(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記不使用相が、前記複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子または同相の2つのスイッチング素子が開放故障している相である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るモータ制御装置が適用された、電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
電動パワーステアリング装置1は、車両を操向するための操舵部材としてのステアリングホイール2と、このステアリングホイール2の回転に連動して転舵輪3を転舵する転舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。ステアリングホイール2と転舵機構4とは、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して機械的に連結されている。
【0012】
ステアリングシャフト6は、ステアリングホイール2に連結された入力軸8と、中間軸7に連結された出力軸9とを含む。入力軸8と出力軸9とは、トーションバー10を介して同一軸線上で相対回転可能に連結されている。
ステアリングシャフト6の周囲には、トルクセンサ11が配置されている。トルクセンサ11は、入力軸8および出力軸9の相対回転変位量に基づいて、ステアリングホイール2に与えられた操舵トルクTを検出する。この実施形態では、トルクセンサ11の出力信号は、ステアリングホイール2が左方向(正転方向)に操舵された場合には、零以上の値となり、ステアリングホイール2に加えられた操舵トルクが大きいほど大きくなるように変化する。また、トルクセンサ11の出力信号は、ステアリングホイール2が右方向(逆転方向)に操舵された場合には、零未満の値となり、ステアリングホイール2に加えられた操舵トルクが大きいほど小さくなるように変化する。
【0013】
転舵機構4は、ピニオン軸13と、転舵軸としてのラック軸14とを含むラックアンドピニオン機構からなる。ラック軸14の各端部には、タイロッド15およびナックルアーム(図示略)を介して転舵輪3が連結されている。ピニオン軸13は、中間軸7に連結されている。ピニオン軸13は、ステアリングホイール2の操舵に連動して回転するようになっている。ピニオン軸13の先端には、ピニオン16が連結されている。
【0014】
ラック軸14は、自動車の左右方向に沿って直線状にのびている。ラック軸14の軸方向の中間部には、ピニオン16に噛み合うラック17が形成されている。このピニオン16およびラック17によって、ピニオン軸13の回転がラック軸14の軸方向移動に変換される。ラック軸14を軸方向に移動させることによって、転舵輪3を転舵することができる。
【0015】
ステアリングホイール2が操舵(回転)されると、この回転が、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して、ピニオン軸13に伝達される。そして、ピニオン軸13の回転は、ピニオン16およびラック17によって、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。
操舵補助機構5は、操舵補助用の電動モータ18と、電動モータ18の出力トルクを転舵機構4に伝達するための減速機構19とを含む。電動モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスモータからなる。電動モータ18の近傍には、電動モータ18のロータの回転角(電気角)を検出するための、例えばレゾルバからなる回転角センサ23が配置されている。減速機構19は、ウォーム軸20と、このウォーム軸20と噛み合うウォームホイール21とを含むウォームギア機構からなる。減速機構19は、伝達機構ハウジングとしてのギヤハウジング22内に収容されている。
【0016】
ウォーム軸20は、電動モータ18によって回転駆動される。また、ウォームホイール21は、ステアリングシャフト6とは同方向に回転可能に連結されている。ウォームホイール21は、ウォーム軸20によって回転駆動される。
電動モータ18によってウォーム軸20が回転駆動されると、ウォームホイール21が回転駆動され、ステアリングシャフト6が回転する。そして、ステアリングシャフト6の回転は、中間軸7を介してピニオン軸13に伝達される。ピニオン軸13の回転は、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。すなわち、電動モータ18によってウォーム軸2を回転駆動することによって、転舵輪3が転舵されるようになっている。
【0017】
電動モータ18は、モータ制御装置としてのECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)12によって制御される。ECU12には、トルクセンサ11の出力信号、回転角センサ23の出力信号、車速センサ24の出力信号等が入力されている。ECU12は、トルクセンサ11によって検出される操舵トルク、車速センサ24によって検出される車速等に基いて、電動モータ18を制御する。
【0018】
図2は、モータ制御装置としてのECU12の電気的構成を示す概略図である。
ECU12は、電動モータ18の駆動電力を生成する駆動回路30と、駆動回路30を制御するための制御部40とを備えている。制御部40は、CPUとこのCPUの動作プログラム等を記憶したメモリとを含むマイクロコンピュータで構成されている。
電動モータ18は、
図3に示すように、U相界磁巻線18U、V相界磁巻線18V、W相界磁巻線18Wを有するステータ72と、永久磁石が固定されたロータ71とを備えている。
【0019】
駆動回路30は、三相ブリッジインバータ回路である。この駆動回路30では、電動モータ18のU相に対応した一対のFET(電界効果トランジスタ)31
UH,31
ULの直列回路と、V相に対応した一対のFET31
VH,31
VLの直列回路と、W相に対応した一対のFET31
WH,31
WLの直列回路とが、直流電源33と接地34との間に並列に接続されている。また、各FET31
UH〜31
WLには、それぞれ回生ダイオード32
UH〜32
WLが、接地34側から直流電源33側に順方向電流が流れるような向きで、並列に接続されている。
【0020】
以下において、各相の一対のFETのうち、電源33側のものを「ハイサイドFET」といい、接地34側のものを「ローサイドFET」という場合がある。また、6つのFET31
UH〜31
WLを総称する場合には、「FET31」ということにする。同様に、6つの回生ダイオード32
UH〜32
WLを総称する場合には、「回生ダイオード32」ということにする。
【0021】
電動モータ18のU相界磁巻線18Uは、U相に対応した一対のFET31
UH,31
ULの間の接続点に接続されている。電動モータ18のV相界磁巻線18Vは、V相に対応した一対のFET31
VH,31
VLの間の接続点に接続されている。電動モータ18のW相界磁巻線18Wは、W相に対応した一対のFET31
WH,31
WLの間の接続点に接続されている。各相の界磁巻線18U,18V,18Wと駆動回路30とを接続するための各接続線には、各相の相電流I
U,I
V,I
Wを検出するための電流センサ51
U,51
V,51
Wが設けられている。
【0022】
制御部40は、メモリに格納された所定の動作プログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、故障判定部41と、正弦波駆動部42と、二相駆動部43とが含まれる。
正弦波駆動部42は、FET31に故障が発生していない通常時(正常時)において、各FET31を制御することにより、電動モータ18を正弦波駆動方式で三相駆動するものである。正弦波駆動部42には、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクと、車速センサ23によって検出される車速と、電流センサ51
U,51
V,51
Wによって検出される各相の相電流I
U,I
V,I
Wと、回転角センサ23によって検出されるロータ回転角が入力される。正弦波駆動部42は、たとえば、180°通電方式によって電動モータ18を正弦波駆動するものである。正弦波駆動部42は、たとえば、操舵トルクと電流指令値(目標アシストトルク)との関係を車速毎に記憶したマップと、トルクセンサ11によって検出された操舵トルクと、車速センサ23によって検出された車速とに基づいて、電流指令値を決定する。そして、正弦波駆動部42は、電流指令値と、相毎に検出される相電流と、回転角センサ23によって検出されるロータ回転角とに基いて、電動モータ18に流れるモータ電流が電流指令値に近づくように、各FET31をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。
【0023】
故障判定部41には、図示しない相電圧検出回路によって検出される各相の相電圧V
U,V
V,V
Wが入力される。故障判定部41は、各相の相電圧V
U,V
V,V
Wに基づいて、電動モータ18の異常が検出されたときに、電動モータ18を停止させるための制御、FET31に開放故障が発生しているか否かの判定、FET31に開放故障が発生している場合に開放故障が発生しているFET31の特定等を行う。
【0024】
二相駆動部43には、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクと、回転角センサ23によって検出されるロータ回転角が入力される。二相駆動部43は、故障判定部41によって、FET31に開放故障が発生していると判定され、その開放故障が発生しているFET31が特定された場合に、正常な2相で電動モータ18を駆動させるものである。より具体的には、6つのFET31のうちの1つのFET31または同相の2つのFET31が開放故障した場合において、故障判定部41によって開放故障が発生しているFET31が特定されたときに、二相駆動部43は、正常な2相で電動モータ18を駆動させる。
【0025】
図4は、故障が発生したときのモータ制御部40の動作を示すフローチャートである。
故障判定部41は、電動モータ18が正弦波駆動部42によって正弦波駆動されている場合に、電動モータ18に動作不良(故障)が発生したことを検出すると、正弦波駆動部42にモータ停止指令に与える(ステップS1)。正弦波駆動部42は、故障判定部41からのモータ停止指令を受信すると、正弦波駆動を中止して、全てのFET31をオフにさせる。これにより、電動モータ18が停止する。
【0026】
この後、故障判定部41は、相電圧V
U,V
V,V
Wに基いて、開放故障が発生している可能性があるか否かを判別する(ステップS2)。具体的には、故障判定部41は、相電圧V
U,V
V,V
Wのいずれかが、所定のグランドレベルVG(たとえば0.5[V])より大きくかつ所定の電源レベルVB(たとえば5.0[V])より低ければ、開放故障が発生している可能性があると判別する。この判別が妥当な理由について、説明する。ハイサイドFET31
UH,31
VH,31
WHのいずれかに短絡故障が生じている場合には、各相電圧V
U,V
V,V
Wは所定の電源レベルVB以上となり、ローサイドFET31
UL,31
VL,31
WLのいずれかに短絡故障が生じている場合には、各相電圧V
U,V
V,V
Wは所定のグランドレベルVG以下となる。したがって、各相電圧V
U,V
V,V
Wが、所定のグランドレベルVGより大きくかつ所定の電源レベルVBより低い場合には、いずれのFET31にも短絡故障が生じていないので、開放故障が発生している可能性があると判別できる。なお、この判別は、全ての相電圧を調べる必要はなく、いずれか一相の相電圧を調べることにより行うことができる。
【0027】
開放故障が発生している可能性がないと判別された場合には(ステップS2:NO)、故障判定部41は、後述する二相駆動制御以外の処理(以下、「他の処理」という)を行なう(ステップS6)。この「他の処理」には、何ら処理を行なわないことも含まれる。開放故障が発生している可能性があると判別された場合には(ステップS2:YES)、故障判定部41は、故障箇所の特定処理を行なう(ステップS3)。具体的には、故障判定部41は、各FET31を個別にオンしていく。ハイサイドFET31
UH,31
VH,31
WHを個別にオンした場合に、各相電圧V
U,V
V,V
Wが所定の電源レベルVB以上に変化した場合には、当該FETは正常であり、ローサイドFET31
UL,31
VL,31
WLを個別にオンした場合に、各相電圧V
U,V
V,V
Wが所定のグラウンドレベルVG以下に変化した場合には、当該FETは正常である。したがって、故障判定部41は、各FET31を個別にオンしたときに、各相電圧V
U,V
V,V
Wに変化がない場合には、当該FETが開放故障していると判定する。なお、この判定は、全ての相電圧を調べる必要はなく、いずれか一相の相電圧を調べることにより行うことができる。
【0028】
故障判定部41は、故障箇所の特定処理によって開放故障が発生しているFET31を特定できなかった場合には(ステップS4:NO)、二相駆動制御以外の処理(「他の処理」)を行なう(ステップS6)。一方、故障箇所の特定処理によって開放故障が発生しているFET31を特定できた場合には(ステップS4:YES)、故障判定部41は二相駆動部43に二相駆動制御を開始させる(ステップS5)。ただし、開放故障が発生しているFET31が1つだけである場合または開放故障が発生しているFET31が同相の2つのFET31だけである場合において、開放故障が発生しているFET31を特定できた場合にのみ、ステップS5に移行して二相駆動制御が開始される。3相のうちの2相以上においてFETが開放故障している場合には、開放故障が発生しているそれらのFET31を特定できた場合であっても、ステップS5に移行せずに、ステップS6に移行する。
【0029】
ステップS5においては、具体的には、故障判定部41は、二相駆動部43に、開放故障が発生しているFET31に対応する相を通知する。これにより、二相駆動部43は、二相駆動制御を開始する。以下において、開放故障が発生しているFET31に対応する相を「故障相」といい、それ以外の相を「正常相」という場合がある。
以下、二相駆動部43による二相駆動制御について説明する。二相駆動部43は、予め設定された正転用の二相通電パターンおよび逆転用の二相通電パターンに従って、電動モータ18を二相駆動するための制御信号を生成する。この制御信号によって、駆動回路30内のFET31が制御される。正転用の二相通電パターンおよび逆転用の二相通電パターンは、故障相毎に設定されている。
【0030】
具体的には、二相駆動部43は、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクの方向に基づいて、電動モータ18を回転させるべき方向を決定する。検出操舵トルクの方向が左方向であれば、左方向の操舵を補助するモータトルクを発生させるための回転方向(正転方向)が電動モータ18を回転させるべき回転方向として決定され、検出操舵トルクの方向が右方向であれば、右方向の操舵を補助するモータトルクを発生させるための回転方向(逆転方向)が電動モータ18を回転させるべき回転方向として決定される。
【0031】
また、二相駆動部43は、トルクセンサ11によって検出された操舵トルク(検出操舵トルク)に基づいて電動モータ18に供給すべき電流に対応した電圧指令値を設定する。この実施形態では、二相駆動部43は、
図5に示すように、検出操舵トルクに比例した電圧指令値を設定する。また、二相駆動部43は、電圧指令値に応じたPWMデューティを設定し、設定されたデューティでパルス変調された矩形波駆動信号を生成する。そして、この矩形波駆動信号と、電動モータ18を回転させるべき方向と、故障相に対応した正転用の二相通電パターンおよび逆転用二相通電パターンとに基づいて、二相駆動部43は二相駆動のための制御信号を生成する。
【0032】
以下、この実施形態で用いられる正転用の二相通電パターンおよび逆転用の二相通電パターンについて説明する。まず、
図6を参照して、V相が故障相(不使用相)である場合に用いられる正転用の二相通電パターンP2v
CWおよび逆転用の二相通電パターンP2v
CCWの作成方法について説明する。
図6の(a)は、正常時に電動モータ18を正転方向に回転させた場合の誘起電圧波形を示している。U相、V相およびW相の誘起電圧を、それぞれE
U,E
V,E
Wで表すことにする。
【0033】
図6の(b)および(c)は、それぞれ、120度通電方式で電動モータを三相駆動する場合に用いられる一般的な正転用の三相通電パターンP3
CWおよび逆転用の三相通電パターンP3
CCWを示している。正転用の三相通電パターンP3
CWと逆転用の三相通電パターンP3
CCWとを総称する場合には、「三相通電パターンP3」ということにする。
【0034】
図6の(d)および(e)は、それぞれ、V相が故障相である場合に用いられる正転用の基本二相通電パターンP2vo
CWおよび逆転用の基本二相通電パターンP2vo
CCWを示している。正転用の基本二相通電パターンP2vo
CWと逆転用の基本二相通電パターンP2vo
CCWとを総称する場合には、「基本二相通電パターンP2vo」ということにする。
【0035】
図6の(f)および(g)は、それぞれ、V相が故障相である場合に用いられる正転用の二相通電パターンP2v
CWおよび逆転用の二相通電パターンP2v
CCWを示している。正転用の二相通電パターンP2v
CWと逆転用の二相通電パターンP2v
CCWとを総称する場合には、「二相通電パターンP2v」ということにする。
図6の(h)は、V相が故障相である場合に電動モータ18を正転方向に回転させた場合の誘起電圧波形を示している。
【0036】
図6では、正常時に電動モータ18を正転方向に回転させた場合において、U相の誘起電圧が負から正へと変化する点がロータ回転角(電気角)の0度として設定されている。なお、電動モータ18を逆転方向に回転させた場合のロータ回転角に対する各相の誘起電圧波形は、電動モータ18を正転方向に回転させた場合の対応する相の誘起電圧波形を正負反転させた波形となる。
【0037】
各通電パターンP3
CW,P3
CCW,P2vo
CW,P2vo
CCW,P2v
CW,P2v
CCWの上段は、対応する電気角の区間においてPWM制御されるハイサイドFET31
UH,31
VH,31
WHの相(U,VおよびW)を表している。各通電パターンP3
CW,P3
CCW,P2vo
CW,P2vo
CCW,P2v
CW,P2v
CCWの下段は、対応する電気角の区間においてオンされるローサイドFET31
UL,31
VL,31
WLの相(U,VおよびW)を表している。例えば、正転用の三相通電パターンP3
CWでは、ロータ回転角が30度から90度までの区間では、U相に対応するハイサイドFET31
UHがPWM制御され、V相に対応するローサイドFET31
VLがオンとされる。
【0038】
120度通電方式で電動モータ18を三相駆動する場合の一般的な制御方法について説明する。電動モータ18を正転方向に回転させる場合には、正転用の三相通電パターンP3
CWにしたがって制御信号が生成され、電動モータ18を逆転方向に回転させる場合には、逆転用の三相通電パターンP3
CCWにしたがって制御信号が生成される。
いずれの場合にも、各相のハイサイドFET31
UH,31
VH,31
WHに対して、それぞれ120度の電気角の期間に渡って、PWMパルスからなる矩形波駆動信号が出力されることになる。各相のハイサイドFET31
UH,31
VH,31
WHにPWMパルスが与えられる120度の期間は、120度ずつ位相がずれている。つまり、ハイサイドFET31
UH,31
VH,31
WHは、120度ずつ位相がずらされた各120度の期間に、循環的にPWM制御される。このPWM制御される各120度の期間に、PWMデューティに応じた電圧が電動モータ18の各相に印加される。
【0039】
一方、各相のローサイドFET31
UL,31
VL,31
WLは、各相のハイサイドFET31
UH,31
VH,31
WHがPWM制御される期間から電気角で60度シフトされた120度の期間に渡ってオン状態とされ、残余の期間はオフ状態とされる。つまり、ローサイドFET31
UL,31
VL,31
WLがオン状態となる120度の期間は、120度ずつ位相がすれている。つまり、ローサイドFET31
UL,31
VL,31
WLは、120度ずつ位相がすらされた各120度の期間に、循環的にオン状態となる。したがって、ロータが電気角で60度回転する毎に、PWM制御されるハイサイドFETとオン状態とされるローサイドFETの組合せが切り替えられる。つまり、PWM制御されるハイサイドFETとオン状態とされるローサイドFETの組合せは、6種類ある。
【0040】
基本二相通電パターンP2voは、三相通電パターンP3に基づいて作成される。基本二相通電パターンP2voは、二相駆動であるため、PWM制御されるハイサイドFETとオン状態とされるローサイドFETの組合せは、2種類のみである。具体的には、U相のハイサイドFET31
UHがPWM制御され、W相のローサイドFET31
WLがオンされるパターン(以下、「第1UWパターン」という)と、W相のハイサイドFET31
WHがPWM制御され、U相のローサイドFET31
ULがオンされるパターン(以下、「第2UWパターン」という)とがある。なお、第1UWパターンにおいて、ローサイドFET31
WLを、ハイサイドFET31
UHと同様にPWM制御してもよい。また、第2UWパターンにおいて、ローサイドFET31
ULを、ハイサイドFET31
WHと同様にPWM制御してもよい。
【0041】
正転用の基本二相通電パターンP2vo
CWは、正転用の三相通電パターンP3
CWから作成される。具体的には、正転用の三相通電パターンP3
CWにおいて故障相であるV相に対応するFET31
VH,FET31
VLがPWM制御またはオンされる期間では、正常相(U相およびW相)に電流が流れるように、故障相に対応するFETが正常相に対応するFETに置き換えられる。これにより、正転用の基本二相通電パターンP2vo
CWが作成される。
【0042】
正転用の三相通電パターンP3
CWにおいて、V相に対応するハイサイドFET31
VHがPWM制御される電気角の期間は、150度から210度までの区間と、210度から270度までの区間である。正転用の基本二相通電パターンP2vo
CWでは、150度から210度までの区間においては、V相に対応するハイサイドFET31
VHに代わってU相に対応するハイサイドFET31
UHがPWM制御される。そして、210度から270度までの区間においては、V相に対応するハイサイドFET31
VHに代わってW相に対応するハイサイドFET31
WHがPWM制御される。
【0043】
また、正転用の三相通電パターンP3
CWにおいて、V相に対応するローサイドFET31
VLがオンされる電気角の期間は、330度から30度までの区間(330度〜360度および0度〜30度の区間)と、30度から90度までの区間である。正転用の基本二相通電パターンP2vo
CWでは、330度から30度までの区間においては、V相に対応するローサイドFET31
VLに代わってU相に対応するローサイドFET31
ULがオンされる。そして、30度から90度までの区間においては、V相に対応するローサイドFET31
VLに代わってW相に対応するローサイドFET31
WLがオンされる。
【0044】
なお、90度から150度までの区間および270度から330度までの区間においては、正転用の基本二相通電パターンP2vo
CWは、正転用の三相通電パターンP3
CWと同じである。以上により、V相が故障相である場合の正転用の基本二相通電パターンP2vo
CWでは、30度から210度までの期間の通電パターンが第1UWパターンとなり、210度から30度までの期間(210度〜360度および0度から30度の期間)の通電パターンが第2UWパターンとなる。
【0045】
逆転用の基本二相通電パターンP2vo
CCWは、逆転用の三相通電パターンP3
CCWから作成される。具体的には、逆転用の三相通電パターンP3
CCWにおいて故障相であるV相に対応するFET31
VH,FET31
VLがPWM制御またはオンされる期間では、正常相(U相およびW相)に電流が流れるように、故障相に対応するFETが正常相に対応するFETに置き換えられる。これにより、逆転用の基本二相通電パターンP2vo
CCWが作成される。
【0046】
逆転用の三相通電パターンP3
CCWにおいて、V相に対応するハイサイドFET31
VHがPWM制御される電気角の期間は、330度から30度までの区間(330度〜360度および0度〜30度の区間)と、30度から90度までの区間である。逆転用の基本二相通電パターンP2vo
CCWでは、330度から30度までの区間においては、V相に対応するハイサイドFET31
VHに代わってU相に対応するハイサイドFET31
UHがPWM制御される。そして、30度から90度までの区間においては、V相に対応するハイサイドFET31
VHに代わってW相に対応するハイサイドFET31
WHがPWM制御される。
【0047】
また、逆転用の三相通電パターンP3
CCWにおいて、V相に対応するローサイドFET31
VLがオンされる電気角の期間は、150度から210度までの区間と、210度から270度までの区間である。逆転用の基本二相通電パターンP2vo
CCWでは、150度から210度までの区間においては、V相に対応するローサイドFET31
VLに代わってU相に対応するローサイドFET31
ULがオンされる。そして、210度から270度までの区間においては、V相に対応するローサイドFET31
VLに代わってW相に対応するローサイドFET31
WLがオンされる。
【0048】
なお、90度から150度までの区間および270度から330度までの区間においては、逆転用の基本二相通電パターンP2vo
CCWは、逆転用の三相通電パターンP3
CCWと同じである。以上により、V相が故障相である場合の逆転用の基本二相通電パターンP2vo
CCWでは、210度から30度までの期間(210度〜360度および0度〜30度の期間)の通電パターンが第1UWパターンとなり、30度から210度までの期間の通電パターンが第2UWパターンとなる。
【0049】
正転用の二相通電パターンP2v
CWは、正転用の基本二相通電パターンP2vo
CWの位相を任意の方向(以下、「第1方向」という。この例では電気角が増加する方向。)に第1の所定角度だけシフトさせることにより、作成されている。逆転用の二相通電パターンP2v
CCWは、逆転用の基本二相通電パターンP2vo
CCWの位相を前記第1方向と同じ方向に第2の所定角度だけシフトさせることにより、作成されている。第1の所定角度および第2の所定角度は、この実施形態では、電気角で30度である。なお、第1の所定角度および第2の所定角度は、電気角で0度より大きく60度より小さい範囲内の任意の角度に設定することができる。
【0050】
なお、正転用の基本二相通電パターンP2vo
CWの位相を前記第1方向と反対の第2方向(電気角が減少する方向)に第1の所定角度だけシフトさせることにより、正転用の二相通電パターンP2v
CWを作成するとともに、逆転用の基本二相通電パターンP2vo
CCWの位相を前記第2方向と同じ方向に第2の所定角度だけシフトさせることにより、逆転用の二相通電パターンP2v
CCWを作成してもよい。この場合にも、第1および第2の所定角度は、例えば、電気角で30度に設定される。
【0051】
この実施形態では、二相駆動部43は、V相が故障相である場合には、正転用の二相通電パターンP2v
CWおよび逆転用の二相通電パターンP2v
CCWを用いて、電動モータ18を二相駆動する。つまり、二相駆動部43は、電動モータ18を正転方向に回転させる場合には、正転用の二相通電パターンP2v
CWにしたがって制御信号を生成し、電動モータ18を逆転方向に回転させる場合には、逆転用の二相通電パターンP2v
CCWにしたがって制御信号を生成する。
【0052】
電動モータ18を正転方向に回転させる場合には、ロータ回転角が60度から240度までの期間においては、U相に対応するハイサイドFET31
UHに対して、PWMパルスからなる矩形波駆動信号が出力され、W相に対応するローサイドFET31
WLがオンされる。また、ロータ回転角が240度から60度までの期間(240度〜360度および0度〜60度の期間)においては、W相に対応するハイサイドFET31
WHに対して、PWMパルスからなる矩形波駆動信号が出力され、U相に対応するローサイドFET31
ULがオンされる。
【0053】
一方、電動モータ18を逆転方向に回転させる場合には、ロータ回転角が60度から240度までの期間においては、W相に対応するハイサイドFET31
WHに対して、PWMパルスからなる矩形波駆動信号が出力され、U相に対応するローサイドFET31
ULがオンされる。また、ロータ回転角が240度から60度までの期間(240度〜360度および0度〜60度の期間)においては、U相に対応するハイサイドFET31
UHに対して、PWMパルスからなる矩形波駆動信号が出力され、W相に対応するローサイドFET31
WLがオンされる。
【0054】
以下、この実施形態の利点について説明する。基本二相通電パターンP2voを用いて、電動モータ18を二相駆動する場合を想定する。この場合には、所定の2つのロータ回転角位置において、正常相の一方の界磁巻線に流れる電流によってロータ71に与えられる回転力と、正常相の他方の界磁巻線に流れる電流によってロータに与えられる回転力との大きさが同じで方向が逆になる。このようなロータ回転角位置を、「不感点」ということにする。
【0055】
具体的には、
図6の(h)に示すように、2つの正常相の誘起電圧(U相の誘起電圧E
UおよびW相の誘起電圧E
W)が同じ値となる位置(正常時にはV相の誘起電圧E
Vがピーク値となる位置)がそれぞれ不感点となる。したがって、V相が故障相である場合には、電気角で210度の位置および30度の位置が、それぞれ不感点となる。
図3は、ロータ71の回転角が210度である状態を示している。この状態で、第1UWパターンに従った通電を行なうと、U相界磁巻線18UおよびW相界磁巻線18Wには、矢印Aで示す方向に電流が流れる。この場合に、U相界磁巻線18Uとロータ71のS極との間に例えば吸引力が働くとすると、W相界磁巻線18Wとロータ71のN極との間にも吸引力が働く。そして、それらの吸引力の大きさがほぼ等しくなる。したがって、ロータ71が
図3の状態で停止している場合には、U相界磁巻線18UおよびW相界磁巻線18Wに、矢印Aで示す方向に電流を流しても、ロータ71は回転されない。
【0056】
また、この状態で、第2UWパターンに従った通電を行なうと、U相界磁巻線18UおよびW相界磁巻線18Wには、矢印Bで示す方向に電流が流れる。この場合には、U相界磁巻線18Uとロータ71のS極との間に反発力が働くとともに、W相界磁巻線18Wとロータ71のN極との間にも反発力が働く。そして、それらの反発力の大きさがほぼ等しくなる。したがって、ロータ71が
図3の状態で停止している場合には、U相界磁巻線18UおよびW相界磁巻線18Wに、矢印Bで示す方向に電流を流しても、ロータ71は回転されない。
【0057】
電動モータ18の回転速度が速い場合には、ロータ71はその慣性力によって不感点を通過する。しかし、不感点付近でロータ71を停止させるようなステアリング操作が行なわれた場合には、ロータ71は不感点付近で停止する。そうすると、電動モータ18に電流が供給されたとしても、ロータ71が回転されなくなるおそれがある。つまり、アシストトルクが発生されなくなるおそれがある。
【0058】
電動パワーステアリング装置1においては、ステアリングホイール2を停止させているときにも、実際にはステアリングホイール2に加わる操舵トルクの方向が小刻みに変化していることが多い。このため、ロータ71が不感点付近で停止しているときにも、電動モータ18を回転させるべき方向が変化するので、正転用の基本二相用通電パターンP2vo
CWと逆転用の基本二相用通電パターンP2vo
CCWとの間で通電パターンが切り換えられることになる。
【0059】
正転用の基本二相用通電パターンP2vo
CWと逆転用の基本二相用通電パターンP2v
CCWとでは、同じロータ回転角に対する通電パターンが異なるため、これらの間で通電パターンが切り換えられると、界磁巻線18U,18Wに流れる電流の方向が切り換えられるはずである。界磁巻線18U,18Wに流れる電流の方向が切り換えられると、その過程において、一方の界磁巻線18Uに流れる電流によってロータ71に与えられる回転力と、他方の界磁巻線18Uに流れる電流によってロータ71に与えられる回転力との大きさのバランスがくずれる。このため、ロータ71が不感点から脱出可能となる。
【0060】
しかしながら、正転用の基本二相用通電パターンP2vo
CWおよび逆転用の基本二相用通電パターンP2vo
CCWのいずれにおいても、不感点(30度または210度)を境界として、通電パターンが切り換えられている。したがって、不感点付近において、正転用の基本二相用通電パターンP2vo
CWと逆転用の基本二相用通電パターンP2vo
CCWとの間で、前記のように通電パターンが切り換えられたとしても、切換え後の通電パターンの内容が同じになる可能性がある。そのため、ロータ71が不感点から脱出できなくなるおそれがある。
【0061】
例えば、ロータ回転角が210度付近であるときに、正転用の基本二相用通電パターンP2vo
CWの30度から210度までの区間の通電パターンである第1UWパターンが適用されているとする。この状態から、逆転用の基本二相用通電パターンP2vo
CCWに切り換えられた場合に、逆転用の基本二相用通電パターンP2vo
CCWの210度から30度までの区間の通電パターンである第1UWパターンが適用される可能性がある。また、その逆方向(逆転用から正転用)への通電パターンの切換えもありうる。
【0062】
同様に、例えば、ロータ回転角が210度付近であるときに、正転用の基本二相用通電パターンP2vo
CWの210度から30度までの区間の通電パターンである第2UWパターンが適用されているとする。この状態から、逆転用の基本二相用通電パターンP2vo
CCWに切り換えられた場合に、逆転用の基本二相用通電パターンP2vo
CCWの30度から210度までの区間の通電パターンである第2UWパターンが適用される可能性がある。また、その逆方向(逆転用から正転用)への通電パターンの切換えもありうる。
【0063】
この実施形態における二相用通電パターンP2vを用いて電動モータ18を二相駆動する場合にも、電気角の30度および210度の位置に、不感点が生じる。しかしながら、この実施形態における二相用通電パターンP2vでは、
図6の(f),(g)に示すように、不感点(30度または210度)を中心とする所定幅の角度範囲(0度〜60度または180度〜240度)においては、正転用の二相用通電パターンP2v
CWと逆転用の二相用通電パターンP2v
CCWとは、互いに異なる通電パターンとなっている。
【0064】
例えば、210度の不感点を中心とする180度〜240度の区間においては、正転用の二相用通電パターンP2v
CWは第1UWパターンであり、逆転用の二相用通電パターンP2v
CCWは第2UWパターンである。このため、210度の不感点付近で、正転用の二相用通電パターンP2v
CWと逆転用の二相用通電パターンP2v
CCWとの間で通電パターンが切り換えられた場合には、確実に通電パターンの内容を切換えることができる。つまり、界磁巻線18U,18Wに流れる電流の方向を確実に切り換えることができる。したがって、この実施形態では、基本二相用通電パターンP2voを用いて電動モータ18を二相駆動する場合に比べて、不感点を脱出しやすいという利点がある。
【0065】
次に、
図7を参照して、W相が故障相(不使用相)である場合に用いられる正転用の二相通電パターンP2w
CWおよび逆転用の二相通電パターンP2w
CCWの作成方法について説明する。
図7の(a),(b),(c)は、それぞれ、
図6の(a),(b),(c)と同じである。
【0066】
図7の(d)および(e)は、それぞれ、W相が故障相である場合に用いられる正転用の基本二相通電パターンP2wo
CWおよび逆転用の基本二相通電パターンP2wo
CCWを示している。正転用の基本二相通電パターンP2wo
CWと逆転用の基本二相通電パターンP2wo
CCWとを総称する場合には、「基本二相通電パターンP2wo」ということにする。
【0067】
図7の(f)および(g)は、それぞれ、W相が故障相である場合に用いられる正転用の二相通電パターンP2w
CWおよび逆転用の二相通電パターンP2w
CCWを示している。正転用の二相通電パターンP2w
CWと逆転用の二相通電パターンP2w
CCWとを総称する場合には、「二相通電パターンP2w」ということにする。
図7の(h)は、W相が故障相である場合に電動モータ18を正転方向に回転させた場合の誘起電圧波形を示している。
【0068】
基本二相通電パターンP2woは、三相通電パターンP3に基づいて作成される。基本二相通電パターンP2woは、二相駆動であるため、PWM制御されるハイサイドFETとオン状態とされるローサイドFETの組合せは、2種類のみである。具体的には、U相のハイサイドFET31
UHがPWM制御され、V相のローサイドFET31
VLがオンされるパターン(以下、「第1UVパターン」という)と、V相のハイサイドFET31
VHがPWM制御され、U相のローサイドFET31
ULがオンされるパターン(以下、「第2UVパターン」という)とがある。なお、第1UVパターンにおいて、ローサイドFET31
VLを、ハイサイドFET31
UHと同様にPWM制御してもよい。また、第2UVパターンにおいて、ローサイドFET31
ULを、ハイサイドFET31
VHと同様にPWM制御してもよい。
【0069】
正転用の基本二相通電パターンP2wo
CWは、正転用の三相通電パターンP3
CWから作成される。具体的には、正転用の三相通電パターンP3
CWにおいて故障相であるW相に対応するFET31
WH,FET31
WLがPWM制御またはオンされる期間では、正常相(U相およびV相)に電流が流れるように、故障相に対応するFETが正常相に対応するFETに置き換えられる。これにより、正転用の基本二相通電パターンP2wo
CWが作成される。
【0070】
図7(d)に示すように、W相が故障相である場合の正転用の基本二相通電パターンP2wo
CWでは、330度から150度までの期間(330度〜360度および0度〜150度の期間)の通電パターンが第1UVパターンとなり、150度から330度までの期間の通電パターンが第2UVパターンとなる。
逆転用の基本二相通電パターンP2wo
CCWは、逆転用の三相通電パターンP3
CCWから作成される。具体的には、逆転用の三相通電パターンP3
CCWにおいて故障相であるW相に対応するFET31
WH,FET31
WLがPWM制御またはオンされる期間では、正常相(U相およびV相)に電流が流れるように、故障相に対応するFETが正常相に対応するFETに置き換えられる。これにより、逆転用の基本二相通電パターンP2wo
CCWが作成される。
【0071】
図7(e)に示すように、W相が故障相である場合の逆転用の基本二相通電パターンP2wo
CCWでは、150度から330度までの期間の通電パターンが第1UVパターンとなり、330度から150度までの期間(330度〜360度および0度〜150度の期間)の通電パターンが第2UVパターンとなる。
正転用の二相通電パターンP2w
CWは、正転用の基本二相通電パターンP2wo
CWの位相を任意の方向(以下、「第1方向」という。この例では電気角が増加する方向。)に第1の所定角度だけシフトさせることにより、作成されている。逆転用の二相通電パターンP2w
CCWは、逆転用の基本二相通電パターンP2wo
CCWの位相を前記第1方向と同じ方向に第2の所定角度だけシフトさせることにより、作成されている。第1の所定角度および第2の所定角度は、この実施形態では、電気角で30度である。なお、第1の所定角度および第2の所定角度は、電気角で0度より大きく60度より小さい範囲内の任意の角度に設定することができる。
【0072】
なお、正転用の基本二相通電パターンP2wo
CWの位相を前記第1方向と反対の第2方向(電気角が減少する方向)に第1の所定角度だけシフトさせることにより、正転用の二相通電パターンP2w
CWを作成するとともに、逆転用の基本二相通電パターンP2wo
CCWの位相を前記第2方向と同じ方向に第2の所定角度だけシフトさせることにより、逆転用の二相通電パターンP2w
CCWを作成してもよい。この場合にも、第1および第2の所定角度は、例えば、電気角で30度に設定される。
【0073】
電動モータ18を、二相通電パターンP2wを用いて二相駆動する場合には、電気角の150度の位置と330度の位置とに不感点が生じる。しかしながら、二相用通電パターンP2wでは、
図7の(f),(g)に示すように、不感点(150度または330度)を中心とする所定幅の角度範囲(120度〜180度または300度〜360度)においては、正転用の二相用通電パターンP2w
CWと逆転用の二相用通電パターンP2w
CCWとは、互いに異なる通電パターンとなっている。このため、不感点を脱出しやすくなる。
【0074】
次に、
図8を参照して、U相が故障相(不使用相)である場合に用いられる正転用の二相通電パターンP2u
CWおよび逆転用の二相通電パターンP2u
CCWの作成方法について説明する。
図8の(a),(b),(c)は、それぞれ、
図6の(a),(b),(c)と同じである。
【0075】
図8の(d)および(e)は、それぞれ、U相が故障相である場合に用いられる正転用の基本二相通電パターンP2uo
CWおよび逆転用の基本二相通電パターンP2uo
CCWを示している。正転用の基本二相通電パターンP2uo
CWと逆転用の基本二相通電パターンP2uo
CCWとを総称する場合には、「基本二相通電パターンP2uo」ということにする。
【0076】
図8の(f)および(g)は、それぞれ、U相が故障相である場合に用いられるの正転用の二相通電パターンP2u
CWおよび逆転用の二相通電パターンP2u
CCWを示している。正転用の二相通電パターンP2u
CWと逆転用の二相通電パターンP2u
CCWとを総称する場合には、「二相通電パターンP2u」ということにする。
図8の(h)は、U相が故障相である場合に電動モータ18を正転方向に回転させた場合の誘起電圧波形を示している。
【0077】
基本二相通電パターンP2uoは、三相通電パターンP3に基づいて作成される。基本二相通電パターンP2uoは、二相駆動であるため、PWM制御されるハイサイドFETとオン状態とされるローサイドFETの組合せは、2種類のみである。具体的には、V相のハイサイドFET31
VHがPWM制御され、W相のローサイドFET31
WLがオンされるパターン(以下、「第1VWパターン」という)と、W相のハイサイドFET31
WHがPWM制御され、V相のローサイドFET31
VLがオンされるパターン(以下、「第2VWパターン」という)とがある。なお、第1VWパターンにおいて、ローサイドFET31
WLを、ハイサイドFET31
VHと同様にPWM制御してもよい。また、第2VWパターンにおいて、ローサイドFET31
VLを、ハイサイドFET31
WHと同様にPWM制御してもよい。
【0078】
正転用の基本二相通電パターンP2uo
CWは、正転用の三相通電パターンP3
CWから作成される。具体的には、正転用の三相通電パターンP3
CWにおいて故障相であるU相に対応するFET31
UH,FET31
ULがPWM制御またはオンされる期間では、正常相(V相およびW相)に電流が流れるように、故障相に対応するFETが正常相に対応するFETに置き換えられる。これにより、正転用の基本二相通電パターンP2uo
CWが作成される。
【0079】
図8(d)に示すように、U相が故障相である場合の正転用の基本二相通電パターンP2uo
CWでは、90度から270度までの期間の通電パターンが第1VWパターンとなり、270度から90度までの期間(270度〜360度および0度〜90度の期間)の通電パターンが第2VWパターンとなる。
逆転用の基本二相通電パターンP2uo
CCWは、逆転用の三相通電パターンP3
CCWから作成される。具体的には、逆転用の三相通電パターンP3
CCWにおいて故障相であるU相に対応するFET31
UH,FET31
ULがPWM制御またはオンされる期間では、正常相(V相およびW相)に電流が流れるように、故障相に対応するFETが正常相に対応するFETに置き換えられる。これにより、逆転用の基本二相通電パターンP2uo
CCWが作成される。
【0080】
図8(e)に示すように、U相が故障相である場合の逆転用の基本二相通電パターンP2uo
CCWでは、270度から90度までの期間(270度〜360度および0度〜90度の期間)の通電パターンが第1VWパターンとなり、90度から270度までの期間の通電パターンが第2VWパターンとなる。
正転用の二相通電パターンP2u
CWは、正転用の基本二相通電パターンP2uo
CWの位相を任意の方向(以下、「第1方向」という。この例では電気角が増加する方向。)に第1の所定角度だけシフトさせることにより、作成されている。逆転用の二相通電パターンP2u
CCWは、逆転用の基本二相通電パターンP2uo
CCWの位相を前記第1方向と同じ方向に第2の所定角度だけシフトさせることにより、作成されている。第1の所定角度および第2の所定角度は、この実施形態では、電気角で30度である。なお、第1の所定角度および第2の所定角度は、電気角で0度より大きく60度より小さい範囲内の任意の角度に設定することができる。
【0081】
なお、正転用の基本二相通電パターンP2uo
CWの位相を前記第1方向と反対の第2方向(電気角が減少する方向)に第1の所定角度だけシフトさせることにより、正転用の二相通電パターンP2u
CWを作成するとともに、逆転用の基本二相通電パターンP2uo
CCWの位相を前記第2方向と同じ方向に第2の所定角度だけシフトさせることにより、逆転用の二相通電パターンP2u
CCWを作成してもよい。この場合にも、第1および第2の所定角度は、例えば、電気角で30度に設定される。
【0082】
電動モータ18を、二相通電パターンP2uを用いて二相駆動する場合には、電気角の90度の位置と270度の位置とに不感点が生じる。しかしながら、二相用通電パターンP2uでは、
図8の(f),(g)に示すように、不感点(90度または270度)を中心とする所定幅の角度範囲(60度〜120度または240度〜300度)においては、正転用の二相用通電パターンP2u
CWと逆転用の二相用通電パターンP2u
CCWとは、互いに異なる通電パターンとなっている。このため、不感点を脱出しやすくなる。
【0083】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、U相、V相およびW相に対応するFET31のうちの1つの相に対応するFET31が開放故障した場合に、電動モータ18を2相駆動する場合について説明したが、U相、V相およびW相に対応するFET31が全て正常な場合に、電動モータ18を2相駆動させる場合にもこの発明を適用することができる。
【0084】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
また、この発明は、電動パワーステアリング装置以外の用途に使用されている電動モータに対しても、適用することが可能である。