特許第5987713号(P5987713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987713
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】バンドクリップ
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20160825BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20160825BHJP
   F16B 21/04 20060101ALI20160825BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   H02G3/30
   F16B2/08 U
   F16B21/04 H
   B60R16/02 623H
   B60R16/02 623C
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-18668(P2013-18668)
(22)【出願日】2013年2月1日
(65)【公開番号】特開2014-150680(P2014-150680A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】松村 雄高
【審査官】 石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−276040(JP,A)
【文献】 特開2001−298836(JP,A)
【文献】 特開2011−103714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
H02G 3/30
B60R 16/02
F16B 2/08
F16B 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材に被取付部材を固定するバンドクリップであって、
前記固定部材に固定されるクリップ部材と、前記被取付部材を保持するバンド部材と、前記クリップ部材および前記バンド部材を連結する連結部材とを備え、
前記バンド部材は、台座部と、前記台座部の一側面から突出し、前記被取付部材に巻回されるバンド部とを有し、
前記台座部は、前記バンド部が前記被取付部材に巻回される側とは反対側の面に形成された穴部と、前記連結部材が挿通される貫通孔とを有し、
前記クリップ部材は、前記固定部材に設けられる取付穴に差し込み固定されるフック部と、前記穴部に差し込み嵌合される軸部とを有し、
前記軸部は、差し込み側の端部周面に第1の係止部と、前記連結部材に嵌合される嵌合部とを有し、
前記穴部は、前記軸部が差し込まれて前記軸部が所定の係止位置まで回動されたときに前記第1の係止部が係止して前記軸部を前記穴部から脱出不能に位置決めする第2の係止部を有し、
前記第1の係止部は、前記軸部が前記所定の係止位置に回動されるに従って前記第2の係止部との摩擦力が増加する傾斜面を有し、
前記軸部が前記所定の係止位置まで回動されたときに、前記台座部の前記貫通孔と前記軸部の前記嵌合部とを連通状態とすることで、前記連結部材が前記貫通孔を通して前記嵌合部に係止されるようにしたことを特徴とするバンドクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定部材に固定されるクリップ部材と、被取付部材を保持するバンド部材とを分離可能なバンドクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、固定部材としての車両パネルに被取付部材としてのワイヤハーネスを取付ける場合には、バンドクリップが用いられている。この車両に取付けられるバンドクリップは、主に車体側の金属板に取付けられ、ワイヤハーネスを車体側に固定することを目的とするが、車体側の取付箇所の構成に合わせてクリップ部材の形状を変更する必要がある。
【0003】
例えば、異音、水入り防止を重視する場合はクッション付クリップ部材を使用し、高耐久性や大きい引っ張り力を重視する場合は大きいサイズのクリップ部材を使用する。また、取付けレイアウト規制がある場合はオフセット形状のクリップ部材を使用する。一体型のバンドクリップでは、これらの車体側の取付箇所の構成を満たすために様々な種類のものを揃える必要があり、コスト増加の要因となってしまう。
【0004】
これに対して、バンドクリップを、車両パネルに固定されるクリップ部材と、ワイヤハーネスを保持するバンド部材とを分離可能にした構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1に開示されたバンドクリップは、ワイヤハーネスを保持するバンド部と、車両パネルに固定されるクリップ部材とを別体に成形してピン部材を用いて連結している。
【0006】
このバンドクリップは、ピン部材によってクリップ部材およびバンド部材との分離および結合が可能となるため、車体側の取付箇所の構成に合わせてクリップ部材とバンド部材とを組み合わせることができる。したがって、このバンドクリップは、車体側の取付箇所の構成に合わせて様々な種類のクリップ部材を揃える必要がなく、コストの増加を抑制することができる。
【0007】
また、このバンドクリップは、ワイヤハーネスを簡易に車両パネルから取外したり、再度取付けることができるので、車両のメンテナンス作業の作業性の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−298836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来のバンドクリップは、クリップ部材の支柱部をバンド部の枠形状部に差し込み嵌合する構造になっている。そのため、バンド部の枠形状部に設けられた貫通孔と、クリップ部材の支柱部に設けられた貫通孔とが連通状態となるようにそれぞれの位置、特に支柱部の差し込み方向の位置を合わせながら枠形状部の貫通孔および支柱部の貫通孔にピン部材を挿通する必要があり、バンド部材とクリップ部材とを連結するときの作業性が悪い。
【0010】
また、特許文献1に開示されたバンドクリップは、バンド部とクリップ部材とをピン部材で連結する構造になっているため、ワイヤハーネス等の荷重がピン部材に集中する。そのため、荷重に耐えられるようピン部材の太さを確保しなければならず、バンドクリップの小型化を妨げる要因となる。
【0011】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、クリップ部材とバンド部材とを連結するときの作業性を向上させることができるとともに、小型化を図ることができるバンドクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るバンドクリップは、上記目的達成のため、(1)固定部材に被取付部材を固定するバンドクリップであって、前記固定部材に固定されるクリップ部材と、前記被取付部材を保持するバンド部材と、前記クリップ部材および前記バンド部材を連結する連結部材とを備え、前記バンド部材は、台座部と、前記台座部の一側面から突出し、前記被取付部材に巻回されるバンド部とを有し、前記台座部は、前記バンド部が前記被取付部材に巻回される側とは反対側の面に形成された穴部と、前記連結部材が挿通される貫通孔とを有し、前記クリップ部材は、前記固定部材に設けられる取付穴に差し込み固定されるフック部と、前記穴部に差し込み嵌合される軸部とを有し、前記軸部は、差し込み側の端部周面に第1の係止部と、前記連結部材に嵌合される嵌合部とを有し、前記穴部は、前記軸部が差し込まれて前記軸部が所定の係止位置まで回動されたときに前記第1の係止部が係止して前記軸部を前記穴部から脱出不能に位置決めする第2の係止部を有し、前記軸部が前記所定の係止位置まで回動されたときに、前記台座部の前記貫通孔と前記軸部の前記嵌合部とを連通状態とすることで、前記連結部材が前記貫通孔を通して前記嵌合部に係止されるものから構成されている。
【0013】
このバンドクリップは、軸部を穴部に差し込んで軸部を所定の係止位置まで回動することにより、クリップ部材とバンド部材とが仮固定されるとともに、台座部の貫通孔と軸部の嵌合部とが連通状態となるので、台座部の貫通孔と軸部の嵌合部との位置を合わせながら、貫通孔および嵌合部に連結部材を挿通する必要がなく、クリップ部材とバンド部材とを連結するときの作業性を向上させることができる。
【0014】
また、バンドクリップは、連結部材と軸部の第1の係止部との2箇所でクリップ部材とバンド部材とを連結する構造になっているので、被取付部材等の荷重が連結部材と第1の係止部に分散される。
【0015】
このため、クリップ部材とバンド部材とを連結部材のみで連結する場合と比較して連結部材の長手方向と交差する方向の断面の断面積を小さくでき、バンドクリップを小型化することができる。
【0016】
上記(1)に記載のバンドクリップにおいて、(2)前記第1の係止部は、前記軸部が前記所定の係止位置に回動されるに従って前記第2の係止部との摩擦力が増加する傾斜面を有するものから構成されている。
このバンドクリップは、第1の係止部と第2の係止部との摩擦力により、台座部の貫通孔と軸部の嵌合部との連結状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、クリップ部材とバンド部材とを連結するときの作業性を向上させることができるとともに、小型化を図ることができるバンドクリップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るバンドクリップの一実施の形態を示す図であり、バンドクリップの外観斜視図である。
図2】一実施の形態のバンドクリップの側面図である。
図3】一実施の形態のバンドクリップの部分断面側面図である。
図4】一実施の形態のバンドクリップにおいて、クリップ部材とバンド部材とを分離した状態を示す部分断面側面図である。
図5】一実施の形態のバンドクリップにおいて、クリップ部材の軸部の構成を示す図り、(a)は、軸部の平面図、(b)は、軸部の要部側面図である。
図6】一実施の形態のバンドクリップにおいて、バンド部材の台座部の平面図である。
図7】一実施の形態のバンドクリップにおいて、バンド部材の台座部の穴部にクリップ部材の軸部を差し込んだ状態を示す平面図である。
図8】一実施の形態のバンドクリップにおいて、クリップ部材の軸部が位置決め係止された状態を示す平面図である。
図9】一実施の形態のバンドクリップにおいて、軸部の係止用凸部と穴部の係止用凹部との関係を示す模式図である。
図10】一実施の形態のバンドクリップを用いて車両パネルにワイヤハーネスを取付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係るバンドクリップについて、図面を参照して説明する。
図10に示すように、本実施の形態のバンドクリップ1は、固定部材としての車両パネルPに被取付部材としての電線束のワイヤハーネスWを取付け固定する場合に用いられるものである。
【0020】
図1図4において、バンドクリップ1は、車両パネルPに固定されるクリップ部材10と、ワイヤハーネスWを保持するバンド部材20と、クリップ部材10およびバンド部材20を連結する連結部材30とを備えている。
【0021】
このバンドクリップ1は、クリップ部材10とバンド部材20とを別体に成形し、連結部材30を用いて連結することにより、使用される構造となっている。すなわち、バンドクリップ1は、クリップ部材10とバンド部材20との分離が可能な構造になっている。
【0022】
したがって、本実施の形態のバンドクリップ1は、車体側の取付箇所の構成に合わせてクリップ部材10とバンド部材20とを組み合わせることができるので、一体型のバンドクリップのように車体側の取付箇所の構成に合わせて様々な種類のバンドクリップを揃える必要がなく、コストの増加を抑制できる。
【0023】
クリップ部材10は、フック部11、椀形状の弾性片12および軸部13を有する構成になっている。フック部11は、車両パネルPに設けられる取付穴H(図10参照)に差し込み固定されるものであり、支柱部11aより両側に係止用羽根11bが突出した構造になっている。
【0024】
フック部11は、2つの係止用羽根11bが取付穴Hの径に応じた端部間隔で形成されている。椀形状の弾性片12は、係止用羽根11bの端部に近接対面する位置に配置され、支柱部11aに支持されている。軸部13は、後述する穴部23に差し込み嵌合されるものであり、フック部11とは反対側において椀形状の弾性片12に支持されている。これらのフック部11、椀形状の弾性片12および軸部13は、例えば樹脂材により一体成形されている。
【0025】
クリップ部材10は、車両パネルPの取付穴Hにフック部11を差し込むことにより、そのフック部11の係止用羽根11bが弾性変形した後に弾性復帰して端部を車両パネルPの取付穴Hの縁に係止させるとともに、弾性片12が弾性変形された状態で取付穴Hの周囲を押し戻すように押さえて車両パネルPを挟持する状態にすることができ、単独で車両パネルPに取付け固定することができる。
【0026】
バンド部材20は、台座部21およびバンド部22を有している。バンド部22は、長尺状で可撓性を有しており、台座部21に一体的に形成されて台座部21の一側面から突出し、ワイヤハーネスWの外周に巻回されるようになっている。ここで、ワイヤハーネスWは、被取付部材を構成している。
【0027】
台座部21は、バンド部22がワイヤハーネスWに巻回される側と反対側の面より窪んで設けられた穴部23と、バンド部22が挿通されるバンド部挿通用貫通孔28とを有しており、穴部23には前述した軸部13が差し込み嵌合される。これらの台座部21、バンド部22および穴部23は、例えば樹脂材により一体成形されている。
【0028】
バンド部挿通用貫通孔28は、台座部21にバンド部22が連なる一側面からその反対側の他側面に亘って貫通された穴から構成されている。
【0029】
バンド部22には、その一面側に被係止部26が設けられており、台座部21には、バンド部挿通用貫通孔28に挿通された後に、バンド部挿通用貫通孔28から引き出されたバンド部22を、その引き出し方向とは逆の方向に戻らないよう被係止部26に係止される係合爪が設けられている。
【0030】
ここで、係止爪は、図示していないが、バンド部挿通用貫通孔28の中に設けられており、バンド部挿通用貫通孔28に挿通されたバンド部22の被係止部26に係止される。
【0031】
被係止部26は、バンド部22の一面側にその長手方向に所定の間隔で複数の係止用の溝が形成された構成になっており、係止爪は、係止用の溝に係止される。
【0032】
このように構成されたバンド部22は、被係止部26に係止爪を押し付けて係止させることにより、バンド部挿通用貫通孔28を挿通して引き出されたバンド部22をその引き出し方向とは逆の方向に戻らないようにすることができ、単独でワイヤハーネスWを緊締結束することができる。
【0033】
図3図5に示すように、軸部13は、円柱状で形成され、その差し込み側の端部周面に係止用凸部15を有する構成になっている。係止用凸部15は、軸部13の中心軸を基準にして例えば180度異なる位置に一対で設けられており、軸部13を回動させた時に円軌道を描く形状になっている。
【0034】
図3図6に示すように、穴部23は、係止用凸部15を有する軸部13が差し込み可能となるように、軸部13の係止用凸部15を含む端面形状に対応した穴形状で形成されている。
【0035】
穴部23には係止用凹部25が形成されており、この係止用凹部25は、軸部13が差し込まれて軸部13が所定の係止位置まで回動されたときに係止用凸部15が係止して軸部13を穴部23から脱出不能に位置決め係止するようになっている。なお、本実施の形態のバンドクリップ1は、係止用凸部15が第1の係止部を構成し、係止用凹部25が第2の係止部を構成している。
【0036】
この位置決め係止は、台座部21の穴部23にクリップ部材10の軸部13を差し込み(図7参照)、この状態からクリップ部材10を所定の角度、例えば、90度回動して係止用凸部15を係止用凹部25に嵌め込むことによって機能する(図8図9参照)。
【0037】
ここで、脱出不能とは、係止用凸部15が係止用凹部25に係止している状態を意味しており、係止用凸部15と係止用凹部25とが係止されることによってクリップ部材10とバンド部材20との連結が維持される。
【0038】
なお、図2図3は、クリップ部材10の軸部13が係止用凹部25に位置決め係止され、クリップ部材10とバンド部材20とが連結された状態を示している。一方、図4は、係止用凸部15の位置決め係止が係止用凹部25から解除され、クリップ部材10とバンド部材20とが分離された状態を示している。
【0039】
図2図8に示すように、台座部21は、連結部材30が挿通される貫通孔24と、連結部材30に嵌合される嵌合部としての貫通孔14とを有しており、貫通孔24および貫通孔14は、軸部13が所定の係止位置まで回動されたときに連通状態となるように構成されている。
【0040】
貫通孔24および貫通孔14は、穴部23に軸部13を差し込んで軸部13の下端を穴部23に突き当てたときに、差し込み方向の高さ位置が一致するよう形成されている。また、貫通孔24および貫通孔14は、係止用凸部15が係止用凹部25に位置決め係止されたとき、同一方向で同一直線上に位置するよう位置決めされる。
【0041】
貫通孔24は、台座部21にバンド部22が連なる一側面から内方に延在して穴部23に連通し、台座部21にバンド部22が連なる一側面とは反対側の他側面から内方に延在して穴部23に連通している。
【0042】
すなわち、貫通孔24は、台座部21の互いに反対側の2つの側面において、間に穴部23を介して一方の側面から他方の側面に亘って貫通している。貫通孔14は、軸部13の延在方向と直交する方向において、軸部13の一方から他方に亘って貫通している。
【0043】
貫通孔24および貫通孔14には、連結部材30が挿通されている。すなわち、バンドクリップ1は、連結部材30および軸部13の係止用凸部15との2箇所でクリップ部材10とバンド部材20とが連結される構造になっている。
【0044】
また、バンドクリップ1は、軸部13が所定の係止位置まで回動されたときに、台座部21の貫通孔24と軸部13の貫通孔14とを連通状態とすることで、連結部材30が台座部21の貫通孔24を通して軸部13の貫通孔14に係止されるように構成される。
【0045】
図5図9に示すように、係止用凸部15は、軸部13が所定の係止位置に回動されるに従って、係止用凹部25との摩擦力が増加する傾斜面15aを有する構成になっている。換言すれば、係止用凸部15は、軸部13の回動により係止用凹部25に差し込まれるに連れて楔作用を生じて係止用凹部25との摩擦力が増加する構造になっている。
【0046】
このように構成されたバンドクリップ1は、ワイヤハーネスWを簡易に車両パネルPから取外したり、再度取付けることができるので、車両のメンテナンス作業の作業性を向上させることができる。
【0047】
ワイヤハーネスWの取外しは、図10の状態から連結部材30を貫通孔24および貫通孔14から抜き取り、その後、クリップ部材10に対してバンド部材20を所定の角度、例えば、90度回動して係止用凸部15の位置決め係止を係止用凹部25から解除することで行うことができる。この一連の作業手順は、ワイヤハーネスWをコネクタから取外した状態で行う。
【0048】
ワイヤハーネスWの再度の取付けは、クリップ部材10の軸部13をバンド部材20の穴部23に差し込み、その後、係止用凸部15が係止用凹部25に位置決め係止されるまでバンド部材20をクリップ部材10に対して所定の角度、例えば、90度回動し、その後、連結部材30を貫通孔24および貫通孔14に挿通することによって行うことができる。
【0049】
このワイヤハーネスWの再度の取付けにおいて、軸部13を穴部23に差し込んで軸部13を所定の係止位置まで回動することにより、クリップ部材10とバンド部材20とが仮固定されると共に、台座部21の貫通孔24と軸部13の貫通孔14とが連通状態となるので、台座部21の貫通孔24と軸部13の貫通孔14との位置を合わせながら、それぞれの貫通孔24、貫通孔14に連結部材30を挿通する必要がなく、クリップ部材10とバンド部材20とを連結するときの作業性を向上させることができる。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態のバンドクリップ1は、軸部13が差し込まれる穴部23および連結部材30が挿通される貫通孔24を有する台座部21と、穴部23への差し込み側の端部周面に係止用凸部15を有するとともに、連結部材30に嵌合される貫通孔14を有する軸部13とを備えている。
【0051】
また、バンドクリップ1は、台座部21の穴部23に形成され、穴部23に差し込まれた軸部13が所定の係止位置まで回動されたときに係止用凸部15が係止して軸部13を穴部23から脱出不能に位置決めする係止用凹部25を有し、軸部13が所定の係止位置まで回動されたときに、貫通孔24と貫通孔14とを連通状態とすることで、連結部材30が貫通孔24を通して貫通孔14に係止されるように構成されている。
【0052】
このように構成されたバンドクリップ1は、軸部13を穴部23に差し込んで軸部13を所定の係止位置まで回動することにより、クリップ部材10とバンド部材20とが仮固定されると共に、台座部21の貫通孔24と軸部13の貫通孔14とが連通状態にすることができる。
このため、台座部21の貫通孔24と軸部13の貫通孔14との位置を合わせながら、それぞれの貫通孔24、貫通孔14に連結部材30を挿通する必要がなく、クリップ部材10とバンド部材20とを連結するときの作業性を向上させることができる。
【0053】
また、バンドクリップ1は、連結部材30および軸部13の係止用凸部15との2箇所でクリップ部材10とバンド部材20とが連結される構造になっているので、ワイヤハーネスW等の荷重を連結部材30と係止用凸部15に分散することができる。
【0054】
このため、クリップ部材10とバンド部材20とを連結部材30のみで連結する場合と比較して連結部材30の長手方向と交差する方向の断面の断面積を小さくでき、バンドクリップ1を小型化することができる。
【0055】
また、本実施の形態のバンドクリップ1において、係止用凸部15は、軸部13が所定の係止位置に回動されるに従って係止用凹部25との摩擦力が増加する傾斜面15aを有している。
【0056】
したがって、バンドクリップ1は、係止用凸部15と係止用凹部25との摩擦力により、台座部21の貫通孔24と軸部13の貫通孔14との連結状態を維持することができる。このため、クリップ部材10とバンド部材20とを連結するときの作業性をさらに向上させることができる。
【0057】
ここで、実施の形態のバンドクリップ1は、固定部材としての車両パネルPにワイヤハーネスWを取付け固定する場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0058】
例えば、被取付部材としてのワイヤハーネスを固定部材としての電子器機器用パネルに取付け固定する場合に用いられるバンドクリップや、固定部材にコルゲートチューブ、油圧パイプ等の被取付部材を取付ける場合に用いられるバンドクリップにも適用できる。この場合においても、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0059】
また、本実施の形態では、互いに分離可能なクリップ部材10とバンド部材20とが連結部材30で連結される構造のバンドクリップ1について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、バンド部材のバンド部を連結部材として使用し、クリップ部材とバンド部材とをバンド部で連結する構造にしてもよい。
【0060】
この場合、バンド部とは別体の連結部材を省略することができるので、バンドクリップを構成する部品点数を低減することができる。また、ワイヤハーネス等の荷重を、連結部材としてのバンド部と係止用凸部に分散することができるので、長尺状で可撓性を有するバンド部を連結部材として使用しても信頼性を確保することができる。
【0061】
また、本実施の形態のバンドクリップ1は、軸部13に形成された貫通孔14から嵌合部を構成しているが、嵌合部は、この構成に限定されるものではない。例えば、嵌合部として、軸部の側面からその内側に窪み、軸部の軸方向と直交する方向に延びる切欠きを軸部に構成してもよい。
【0062】
このように構成しても、バンドクリップは、軸部が所定の係止位置まで回動されたときに、台座部の貫通孔と軸部の切欠きとを連通状態とすることで、貫通孔を通して連結部材を切欠きに係止させることができる。
【0063】
また、本実施の形態では、穴部23に係止用凹部25を形成し、軸部13に係止用凸部15を形成しているが、これに限定されるものではなく、穴部23に係止用凸部を形成し、軸部13に係止用凹部を形成してもよい。
【0064】
以上説明したように、本発明に係るバンドクリップは、クリップ部材とバンド部材とを連結するときの作業性を向上させることができるとともに、小型化を図ることができるという効果を有し、固定部材に固定されるクリップ部材と、被取付部材を保持するバンド部材とを分離可能なバンドクリップ等として有用である。
【符号の説明】
【0065】
1…バンドクリップ、10…クリップ部材、11…フック部、13…軸部、14…貫通孔(嵌合部)、15…係止用凸部(第1の係止部)、15a…傾斜面、20…バンド部材、21…台座部、22…バンド部、23…穴部、24…貫通孔、25…係止用凹部(第2の係止部)、30…連結部材、W…ワイヤハーネス(被取付部材)
図1
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図10