(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被写体に照明光が照射されたとき及び照射されていないときの各々において、複数の波長帯の光の各々で撮像された複数の画像のいずれかの画素値に基づいて、該画像内に環境光の影響の強さに応じた複数の領域を設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された領域毎に、前記環境光の波長帯毎のスペクトル強度比を示すスペクトルバランスを推定する推定手段と、
前記推定手段により推定された環境光のスペクトルバランスに基づいて、環境光の波長帯毎のスペクトル強度が一定となるように、前記複数の波長帯の画像の各々における前記領域内の画素の画素値を補正する補正手段と、
を含む画像処理装置。
前記推定手段は、同一波長帯における前記照明光が照射されたときの画像と前記照明光が照射されていないときの画像との差分値、前記照明光が照射されていないときの画像の画素値、及び前記照明光の波長帯毎のスペクトル強度比に基づいて、前記環境光のスペクトルバランスを推定する請求項1記載の画像処理装置。
前記推定手段は、前記差分値及び前記照明光が照射されていないときの画像の画素値の各々を、前記領域内において空間積分した値を用いて、前記環境光のスペクトルバランスを推定する請求項2記載の画像処理装置。
前記設定手段は、前記複数の波長帯のいずれかの画像の輝度値、及びいずれかの同一波長帯における前記照明光が照射されたときの画像と前記照明光が照射されていないときの画像との差分値の少なくとも一方と、環境光の影響の強さに応じて予め定めた閾値とを比較することにより、前記領域を設定する請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の画像処理装置。
前記設定手段は、照度計により計測した前記環境光の照度、または時刻もしくは前記環境光の光源位置により推定された環境光の強度に基づいて、前記領域を設定する請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の画像処理装置。
前記推定手段は、前記環境光のスペクトルバランスとして、前記識別手段で用いる画像の波長帯における前記環境光のスペクトル強度比を推定する請求項6記載の物体識別装置。
前記識別手段は、前記閾値を前記環境光の影響の強さに応じて前記領域毎に設定し、前記領域毎に前記識別対象の物体を識別し、前記領域毎の識別結果を統合する請求項6または請求項7記載の物体識別装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、屋外環境においてはストロボ等による照射光が輝度値に反映されない場合がある。例えば、太陽光が強く照射されている物体表面ではストロボを照射した画像と照射しない画像との間で輝度値に大きな変化が表れない。このような領域に対して特許文献1の手法を適用すると、計算される被写体の分光反射率情報は誤差を多く含んだ情報になる、という問題がある。
【0007】
また、特許文献2の技術では、画像中に環境光を全反射するような領域が含まれると仮定して、輝度の大きい上位2%程度の画素群から光源の分光情報を算出している。しかしながら、一般的に環境光を全反射するような領域はその他の領域に比べて格段に入射光量が大きいため、画素値が飽和していることが多い。画素値の飽和は輝度情報の欠落を意味するため、光源の分光スペクトル情報を復元することは困難である。また、画像中で輝度の大きい領域が必ずしも環境光を全反射する領域に対応しているという保証はなく、入力シーンに応じて環境光とは異なる分光情報が算出され、誤った規格化により想定した被写体の分光反射率が正しく求められない場合がある、という問題がある。
【0008】
また、特許文献3の技術では、ユーザによって指定された白色点の輝度値を基準としてマルチバンド画像におけるホワイトバランスを調整している。しかしながら、一般的な屋外環境を入力画像とした場合、必ずしも適切な白色点が画像中に含まれるとは限らない。また、白色点をユーザが指定する構成では装置の自動化の実現に不向きである、という問題がある。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、環境光の影響を考慮した適切な補正を行うことができる画像処理装置及びプログラム、並びに適切に補正された画像から精度良く物体を識別することができる物体識別装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の画像処理装置は、被写体に照明光が照射されたとき及び照射されていないときの各々において、複数の波長帯の光の各々で撮像された複数の画像のいずれかの画素値に基づいて、該画像内に環境光の影響の強さに応じた複数の領域を設定する設定手段と、前記設定手段により設定された領域毎に、前記環境光の波長帯毎のスペクトル強度比を示すスペクトルバランスを推定する推定手段と、前記推定手段により推定された環境光のスペクトルバランスに基づいて、環境光の波長帯毎のスペクトル強度が一定となるように、前記複数の波長帯の画像の各々における前記領域内の画素の画素値を補正する補正手段と、を含んで構成されている。
【0011】
本発明の画像処理装置によれば、設定手段が、被写体に照明光が照射されたとき及び照射されていないときの各々において、複数の波長帯の光の各々で撮像された複数の画像のいずれかの画素値に基づいて、画像内に環境光の影響の強さに応じた複数の領域を設定する。そして、推定手段が、設定手段により設定された領域毎に、環境光の波長帯毎のスペクトル強度比を示すスペクトルバランスを推定し、補正手段が、推定手段により推定された環境光のスペクトルバランスに基づいて、環境光の波長帯毎のスペクトル強度が一定となるように、複数の波長帯の画像の各々における領域内の画素の画素値を補正する。
【0012】
このように、環境光の影響の強さに応じた領域、すなわち同様のスペクトルバランスになると考えられる領域を設定し、領域毎に推定した環境光のスペクトルバランスに基づいて画素値を補正するため、環境光の影響を考慮した適切な補正を行うことができる。
【0013】
また、前記推定手段は、同一波長帯における前記照明光が照射されたときの画像と前記照明光が照射されていないときの画像との差分値、前記照明光が照射されていないときの画像の画素値、及び前記照明光の波長帯毎のスペクトル強度比に基づいて、前記環境光のスペクトルバランスを推定することができる。この場合、前記推定手段は、前記差分値及び前記照明光が照射されていないときの画像の画素値の各々を、前記領域内において空間積分した値を用いて、前記環境光のスペクトルバランスを推定することができる。これにより、暗電流などによるノイズの影響を減少させ、環境光のスペクトルバランスの推定精度を向上させることができる。
【0014】
また、前記設定手段は、前記複数の波長帯のいずれかの画像の輝度値、及びいずれかの同一波長帯における前記照明光が照射されたときの画像と前記照明光が照射されていないときの画像との差分値の少なくとも一方と、環境光の影響の強さに応じて予め定めた閾値とを比較することにより、前記領域を設定することができる。これにより、環境光の影響の強さに応じた領域を適切に設定することができる。
【0015】
また、前記設定手段は、照度計により計測した前記環境光の照度、または時刻もしくは前記環境光の光源位置により推定された環境光の強度に基づいて、前記領域を設定することができる。これにより、環境光の影響の強さに応じた領域をより適切に設定することができる。
【0016】
また、上記目的を達成するために、本発明の物体識別装置は、上記の画像処理装置と、前記補正手段により補正された複数の波長帯の画像の各々の画素値に基づく値と、前記照明光に対する識別対象の物体の分光反射率特性に基づいて予め定めた閾値とを比較して、前記識別対象の物体を識別する識別手段と、を含んで構成されている。
【0017】
本発明の物体識別装置によれば、識別手段が、推定手段により推定された領域毎の環境光のスペクトルバランスに基づいて、補正手段により補正された複数の波長帯の画像の各々の画素値に基づく値と、照明光に対する識別対象の物体の分光反射率特性に基づいて予め定めた閾値とを比較して、識別対象の物体を識別する。
【0018】
環境光のスペクトルバランスが崩れている場合には、識別対象の物体の分光反射率特性に基づいた識別処理が適切に行えない場合があるが、環境光のスペクトルバランスに基づいて補正された画素値を用いることで、精度良く物体を識別することができる。
【0019】
また、前記推定手段は、前記環境光のスペクトルバランスとして、前記識別手段で用いる画像の波長帯における前記環境光のスペクトル強度比を推定することができる。これにより、スペクトルバランスの推定処理を軽減することができる。
【0020】
また、前記識別手段は、前記閾値を前記環境光の影響の強さに応じて前記領域毎に設定し、前記領域毎に前記識別対象の物体を識別し、前記領域毎の識別結果を統合することができる。これにより、環境光の影響の強さを考慮したより適切な識別を行うことができる。
【0021】
また、前記設定手段は、
環境光の影響の強さが強い領域か又は弱い領域かを判定するための領域閾値と、前記複数の画像のいずれかの画素値に基づく値、又は、同一波長帯における前記照明光が照射されたときの画像と前記照明光が照射されていないときの画像との差分値とを比較して、該画像内に環境光の影響が強い領域と弱い領域とを設定し、前記推定手段は、前記環境光の影響が強い領域における前記環境光のスペクトルバランスを推定し、前記補正手段は、前記推定手段により推定された環境光のスペクトルバランスに基づいて、前記環境光の影響が強い領域内の画素の画素値を補正し、前記識別手段は、前記環境光の影響が弱い領域は、前記補正手段による補正前の画像を用いて前記識別対象の物体を識別し、前記環境光の影響が強い領域は、前記補正手段による補正後の画像を用いて前記識別対象の物体を識別することができる。これにより、全体的な処理軽減と共に識別精度を向上することができる。
【0022】
また、本発明の画像処理プログラムは、コンピュータを、被写体に照明光が照射されたとき及び照射されていないときの各々において、複数の波長帯の光の各々で撮像された複数の画像のいずれかの画素値に基づいて、該画像内に環境光の影響の強さに応じた複数の領域を設定する設定手段、前記設定手段により設定された領域毎に、前記環境光の波長帯毎のスペクトル強度比を示すスペクトルバランスを推定する推定手段、及び前記推定手段により推定された環境光のスペクトルバランスに基づいて、環境光の波長帯毎のスペクトル強度が一定となるように、前記複数の波長帯の画像の各々における前記領域内の画素の画素値を補正する補正手段として機能させるためのプログラムである。
【0023】
また、本発明の物体識別プログラムは、コンピュータを、上記の画像処理装置を構成する各手段、及び前記補正手段により補正された複数の波長帯の画像の各々の画素値に基づく値と、前記照明光に対する識別対象の物体の分光反射率特性に基づいて予め定めた閾値とを比較して、前記識別対象の物体を識別する識別手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明の画像処理装置及びプログラムによれば、環境光の影響の強さに応じた領域、すなわち同様のスペクトルバランスになると考えられる領域を設定し、領域毎に推定した環境光のスペクトルバランスに基づいて画素値を補正するため、環境光の影響を考慮した適切な補正を行うことができる、という効果が得られる。
【0025】
また、本発明の物体識別装置及びプログラムによれば、上記のように補正された画素値を用いて識別処理を行うことにより、精度良く物体を識別することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0028】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る画像処理装置10は、対象領域を撮像する撮像装置12と、対象領域に光を照射する照明装置14と、撮像装置12から出力される画像データを処理するコンピュータ16と、コンピュータ16での処理結果を表示するための表示装置18とを備えている。
【0029】
撮像装置12は、対象領域を撮像し、画像信号を生成する撮像部(図示省略)、撮像部で生成されたアナログ信号である画像信号をデジタル信号に変換するA/D変換部(図示省略)、及びA/D変換された画像信号を一時的に格納するための画像メモリ(図示省略)を備えている。本実施の形態では、近赤外領域の3つの波長帯(例えば、中心波長870nm、970nm、1050nm、半値幅50nm)の各々に対応した画像を撮像することができるマルチバンドカメラを用いる。撮像装置12の構成については特に限定しないが、各波長帯の画像の全てで光軸及び視野角が揃った画像が撮像される構成が望ましい。例えば、単板式カラーカメラで用いられるBayerフィルタのように画素単位で異なる透過特性を持つフィルタを貼り合わせた構成としてもよいし、プリズムで分光して各波長帯に対応した複数の撮像素子の各々により各波長帯の画像を取得する構成としてもよい。
【0030】
照明装置14は、撮像装置12の視野角内に存在する被写体に向けて近赤外領域の光を照射する。照明光は撮像装置12の受光可能な波長帯域を含む。照明装置14は撮像装置12のシャッターに連動してストロボのように動作し、撮像装置12では、3つの波長帯毎に、被写体に照明光を照射したときに撮像された画像データ(画像Ip)と、照明光を照射していないときに撮像された画像データ(画像Ie)とが取得される。
【0031】
コンピュータ16は、画像処理装置10全体の制御を司るCPU、後述する画像処理ルーチンのプログラム等を記憶した記憶媒体としてのROM、ワークエリアとしてデータを一時格納するRAM、及びこれらを接続するバスを含んで構成されている。このような構成の場合には、各構成要素の機能を実現するためのプログラムをROMに記憶しておき、これをCPUが実行することによって、各機能が実現されるようにする。
【0032】
このコンピュータ16をハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、
図1に示すように、撮像装置12から出力された画像に対して、環境光の影響の強さに応じた領域を設定する領域設定部22と、設定された領域毎に環境光のスペクトルバランスを推定する環境光推定部24と、推定結果に基づいて画像の輝度値を補正する画像補正部26とを含んだ構成で表すことができる。なお、領域設定部22は本発明の設定手段の一例であり、環境光推定部24は本発明の推定手段の一例であり、画像補正部26は本発明の補正手段の一例である。
【0033】
領域設定部22は、入力された画像(3波長帯×照明光の有無)のいずれかを用いて、画素単位または所定数の画素群からなる小領域単位で環境光の影響を分析し、環境光の影響の強さに応じて複数の領域を設定する。例えば、環境光の影響の強さをいくつかのレベルに分けて、画素または小領域の環境光の影響の強さがどのレベルに属するかを判定して領域を設定する。例えば、輝度値の大きさを環境光の影響の強さとみなして、いずれかの波長帯の画像Ieの明るさ(輝度値)L(Ie)に対して段階的な閾値を設け、各画素の輝度値、または小領域に含まれる各画素の輝度値の平均を閾値と比較することにより、領域を設定する。このとき、画像Ieだけでなく画像Ipの輝度値L(Ip)を利用してもよい。この他に、同波長帯の2つの画像IpとIeとの照明有無差分画像を生成し、その差分値によって環境光の影響の強さを推定することも有効である。例えば、ある波長帯λの画像Ip
λと画像Ie
λとの照明有無差分画像の各照明有無差分値I
λ=L(Ip
λ)−L(Ie
λ)の値が小さいほど環境光の影響の度合いが大きい領域として設定する。
【0034】
また、L(Ip
λ)及びL(Ie
λ)の少なくとも一方とI
λとの両方を領域設定の判定基準として利用してもよい。さらには、照度計や太陽位置推定部を別途設けて、太陽光の照射角度や時間に応じた強度などを領域設定に利用してもよい。また、設定される複数の領域は重複を許すように設定してもよい。
【0035】
環境光推定部24は、各領域に含まれる環境光のスペクトルバランスSを推定する。ここで、近赤外の3波長帯に対する環境光のスペクトル強度の比は下記(1)式により求められる。
【0037】
ただし、各記号の添え字は波長帯を表す。また、Dは照明装置14の既知のスペクトルバランスから得られる3波長帯の各々のスペクトル強度の比である。実際には3波長帯間のスペクトル強度比が分かればよいので、例えば1050nm帯を基準として、下記(2)式により環境光のスペクトルバランスSを求めればよい。
【0039】
なお、(1)式において、分母の照明有無差分値I
λは非常に重要であるが、屋外環境の太陽光を環境光として想定した場合には、照明光は環境光よりも照射強度が非常に小さいため、照明有無差分値I
λも小さくなる。このため、撮像装置12の暗電流など、ランダム性の高いノイズの影響を受け易くなる。そこで、環境光は領域全体に渡って一様であると仮定し、下記(3)式に示すように、領域内で輝度値及び照明有無差分値を空間的に積分する。これにより、ノイズの影響を減少させ、環境光のスペクトルバランスSの推定精度を向上させることができる。
【0041】
画像補正部26は、環境光推定部24で推定された領域毎の環境光のスペクトルバランスSに基づいて、領域内の各画素の輝度値を補正する。具体的には、L(Ie
870)には、(2)式で求めた比率S
870/S
1050の逆数を掛け、L(Ie
970)には、(2)式で求めた比率S
970/S
1050の逆数を掛ける。
【0042】
また、画像補正部26は、輝度値が補正された各波長帯の画像Ie’を合成したマルチバンド画像を生成し、生成したマルチバンド画像が表示装置18に表示されるように制御する。
【0043】
次に、第1の実施の形態に係る画像処理装置10の作用について説明する。
【0044】
照明装置14により被写体に照明が照射されたとき、及び照射されていないときに撮像装置12により被写体の撮像が行われ、撮像装置12から各波長帯の画像データ(Ip
870、Ip
970、Ip
1050、Ie
870、Ie
970、Ie
1050)が出力されると、コンピュータ16において、
図2に示す画像処理ルーチンが実行される。
【0045】
ステップ100で、領域設定部22が、撮像装置12から出力された各画像データを取得し、次に、ステップ102で、取得した画像のいずれかを用いて、画素単位または小領域単位で環境光の影響を分析し、環境光の影響の強さに応じて複数の領域を設定する。
【0046】
次に、ステップ104で、領域設定部22が、上記ステップ102で設定された領域から1つの領域を選択する。
【0047】
次に、ステップ106で、環境光推定部24が、上記ステップ104で選択された領域に含まれる環境光のスペクトルバランスSを、各画像の輝度値(L(Ip
870)、L(Ip
970)、L(Ip
1050)、L(Ie
870)、L(Ie
970)、L(Ie
1050))及び照明装置14による照明光の3波長帯のスペクトル強度の比(D
870、D
970、D
1050)を用いて、(3)式により推定する。
【0048】
次に、ステップ108で、画像補正部26が、上記ステップ106で推定された環境光のスペクトルバランスSを(2)式により表した比率を用いて、各波長帯の画像Ieの輝度値を補正する。
【0049】
次に、ステップ110で、領域設定部22が、上記ステップ102で設定された全領域について処理が終了したか否かを判定し、未処理の領域が存在する場合には、ステップ104へ戻って、次の領域を選択して、ステップ106及び108の処理を繰り返す。全ての領域について処理が終了した場合には、ステップ112へ移行し、画像補正部26が、輝度値が補正された各波長帯の画像Ie’を合成したマルチバンド画像を生成し、生成したマルチバンド画像が表示装置18に表示されるように制御して、画像処理ルーチンを終了する。
【0050】
環境光が強く当たっている箇所、反射した環境光が当たっている箇所、環境光がほとんど当たっていない箇所等により、環境光は様々なスペクトルバランスとなるが、本実施の形態の画像処理装置によれば、環境光の影響の強さに応じた領域、すなわち同様のスペクトルバランスになると考えられる領域を設定し、領域毎に環境光のスペクトルバランスを推定して、環境光のスペクトルバランスがフラットになるように輝度値を補正するため、環境光の影響を考慮した適切な補正を行うことができる。
【0051】
このような画像処理を行うことで、領域毎のホワイトバランス調整が可能となり、例えば、画像暗部の色かぶりのような現象を補正することができる。
【0052】
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、第1の実施の形態で説明した画像処理装置を適用した物体識別装置について説明する。ここでは、識別対象の物体を人肌(人物の肌)とする場合について説明する。なお、第2の実施の形態に係る物体識別装置において、第1の実施の形態に係る画像処理装置10と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0053】
図3に示すように、第2の実施の形態に係る物体識別装置210は、撮像装置12と、照明装置14と、コンピュータ216と、表示装置18とを備えている。
【0054】
コンピュータ216は、機能的には、領域設定部222と、環境光推定部224と、画像から人肌領域を識別する第1識別部28及び第2識別部30と、第1識別部28及び第2識別部30の識別結果を統合する統合処理部32とを含んだ構成で表すことができる。なお、第1識別部28、第2識別部30、及び統合処理部32は本発明の識別手段の一例である。
【0055】
領域設定部222は、第1の実施の形態における領域設定部22と同様に、環境光の影響の強さに応じて複数の領域を設定する。ここでは、環境光の影響が強い領域A及び環境光の影響が弱い領域Bの2つの領域を設定するものとする。
【0056】
環境光推定部224は、領域設定部222において領域Aに設定された領域について、第1の実施の形態と同様に、環境光のスペクトルバランスSを推定する。
【0057】
第1識別部28は、領域設定部222で領域Bに設定された領域について、取得した画像(3波長帯×照明光の有無)の各々にノイズ除去のためのフィルタリング処理を施し、同一波長帯の画像毎にIpとIeとの照明有無差分画像を生成する。そして、画素単位または小領域単位で、生成した照明有無差分画像の照明有無差分値I
λを用いて、下記(4)式及び(5)式に示す波長間差分値Id
1及びId
2を算出する。
【0058】
Id
1=I
870−I
970 (4)
Id
2=I
1050−I
970 (5)
【0059】
図4に示すように、人肌の分光反射率は970nmが最も低く、870nm、1050nmでは970nm帯よりも高い。したがって、上記で求めた2つの差分値に対する閾値Th
1及びTh
2を設定し、下記(6)式に示す条件を満たす画素または小領域を人肌領域として識別して、人肌領域を示すフラグを付与する。
【0060】
Id
1>Th
1 ∧ Id
2>Th
2 (6)
【0061】
第2識別部30は、画像補正部26による補正後の画像Ie’の各領域に対して、下記(7)式及び(8)式に示す波長間差分値Id’
1及びId’
2を算出し、第1識別部28と同様に、人肌領域を示すフラグを付与する。
【0062】
Id’
1=Ie’
870−Ie’
970 (7)
Id’
2=Ie’
1050−Ie’
970 (8)
【0063】
なお、第2識別部30の処理対象となる領域は環境光の影響が強い領域Aであるが、環境光の影響が強いほど
図4に示すような人肌の分光反射特性が明確に現れ難い場合もある。そこで、Th
1’<Th
1及びTh
2’<Th
2となる閾値Th
1及びTh
2’を用いて、下記(9)式を人肌領域の識別条件とする。
【0064】
Id’
1>Th
1’ ∧ Id’
2>Th
2’ (9)
【0065】
統合処理部32は、第1識別部28の識別結果と第2識別部30の識別結果とを統合する。領域Aと領域Bとに重複がなければ、人肌領域のフラグが付いた画素または小領域を抽出及び合成することにより、識別結果を統合することができる。領域Aと領域Bとに重複がある場合には、人肌領域のフラグが付いた画素または小領域の論理和や論理積をとる形で合成してもよいし、環境光の影響の強さや領域の面積、領域内での環境光スペクトルのバラつきなどに基づいて、人肌領域の識別結果の信頼性を判定して統合するようにしてもよい。画素単位で人肌領域のフラグを付与した場合には、ノイズの多い統合結果となるため、膨張・縮退処理などによりノイズを除去したものを最終の識別結果としてもよい。
【0066】
次に、第2の実施の形態に係る物体識別装置210の作用について説明する。
【0067】
照明装置14により被写体に照明が照射されたとき、及び照射されていないときに撮像装置12により被写体の撮像が行われ、撮像装置12から各波長帯の画像データ(Ip
870、Ip
970、Ip
1050、Ie
870、Ie
970、Ie
1050)が出力されると、コンピュータ216において、
図5に示す物体識別処理ルーチンが実行される。なお、物体識別処理ルーチンについて、第1の実施の形態における画像処理ルーチンと同一の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0068】
ステップ100で、領域設定部222が、撮像装置12から出力された各画像データを取得し、次に、ステップ200で、取得した画像のいずれかを用いて、画素単位または小領域単位で環境光の影響を分析し、環境光の影響が強い領域A及び環境光の影響が弱い領域Bの2つの領域を設定する。
【0069】
次に、ステップ104で、領域設定部222が、上記ステップ200で設定された領域から1つの領域を選択する。
【0070】
次に、ステップ202で、領域設定部222が、上記ステップ104で選択した領域が領域Aか否かを判定する。選択した領域が領域A(環境光の影響が強い領域)の場合には、ステップ106へ移行し、
図6に示すように、環境光推定部224が、上記ステップ104で選択された領域に含まれる環境光のスペクトルバランスSを推定し、次に、ステップ108で、画像補正部26が、上記ステップ106で推定された環境光のスペクトルバランスSに基づいて、各波長帯の画像Ieの輝度値を補正して、ステップ204の人肌識別処理へ移行する。
【0071】
一方、ステップ202で、選択した領域が領域B(環境光の影響が弱い領域)であると判定された場合には、
図6に示すように、ステップ106及び108をスキップして、ステップ204の人肌識別処理へ移行する。
【0072】
ここで、
図7を参照して、第1識別部28または第2識別部30が実行する人肌識別処理ルーチンについて説明する。
【0073】
まず、領域Bについて(上記ステップ106及び108をスキップした場合)は、ステップ2040で、取得した画像(3波長帯×照明光の有無)の各々にノイズ除去のためのフィルタリング処理を施し、
図8に示すように、同一波長帯の画像毎にIpとIeとの照明有無差分画像を生成する。
【0074】
次に、ステップ2042で、画素単位または小領域単位で、上記ステップ2040で生成した照明有無差分画像の照明有無差分値I
λを用いて、(4)式及び(5)式に示す波長間差分値Id
1及びId
2を算出する。
【0075】
次に、ステップ2044で、上記ステップ2042で算出した波長間差分値Id
1及びId
2が、(6)式に示す条件を満たすか否かを判定することにより、各画素または各小領域が人肌領域か否かを識別する。各画素または各小領域が人肌領域であると識別された場合には、ステップ2046へ移行して、人肌領域と識別された画素または小領域に人肌領域のフラグを付与して、ステップ2048へ移行する。一方、人肌領域ではないと識別された場合には、そのままステップ2048へ移行する。
図8に、人肌領域のフラグが付与された画素または小領域を白で表示した人肌識別結果の一例を示す。
【0076】
次に、ステップ2048では、処理中の領域内の全画素または全小領域について、人肌識別の処理が終了したか否かを判定する。未処理の画素または小領域が存在する場合には、ステップ2042へ戻って、ステップ2042〜2046の処理を繰り返す。全画素または全小領域について処理が終了した場合には、人肌識別処理ルーチンを終了して、物体識別処理ルーチンにリターンする。
【0077】
また、領域Aについて(上記ステップ106及び108を経た場合)は、ステップ2040をスキップし、次に、ステップ2042で、画素単位または小領域単位で、上記ステップ108で補正された画像Ie’を用いて、(7)式及び(8)式に示す波長間差分値Id’
1及びId’
2を算出する。
【0078】
次に、ステップ2044で、上記ステップ2042で算出した波長間差分値Id’
1及びId’
2が、(9)式に示す条件を満たすか否かを判定することにより、各画素または各小領域が人肌領域か否かを識別する。以下、領域Bの場合と同様に処理して、物体識別処理ルーチンにリターンする。
【0079】
次に、ステップ110で、領域設定部222が、上記ステップ200で設定された全領域について処理が終了したか否かを判定し、未処理の領域が存在する場合には、ステップ104へ戻って、次の領域を選択して、ステップ202〜204の処理を繰り返す。全ての領域について処理が終了した場合には、ステップ206へ移行する。
【0080】
ステップ206では、統合処理部32が、
図8に示すように、上記ステップ204で識別された領域Aの人肌領域の識別結果と、領域Bの人肌領域の識別結果とを統合し、膨張・縮退処理などによりノイズを除去して最終の識別結果を得る。次に、ステップ208で、統合処理部32が、識別結果が表示装置18に表示されるように制御して、物体識別処理ルーチンを終了する。
【0081】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る物体識別装置によれば、第1の実施の形態と同様に、環境光の影響の強さに応じた領域、すなわち同様のスペクトルバランスになると考えられる領域を設定し、領域毎に環境光のスペクトルバランスを推定して、環境光のスペクトルバランスがフラットになるように輝度値を補正した上で、波長間差分値を用いた物体の識別処理を行うため、精度良く物体を識別することができる。
【0082】
なお、第2の実施の形態では、識別対象の物体を人肌とする場合について説明したが、これに限定されない。他の物体を識別対象とする場合には、識別対象の分光反射率特性に応じた複数の波長帯の画像を撮像し、また、識別対象の分光反射率特性に応じた識別条件を設定するようにするとよい。
【0083】
また、第2の実施の形態では、環境光の影響の強さに応じて設定した領域毎に物体識別処理を行う場合について説明したが、補正後の画像から共通の識別条件により識別処理を行うようにしてもよい。この場合、統合処理部を省略することができる。
【0084】
また、第2の実施の形態では、領域A及びBの2つの領域を設定する場合を例に説明したが、環境光の影響の程度や、光源の種類や方向などに応じて3つ以上の領域を設定するようにしてもよい。この場合、第1の実施の形態で述べたように、領域毎に(3)式に示したような領域内での空間積分を行ってスペクトルバランスを推定するようにすればよい。
【0085】
また、第2の実施の形態では、人肌領域の識別結果を表示装置に表示する場合について説明したが、歩行者検出システムの候補設定に利用するなど、後段のシステムの入力情報として利用してもよい。
【0086】
なお、本願明細書中において、プログラムが予めインストールされている実施形態として説明したが、当該プログラムをCDROM等の記憶媒体に格納して提供することも可能である。