特許第5987916号(P5987916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987916
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】非磁性体の組付構造
(51)【国際特許分類】
   F02D 35/00 20060101AFI20160825BHJP
   F02M 35/104 20060101ALI20160825BHJP
   F02M 35/112 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   F02D35/00 364G
   F02M35/104 N
   F02M35/104 R
   F02M35/112
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-545740(P2014-545740)
(86)(22)【出願日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】JP2013080069
(87)【国際公開番号】WO2014073587
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2015年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2012-248023(P2012-248023)
(32)【優先日】2012年11月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】引地 理
(72)【発明者】
【氏名】ボーン ステファン
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−010727(JP,A)
【文献】 特開2005−292096(JP,A)
【文献】 特開2012−220192(JP,A)
【文献】 特開2010−223128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 35/00
F02M 35/104
F02M 35/112
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体とともに回転軸周りに回転するマグネットの磁束変化を検出することによって、上記回転体の回転位置を検出するポジションセンサを組付可能な非磁性体の組付構造において、
上記回転体が回転可能に挿通する中空部を有する非磁性体と、
上記非磁性体の中空部の開口端部を塞ぐように、この開口端部に固定されるカバーと、を有し、
上記マグネットを保持するマグネット保持部が上記非磁性体の中空部に収容配置されており、このマグネット保持部が上記回転体の端部と一体的に回転するように構成され、
上記非磁性体の中空部の外周部には、上記ポジションセンサが開口端部側より回転軸方向にスライド可能に組み付けられた係止部が設けられ、
上記カバーは、上記マグネット保持部の回転軸方向の移動規制るとともに、上記ポジションセンサの回転軸方向の移動規制するように、上記非磁性体に固定されている非磁性体の組付構造。
【請求項2】
上記カバーが上記非磁性体の中空部の開口端部に溶着により固定されている請求項1に記載の非磁性体の組付構造。
【請求項3】
上記カバーは、上記非磁性体の中空部の開口端部と上記ポジションセンサの双方に溶着により固定されている請求項1に記載の非磁性体の組付構造。
【請求項4】
上記非磁性体が、内燃機関のインテークマニホールドである請求項1〜3のいずれかに記載の非磁性体の組付構造。
【請求項5】
上記ポジションセンサが、吸気の流動を調整する吸気流動制御弁の回転位置を検出するものである請求項4に記載の非磁性体の組付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジションセンサを組付可能な非磁性体の組付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
非磁性体である内燃機関の合成樹脂製のインテークマニホールドには、タンブル制御弁やスワール制御弁等の吸気流動制御弁が取り付けられるとともに、この吸気流動制御弁の回転体に取り付けられたマグネットの磁束変化を検出することによって、この吸気流動制御弁の開度を検出するポジションセンサが設けられる(特許文献1参照)。このようなポジションセンサの組付構造としては、例えば、回転体が挿通するインテークマニホールドの中空部内に、上記のマグネットを保持するマグネット保持部が中空部の開口端部側より挿入されて、回転体の一端に組み付けられる。この中空部の開口端部は別体のカバーにより密封状態に閉塞される。ポジションセンサは、例えばビスやボルト等の固定具を用いて、インテークマニホールドのマグネットに対向する部分に締結固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−190727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような組付構造では、ポジションセンサをインテークマニホールドに締結するための固定具と、中空部の開口端部を閉塞するカバーと、が個別に必要となるために、部品点数が多くなるとともに、大型化や重量増加を招く、という問題がある。
【0005】
そこで、部品点数を削減するために、中空部を塞ぐカバーにセンサを一体的に設けることも考えられる。しかしながら、この場合には、簡素化のためにポジションセンサを具備しない仕様の車両を製造する場合に、例えば中空部の一端が開口していない(開口端部の無い)インテークマニホールドを入れ子型を用いて鋳造する必要があり、鋳造時に型の段取り作業が発生し、生産性が著しく低下する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。すなわち本発明は、回転体とともに回転軸周りに回転するマグネットの磁束変化を検出することによって、上記回転体の回転位置を検出するポジションセンサを組付可能な非磁性体の組付構造において、上記回転体が回転可能に挿通する中空部を有する非磁性体と、上記非磁性体の中空部の開口端部を塞ぐように、上記非磁性体の中空部の開口端部に固定されるカバーと、を有している。上記非磁性体の中空部には、上記マグネットを保持するマグネット保持部を上記開口端部側より挿入することで、このマグネット保持部が上記回転体の端部と一体的に回転するように組付可能である。上記非磁性体の中空部の外周部には、上記ポジションセンサが開口端部側より回転軸方向にスライド可能に組付可能な係止部が設けられる。
【0007】
そして、上記マグネット保持部及び上記ポジションセンサを上記非磁性体に組み付けた状態で、上記カバーを上記非磁性体に固定した場合、このカバーによって、上記マグネット保持部の回転軸方向の移動が拘束されるとともに、上記ポジションセンサの回転軸方向の移動が拘束される。
【発明の効果】
【0008】
このように本発明によれば、非磁性体の中空部の開口端部を閉塞するカバーが、上記マグネット保持部及びポジションセンサの軸方向の移動を拘束することにより、これらマグネット保持部及びポジションセンサを非磁性体側に安定的に保持・固定する機能を兼用している。従って、カバーとは別体の固定具を用いてマグネット保持部やポジションセンサを非磁性体に固定する場合に比して、部品点数が削減されるとともに構造が簡素化され、小型化・軽量化を図ることができる。
【0009】
また、カバーに対してマグネット保持部やポジションセンサが別体に構成されているために、ポジションセンサを用いない仕様の製品の場合に、単にポジションセンサ(及びマグネット保持部)を省略し、ポジションセンサを用いる場合と同じカバーによって、中空部の開口端部を閉塞することが可能であり、カバーや非磁性体に変更を加える必要がない。このようにポジションセンサを用いる製品とポジションセンサを用いない製品との間で、非磁性体及びカバーに同じものを変更を加えることなく共通して使用することができるために、ポジションセンサ(及びマグネット保持部)の組付工程を除いて、両者の組立工程を共通化することができ、生産性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施例に係る組付構造が適用される内燃機関のインテークマニホールドの要部を示す斜視図。
図2】上記インテークマニホールドのポジションセンサが組み付けられる部分を示す斜視図。
図3】上記インテークマニホールドのポジションセンサが組み付けられる部分を示す正面図。
図4】上記インテークマニホールドのポジションセンサが組み付けられる部分を示す断面図。
図5】ポジションセンサを採用する場合の組付手順を示す説明図。
図6】ポジションセンサを採用しない場合の組付手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図示実施例により本発明を具体的に説明する。図1は、本発明の一実施例に係る非磁性体としての4気筒型内燃機関のインテークマニホールド10の要部を示す斜視図である。このインテークマニホールド10は、複数の合成樹脂部品を組み立てて構成されており、シリンダヘッドの吸気ポートに接続する吸気通路15が内部に形成された4本の吸気ブランチ11が連結壁部12を介して気筒列方向に並設されており、厚肉化されたフランジ部13において、シリンダヘッド(図示省略)に複数本のボルトを用いて締結固定される。フランジ部13には、上記のボルトが挿通するボルト孔14が貫通形成されるとともに、各吸気ブランチ11の吸気通路15がヘッド取付面に開口形成されている。なお、符号14Aはボルト締結用の工具との干渉を回避するための干渉回避溝である(図1図5図6参照)。
【0012】
このフランジ部13には、吸気の流動を調整する吸気流動制御弁として、吸気のタンブル流動成分を調整するTCV(タンブルコントロールバルブ)17が取り付けられている。このTCV17は、吸気ブランチ11内の吸気通路15に配設されて、この吸気通路15の一部を開閉する合計4つの弁体18と、これら4つの弁体18を挿通するとともに、インテークマニホールド10のフランジ部13の近傍を気筒列方向に貫通する回転体19と、を有している。回転体19は、インテークマニホールド10のフランジ部13に回転可能に支持されるとともに、断面多角形状(この実施例では四角形状)をなしており、同じく断面多角形状に形成された各弁体18の嵌合孔に嵌合することによって、この回転体19と一体的に各弁体18が回転するように構成されている。
【0013】
回転体19の一方の端部には、アクチュエータとしてのモータ20が取り付けられており、このモータ20により回転体19の回転角度位置を変更することによって、各弁体18が回転し、タンブル流動成分が調整される。このモータ20の動作は図示せぬ制御部によって機関運転状態に応じて制御される。
【0014】
そして、回転体19の他方の端部の近傍に、弁体18の開度に応じた回転体19の回転位置を検出するポジションセンサ22を組付可能な組付構造21が設けられている。このポジションセンサ22により検出された信号は、上記の制御部に入力されて、モータ20のフィードバック制御や吸入空気量制御などの他の制御等に用いられる。
【0015】
次に、図2図6を参照して、本実施例の要部をなすポジションセンサ22の組付構造21について具体的に説明する。
【0016】
図4にも示すように、インテークマニホールド10には、回転体19が挿通する円筒状の中空部23が、回転体19の回転軸24に沿う回転軸方向に延長形成されている。この中空部23は、一方の端部である開口端部25において開口している。
【0017】
この中空部23の開口端部25の近傍には、部分的に大径化したマグネット収容部28が形成されており、このマグネット収容部28に、永久磁石であるマグネット26を保持するマグネット保持部27が回転軸24周りに回転可能に収容配置されている。このマグネット保持部27は、開口端部25側より中空部23内に挿入されて、回転体19の一端に組付けられる。つまり、マグネット保持部27は、内部にマグネット26を収容・保持するとともに、回転体19の一端が嵌合する断面四角形状の嵌合溝29を有しており、この嵌合溝29に回転体19の一端が嵌合することで、回転体19とマグネット保持部27とが回転軸周りに一体的に回転するように構成されている。つまり、回転体19の一端がマグネット保持部27を介してインテークマニホールド10に回転可能に支持されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、インテークマニホールド10には、中空部23の外周部に係止部30が形成されている。この係止部30は、ポジションセンサ22の幅広な基部32が開口端部25側よりスライド可能に嵌合する構造となっており、詳しくは、ポジションセンサ22の基部32を両側から挟み込む断面U字状の一対のガイド片部31を有している。この係止部30にポジションセンサ22の基部32を開口端部25側より挿入し、回転軸方向に沿って所期位置まで押し込んだ状態では、係止部30によって、ポジションセンサ22の回転軸方向を除く全ての方向への移動が規制された状態に保持される。
【0019】
なお、図3にも示すように、ポジションセンサ22の基部32の外表面には凹凸部32Aが設けられている。この凹凸部32Aが適度にガイド片部31の内面と摺接することによって、挿入抵抗の増加を抑制しつつ、ガイド片部31との適度な接触を保って、ポジションセンサ22を安定して係止部30に保持させることができる。
【0020】
ポジションセンサ22は、マグネット26の径方向外方に所定距離を隔てて配置されるホール素子(図示省略)を内蔵しており、このホール素子により回転体19とともに回転するマグネット26の磁束変化を検出することにより、回転体19の回転位置を検出するものである。このポジションセンサ22は、インテークマニホールド10と同様の合成樹脂材料を用いて形成されており、外部機器との接続用コネクタ33が上記の基部32から立ち上がるように設けられている。
【0021】
更に、インテークマニホールド10の中空部23の開口端部25を密閉状態に塞ぐカバー35が設けられている。このカバー35は、インテークマニホールド10と同様の合成樹脂材料により形成された円盤状をなしており、スピン溶着により中空部23の開口端部25の周縁部に接合・固定されることで、中空部23を密封状態に封止するものである。カバー35の表面には、スピン溶着時にカバー35を高速回転させるための治具が嵌合する4つの工具孔36が形成されている。
【0022】
ポジションセンサ22を搭載する仕様の車両の場合には、図5に示すように、マグネット保持部27及びポジションセンサ22を回転軸方向に沿ってインテークマニホールド10に組み付けた状態で、カバー35が中空部23の開口端部25にスピン溶着により接合・固定され、このカバー35によって、マグネット保持部27の回転軸方向の移動が規制されるとともに、ポジションセンサ22の回転軸方向の移動が規制されて、マグネット保持部27及びポジションセンサ22を所定位置に安定的に保持するように構成されている。
【0023】
詳しくは、図4に示すように、カバー35は、中空部23の開口端部25よりも大径に形成されており、回転軸方向視で、このカバー35の外周部分がポジションセンサ22の一部をも覆うように設定されている。この関係で、図2及び図4に示すように、中空部23の開口端部25には、スピン溶着時のカバー35の径方向の移動を規制するように、カバー35の外周を囲う浅い円筒状のガイド壁部37が形成されているが、ポジションセンサ22が嵌合する係止部30では、ガイド壁部37の一部が切り欠かれており、この切り欠かれた部分を埋めるように、ポジションセンサ22の基部32にも、断面扇状をなす補助ガイド壁部37Aが回転軸方向に張り出すように形成されている。そして、ポジションセンサ22を係止部30に嵌合させた状態では、図2にも示すように、中空部23に形成されたガイド壁部37と、ポジションセンサ22に形成された補助ガイド壁部37A、とが周方向に連続する形となり、両者37,37Aがカバー35の外周を全周にわたって囲う形となっている。
【0024】
図4に示すように、互いに溶着されるカバー35の裏面と中空部23の開口端部25の先端面には、両者が所期位置に確実に溶着されるように、互いに嵌合する周方向突起38や周方向溝39等が形成されており、カバー35の周方向突起38の一部が、ポジションセンサ22の補助ガイド壁部37Aの内側に段付形成された平坦な突き当て面40に突き当てられるように設定されている。
【0025】
スピン溶着時には、高速回転するカバー35の裏面に突き当てられた中空部23の開口端部25の先端側が溶融しつつ、カバー35が回転軸方向に沿って図4の左側へ前進し、最終的には、このカバー35の周方向突起38の先端がポジションセンサ22の突き当て面40に突き当てられる。この結果、カバー35が中空部23の開口端部25に溶着されるとともに、カバー35によってポジションセンサ22が回転軸方向に押し付けられた状態に保持され、かつ、カバー35の外周縁部とポジションセンサ22の一部とが溶着された状態となる。一方、マグネット保持部27はカバー35の裏面に僅かな隙間を介して対向し、回転軸方向の移動が規制された状態で、中空部23のマグネット収容部28内に回転可能に保持される。
【0026】
図6は、ポジションセンサ22を搭載しない仕様の車両における組付構造を示している。この場合、ポジションセンサ22を組み付けていないインテークマニホールド10の中空部23の開口端部25に、単にカバー35をスピン溶着により接合することで、中空部23の開口端部25を密封状態に閉塞すれば良い。なお、この例では、回転体19の端部を回転可能に支持するためにマグネット保持部27が組み付けられているが、このマグネット保持部27もポジションセンサ22と同様に省略することもできる。
【0027】
このように本実施例では、非磁性体であるインテークマニホールド10の中空部23の開口端部25にカバー35を接合することによって、このカバー35により開口端部25が密封状態に閉塞されることに加え、このカバー35によってマグネット保持部27及びポジションセンサ22の回転軸24に沿う方向の移動が拘束されることとなり、このカバー35が、マグネット保持部27及びポジションセンサ22をインテークマニホールド10側に安定的に保持・固定する機能を兼用している。従って、カバー35とは別体の固定具を用いてマグネット保持部27やポジションセンサ22をインテークマニホールド10に固定するような構造に比して、部品点数が削減されるとともに構造が簡素化され、小型化・軽量化を図ることができる。
【0028】
また、カバー35がマグネット保持部27やポジションセンサ22とは別体として構成されているために、ポジションセンサ22を用いない仕様の車両の場合にも、単にポジションセンサ22(及びマグネット保持部27)を省略し、ポジションセンサ22を用いる仕様の車両で用いるものと全く同じカバー35によって、中空部23の開口端部25を閉塞することが可能であり、カバー35やインテークマニホールド10に変更を加える必要がない。このようにポジションセンサ22を用いる仕様の車両と、ポジションセンサ22を用いない仕様の車両と、の間で、インテークマニホールド10とカバー35に何ら変更を加えることなく全く同じものを共通して使用することができるために、生産性を著しく向上することができる。
【0029】
以上のように本発明を具体的な実施例に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変形・変更を含むものである。例えば、上記実施例では内燃機関のインテークマニホールドに本発明を適用しているが、これに限らず、回転体の回転位置を検出するポジションセンサを組付可能な様々な非磁性体に本発明を適用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6