特許第5988085号(P5988085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社富士通ゼネラルの特許一覧

<>
  • 特許5988085-電動機 図000002
  • 特許5988085-電動機 図000003
  • 特許5988085-電動機 図000004
  • 特許5988085-電動機 図000005
  • 特許5988085-電動機 図000006
  • 特許5988085-電動機 図000007
  • 特許5988085-電動機 図000008
  • 特許5988085-電動機 図000009
  • 特許5988085-電動機 図000010
  • 特許5988085-電動機 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988085
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/215 20160101AFI20160825BHJP
   H02K 29/08 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   H02K11/215
   H02K29/08
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-76789(P2012-76789)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-207988(P2013-207988A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100076255
【弁理士】
【氏名又は名称】古澤 俊明
(72)【発明者】
【氏名】田邉 洋一
(72)【発明者】
【氏名】片桐 紳一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】藤松 利之
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−150757(JP,A)
【文献】 特開2003−235229(JP,A)
【文献】 米国特許第05877574(US,A)
【文献】 実開平01−096778(JP,U)
【文献】 特開昭63−209458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/215
H02K 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、この回転軸に固定的に付されるロータ磁石を有したロータと、このロータの外周側に環状に形成されたヨークと同ヨークから前記ロータ磁石に延びた複数のティースとを有したステータコアと前記ティースに巻回されたコイルとからなるステータとを具備し、前記ロータ磁石による磁束の変化を検出してロータの回転位置を検知する位置検知素子を備える電動機であって、
前記位置検知素子は、
径方向において、前記ロータ磁石と前記コイルとの間の前記ロータ磁石の側面と前記ステータコアとの間に生じる磁束線を検知する位置であること、及び
前記ティースの先端部の上端面上で、隣接するティースに巻回されるコイルからの影響を受けないような前記ティースの中心部分の幅の範囲内に収まる位置であることを満足し、
軸方向において、前記ステータコアの上端面と前記ロータ磁石の上端面との間の前記磁石磁束と前記コイル磁束が同じ向きに印加されて互いに強め合うように作用する位置であることを満足し、
かつ、磁束を検知する面を軸方向に向けて配置したことを特徴とする電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホールセンサ等の位置検知素子によってロータ磁石の回転位置を検知して駆動制御を行う電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以前から、ステータの内周側にロータが同軸的に配置されるインナーロータ型の電動機が存在する。例えば、図6に示すのは、回転軸11を基準として、内周側に円筒状のロータ磁石14を有したロータ12が形成され、その外周側に環状に形成されステータコア15及びコイル16からなるステータ13が形成されたラジアルエアギャップ型の電動機である。
【0003】
通常、ロータ磁石14はロータコア121を介して回転軸11に同軸的に配置され、回転軸と共に回転する。そして、基板18に固定されたホールセンサ17を用いて、ロータ磁石14の回転軸方向の磁束密度Bzを検出し、Bzがゼロとなる点(ゼロクロス点)を検出することで、ロータ12の回転位置を検知する。この検知したロータ12の回転位置に合わせてステータ13のコイル16に流す電流を制御することで電動機を駆動する。図6に示すように、従来、ホールセンサ17はロータ磁石14の上端面から軸方向に距離を置いた位置に設置されることが一般的である(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2011−223794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図10(a)(b)に示すのは、電動機全体の構成を表した断面図である。この図10に(a)及び(b)において、ロータ磁石14はロータコア121を介して回転軸11に同軸的に配置してロータ12が構成され、その外周側にステータコア15及びコイル16からなるステータ13が配置される。さらに詳しくは、ステータコア15は、最外周側に環状に形成されたヨーク151と、このヨーク151から所定間隔(例えば、機械角で30°)毎に内周側(ロータ磁石側)に延びたティース152とで構成されており、ティース152の先端のロータ磁石14に面している箇所は対向面積を広く確保したティース先端部153として形成してある。これらのティース152のそれぞれに巻線が巻かれてコイル16が構成される。ここで、ホールセンサ17は、平面視においてティース先端部153の中央付近に配置されているものとする。
【0005】
図10においては、機械角で45°毎にN極とS極が交互に入れ替わった8個の磁石141によりロータ磁石14が構成されているため、ロータ12が機械角で90°回転すると、ロータ磁石14の電気角における一周期(360°)がホールセンサ17によって検知される。図10(a)は、ロータ磁石14の位相が0°の場合であり、図10(b)は、(a)の状態からロータ12が機械角で30°回転してロータ磁石14の位相が電気角で120°の場合を表している。
【0006】
ここで、図6に示す位置にホールセンサ17を設置した場合、このホールセンサ17にはロータ磁石14からの磁束線とコイル16からの磁束線の両方が影響する。図7は、図10(b)のA−A’線断面におけるモータ運転時における磁束線の様子を表したものである。この図7からも分かるように、ロータ磁石14の位相が電気角で120°の場合においては、ロータ磁石14からの磁束線とコイル16からの磁束線がホールセンサ17に対して逆方向に印加されている。
【0007】
図8に示すのは、図6の位置においてホールセンサ17で磁束密度を計測した場合の結果を表した磁束密度波形である。図8(a)は、コイル16による磁束を除いてロータ磁石14のみによる磁束を電気角での一周期にわたって計測した磁束密度波形である。図8(b)は、ロータ磁石14による磁束を除いてコイル16のみによる磁束を電気角での一周期にわたって計測した磁束密度波形である。そして、図8(c)は、図8(a)、(b)の磁束密度波形を重ね合わせた磁束密度波形である。すなわち、ロータ磁石14による磁束とコイル16による磁束を電気角での一周期にわたって計測した磁束密度波形である。図8(a)及び(b)から分かるように、コイル磁束は磁石磁束の磁束密度波形に対して電気角でほぼ90°位相が遅れる。そして、ゼロクロスの検出位相は、図8(c)に示すように、コイルに通電した状態で検出するとコイル通電無しの場合に比較して位相が遅れる方向に変化する。
図8(c)に示すように位相が遅れる方向に変化するのは、ゼロクロス付近、例えば、ロータ磁石14の位相が120°の場合などにおいては、図7に示すように、磁石磁束とコイル磁束が逆向きに印加された結果、互いに弱め合うように作用するため、ホールセンサ17で検出する磁束密度波形のゼロクロス点が結果として位相が遅れる方向にシフトしてしまうためである。
【0008】
電動機の駆動制御は前記ホールセンサ17によって検知したロータ磁石14の回転位置に基づいて行われる。制御回路においては、磁石磁束の磁束密度波形のゼロクロスを検知し磁石のNSの切り替えを判断しているが、図8(c)のようにホールセンサが検出する磁束密度波形に遅れが生じるとゼロクロス位置に遅れが生じ本来の切り替えタイミングに対して遅れる(ロータの位相の遅れ)ことになる。ロータの位相の遅れは、通電する電流値が増加するに従い、遅れが大きくなる。この理由は、図7のように磁石磁束とコイル磁束が逆向きに印加されて互いに弱め合うように作用する場合において、コイル16に流れる電流値が増加するとコイル磁束も強くなるため、結果、ホールセンサ17で検出する磁束密度波形のシフト量も大きくなってしまうからである。
【0009】
また、図9に示すのは、図6の位置において負荷を変動させてホールセンサ17で磁束密度を計測した場合の結果を表したグラフであり、(a)は軽負荷時、(b)は中間負荷時、(c)は定格負荷時の磁束密度波形をそれぞれ表している。この図9(a)乃至(c)から分かるように、負荷が大きくなるに従って位置検知の遅れが大きくなっている。ここでいう負荷の大きさとは、例えば、回転トルクの大きさであり、エアコンの送風ファンにおいては、回転数が高くなるほど回転トルクが大きくなり、トルクが大きくなると大きな電流を必要とする。よって、ステータ13のコイル16からの磁束量が多くなり、ロータ磁石の磁束を打ち消す方向の磁束量も増える。これが、位相検知の遅れの原因となる。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、ホールセンサの配置位置を工夫することで、ホールセンサの検知結果が遅れ位相になる欠点を解消した電動機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1は、回転軸と、この回転軸に固定的に付されるロータ磁石を有したロータと、このロータの外周側に環状に形成されたヨークと同ヨークから前記ロータ磁石に延びた複数のティースとを有したステータコアと前記ティースに巻回されたコイルとからなるステータとを具備し、前記ロータ磁石による磁束の変化を検出してロータの回転位置を検知する位置検知素子を備える電動機であって、
前記位置検知素子は、
径方向において、前記ロータ磁石と前記コイルとの間の前記ロータ磁石の側面と前記ステータコアとの間に生じる磁束線を検知する位置であること、及び
前記ティースの先端部の上端面上で、隣接するティースに巻回されるコイルからの影響を受けないような前記ティースの中心部分の幅の範囲内に収まる位置であることを満足し、
軸方向において、前記ステータコアの上端面と前記ロータ磁石の上端面との間の前記磁石磁束と前記コイル磁束が同じ向きに印加されて互いに強め合うように作用する位置であることを満足し、
かつ、磁束を検知する面を軸方向に向けて配置したことを特徴とする電動機である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、回転軸と、この回転軸に固定的に付されるロータ磁石を有したロータと、このロータの外周側に環状に形成されたヨークと同ヨークから前記ロータ磁石に延びた複数のティースとを有したステータコアと前記ティースに巻回されたコイルとからなるステータとを具備し、前記ロータ磁石による磁束の変化を検出してロータの回転位置を検知する位置検知素子を備える電動機であって、
前記位置検知素子は、
径方向において、前記ロータ磁石と前記コイルとの間の前記ロータ磁石の側面と前記ステータコアとの間に生じる磁束線を検知する位置であること、及び
前記ティースの先端部の上端面上で、隣接するティースに巻回されるコイルからの影響を受けないような前記ティースの中心部分の幅の範囲内に収まる位置であることを満足し、
軸方向において、前記ステータコアの上端面と前記ロータ磁石の上端面との間の前記磁石磁束と前記コイル磁束が同じ向きに印加されて互いに強め合うように作用する位置であることを満足し、
かつ、磁束を検知する面を軸方向に向けて配置したので、従来の問題点であったコイル通電による位置検知素子が検出する磁束密度波形の位相遅れが無くなり、位置検知素子で検知したロータ磁石の回転位置に基づいてモータを駆動するだけで、擬似的にモータを最適な進角で駆動することが可能となり、効率良くモータを駆動できる。
また、隣接するステータコアに巻かれたコイルからの磁束の影響が無く、位置検知素子により磁束密度波形を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による電動機10の構成を簡略化して表した模式図である。
図2図1に示す配置においてモータを運転した場合の磁束線の様子を表した模式図である。
図3図1の位置においてホールセンサ17で磁束密度を計測した場合の結果を表したグラフである。
図4図1の位置において負荷を変動させてホールセンサ17で磁束密度を計測した場合の結果を表したグラフであり、(a)は軽負荷時、(b)は中間負荷時、(c)は定格負荷時の磁束密度波形をそれぞれ表している。
図5】モータ回転数とホールセンサ磁束密度波形の位相変化との関係を表したグラフである。
図6】従来の電動機の構成を簡略化して表した模式図である。
図7図6に示す配置においてモータを運転した場合の磁束線の様子を表した模式図である。
図8図6の位置においてホールセンサ17で磁束密度を計測した場合の結果を表したグラフである。
図9図6の位置において負荷を変動させてホールセンサ17で磁束密度を計測した場合の結果を表したグラフであり、(a)は軽負荷時、(b)は中間負荷時、(c)は定格負荷時の磁束密度波形をそれぞれ表している。
図10】電動機全体の構成を表した断面図であり、(a)は、ロータ磁石14の位相が0°の場合、(b)は、ロータ磁石14の位相が120°の場合を表している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による電動機は、回転軸と、この回転軸に固定的に付されるロータ磁石を有したロータと、このロータの外周側に環状に形成されたヨークと同ヨークから前記ロータ磁石に延びた複数のティースとを有したステータコアと前記ティースに巻回されたコイルとからなるステータとを具備し、前記ロータ磁石による磁束の変化を検出してロータの回転位置を検知する位置検知素子を備える電動機であって、前記位置検知素子は、径方向においてロータ磁石とコイルとの間、軸方向においてステータコアの上端面とロータ磁石の上端面との間に位置するようにし、かつ、磁束を検知する面を軸方向に向けて配置したことを特徴とする。以下、詳細に説明を行う。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すのは、本発明による電動機10の構成を簡略化して表した模式図である。この図1に示す電動機10のロータ12とステータ13の構成は、先に述べた図10(a)、(b)と同様である。即ち、回転軸11を基準として、内周側に円筒状のロータ12が形成され、その外周側にドーナツ状のステータ13が形成されたラジアルエアギャップ型の電動機である。ロータ12を構成するロータ磁石14は、回転方向にN極、S極が交互に配置されたものであり回転軸11と共に回転する。本実施例では、ロータ12を構成する永久磁石からなるロータ磁石14の厚さ(軸方向の高さ)Lrと、ステータ13を構成するステータコア15の厚さLsとの間に、Lr>Lsの関係が成立している。ただし、本発明はこれに限られず、少なくとも以下に述べる条件(Loh>Lhs)を満たせばよく、従ってLr≦Lsであってもよい。
【0018】
本発明は、ホールセンサ17の設置位置に特徴を有するものである。具体的には、図1に示すように、前記ステータコア15の上端面からロータ磁石14の上端面までの高さをLoh、前記ステータコア15の上端面からホールセンサ17の位置までの高さをLhsとしたときに、Loh>Lhsの関係が成立する位置にホールセンサ17を設置することを特徴とする。また、図2に示すように、ホールセンサ17は、径方向において、ロータ磁石14とコイル16との間に位置するように設置される。さらに、ホールセンサ17は、回転軸方向の磁束密度Bzを検出可能な向きに設置する。ホールセンサ17は、基板18に接続される。この場合、ホールセンサ17と基板18との間は、リード線19により接続されている。なお、ホールセンサ17は、図示しないホルダにより保持されることが好ましい。
【0019】
図2に示すのは、図1に示す配置においてモータを駆動した場合の磁束線の様子を表した模式図である。この図2は、ロータ磁石14の位相が120°の状態である図10(b)のA−A’線断面における磁束線の様子を表している。この図2からも分かるように、従来のロータ磁石14からの円弧状の磁束線をロータ磁石14の上方で検知するのではなく、ロータ磁石14の側面においてロータ磁石14とステータコア15との間に生じる磁束線をホールセンサ17で検知するようにしている点が特徴である。そして、ロータ磁石14の位相が120°の状態においては、磁石磁束とコイル磁束が同じ向きに印加されて互いに強め合うように作用している。
【0020】
図3に示すのは、図1の位置においてホールセンサ17で磁束密度を計測した場合の結果を表した磁束密度波形である。図3(a)は、コイル16による磁束を除いてロータ磁石14のみによる磁束を電気角での一周期にわたって計測した磁束密度波形である。図3(b)は、ロータ磁石14による磁束を除いてコイル16のみによる磁束を電気角での一周期にわたって計測した磁束密度波形である。そして、図3(c)は、図3(a)、(b)の磁束密度波形を重ね合わせた磁束密度波形である。すなわち、ロータ磁石14による磁束とコイル16による磁束を電気角での一周期にわたって計測した磁束密度波形である。図3(a)及び(b)から分かるように、コイル磁束は磁石磁束の磁束密度波形に対して電気角でほぼ90°位相が進む。そして、ゼロクロスの検出位相は、図3(c)に示すように、コイルに通電した状態で検出するとコイル通電無しの場合に比較して位相が進む方向に変化する。
図3(c)に示すように位相が進む方向に変化するのは、ゼロクロス付近、例えば、ロータ磁石14の位相が120°の場合などにおいては、図2に示すように、磁石磁束とコイル磁束が同じ向きに印加された結果、互いに強め合うように作用するため、ホールセンサ17で検出する磁束密度波形のゼロクロス点が結果として位相が進む方向にシフトするためである。
【0021】
図4に示すのは、図1の位置において負荷を変動させてホールセンサ17で磁束密度を計測した場合の結果を表したグラフであり、(a)は軽負荷時、(b)は中間負荷時、(c)は定格負荷時の磁束密度波形をそれぞれ表している。この図9(a)乃至(c)から分かるように、負荷が大きくなるに従って、コイル通電無しの場合に比較してコイル通電有りの場合のホールセンサ17が検出する磁束密度波形の位相の進みが大きくなっている。
【0022】
図5に示すのは、モータ回転数とホールセンサ磁束密度波形の位相変化との関係を表したグラフである。従来のホールセンサ17の配置では、回転数が増加するに従い、ゼロクロス点の位相の遅れが大きくなっている。それに対し、本発明のホールセンサ17の配置では、回転数が増加するに従い、ゼロクロス点の位相の進みが大きくなっている。ここで比較した回転数は、軽負荷時における回転数、中負荷時における回転数、及び、定格負荷時における回転数である。
基本的に、ロータ12の回転数とトルクが大きくなるほど、コイル16に印加される交流電圧の周波数が高くなると共に電流値も大きくなるため、コイル16のインダクタンスが大きくなって、コイル16に印加する電圧の位相とコイルに流れる電流の位相との位相差も大きくなる。従って本発明ように、ロータ12の回転数が増加するに従いホールセンサ17が検知する磁束密度波形の位相の進みが大きくなる方が、効率良く電動機10を駆動できるというメリットがある。
【0023】
以上のように、本発明のホールセンサ17の配置とすることで、従来の問題点であったコイル通電した場合にホールセンサが検出する磁束密度波形のゼロクロス点の位相遅れによる電流位相の切り替えタイミングの遅れが無くなる。本発明においては、ホールセンサが検出する磁束密度波形のゼロクロス点が全て位相が進む方向への変化として検知されるため、ステータ13のコイル16の電流位相を進めて切り替えタイミングを早める進角制御を行う必要がなく、ホールセンサ17で検知したロータ磁石14の回転位置に基づいてモータを駆動するだけで、モータを最適な進角で駆動することが可能となり、効率良くモータを駆動できる。
【0024】
前記実施例においては、ホールセンサ17の設置位置について、径方向についてはロータ磁石14とコイル16との間であること、軸方向についてはステータコア15の上端面とロータ磁石14の上端面との間であることを条件とした。ここで、ホールセンサ17の設置位置については、さらに、ステータ13の周方向の設置位置も磁束密度波形に影響する。
【0025】
具体的には、図10(a)及び(b)に示すように、ステータコア15は、最外周側に環状に形成されたヨーク151と、このヨーク151から所定間隔(例えば、30°)毎に内周側(ロータ磁石側)に延びたティース152とで構成されており、ティース152の先端のロータ磁石14に面している箇所は対向面積を広く確保したティース先端部153として形成してある。ここで、ステータ13の内周面を周方向に見ていくと、30°毎に隣のティース先端部153との境界が現れる。本発明においてはこのティース先端部153の上端面上にホールセンサ17を形成することを条件としているが、ホールセンサ17を隣のステータコア15との境界付近に設置すると、隣接するティース152に巻かれたコイル16からの磁束が影響して、必ずしも位相が進み方向に変化しないという問題がある。
【0026】
そこで、ホールセンサ17の周方向の設置位置については、前記ティースの先端部の上端面上に配置されると共に、隣接するティースに巻き回されるコイルからの影響を受けないように、周方向においてティースの中央付近に位置するように配置することで、確実に位相が進み方向に変化する。具体的には、巻線の巻かれたティース152の中心部分の幅の範囲内に収まるように配置することが好ましい。
【0027】
前記実施例においては、位置検知素子としてホールセンサ17を用いて説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。ホールセンサに限らず、回転軸方向の磁束密度Bzを検出可能な位置検知素子であればよく、例えば、磁気抵抗素子なども適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
10…電動機、11…回転軸、12…ロータ、121…ロータコア、13…ステータ、14…ロータ磁石、15…ステータコア、151…ヨーク、152…ティース、153…ティース先端部、16…コイル、17…ホールセンサ、18…基板、19…リード線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10