【実施例】
【0035】
以下、具体例を示して本発明を説明する。まず、各測定値等は次の方法によるものである。
【0036】
(1)熱酸化安定性(TOS)
実施例記載の方法により得られた厚み約0.05mm(実施例1〜6および比較例1〜5)または約0.12mm(実施例7〜15および比較例6〜8)の樹脂フィルムについて、270℃で4時間乾燥後の重量を基準とし、イナートガスオーブンINH−21CD−S(光洋サーモシステム株式会社)を用いて350℃で100時間流動空気に露呈した後の重量減少を、基準の重量に対する重量パーセントで表した。測定は3つのサンプルについて同時に行い、これらの平均値をTOS値とした。
実施例16、17および比較例9のCFRP板については、274℃、3000時間の条件とした以外は、上記と同様にしてTOS値を算出した。
【0037】
(2)ガラス転移温度(Tg)
実施例1〜6および比較例1〜5:実施例記載の方法により得られた厚み約0.05mmの樹脂フィルムについて、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の固体粘弾性アナライザーRSAIIIを用い、窒素中、周波数10Hz、3℃/分で昇温しながら引張モードで粘弾性を測定した。温度に対して貯蔵弾性係数をプロットしたグラフの変曲点について接線を引き、その交点の温度をガラス転移温度とした。また、tanδのピークトップの温度から求めたTgは、Tg(tanδ)とした。
実施例7〜15および比較例6〜8:実施例記載の方法により得られた厚み約0.12mmの樹脂フィルムについて、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量測定装置Q100シリーズを用い、窒素雰囲気下(20ml/min)、20℃/minで昇温しながらDSC曲線を測定した。DSC曲線の変曲点における、接線の交点の温度をガラス転移温度とした。
実施例16、17および比較例9:実施例記載の方法により得られたCFRP板について、測定モードが3点曲げモードであり昇温速度が10℃/分であること以外は実施例1と同様にしてガラス転移温度を測定した。
【0038】
(3)粘度
E型粘時計(東京計器株式会社製)を用いて30℃で測定した。
(4)層間せん断強度(SBS)
ASTM D2344に従い測定した。測定にはインストロン社製の万能試験機(型番5582)を用いた。
(5)炭素繊維含有率(Vf)及び空隙率(Vv)測定
ASTM D3171に従い硫酸分解法により、炭素繊維含有率(Vf)及び空隙率(Vv)を測定した。
【0039】
また、以下に記載する実施例において、各モノマー成分は下記の表示により示した。
a−BPDA:2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PPD:1,4−ジアミノベンゼン(パラフェニレンジアミン)
MPD:1,3−ジアミノベンゼン(メタフェニレンジアミン)
PEPA:4−(フェニルエチニル)無水フタル酸
TPE−R:1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン
ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
3,4−ODA:3,4’−ジアミノジフェニルエーテル
NMP:N―メチルピロリドン
2−Mz:2−メチルイミダゾール
【0040】
[実施例1]
ポリエチレン製の蓋付き容器に、ジアミン成分であるPPD2.896g(0.02678モル)とMPD1.241g(0.01148モル)そして溶媒であるNMP36.863gを投入し、撹拌して均一溶液を得た。次いで、撹拌しながら酸成分であるa−BPDA10.000g(0.03399モル)とPEPA2.109g(0.00850モル)を投入し、均一溶液(加熱硬化性溶液組成物)を得た。この均一溶液をガラス板の表面に流延し、ホットプレート上にて80℃で3分処理した。その上に更に溶液を流延してホットプレート上にて80℃で20分、オーブンに入れて150℃で10分加熱処理した。その後、電気炉にて200℃から370℃に約28分で昇温し、370℃で60分加熱処理して、厚みが約0.05mmの樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表1に示す。
【0041】
[実施例2]
酸成分としてs−BPDA4.285(0.01456モル)とa−BPDA9.999g(0.03399モル)とPEPA3.014g(0.01214モル)を、ジアミン成分としてPPD4.138g(0.03826モル)とMPD1.773g(0.01640モル)を、そしてNMP47.585gを用いて、実施例1と同様にして加熱硬化性溶液組成物およびフィルムを得た。フィルムの特性を表1に示した。
【0042】
[比較例1]
酸成分としてs−BPDAを用いず、a−BPDA25.000g(0.08497モル)とPEPA5.275g(0.02125モル)を、ジアミン成分としてMPDを用いず、PPD10.338g(0.09560モル)を、そしてNMP83.273gを用いた以外は実施例1と同様にして加熱硬化性溶液組成物およびフィルムを得たが、熱処理中に成形体が崩壊し、樹脂フィルムを作製することができなかった。
【0043】
[比較例2]
酸成分としてs−BPDAを用いずa−BPDA19.999g(0.06797モル)とPEPA4.221g(0.01700モル)を、ジアミン成分としてMPDを用いず、PPD5.790g(0.05354モル)とTPE−R6.709g(0.02295モル)を、そしてNMP76.487gを用いた以外は比較例1と同様にして加熱硬化性溶液組成物およびフィルムを得た。フィルムの特性を表2に示した。得られたフィルムは、Tg、TOSともに劣っていた。
【0044】
[比較例3]
酸成分としてs−BPDAを用いず、a−BPDA15.000g(0.05098モル)とPEPA3.163g(0.01274モル)を、ジアミン成分としてMPDを用いず、PPD4.341g(0.04014g)とODA3.445g(0.01721モル)を、そしてNMP53.658gを用いた以外は比較例1と同様にして加熱硬化性溶液組成物およびフィルムを得た。フィルムの特性を表2に示した。得られたフィルムは、Tg、TOSともに劣っていた。
【0045】
[実施例3]
酸成分としてs−BPDA6.499g(0.02209モル)とa−BPDA6.500g(0.02209モル)とPEPA2.741g(0.01104モル)を、ジアミン成分としてPPD2.687g(0.02485モル)とMPD2.686g(0.02484モル)を、そしてNMP43.305gを用いて、実施例1と同様にして加熱硬化性溶液組成物およびフィルムを得た。フィルムの特性を表1に示した。
【0046】
[比較例4]
酸成分としてs−BPDA10.000g(0.03399モル)とa−BPDA10.001g(0.03399モル)とPEPA4.219g(0.01700モル)を、ジアミン成分としてPPDを用いず、MPD8.272g(0.07649モル)を、そしてNMP66.621gを用いた以外は実施例2と同様にして加熱硬化性溶液組成物およびフィルムを得た。フィルムの特性を表2に示した。得られたフィルムは、Tgが劣っていた。
【0047】
[比較例5]
酸成分としてa−BPDAを用いず、s−BPDA12.001g(0.04079モル)とPEPA2.530g(0.01019モル)を、ジアミン成分としてPPD2.481g(0.02294モル)とMPD2.482g(0.02295モル)を、そしてNMP39.972gを用いた以外は実施例1と同様にして加熱硬化性溶液組成物を得たが、熱処理中に成形体が崩壊し、フィルムを作製することができなかった。
【0048】
[実施例4]
酸成分としてs−BPDA8.998g(0.03058モル)とa−BPDA3.857g(0.01311モル)とPEPA2.711g(0.01092モル)を、ジアミン成分としてPPD1.063g(0.00983モル)とMPD4.253g(0.03932モル)を、そしてNMP42.821gを用いて、実施例1と同様にして加熱硬化性溶液組成物およびフィルムを得た。フィルムの特性を表1に示した。
【0049】
[実施例5]
酸成分としてs−BPDA9.000g(0.03059モル)とa−BPDA3.856g(0.01311モル)とPEPA2.711g(0.01092モル)を、ジアミン成分としてPPD4.252g(0.03932モル)とMPD1.064g(0.00984モル)を、そしてNMP42.825gを用いて、実施例1と同様にして加熱硬化性溶液組成物およびフィルムを得た。フィルムの特性を表1に示した。
【0050】
[実施例6]
酸成分としてs−BPDA9.000g(0.03059モル)とa−BPDA5.399g(0.01835モル)とPEPA3.037g(0.01223モル)を、ジアミン成分としてPPD1.323g(0.01223モル)とMPD4.631g(0.04282モル)を、そしてNMP47.965gを用いて、実施例1と同様にして加熱硬化性溶液組成物およびフィルムを得た。フィルムの特性を表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
[実施例7]
セパラブルフラスコに、酸成分であるa−BPDA47.10g(0.1601モル)とPEPA9.93g(0.0400モル)、そして溶媒であるメタノール63.50gを投入し、触媒である2−Mz0.1528gを加えて還流条件下で撹拌し均一に溶解させた。溶液を室温に冷却後、ジアミン成分であるPPD13.63g(0.1260モル)とMPD5.84g(0.0540モル)を入れて攪拌し、均一な加熱硬化性溶液組成物を得た。この溶液をポリイミドフィルムで作った容器に入れて、80℃に保ったオーブンに入れた。オーブンを2℃/分で260度まで昇温して3時間保持し、得られた固形分を粉砕して加熱硬化性粉末組成物を得た。この加熱硬化性粉末組成物をポリイミドフィルムで挟み、290℃に加熱したプレス機でプレスし、その後370℃まで約20分で昇温し、370℃で60分加熱処理して、厚みが約0.12mmの樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表3に示す。
【0054】
[実施例8]
酸成分としてa−BPDA47.05g(0.1599モル)とPEPA9.94g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール63.50gを、触媒として2−Mz0.1529gを、ジアミンとしてPPD9.73g(0.0900モル)とMPD9.73g(0.0900モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表3に示す。
【0055】
[実施例9]
酸成分としてa−BPDA47.10g(0.1601モル)とPEPA9.94g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール63.50gを、触媒として2−Mz0.1510gを、ジアミンとしてPPD3.91g(0.0362モル)とMPD15.60g(0.1443モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
[実施例10]
酸成分としてs−BPDA14.11g(0.0480モル)とa−BPDA32.96g(0.1120モル)とPEPA9.95g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール63.50gを、触媒として2−Mz0.1530gを、ジアミン成分としてPPD13.63g(0.1260モル)とMPD5.84g(0.0540モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表4に示す。
【0058】
[実施例11]
酸成分としてs−BPDA14.10g(0.0479モル)とa−BPDA32.94g(0.1120モル)とPEPA9.93g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール63.14gを、触媒として2−Mz0.1528gを、ジアミンとしてPPD9.73g(0.0900モル)とMPD0.73g(0.0400モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表4に示す。
【0059】
[実施例12]
酸成分としてs−BPDA14.13g(0.0480モル)とa−BPDA32.96g(0.1120モル)とPEPA9.93g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール63.50gを、触媒として2−Mz0.1530gを、ジアミンとしてPPD3.89g(0.0360モル)とMPD15.57g(0.1440モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表4に示す。
【0060】
[実施例13]
酸成分としてs−BPDA28.26g(0.0961モル)とa−BPDA18.82g(0.0640モル)とPEPA9.93g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール63.50gを、触媒として2−Mz0.1529gを、ジアミンとしてPPD13.63g(0.1260モル)とMPD5.85g(0.0541モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表4に示す。
【0061】
[実施例14]
酸成分としてs−BPDA28.25g(0.0960モル)とa−BPDA18.82g(0.0640モル)とPEPA9.93g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール63.50gを、触媒として2−Mz0.1530gを、ジアミンとしてPPD9.73g(0.0900モル)とMPD9.73g(0.0900モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表4に示す。
【0062】
[実施例15]
酸成分としてs−BPDA28.25g(0.0960モル)とa−BPDA18.85g(0.0641モル)とPEPA9.93g(0.04000モル)を、溶媒としてメタノール63.50gを、触媒として2−Mz0.1530gを、ジアミンとしてPPD3.90g(0.0361モル)とMPD15.57g(0.1440モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表4に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
[比較例6]
酸成分としてa−BPDA18.83g(0.0640モル)とPEPA9.93g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール73.44gを、触媒として2−Mz0.1729gを、ジアミンとしてPPD13.63g(0.1260モル)とTPE−R15.79g(0.0540モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表5に示す。得られたフィルムは、TOSが劣っていた。
【0065】
[比較例7]
酸成分としてa−BPDA18.83g(0.0640モル)とPEPA9.93g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール68.47gを、触媒として2−Mz0.1629gを、ジアミンとしてPPD13.63g(0.1260モル)と3,4‘−ODA10.80g(0.0539モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表5に示す。得られたフィルムは、TOSが劣っていた。
【0066】
[比較例8]
酸成分としてs−BPDA28.25g(0.0960モル)a−BPDA18.82g(0.0640モル)とPEPA9.92g(0.0400モル)を、溶媒としてメタノール73.44gを、触媒として2−Mz0.1729gを、ジアミンとしてPPD13.63g(0.1260モル)とTPE−R15.79g(0.0540モル)を用いた以外は実施例7と同様にして加熱硬化性溶液組成物および樹脂フィルムを得た。フィルムの特性を表5に示す。得られたフィルムは、Tg、TOSともに劣っていた。
【0067】
【表5】
【0068】
[実施例16]
表6に示した組成で実施例1と同様な方法で固形分濃度40〜60重量%の加熱硬化性溶液組成物を調製した。この加熱硬化性溶液組成物を、東邦テナックス社製の炭素繊維織物(HTS40 3K、目付重量200g/m
2)に含浸させ、80〜100℃のオーブンで10〜30分乾燥してプリプレグを得た。乾燥条件は乾燥後の揮発分が約15重量%となるように調整した。なお、揮発分は、250℃、1時間加熱後の重量減少から算出した。得られたプリプレグを100×150mmにカットして12枚重ね、オートクレーブ成形機に入れて1.38MPaの加圧下、370℃で1時間加熱処理して厚さ2.72mmの炭素繊維強化プラスチック(CFRP)板を得た。得られたCFRP板は、超音波探傷試験および実体顕微鏡による断面観察から、ボイドが見られない良品であることがわかった。得られたCFRP板の特性を表6に示す。
【0069】
[実施例17]
表6に示した組成で加熱硬化性溶液組成物を調製したこと以外は実施例16と同様にしてCFRP板を得た。得られたCFRP板の特性を表6に示す。
【0070】
[比較例9]
表6に示した組成で加熱硬化性溶液組成物を調製したこと以外は実施例16と同様にしてCFRP板を得た。得られたCFRP板の特性を表6に示す。得られたCFRP板は、Tg、TOSともに劣っていた。
【0071】
【表6】