(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987831
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】炭化ケイ素(SIC)で作られた撚り糸または繊維を有するシェルを含む金属核燃料ピン
(51)【国際特許分類】
G21C 3/60 20060101AFI20160825BHJP
G21C 3/20 20060101ALI20160825BHJP
G21C 21/02 20060101ALI20160825BHJP
G21C 3/16 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
G21C3/60
G21C3/20 B
G21C21/02 N
G21C3/16 Z
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-532170(P2013-532170)
(86)(22)【出願日】2011年10月4日
(65)【公表番号】特表2014-501907(P2014-501907A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】EP2011067308
(87)【国際公開番号】WO2012045740
(87)【国際公開日】20120412
【審査請求日】2014年8月25日
(31)【優先権主張番号】1058149
(32)【優先日】2010年10月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510163846
【氏名又は名称】コミシリア ア レネルジ アトミック エ オ エナジーズ オルタネティヴズ
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】マザウディエ、ファブリス
【審査官】
青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−075591(JP,A)
【文献】
特表2008−501977(JP,A)
【文献】
特開昭49−038097(JP,A)
【文献】
特開平11−326571(JP,A)
【文献】
特開平06−324169(JP,A)
【文献】
特開昭55−109987(JP,A)
【文献】
特開平02−073192(JP,A)
【文献】
特開2007−269621(JP,A)
【文献】
特開2009−210266(JP,A)
【文献】
特開昭56−048574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/00−3/64
G21C 21/00−21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウラニウムおよび/またはプルトニウムに基づく金属核燃料物質(CNu)の線形要素と、FeとCrまたは少なくともこれらの2つの元素を含む合金を含むクラッディング(Go)と、を含む核燃料ピンにおいて、前記線形核燃料要素の周囲に配置された主シェルであって、SiCで作られた紡績糸または繊維(FSiC)主シェルも含むことを特徴とする、核燃料ピン。
【請求項2】
請求項1に記載の核燃料ピンにおいて、前記クラッディングはまた加熱生産物を放出するための中空部分と前記線形金属核燃料要素から前記中空部分を分離する貯蔵槽とを含む、ことを特徴とする核燃料ピン。
【請求項3】
請求項2に記載の核燃料ピンにおいて、前記貯蔵槽は溶融アクチニドの腐食に対し耐性がある物質で作られる環状領域(An)を含む、ことを特徴とする核燃料ピン。
【請求項4】
請求項3に記載の核燃料ピンにおいて、前記環状領域はタンタル(Ta)で作られる、ことを特徴とする核燃料ピン。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の核燃料ピンにおいて、前記繊維を構成するSiCは立方β同素体種である、ことを特徴とする核燃料ピン。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の核燃料ピンにおいて、前記シェルはまたシリコン充填剤を含む、ことを特徴とする核燃料ピン。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の核燃料ピンにおいて、前記主シェルはSiC紡績糸または繊維を含むストリップを含む、ことを特徴とする核燃料ピン。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の核燃料ピンにおいて、前記主シェルは前記線形金属燃料材料要素に巻かれた一連の厚さのSiC繊維を含む、ことを特徴とする核燃料ピン。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の核燃料ピンにおいて、前記線形核燃料要素と前記主シェルの間に挿入されたシリカまたは石英繊維の一次シェルも含むことを特徴とする核燃料ピン。
【請求項10】
請求項8または9に記載の核燃料ピンにおいて、前記一次シェルは前記線形金属燃料材料要素に巻かれた一連の厚さのシリカまたは石英繊維を含む、ことを特徴とする核燃料ピン。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の金属核燃料ピンの製造方法において、SiC繊維を織るまたは編むことにより前記線形金属核燃料要素の周囲に主シェルを生成することも含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の金属核燃料ピンの製造方法において、前記線形金属核燃料要素に巻かれたSiC繊維のストリップにより主シェルを生成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11または12のいずれか一項に記載の金属核燃料ピンの製造方法において、前記線形金属核燃料要素の表面酸化の前処理工程も含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれか一項に記載の金属核燃料ピンの製造方法において、導電材料に基づく軟質ろう付け粉末を含む結合剤により前記線形要素を被覆する前処理工程も含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11乃至14のいずれか一項に記載の金属核燃料ピンの製造方法において、前記線形金属核燃料要素と前記主シェル間の一次シェルを生成することも含み、前記一次シェルはシリカまたは石英繊維を含む、ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、地球規模の温暖化という文脈の中で、ウラニウムとプルトニウムをベースとした燃料により動作するように設計され、増加する世界規模でのエネルギー需要を満たすために研究された、性能と安全の観点で多くの目的を有する第4世代高速中性子炉の分野である。
【背景技術】
【0002】
いくつかの原子炉設計が研究されており、[燃料/クラッディング/冷却材]システムについての異なる技術的解決策により提案されている。
【0003】
液体ナトリウム(冷却材の動作温度は通常500℃)で冷却されるSFR(ナトリウム冷却高速炉:Sodium−cooled Fast Reactor)の概念は、国際的合意の主題である。核燃料に関し次の2つの意見、すなわち、基準として酸化物燃料(U,Pu)O
2、および代案として、金属燃料例えばUPuZr(例えばU−20Pu(20%のPu)−10Zr(10%のZr))が想定される。一方で想像されるのは、高出力SFR/酸化物炉心と局所および遠方エネルギー需要に対応する小または中出力SFR/金属代替炉心である。SFR/金属代替炉心に関しては、例えば、原子炉の寿命(燃料寿命)中に燃料を補給することが無く、高い固有燃料安全性要件を備えた「バッテリー」原子炉設計が提案されている。
【0004】
燃料ピンがジルコニウムベースの合金(ジルカロイ)から作られた金属クラッディングから作られた現在の発電原子炉(酸化物燃料を用いる加圧水型原子炉または沸騰水型原子炉)の設計とは異なり、ナトリウム冷却原子炉の燃料の金属クラッディングは、多少精緻であるかまたは改善されたオーステナイト合金またはフェライト・マルテンサイト(ferritic−martensitic)合金のFe−CrまたはFe−Cr−Niステンレスベースで作られる(例:グレードEM10、T91、HT9、D9、ODSまたはより単純には316L)。
【0005】
金属燃料は、以下の少なくとも3つの技術的問題ももたらす特定の特徴を有する、すなわち、
− 原子炉内の中性子束下でのその膨潤。これはクラッディングを損傷する強い相互作用(これは、現在の加圧水型原子炉内の酸化物燃料(燃料(またはペレット)−クラッディング相互作用)とジルカロイクラッディングとの間にも生じる「古典的」かつ再発性の問題である)を生じさせる。金属燃料形態に関しては、膨潤は今日、特別な目的のための金属燃料設計と金属アクチニド合金のより低密度の選択とにより、より耐性のあるクラッディングで制御されることができると考えられる。そのため、ガス状の核分裂生成物はプリナム(ピン内に残された自由空間)中に集団で漏洩する可能性があるが、生成された元の気孔率が変形に対処できるようになる、
− 反応暴走およびより一般的には温度暴走中に、それを先験的に弱いものとするその低融点(1000℃程度)、
− 極めて低い融点を有する、Fe、クラッディングの成分元素、核燃料物質からのUとPuとの共晶(2つの化学種または元素間の相互作用中の所与の組成物の混合物の形成)の存在(U−Fe共晶の725℃[Journal of Alloys and Compounds 271−273(1998年)636〜640頁]、Pu−Fe共晶の420℃[Journal of Nuclear Materials 383,Vol.1−2(2008年),112〜118頁]、UとPuがZrと合金される際のまたはクラッディングのグレードに依存した600℃程度)。これは薄くすることおよび安全性に関するマージンにより第1の障壁の性能を著しく劣化させることがある。この共晶はまた、達成可能な動作温度を最終的に制限し、熱力学の法則とカルノーサイクルに従って理論的に得ることができであろうエネルギー効率を低減する。共晶を形成するための手順では、Zrは、溶融に対する抵抗を増加させ、これによりマージンを増加させることができるので、極めて特殊な役割を有する。残念ながら、原子炉内の中性子束下では、燃料のZrは、その周辺部分のこの要素内で付随的に空乏化されるピンの中心に向かって移動する。
【0006】
燃料とクラッディング(He接合)間の間隙と空間を埋めるためのヘリウムの代わりに、システムの熱力学を著しく最適化するナトリウム(Na接合)を使用することが可能である。これにより、燃料の中心とクラッディングとの間の温度勾配が低減し溶融に関し大きな安全マージンが得られるようになるが、残念ながら、ガス状核分裂生成物の放出の手順を妨げ、再処理に関する照射済み燃料の管理を複雑にする。Na接合は共晶の形成に関連する危険性を排除しない。
【0007】
したがって金属燃料の使用の主要問題の1つは、この共晶の形成であり、より一般的にはその低融点である。
【0008】
この問題を解決するのを助けるために、棒をナトリウムで充填すること以外に、3つの主要な技術的原理が一般的に提案され、研究され、実施されている。すなわち、
− 燃料合金の組成物の変更、
− 機械的強さ、放射に対する抵抗、共融温度の増加の間の最良の妥協を示すステンレスグレードの選択、
− 金属ライナーの使用、これは多くの特許の主題であり、そのうちのいくつかについて以下に注記する。
【0009】
実際、内部耐食性に対するまたは消耗可能中性子吸収物質等の支持体としての拡散障壁機能だけでなく時に熱力学に関する特定の役割も有する通常は金属性でとりわけZrから作られた)内部ライナーを含む、核燃料化合物クラッディングに関する多くの特許がある。いくつかの例外は別にして、これらの特許は大部分、酸化物燃料と、冷却材として加圧水で動作する発電原子炉との使用に向けられている。金属燃料の使用に関し、特にナトリウム冷却高速炉への適用に関し、欧州特許第0595571B1号明細書(1997年)は、熱力学を最適化するとともに燃料合金とステンレスクラッディングとの間の直接接触の発生を最少化するために楕円形状の内部クラッディングを有する複合同心クラッディング[(外側)ステンレス合金/(内側)ジルコニウム合金]の使用について記載している。複合同心クラッディング内に生成される空間は熱力学の最適化のためにHeとNaで個別に充填されてもよい。これは、Zrライナーを有する複合同心クラッディングの概念が既に提示されている1990年(欧州特許出願公開第A−0409405号明細書)の米国特許第4971753号明細書の改良として提示された特許である。これらの2つの特許は金属燃料の使用に明示的に向けられている。
【0010】
これらの特許は、内部耐食性を改良するためにZrライナーが変更された米国特許第4894203号明細書(1990年)を参照する。米国特許第5227129号明細書(1993年)自体は、ライナーとしてかつそれを適用するための物理的方法として窒化ジルコニウムの使用について記載している。米国特許第5412701号明細書(1995年)は、中性子吸収物質の支持体として、ジルコニウムベースのアルカリ金属ケイ酸塩を利用する可能性を提示している。
【0011】
米国特許第5301218号明細書では、圧延金属箔(巻紙のようないくつかの箔)の形状のライナーであって特別の技術「内側圧延金属燃料のタック溶接」により円筒状燃料を取り囲み外部に溶着され、すべてがクラッディング内に入るライナーのための特別の技術を記載している。巻線は、燃料により生成されるであろう圧力または機械的負荷の影響下で変形され、密接になることがある。
【0012】
これらの特許のほとんどは、改良の観点では、金属の拡散障壁を組み込む複合同心クラッディングの技術的原理が記載された1996年の2つの特許に直接言及している。核燃料UO
2の米国特許第3230150号明細書(1966年)は、Cuから作られた内側ライナー(管)とステンレス鋼から作られた外側部とで形成されたクラッディングを有し、これらは組み合わされる(「多管状クラッディング」)。最後に、米国特許第3291700号明細書(1966年)では、Uタイプまたはその合金(特にはUAl
x合金)の金属燃料に関し、金属(特にはAl)クラッディングとの相互作用を制限または抑制する方法を記載している。提示技術は、その物理的形態(板または筒)またはその化学的性質(金属またはセラミック)に関係なく、クラッディングする前に完全に覆うために選択された金属包帯を燃料の回りに巻くことにその本質がある。製造方法は、所与の回転運動を利用して燃料を包むために上記物質を分布させるシートを包むボビンまたはローラーから作られた単純設計の技術システムを使用することにその本質がある。
【0013】
ライニングを含む高度核燃料クラッディングのためのこれらの設計の高温用途(例えば第4世代のガス冷却高速炉[GFR])に関しては、またはより一般的には複合材料解決策に関しては、セラミック選択肢が好ましいが、これは耐火性が向上し、したがって性能が向上するためである。
【0014】
国際公開第2007/017503号パンフレット(2007年)は、例えば、極めて限定的な仕様を有する、モノリシックで繊維状のSiCと、例えば通常はGFR内で動作することができ極めて高温で動作することができるU、Pu炭化物の核燃料の耐熱合金に基づく金属ライナーと、から作られる複合ハニカム板設計について記載している。
【0015】
高温用途に関しては、2006年の国際公開第2006/076039A2号パンフレット(欧州特許第1774534号明細書)もまた、第4世代鉛/リチウム冷却またはガス冷却原子炉の燃料要素の仕様を満たすと推測されるSiC−SiC複合多層管として、かつ化石燃料発電所の適用として、知られている。最後に、SiCは、セシウムをトラップするための大きな拡張表面積形態の炭化ケイ素SiCを上部に含む高速炉の燃料ピン設計に関して、米国特許第4710343号明細書(1987年)では、特にセシウムのための、スポンジ材料として本来の方法で使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
要約すると、SFR原子炉の金属燃料への適用に関する公知の技術において提案された解決策のすべてに関し、いくつかの問題、特に以下の問題が残ることは明らかである。すなわち、
− 約500℃の動作温度における定格条件下での、燃料とクラッディングとの間の物理化学相互作、より具体的にはUPuZr金属燃料とFe−Cr−NiまたはFe−Crに基づくステンレスクラッディングとの間の共晶の物理化学相互作用、
− 「偶発的」条件下での、すなわち通常は1000℃程度であってよい燃料の融点より上の温度での、クラッディングの性能とその幾何学形状の維持を促進する一方で、核分裂性原子濃度を低減することにより局所中性子反応を低減することによる良好な熱的性質により、クラッディング内の固体状態における大きな体積分率を維持する可能性。
【0017】
引用特許のほとんどでは、技術的効果を越えて、燃料ピンまたはライナーを含む要素の設計に関しては、製造の容易さ、強健さ、費用に関する疑問に直ちに直面する。
【0018】
特に「全セラミック」または「セラミック−金属」の選択肢に関し、組み立て(広義には製造)と熱力学的適格性に関する課題が基本的問題となる。「全金属」選択肢に関し、製造課題が乗り越えられたとしても、動作面と使用される金属材料の量ともまた、可用性と原料のリサイクリングに関し、したがって費用に関し、またより重い燃料要素を管理し扱うための方法に関し、基本的問題となる。
【0019】
本出願人は、複雑であり、かつ動作条件下の核燃料要素として制約されるようなシステム上の機能同士の著しい減結合は、有害な技術的影響の源となる可能性があるという原理から始める。これは、それを形成する要素の数が多ければ多いほどそれらの相互作用または結合はいっそう予測不能である。そして本出願人は、本発明において、原理が簡単であり、選択された技術的効果を引き起こすために極めて限定された数の要素に基づく解決策を提案する。
【0020】
SFRのUPuZr金属燃料の挙動に関する上述の問題を解決することと比較して、本出願人は、製造と使用が簡単なシステムであって、その動作が同業者らにより研究が進められ周知となっている物理的、機械的または化学的性質に基づき全体として確実に予測可能であるシステムに基づく界面のマトリックスライナータイプの解決策に取り組むと同時にそれを提案する従来技術が無いことを特定した。
【0021】
上記特性は、本発明に関する状況下のSFRの金属燃料に関して観察された摂動場(温度上昇と熱膨張、燃料の融解が無い出力過渡変動、反応性または非反応性相互拡散(クラッディングによる)、約600℃(融解の無い過渡現象の場合)の共晶(U−Pu−Fe)、約1000℃(偶発的状況)の燃料の溶融)に依存して徐々に生じる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この文脈内では、本発明の主題の1つは前述の問題を克服できるようにする金属核燃料ピンである。
【0023】
より具体的には、本発明の主題の1つは、ウラニウムおよび/またはプルトニウムに基づく金属核燃料物質の線形要素と、鉄とクロムまたは少なくともこれらの2つの元素を含む合金を含むクラッディングと、を含む核燃料ピンであって、核燃料ピンはまた、線形核燃料要素の周囲に配置した主シェルを含み、前記シェルはSiCから作られた紡績糸または繊維を含むことを特徴とする、核燃料ピンである。
【0024】
クラッディングはまた有利には、核分裂気体を放出するための中空部分(プリナムと呼ばれる貯蔵槽)と前記線形金属核燃料要素から前記中空部分を分離する貯蔵槽とを含み、発電燃料棒またはピンの正しい動作が可能となる。
【0025】
本発明の一変形形態によると、プリナムと呼ばれる前記貯蔵槽は溶融燃料を収容してもよく、溶融アクチニドの腐食に対し耐性のある物質から作られた環状領域(annulus)を含む。
【0026】
本発明の一変形形態によると、前記環状領域はタンタル(Ta)で作られる。
【0027】
本発明の一変形形態によると、繊維を構成するSiCは立方β同素体種(allotropic variety)である。
【0028】
本発明の一変形形態によると、前記シェルはまた自由シリコン充填剤を含む。
【0029】
本発明の一変形形態によると、前記主シェルはSiC紡績糸または繊維を含むストリップを含む。
【0030】
本発明の一変形形態によると、主シェルは線形金属燃料材料要素に巻かれた一連の厚さのSiC繊維を含む。
【0031】
本発明の一変形形態によると、ピンはまた、線形燃料要素と主シェルとの間に挿入されたシリカまたは石英繊維の一次シェルを含む。
【0032】
本発明の一変形形態によると、一次シェルは線形金属燃料材料要素に巻かれた一連の厚さのシリカまたは石英繊維を含む。
【0033】
本発明の別の主題は、本発明による金属核燃料ピンを製造するための方法であり、SiC繊維を織るまたは編むことにより線形金属核燃料要素周囲に主シェルを生成することを含むことを特徴とする、方法である。
【0034】
本発明の一変形形態によると、本方法は線形金属核燃料要素に巻かれたSiC繊維のストリップによる主シェルの生成を含む。
【0035】
本発明の一変形形態によると、本方法はまた、線形金属核燃料要素の表面酸化の従来工程を含む。
【0036】
本発明の一変形形態によると、本方法はまた、導電材料に基づく軟質ろう付け粉末を含む結合剤で線形要素を被覆する従来工程を含む。
【0037】
本発明の一変形形態によると、本方法はまた、線形金属核燃料要素と主シェル間の一次シェルの生成を含み、一次シェルはシリカまたは石英繊維を含む。
【0038】
以下の非限定的に与えられる説明を読むことによりそして添付図面により、本発明はさらに良く理解され他の利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2】本発明による核燃料ピンに含まれる主シェルを製造するための方法の第1の例を図示する。
【
図3】本発明による核燃料ピンに含まれる主シェルを製造するための方法の第2の例を図示する。
【
図4】シリコン、ウラニウム、ジルコニウムの酸素に対する親和性を示す。
【
図5】温度の関数としての様々な化合物の自由エネルギー(安定性)を示す。
【
図6】「偶発的」条件下の本発明の核燃料ピンの挙動を図示する。
【
図7a-b】金属核燃料の「偶発的」溶融中のMuSivOw酸化物とMxCySiz材料の相互作用層の形成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
概して、かつ本発明によると、ピンは、
図1に示すように、Fe−Cr−NiまたはFe−Crに基づくステンレス材料で作られるクラッディングGoと、通常は5〜10mmの小口径を有する筒形状の棒またはビレットの形態で存在してもよい線形金属核燃料要素C
Nuと、を含む。核燃料物質は、UPuZrまたはUPuX型とすることができ、Xは例えばモリブデンとすることができる。したがってピンは物質C
Nuの核分裂柱を含む第1の部分とガスのプレナムP
Leにより構成される第2の部分とを含む。
【0041】
有利には、タンタルTaの環状領域Anまたはライナーは,動作条件下で、溶融アクチニドの腐食に対し耐性のある貯蔵槽を構成して設けられる。
【0042】
有利には、基板に付着する立方MO
2型の数マイクロメートルの層を得るために(ここでMは金属核燃料の構成合金である)、空気中で数時間200〜250℃で表面酸化工程を実行できるようにしてもよい。
【0043】
SiC繊維または紡績糸の製造に関しては、様々な生産方法が想定されてもよく、そして特に繊維を編む工程を含む方法(特に航空分野において単純かつ証明済みの原理)が想定されてもよい。
【0044】
SiC繊維に基づく主シェルの例示的な2つの実施形態について以下に説明する。
【0045】
本発明によるピンの第1の例示的実施形態:
紡績糸または繊維の形態であるSiCマトリックスは、当業者らに周知の技術装置を使用してビレットに沿って織られるまたは編まれる。ビレットに接する第1層目の巻線は、予め酸化された繊維によりまたは編んだ石英繊維またはシリカSiO
2繊維により生成されると有利である。
【0046】
ガラス中のホウ素により決定される中性子吸収物質の蓄積が求められる場合はホウケイ酸塩ガラスを使用することも可能である。実際、例えば、ホウ素10(ホウ素の同位元素10)は、He+Liを与えるホウ素11に変換されるために中性子(分裂反応の毒物質である)を捕捉する。同位元素
10B(自然ホウ素は同位元素
10B(19.8mol%)+
11B(80.2mol%)の混合物である)は、他の吸収性物質と比較して、高速中性子から熱中性子までの極めて広いスペクトラムにわたり有効性を有する。(n,α)型の捕獲反応は、次のように与えられる:
10B+1n=>7Li+4He+2.6MeV。
【0047】
巻数と巻線のそれぞれの重なりの幅とにより決定される厚さは調整可能データである。巻線は緩い(締め付けられていない)。
【0048】
有利には、ろう付け粉末(伝導率を改良するために通常はNiに基づく)は、その液体結合剤(真空下の引き込みにより容易に蒸発する)と共に、織るまたは編むことにより覆うための作業の前にビレット上に塗られてもよい。
【0049】
ろう付けで覆われそして任意選択的に塗られるビレットは、クラッディングに徐々に導入されるので、このようにして固定されるカバーは緩くならない。
【0050】
図2に示された概略図は、主シェルを生成するための方法のこの例を示す。クラッディングGoは、SiCの紡績糸または繊維F
SiCが巻かれる核燃料C
Nuのビレットを収容することを目的としている。そしてその回りに、図示しないが石英繊維またはSiO
2繊維が、織り始めるまたは編み始めるために固定された後、第1の厚さとして予め巻かれている。
【0051】
この主シェルを繊維F
SiCにより生成するために、燃料ビレットは回転され、ボビンBo
FSiCを編むためのフライホイールと支持体とを含む多層編機もまた回転自在に取り付けられる。
【0052】
本発明によるピンの第2の例示的実施形態:
織物の形態のSiCマトリクスは、標準的なSiC繊維に基づく予め編まれたあまり密でないストリップを使用することによりビレットに沿ってひだを付けられる。織物の形態のSiCマトリクスは固定点P
Aにおけるクラッディング作業のために固定される。ビレットに接触した第1層は、有利には、中性子吸収物質(ガラス中のホウ素により決定される)の蓄積が求められる場合は、予め酸化されたストリップまたは繊維により、または編んだ石英繊維またはシリカSiO
2繊維またはホウケイ酸ガラス繊維により、製造される。予め酸化した金属ビレットに接触する第1層はSiO
2で構成される。
【0053】
厚さ(層数または巻数)と巻線のそれぞれの重なりの幅は調整可能なデータである。層は緩い(締め付けられていない)。
【0054】
回転中に粉末状Siまたは極めて多孔性のSiC発泡体(これは、要求に応じて、被覆作業を受けるストリップの密封空間中に注がれる)により巻線間空間を埋めることは任意選択的に可能である。
【0055】
有利には、(伝導率を改良するために通常はNiに基づく)ろう付け粉末は、その液体結合剤(これは真空下の引き込みにより容易に蒸発する)と共に、緊縛により被覆するための作業の前にビレット上に塗られてもよい。
【0056】
ろう付けで覆われ任意選択的に塗られるビレットは、クラッディングに徐々に導入されるので、このようにして固定されたカバーは緩くならない。
【0057】
図3は、核燃料C
Nuのビレットの周囲のストリップBF
SiCの組み立てと、また巻線間空間を例えばSiまたはSi発泡体で埋めるための領域Z
interおよび巻線間重なり領域Z
Reを図示する。水平方向矢印はこのようにして巻かれたビレットをクラッディングGo内のその主シェル中に導入するための方向を示す。
【0058】
クラッディング作業が終了すると、システムは(単純な半径方向切断により)正しい長さに調整され、溶接による密閉の前に、任意選択的に張り付けられた軟質ろう付けの結合剤を排出するために真空下に任意選択的に配置される。ピンを製造するための作業の残りの部分は当業者らに周知である。
【0059】
500℃の静温度における定格動作下の本発明のピンの挙動検証
この温度範囲では、本出願人は、熱的および物理的性質が良好であるため、かつ膨潤が通常は所与の積算線量において0.5〜1%程度である特にこれらの温度範囲、すなわち約500℃、における放射下でのその優れた挙動のため、SiCを使用することを提案する。。金属燃料とSiCとの間の(それらの接触直後の)固体相互作用は零ではないが、金属燃料上に酸化前処理により形成されたMO
2層に接触した織物上のSiO
2(石英またはシリカ)の存在により動力学的に延期または遅延される。
【0060】
熱力学的には、シリコンSiの酸素に対する親和性はUまたはZrの親和性未満であるということが知られている。したがってシステムの自然な化学的進化は、いくつかの化合物の酸素に対する親和性を示す
図4に図示する通り未定義層M
uSi
vO
wの形成によりその酸化の維持を有利にするために、酸素を石英またはシリカSiO
2からアクチニド合金へ移動することである。
【0061】
このとき、織られたカバーとアクチニド合金との間の相互作用が先験的に未定義な複雑な相互作用層M
xC
ySi
zを形成し得るが、このため成長(拡散)反応速度が温度により(通常は数十〜100μmに)制限される。固体状態ではSiCとステンレス合金、特に、クラッディングなどの316L型のオーステナイト合金、との間の顕著な相互作用は1200℃を越える温度まで無いということに注意すべきである。これらの合金はさらに、Journal of Materials Science Letters 19(2000年),Vol.7,613〜615頁;Materials Science and Engineering:A,335(2002年),Vol.1−2,1〜5頁に記載される通り、それらを機械的に強化するためにそれらの処理中にSiCで充填されてもよい。
【0062】
動作中、SiC織物の機械的性質(実施に当たって緩い状態で始まる)は、温度上昇中にアクチニド合金の膨張(その膨張率は通常、SiCの膨張率より3倍大きい)を収容できるようにし、次に金属燃料の大部分が縦方向に可塑化されるようにする。燃料とクラッディングとの間隙が塞がれると、このSiCは、伝導性(燃料−織SiC−クラッディング接触)を介し、任意選択的にかつ有利にはFe−CrまたはFe−Cr−Niクラッディングに応力(適切な寸法決めにより)を過度にかけることなしにNiの軟質ろう付けにより、クラッディングと冷却材に向かう熱の十分な除去を確実にすることができる。
【0063】
この巻線の織物の多孔性は、核分裂気体をプレナムに向かって放出できるようにする。
【0064】
したがって定格条件下では、中性子束下の金属核燃料とそのクラッディングとの間の温度において常に予想または心配しなければならない相互作用は、ここでは低減され、原理的に分散され、一方、設計により、燃料−クラッディング共晶は形成されることができない(直接接触が無い)。
【0065】
使用される金属燃料合金の融点を越える温度における「偶発的」動作下の本発明のピンの挙動検証
UPuZr金属燃料の融点を越える、通常は1000℃を起点とする、高温では、関心があるのは溶融アクチニドによるSiCの高反応性と低耐食性である。SiCを使用する他の用途、適用、または発明のほとんどとは異なり、本出願人または発明者は、溶融アクチニドの合金と反応するために、そして耐火性炭化物と珪化物(これらはそれらを生じさせたUPuZr合金ほど密でない)を生じさせるために、消耗可能なものとして使用される低化学的不活性材料としてSiCを使用することを提案する。
【0066】
元素Pu、U、Zrは炭素に対する極めて強い親和性を有するので、SiCより熱力学的に安定している多くの炭化物を形成するために、そしてSiに対しては多くの珪化物と混合カーボ珪化物(carbosilicide)M
xC
ySi
zとを形成するために、SiCは、溶融アクチニドの合金、特にはUPuZrなどの合金、の腐食に熱力学的および動力学的に耐えなくてもよい。
図5には、この関連で、炭化物、珪化物または二珪化炭素の相対的安定性の図を示し、M=U、Pu、Zrの自由エンタルピー形成Δ
fG(a.u.)を示す。
【0067】
したがって、
図6に示すこれらの混合珪化炭素M
xC
ySi
zの形成は、クラッディングと未溶融核燃料間の壁を構成するこれらの混合珪化炭素を伴う。これらはあまり密ではないので、これらの低密度な耐火性化合物は局所の中性子反応を低減し、したがって余り加熱しないのでそれらの温度低下(中性子反応に対して)が分かる。
【0068】
単純な熱力学的観点から、溶融状態/SiC界面の物理化学[Survey on wetting of SiC by molten metals,G.W.Liu,M.L.Muolo,F.Valenza,A.Passerone,Ceramics International 36,4(2010年5月)1177−1188、Acta metall,mater.Vol.43,No.3,907〜912頁,1995年]に基づき、そしてまたU−Si二成分系[Journal of Nuclear Materials 389(2009年)101−107]、U−C binary systems [Journal of Nuclear Materials 288(2001年)100−129]、Pu−Si binary systems [Journal of Nuclear Materials,Volume 15,Issue 1,1965年,23^32頁]と、PuC二成分系[Computer Coupling of Phase Diagrams and Thermochemistry 32(2008年)371−377]と、を読むことで、溶融PUまたはU内の炭素または珪素の熱力学的活性は極めて急速に増加すること、固体MSi
x(通常は1000℃におけるU
3Si
2)、MC
xまたはさらにはMC
xSi
yの析出が、二成分化合物、すなわち、Fe−Si、U−Si、Pu−Si、Pu−C、U−C、Zr−Siに比べて、熱力学的に課されること、とを理解することが可能である。
【0069】
したがって、液状金属は、これら様々な元素の多くの炭化物、珪化物で作られる極めて複雑な相互作用層MSi
xC
yを急速に形成することになる。相互作用層はいくぶん耐火性であることが知られている(化合物の大部分の融点は、プルトニウム珪化物[Suppl.to IEEE Transactions on Aerospace,1965年6月,Plutonium Compounds for Space Power Applications] および特にJournal of Nuclear Materials,Volume 168,Issues 1−2,1989年10月〜11月,137〜143頁)Suppl.to IEEE Transactions on Aerospace,1965年6月,Plutonium Compounds for Space Power Applicationsに記載されるほとんどの炭化物と珪化物などの熱の効果的な伝導体のように通常は1000〜1600℃である。
【0070】
形成されるMSi
xC
y化合物は、燃料金属(ZrSi
2は4.9g.cm
−3、UとPuの珪化物は7〜8g.cm
−3と10g.cm
−3との間)ほど密でなく、平均ではSiC(有利にはSiで充填される)の体積とこれらの化合物を生じさせた溶融アクチニドの体積の密度の平均値ほど密でない。
【0071】
反緻密化(dedensification)のため、未反応の液体管にたとえられる溶融金属は
図6の矢印により示されるように上方へ機械的に放出され、相互作用の進行中、半径方向圧縮と前記液体管の密閉の影響により、恐らく低密度なMSi
xC
y生産物を運ぶか、事実上核分裂柱内の核分裂性原子の密度を局所的に低減すること(重い原子の密度が低い、複合物核燃料の現場での生成)により浮遊する。
【0072】
溶融アクチニド合金(プレナム中の)の膨張容器(expansion vessel)は、この種の問題に従来から利用される材料のタンタルTa被覆により溶融燃料特にプルトニウムの侵食性から保護される(例えば、Pu−Gaの液体合金を含むべくCEA/DAMにより開発されたステンレス鋼/Ta/ステンレス鋼複合物クレードルを記載する1998年の仏国特許第2752234号明細書を参照)。
【0073】
原理的には、考察温度において固体であり低密度であり、あまり密でない化合物を生成するいかなる化学反応も、記載されたものなどの動作を可能にし得ると考えられる。
【0074】
したがって、
図7aと
図7bでは、横断面図により、化合物M
xC
ySizと酸化物M
uSi
vO
wとを生じさせるためにSiCと反応した溶融金属核燃料の追加界面の外観を有する核燃料を溶融する反応中の、SiC/クラッディングGo界面の繊維F
siCで構成されたシリカ/主シェルの繊維F
SiO2で構成された金属核燃料C
Nu/一次シェルの進化を概略的に示す。核燃料C
Nuは拡大および膨張され、F
SiCで作られる主シェルの構成巻線はクラッディングGoに対して圧縮される。