(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1個以上の水酸基で置換されたベンゼン環である部分構造を有する化合物、およびジフェニルスルフィド構造を有する化合物からなる群より選択される1種以上の化合物が、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールである請求項1又は2に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書中、「含有する」なる語句は、「から実質的になる」なる語句、及び「からなる」なる語句を包含する。
【0010】
組成物
本発明の組成物は、
1,1−ジブロモエチレン、
1種以上のアミン化合物、及び
(1)水酸基を有する化合物、
(2)スルフィド結合を有する化合物、
(3)チオフェノール性若しくはチオール性の硫黄原子を有する化合物、
(4)亜硫酸化合物、及び
(5)亜硝酸化合物
からなる群より選択される1種以上の化合物
を含有する。
本発明の組成物は、1,1−ジブロモエチレン組成物、すなわち、1,1−ジブロモエチレンを主な成分として含有する組成物である。
本発明の組成物における1,1−ジブロモエチレンの含量は、例えば、50%(w/w)以上、60%(w/w)以上、70%(w/w)以上、80%(w/w)以上、90%(w/w)以上、95%(w/w)以上、96%(w/w)以上、97%(w/w)以上、98%(w/w)以上、又は99%(w/w)以上であることができる。
【0011】
これにより、本発明の組成物は安定である。すなわち、本発明の組成物においては、1,1−ジブロモエチレンの安定性が高い。
【0012】
本発明の組成物が含有するアミン化合物としては、脂肪族第一級アミン、脂肪族第二級アミン、脂肪族第三級アミン、脂環式第二級アミン、脂環式第三級アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、及びポリマー担持アミン化合物等が挙げられる。
【0013】
脂肪族第一級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、及びエチレンジアミンが挙げられる。
脂肪族第二級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、及びジシクロヘキシルアミンが挙げられる。
脂肪族第三級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、及びN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンが挙げられる。
脂環式第二級アミンとしては、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリンが挙げられる。
脂環式第三級アミンとしては、例えば、N−メチルピペラジン、N−メチルピロリジン、5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン−5−エン、及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが挙げられる。
芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ハロアニリン、及びニトロアニリンが挙げられる。
複素環式アミンとしては、例えば、ピリジン、メラミン、ピリミジン、ピペラジン、キノリン、及びイミダゾールが挙げられる。
ポリマー担持アミン化合物としては、例えば、ポリアリルアミン、及びポリビニルピリジンが挙げられる。
【0014】
当該アミン化合物は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
当該アミン化合物は、好ましくは、酸素原子、及び硫黄原子をいずれも含有しない化合物である。
当該アミン化合物は、好ましくは、ピリジン、メラミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、及びトリエチルアミン等から選択される1種以上のアミン化合物である。
【0016】
当該アミン化合物は、より好ましくは、ピリジン、メラミン、及びトリエチルアミン等から選択される1種以上のアミン化合物である。
【0017】
本発明の組成物における、前記1種以上のアミン化合物の量は、1,1-ジブロモエチレンに対して、好ましくは、100〜50000ppm(w/w)の範囲内、より好ましくは、100〜10000ppm(w/w)の範囲内、更に好ましくは、100〜3000ppm(w/w)の範囲内、より更に好ましくは、100〜2000ppm(w/w)の範囲内、特に好ましくは、100〜1500ppm(w/w)の範囲内である。
【0018】
本発明の組成物は、
(1)水酸基を有する化合物、
(2)スルフィド結合を有する化合物、
(3)チオフェノール性若しくはチオール性の硫黄原子を有する化合物、
(4)亜硫酸化合物、及び
(5)亜硝酸化合物
からなる群(本明細書中、当該群は化合物群(C)と称され得る。)より選択される1種以上の化合物(本明細書中、当該化合物を化合物(C)と称する場合がある。)
を含有する。
当該化合物(C)は、好ましくは、安定化剤である。
本明細書中、「安定化剤」は、「重合禁止剤」、「分解防止剤」、又は「重合禁止剤」且つ「分解防止剤」であることができる。
当該化合物(C)は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記「(1)水酸基を有する化合物」としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、及びt−ブタノール等の式:R−OH(当該式中、Rは、例えば、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で表されるアルコール;並びにフェノール、ヒドロキノン、4−メトキシフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、メチルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン(TBH)、p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、tert−ブチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)等の、1個以上の水酸基で置換されたベンゼン環である部分構造を有する化合物(ここで、当該水酸基は、互変異性によりオキソ基(O=)になっていてもよい。当該化合物の炭素数は、好ましくは、6〜20である。)(以下、当該化合物を単にフェノール化合物と称する場合がある。)が挙げられる。
前記「(2)スルフィド結合を有する化合物」としては、例えば、ジアルキルスルフィド(当該2個の「アルキル」の炭素数は、同一又は異なって、好ましくは1〜6である。)、及びジフェニルスルフィド構造を有する化合物(例、ジフェニルスルフィド、及びフェノチアジン等の、フェニルスルフィド構造を有する、炭素数6〜20の、スルフィド結合を有する化合物)が挙げられる。
前記「(3)チオフェノール性若しくはチオール性の硫黄原子を有する化合物」としては、例えば、チオフェノール、ベンゼンジチオール、1,2−エタンジチオール、及び1,3−プロパンジチオール等のR(−SH)
n[当該式中、Rは、例えば、炭素数1〜6のアルカン、又は炭素数6〜12の芳香族炭素環(例、ベンゼン、ジフェニル)を表し;及びnは、例えば、1、又は2の整数を表す。]で表される化合物が挙げられる。
前記「(4)亜硫酸化合物」としては、例えば、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸バリウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸ジメチル、亜硫酸ジエチル、亜硫酸ジアミル、亜硫酸ジプロピル、及び亜硫酸ジイソプロピルが挙げられる。
前記「(5)亜硝酸化合物」としては、例えば、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、
亜硝酸メチル、亜硝酸エチル、亜硝酸アミル、亜硝酸プロピル、及び亜硝酸イソプロピルが挙げられる。
【0019】
当該化合物(C)は、好ましくは、前記「(1)水酸基を有する化合物」であり、より好ましくはフェノール化合物である。
当該化合物(C)の好適な例としては、例えば、ヒドロキノン、4−メトキシフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、メチルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン(TBH)、p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、tert−ブチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、及びフェノチアジン等が挙げられる。
【0020】
当該化合物(C)は、好ましくは、4−メトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、及びフェノチアジン等から選択される1種以上の化合物である。
【0021】
当該化合物(C)は、特に好ましくは、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)である。
【0022】
本発明の好適な一態様においては、本発明の組成物は、
[1]このような好適な化合物(C)の1種以上、及び
所望による、
[2]当該「好適な化合物(C)の1種以上」以外の、
(1)水酸基を有する化合物、
(2)スルフィド結合を有する化合物、
(3)チオフェノール性若しくはチオール性の硫黄原子を有する化合物、
(4)亜硫酸化合物、及び
(5)亜硝酸化合物
からなる群より選択される1種以上の化合物
を含有する組成物
であることができる。
すなわち、本発明の好適な組成物は、例えば、前記「1種以上の化合物(C)」のうちの1種が2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)である組成物であり、当該組成物は、所望により、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)以外の1種以上の化合物(C)を含有する組成物である。
【0023】
本発明の組成物における、前記化合物(C)の含有量は、1,1-ジブロモエチレンに対して、好ましくは、100〜50000ppm(w/w)の範囲内、より好ましくは、100〜10000ppm(w/w)の範囲内、更に好ましくは、100〜3000ppm(w/w)の範囲内、より更に好ましくは、100〜2000ppm(w/w)の範囲内、特に好ましくは、100〜1500ppm(w/w)の範囲内である。
【0024】
本発明の組成物において、前記1種以上のアミン化合物の含有量は、1,1-ジブロモエチレンに対して、好ましくは、100〜50000ppm(w/w)の範囲内、より好ましくは、100〜10000ppm(w/w)の範囲内、更に好ましくは、100〜3000ppm(w/w)の範囲内、より更に好ましくは、100〜2000ppm(w/w)の範囲内、特に好ましくは、100〜1500ppm(w/w)の範囲内であり、且つ前記1種以上の化合物(C)の含有量は、1,1-ジブロモエチレンに対して、好ましくは、100〜50000ppm(w/w)の範囲内、より好ましくは、100〜10000ppm(w/w)の範囲内、更に好ましくは、100〜3000ppm(w/w)、より更に好ましくは、100〜2000ppm(w/w)の範囲内、特に好ましくは、100〜1500ppm(w/w)の範囲内である。
本発明の組成物において、1種以上のアミン化合物の含有量、及び前記1種以上の化合物(C)の含有量の合計は、1,1-ジブロモエチレンに対して、好ましくは、200〜100000ppm(w/w)の範囲内、より好ましくは、200〜20000ppm(w/w)の範囲内、更に好ましくは、200〜6000ppm(w/w)の範囲内である。
【0025】
本発明の組成物の製造方法
本発明の組成物は、例えば、以下に説明する製造方法によって製造できる。
本発明の1,1-ジブロモエチレンの製造方法は、1,1,2-トリブロモエタン、及び/又は1,1,1-トリブロモエタンを、塩基を用いて脱臭化水素して、1,1-ジブロモエチレンを得る工程Bを含む。
工程Bに対して任意の時点、すなわち、工程Bの反応前、反応中、及び反応後の任意の時点で、反応系、又は反応生成物に、(1)1種以上のアミン化合物、並びに(2)前記1種以上の化合物(C)をそれぞれ添加することによって、本発明の組成物を製造できる。
(1)1種以上のアミン化合物、及び(2)1種以上の前記化合物(C)の添加の態様としては、例えば、
工程Bの始めから(これは、「工程Bの反応前」を包含する。)の両方を添加する態様、
工程Bの始めから一方を添加し、工程Bの反応開始後(これは、「工程Bの反応後」を包含する。)に他方を添加する態様、
工程Bの始めから一方を添加し、工程Bの反応開始後に両者を添加する態様(すなわち、前記「一方」については、更に追加する態様)、
工程Bの始めにはいずれも添加せずに、反応終了後に両者を添加する態様、
工程Bの始めにはいずれも添加せずに、反応中に両者を同時に添加する態様、及び
工程Bの始めにはいずれも添加せずに、反応中に両者を別々に添加する態様
が例示される。
【0026】
本発明の組成物の製造方法に用いる1種以上のアミン化合物の量、並びに1種以上の前記化合物(C)の量は、所望する、本発明の組成物組成物におけるこれらの量に応じて決定すればよい。
【0027】
当該1種以上のアミン化合物は、工程Bの反応前、反応中に反応系に添加する場合、工程Bにおける前記塩基として機能できる。
当該1種以上のアミン化合物は、また、後述する安定化剤として機能できる。
【0028】
1,1,2-トリブロモエタン、及び1,1,1-トリブロモエタンは、それぞれ、公知の方法、又はこれに準じた方法により、製造できる。
【0029】
工程Bに用いられる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化マグネシウム等の無機塩基;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、及び炭酸水素ナトリウム等の無機塩基性塩;並びにアミン化合物等の有機塩基が挙げられる。当該アミン化合物の例は、前記で説明した本発明の組成物が含有するアミン化合物の例と同様である。
当該塩基として好ましくは、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア及びトリエチルアミン等が挙げられる。
当該塩基は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。当該組み合わせは、例えば、無機塩基と、後記安定化剤として例示するアミン化合物との組み合わせであってもよい。
当該塩基は、水溶液の形態(例、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水)で用いられてもよい。当該水溶液の水は反応溶媒として機能し得る。
当該塩基の量は、1,1,2-トリブロモエタン、及び1,1,1-トリブロモエタンの合計量に対して、好ましくは、0.9当量〜2.0当量の範囲内、より好ましくは、1.0当量〜1.5当量の範囲内、更に好ましくは、1.0当量〜1.2当量の範囲内である。前述のように、安定化剤として例示するアミン化合物が当該塩基としても機能する場合は、当該アミン化合物も含む塩基の量が、このような量であることが好ましい。
【0030】
工程Bの反応温度の上限は、好ましくは、100℃、より好ましくは、80℃、更に好ましくは、60℃である。
工程Bの反応温度の下限は、好ましくは、0℃、より好ましくは、5℃、更に好ましくは、10℃である。
工程Bの反応温度は、好ましくは、0℃〜100℃の範囲内、より好ましくは、5℃〜80℃の範囲内、更に好ましくは、10℃〜60℃の範囲内である。
【0031】
工程Bの反応時間は、通常、0.5〜40時間の範囲内である。
【0032】
工程Bは、好ましくは、安定化剤の存在下で、実施できる。安定化剤は、工程Bの反応前、及び反応中の任意の時点で反応系に添加できる。
工程Bを、安定化剤の存在下で実施することにより、工程Bの生成物である1,1-ジブロモエチレンの安定性を向上させることができる。
当該安定化剤の一部又は全部は、本発明の組成物が含有する成分としての、
前記1種以上のアミン化合物、並びに/又は前記1種以上の化合物(C)
である安定化剤であることができる。前記安定化剤は、好ましくは、前記「(1)水酸基を有する化合物」であり、より好ましくはフェノール化合物である。
当該製造方法には、前記安定化剤以外の安定化剤もまた用いてもよい。
当該製造方法に用いられる安定化剤として好ましくは、例えば、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチルアミン、4−メトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、及びフェノチアジン等が挙げられる。
当該安定化剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
安定化剤を用いる場合、その量は、1,1,2-トリブロモエタン、及び1,1,1-トリブロモエタンの合計量に対して、好ましくは、100〜50000ppm(w/w)の範囲内、より好ましくは、100〜10000ppm(w/w)の範囲内、更に好ましくは、100〜3000ppm(w/w)の範囲内、より更に好ましくは、100〜2000ppm(w/w)の範囲内、特に好ましくは、100〜1500ppm(w/w)の範囲内である。
【0033】
前述のように、前記安定化剤としてのアミン化合物は、前記塩基としても機能し得るが、工程Bを安定化剤の存在下で実施する場合、好適には、塩基としての無機塩基と、安定化剤としてのアミン化合物とを、組み合わせて用いることが好ましい。但し、ここで、安定化剤としてのアミン化合物が塩基として機能してもよく、一方、塩基としてのアミン化合物が安定化剤として機能してもよい。
【0034】
工程Bの反応は、好ましくは、反応溶媒の存在下で実施される。
当該反応溶媒としては、例えば、水溶性溶媒、及び水、並びにそれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
当該反応溶媒は、好ましくは、水溶性溶媒、又は水溶性溶媒及び水の混合溶媒である。水溶性溶媒及び水の混合溶媒は、水溶性溶媒及び水を含有する混合溶媒であり、これら以外の溶媒を含有していてもよいが、好ましくは、水溶性溶媒及び水から実質的になり、より好ましくは水溶性溶媒及び水のみからなる。当該混合溶媒において、水は前記したように塩基の水溶液に由来してもよい。
当該反応溶媒としての、又は当該反応溶媒における水溶性溶媒としては、例えば、
メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、及びt−ブチルアルコール等のアルコール;
アセトン、及びメチルエチルケトン(MEK)等のケトン;
ジエチルエーテル、及びテトラヒドロフラン(THF)等のエーテル;並びに
酢酸、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルアセトアミド(DMAc)、及び1−メチル−2−ピロリドン(NMP)等
が挙げられる。
当該水溶性溶媒として好ましくは、メタノール、DMF、THF、又はNMPである。
このような溶媒を用いることにより、工程Bで得られる1,1-ジブロモエチレンの精製は、水洗等により、蒸留無しで、簡便に行うことができ、及びこのことにより、1,1-ジブロモエチレンの重合の危険性を低減できる。
当該反応溶媒の量は、1,1,2-トリブロモエタン、及び1,1,1-トリブロモエタンの合計量の1重量部に対して、通常0〜20重量部の範囲内、好ましくは0.1〜15重量部の範囲内、より好ましくは0.1〜10重量部の範囲内である。
工程Bが水の存在下かつ水溶性有機溶媒の不存在下で実施される場合、相関移動触媒を用いることが好ましい。当該水は、前記「反応溶媒」としての水、又は前記塩基の水溶液の水であることができる。
相関移動触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムサルフェート、及びトリオクチルメチルアンモニウムクロリド等の第四級アンモニウム塩;テトラブチルホスホニウムクロリド等の第四級ホスホニウム塩;ドデシルピリジニウムクロリド等のピリジニウム化合物;並びにクラウンエーテル等が挙げられる。
なかでも好ましくは、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、又はテトラブチルアンモニウムブロミドである。
相関移動触媒を用いる場合、その量は、1,1,2-トリブロモエタン、及び1,1,1-トリブロモエタンの合計量に対して、好ましくは、0.01当量〜1当量の範囲内、より好ましくは、0.01当量〜0.5当量の範囲内、更に好ましくは、0.01当量〜0.1当量の範囲内である。
【0035】
工程Bの具体的な実施態様の一例としては、反応器に入れた、1,1,2-トリブロモエタン、及び/又は1,1,1-トリブロモエタン、反応溶媒、及び安定化剤に、塩基の反応溶媒溶液を加える方法が挙げられる。
【0036】
当該製造方法で得られた1,1-ジブロモエチレンは、必要に応じて、慣用の方法により単離又は精製できる。当該方法は、水を加えて分液する等の、前記1種以上のアミン化合物、及び前記1種以上の化合物(C)が、除去されないか、除去されにくい方法が好ましい。
【0037】
工程Bの反応後、生成物に安定化剤を添加してもよい。「工程Bの反応後」とは、1,1-ジブロモエチレンの単離又は精製後であることができる。このように工程Bの反応後に生成物に安定化剤を添加することで、当該生成物の保存安定性を向上させることができる。当該安定化剤としては、前述した、工程Bの反応前、及び反応中の任意の時点(すなわち、工程Bの反応時)に用いられる安定化剤と同様のものが挙げられる。
工程Bの反応時、及び工程Bの反応後の両方で安定化剤を用いる場合、工程Bの反応後に生成物に添加される安定化剤は、工程Bの反応時に用いられる安定化剤と同一であってもよく、異なっていてもよい。
反応性と安定性の観点から、当該工程Bの反応後に用いられる安定化剤は、前記工程Bの反応時に用いられる安定化剤とは異なっていることが好ましい。
同様に、反応性と安定性の観点から、当該工程Bの反応後に用いられる2種以上の安定化剤のうちの少なくとも1種が、前記工程Bの反応時に用いられる安定化剤とは異なっていることも、また、好ましい。
具体的には、本発明の好適な一態様においては、例えば、1種以上のアミン化合物(特に好ましくは、トリエチルアミン)を、工程Bの反応前、又は反応中に反応系に添加し、及び1種以上の化合物(C)(好ましくは、前記「(1)水酸基を有する化合物」、より好ましくは、フェノール化合物、特に好ましくは、BHT)を、工程Bの反応後(好ましくは、1,1-ジブロモエチレンの単離又は精製後)に生成物に添加する。
工程Bの反応後に生成物に添加される安定化剤の量は、1,1-ジブロモエチレンに対して、好ましくは、100〜50000ppm(w/w)の範囲内、より好ましくは、100〜10000ppm(w/w)の範囲内、更に好ましくは、100〜3000ppm(w/w)の範囲内、より更に好ましくは、100〜2000ppm(w/w)の範囲内、特に好ましくは、100〜1500ppm(w/w)の範囲内である。
【0038】
前述のことからも理解されるように、本発明の組成物の製造方法の態様としては、以下の態様が挙げられる。
当該製造方法の好適な一態様においては、工程Bの反応前、及び反応中の任意の時点(すなわち、工程Bの反応時)に反応系に、前記1種以上のアミン化合物、及び前記1種以上の化合物(C)(好ましくは、前記「(1)水酸基を有する化合物」、より好ましくは、フェノール化合物、特に好ましくは、BHT)を添加することによって、本発明の組成物が得られる。当該工程Bの反応系への前記1種以上のアミン化合物、及び前記1種以上の化合物(C)(好ましくは、前記「(1)水酸基を有する化合物」、より好ましくは、フェノール化合物、特に好ましくは、BHT)の添加は、工程Bの反応前であることが好ましい。
工程Bの反応時(好ましくは、工程Bの反応前)に反応系に添加される前記1種以上のアミン化合物の量は、1,1-ジブロモエチレンに対して、好ましくは、100〜50000ppm(w/w)の範囲内、より好ましくは、100〜10000ppm(w/w)の範囲内、更に好ましくは、100〜3000ppm(w/w)の範囲内、より更に好ましくは、100〜2000ppm(w/w)の範囲内、特に好ましくは、100〜1500ppm(w/w)の範囲内である。
工程Bの反応時(好ましくは、工程Bの反応前)に反応系に添加される前記1種以上の化合物(C)(好ましくは、前記「(1)水酸基を有する化合物」、より好ましくは、フェノール化合物、特に好ましくは、BHT)の量は、1,1-ジブロモエチレンに対して、好ましくは、100〜50000ppm(w/w)の範囲内、より好ましくは、100〜10000ppm(w/w)の範囲内、更に好ましくは、100〜3000ppm(w/w)の範囲内、より更に好ましくは、100〜2000ppm(w/w)の範囲内、特に好ましくは、100〜1500ppm(w/w)の範囲内である。
【0039】
当該製造方法の別の好適な一態様においては、工程Bの反応前、及び反応中の任意の時点(すなわち、工程Bの反応時)に反応系に、前記1種以上のアミン化合物を添加し、工程Bの反応後、生成物に前記1種以上の化合物(C)(好ましくは、前記「(1)水酸基を有する化合物」、より好ましくは、フェノール化合物、特に好ましくは、BHT)を添加する。この場合、当該工程Bの反応系へのアミン化合物の添加は、工程Bの反応前であることが好ましい。
工程Bの反応時(好ましくは、工程Bの反応前)に反応系に添加される前記1種以上のアミン化合物の量は、1,1-ジブロモエチレンに対して、好ましくは、100〜50000ppm(w/w)の範囲内、より好ましくは、100〜10000ppm(w/w)の範囲内、更に好ましくは、100〜3000ppm(w/w)の範囲内、より更に好ましくは、100〜2000ppm(w/w)の範囲内、特に好ましくは、100〜1500ppm(w/w)の範囲内である。
工程Bの反応後に生成物に添加される前記1種以上の化合物(C)(好ましくは、前記「(1)水酸基を有する化合物」、より好ましくは、フェノール化合物、特に好ましくは、BHT)の量は、1,1-ジブロモエチレンに対して、好ましくは、100〜50000ppm(w/w)の範囲内、より好ましくは、100〜10000ppm(w/w)の範囲内、更に好ましくは、100〜3000ppm(w/w)の範囲内、より更に好ましくは、100〜2000ppm(w/w)の範囲内、特に好ましくは、100〜1500ppm(w/w)の範囲内である。
【0040】
当該製造方法の更に別の好適な一態様においては、当該工程Bの反応時に反応系に、1種以上のアミン化合物を添加し、工程Bの反応後、生成物に追加の1種以上のアミン化合物、並びに1種以上の化合物(C)(好ましくは、前記「(1)水酸基を有する化合物」、より好ましくは、フェノール化合物、特に好ましくは、BHT)を添加する。この場合、当該工程Bの反応系への前記「1種以上のアミン化合物」の添加は、工程Bの反応前であることが好ましい。
工程Bの反応時(好ましくは、工程Bの反応前)に反応系に添加される前記1種以上のアミン化合物の量は、1,1-ジブロモエチレンに対して、好ましくは、100〜50000ppm(w/w)の範囲内、より好ましくは、100〜10000ppm(w/w)の範囲内、更に好ましくは、100〜3000ppm(w/w)の範囲内、より更に好ましくは、100〜2000ppm(w/w)の範囲内、特に好ましくは、100〜1500ppm(w/w)の範囲内である。
工程Bの反応後に生成物に添加される前記追加の1種以上のアミン化合物の量は、1,1-ジブロモエチレンに対して、好ましくは、100〜50000ppm(w/w)の範囲内、より好ましくは、100〜10000ppm(w/w)の範囲内、更に好ましくは、100〜3000ppmppm(w/w)の範囲内、より更に好ましくは、100〜2000ppm(w/w)の範囲内、特に好ましくは、100〜1500ppm(w/w)の範囲内である。
工程Bの反応後に生成物に添加される前記1種以上の化合物(C)(好ましくは、前記「(1)水酸基を有する化合物」、より好ましくは、フェノール化合物、特に好ましくは、BHT)の量は、1,1-ジブロモエチレンに対して、好ましくは、100〜50000ppm(w/w)の範囲内、より好ましくは、100〜10000ppm(w/w)の範囲内、更に好ましくは、100〜3000ppm(w/w)の範囲内、より更に好ましくは、100〜2000ppm(w/w)の範囲内、特に好ましくは、100〜1500ppm(w/w)の範囲内である。
【0041】
1,1−ジブロモエチレンの安定化方法
本発明の1,1−ジブロモエチレンの安定化方法は、
1,1−ジブロモエチレンを、
1種以上のアミン化合物、及び
1種以上の化合物(C)(好ましくは、前記「(1)水酸基を有する化合物」、より好ましくは、フェノール化合物、特に好ましくは、BHT)
と共存させることを特徴とする。
当該共存は、例えば、前記で説明した本発明の組成物の製造方法と同様にして実施できる。
【0042】
本発明の組成物の使用
本発明の組成物は、従来の1,1−ジブロモエチレンの用途に用いることができる。更に、組成物は、これに含まれる1,1−ジブロモエチレンが安定に維持されるので、従来、1,1−ジブロモエチレンの使用が容易ではなかった用途にも用いることができる。
【0043】
本発明の組成物は、例えば、1,1−ジブロモエチレンをフッ化水素と反応させて1,1−ジブロモ−1−フルオロエタンを得る工程2Aを含む、1,1−ジブロモ−1−フルオロエタンの製造方法に用いることができる。
[工程2A]
工程2Aでは、1,1−ジブロモエチレンをフッ化水素と反応させて1,1−ジブロモ−1−フルオロエタンを得る。
当該1,1−ジブロモエチレンは、本発明の組成物中の1,1−ジブロモエチレンである。
本発明の組成物は、これから前記1種以上のアミン化合物、及び前記1種以上の化合物(C)(好ましくは、前記「(1)水酸基を有する化合物」、より好ましくは、フェノール化合物、特に好ましくは、BHT)を除去せずに、そのまま当該1,1−ジブロモ−1−フルオロエタンの製造方法に好適に用いることができる。
工程2Aの反応は、液相反応、又は気相反応であることができる。
工程2Aの反応は、好ましくは液相反応である。
工程2Aの反応は、溶媒の不存在下、又は存在下で実施できる。工程2Aの反応は、好ましくは、溶媒の不存在下で実施される。
工程2Aの反応を溶媒の存在下で実施する場合、当該溶媒の例は、
アルコール溶媒(例:メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、及びn-BuOH);
ケトン溶媒(例:アセトン、及びメチルエチルケトン(MEK))
エーテル溶媒(例:ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、及び1−メトキシー2−(2−メトキシエトキシ)エタン(Diglyme))、
ハロゲン含有溶媒(例:塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチル、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1−クロロプロパン、2−クロロプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、及び1−クロロペンタン、1,1,2−トリクロロエタン、CH
3CClF
2、CH
3CCl
2F、CF
3CF
2CCl
2H、CF
2ClCF
2CFHCl等のハイドロクロロフルオロアルカン;
CF
2ClCFClCF
2CF
3、CF
3CFClCFClCF
3等のクロロフルオロアルカン;及び
パーフルオロシクロブタン、CF
3CF
2CF
2CF
3、CF
3CF
2CF
2CF
2CF
3、CF
3CF
2CF
2CF
2CF
2CF
3等のパーフルオロアルカン);
炭化水素溶媒(例:n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン);並びに
水
を包含する。
工程2Aの反応を溶媒の存在下で実施する場合、当該溶媒は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
工程2Aは、好ましくは、反応容器としてオートクレーブを用いて実施される。
フッ化水素の量は、本発明の組成物中の1,1−ジブロモエチレン 1モルに対して、通常0.5〜60モルの範囲内、好ましくは3〜50モルの範囲内、より好ましくは5〜40モルの範囲内である。
工程2Aは、通常0〜200℃の範囲内、好ましくは5〜80℃の範囲内、より好ましくは5〜70℃の範囲内の温度で実施される。当該温度は、例えば、前記反応容器の外温を所定の温度に調整することにより、調整され得る。前記反応容器中の内温は、当該外温と、実質的に同じであると考えることができる。
工程2Aの反応時間は、通常1〜40時間の範囲内、好ましくは1〜24時間の範囲内、より好ましくは1〜20時間の範囲内である。
1,1−ジブロモ−1−フルオロエタンは、前記反応時間の経過後に、例えば、冷却により反応系の温度を低下させ、次いで、反応液に水を加え、次いで、分液して、得ることができる。
当該製造方法の好適な一態様においては、冷却後、分液操作により、フッ化水素層と1,1−ジブロモ−1−フルオロエタン層とを分離させて、1,1−ジブロモ−1−フルオロエタンを得るとともに、フッ化水素を回収することもできる。
当該製造方法の別の好適な一態様においては、冷却後、フッ化水素を減圧下にて留去して1,1−ジブロモ−1−フルオロエタンを得るとともに、フッ化水素を回収することもできる。
当該冷却の方法は、例えば、室温で放置することによる冷却、氷水による冷却、チラーによる冷却、又はドライアイスによる冷却であることができる。
得られた1,1−ジブロモ−1−フルオロエタンは、所望により、更に、溶媒抽出、乾燥、濾過、蒸留、濃縮、及びこれらの組み合わせ等の公知の精製方法によって精製することができる。
【0044】
工程2Aに用いられるフッ化水素は、商業的に入手可能である。工程2Aに用いられるフッ化水素は、例えば、無水フッ化水素(すなわち、無水フッ酸)、又はフッ酸(すなわち、フッ化水素水溶液、フッ化水素酸)の形態であることができる。更に、工程2Aに用いられるフッ化水素は、気体の形態であってもよい。気体の形態のフッ化水素は、HF(フッ化水素)、及びHFの重合物の混合物であることができる。
【0045】
工程2Aの反応は、好ましくは、アミン化合物の存在下で行われる。当該アミン化合物の一部又は全部は、本発明の組成物に由来することができる。
当該反応において、前記フッ化水素の一部又は全部は、アミン化合物と複合体を形成していてもよい。
これにより、目的物の収率が向上する。
【0046】
工程2Aで追加する当該アミン化合物の例は、本発明の組成物が含有するアミン化合物の例と同様であることができる。
当該アミン化合物は、好ましくは、本発明の組成物が含有するアミン化合物と同一である。
工程2Aにおけるアミン化合物の量は、フッ化水素に対して、好ましくは、1〜100%(w/w)の範囲内、より好ましくは、1〜50%(w/w)の範囲内、更に好ましくは、1〜30%(w/w)、より更に好ましくは3〜30%(w/w)の範囲内である。
工程2Aにおいては、例えば、
フッ化水素を本発明の組成物に添加してもよく、
アミン化合物とフッ化水素の混合物を本発明の組成物に添加してもよく、
本発明の組成物に、フッ化水素及びアミン化合物をそれぞれ添加してもよく、又は
本発明の組成物に、アミン化合物とフッ化水素の混合物、及びフッ化水素をそれぞれ添加してもよい。当該アミン化合物とフッ化水素の混合物は、アミン化合物とフッ化水素の複合体であることができる。
【0047】
本発明の組成物を、これから前記1種以上のアミン化合物、及び前記1種以上の化合物(C)(好ましくは、前記「(1)水酸基を有する化合物」、より好ましくは、フェノール化合物、特に好ましくは、BHT)を除去せずに、そのまま当該1,1−ジブロモ−1−フルオロエタンの製造方法に用いた場合、当該工程2Aを含む1,1−ジブロモ−1−フルオロエタンの製造方法では、
1,1−ジブロモ−1−フルオロエタン、
前記1種以上のアミン化合物、及び
前記1種以上の化合物(C)(好ましくは、前記「(1)水酸基を有する化合物」、より好ましくは、フェノール化合物、特に好ましくは、BHT)
を含有する組成物が得られる。
【0048】
1,1−ジブロモエチレンをフッ化水素と反応させて1,1−ジブロモ−1−フルオロエタンを得る工程2Aを含む、1,1−ジブロモ−1−フルオロエタンの製造方法によって得られる1,1−ジブロモ−1−フルオロエタンから、公知の方法(例えば、特開平5−331083号公法に記載の方法)により、1-ブロモ-1-フルオロエチレンを合成することができる。
当該1-ブロモ-1-フルオロエチレンを含有する組成物は、メタノール、及びアミドからなる群より選択される1種以上の溶媒を含有することができる。当該組成物は、このような溶媒を含有することにより、当該組成物中の1-ブロモ-1-フルオロエチレンは高い安定性を有することができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
以下の実施例において、ガスクロマトグラィー(GC)は次のGC条件に従って実施した。
<GC条件>
GC装置;SHIMADZU GC−2010
カラム:J&W DB−5MS(0.25μm,60m,0.25mmID)
カラムオーブン:40℃(4分間)→昇温(10℃/分)→300℃(0分間)
気化室温度:200℃
【0051】
製造例B1
反応器に、メタノール(0.3 g)、1,1,2-トリブロモエタン(3.0 g, 11.2 mmol)、Et
3N (5 mg) を加えた。さらに25% 水酸化ナトリウム水溶液(1.97 g, 12.3 mmol)を加えた後、撹拌しながら50℃に昇温した。そのままの温度で20時間撹拌した後、分液し、1,1-ジブロモエチレン(1.68 g, 収率81%, GC area 98.7%)を無色油状物として得た。
【0052】
製造例B2
反応器に、DMF(1 g)、1,1,2-トリブロモエタン(1.0 g, 3.75 mmol)、Et
3N (1 mg) を加えた。水酸化ナトリウム(165.2 mg, 4.13 mmol)を加えた後、撹拌しながら50℃に昇温した。反応終了後、水を加えて分液し、1,1-ジブロモエチレン(GC area 96.5%)を無色油状物として得た。
【0053】
製造例B3
反応器に、THF(1 g)、1,1,2-トリブロモエタン(1.0 g, 3.75 mmol)、Et
3N (1 mg) を加えた。水酸化ナトリウム(165.2 mg, 4.13 mmol)を加えた後、撹拌しながら50℃に昇温した。反応終了後、水を加えて分液し、1,1-ジブロモエチレン(GC area 95.4%)を無色油状物として得た。
【0054】
製造例B4
反応器に、NMP(1 g)、1,1,2-トリブロモエタン(1.0 g, 3.75 mmol)、Et
3N (1 mg) を加えた。水酸化ナトリウム(165.2 mg, 4.13 mmol)を加えた後、撹拌しながら50℃に昇温した。反応終了後、水を加えて分液し、1,1-ジブロモエチレン(GC area 92.4%)を無色油状物として得た。
【0055】
製造例B5
反応器に、メタノール(0.5 g)、1,1,2-トリブロモエタン(5.0 g, 18.7 mmol)、Et
3N (189 mg, 1.87 mmol) を加えた。その混合溶液に50% 水酸化ナトリウム水溶液(1.65 g, 20.6 mmol)を加え、室温で15時間撹拌した。NMR及びGCにより分析し、1,1-ジブロモエチレン(収率94%)を得た。
【0056】
製造例B6
反応器に、メタノール(0.5 g)、1,1,2-トリブロモエタン(5.0 g, 18.7 mmol)、Et
3N (5 mg) を加えた。その混合溶液に50% 水酸化ナトリウム水溶液(1.65 g, 20.6 mmol)を加え、室温で15時間撹拌した。NMR及びGCにより分析し、1,1-ジブロモエチレン(収率91%, GC area 98.8%)を得た。
【0057】
製造例B7
反応器に、テトラメチルアンモニウムクロリド(205.5 mg, 1.875 mmol)、1,1,2-トリブロモエタン(10 g, 37.5 mmol)、Et
3N (10 mg) を加えた。氷冷下、50% 水酸化ナトリウム水溶液(3.3 g, 41.3 mmol)を加えた後、室温で51時間撹拌した後、分液し、1,1-ジブロモエチレン(GC area 56%)を無色油状物として得た。
【0058】
実施例
表1の安定化剤を含む1,1-ジブロモエチレン試験組成物1〜4を作製した。安定化剤の含有量はGCによる検量線法で測定した。
【0059】
【表1】
【0060】
試験例
実施例の試験組成物1〜4、及び参考例の1,1-ジブロモエチレンをそれぞれ窒素雰囲気下、20℃で遮光保存した。
試験組成物1では、1週間経過時点で不溶性の粉は析出していなかったが、
1H-NMR測定での純度が30%低下していた。
試験組成物2、及び3では、4週間経過時点で
1H-NMR測定での純度の低下はほぼ見られず、不溶性の粉末も析出していなかった。
試験組成物4の1,1-ジブロモエチレンでは、数分間で不溶性の粉末が析出した。