時に蓄電率が低かった二次電池を満充電させることができない。そこで,各二次電池の蓄電率がばらついている組電池についても,すべての二次電池を適切に満充電することのできる従来技術として特許文献1が挙げられる。
【0006】
特許文献1には,組電池を構成する複数の二次電池の電圧を個別に監視しつつ組電池の充電を行い,少なくとも1つの二次電池が満充電であることが検出されたときには,組電池の充電電流を低くして充電を続行させる充電装置が開示されている。これにより,組電池の充電の開始時に蓄電率の高かった二次電池の過充電を抑制しつつ,組電池の充電の開始時に蓄電率の低かった二次電池についても満充電させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−68571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで,上記の従来技術では,組電池を構成する各二次電池の満充電の検出を,その二次電池ごとの電圧を検出することにより行っている。よって,組電池を構成する複数の二次電池ごとに,電圧を検出するための回路が必要である。このため,その電圧を検出するための回路の面積が大きくなってしまうという問題があった。さらには,複数ある二次電池ごとに電圧を検出する回路が必要であることにより,組電池を充電するためのシステムが高価なものとなってしまうという問題があった。
【0009】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点の解決を目的としてなされたものである。すなわちその課題とするところは,安価であるとともに,組電池を構成する複数の二次電池を適切に満充電できる二次電池システムおよび画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の二次電池システムは,複数の二次電池を直列に接続してなる組電池と,組電池の充放電を制御する電池制御部とを有する二次電池システムであって,複数の二次電池はいずれも,充電時には満充電に近づくほど電圧が上昇することと,充電開始から満充電に至る充電期間中に,電圧上昇率がより低い低上昇期間と,低上昇期間後の,電圧上昇率がより高い高上昇期間とを示すことと,満充電を超えてさらに充電すると電圧が低下することとを満たすものであり,組電池には,組電池の全体電圧を検出する電圧検出部が接続されており,電池制御部は,複数の二次電池の少なくとも1つにて高上昇期間が開始したときである高上昇開始時後に電圧検出部が取得した電圧値の変化に基づいて,組電池を構成する二次電池のうち,高上昇開始時後に新たに満充電に到達したものの個数を指標する値である満充電値を導出する満充電値導出部と,満充電値導出部が満充電値を導出する度に,その満充電値を積算して満充電値積算値を算出する満充電値積算部と,満充電値積算部が算出した満充電値積算値に基づいて組電池を充電する充電電流を規制する充電電流規制部とを有し,充電電流規制部は,満充電値積算値が予め定めた第1閾値以上となった場合には,充電電流を減少させるとともに,満充電値積算値が第1閾値より高い予め定めた第2閾値以上となった場合には,充電電流を終了させるものであることを特徴とする二次電池システムである。
【0011】
本発明の二次電池システムは,複数の二次電池を直列に接続してなる組電池を有するものである。そして,電池制御部は,電圧検出部が検出する組電池の全体の電圧値に基づいて,組電池の充電を行う。すなわち,本発明の二次電池システムは,組電池を構成する各二次電池ごとの電圧を検出するための構成を有していないため,安価である。
【0012】
また,電池制御部は,充電時には,組電池の全体電圧に基づいて,満充電値積算値を算出する。満充電値積算値は,組電池の充電の開始後に,満充電に到達した二次電池の総数を指標する値である。そして,満充電値積算値が第2閾値以上となったことにより,組電池を構成する二次電池のすべてが満充電に到達したと判断される場合には,組電池の充電を終了する。一方,満充電値積算値が第1閾値以上となってはいるが第2閾値には到達していないことにより,二次電池のすべてが満充電に到達していないと判断される場合には,充電電流規制部に組電池を充電する充電電流の規制を行わせつつ,組電池の充電を続行する。これにより,満充電に到達した二次電池を劣化させることなく,組電池を構成するすべての二次電池が満充電に到達するまで,組電池の充電を続行させることができる。
【0013】
また,上記に記載の二次電池システムにおいて,電池制御部は,充電中に電圧検出部が取得した電圧値に基づいて組電池の全体電圧の上昇率を取得する上昇率取得部と,上昇率が予め定めた第1基準値未満から以上となったときを高上昇開始時と判断する高上昇開始時決定部とを有し,満充電値導出部は,高上昇開始時から電圧値のピークに至るまでの間の予め定めた基準時における上昇率が,第1基準値より高い予め定めた第2基準値より高い場合には,ピーク後の低下が見られたときに,その低下の程度に基づいて満充電値を導出し,基準時における上昇率が第2基準値以下である場合には,高上昇開始時から低下に至るまでの電圧値の積算値に基づいて満充電値を導出するものであることが好ましい。これにより,満充電値を正確に算出することができるからである。
【0014】
また,上記に記載の二次電池システムにおいて,第1基準値は,二次電池単体の低上昇期間における電圧の上昇率の最大値以上,二次電池単体の高上昇期間の初期における電圧の上昇率以下の値であり,第2基準値は,二次電池単体の高上昇期間の初期における電圧の上昇率よりも高く,2つの二次電池の高上昇期間が重なったときの高上昇期間の初期における組電池の電圧の上昇率よりも低い値であることが好ましい。すなわち,組電池の電圧の上昇率が第1基準値未満から以上となったときには,組電池のうちの二次電池のいずれかが,満充電に到達する間近であることを適切に検出することができるからである。
【0015】
さらに,基準時の上昇率が第2基準値よりも高いときには,複数の二次電池が同時に,満充電に到達する間近である。よって,その後の組電池の全体電圧の低下量により,同時に満充電となった二次電池の個数を適切に判断することができる。一方,基準時の上昇率が第2基準値以下であるときには,1つの二次電池が満充電に到達する間近である場合と,複数の二次電池がわずかにずれて満充電に到達する間近である場合とがある。よって,これらの場合には,上昇開始時から低下に至るまでの電圧値の積算値により,満充電となった二次電池の個数を適切に判断することができる。組電池の電圧値の積算値は,満充電となった二次電池の個数が多いほど,高い値となるからである。
【0016】
また,上記に記載の二次電池システムにおいて,二次電池は,ニッケル水素二次電池であってもよい。
【0017】
また本発明は,上記に記載の二次電池システムを有する電源部と,電源部より電力の供給を受けて動作する画像形成部とを備えることを特徴とする画像形成装置にもおよぶ。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば,安価であるとともに,組電池を構成する複数の二次電池を適切に満充電できる二次電池システムおよび画像形成装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
図2】本形態に係る二次電池の充電特性を示す図である。
図3】本形態に係る二次電池の充電時における温度変化を示す図である。
図4】組電池の充電前における二次電池の蓄電率がすべて同じであったときの,組電池の充電特性を示す図である。
図5】組電池の充電前における二次電池のうちの1つの二次電池の蓄電率が異なっていたときの,組電池の充電特性を説明するための図である。
図6】組電池の充電前における二次電池の蓄電率がすべて異なっていたときの,組電池の充電特性を説明するための図である。
図7】組電池の充電前における二次電池の蓄電率がわずかにずれていたときの,組電池の充電特性を説明するための図である。
図8】充電制御部による組電池の充電の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,電子機器の一例としての画像形成装置について本発明を具体化したものである。
【0021】
図1は,本形態の画像形成装置1の概略構成を示すブロック図である。画像形成装置1は,図1に示すように,装置制御部10,電源装置20,処理部40を有する。図1には,電力の供給に係る経路を実線の矢印で,各部の制御に係る制御信号の経路を破線の矢印で示している。
【0022】
図1に示すように,処理部40は,画像形成部41,操作部42,表示部43を有している。画像形成部41は,画像形成を行うためのものである。つまり,画像形成部41には,画像形成を行うための各部やそれらを動作させるための駆動部,装置内部の排気や冷却を行うためのファンなどが含まれている。
【0023】
操作部42は,ユーザーが操作キーにより各種の指示,文字や数字などのデータの入力を行うためのものである。また,操作部42は,後述する待機モードから稼働モードへと復帰するための復帰スイッチ44を有している。表示部43は,ユーザーが選択するメニューなどの表示がなされる液晶パネルである。画像形成部41,操作部42,表示部43はいずれも,電力の供給を受けて動作する動作部である。
【0024】
電源装置20は,電源制御部21,AC/DC変換部22,リレー23,電力センサー24,組電池A,充電制御部25,放電制御部26を有している。また,電源装置20は,装置制御部10,処理部40に接続されている。
【0025】
さらに,電源装置20には外部電源200が接続されている。外部電源200は,例えば,画像形成装置1に交流電力を供給するための商用電源である。外部電源200より供給される電力は,電力センサー24,リレー23,AC/DC変換部22をこの順で介して電源制御部21に入力される。
【0026】
電力センサー24は,外部電源200より電源装置20に供給される電力量を計測するためのものである。よって,電力センサー24により,外部電源200による電力の供給があるか否かを判断することができる。リレー23は,電気回路におけるその接続位置での導通および非導通を切り替えることにより,外部電源200から電源装置20内への電力の供給を開閉するためのものである。AC/DC変換部22は,外部電源200からの交流電力を直流電力に変換するためのものである。
【0027】
また,電源制御部21は,処理管理部11の指示に基づいて,画像形成装置1の各部へ供給する電力を制御するためのものである。具体的には,電源制御部21は,処理管理部11より画像形成装置1の動作状態や動作モードを受信する。そして,電源制御部21は,その動作状態や動作モードに基づいて,装置制御部10,処理部40に対して,それらが必要とする電力を供給する。そのため,電源制御部21は,電源装置20の各部を制御する。
【0028】
また,組電池Aは,3つの二次電池B1,B2,B3を直列に接続してなるものである。本形態における二次電池B1,B2,B3はいずれも,同じ仕様のニッケル水素二次電池である。よって以下,二次電池B1,B2,B3を特に区別しない場合には,二次電池Bとして説明する。
【0029】
また,AC/DC変換部22は,電源制御部21への電力の供給経路とは別に,充電制御部25への電力の供給経路を有している。充電制御部25は,外部電源200の電力により,組電池Aの充電を行うためのものである。さらに,組電池Aは,放電制御部26を介して電源制御部21に接続されている。放電制御部26は,組電池Aの放電を制御するためのものである。
【0030】
また,組電池Aには,電圧検出部27が接続されている。本形態の電圧検出部27は,二次電池B1,B2,B3を直列に接続してなる組電池Aの全体の電圧を検出するためのものである。電圧検出部27は,予め定めた時間間隔で組電池Aの電圧を検出し,その検出値を充電制御部25に出力する。電圧検出部27による組電池Aの電圧の検出の時間間隔は,例えば1秒などに定めることができる。
【0031】
ここで図2に,二次電池B単体の充電特性のグラフを示す。図2において,縦軸に電池電圧を,横軸に時間をとっている。そして図2は,二次電池Bを,満充電容量に対する残電池容量の割合である蓄電率が0%の状態から,一定の電流値で充電させたときの電圧の推移を示したものである。つまり,充電が開始されたときの時刻T0における二次電池Bの蓄電率は0%である。なお,図2は,二次電池Bの充電を,二次電池Bの満充電容量(Ah)を1時間で充電または放電することのできる電流値(A)を1CとしたCレートにおいて,0.5〜1.0Cの一定の電流値で行ったときのものである。また,本形態の二次電池Bの満充電容量は,2000mAである。
【0032】
図2に示すように,充電時における二次電池Bの電池電圧は,時刻T0から時刻T3にかけて上昇し,時刻T3において最大値Vmaxとなっている。この電池電圧がVmaxとなる時刻T3が,二次電池Bが満充電状態となる蓄電率100%のときである。そして,二次電池Bの電池電圧は,時刻T3において最大値Vmaxとなった後,時刻T4にかけて低下している。その電池電圧のVmaxからの電圧の低下量をYとして,図2に示している。Yの電圧の低下後において,電池電圧はほぼ一定となっている。
【0033】
また,二次電池Bの電池電圧は,充電が開始された初期の時刻T0から時刻T1までの区間と,満充電状態となる直前の時刻T2から時刻T3にかけての区間とにおいて,大きな傾きで上昇している。一方,その間の時刻T1より後から時刻T2より前までの区間においては,二次電池Bの電池電圧は,わずかな傾きで上昇しているだけである。
【0034】
そして,T0からT1までの区間を初期部IE,T1より後からT2より前までの区間を低上昇部IL,T2からT3までの区間を高上昇部IHとする。よって,二次電池Bの電圧上昇率は,初期部IEと高上昇部IHとにおいて,低上昇部ILよりも高いものである。なお,高上昇部IHの時間は,10分程度である。
【0035】
また図2に示すように,低上昇部ILから高上昇部IHとなるT2におけるグラフ上の点を,特徴点Xとする。なお,本形態の二次電池Bにおいて,特徴点Xにおける蓄電率は,約90%である。また,Yの電圧の低下が生じているT3より後からT4までの区間を,下降部Dとする。さらに図2には,特徴点Xを示す時刻T2からYの電圧の低下が生じる時刻T4までの区間を,凸部Zとして示している。
【0036】
また図3に,二次電池Bの充電時における温度変化のグラフを示す。図3において,縦軸に電池温度を,横軸に充電時間をとっている。図3に示す温度変化についても,図2と同様に蓄電量が0%の二次電池Bを,0.5〜1.0Cの一定の電流値で充電させたときのものである。
【0037】
図3に示すように,二次電池Bの温度は,充電の開始直後にわずかに上昇し,その後,時刻T2までほぼ一定のまま推移している。そして,時刻T2から時刻T3の間,すなわち二次電池Bが満充電となる寸前より急激に上昇していることがわかる。これは,二次電池Bの蓄電率が低いうちには充電に消費されていたエネルギーが,二次電池Bの蓄電率が高くなることにより充電に消費されず,熱エネルギーとして消費されていることによるものである。なお,時刻T3の後のピーク値以後の温度低下は,充電の終了に伴うものである。
【0038】
よって,二次電池Bの充電を,満充電後にもそのまま,0.5〜1.0Cの一定の電流値で続行させることは好ましくない。満充電の二次電池Bを0.5〜1.0Cもの高い電流値で過充電させ続けた場合には,電池温度が過度に上昇することにより,二次電池Bの電池性能を劣化させてしまうおそれがあるからである。なお,本形態の二次電池Bについては,満充電後であっても,0.25C程度よりも低い電流値であれば,電池温度を過度に上昇させることなく,電流を流すことができる。すなわち,0.25C程度よりも低い電流値であれば,二次電池Bの電池性能の劣化を抑制しつつ,満充電の二次電池Bに電流を流すことができる。
【0039】
また,装置制御部10は,処理管理部11,処理管理記憶部12,受付部13,通信インターフェース(I/F)部14を有している。I/F部14は,例えばLANカード,LANボードといったLAN100に接続するためのものであり,外部のPCなどからLAN100を介して送られてくる画像データなどを受信するためのものである。なお,LAN100は,有線のものであっても無線のものであってもよい。外部I/F部14が画像データを受信し,その画像データが受付部13を介して処理管理部11に入力されることにより,画像形成装置1には印刷ジョブが発生する。
【0040】
処理管理記憶部12は,画像形成装置1において実行される各種のプログラムなどを記憶しているものである。また,本形態の処理管理記憶部12には,画像形成装置1の動作モードとして,稼働モードと待機モードとが記憶されている。
【0041】
処理管理部11は,装置全体の制御処理を行うためのものである。すなわち,処理管理部11は,例えば,画像形成部41を制御することにより,I/F部14によって受信した画像データに基づいた画像形成動作を実行させる。また,処理管理記憶部12に記憶されている動作モード間での切り替えなども行う。
【0042】
稼働モードは,例えば,画像形成部41により画像形成を行うときのモードである。また,表示部43によりユーザーに対してメニュー表示などを行う場合や,即時に画像形成動作が可能なREADY状態などについても,稼働モードに含まれる。このため,稼働モードにおける画像形成装置1は,多くの電力を必要とする。そして,稼働モードにおける電源制御部21は基本的には,リレー23を導通状態としつつ,外部電源200からの電力を画像形成装置1の各部に供給する。
【0043】
なお,稼働モードにおける電源制御部21は,例えば災害時などの停電により外部電源200からの電力の供給がない場合には,放電制御部26によって組電池Aを放電させ,その放電による電力を画像形成装置1の各部に供給することもできる。そして,例えば稼働モードにおいて一定時間,I/F部14における画像データの受信や,ユーザーによる操作部42の操作などが行われなかった場合,処理管理部11は動作モードを待機モードへと移行させる。また,操作部42には待機モードへの移行スイッチを設けておき,その移行スイッチを用いたユーザーの操作指示により,動作モードを待機モードへと移行させることもできる。
【0044】
待機モードは,稼働モードよりも画像形成装置1における消費電力を低減させるためのモードである。待機モードでは,例えば,画像形成部41や表示部43などが非稼働の状態とされる。このため,待機モードにおける電源制御部21は,非稼働の状態である画像形成部41や表示部43などへの電力の供給を遮断する。これにより,待機モードの画像形成装置1では,稼働モードよりも消費電力が低減されている。
【0045】
そして,待機モードにおける電源制御部21は,リレー23を非導通状態としつつ,組電池Aからの電力を画像形成装置1の各部に供給する。このため,待機モードでは,外部電源200の電力を必要とせず,待機電力がゼロである。なお,待機モードにおいては,I/F部14が画像データを受信したときや,ユーザーによる操作部42の復帰スイッチ44が操作されることにより,稼働モードへと移行する。そのため,待機モードにおける電源制御部21は,少なくともI/F部14,受付部13,処理管理部11,復帰スイッチ44への電力供給を行う。
【0046】
また,電源制御部21は,組電池Aの残電池容量が少なくなった場合には,充電制御部25に,外部電源200の電力によって組電池Aの充電を行わせる。充電を開始するときの組電池Aの残電池容量は,例えば,満充電容量の50%に定めることができる。そして,充電制御部25は,組電池Aの二次電池B1,B2,B3がすべて満充電となったとき,組電池Aの充電が完了したと判断し,組電池Aの充電を停止する。なお,待機モードにおいて組電池Aの充電を行う際には,一時的にリレー23が導通状態とされる。また,待機モードにおいては,組電池Aの充電の完了後,リレー23は再び非導通状態とされる。
【0047】
ここにおいて,組電池Aの充電時における充電特性を図4に示す。図4において,二次電池B1,B2,B3についてはそれぞれ単体の電池電圧により,組電池Aについては組電池Aの全体の電池電圧により示している。また,図4は,組電池Aを構成する二次電池B1,B2,B3の充電前における蓄電率がすべて同じであったときの例である。
【0048】
よって,二次電池B1,B2,B3のグラフ上の特徴点Xが現れるタイミングはいずれも,T5で同じである。また,二次電池B1,B2,B3の電池電圧がVmaxを示す満充電のタイミングについてもすべて,T6で同じである。さらに,二次電池B1,B2,B3にYの電圧の低下が生じるタイミングについてもすべて,T7で同じである。
【0049】
このため,組電池Aのグラフにおいても,T5より電圧が大きく上昇している。そして,T5における組電池Aのグラフ上の点を,特徴点XA1として示している。なお,組電池Aの特徴点XA1の直後における電圧上昇率は,二次電池B単体の低上昇部ILにおける電圧上昇率の最大値よりも高いものである。さらには,組電池Aの特徴点XA1の直後における電圧上昇率は,二次電池B単体の特徴点Xの直後における電圧上昇率よりも高いものである。
【0050】
また,組電池Aの電圧は,T6において最大値を示している。さらに,T6より後からT7にかけて,電圧が低下している。この組電池Aの電圧の低下量は,二次電池B単体の電圧の低下量Yの3倍の3Yである。また,組電池Aの特徴点XA1から電圧の低下が生じるまでの凸部ZA1は,二次電池B1,B2,B3のすべての凸部Zが重なっている部分である。
【0051】
また,組電池Aを構成する二次電池B1,B2,B3の蓄電率は,常に同じであるとは限らない。二次電池B1,B2,B3の満充電容量や内部抵抗などの電池特性は,それぞれの製造時における品質のばらつきによって異なることがある。また,組電池Aにおける二次電池B1,B2,B3の温度はそれぞれ,その配置されている位置によって異なることがある。例えば二次電池B1,B2,B2がこの順で密着して配置されていた場合には,二次電池B1,B3の間に配置された二次電池B2の温度は,二次電池B1,B3の温度よりも上昇しがちである。そして,二次電池B1,B2,B3の劣化の進行度合いはそれぞれ,温度によって異なるものとなる。よって,組電池Aを繰り返し充放電させることにより,組電池Aを構成する二次電池B1,B2,B3の蓄電率にはばらつきが生じることがある。
【0052】
図5に,組電池Aの充電の開始時における二次電池B2,B3の蓄電率が,二次電池B1と比較して低かった場合の組電池Aの充電特性を示す。図5の例では,組電池Aの充電の開始時における二次電池B1の蓄電率は,図4と同じである。また,組電池Aの充電の開始時における二次電池B2,B3の蓄電率は,同じである。なお,二次電池B2,B3について,特徴点Xが現れるタイミング,電池電圧がVmaxを示すタイミング,Yの電圧の低下が生じるタイミングをそれぞれ,T8,T9,T10として図5に示している。
【0053】
そして,組電池Aのグラフにおいては,まず,T5において,1つ目の特徴点XA2が現れている。その後,T6より後からT7にかけて,1つ目の電圧の低下が生じている。この組電池Aの1つ目の特徴点XA2から電圧の低下が生じるまでの凸部ZA2は,二次電池B1の凸部Zのみによるものである。つまり,1つ目の特徴点XA2および電圧の低下は,二次電池B1のみが満充電に到達したことによるものである。よって,組電池Aの1つ目の電圧の低下量は,Yである。
【0054】
なお,T6からT8の区間では,二次電池B2,B3の電圧値については,低上昇部ILを示す。つまり,T6からT8にかけて,二次電池B2,B3の電圧値は上昇している。しかし,その二次電池B2,B3の電圧値の上昇の程度はわずかであるため,組電池Aの全体電圧の低下量であるYへの影響はわずかである。よって,説明の簡略化のため,低上昇部ILの組電池Aの電圧値への影響は省略している。この点,以下の図6においても同様である。
【0055】
また,T8において,2つ目の特徴点XA3が現れている。その後,T9より後からT10にかけて,2つ目の電圧の低下が生じている。この組電池Aの2つ目の特徴点XA3から電圧の低下が生じるまでの凸部ZA3は,二次電池B2,B3の凸部Zが重なっている部分である。つまり,2つ目の特徴点XA3および電圧の低下は,二次電池B2,B3の満充電によるものである。よって,組電池Aの2つめの電圧の低下量は,2Yである。
【0056】
また図6に,組電池Aの充電の開始時における二次電池B1,B2,B3の蓄電率のすべてが,異なる場合の組電池Aの充電特性を示す。図6の例では,組電池Aの充電の開始時における二次電池B1,B2の蓄電率は,図5と同じである。また,組電池Aの充電の開始時における二次電池B3の蓄電率は,図5よりも低いものである。なお,図6では,二次電池B3の特徴点Xが現れるタイミング,電池電圧がVmaxを示すタイミング,Yの電圧の低下が生じるタイミングをそれぞれ,T11,T12,T13として示している。
【0057】
そして,組電池Aのグラフにおいては,まず,T5において,1つ目の特徴点XA4が現れている。その後,T6より後からT7にかけて,1つ目の電圧の低下が生じている。この組電池Aの1つ目の特徴点XA4から電圧の低下が生じるまでの凸部ZA4は,二次電池B1の凸部Zのみによるものである。つまり,1つ目の特徴点XA2および電圧の低下は,二次電池B1のみの満充電によるものである。よって,組電池Aの1つ目の電圧の低下量は,Yである。
【0058】
また,T8において,2つ目の特徴点XA5が現れている。その後,T9より後からT10にかけて,2つ目の電圧の低下が生じている。この組電池Aの2つ目の特徴点XA5から電圧の低下が生じるまでの凸部ZA5は,二次電池B2の凸部Zのみによるものである。つまり,2つ目の特徴点XA5および電圧の低下は,二次電池B2のみの満充電によるものである。よって,組電池Aの2つめの電圧の低下量は,Yである。
【0059】
さらに,T11において,3つ目の特徴点XA6が現れている。その後,T12より後からT13にかけて,3つ目の電圧の低下が生じている。この組電池Aの3つ目の特徴点XA6から電圧の低下が生じるまでの凸部ZA6は,二次電池B3の凸部Zのみによるものである。つまり,3つ目の特徴点XA6および電圧の低下は,二次電池B3のみの満充電によるものである。よって,組電池Aの3つめの電圧の低下量は,Yである。
【0060】
また,上記の図4から図6に示す組電池Aの充電特性は,二次電池B1,B2,B3の凸部Zについて,少なくとも2以上がほぼ完全に重なっている状態,あるいは,全く重なっていない状態のときのものである。しかし,二次電池B1,B2,B3のそれぞれの蓄電率のばらつき具合により,充電時には2以上の二次電池Bの凸部Zが少しずれた状態で重なる事もある。図7に,2つの二次電池B1,B2の凸部Zがずれた状態で重なった場合の例を示す。
【0061】
図7は,組電池Aの充電の開始時において,二次電池B1の蓄電率よりも二次電池B2の蓄電率がわずかに低かった場合である。図7において,実線で示す二次電池B1については,T14において特徴点Xを示し,T16においてYの電圧の低下が生じている。一方,破線で示す二次電池B2については,T15において特徴点Xを示し,T17においてYの電圧の低下が生じている。
【0062】
また図7に示すように,T14からT15の時間をt1とする。t1の時間は,凸部Zの時間よりも短い時間である。このため,二次電池B1の凸部Zと二次電池B2の凸部Zとは,t1だけずれた状態で互いに重なっている。なお,図7では,二次電池B3の凸部Zは,二次電池B1,B2のいずれの凸部Zとも重なっておらず,図中には表れていない。
【0063】
また,図7に太い実線で示す組電池Aのグラフにおいては,T14において特徴点XA7が現れており,T17において,電圧の低下が生じている。その組電池Aの電圧の低下量を,YAとする。また,組電池Aのグラフが特徴点XA7を示すT14からYAの電圧の低下が生じるまでの区間を,凸部ZA7として示している。
【0064】
ここで,組電池Aの特徴点XA7の直後における電圧上昇率は,二次電池B単体の特徴点Xの直後における電圧上昇率以上である。組電池Aが特徴点XA7を示した直後において,二次電池B2は低上昇部ILを示しているからである。つまり,二次電池B2の電圧は,わずかに上昇しているからである。また,組電池Aが凸部ZAを示す時間は当然,二次電池B単体が凸部Zを示す時間よりも長いものである。さらに,組電池AのYAは,時間t1によって異なる二次電池B1,B2の凸部Zの重なり具合によって異なるものである。しかし,組電池AのYAは少なくとも,二次電池B単体のYよりも大きい値である。
【0065】
次に,充電制御部25による組電池Aの充電の処理手順について,図8のフローチャートにより説明する。なお,本形態では,組電池Aの充電は,0.5〜1.0Cの電流値で開始する。充電時における充電制御部25は,まず,電圧検出部27が検出する組電池Aの電圧値よりその電圧上昇率を算出する(S101)。そして,その算出した電圧上昇率が,予め定めた第1基準上昇率以上であるか否かを判断する(S102)。
【0066】
第1基準上昇率は,二次電池B単体の低上昇部ILにおける電圧上昇率の最大値以上,二次電池B単体の変曲点Xの直後における電圧上昇率以下に定められたものである。すなわち,第1基準上昇率は,組電池Aが特徴点XA1〜XA7の直後に示す電圧上昇率のいずれよりも低い値である。これにより,組電池Aのうちのいずれかの二次電池Bが特徴点Xに到達したことを,適切に検出することができる。
【0067】
次に,算出した組電池Aの電圧上昇率が第1基準上昇率以上であった場合には(S102:YES),組電池Aの電圧上昇率が第1基準上昇率未満から以上となったときに,組電池Aが特徴点に到達したと判断する(S103)。また,その特徴点の直後における電圧上昇率が,予め定めた第2基準上昇率よりも高いか否かを判断する(S104)。
【0068】
第2基準上昇率は,二次電池Bの特徴点Xにおける電圧上昇率を基準に定められたものである。すなわち,第2基準上昇率は,二次電池B単体の特徴点Xの直後における電圧上昇率よりも高い値に定められたものである。このため,第2基準上昇率は,第1基準上昇率よりも高い値に定められたものである。さらに,第2基準上昇率は,2つの二次電池の凸部Zが完全に重なったときに,組電池Aが特徴点の直後に示す電圧上昇率よりも低い値に定められている。
【0069】
なお,ステップS104における判断は,組電池Aが特徴点に到達した直後における電圧上昇率により行うことに限られるものではない。前述したように,二次電池Bの電圧は特徴点Xを示した後,10分程度の高上昇部IHにおいて,高い電圧上昇率を示すものである。よって,組電池Aが特徴点に到達した後,二次電池Bの高上昇部IHの高い電圧上昇率を示す区間に相当する時点の組電池Aの電圧上昇率により,第2基準上昇率との比較に係るステップS104の判断を行ってもよい。具体的には,例えば,組電池Aが特徴点に到達した後,2分後の組電池Aの電圧上昇率により,第2基準上昇率との比較に係るステップS104の判断を行うこととしてもよい。
【0070】
そして,組電池Aの特徴点の直後における電圧上昇率が第2基準上昇率よりも高かった場合には(S104:YES),組電池Aを構成する二次電池B1,B2,B3のうちの2以上の二次電池Bが同時に,満充電に到達間近であると判断する(S105)。つまり,2以上の二次電池Bの凸部Zがほぼ完全に重なった状態で,それらの二次電池Bが満充電に到達する直前であると判断する。
【0071】
続いて,電圧検出部27の検出する組電池Aの電圧値に,電圧の低下があるか否かを判断する(S106)。そして,組電池Aに電圧の低下があった場合には(S106:YES),その電圧の低下量より,組電池Aのうちの満充電状態となった二次電池Bの比率である満充電比率を算出する(S107)。例えば,電圧の低下量が2Yであったときには,満充電状態となった二次電池Bの個数が2であるため,組電池Aの満充電比率は2/3である。
【0072】
なお,本形態の二次電池Bの電池電圧は,二次電池Bの劣化時には,下降部Dのような挙動を示した後,2〜5分程度以内に再び上昇するようなことがある。このため本形態の充電制御部25は,組電池Aの電圧値が低下したときにはその後,2〜5分程度の間に再び電圧値が上昇しなかったときに,組電池Aに電圧の低下がある(S106:YES)と判断する。
【0073】
一方,組電池Aの特徴点の直後における電圧上昇率が第2基準上昇率以下であった場合には(S104:NO),二次電池B1,B2,B3について,そのうちの1つの二次電池Bが満充電に到達間近,または,2以上の二次電池Bがばらついた状態で満充電に到達間近であると判断する(S109)。2以上の二次電池Bがばらついた状態で満充電に到達間近とは,2以上の二次電池Bが,それらの凸部Zが互いにずれて重なった状態で満充電に到達間近のときである。
【0074】
この場合には,充電制御部25は,組電池Aに特徴点が現れたときからの,電圧検出部27が検出する組電池Aの電圧値の積算値の算出を開始する(S110)。そして,組電池Aの電圧値の積算値の算出を行いつつ,電圧検出部27の検出する組電池Aの電圧値に,電圧の低下があるか否かを判断する(S111)。組電池Aに電圧の低下があった場合には(S111:YES),その電圧の低下時までの電圧値の積算値により,組電池Aの満充電比率を算出する(S112)。
【0075】
ここで,複数の二次電池Bの凸部Zが互いにずれて重なった状態でこれらの二次電池Bが満充電となった場合の組電池Aの電圧値の積算値は当然,1つの二次電池Bのみが満充電となった場合の組電池Aの電圧値の積算値よりも高い値となる。図7の例で前述したように,組電池Aが凸部ZA7を示す時間は,二次電池B単体が凸部Zを示す時間よりも長いものだからである。さらには,組電池Aの電圧の低下量YAは少なくとも,二次電池B単体の電圧の低下量Yよりも大きい値だからである。
【0076】
また,複数の二次電池Bの凸部Zが互いにずれて重なった状態でこれらの二次電池Bが満充電となった場合には,その重なっている凸部Zの数により,組電池Aの電圧値の積算値は異なる。互いに重なっている凸部Zの数が多いほど,そのときの組電池Aの電圧値の積算値は高い値となるからである。よって,組電池Aに特徴点が現れたときから電圧の低下時までの電圧値の積算値により,組電池Aの満充電比率を算出することができる。
【0077】
なお,組電池Aの満充電比率は,組電池Aに特徴点が現れる前の二次電池Bが低上昇部ILを示す部分の傾きをベースとし,それよりも高い電圧値の部分の積算値を用いて算出することとしてもよい。すなわち,図7の例においては,特徴点XA7の直前の電圧上昇率を傾きとする直線に対して高い電圧値を示す凸部ZA7の部分のみの積算値により,組電池Aの満充電比率を算出するようにしてもよい。
【0078】
次に,組電池Aを構成する二次電池B1,B2,B3のすべてが,満充電状態であるか否かを判断する(S108)。すなわち,ステップS107またはステップS112における組電池Aの満充電比率の算出が1回目である場合には,その値が1であるときに,二次電池B1,B2,B3のすべてが満充電状態であると判断する。また,ステップS107またはステップS112における組電池Aの満充電比率の算出が2回目以降である場合には,それより前に算出した組電池Aの満充電比率に今回算出した組電池Aの満充電比率を加算する。そして,その加算後における組電池Aの満充電比率の値が1であるときに,二次電池B1,B2,B3のすべてが満充電状態であると判断する。
【0079】
二次電池B1,B2,B3のすべてが満充電状態である場合には(S108:YES),充電制御部25は,組電池Aの充電が完了したことにより,組電池Aの充電を停止する。一方,二次電池B1,B2,B3のうちの1つでも満充電状態でない場合には(S108:NO),組電池Aのうちの満充電状態となっていない二次電池Bの比率である組電池Aの非満充電比率を算出し,その非満充電比率に合わせて予め定めた電流値に,組電池Aを充電する電流値を切り替える(S113)。そして,切り替え後の電流値により,ステップS101に戻って組電池Aの充電を続行することにより,満充電に到達していない二次電池Bの充電を行う。
【0080】
組電池Aの非満充電比率に合わせて切り替えられた後の電流値は,充電の開始時には0.5〜1.0Cであった電流値よりも低い電流値である。さらに,切り替え後の電流値は,組電池Aのうちの満充電となった二次電池Bが過剰に発熱しない程度に,満充電に到達していない二次電池Bの比率に合わせて定められている。満充電に到達している二次電池Bを劣化させないためである。具体的には,例えば組電池Aの非満充電比率が1/3であった場合には,切り替え後の電流値は,0.25Cとすることができる。
【0081】
以上詳細に説明したように,本発明の画像形成装置1の電源装置20は,3つの二次電池Bを直列に接続してなる組電池Aを有する。充電制御部25は,電圧検出部27が検出する組電池Aの電圧値に基づいて,組電池Aの充電を行う。電圧検出部27は,組電池Aの全体の電圧値を検出するものである。つまり,組電池Aを構成する二次電池Bごとに電圧を検出するための構成がないため,安価である。また,充電制御部25は,組電池Aの充電時には,組電池Aの全体の電圧に基づいて,組電池Aを構成する二次電池Bのすべてが満充電に到達したか否かを判断する。そして,満充電に到達してない二次電池Bがある場合には,組電池Aを充電する電流値を低下させる。これにより,満充電に到達した二次電池Bを劣化させることなく,すべての二次電池Bが満充電となるまで,組電池Aの充電を続行させることができる。
【0082】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。従って本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,組電池Aは,3つの二次電池Bを直列に接続したものに限られるものではない。組電池Aは,2つの二次電池Bを直列に接続したものであってもよいし,4つ以上の二次電池Bを直列に接続したものであってもよい。
【0083】
また例えば,画像形成装置1の電源装置20に電力を供給する外部電源200としては,商用電源のみに限らず,太陽電池や熱電変換素子などを併用することもできる。またその場合には,太陽電池および熱電変換素子より供給される電力は,AC/DC変換部を介さずに直接,充電制御部25に入力されるようにすればよい。このようにすれば,太陽電池および熱電変換素子より供給される電力により,組電池Aを充電させることができる。
【符号の説明】
【0084】
1…画像形成装置
20…電源装置
21…電源制御部
25…充電制御部
A…組電池
B1,B2,B3…二次電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8