【実施例1】
【0017】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本発明による電動機10の構成を簡略化して表した模式図である。この
図1に示す電動機10のロータ12とステータ13の構成は、先に述べた
図10(a)、(b)と同様である。即ち、回転軸11を基準として、内周側に円筒状のロータ12が形成され、その外周側にドーナツ状のステータ13が形成されたラジアルエアギャップ型の電動機である。ロータ12を構成するロータ磁石14は、回転方向にN極、S極が交互に配置されたものであり回転軸11と共に回転する。本実施例では、ロータ12を構成する永久磁石からなるロータ磁石14の厚さ(軸方向の高さ)Lrと、ステータ13を構成するステータコア15の厚さLsとの間に、Lr>Lsの関係が成立している。ただし、本発明はこれに限られず、少なくとも以下に述べる条件(Loh>Lhs)を満たせばよく、従ってLr≦Lsであってもよい。
【0018】
本発明は、ホールセンサ17の設置位置に特徴を有するものである。具体的には、
図1に示すように、前記ステータコア15の上端面からロータ磁石14の上端面までの高さをLoh、前記ステータコア15の上端面からホールセンサ17の位置までの高さをLhsとしたときに、Loh>Lhsの関係が成立する位置にホールセンサ17を設置することを特徴とする。また、
図2に示すように、ホールセンサ17は、径方向において、ロータ磁石14とコイル16との間に位置するように設置される。さらに、ホールセンサ17は、回転軸方向の磁束密度Bzを検出可能な向きに設置する。ホールセンサ17は、基板18に接続される。この場合、ホールセンサ17と基板18との間は、リード線19により接続されている。なお、ホールセンサ17は、図示しないホルダにより保持されることが好ましい。
【0019】
図2に示すのは、
図1に示す配置においてモータを駆動した場合の磁束線の様子を表した模式図である。この
図2は、ロータ磁石14の位相が120°の状態である
図10(b)のA−A’線断面における磁束線の様子を表している。この
図2からも分かるように、従来のロータ磁石14からの円弧状の磁束線をロータ磁石14の上方で検知するのではなく、ロータ磁石14の側面においてロータ磁石14とステータコア15との間に生じる磁束線をホールセンサ17で検知するようにしている点が特徴である。そして、ロータ磁石14の位相が120°の状態においては、磁石磁束とコイル磁束が同じ向きに印加されて互いに強め合うように作用している。
【0020】
図3に示すのは、
図1の位置においてホールセンサ17で磁束密度を計測した場合の結果を表した磁束密度波形である。
図3(a)は、コイル16による磁束を除いてロータ磁石14のみによる磁束を電気角での一周期にわたって計測した磁束密度波形である。
図3(b)は、ロータ磁石14による磁束を除いてコイル16のみによる磁束を電気角での一周期にわたって計測した磁束密度波形である。そして、
図3(c)は、
図3(a)、(b)の磁束密度波形を重ね合わせた磁束密度波形である。すなわち、ロータ磁石14による磁束とコイル16による磁束を電気角での一周期にわたって計測した磁束密度波形である。
図3(a)及び(b)から分かるように、コイル磁束は磁石磁束の磁束密度波形に対して電気角でほぼ90°位相が進む。そして、ゼロクロスの検出位相は、
図3(c)に示すように、コイルに通電した状態で検出するとコイル通電無しの場合に比較して位相が進む方向に変化する。
図3(c)に示すように位相が進む方向に変化するのは、ゼロクロス付近、例えば、ロータ磁石14の位相が120°の場合などにおいては、
図2に示すように、磁石磁束とコイル磁束が同じ向きに印加された結果、互いに強め合うように作用するため、ホールセンサ17で検出する磁束密度波形のゼロクロス点が結果として位相が進む方向にシフトするためである。
【0021】
図4に示すのは、
図1の位置において負荷を変動させてホールセンサ17で磁束密度を計測した場合の結果を表したグラフであり、(a)は軽負荷時、(b)は中間負荷時、(c)は定格負荷時の磁束密度波形をそれぞれ表している。この
図9(a)乃至(c)から分かるように、負荷が大きくなるに従って、コイル通電無しの場合に比較してコイル通電有りの場合のホールセンサ17が検出する磁束密度波形の位相の進みが大きくなっている。
【0022】
図5に示すのは、モータ回転数とホールセンサ磁束密度波形の位相変化との関係を表したグラフである。従来のホールセンサ17の配置では、回転数が増加するに従い、ゼロクロス点の位相の遅れが大きくなっている。それに対し、本発明のホールセンサ17の配置では、回転数が増加するに従い、ゼロクロス点の位相の進みが大きくなっている。ここで比較した回転数は、軽負荷時における回転数、中負荷時における回転数、及び、定格負荷時における回転数である。
基本的に、ロータ12の回転数とトルクが大きくなるほど、コイル16に印加される交流電圧の周波数が高くなると共に電流値も大きくなるため、コイル16のインダクタンスが大きくなって、コイル16に印加する電圧の位相とコイルに流れる電流の位相との位相差も大きくなる。従って本発明ように、ロータ12の回転数が増加するに従いホールセンサ17が検知する磁束密度波形の位相の進みが大きくなる方が、効率良く電動機10を駆動できるというメリットがある。
【0023】
以上のように、本発明のホールセンサ17の配置とすることで、従来の問題点であったコイル通電した場合にホールセンサが検出する磁束密度波形のゼロクロス点の位相遅れによる電流位相の切り替えタイミングの遅れが無くなる。本発明においては、ホールセンサが検出する磁束密度波形のゼロクロス点が全て位相が進む方向への変化として検知されるため、ステータ13のコイル16の電流位相を進めて切り替えタイミングを早める進角制御を行う必要がなく、ホールセンサ17で検知したロータ磁石14の回転位置に基づいてモータを駆動するだけで、モータを最適な進角で駆動することが可能となり、効率良くモータを駆動できる。
【0024】
前記実施例においては、ホールセンサ17の設置位置について、径方向についてはロータ磁石14とコイル16との間であること、軸方向についてはステータコア15の上端面とロータ磁石14の上端面との間であることを条件とした。ここで、ホールセンサ17の設置位置については、さらに、ステータ13の周方向の設置位置も磁束密度波形に影響する。
【0025】
具体的には、
図10(a)及び(b)に示すように、ステータコア15は、最外周側に環状に形成されたヨーク151と、このヨーク151から所定間隔(例えば、30°)毎に内周側(ロータ磁石側)に延びたティース152とで構成されており、ティース152の先端のロータ磁石14に面している箇所は対向面積を広く確保したティース先端部153として形成してある。ここで、ステータ13の内周面を周方向に見ていくと、30°毎に隣のティース先端部153との境界が現れる。本発明においてはこのティース先端部153の上端面上にホールセンサ17を形成することを条件としているが、ホールセンサ17を隣のステータコア15との境界付近に設置すると、隣接するティース152に巻かれたコイル16からの磁束が影響して、必ずしも位相が進み方向に変化しないという問題がある。
【0026】
そこで、ホールセンサ17の周方向の設置位置については、前記ティースの先端部の上端面上に配置されると共に、隣接するティースに巻き回されるコイルからの影響を受けないように、周方向においてティースの中央付近に位置するように配置することで、確実に位相が進み方向に変化する。具体的には、巻線の巻かれたティース152の中心部分の幅の範囲内に収まるように配置することが好ましい。
【0027】
前記実施例においては、位置検知素子としてホールセンサ17を用いて説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。ホールセンサに限らず、回転軸方向の磁束密度Bzを検出可能な位置検知素子であればよく、例えば、磁気抵抗素子なども適用可能である。