特許第5987986号(P5987986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5987986-小物部品の定数供給装置 図000002
  • 特許5987986-小物部品の定数供給装置 図000003
  • 特許5987986-小物部品の定数供給装置 図000004
  • 特許5987986-小物部品の定数供給装置 図000005
  • 特許5987986-小物部品の定数供給装置 図000006
  • 特許5987986-小物部品の定数供給装置 図000007
  • 特許5987986-小物部品の定数供給装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987986
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】小物部品の定数供給装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/14 20060101AFI20160825BHJP
   B65G 47/86 20060101ALI20160825BHJP
   B65G 65/48 20060101ALI20160825BHJP
   B23P 19/00 20060101ALI20160825BHJP
   B23P 19/06 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   B65G47/14 103
   B65G47/86 H
   B65G65/48 A
   B23P19/00 301B
   B23P19/06 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-523905(P2015-523905)
(86)(22)【出願日】2014年4月23日
(86)【国際出願番号】JP2014061400
(87)【国際公開番号】WO2014208187
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2015年6月29日
(31)【優先権主張番号】特願2013-132176(P2013-132176)
(32)【優先日】2013年6月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 英雄
(72)【発明者】
【氏名】星 広美
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−143340(JP,A)
【文献】 特開2012−224460(JP,A)
【文献】 特開平03−172214(JP,A)
【文献】 特開平07−117859(JP,A)
【文献】 実開昭63−067544(JP,U)
【文献】 実開平07−013829(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/14
B23P 19/00
B23P 19/06
B65G 47/86
B65G 65/48
B65G 47/24
H05K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な軸心周りに回転駆動される大径円盤と、
上記大径円盤の一方の側面の少なくとも下半部に近接配置され、小物部品がばら積み状態で収容されるホッパと、
上記大径円盤の一方の側面に臨むように埋設され、当該大径円盤の一方の側面の外周側端部にて上記収容空間内の単一の小物部品を吸着するための第1の磁石と、
上記大径円盤の上部側に軸心が当該大径円盤と平行となるように隣接配置され、回転駆動される小径円盤と、
上記大径円盤と小径円盤との間に架橋的に配置され、大径円盤側の第1の磁石に吸着されている小物部品を分離してこれを受け取る分離シュートと、
上記小径円盤に埋設され、上記分離シュート上にある小物部品を小径円盤の外周面にて吸着するための第2の磁石と、
上記小径円盤に対し分離シュートの反対側に近接配置され、上記小径円盤に吸着されている小物部品を分離してこれを取り出す部品取り出し部と、
上記大径円盤および小径円盤を回転駆動させる回転駆動手段と、
上記部品取り出し部に取り出される小物部品を当該小物部品が小径円盤の外周面に吸着されている状態で検出する検出手段と、
上記回転駆動手段の駆動制御を司っている一方で、上記部品取り出し部に取り出すべき小物部品の数が任意に設定可能であって、且つ上記検出手段の出力に基づいて上記部品取り出し部に取り出された小物部品の数を計数していて、この計数値が設定値となった時点で上記回転駆動手段を停止させる制御手段と、
を備えていて、
上記大径円盤をはさんでその両側にホッパ、分離シュート、小径円盤のそれぞれを左右対称に設け、
上記大径円盤の他方の側面に第1の磁石を一方の側面側のものに対して位相をずらして埋設してあるとともに、
それぞれの小径円盤に埋設される第2の磁石は回転方向での位相位置を互いにずらしてあり、
さらに、上記双方の小径円盤は、共通の部品取り出し部と共通の検出手段をそれぞれに共有していて、
双方の収容空間内の小物部品が大径円盤および双方の小径円盤を経由して共通の部品取り出し部に対し交互に取り出されるようになっている小物部品の定数供給装置。
【請求項2】
上記大径円盤および小径円盤は回転駆動手段により同期回転駆動されるものである請求項1に記載の小物部品の定数供給装置。
【請求項3】
上記大径円盤には、回転方向で180度位相をずらして二つの第1の磁石を配置してある請求項2に記載の小物部品の定数供給装置。
【請求項4】
上記大径円盤の一方の側面のうち上記第1の磁石よりも大径円盤の軸心寄りの位置に撹拌用磁石を埋設してあり、
上記大径円盤の回転時に、ホッパ内にばら積み状態で収容されている小物部品を撹拌用磁石の吸着力により撹拌するようになっている請求項3に記載の小物部品の定数供給装置。
【請求項5】
上記大径円盤の他方の側面に第1の磁石と撹拌用磁石とを一方の側面側のものに対して位相をずらして埋設してあるとともに、
上記共通の検出手段が非接触式センサである請求項4に記載の小物部品の定数供給装置。
【請求項6】
一方の小径円盤側の第2の磁石と他方の小径円盤側の第2の磁石とは回転方向で互いに180度位相をずらしてある請求項5に記載の小物部品の定数供給装置。
【請求項7】
上記一対の小径円盤が共有する軸と大径円盤外周面との間に巻掛伝達手段を巻き掛けて、この巻掛伝達手段を介して回転駆動手段により上記大径円盤と一対の小径円盤とを同期回転駆動させるようになっている請求項5に記載の小物部品の定数供給装置。
【請求項8】
上記各ホッパは略四分球状のものであって、上記大径円盤の軸心方向からの投影輪郭形状が大径円盤の投影輪郭形状とほぼ一致している請求項7に記載の小物部品の定数供給装置。
【請求項9】
上記小物部品がボルトである請求項1〜8のいずれか一つに記載の小物部品の定数供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばボルト・ナットに代表されるようなばら積み状態の小物部品を必要な所定数(定数または定量)だけ計数して所定位置の部品取り出し部に取り出す定数供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の小物部品の定数供給装置として特許文献1,2に記載されたものや特許文献3に記載されたものがある。これらの従来の定数供給装置では、いずれもボルト・ナット等の小物部品がばら積み状態で収容されているホッパのなかに、側面に磁石が埋設された回転円板が位置していて、回転円板の回転により磁石で一つの小物部品を吸着支持して持ち上げた上で、回転円板の回転方向に並設されている複数のガイド板等に小物部品を当接させることによりその小物部品の数や向きを徐々に規制し、最終のガイド板により磁石から小物部品を強制的に分離させて所定の送路に取り出すようになっている。
【0003】
しかしながら、特許文献1〜3に記載された従来の定数供給装置では、原則として、磁石による一回の小物部品の吸着と、ガイド板等による複数回の規制・分離作用とによって、一つの小物部品を取り出すようにしているため、一つの小物部品を確実に取り出すためにはガイド板等の形状や位置の決定までに試行錯誤を繰り返す必要があるほか、時として二つの小物部品が同時に取り出されてしまうことがある。その結果、設備の正規立ち上げまでのトライアルに長時間を要するとともに、小物部品の定数取り出しの信頼性向上の上でなおも改善の余地を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7−13829号公報
【特許文献2】特開平7−117859号公報
【特許文献3】実開昭63−67544号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、複数のガイド板等を用いることなく、小物部品の定数取り出しの信頼性向上を図った定数供給装置を提供するものである。
【0006】
本発明の定数供給装置は、回転式の大径円盤の一方の側面にある第1の磁石で吸着した小物部品を上方に持ち上げたならば、その大径円盤に近接する分離シュートにて小物部品を第1の磁石から分離して、当該分離シュートに移し替える。この分離シュートの近傍には大径円盤とともに回転する小径円盤が位置していることから、その小径円盤の外周面に当該小径円盤に埋設されている第2の磁石の吸着力にてガイド部材上の小物部品を吸着する。さらに、小径円盤の分離シュートの反対側には部品取り出し部が位置していることから、小径円盤側の小物部品を部品取り出し部にて分離して、部品取り出し部側に小物部品を移し替える。そして、小径円盤に吸着されている小物部品が分離シュート側から部品取り出し部側に移動する過程で、小物部品の存在、すなわち部品取り出し部側に移し替えられた小物部品の数を検出手段にて検出するものとした。
【0007】
本発明によれば、大径円盤側の第1の磁石で吸着した小物部品を分離シュートで一旦分離し、さらに小径円盤側の第2の磁石に吸着し直した上で部品取り出し部側に取り出すようにしたことにより、従来のように磁石で吸着した小物部品を複数のガイド板にて繰り返し規制する場合と比べていわゆる二個取りを排除でき、小物部品の定数取り出しの際の個数の信頼性が向上するほか、設備の正規立ち上げまでのトライアルに要する時間を大幅に短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る定数供給装置の第1の実施の形態を示す正面説明図。
図2図1に示した定数供給装置の左側面説明図。
図3図1,2に示したホッパと大径円盤との関係を示す斜視図。
図4図1,2に示した大径円盤、分離シュート、小径円盤、ガイドシュートおよび部品取り出し皿との相互関係を示す説明図。
図5図4に示した分離シュート、小径円盤、ガイドシュートおよび部品取り出し皿との相互関係を示す要部斜視図。
図6】本発明に係る定数供給装置の第2の実施の形態を示す側面説明図。
図7図6の部品取り出し皿に代わる部品取り出しボックスの構造を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜5は本発明に係る定数供給装置を実施するためのより具体的な形態を示し、図1は装置全体の正面説明図を、図2図1の左側面説明図をそれぞれ示している。さらに、図3〜5は図1,2の要部の詳細を示している。
【0010】
ここでは、例えば自動車の組立ラインのラインサイドに定数供給装置が用意されていて、作業者が特定車種の車体に対し所定の仕様の内装部品等を組み付けるのに必要な個数のワッシャ付きのボルト(内装部品の仕様毎に組み付けに必要なボルトの数が異なる。)を例えば1〜10個程度の範囲内(個数は任意に設定可能)で定数(定量)供給する場合の例を示している。
【0011】
図1,2のほか図3に示すように、底板1の上に左右で対をなす側板2が互いに平行に立設されており、これらの側板2,2同士の間に大径円盤3とともに略四分球状の一対のホッパ4が配置されている。大径円盤3はシャフト5を介して一対の側板2に回転可能に両持ち支持されていて、その両側に一対のホッパ4が左右対称に近接配置されている。これにより、図3,4に示すように、各ホッパ4は大径円盤3とともに、定数供給の対象となる小物部品としての多数のワッシャ付きのボルト(以下、単にボルトという。)P,P‥の収容空間を形成している。
【0012】
これらの大径円盤3とホッパ4とはその直径がほぼ一致していて、図2,4の側面視において両者の輪郭は相互にほぼ一致しているとともに、各ホッパ4の上面開口部はシャフト5よりも上方側に位置している。そして、図3,4に示すように、双方のホッパ4の収容空間に多数のボルトP,P‥がばら積み状で収容・貯蔵される。
【0013】
大径円盤3は例えば軽金属製のもので、ボルトP,P‥と接触することになる両側面には図示外の樹脂シートを貼着してある。また、大径円盤3は後述するコグベルト(歯付きベルト)14のためのプーリを兼ねていて、大径円盤3の外周面には図示外の多数の歯が形成されている。大径円盤3の一方の側面の外周側端部には180度位相にて一対の例えば短円筒状のマグネット(永久磁石)6aを第1の磁石として埋設してあり、同様に他方の側面の外周側端部には、一方の側面側のものに対し90度位相をずらすかたちで同じく180度位相にて一対のマグネット6bを第1の磁石として埋設してある。これらのマグネット6a,6bは大径円盤3のそれぞれの側面と同一平面をなすように該当する側面に露出している。各マグネット6a,6bは一つのボルトPを吸着支持するのに適した大きさおよび磁力のものが採用され、例えばボルトPの大きさや重量に応じて交換可能なように着脱可能となっている。したがって、図3,4に示すように、大径円盤3が回転すれば各マグネット6aまたは6bに一つのボルトPが吸着支持されて、一方の側面と他方の側面とで交互に回転方向上方側に持ち上げられることになる。
【0014】
ここで、大径円盤3の両側において、ボルト吸着用のマグネット6a,6bよりも中心寄りの位置にそれぞれに撹拌用マグネット(撹拌用永久磁石)7を埋設してある。これらの撹拌用マグネット7はボルトPを吸着して持ち上げることを意図したものではなく、ホッパ4の収容空間内での各ボルトPの撹拌作用、すなわち各ボルトPの姿勢や向きのランダム化を意図して配置してある。言い換えるならば、撹拌用マグネット7は、複数のワッシャ付きボルトPのワッシャやねじ部同士が絡み合ったまま比較的大きなボルト塊となって、ボルト吸着用のマグネット6aまたは6bにてボルトPを吸着できなくなる事態を防止するものである。
【0015】
大径円盤3の上部側にはその軸心が大径円盤3と平行となるように一対の小径円盤8a,8bが隣接配置される。これらの小径円盤8a,8bは、図1,2のほか図5に示すように、小径のプーリ9とともにシャフト(軸)10に同軸一体に固定されていて、シャフト10は側板2から延設した図示外のステーに回転可能に両持ち支持されている。つまり、図1,5の正面視では大径円盤3をはさんでその両側に小径円盤8a,8bが配置されている。また、大径円盤3の上部両側面と各小径円盤8a,8bとの間には、後述するように大径円盤3側のマグネット6a,6bからのボルトPの引き離し機能を備えた例えば変形樋状の反らせ板方式の分離シュート11a,11bが架橋的に配設されている。この分離シュート11a,11bは大径円盤3側のマグネット6a,6bの回転軌跡上に位置していて、且つ各小径円盤8a,8b側に向かって下り勾配で傾斜している。これにより、図4に示すように、大径円盤3側の一方の側面のマグネット6aまたは6bに吸着支持されたボルトPが分離シュート11aまたは11bを通過すると、ボルトPはマグネット6aまたは6bから引き離されて分離シュート11aまたは11bに乗り移り、その分離シュート11aまたは11b上を小径円盤8a,8bに向かって自重にてわずかに滑り落ちることになる。
【0016】
図1,2に示した底板1上には回転駆動手段としての減速機付きモータ12が配置されていて、そのモータ軸側のドライブプーリ13と小径円盤8a,8b側のプーリ9および大径円盤3との間に巻掛伝達手段としてのコグベルト14が巻き掛けられている。これにより、モータ12の起動により、大径円盤3と小径円盤8a,8bとは両者の直径の比で決まる所定の速比で同期回転することになる。なお、モータ12は、ボルトPの定数取り出しのタクトタイム調整に対応するために可変速式のものが望ましい。
【0017】
図1,2のほか図4,5に示すように、それぞれの小径円盤8a,8bの外周縁部には棒状のマグネット(永久磁石)15を小径円盤8a,8bの厚み方向に貫通するように第2の磁石として埋設してある。これらのマグネット15は、一方の小径円盤8aと他方の小径円盤8bとでその回転方向位相位置を180度ずらしてある。そして、先に述べたように、大径円盤3側から分離シュート11a,11b側にボルトPが乗り移ると、それよりわずかに遅れて分離シュート11a,11b上のボルトPの直近位置を小径円盤8a,8b側のマグネット15が通過するように、大径円盤3と小径円盤8a,8bとの速比を予め設定してあることから、分離シュート11aまたは11b上のボルトPの直近位置を小径円盤8a,8b側のマグネット15が通過した時点で、その分離シュート11aまたは11b側のボルトPが小径円盤8aまたは8b側の外周面にマグネット15にて吸着支持されることになる。つまり、分離シュート11aまたは11bから小径円盤8aまたは8b側へのボルトPの乗り移りが一方の小径円盤8a側と他方の小径円盤8b側とで交互に繰り返されることになる。
【0018】
一対の小径円盤8a,8bの分離シュート11a,11bの反対側には、部品取り出し部としての取り出し皿17とともにボルトPの取り出し走路となるガイドシュート16を配置してあり、いずれも底板1または側板2から延設した図示外のステーに固定支持されている。これらの取り出し皿17およびガイドシュート16は双方の小径円盤8a,8bが共有していて、ガイドシュート16はその上端部が双方の小径円盤8a,8bに近接しつつ取り出し皿17に向かって下り勾配で傾斜している。取り出し皿17は例えば円形深皿状のものであり、最終的にその取り出し皿17に定数供給された複数個のボルトPを作業者の片手一回の掴み動作で掴むことができるように形状が考慮されている。そして、小径円盤8a,8bの外周面に吸着支持されているボルトPがガイドシュート16の上端部を通過すると、小径円盤8a,8b側のボルトPが引き離されて、そのガイドシュート16から取り出し皿17へと滑り落ちるようにして取り出されることになる。このような動作は、双方の小径円盤8a,8bにて交互に繰り返されることになる。
【0019】
このように、本実施の形態では、図1,3および図5に示すように、共通の大径円盤3の両側にホッパ4が左右対称に配置されているとともに、大径円盤3とともにガイドシュート16および取り出し皿17を共有しながらも、その大径円盤3の両側に左右で独立した分離シュート11a,11bおよび小径円盤8a,8bが左右対称に配置されていることになる。なお、本実施の形態では、ガイドシュート16と取り出し皿17とを別体のものとしているが、必要に応じて両者を一体のものとして形成しても良い。
【0020】
図1,2のほか図4,5に示すように、一対の小径円盤8a,8bの上部側近傍には、非接触式の検出手段として投光部18aと受光部18bとからなる透過式の光電センサ18を設けてあるとともに、取り出し皿17の近傍には定数取り出し完了ランプ19のほかリミットスイッチ等のリセットスイッチ20を設けてある。そして、取り出し皿17に取り出すべきボルトの定数(個数)は後述するコントローラ21側にて設定値として予め設定されることから、双方の小径円盤8a,8bの外周面に吸着支持されているボルトPが光電センサ18の光軸を通過する毎に、その都度一個のボルトPが取り出し皿17に取り出されたものとして検出されるようになっている。同時に、取り出し皿17に取り出されたボルトPの数が設定値となると、モータ12による大径円盤3および小径円盤8a,8bの回転駆動が直ちに停止され、同時に先に述べた定数取り出し完了ランプ19が点灯することになる。
【0021】
図1,2において、21は上記構成からなる定数供給装置の全体の制御、特にモータ12の起動制御を司っている制御手段としてのコントローラであり、上記光電センサ18、定数取り出し完了ランプ19およびリセットスイッチ20もコントローラ21に接続される。なお、コントローラ21の上位には部品指示装置22があり、さらに部品指示装置22の上位には上位生産管理装置がある。
【0022】
次に、上記のように構成された定数供給装置の一連の動きについて説明する。
【0023】
図1,2に示すように、コントローラ21からの指令によりモータ12が起動すると、大径円盤3と小径円盤8a,8bとが所定の速比で連続的に同期回転し、後述するように大径円盤3から小径円盤8a,8bを経て部品取り出し皿17側にボルトPが一個ずつ供給され、その部品取り出し皿17側に取り出されたボルトPの数が定数(設定値)となった時点で、直ちにモータ12による大径円盤3と小径円盤8a,8bとの同期回転が停止することになる。
【0024】
ここで、自動車の組立ライン上の特定ステージにて、特定車種の車体に対して例えば特定の内装部品を組み付ける場合、その内装部品の仕様毎に部品組み付けに必要なボルトの数が異なるものとすると、上位生産管理装置23からの車種情報と内装部品の仕様情報とに基づいて、部品指示装置22からコントローラ21に対して内装部品の組み付けに必要なボルトPの数に関する情報が付与され、ボルト数の設定値(定数)がコントローラ21にセットされる。このボルト数設定値のセットを受けてコントローラ21は上記のようにモータ12を起動して、大径円盤3と小径円盤8a,8bとを所定の速比で連続的に同期回転させることになる。
【0025】
図1,2のほか図3,4に示すように、二つのホッパ4,4の中央部に位置する大径円盤3が回転すると、左右のホッパ4,4内にある一つのボルトPがマグネット6aまたは6bに吸着支持されて回転方向上方に持ち上げられることになる。続いて、図4,5に示すように、マグネット6aまたは6bに吸着支持されたボルトPが分離シュート11aまたは11bの位置に到達すると、ボルトPは分離シュート11aまたは11bによりマグネット6aまたは6bから掻き落とされるかたちで引き離されて、その分離シュート11aまたは11b側に乗り移るかたちとなる。
【0026】
この場合において、大径円盤3側のマグネット6a,6bの直径および磁力を適宜選定することにより、単一のマグネット6aまたは6bに対して複数のボルトPが同時に吸着されるのを抑制することができる。また、仮に単一のマグネット6aまたは6bに二つのボルトPが吸着されたとしても、分離シュート11aまたは11bを通過する際に一つのボルトPが強制排除されてホッパ4内に落下してしまうことになる。さらに、万が一、分離シュート11aまたは11b側に二つのボルトPが乗り移ってしまったとしても、その分離シュート11aまたは11上bにおいて二つのボルトPが軸心方向で直列となるように規制すれば、後述する小径円盤8a,8b側へのボルトPの吸着の際に、二つのボルトPが同時に吸着されてしまうことはない。
【0027】
図4に示すように、分離シュート11aまたは11b側にボルトPが乗り移ると、分離シュート11aまたは11bに乗り移ったボルトPは自重にて小径円盤8aまたは8b側に近付き、それより遅れて当該ボルトPの近くを通過する小径円盤8aまたは8b側のマグネット15によって小径円盤8aまたは8bの外周面に吸着支持されることになる。すなわち、大径円盤3側のマグネット6aまたは6bから分離シュート11aまたは11b側にボルトPが移載されたタイミングよりも遅れて、その分離シュート11aまたは11b側のボルトPの近くを小径円盤8aまたは8b側のマグネット15が通過するように、大径円盤3と小径円盤8a,8bとの回転比(速比)が予め設定されている。
【0028】
さらに、図4,5に示すように、小径円盤8aまたは8bの外周面に吸着支持されたボルトPがその小径円盤8aまたは8bの回転によりガイドシュート16側まで移動すると、小径円盤8aまたは8b側のボルトPはガイドシュート16で掻き落とされるようにして強制的に引き離される。これにより、それまで小径円盤8aまたは8bに吸着されていたボルトPはガイドシュート16上を自重にて転がり落ちて、最終的には部品取り出し皿17に取り出される。
【0029】
ここで、図5の左側の小径円盤8aに吸着されているボルトPにて例示するように、小径円盤8aまたは8bに吸着されているボルトPがガイドシュート16にて掻き落とされる前に、双方の小径円盤8a,8bが共有している光電センサ18の光軸位置を通過して、瞬間的に光電センサ18の光軸を遮ることになる。これにより、部品取り出し皿17側に一つのボルトPが取り出されたものとみなされ、その光電センサ18の検出出力に基づいて、コントローラ21側では部品取り出し皿17側に取り出されたボルトPの数をカウント(計数)し、そのカウント値が設定値になるまで保持しつつその都度更新する。なお、光電センサ18に代えて、小径円盤8a,8bの外周面上にボルトPを吸着しているマグネット15の磁力を感知するセンサを用いても良い。
【0030】
また、大径円盤3の一方の側面には180度位相で二つのマグネット6aが装着されていて、大径円盤3の他方の側面には、一方側のマグネット6aに対して90度位相がずれたかたちで同様に180度位相で二つのマグネット6bが装着されていることは先に述べたとおりである。
【0031】
したがって、上記のような大径円盤3と小径円盤8a,8bとの連続的な同期回転中において、大径円盤3側のマグネット6aまたは6bから分離シュート11aまたは11bへのボルトPの乗り移り動作と、分離シュート11aまたは11b側から小径円盤8aまたは8b側へのボルトPの乗り移り動作、さらには小径円盤8aまたは8b側からガイドシュート16へのボルトPの乗り移り動作とが、一方の小径円盤8a側と他方の小径円盤8b側とで交互に繰り返されて、結果として部品取り出し皿17側への一つずつのボルトPの取り出しが間歇的に行われることになる。
【0032】
また、先に述べたように、大径円盤3の両側にそれぞれに撹拌用マグネット7を装着してあるので、大径円盤3の回転に伴いホッパ4内に収容されているボルトPが撹拌され、ボルトPに付帯するワッシャやねじ部同士が絡み合ったまま比較的大きなボルト塊となってしまうことがなく、安定して一つずつボルトPを取り出すことが可能となる。
【0033】
この後、部品取り出し皿17側に設定数分のボルトPが取り出されると、コントローラ21側でのボルトPのカウント数が設定値となったことにほかならず、コントローラ21は直ちにモータ12による大径円盤3および小径円盤8a,8bの回転を停止させるとともに、先に述べた定数取り出し完了ランプ19を点灯させる。このような大径円盤3および小径円盤8a,8bの回転停止中においては、大径円盤3側のマグネット6a,6bでボルトPを吸着して持ち上げたままとなったり、あるいは分離シュート11a,11b上のボルトPが待機したままとなることがあるが、何ら問題とはならない。また、定数取り出し完了ランプ19の点灯は部品取り出し皿17内のボルトPが取り出されるまで継続される。
【0034】
そして、作業者が定数取り出し完了ランプ19の点灯を目視確認した上で、部品取り出し皿17にあるボルトPを全て取り出し、確認の意味でリセットスイッチ20を押してON動作させる。このリセットスイッチ20からの信号を受けて、初めて定数取り出し完了ランプ19が消灯するとともに、コントローラ21側でのそれまでのボルトPの数の設定値とカウント値(計数値)とがリセット(クリア)される。その上で、先に述べたボルト数設定値のセットを始期とする一連の動作が繰り返されることになる。
【0035】
このように本実施の形態の定数供給装置によれば、大径円盤3側のマグネット6a,6bによるボルトPの吸着のほか、大径円盤3側のマグネット6a,6bから分離シュート11a,11bへのボルトPの乗り移り動作と、分離シュート11a,11b側から小径円盤8a,8b側へのボルトPの乗り移り動作、さらには小径円盤8a,8b側からガイドシュート16へのボルトPの乗り移り動作とを、一方の小径円盤8a側と他方の小径円盤8b側とで交互に繰り返すようにしたので、いわゆるボルトPの二個切り出し等を排除してボルトPの一個切り出しの数の信頼性が向上し、結果として定数供給装置としてのボルトPの取り出し個数の信頼性が大幅に向上する。
【0036】
また、大径円盤3に撹拌用マグネット7を設けてあるので、ボルトPに付帯するワッシャやねじ部同士が絡み合ったまま比較的大きなボルト塊となってしまうことがなく、安定して一つずつボルトPを取り出すことが可能となる。
【0037】
さらに、側面視にて四分球状のホッパ4と大径円盤3の輪郭とをほぼ一致させてあるとともに、大径円盤3の側面の外周側端部にマグネット6a,6bを設けてあるので、ホッパ4の収容空間内のボルトPが少なくなっても、その収容空間内のボルトPは大径円盤3側のマグネット6a,6bに近付くように滑り落ちることになり、結果として仮にホッパ4内のボルトPが一本だけになってもマグネット6a,6bにて確実に吸着することができる。
【0038】
さらにまた、大径円盤3の両側でボルトPの取り出しが180度位相で交互に行われるので、ボルトPの定数取り出しのためのタクトタイムが短く、効率的なボルトPの定数取り出しを行えるほか、台形円盤3と小径円盤8a,8bとの同期回転に巻掛伝達手段としてコグベルト14を採用しているので、両者の同期が機械的に安定して行われる利点がある。
【0039】
図6は本発明に係る定数供給装置の第2の実施の形態を示し、図2と共通する部分には同一符号を付してある。
【0040】
本実施の形態では、図6図2とを比較すると明らかなように、図2の底板1に代えてボックス状の架台31を用意し、その架台31の中にモータ12とともにコントローラ21を収容配置したものである。
【0041】
この場合において、図6の部品取り出し皿17に代えて、図7のようなシャッター式の取り出しボックス24を採用することもできる。この取り出しボックス24は、同図(A)に示すように、底部24aが前方側に向かって下り勾配で傾斜しているとともに、下部が開口部24bにて開口している前面側に、開口部25aを有するシャッタープレート25を配置したものである。そして、ボルトPが定数になるまで内部に溜め込み、シャッタープレート25の開口部25a以外の部分で、溜め込んだボルトPの落下を防止していて、作業者が内部のボルトPを取り出す際には、同図(B)に示すように、シャッタープレート25を押し上げ、双方の開口部24b,25a合致させることで当該開口部24b,25aを通して内部のボルトPを転がり落とすようにして取り出すものとする。
【0042】
ここで、シャッタープレート25の上昇動作にて図4,5に示したリセットスイッチ20を押圧操作するように構成すると、より好ましいものとなる。
【0043】
なお、上記実施の形態においては、定数供給の対象となる小物部品としてワッシャ付きボルトPを例示しているが、定数供給の対象となる小物部品はボルトの類に限定されるものではなく、軸状部品や段付き軸状部品のほかワッシャ等の小物部品であっても良い。ただし、定数供給すべき部品の大きさや形状等に応じてマグネット6a,6bおよび15の形状や磁力の大きさ、さらには分離シュート11a,11bの形状を適宜選定することが望ましい。
【0044】
また、上記実施の形態においては、大径円盤3と小径円盤8a,8bとがコグベルト14を介して同期回転駆動される場合の例を示しているが、本発明はこれに限らず、小物部品の受け渡し時に大径円盤3と小径円盤8a,8bとが共に回転していれば良く、各々が同期せずに独立して回転している場合も含むものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7