特許第5987898号(P5987898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5987898加熱硬化性溶液組成物、それを用いた硬化物、プリプレグ及び繊維強化複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987898
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】加熱硬化性溶液組成物、それを用いた硬化物、プリプレグ及び繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20160825BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   C08G73/10
   C08J5/24CFG
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-506176(P2014-506176)
(86)(22)【出願日】2013年3月14日
(86)【国際出願番号】JP2013057179
(87)【国際公開番号】WO2013141132
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2016年1月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-61855(P2012-61855)
(32)【優先日】2012年3月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-61895(P2012-61895)
(32)【優先日】2012年3月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】三浦 則男
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕章
(72)【発明者】
【氏名】小沢 秀生
(72)【発明者】
【氏名】田口 三津志
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−308519(JP,A)
【文献】 特開2006−104440(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/123042(WO,A1)
【文献】 特開2011−202299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/10
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸化合物を20モル%以上含む芳香族テトラカルボン酸成分、(B)アミノ基に由来する二つの炭素−窒素結合軸が同一直線上に位置し、分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミンと、アミノ基に由来する二つの炭素−窒素結合軸が同一直線上に位置せず、分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミンとを含む、分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミン成分、及び(C)フェニルエチニル基を有する末端封止剤を混合して得られたことを特徴とする加熱硬化性溶液組成物。
【請求項2】
前記(B)のアミノ基に由来する二つの炭素−窒素結合軸が同一直線上に位置し、分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミンが、1,4−ジアミノベンゼンであり、アミノ基に由来する二つの炭素−窒素結合軸が同一直線上に位置せず、分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミンが、1,3−ジアミノベンゼンであることを特徴とする請求項1記載の加熱硬化性溶液組成物。
【請求項3】
前記(A)成分として、さらに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸化合物を含むことを特徴とする請求項1または2記載の加熱硬化性溶液組成物。
【請求項4】
前記(C)のフェニルエチニル基を有する末端封止剤が、4−(2−フェニルエチニル)フタル酸化合物であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の加熱硬化性溶液組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の加熱硬化性溶液組成物を加熱硬化して得られたことを特徴とする硬化物。
【請求項6】
請求項1〜4いずれか記載の加熱硬化性溶液組成物を繊維状補強材に含浸させたことを特徴とするプリプレグ。
【請求項7】
請求項6記載のプリプレグを加熱硬化して得られたことを特徴とする繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱により末端に付加反応性官能基を有するイミドオリゴマー及びその硬化物を与える加熱硬化性溶液組成物、それを用いた硬化物、プリプレグ及び繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドの両末端を付加反応性の官能基で封止したオリゴマーは、その硬化物が優れた耐熱性を有することから、成形品や繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として従来から知られている。なかでも、末端を4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸で封止したイミドオリゴマーは、成形性、耐熱性、力学特性のバランスに優れているとされ、例えば、特許文献1には、硬化物の耐熱性および機械的特性が良好で、実用性の高い末端変性イミドオリゴマーおよびその硬化物を提供することを目的とし、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物と4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸とを反応させて得られ、対数粘度が0.05−1である末端変性イミドオリゴマーおよびその硬化物が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には硬化物の形成工程における溶媒除去を容易にするため、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの高沸点溶媒を用いない加熱硬化性溶液組成物およびそれを繊維状補強材に含浸させた未硬化樹脂複合体を提供することを目的とし、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸及び/又は2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸を主成分とした芳香族テトラカルボン酸化合物の部分低級脂肪族アルキルエステルと芳香族ジアミン化合物と4−(2−フェニルエチニル)フタル酸の部分低級脂肪族アルキルエステルとを低級脂肪族アルコールを主成分とする有機溶媒に溶解してなる加熱硬化性溶液組成物およびそれを用いた未硬化樹脂複合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−219741号公報
【特許文献2】特開2007−308519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載の硬化物は、優れた物理的特性および化学的特性を有している。しかしながら、耐酸化性においては更なる改善の余地がある。特に、芳香族ジアミン成分として、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンや4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのようなエーテル結合があるジアミンを用いると良好な耐酸化性が得られないという問題がある。
本発明の目的は、耐酸化性に優れ、ガラス転移温度(Tg)の高い硬化物を与える加熱硬化性溶液組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、硬化時に反応不良が認められず、繊維強化複合材料の製造に用いるのに適した加熱硬化性溶液組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、上記加熱硬化性溶液組成物を用いた硬化物、プリプレグ及び繊維強化複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討した結果、芳香族ジアミン成分として分子内に酸素原子を有しない特定の芳香族ジアミンを用いることで、耐酸化性に優れ、ガラス転移温度(Tg)の高い硬化物を与えることができ、また、硬化時に反応不良が認められず、繊維強化複合材料の製造に用いるのに適した加熱硬化性溶液組成物、それを用いた硬化物、プリプレグ及び繊維強化複合材料を得ることができることを見出し、本発明に至った。
本発明の第1の態様によると、(A)2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸化合物を20モル%以上含む芳香族テトラカルボン酸成分、(B)アミノ基に由来する二つの炭素−窒素結合軸が同一直線上に位置し、分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミンと、アミノ基に由来する二つの炭素−窒素結合軸が同一直線上に位置せず、分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミンとを含む、分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミン成分、及び(C)フェニルエチニル基を有する末端封止剤を混合して得られたことを特徴とする加熱硬化性溶液組成物が提供される。
【0007】
上記加熱硬化性溶液組成物において、前記(B)のアミノ基に由来する二つの炭素−窒素結合軸が同一直線上に位置し、分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミンを、1,4−ジアミノベンゼンとし、アミノ基に由来する二つの炭素−窒素結合軸が同一直線上に位置せず、分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミンを、1,3−ジアミノベンゼンとすることができる。
また、前記(A)成分として、さらに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸化合物を含むことができる。
また、前記(C)のフェニルエチニル基を有する末端封止剤を、4−(2−フェニルエチニル)フタル酸化合物とすることができる。
【0008】
本発明の第2の態様によると、前記加熱硬化性溶液組成物を加熱硬化して得られたことを特徴とする硬化物が提供される。
【0009】
本発明の第3の態様によると、前記加熱硬化性溶液組成物を繊維状補強材に含浸させたことを特徴とするプリプレグが提供される。
【0010】
本発明の第4の態様によると、前記プリプレグを加熱硬化して得られたことを特徴とする繊維強化複合材料が提供される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、耐酸化性に優れ、ガラス転移温度(Tg)の高い硬化物を与えることができ、また、硬化時に反応不良が認められず、繊維強化複合材料の製造に用いるのに適した加熱硬化性溶液組成物、それを用いた硬化物、プリプレグ及び繊維強化複合材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の加熱硬化性溶液組成物について、好適な実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の加熱硬化性溶液組成物は、加熱により末端に付加反応性官能基を有するイミドオリゴマーおよびその硬化物を与える溶液組成物である。そのイミドオリゴマーは、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸化合物を20モル%以上含む芳香族テトラカルボン酸成分、および、アミノ基に由来する二つの炭素−窒素結合軸が同一直線上に位置し、分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミンと、アミノ基に由来する二つの炭素−窒素結合軸が同一直線上に位置せず、分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミンとを含む、分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミン成分で構成され、末端に付加反応性官能基であるフェニルエチニル基を有するものである。
【0013】
本実施形態に係る加熱硬化性溶液組成物の(A)成分である芳香族テトラカルボン酸成分は、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸化合物を含有するが、その含有率は(A)成分中に20モル%以上であることが好ましく、特に30モル%以上含有することが好ましい。2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸化合物の含有率が低いと、得られる硬化物のガラス転移温度(Tg)が低くなり、靱性も十分でないことがあるため好ましくない。また、芳香族テトラカルボン酸成分は、他のビフェニルテトラカルボン酸化合物を含んでいてもよく、他のビフェニルテトラカルボン酸化合物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸化合物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸化合物などを挙げることができる。
【0014】
2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸化合物には、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸のエステルまたは塩が含まれる。
同様に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸化合物には、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸のエステルまたは塩が含まれ、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸化合物には、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸のエステルまたは塩が含まれる。
【0015】
本実施形態において、芳香族テトラカルボン酸成分として、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸化合物以外のビフェニルテトラカルボン酸化合物を用いる場合、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸化合物を用いることが好ましい。ここで、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸化合物は、(A)成分中に20〜80モル%の範囲で用いるのが好ましく、特に、30〜70モル%の範囲で用いるのが好ましい。3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸化合物の含有率が低いと、得られる硬化物の耐酸化性が十分でないことがあり、含有率が高いと、得られる加熱硬化性溶液組成物の安定性や、その硬化物の靭性が十分でないことがある。
【0016】
本実施形態に係る加熱硬化性溶液組成物の(B)成分である分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミン成分は、アミノ基に由来する二つの炭素−窒素結合軸が同一直線上に位置し、分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミンと、アミノ基に由来する二つの炭素−窒素結合軸が同一直線上に位置せず、分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミンとを含む。ここで、分子内に酸素原子を有しないとは、分子中にエーテル結合、カルボニル基等を有しないことを指す。
アミノ基に由来する二つの炭素−窒素結合軸が同一直線上に位置し、分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミンとして、1,4−ジアミノベンゼン(PPD)、2,5−ジアミノトルエン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、4,4−ジアミノオクタフルオロビフェニルなどを挙げることができる。これらは、単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良い。
また、アミノ基に由来する二つの炭素−窒素結合軸が同一直線上に位置せず、分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミンとして、1,3−ジアミノベンゼン(MPD)、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、9,9’−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンなどを挙げることができる。これらは、単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良い。
【0017】
本実施形態においては、分子内に酸素原子を有しない芳香族ジアミン成分として、1,4−ジアミノベンゼン(パラフェニレンジアミン、PPD)と、1,3−ジアミノベンゼン(メタフェニレンジアミン、MPD)とを併用するのが好適であり、その場合のPPDの比率は、(B)成分中に10〜90モル%の範囲で用いるのが好ましく、特に、20〜80モル%の範囲で用いるのが好ましい。この範囲以外では、硬化物の耐酸化性や靭性が十分でないことがある。
【0018】
本実施形態に係る加熱硬化性溶液組成物の(C)成分である末端に付加反応性官能基を導入するために用いる末端封止剤としては、エチニル基を有するものが好ましく、特に、フェニルエチニル基を有するものが好適である。また、封止する末端は、アミン末端、カルボン酸末端のいずれでも構わないが、アミン末端と反応してイミド基を形成するものが好ましい。このような末端封止剤として、4−(2−フェニルエチニル)フタル酸化合物を挙げることができる。4−(2−フェニルエチニル)フタル酸化合物には、4−(2−フェニルエチニル)フタル酸無水物、4−(2−フェニルエチニル)フタル酸のエステルまたは塩が含まれる。
【0019】
また、本実施形態の加熱硬化性溶液組成物には、イミド化反応を促進する作用を有する成分が含有されていてもよい。含有量は、全成分の量に対して0.01〜3質量%の範囲であることが好ましい。例えば、イミダゾール化合物は、溶液組成物を調製する際に溶解を促進する作用を有し溶解時間を短縮することができる。更に、未硬化成形体を加圧下に加熱して硬化物(硬化成形体)を製造する際に硬化を促進する作用も有しており、特性が優れた硬化成形体を容易に得ることが可能になる。イミダゾール化合物としては、例えば2−メチルイミダゾールや1,2−ジメチルイミダゾールなどのポリイミドのイミド化触媒として公知の化合物を挙げることができる。
【0020】
アミン末端を封止したイミドオリゴマーを得るためには、芳香族ジアミン成分を、芳香族テトラカルボン酸成分に対して化学量論的に過剰モル量で用いることが好ましい。用いる芳香族ジアミン成分の量は、得られるイミドオリゴマーが所望の分子量となるように適宜調整するが、芳香族ジアミン成分を、芳香族テトラカルボン酸成分1モルに対して、1.05〜2.0モルの範囲内の量で用いることが好ましく、特に、1.10〜1.25モルの範囲内の量で用いることが好ましい。また、末端封止剤は、芳香族ジアミン成分のモル量と芳香族テトラカルボン酸成分のモル量との差に相当するモル量の1.8〜2.2倍、好ましくは、1.95〜2.0倍のモル量を用いることが好ましい。なお、本実施形態においては、個別に製造された分子量の異なるイミドオリゴマーを混合して用いることもできる。
【0021】
本実施形態の加熱硬化性溶液組成物は、公知の方法で上記芳香族テトラカルボン酸成分、芳香族ジアミン成分および末端封止剤を混合することにより得られる。例えば、第1の方法として、芳香族テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミンおよび4−(2−フェニルエチニル)フタル酸無水物を、酸無水基の全量とアミノ基の全量とがほぼ等量になるように使用して、各成分を溶媒中で約100℃以下、特に、80℃以下の温度で混合することにより調製することができる。
【0022】
前記の方法で用いる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルカプロラクタム、γ−ブチロラクトン(GBL)、シクロヘキサノンなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの溶媒の選択に関してはポリイミド前駆体溶液組成物の公知技術を適用することができる。
【0023】
得られた溶液は、そのままか、あるいは、適宜濃縮または希釈するかして使用することができる。また、必要であれば、この溶液を水中等に注ぎ込んで粉末状の生成物として単離し、その粉末生成物を適宜溶媒に溶解して本実施形態の加熱硬化性溶液組成物として使用することもできる。
【0024】
また、本実施形態の加熱硬化性溶液組成物は、例えば、第2の方法として、芳香族テトラカルボン酸二無水物および4−(2−フェニルエチニル)フタル酸無水物を、低級脂肪族アルコールを含有する溶液に添加し、生成する懸濁液を加熱することにより部分低級脂肪族アルキルエステルに変換して溶解させ、次いで、この溶液に芳香族ジアミンを加えることにより、調製することもできる。得られた溶液は、そのままか、あるいは、適宜濃縮または希釈するかして使用することができる。
【0025】
前記の方法で用いる溶液としては、低級脂肪族アルコール(炭素原子数が1〜6の一価脂肪族アルコール)を主成分として含む有機溶媒が挙げられる。特に、低級脂肪族アルコールがメタノールもしくはエタノールであることが好ましい。低級脂肪族アルコールは、混合物を使用することもできるが、その混合物は、メタノールもしくはエタノールを50容量%以上含むことが好ましく、特にメタノールもしくはエタノールを80容量%以上含むことが好ましい。ここで、低級脂肪族アルコール以外の低沸点溶媒(例、ケトン)を併用することができるが、その場合の低級脂肪族アルコール以外の低沸点溶媒の使用量は、30容量%以下であることが望ましい。
【0026】
上記部分低級脂肪族アルキルエステルを得るために用いる低級脂肪族アルコールとしてはメタノールが特に好ましい。低級脂肪族アルキルエステルとしてメチルエステルを用いると、加熱硬化性溶液組成物を用いて硬化体を製造する際に優れた形状維持性を示す。
【0027】
上記の加熱硬化性溶液組成物を用いた未硬化体から溶媒を蒸発除去する際、またそれに続く硬化体を得るために高温で加熱する際に発生するメタノールによる環境汚染を回避したい場合には、メタノールを用いて加熱硬化性溶液組成物を製造した後、その溶液組成物を一旦乾燥して、加熱硬化性粉末組成物を得て、この粉末組成物をエタノールなどの環境負荷が低い溶媒に溶解して改めて加熱硬化性溶液組成物とし、それを用いて未硬化体を調製して硬化体の製造を行なう方法を利用することもできる。
【0028】
加熱硬化性粉末組成物を得るために溶媒を蒸発除去する温度は、60℃以下であることが好ましい。加熱硬化性粉末組成物において、少量の溶媒が残存してもよいが、残存溶媒や高温で加熱して硬化体を得る際に発生するアルコールなどからなる揮発成分が18〜25%の範囲のものが好ましく、20〜22%の範囲のものが更に好ましい。
【0029】
上記のようにして得られた加熱硬化性溶液組成物は、単独、または、これを繊維状補強材に含浸させた複合材とし、硬化触媒の存在下または不存在下で加熱することにより硬化物とすることができる。例えば、加熱硬化性溶液組成物を支持体に塗布し、260〜500℃で5〜200分間加熱硬化することによりフィルムが得られる。また、上記の加熱硬化性粉末組成物を金型内に充填し、10〜260℃で1〜1000kg/cmで1〜240分間程度の圧縮成形によって予備成形体を形成し、この予備成形体を圧力を加えない常圧で260〜500℃で10分〜40時間程度加熱することにより、成形体を製造することができる。本実施形態の加熱硬化性溶液組成物を用いることにより、Tgが340℃以上、または340℃以下ではTgが確認できない硬化物(イミド基含有成形体)を得ることができる。
【0030】
また、本実施形態の加熱硬化性溶液組成物を用いて繊維強化複合材料を得るためには、まず、高強度繊維のシート状マトリックス材料に加熱硬化性溶液組成物を含浸させ、必要により、溶媒の一部を加熱などで蒸発除去させることによって未硬化繊維強化複合材料(プリプレグ)を調製する。プリプレグには、加圧下で加熱して繊維強化複合材料を製造する際の良好な取扱い性(ドレープ性、タック性)を確保するための適切な揮発分含有量と、得られる繊維強化複合材料が良好な樹脂含量を有するための樹脂を形成する成分の適切な付着量とが要求される。このためには、デップ法、キャスト法等の方法で、適切な量の樹脂を形成する成分を含む加熱硬化性溶液組成物を高強度繊維のシート状マトリックス材料に含浸させ、次いで熱風オーブン等で加熱乾燥して余分な揮発分を蒸発除去することが好適である。通常、所定量の加熱硬化性溶液組成物を高強度繊維のシート状マトリックス材料に含浸させ、加熱乾燥条件とし、温度範囲:40〜150℃、時間範囲:0.5〜30分とすることで、好ましい樹脂含有量(Rc):30〜50質量%、揮発分含有量(Vc):10〜30質量%のプリプレグを好適に調製できる。
【0031】
プリプレグを製造するために用いる、高強度繊維からなるシート状マトリックス材料としては、繊維強化複合材料を製造するために用いられる公知の高強度繊維からなるものを好適に用いることができる。好ましい高強度繊維は、カーボン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、およびチラノ繊維(二酸化チタン繊維)などのセラミック繊維である。
【0032】
得られたプリプレグは、その両面のそれぞれを、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂シート、あるいは紙などの被覆シートにより被覆した状態で保存や輸送することが好ましく、このような被覆状態にあるプリプレグは、通常、ロール状態で保存と輸送がされる。
【0033】
プリプレグから繊維強化複合材料(硬化体)を製造する方法は公知のものを適用すればよい。例えば、ロール状のプリプレグを所望のサイズに切断し、切断した未硬化繊維強化複合材料片を複数枚(数枚から100枚以上まで)積層した後、加熱プレス、または、オートクレーブを用いて、140〜310℃で常圧又は減圧下で5〜270分間加熱して乾燥およびイミド化した後、250〜500℃の温度で、常圧または0.1〜20MPaの圧力下で、1秒〜240分間程度加熱することにより、繊維強化複合材料が得られる。
【0034】
本実施形態の加熱硬化性溶液組成物を繊維状補強材に含浸させた未硬化繊維強化複合材料(プリプレグ)を加熱硬化して得られる繊維強化複合材料は、機械的特性などにも優れ、航空機や宇宙産業用機器等の用途に好適である。
【実施例】
【0035】
以下、具体例を示して本発明を説明する。まず、各測定値等は次の方法によるものである。
【0036】
(1)熱酸化安定性(TOS)
実施例記載の方法により得られた厚み約0.05mm(実施例1〜6および比較例1〜5)または約0.12mm(実施例7〜15および比較例6〜8)の樹脂フィルムについて、270℃で4時間乾燥後の重量を基準とし、イナートガスオーブンINH−21CD−S(光洋サーモシステム株式会社)を用いて350℃で100時間流動空気に露呈した後の重量減少を、基準の重量に対する重量パーセントで表した。測定は3つのサンプルについて同時に行い、これらの平均値をTOS値とした。
実施例16、17および比較例9のCFRP板については、274℃、3000時間の条件とした以外は、上記と同様にしてTOS値を算出した。
【0037】
(2)ガラス転移温度(Tg)
実施例1〜6および比較例1〜5:実施例記載の方法により得られた厚み約0.05mmの樹脂フィルムについて、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の固体粘弾性アナライザーRSAIIIを用い、窒素中、周波数10Hz、3℃/分で昇温しながら引張モードで粘弾性を測定した。温度に対して貯蔵弾性係数をプロットしたグラフの変曲点について接線を引き、その交点の温度をガラス転移温度とした。また、tanδのピークトップの温度から求めたTgは、Tg(tanδ)とした。
実施例7〜15および比較例6〜8:実施例記載の方法により得られた厚み約0.12mmの樹脂フィルムについて、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量測定装置Q100シリーズを用い、窒素雰囲気下(20ml/min)、20℃/minで昇温しながらDSC曲線を測定した。DSC曲線の変曲点における、接線の交点の温度をガラス転移温度とした。
実施例16、17および比較例9:実施例記載の方法により得られたCFRP板について、測定モードが3点曲げモードであり昇温速度が10℃/分であること以外は実施例1と同様にしてガラス転移温度を測定した。
【0038】
(3)粘度
E型粘時計(東京計器株式会社製)を用いて30℃で測定した。
(4)層間せん断強度(SBS)
ASTM D2344に従い測定した。測定にはインストロン社製の万能試験機(型番5582)を用いた。
(5)炭素繊維含有率(Vf)及び空隙率(Vv)測定
ASTM D3171に従い硫酸分解法により、炭素繊維含有率(Vf)及び空隙率(Vv)を測定した。
【0039】
また、以下に記載する実施例において、各モノマー成分は下記の表示により示した。
a−BPDA:2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PPD:1,4−ジアミノベンゼン(パラフェニレンジアミン)
MPD:1,3−ジアミノベンゼン(メタフェニレンジアミン)
PEPA:4−(フェニルエチニル)無水フタル酸
TPE−R:1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン
ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
3,4−ODA:3,4’−ジアミノジフェニルエーテル
NMP:N―メチルピロリドン
2−Mz:2−メチルイミダゾール
【0040】
[実施例1]
ポリエチレン製の蓋付き容器に、ジアミン成分であるPPD2.896g(0.02678モル)とMPD1.241g(0.01148モル)そして溶媒であるNMP36.863gを投入し、撹拌して均一溶液を得た。次いで、撹拌しながら酸成分であるa−BPDA10.000g(0.03399モル)とPEPA2.109g(0.00850モル)を投入し、均一溶液(加熱硬化性溶液組成物)を得た。この均一溶液をガラス板の表面に流延し、ホットプレート上にて80℃で3分処理した。その上に更に溶液を流延してホットプレート上にて80℃で20分、オーブンに入れて150℃で10分加熱処理した。その後、電気炉にて200℃から370℃に約28分で昇温し、370℃で60分加熱処理して、厚みが約0.05mmの樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表1に示す。
【0041】
[実施例2]
酸成分としてs−BPDA4.285(0.01456モル)とa−BPDA9.999g(0.03399モル)とPEPA3.014g(0.01214モル)を、ジアミン成分としてPPD4.138g(0.03826モル)とMPD1.773g(0.01640モル)を、そしてNMP47.585gを用いて、実施例1と同様にして加熱硬化性溶液組成物およびフィルムを得た。フィルムの特性を表1に示した。
【0042】
[比較例1]
酸成分としてs−BPDAを用いず、a−BPDA25.000g(0.08497モル)とPEPA5.275g(0.02125モル)を、ジアミン成分としてMPDを用いず、PPD10.338g(0.09560モル)を、そしてNMP83.273gを用いた以外は実施例1と同様にして加熱硬化性溶液組成物およびフィルムを得たが、熱処理中に成形体が崩壊し、樹脂フィルムを作製することができなかった。
【0043】
[比較例2]
酸成分としてs−BPDAを用いずa−BPDA19.999g(0.06797モル)とPEPA4.221g(0.01700モル)を、ジアミン成分としてMPDを用いず、PPD5.790g(0.05354モル)とTPE−R6.709g(0.02295モル)を、そしてNMP76.487gを用いた以外は比較例1と同様にして加熱硬化性溶液組成物およびフィルムを得た。フィルムの特性を表2に示した。得られたフィルムは、Tg、TOSともに劣っていた。
【0044】
[比較例3]
酸成分としてs−BPDAを用いず、a−BPDA15.000g(0.05098モル)とPEPA3.163g(0.01274モル)を、ジアミン成分としてMPDを用いず、PPD4.341g(0.04014g)とODA3.445g(0.01721モル)を、そしてNMP53.658gを用いた以外は比較例1と同様にして加熱硬化性溶液組成物およびフィルムを得た。フィルムの特性を表2に示した。得られたフィルムは、Tg、TOSともに劣っていた。
【0045】
[実施例3]
酸成分としてs−BPDA6.499g(0.02209モル)とa−BPDA6.500g(0.02209モル)とPEPA2.741g(0.01104モル)を、ジアミン成分としてPPD2.687g(0.02485モル)とMPD2.686g(0.02484モル)を、そしてNMP43.305gを用いて、実施例1と同様にして加熱硬化性溶液組成物およびフィルムを得た。フィルムの特性を表1に示した。
【0046】
[比較例4]
酸成分としてs−BPDA10.000g(0.03399モル)とa−BPDA10.001g(0.03399モル)とPEPA4.219g(0.01700モル)を、ジアミン成分としてPPDを用いず、MPD8.272g(0.07649モル)を、そしてNMP66.621gを用いた以外は実施例2と同様にして加熱硬化性溶液組成物およびフィルムを得た。フィルムの特性を表2に示した。得られたフィルムは、Tgが劣っていた。
【0047】
[比較例5]
酸成分としてa−BPDAを用いず、s−BPDA12.001g(0.04079モル)とPEPA2.530g(0.01019モル)を、ジアミン成分としてPPD2.481g(0.02294モル)とMPD2.482g(0.02295モル)を、そしてNMP39.972gを用いた以外は実施例1と同様にして加熱硬化性溶液組成物を得たが、熱処理中に成形体が崩壊し、フィルムを作製することができなかった。
【0048】
[実施例4]
酸成分としてs−BPDA8.998g(0.03058モル)とa−BPDA3.857g(0.01311モル)とPEPA2.711g(0.01092モル)を、ジアミン成分としてPPD1.063g(0.00983モル)とMPD4.253g(0.03932モル)を、そしてNMP42.821gを用いて、実施例1と同様にして加熱硬化性溶液組成物およびフィルムを得た。フィルムの特性を表1に示した。
【0049】
[実施例5]
酸成分としてs−BPDA9.000g(0.03059モル)とa−BPDA3.856g(0.01311モル)とPEPA2.711g(0.01092モル)を、ジアミン成分としてPPD4.252g(0.03932モル)とMPD1.064g(0.00984モル)を、そしてNMP42.825gを用いて、実施例1と同様にして加熱硬化性溶液組成物およびフィルムを得た。フィルムの特性を表1に示した。
【0050】
[実施例6]
酸成分としてs−BPDA9.000g(0.03059モル)とa−BPDA5.399g(0.01835モル)とPEPA3.037g(0.01223モル)を、ジアミン成分としてPPD1.323g(0.01223モル)とMPD4.631g(0.04282モル)を、そしてNMP47.965gを用いて、実施例1と同様にして加熱硬化性溶液組成物およびフィルムを得た。フィルムの特性を表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
[実施例7]
セパラブルフラスコに、酸成分であるa−BPDA47.10g(0.1601モル)とPEPA9.93g(0.0400モル)、そして溶媒であるメタノール63.50gを投入し、触媒である2−Mz0.1528gを加えて還流条件下で撹拌し均一に溶解させた。溶液を室温に冷却後、ジアミン成分であるPPD13.63g(0.1260モル)とMPD5.84g(0.0540モル)を入れて攪拌し、均一な加熱硬化性溶液組成物を得た。この溶液をポリイミドフィルムで作った容器に入れて、80℃に保ったオーブンに入れた。オーブンを2℃/分で260度まで昇温して3時間保持し、得られた固形分を粉砕して加熱硬化性粉末組成物を得た。この加熱硬化性粉末組成物をポリイミドフィルムで挟み、290℃に加熱したプレス機でプレスし、その後370℃まで約20分で昇温し、370℃で60分加熱処理して、厚みが約0.12mmの樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表3に示す。
【0054】
[実施例8]
酸成分としてa−BPDA47.05g(0.1599モル)とPEPA9.94g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール63.50gを、触媒として2−Mz0.1529gを、ジアミンとしてPPD9.73g(0.0900モル)とMPD9.73g(0.0900モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表3に示す。
【0055】
[実施例9]
酸成分としてa−BPDA47.10g(0.1601モル)とPEPA9.94g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール63.50gを、触媒として2−Mz0.1510gを、ジアミンとしてPPD3.91g(0.0362モル)とMPD15.60g(0.1443モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
[実施例10]
酸成分としてs−BPDA14.11g(0.0480モル)とa−BPDA32.96g(0.1120モル)とPEPA9.95g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール63.50gを、触媒として2−Mz0.1530gを、ジアミン成分としてPPD13.63g(0.1260モル)とMPD5.84g(0.0540モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表4に示す。
【0058】
[実施例11]
酸成分としてs−BPDA14.10g(0.0479モル)とa−BPDA32.94g(0.1120モル)とPEPA9.93g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール63.14gを、触媒として2−Mz0.1528gを、ジアミンとしてPPD9.73g(0.0900モル)とMPD0.73g(0.0400モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表4に示す。
【0059】
[実施例12]
酸成分としてs−BPDA14.13g(0.0480モル)とa−BPDA32.96g(0.1120モル)とPEPA9.93g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール63.50gを、触媒として2−Mz0.1530gを、ジアミンとしてPPD3.89g(0.0360モル)とMPD15.57g(0.1440モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表4に示す。
【0060】
[実施例13]
酸成分としてs−BPDA28.26g(0.0961モル)とa−BPDA18.82g(0.0640モル)とPEPA9.93g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール63.50gを、触媒として2−Mz0.1529gを、ジアミンとしてPPD13.63g(0.1260モル)とMPD5.85g(0.0541モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表4に示す。
【0061】
[実施例14]
酸成分としてs−BPDA28.25g(0.0960モル)とa−BPDA18.82g(0.0640モル)とPEPA9.93g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール63.50gを、触媒として2−Mz0.1530gを、ジアミンとしてPPD9.73g(0.0900モル)とMPD9.73g(0.0900モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表4に示す。
【0062】
[実施例15]
酸成分としてs−BPDA28.25g(0.0960モル)とa−BPDA18.85g(0.0641モル)とPEPA9.93g(0.04000モル)を、溶媒としてメタノール63.50gを、触媒として2−Mz0.1530gを、ジアミンとしてPPD3.90g(0.0361モル)とMPD15.57g(0.1440モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表4に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
[比較例6]
酸成分としてa−BPDA18.83g(0.0640モル)とPEPA9.93g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール73.44gを、触媒として2−Mz0.1729gを、ジアミンとしてPPD13.63g(0.1260モル)とTPE−R15.79g(0.0540モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表5に示す。得られたフィルムは、TOSが劣っていた。
【0065】
[比較例7]
酸成分としてa−BPDA18.83g(0.0640モル)とPEPA9.93g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール68.47gを、触媒として2−Mz0.1629gを、ジアミンとしてPPD13.63g(0.1260モル)と3,4‘−ODA10.80g(0.0539モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表5に示す。得られたフィルムは、TOSが劣っていた。
【0066】
[比較例8]
酸成分としてs−BPDA28.25g(0.0960モル)a−BPDA18.82g(0.0640モル)とPEPA9.92g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール73.44gを、触媒として2−Mz0.1729gを、ジアミンとしてPPD13.63g(0.1260モル)とTPE−R15.79g(0.0540モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表5に示す。得られたフィルムは、Tg、TOSともに劣っていた。
【0067】
【表5】
【0068】
[実施例16]
表6に示した組成で実施例1と同様な方法で固形分濃度40〜60重量%の加熱硬化性溶液組成物を調製した。この加熱硬化性溶液組成物を、東邦テナックス社製の炭素繊維織物(HTS40 3K、目付重量200g/m)に含浸させ、80〜100℃のオーブンで10〜30分乾燥してプリプレグを得た。乾燥条件は乾燥後の揮発分が約15重量%となるように調整した。なお、揮発分は、250℃、1時間加熱後の重量減少から算出した。得られたプリプレグを100×150mmにカットして12枚重ね、オートクレーブ成形機に入れて1.38MPaの加圧下、370℃で1時間加熱処理して厚さ2.72mmの炭素繊維強化プラスチック(CFRP)板を得た。得られたCFRP板は、超音波探傷試験および実体顕微鏡による断面観察から、ボイドが見られない良品であることがわかった。得られたCFRP板の特性を表6に示す。
【0069】
[実施例17]
表6に示した組成で加熱硬化性溶液組成物を調製したこと以外は実施例16と同様にしてCFRP板を得た。得られたCFRP板の特性を表6に示す。
【0070】
[比較例9]
表6に示した組成で加熱硬化性溶液組成物を調製したこと以外は実施例16と同様にしてCFRP板を得た。得られたCFRP板の特性を表6に示す。得られたCFRP板は、Tg、TOSともに劣っていた。
【0071】
【表6】