特許第5987924号(P5987924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987924
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/06 20150101AFI20160825BHJP
【FI】
   A63B53/06
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-6628(P2015-6628)
(22)【出願日】2015年1月16日
(62)【分割の表示】特願2012-144869(P2012-144869)の分割
【原出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-62837(P2015-62837A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2015年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101188
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 義雄
(72)【発明者】
【氏名】▲つの▼田 幸介
(72)【発明者】
【氏名】柴 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】土田 厚志
【審査官】 大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−081250(JP,A)
【文献】 特開平11−047318(JP,A)
【文献】 米国特許第03064980(US,A)
【文献】 特開平10−305120(JP,A)
【文献】 特開2006−081862(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3148909(JP,U)
【文献】 特開2006−141710(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3158662(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3167727(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00−53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの一端に固定されたスリーブと、
前記スリーブを介してシャフトの一端側を受容するホーゼル部及び、ヒール側に設けられた凹部を有するヘッドと、
前記凹部に位置するとともに前記スリーブの底部にねじ部材で結合された第1錘部材とを備えたゴルフクラブヘッドにおいて、
前記ヘッドは、トウ側に凹部を有するとともに当該凹部にねじ部材で結合された第2錘部材を更に備え、
前記ヒール側の凹部とトウ側の凹部は平行な軸線上に設けられ、
前記第1錘部材及び前記第2錘部材は、互いに輪郭と重さが異なるウエイトと、当該ウエイトを貫通して延びるとともに長さと重さが同一の前記ねじ部材とを有することを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記第1錘部材及び前記第2錘部材は、前記ねじ部材のねじ軸周りにリングを固定することを特徴とする請求項記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフクラブヘッドに係り、更に詳しくは、重心深度、重心高さを変えずに重心距離を変更することのできるゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブヘッドの重心深度、重心高さ、重心距離を含む重心位置は、ゴルフボールを打撃したときの飛距離、弾道の高低、方向等を決定つける要素となる。
【0003】
前記重心深度、重心高さ、重心距離を調整する手段として、例えば、ゴルフクラブヘッドのソール面側に錘部材を配置することのできるゴルフクラブヘッドが提案されている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−69106号公報
【特許文献2】特開2010−136772号公報
【特許文献3】特開2010−148702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3に記載されたゴルフクラブヘッドは、錘部材の取り付け位置がユーザーによって変更することができるように構成されており、これにより、利用者ごとの個性に応じてゴルフクラブヘッドの重心位置を変更することができるようになっている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載されたゴルフクラブヘッドにあっては、錘部材の取り付け位置を変更することで重心深度、重心高さ、重心距離のいずれもが変化するものとなっている。
【0006】
ここで、「重心深度」とは、ヘッドの重心位置と、リーディングエッジとを結ぶ距離、「重心高さ」とは、スイートスポットとリーディングエッジとを結ぶ距離、「重心距離」とは、重心位置と、重心を通ってシャフト軸線に直交する直線との交点とを結ぶ距離について一般的に用いられる。重心深度は慣性モーメントを決定付ける要素となり、また、重心高さは、弾道の高さ(打出角)に影響をもたらす要素とされている。また、重心距離は、重心がトウ寄りか、ヒール寄りかによって、ヘッドの返り易さが相違し、ボールの飛び出し方向に影響を与える要素となる。
従って、例えば、ボールの上下打出角を変えずに、ボールの左右打出角だけを調整したいユーザーの場合、特許文献1〜3に記載されたゴルフクラブヘッドでは、当該ユーザーのニーズに対応したものとはなり得ないこととなる。
【0007】
本発明の目的は、重心深度や重心高さを変えることなく、重心距離だけを調整することのできるゴルフクラブヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、特許請求の範囲記載の構成を採用したものであり、具体的には、
シャフトの一端に固定されたスリーブと、
前記スリーブを介してシャフトの一端側を受容するホーゼル部及び、ヒール側に設けられた凹部を有するヘッドと、
前記凹部に位置するとともに前記スリーブの底部にねじ部材で結合された第1錘部材とを備えたゴルフクラブヘッドにおいて、
前記ヘッドは、トウ側に凹部を有するとともに当該凹部にねじ部材で結合された第2錘部材を更に備え、
前記ヒール側の凹部とトウ側の凹部は平行な軸線上に設けられ、
前記第1錘部材及び前記第2錘部材は、互いに輪郭と重さが異なるウエイトと、当該ウエイトを貫通して延びるとともに長さと重さが同一の前記ねじ部材とを有する、という構成を採っている。
【0010】
また、前記第1錘部材及び前記第2錘部材は、前記ねじ部材のねじ軸周りにリングを固定する構成となっている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1錘部材及び第2錘部材をヒール側及びトウ側に配置することを前提とし、それら錘部材が着脱自在に設けられているため、第1及び第2錘部材の相対的な重量差を変えることができ、重心深度及び高さを維持した状態で、重心距離のみをトウ側やヒール側に変位させることができ、これにより、ヘッドの返りに関する特性を調整してユーザーの個性に応じた調整を行うことが可能となる。
【0012】
更に、錘部材を構成するねじ部材がヘッド側にねじ込み可能に設けられているので、第1及び第2錘部材の着脱を容易に行うことができる。この際、スリーブの底部にねじ部材をねじ込む構成としてスリーブをホーゼル部に引き込むように設けたから、スリーブをヘッド内に安定した状態で確実に固定することができ、すっぽ抜けを生ずるようなおそれはない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)は本実施形態に係るゴルフクラブヘッドをフェース面側から見た図、(B)はスリーブの外観構成図。
図2】前記ゴルフクラブヘッドをソール面側から見た図。
図3】(A)は第1錘部材の平面図、(B)は同正面図、(C)は同底面図。
図4】(A)は第2錘部材の平面図、(B)は同正面図、(C)は同底面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明が、ドライバーと称されるゴルフクラブヘッドに適用された実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
本実施形態におけるゴルフクラブヘッド10は、図1及び図2に示されるように、クラウン面11、サイド面12、ソール面13及びフェース面14を備えた中空に設けられている。クラウン面11のヒール15側からソール面13に向かう内部には筒状のホーゼル部16が一体に設けられ、このホーゼル部16内にスリーブ17を介してシャフトSの一端側(先端側)が受容されている。
【0016】
前記スリーブ17は、図1(B)に示されるように、有底の本体筒20と、当該本体筒20の一端側に位置してホーゼル部16の上端に突き当たる段部21Aを備えたソケット部21と、本体筒20の他端側に連なるとともに内部に雌ねじ23が形成された細筒部22とを備えて構成されている。本体筒20内にはシャフトSの先端側が挿入され、当該シャフトSは接着剤を介してスリーブ17に固定されるようになっている。なお、細筒部22は、ホーゼル部16の底部を形成する段部16Aに突き当たる段部24を介して本体筒20に連設されている。
【0017】
前記ゴルフクラブヘッド10のソール面13の領域内において、ヒール15側及びトウ19側に凹部13A、13Bが形成されており、これら凹部13A、13B内に第1錘部材WA及び第2錘部材WBがそれぞれ配置されている。ここで、凹部13Aは、ホーゼル部16の軸線上に位置しており、凹部13Aに第1錘部材WAを配置したときに、当該第1錘部材WAがシャフトSの軸線上に位置するようになっている。また、第2凹部13Bは、凹部13Aと平行な軸線上に設けられているとともに、その頂部側には、第2錘部材WBをねじ込み固定するためのねじ筒18が形成されている。
【0018】
前記第1及び第2錘部材WA、WBは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、それぞれ重さが異なる複数の錘部材から選択されるようになっている。これら錘部材WA、WBは、ゴルフクラブヘッド10をスクウェアにセットした状態で、ソール接地面Sに対して所定高さH(図1参照)であって、図2に示すように、フェース14面に接する直線L1と平行な直線L2上、すなわちフェース面と平行な同一面内でそれぞれ着脱自在に設けられている。概略的に言えば、第1及び第2錘部材WA、WBは、同一高さ位置でソール面13内のヒール15側及びトウ19側にそれぞれ配置されていることになる。
【0019】
前記第1錘部材WA及び第2錘部材WBは、図3及び図4に示されるように、それぞれ同一のねじ部材25を含む。第1錘部材WAは、ねじ部材25と、当該ねじ部材25が貫通可能に設けられた第1ウエイト26とからなり、第2錘部材WBは、ねじ部材25と当該ねじ部材25が貫通可能に設けられた第2ウエイト27とからなる。本実施形態では、第1ウエイト26がタングステンにより形成されて第1錘部材WAの重さが23gであって、第2ウエイト27はアルミニウムにより形成されて第2錘部材WBの重さが3gに設定されている。ねじ部材25は相互に同一重量のものであるが、第1及び第2ウエイト26、27が種々異なる重さのものを採用することで、重量が異なる多数の錘部材を準備することができる。
【0020】
前記ねじ部材25は、先端側外周に雄ねじ30Aを備えたねじ軸30と、当該ねじ軸30の一端側に位置する頭部31とからなる。また、第1ウエイト26は、図3(B)に示されるように、ねじ部材25の長さの半分程度の長さを有する筒状をなし、小内径部35A及び大内径部35Bからなる貫通孔35の大内径部35Bに頭部31が相対回転可能な状態で位置するようになっている。なお、ねじ軸30周りに抜け止め用のCリング36が固定されている。
また、第2ウエイト27は、外周輪郭が第1ウエイト26と異なるだけで、実質的には、第1ウエイト26と同様に小内径部35A及び大内径部35Bからなる貫通孔35を有し、当該大内径部35Bにねじ部材25の頭部31が位置するようになっている。また、第2錘部材WBのねじ軸30にもCリング36が固定されている。
【0021】
本実施形態におけるゴルフクラブヘッド10は、図1に示されるように、凹部13A、13Bに第1錘部材WA、第2錘部材WBをそれぞれ配置し、第1錘部材WAの雄ねじ30Aをスリーブ17の底部に設けられた雌ねじ部23にねじ込む一方、第2錘部材WBの雄ねじ30Aを凹部13Bのねじ筒18にねじ込むことによって固定される。第1錘部材WAの上記ねじ込みは、スリーブ17をホーゼル部16に引き込むように作用し、スリーブ17をホーゼル部16に強固に固定することができる。
【0022】
次に、本実施形態における重心距離GL(図1参照)を変位させる場合について説明する。
先ず、第1錘部材WAと第2錘部材WBが、同一高さHの直線L上において、フェース面14に接する直線L1と平行な直線L2上の同一面内に位置し、第1錘部材WAが23g、第2錘部材WBが3gとしたときに、ヘッド重心位置は図1中P点にあるとする。
ここで、例えば、第1錘部材WA又は第2錘部材WBを交換し、第1錘部材WAが第2錘部材WBに対して重量差を大きくすることで、重心距離GLをヒール15側に変位(シフト)させることができる。この一方、第1錘部材WAと第2錘部材WBとの重量差を初期重量差よりも小さくすることで、重心距離GLをトウ19側に変位させることができる。
従って、重心距離GLをヒール15側やトウ19側に変位させることで、シャフトSを回転中心としたときのヘッドの戻り、つまり、トウ19の返し易さを変化させることができる。これにより、例えば、トウ19の戻りが遅くなる傾向を欠点としたゴルファーの場合、第2錘部材23を初期設定よりも相対的に更に軽くすることで、欠点を容易に克服することが期待できる。
なお、第1錘部材WA及び第2錘部材WBの総重量を初期設定重量よりも重くした場合、ヘッド全体の質量を上げることにもなるため、同一ヘッドスピードを維持できる限り、飛距離を延長することにも寄与することになる。
【0023】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施例に対し、当業者が様々な変更を加えることができるものである。
【0024】
例えば、前記実施形態における第1錘部材WA、第2錘部材WBの外観形状は図示構成例に限定されるものではなく、所定箇所に着脱自在に設けられている限り、種々の形状、構造を備えたものを採用することができる。また、ウエイト部材の材質もタングステンやアルミニウム以外のものであってもよい。
また、本発明の対象クラブは、ドライバーに限定されるものではなく、フェアウェイウッドやユーティリティにも適用できる他、アイアンゴルフクラブにも適用することを妨げない。
要するに本発明は、重心距離のみを変化させることができる構造である限り、種々の設計変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0025】
10…ゴルフクラブヘッド、13…ソール面、14…フェース面、15…ヒール、16…ホーゼル部、17…スリーブ、19…トウ、25…ねじ部材、26…第1ウエイト、27…第2ウエイト、GL…重心距離、H…高さ、S…ソール接地面、WA…第1錘部材、WB…第2錘部材
図1
図2
図3
図4