(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
まず、本実施形態に係る画像形成装置について説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置100は、矢印A方向に回転する電子写真感光体(以下、「感光体」という。)10を備えている。本実施形態に係る感光体10は、例えば円筒状のアルミニウムで構成される基材と、この基材の外周面に形成される有機系の感光層とを有している。
【0019】
感光体10の周囲には、感光体10の表面を帯電する帯電器11が設けられている。帯電器11は、感光体10に対して回転可能に圧接配置され、感光体10の回転に伴って従動回転する帯電ロールと、この帯電ロールに予め定められた値の帯電バイアス(本実施形態では、負極性)を印加する帯電電源とを有している。
【0020】
また、感光体10の周囲には、帯電器11によって帯電した感光体10の表面に露光ビームBmを照射して静電潜像を形成するレーザ露光器12が設けられている。レーザ露光器12は、感光体10に対して露光ビームBmを出射するレーザ(例えば半導体レーザ)を有しており、後述する画像処理装置29(
図2参照。)から入力された画像情報に応じて、レーザから出射された露光ビームBmを感光体10に照射する。感光体10の表面がレーザ露光器12によって走査露光されることにより、感光体10に静電潜像が形成される。
【0021】
また、感光体10の周囲には、トナーを収容し、感光体10上の静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像器13が設けられている。本実施形態に係る現像器13は、トナーとキャリアとを含む現像剤を保持した現像剤保持体13aを有している。感光体10の表面に形成された静電潜像は、現像器13によってトナー像として現像される。すなわち、現像剤保持体13aに、図示しない電源から直流電圧からなる現像バイアス、または交流電圧に直流電圧が重畳された現像バイアスが印加されて、感光体10との間に現像電界が形成される。それによって、現像剤保持体13aのトナーが、感光体10に形成された静電潜像に対応する部分に転移し、静電潜像がトナー像として可視像化される。
【0022】
また、感光体10の周囲には、感光体10に形成されたトナー像を帯電させる転写前帯電器14が設けられている。本実施形態に係る転写前帯電器14は、出力電流値を調整可能な電源である図示しない電流源が接続されている。なお、転写前帯電器14による帯電は、後述する転写部15による静電転写に先立って行われる。転写前帯電器14により帯電したトナー像は、感光体10の回転に伴い、被転写体である用紙Pに転写される転写部15まで移動する。
【0023】
また、感光体10の周囲には、感光体10上に形成されたトナー像を転写部15において用紙Pに転写する転写ユニット20が設けられている。転写ユニット20は、駆動ロール22と従動ロール23とによって張力を持って架け渡され、弾性体で構成された転写ベルト21と、転写ベルト21の内側に配設され、転写ベルト21を介して感光体10に押圧される転写ロール24とを備えている。
【0024】
転写ロール24は、例えばステンレス製の導電性芯材の外周にゴム製の導電性発泡弾性体を被覆して構成されている。そして、転写ロール24では、この導電性発泡弾性体に、イオン伝導性を有する物質(例えばNBRゴム(ニトリルゴム))を混入させることで、抵抗調整を行っている。ここで、転写ロール24については、初期状態における体積抵抗率が105〜109Ω・cmの範囲内に設定され、硬度(アスカC硬度)が30°〜50°の範囲内にあるものを用いることが好ましい。なお、転写ロール24に対し、イオン伝導性を有する物質に加えて、電子伝導性を有する物質(例えばカーボンブラック)等を混入させて抵抗調整を行うようにしても良い。
【0025】
転写ロール24には、出力電流値を調整可能な電源である電流源26が接続されている。その一方で、感光体10の基材は接地されている。電流源26は、定電流制御を行うことにより転写ロール24にトナーの帯電極性(本実施形態では、負極性)とは反対極性(正極性)のバイアス電圧を供給することで、転写ロール24に電流(以下、「転写電流」という。)を供給する。そして、電流源26から転写ロール24に転写電流が供給されることにより転写ロール24、転写ベルト21及び感光体10を通して電流が流れる。これにより、感光体10と転写ベルト21との間に電界が形成され、転写ロール24から用紙Pに感光体10上のトナーの帯電極性とは反対の極性となる電荷が付与される。
【0026】
一方、転写部15では、トナー像の移動に対してタイミングを合わせて搬送された用紙Pが、転写ユニット20の転写ベルト21を介して、感光体10と転写ロール24との間に挟み込まれる。これにより、感光体10に保持されたトナー像は、感光体10と転写ロール24とによって押圧される転写部15において、用紙P上に静電転写される。
【0027】
トナー像が静電転写された用紙Pは、転写ベルト21に静電吸着されることにより感光体10から剥離され、転写ベルト21によって、転写ユニット20の用紙Pの搬送方向の下流側に設けられた後述する定着器60の近傍まで搬送される。
【0028】
この際、転写ベルト21の定着器60側の端部では、用紙Pは、転写ベルト21が駆動ロール22に巻き付く際の曲率、及び用紙Pのコシにより転写ベルト21から剥離される。そして、用紙Pは、定着入口ガイド56に導かれて定着器60に搬送される。
【0029】
また、転写ユニット20には、用紙Pが駆動ロール22の配設位置を通過した後に転写ベルト21の表面上の付着物を掻き取るクリーニングブレード25が設けられている。
【0030】
なお、用紙Pが感光体10から剥離されず、感光体10に吸着されたままの状態となる場合がある。この場合には、転写部15の用紙Pの搬送方向の下流側の感光体10表面の近傍に配設された図示しない分離爪によって、用紙Pは感光体10から分離され、転写ベルト21に静電吸着される。
【0031】
更に、転写ユニット20より用紙Pの搬送方向の下流側には、放電しやすいように、
図1の矢印Dの方向から見た場合に用紙P側の頂部がのこぎりの刃の形状とされ、導電体により構成された除電部27が設けられている。除電部27は、上記頂部が露出しないようにブロックで挟まれると共に、用紙Pに対して非接触となるように設けられている。
【0032】
なお、除電部27には、除電部27に電圧を印加する図示しない除電電源が接続されている。本実施形態では、この除電電源から除電部27に印加する電圧(本実施形態では、負極性)を調整することにより、トナー像が転写され、帯電した用紙Pと除電部27との電位差が調整されることで、除電部27による用紙Pの除電量(すなわち用紙Pの帯電量)が調整される。なお、除電部27は、転写ベルト21からの用紙Pの剥離を補助するために設けられたものである。
【0033】
また、本実施形態に係る画像形成装置100は、用紙Pに転写されたトナー像を用紙Pに定着させる定着器60が備えられている。定着器60に搬送された用紙P上の未定着のトナー像は、定着器60において熱及び圧力による定着処理を受けることによって用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置100の図示しない排出部に搬送される。
【0034】
一方、感光体10の周囲には、トナー像の用紙Pへの転写後に感光体10に付着した正極性の電荷を除去するために感光体10の表面を帯電するプレクリーニング帯電器28が設けられている。また、感光体10の周囲のプレクリーニング帯電器28の下流側には、感光体10に残留したトナーを除去するクリーニングブレード17aを備えたクリーニング部17が設けられている。
【0035】
また、本実施形態に係る画像形成装置100は、用紙搬送系として、用紙Pを収容する用紙トレイ50、この用紙トレイ50に集積された用紙Pを予め定められたタイミングで取り出して搬送するピックアップロール51を備えている。また、画像形成装置100は、用紙搬送系として、ピックアップロール51により取り出された用紙Pを搬送する搬送ロール52、搬送された用紙Pを予め定められたタイミングで転写部15に送り込むレジストロール54を備えている。また、画像形成装置100は、用紙搬送系として、レジストロール54から送り出された用紙Pを転写部15に導く搬送ガイド55、トナー像が転写されて搬送されてくる用紙Pを定着器60へ導く前述した定着入口ガイド56等を備えている。
【0036】
ピックアップロール51により取り出された用紙Pは、搬送ロール52により矢印C方向に搬送されてレジストロール54に到達する。搬送ロール52及びレジストロール54は、用紙Pがレジストロール54の配設位置に到達した際に一旦停止されると共に、感光体10に形成されたトナー像の移動のタイミングに合わせて再び回転される。これにより、用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされ、用紙Pは搬送ガイド55から転写部15に送り出される。
【0037】
次に、本実施形態に係る画像形成装置100の電気的な構成について説明する。
【0038】
本実施形態に係る画像形成装置100は、
図2に示すように、装置全体を総括的に制御する制御部30を備えている。
【0039】
制御部30は、後述する画像形成条件設定処理を含む各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、及びCPUの作業領域として各種情報を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)を備えている。また、制御部30は、CPUによる処理の実行に使用される各種情報を長期的に記憶するROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段を備えている。
【0040】
また、制御部30には、ユーザインタフェース31が電気的に接続されている。ユーザインタフェース31は、情報を表示するディスプレイ等の表示部及びユーザ操作に応じて情報を入力する操作ボタン等の操作入力部を備えている。制御部30は、操作入力部を介して画像形成処理の実行指示を示す情報や、画像形成の対象とする画像(以下、「対象画像」という。)を形成する際の解像度を示す情報、後述する選択用紙情報等の各種情報の入力を受け付ける。また、制御部30は、転写前帯電器14、電流源26、除電部27等の各部に接続されており、これらの各部の動作を制御する。
【0041】
また、本実施形態に係る画像形成装置100は、用紙Pに形成させる画像に対して各種画像処理を施す画像処理装置29を備えている。本実施形態に係る画像形成装置100では、制御部30は、図示しない画像読取装置やパーソナルコンピュータ等から出力される画像情報を画像処理装置29に入力する。そして、画像処理装置29によって画像処理が施された画像情報に基づいて、レーザ露光器12により感光体10に静電画像が形成される。
【0042】
ところで、トナーを色材として用いた画像形成装置(以下、「トナープリンタ」という。)では、一般に、上記のように、トナー像が転写された用紙Pは転写ベルト21が駆動ロール22に巻き付く際の曲率、及び用紙Pのコシにより転写ベルト21から剥離される。しかしながら、転写ロール24に供給される転写電流の値、除電部27に印加する電圧の値、転写前帯電器14に供給する電流の値等の画像形成条件によっては、転写ベルト21から用紙Pが剥離する時にトナーが飛散する場合がある。また、画像形成の対象とする用紙Pの種類及び上記解像度によっても、転写ベルト21から用紙Pが剥離する時にトナーが飛散する場合がある。
【0043】
このようにトナーが飛散して用紙Pに付着した場合、一例として
図3に示すように、用紙Pにトナーが鳥の足跡状に描画されてしまう場合がある。なお、この際、描画された画像を拡大した場合には、トナーの飛散に起因して用紙Pに生じる上記鳥の足跡状の画像(以下、「トナー飛散画像」という。)が視認され難い。しかし、拡大せずに画像全体を見ると上記トナー飛散画像が視認され易くなる。
【0044】
図4に示すグラフは、横軸が転写電流の値の一例を示し、縦軸がトナーの飛散量を表すトナー飛散グレードの一例を示している。なお、トナー飛散グレードは、トナー飛散画像の視認性の高さを予め定められた複数の段階数(本実施形態では、10段階)で表したものである。本実施形態に係るトナー飛散グレードでは、トナー飛散画像を目視で確認できない状態をグレードG0として、グレードG1からG10まで、数字が大きくなる程、トナー飛散画像の視認性が高くなることを意味する。
図4に示すように、トナープリンタでは、一般に、転写電流の値が小さくなる程、トナーの用紙Pへの付着力が弱まり、トナー飛散グレードが高くなる傾向がある。
【0045】
また、
図5に示すグラフは、横軸が除電部27に印加する電圧(負極性)の値の一例を示し、縦軸が上記トナー飛散グレードの一例を示している。なお、
図5では、除電部27による除電を行う直前の用紙Pの帯電電位が−10kVである場合について示している。
図5に示すように、トナープリンタでは、一般に、除電部27に印加する電圧を0Vに近付けることにより用紙Pと除電部27との電位差の絶対値が大きくなる程、トナー飛散グレードが高くなる傾向がある。
【0046】
この傾向は、一例として
図6に示すように、トナープリンタでは、一般に、用紙Pと除電部27との電位差が大きくなる程、用紙Pの除電量が大きく、すなわち帯電量が少なくなり、トナーの用紙Pへの付着力が低下することにより生じる。
【0047】
以上のように、トナー飛散グレードは、転写ロール24に供給する転写電流及び除電部27による除電量に依存する一方、用紙Pの種類にも依存することがわかっている。すなわち、用紙Pが転写ベルト21から剥離される際に、用紙Pが転写ベルト21に巻き込まれ気味に剥離されると剥離放電が大きくなり、トナーの飛散量が多くなる。そのため、一例として
図7に示すように、用紙Pが転写ベルト21に巻き込まれ難い厚紙である場合に比較すると、一例として
図8に示すように、用紙Pが転写ベルト21に巻き込まれ易い普通紙等の薄手の用紙である場合の方がトナーの飛散量が多くなる。
【0048】
そこで、上述したように、転写ロール24に供給する転写電流の値が大きい程、トナー飛散グレードが小さくなることを踏まえ、本実施形態に係る画像形成装置100では、用紙Pの厚みが薄い程、転写ロール24に供給する転写電流の値を大きくしている。
【0049】
また、上述したように、用紙Pと除電部27との電位差が小さくなる程、トナー飛散グレードが小さくなることを踏まえ、本実施形態に係る画像形成装置100では、用紙Pの厚みが薄い程、用紙Pと除電部27との電位差を小さくしている。
【0050】
更に、転写前帯電器14に供給する電流が大きくなる、すなわち転写前帯電器14によりトナーに与える電荷量が大きくなる程、用紙Pとトナーとの付着力が大きくなり、トナー飛散グレードが小さくなる傾向がある。本実施形態では、転写前帯電器14に供給する電流は負極性なので、「電流が大きくなる」とは、例えば−100μAが−300μAになる等、より負側に大きくなることをいう。この傾向を踏まえ、本実施形態に係る画像形成装置100では、用紙Pの厚みが薄い程、転写前帯電器14に供給する電流の値を大きくしている。なお、この際、転写前帯電器14による集塵によって帯電ムラが発生することを考慮し、転写前帯電器14に供給する電流の値を固定した上で、用紙Pの厚みが予め定められた厚さより薄い場合のみ転写前帯電器14による帯電を行うようにしても良い。
【0051】
一方、
図9に示すグラフは、横軸が上記解像度(本実施形態では、1インチ当たりのスクリーン線数(線数))の一例を示し、縦軸が上記トナー飛散グレードの一例を示している。
図9に示すように、トナープリンタでは、一般に、上記解像度が高くなる程、トナー飛散グレードが高くなる。なお、トナーの飛散量は上記解像度に直接的には依存しないが、上記解像度が高くなる程、トナー飛散画像の視認性に影響し、トナー飛散グレードが高くなる。そのため、本実施形態に係る画像形成装置100では、上記解像度が高くなる程、転写電流の値を大きくしたり、用紙Pと除電部27との電位差を小さくしたり、転写前帯電器14に供給する電流の値を大きくしたりしている。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る画像形成装置100は、画像形成処理を行う際、上記解像度及び用紙Pの種類に応じて、転写ロール24に対する転写電流の値、除電部27に印加する電圧の値、及び転写前帯電器14に供給する電流の値の各々を決定する。
【0053】
このため、本実施形態に係る画像形成装置100は、制御部30のROMに、上記設定を行う際に用いる条件情報40を予め記憶している。
図10に示すように、本実施形態に係る条件情報40は、選択用紙Pの種類を示す用紙種類情報、上記解像度を示す解像度情報、及び変更量を示す変更量情報が各々対応付けられた状態で構成されている。
【0054】
また、本実施形態に係る画像形成装置100では、条件情報40の変更量情報として、転写ロール24に対する転写電流の値が、当該基準値に対する差分で表されている。また、条件情報40の変更量情報として、除電部27と用紙Pとの電位差、及び転写前帯電器14に供給する電流の値の各々の基準値に対する変更量も、当該基準値に対する差分で表されている。なお、各々の変更量d1乃至d3、j1乃至j3、t1乃至t3はそれぞれ正の値をとり、符号が「+」である場合には増加量を表し、符号が「−」である場合には減少量を表す。変更量が0(零)である場合には、基準値を変更せずにそのまま用いることを表す。
【0055】
図10に示す条件情報40では、上記解像度を「高(0線以上100線未満)」、「中(100線以上200線未満)」、「低(200線以上300線以下)」と段階的に表している。そして、
図10に示す条件情報40では、例えば、用紙Pの種類が「厚紙A」で上記解像度が「高」の場合には、転写ロール24に供給する電流の予め定められた基準値(以下、「転写電流基準値」という。)に対してd1〔μA〕を加算して得られた電流の値を、転写ロール24に供給する電流の値とする。また、この場合、除電部27と用紙Pとの電位差の絶対値が、当該電位差の予め定められた基準値(以下、「除電電圧基準値」という。)からj1〔kV〕を減算して得られた値となるように除電部27に印加する電圧の値を決定し、この値を除電部27に印加する電圧の値とする。更に、この場合、転写前帯電器14に供給する電流の予め定められた基準値(以下、「帯電電流基準値」という。)に対してt1〔−μA〕を加算して得られた電流の値を、転写前帯電器14に供給する電流の値とする。
【0056】
また、
図10に示す条件情報40では、上記解像度が高い程、転写ロール24に供給する電流の値が大きくなるように、d1>d2>d3とされている。また、条件情報40では、上記解像度が高い程、用紙Pと除電部27との電位差の絶対値が小さくなるように、−j1<−j2<−j3とされている。更に、条件情報40では、上記解像度が高い程、転写前帯電器14に供給する電流の値が大きくなるように、t1>t2>t3とされている。
【0057】
なお、本実施形態に係る画像形成装置100では、条件情報40の変更量情報が基準値に対する差分で表された情報であるが、これに限定されず、変更後の値を示す情報であっても良い。
【0058】
一方、本実施形態に係る制御部30のROMに、上記転写電流基準値を示す転写電流基準値情報、除電電圧基準値を示す除電電圧基準値情報、及び帯電電流基準値を示す帯電電流基準値を示す情報が予め記憶されている。本実施形態に係る画像形成装置100では、各々の基準値は、使用頻度が高い種類の用紙P(例えば普通紙A)を用いた場合にトナー飛散グレードが許容される範囲(本実施形態では、グレードG0〜G2)内となるように予め定められた値とされている。
【0059】
また、本実施形態に係る用紙Pの種類としては、厚紙、普通紙、光沢紙、再生紙、特殊紙、色紙等が適用されている。これは、用紙Pが転写ベルト21に巻き込まれ難いか否か、及び用紙Pにトナーが付着し易いか否か等の特性が、用紙の厚み、表面処理、硬さ等に依存していることを考慮したものである。
【0060】
ところで、本実施形態に係る画像形成装置100は、用紙トレイ50が装置本体から挿抜可能に構成されており、用紙トレイ50が装置本体から引き出された状態で用紙Pの補充や、用紙Pの入れ替えが行われる。
【0061】
ここで、本実施形態に係る画像形成装置100では、用紙トレイ50が装置本体から引き出された後に再び挿入された場合、異なる種類の用紙Pが用紙トレイ50に収容された可能性があると見なし、条件情報40から全ての用紙種類情報を読み出す。そして、本実施形態に係る画像形成装置100では、読み出した用紙種類情報を、いずれかを選択指定可能な状態でユーザインタフェース31の表示部に表示させる。これに対し、画像形成装置100のユーザは、表示された用紙種類情報から用紙トレイ50に補充または入れ替えた用紙Pの種類を示す情報(以下、「選択用紙情報」という。)を選択する。これに応じて、画像形成装置100は、選択された選択用紙情報を、制御部30のRAMに記憶(登録)する。なお、この際、用紙トレイ50の用紙Pがなくなったことが検出された後に用紙トレイ50が挿抜された場合には、単に同一種類の用紙が収容されたものと見なして、以上の用紙の種類の再登録を行わない形態としてもよい。
【0062】
また、上記特性が用紙Pのサイズにも依存することを考慮し、用紙Pの種類が同一であってもサイズが異なる場合には、条件情報40において異なる種類の用紙Pとして登録しても良い。
【0063】
このように、本実施形態に係る画像形成装置100では、用紙種類情報をユーザに選択指定させているが、これに限らず、前述したパーソナルコンピュータ等の外部装置から入力する形態としてもよい。
【0064】
また、本実施形態に係る画像形成装置100には、前述した画像読取装置を介して画像を読み取り、当該画像を用紙Pに形成する機能(以下、「複写機能」という。)が搭載されている。また、本実施形態に係る画像形成装置100には、上記外部装置から画像形成の対象とする画像を示す画像情報を入力し、入力した画像情報によって示される画像を用紙Pに形成する機能も搭載されている。
【0065】
次に、
図11を参照して、画像形成処理を実行する際の本実施形態に係る画像形成装置100の作用を説明する。なお、
図11は、この際に画像形成装置100の制御部30により実行される画像形成処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムは制御部30のROMに予め記憶されている。また、ここでは、上記複写機能により画像を形成する場合について説明する。
【0066】
複写機能を実行する場合、ユーザは、複写対象とする用紙を画像読取装置の画像読取部に載置し、ユーザインタフェース31の操作入力部を介して解像度を指定した後、装置本体に設けられている図示しない複写ボタンを押圧操作する。これに応じて、画像形成装置100は、指定された解像度を示す情報を制御部30のRAMに記憶した後、
図11に示す画像形成処理プログラムの実行を開始する。
【0067】
まず、ステップS101では、上記解像度を示す情報を制御部30のRAMから読み出すことにより、当該情報を取得する。
【0068】
次のステップS103では、上記選択用紙情報を制御部30のRAMから読み出すことにより、当該情報を取得する。
【0069】
次のステップS105では、条件情報40を制御部30のROMから読み出し、次のステップS107では、上記転写電流基準値情報、上記除電電圧基準値情報、及び上記帯電電流基準値情報を制御部30のROMから読み出す。
【0070】
次のステップS109では、以上の処理によって得られた条件情報40及び基準値情報に基づいて、転写前帯電器14に供給する電流の値、転写ロール24に供給する転写電流の値、及び除電器27に印加する電圧の値を導出する。
【0071】
この際、制御部30は、上記帯電電流基準値に、条件情報40における転写前帯電器14に供給する電流の値の変更量を加算することにより、転写前帯電器14に供給する電流の値を導出する。
【0072】
また、制御部30は、上記転写電流基準値に、条件情報40における転写ロール24に供給する電流の値の変更量を加算することにより、転写ロール24に供給する電流の値を導出する。
【0073】
更に、制御部30は、上記除電電位差の基準値に、条件情報40における当該電位差の変更量を加算した電位差と、用紙Pの帯電電位とに基づき、除電部27に印加する電圧の値を導出する。
【0074】
このように、本実施形態に係る画像形成装置100では、制御部30は、条件情報40に基づいて転写前帯電器14に供給する電流の値を決定するが、決定方法はこれに限定されない。例えば、
図12に示すように、上記解像度が大きくなる程、転写前帯電器14に供給する電流の値が大きくなる上記解像度と上記電流の値との関係を表す計算式を用いて当該電流の値を決定しても良い。この場合、制御部30のROMに、上記計算式を示す情報が予め記憶されている。また、上記解像度が予め定められた閾値以上である場合に、転写前帯電器14に供給する電流の値を、上記帯電電流基準値より大きい予め定められた固定値としても良い。この場合、制御部30のROMに、上記固定値を示す情報が予め記憶されている。
【0075】
また、本実施形態に係る画像形成装置100では、制御部30は、条件情報40に基づいて転写前帯電器14に供給する電流の値を決定するが、決定方法はこれに限定されない。例えば、
図13に示すように、解像度が大きくなる程、転写電流の値が大きくなる上記解像度と上記転写電流の値との関係を表す計算式を用いて当該電流の値を決定しても良い。この場合、制御部30のROMに、上記計算式を示す情報が予め記憶されている。また、上記解像度が予め定められた閾値以上である場合に、転写ロール24に供給する転写電流の値を、上記転写電流基準値より大きい予め定められた固定値としても良い。この場合、制御部30のROMに、上記固定値を示す情報が予め記憶されている。
【0076】
更に、本実施形態に係る画像形成装置100では、制御部30は、条件情報40に基づいて除電部27に印加する電圧の値を決定するが、決定方法はこれに限定されない。例えば、
図14に示すように、上記解像度が大きくなる程、用紙Pと除電部27との電位差が大きくなるような上記解像度と上記電圧の値との関係を表す計算式を用いて当該電圧の値を決定しても良い。この場合、制御部30のROMに、上記計算式を示す情報が予め記憶されている。また、上記解像度が予め定められた閾値以上である場合に、除電部27に印加する電圧の値を、用紙Pと除電部27との電位差が上記除電電圧基準値より小さくなる電圧の値である予め定められた固定値としても良い。
【0077】
次のステップS111では、以上の処理により転写前帯電器14、転写ロール24、及び除電部27の各部に対応して導出した値を用いて対応する転写前帯電器14、転写ロール24、及び除電部27の制御を開始する。
【0078】
次のステップS113では、上記画像読取装置の画像読取部に載置されている用紙の画像を読み取った後、当該画像を用紙Pに形成する画像形成処理を実施する。なお、ここで実行する画像形成処理は一般的に行われている処理と同様の処理であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0079】
次のステップS115では、ステップS111で開始した転写前帯電器14、転写ロール24、及び除電部27の各部に対する制御を停止した後、本画像形成処理プログラムを終了する。
【0080】
以上の画像形成処理プログラムの実行により、本実施形態に係る画像形成装置100では、上記解像度及び用紙Pの種類に応じた画像形成条件に基づいて画像形成処理を行うため、トナーの飛散量が抑制される結果、上記トナー飛散画像の視認性が低下される。
【0081】
なお、本実施形態に係る画像形成装置100は、転写ロール24から用紙Pに画像を直接転写する転写方式(所謂直接転写方式)を採用しているが、転写方式はこれに限定されない。例えば、転写ベルトに複数のトナー像を重ねて転写した後、転写ベルトに転写されたトナー像を用紙Pに転写する転写方式(所謂中間転写方式)にも、本発明が適用される。
【0082】
また、近年、トナープリンタでは、一般に、従来のものより溶けにくいトナーが用いられるようになっている。また、トナーの球形度が高くなる程、トナーが飛散し易いことがわかっている。これらを考慮し、トナーの種類に応じて、上記各変更量、上記各基準値等を変更しても良い。例えば、溶けにくいトナーや球形度が高いトナーを用いる場合には、上記転写電流基準値を大きくしたり、上記帯電電流基準値を大きくしたり、上記除電電圧基準値を小さくしたりすると良い。また、溶けにくいトナーや球形度が高いトナーを用いる場合のみ、上記第1実施形態及び第2実施形態のステップS101乃至S111、及びS115の処理を行うようにしても良い。
【0083】
また、転写ロール24に印加する転写電流の値が大きく、転写ロール24が正極性に帯電していると、感光体10または用紙Pに付着していたトナーが転写ロール24に付着してしまう(所謂静電オフセット)。よって、トナーの転写ロール24への付着を防止するために、上記転写電流を大きくする程、帯電器11及びプレクリーニング帯電器28に印加する電圧を大きくすることが望ましい。
【0084】
また、対象画像が階調を有する場合に、上述したトナーの飛散量が多くなることがわかっている。すなわち、対象画像が写真を示す画像である場合、対象画像が文字またはグラフを示す画像である場合と比較するとトナーの飛散量が多くなる。そこで、対象画像の種類に応じて画像形成条件を変更しても良い。例えば、対象画像の画像情報から対象画像が階調を有するか否かを判断し、対象画像が階調を有する画像(例えば写真が描画された画像)であった場合のみ条件情報40を用いた画像形成処理を行っても良い。この際、例えば、対象画像の画像情報に当該対象画像が階調を有する画像であるか否かを示す情報を付加しておき、付加された情報から対象画像が階調を有する画像を判断しても良い。この場合、対象画像が階調を有さない画像(例えば文字やグラフが描画された画像)であった場合、条件情報40を用いず、上記各基準値をそのまま用いて画像形成処理を行う。
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る画像形成装置100は、第1実施形態に係る画像形成装置100と同様の構成を有するため、各構成の説明を省略する。
【0085】
上記第1実施形態に係る画像形成装置100は、上記解像度と用紙Pの種類とに基づいて上記設定を行う一方、本第2実施形態に係る画像形成装置100は、上記解像度のみに基づいて上記設定を行う。
【0086】
本実施形態に係る画像形成装置100では、制御部30のROMに、上記設定を行う際に用いる条件情報40Aを予め記憶している。
図15に示すように、本実施形態に係る条件情報40Aは、上記解像度を示す情報、及び設定値を示す情報が各々対応付けられた状態で構成されている。なお、本実施形態に係る条件情報40Aにおける設定値は、転写ロール24に供給する転写電流の値、除電部27と用紙Pとの電位差の絶対値、及び転写前帯電器14に供給する電流の値の各々で表されている。なお、
図15に示す条件情報40Aにおいて、d4>d5>d6、j4<j5<j6、t4>t5>t6であるものとする。
【0087】
次に、
図16を参照して、画像形成条件設定処理を行う際の画像形成装置100の作用を説明する。なお、
図16は、ユーザインタフェース31を介して画像形成処理の実行指示を示す情報の入力を受け付けた場合に、画像形成処理に先立って制御部30により実行される画像形成条件設定処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。当該プログラムは、制御部30のROMに予め記憶されている。
【0088】
まず、ステップS101の処理を行った後、ステップS103の処理を行わずに、ステップS105に移行すると共に、ステップS105の処理を行った後、ステップS108に移行する。
【0089】
ステップS108では、条件情報40に基づいて、転写前帯電器14、転写ロール24、及び除電器27に対する設定値を導出し、ステップS111に移行する。本実施形態に係る画像形成装置100では、転写前帯電器14及び転写ロール24については、条件情報40Aの設定値情報によって示される設定値を、上記設定値とする。また、除電部27については、条件情報40Aの設定値情報によって示される設定値と、用紙Pの帯電電位とに基づき、除電部27に対する設定値を導出する。
【0090】
このように、本実施形態に係る画像形成装置100は、上記解像度に応じて、転写ロール24に対する転写電流の値、除電部27に印加する電圧の値、転写前帯電器14に供給する電流の値を制御する。これにより、本実施形態に係る画像形成装置100では、上記解像度に応じた画像形成条件に基づいて画像形成処理を行う結果、トナーの飛散量が抑制される。
【0091】
なお、本実施形態に係る画像形成装置100では、条件情報40Aに基づいて上記設定を行うが、上記設定の方法はこれに限定されない。例えば、上記第1実施形態に係る条件情報40における用紙Pの各種類の変更量を示す情報に基づいて、変更量の平均値を上記解像度毎に導出し、導出した変更量を用いて各部を制御しても良い。また、例えば、上記第1実施形態に係る条件情報40における、使用頻度が最も高い種類の用紙P(例えば普通紙)の変更量を示す情報に基づいて、変更量の平均値を上記解像度毎に導出し、導出した平均値を用いて各部を制御しても良い。