(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のガイドホール/ガイドピンは、前記レンズアレイに光伝送体および/または光電変換装置を取り付ける際における前記光伝送体および/または前記光電変換装置の位置決めに用いられるものであること
を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のレンズアレイの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ただし、レンズアレイの場合には、光減衰フィルムを、ある程度の深さを有する凹入された光学面上に、しかも、他の光学部品との接合をともなわずに単独で貼着させることが求められる場合があり、このような場合には、特許文献1、2のような光学部品(光コネクタ)同士の突き合わせの原理をそのまま利用することはできないので、光減衰フィルムを貼着不良(皺、気泡、めくれ、浮き等)が少ない状態で貼着できるように別の工夫が求められる。
【0012】
また、レンズアレイにおいては、互いに異なるレンズ同士が近接した位置関係にあるため、光減衰フィルムの貼着位置にズレが生じることによって、意図しないレンズに光減衰特性が付与されてしまうことがないように、高精度な貼着を行うことが求められる。その一方で、高精度な貼着のために煩雑な位置調整作業を強いられることは、却ってコストの増大を招く虞があるので、貼着のための作業工数も、必要最小限に抑える必要がある。
【0013】
さらに、光減衰フィルムの貼着には、光減衰フィルムの粘着力を機能させるために光減衰フィルムをある程度光学面側に押し付けることが必要ではあるが、貼着完了後においてまで光減衰フィルムに対して徒に応力を作用させることは、光減衰フィルムの光学特性を著しく悪化させることに繋がるため確実に避けなければならない。具体的には、レンズアレイにおいて光減衰フィルムを取り扱う場合には、実使用時に光ファイバおよび光電変換装置を取り付けることまでも予め考慮して、光ファイバまたは光電変換装置の取り付けの際および取り付け状態において、既に光学面に貼着されている光減衰フィルムに取り付けによる応力が作用しないようにすることが求められる。
【0014】
そこで、本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、粘着性光学フィルムに基づく特定の光学特性の付与を、簡便、適正かつ低コストで実現することができるレンズアレイの製造方法およびこれに用いるフィルム
担持基板およびフィルム貼着用治具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するため、本発明の請求項1に係るレンズアレイの製造方法の特徴は、『光軸方向(以下、「z方向」と定義する)に互いに間隔を設けて配置された第1面および第2面と、前記第1面上に、z方向に直交する所定の整列方向(以下、「x方向」と定義する)に沿って整列形成された複数のレンズ面と、これら複数のレンズ面を通過する光が通過すべき前記第2面上の光学面であって、前記第2面上に前記複数のレンズ面をz方向から投影させた場合における投影領域の全てを包含する前記第2面の中央の所定範囲の領域をなし、この領域の周辺の領域に対して凹部を以て前記レンズ面側に凹入され、z方向に直交するように配置された平面状の光学面と、前記第2面の前記周辺の領域上における前記光学面を挟んでx方向において互いに対向する位置に、z方向に平行に配設された一対の第1のガイドホールまたはガイドピンとを有するレンズアレイ本体(I)』と、このレンズアレイ本体(I)の前記光学面における前記複数のレンズ面のうちの少なくとも一部のレンズ面の前記投影領域を包含する貼着領域(i)上に、自身の粘着力を以て貼着された粘着性光学フィルム(D)とを備えたレンズアレイを製造するためのレンズアレイの製造方法であって、前記粘着性光学フィルム(D)が
担持されたフィルム
担持基板(II)として、『基板本体(A)のz方向に対応する「z”方向」の一方の表面における前記貼着領域(i)に対応する
担持領域(ii)上に、この
担持領域(ii)側から順に、接着層(B)、非粘着性の第1剥離フィルム(C)、前記粘着性光学フィルム(D)、非粘着性の第2剥離フィルム(E)および粘着層(F)が積層され、前記第1剥離フィルム(C)と前記粘着性光学フィルム(D)との剥離強度である第1の剥離強度f(C)−(D)が、前記粘着性光学フィルム(D)と前記第2剥離フィルム(E)との剥離強度である第2の剥離強度f(D)−(E)よりも小さく形成され、前記基板本体(A)の前記一方の表面における前記
担持領域(ii)の外側領域上であって、前記
担持領域(ii)を挟んでx方向に対応する「x”方向」において互いに対向する位置に、前記一対の第1のガイドホール/ガイドピンにそれぞれ対応する一対の第2のガイドホールまたはガイドピンが、z”方向に平行に配設されたフィルム
担持基板(II)』を用意し、前記貼着領域(i)上に前記粘着性光学フィルム(D)を貼着するためのフィルム貼着用治具(III)として、『治具本体におけるz方向に対応する「z’方向」の一方の端面で
あり、前記フィルム
担持基板(II)および前記レンズアレイ本体(I)に臨ませるべき端面上に、前記フィルム
担持基板(II)および前記レンズアレイ本体(I)の側に向かってz’方向に平行に突設
されたフィルム保持用凸部であって、その先端面における前記貼着領域(i)および前記
担持領域(ii)に対応する保持領域(iii)上に、前記フィルム
担持基板(II)および前記レンズアレイ本体(I)と協働して前記粘着性光学フィルム(D)を一時的に保持することが可能とされたフィルム保持用凸部と、前記治具本体の前記一方の端面上における前記フィルム保持用凸部を挟んでx方向に対応する「x’方向」において互いに対向する位置に、z’方向に平行に配設され、前記一対の第1のガイドホール/ガイドピンにそれぞれ対応するとともに、前記一対の第2のガイドホール/ガイドピンにそれぞれ対応する一対のピンまたはホールとを備えたフィルム貼着用治具(III)』を用意し、更に、前記レンズアレイ本体(I)、前記フィルム
担持基板(II)および前記フィルム貼着用治具(III)は、『前記
担持領域(ii)に位置・寸法が対応する前記保持領域(iii)を前記フィルム保持用凸部の先端面上に確保し、前記保持領域(iii)に位置・寸法が対応する前記貼着領域(i)を前記光学面上に確保し、前記第2面の前記凹部への前記フィルム保持用凸部の挿入を確保するための、前記第1のガイドホール/ガイドピン、前記第2のガイドホール/ガイドピンおよび前記ピン/ホールのそれぞれの中心を基準とした前記
担持領域(ii)、前記フィルム保持用凸部、前記光学面および前記レンズ面の位置・寸法設定がなされた』ものとし、以上を前提として、前記フィルム
担持基板(II)における前記
担持領域(ii)上の前記積層物(B)〜(F)に、前記フィルム貼着用治具(III)における前記フィルム保持用凸部の先端面を臨ませた状態で、前記フィルム貼着用治具(III)の前記一対のピン/ホールを、前記フィルム
担持基板(II)の前記一対の第2のガイドホール/ガイドピンに通して、前記フィルム保持用凸部の前記保持領域(iii)と、最上層である前記粘着層(F)の上面とを、前記粘着層(F)の粘着力を以て貼り合わせる第1のステップと、この第1のステップの後に、前記一対のピン/ホールを前記一対の第2のガイドホール/ガイドピンから離脱させて、前記第1の剥離強度f(C)−(D)と前記第2の剥離強度f(D)−(E)との大小関係を以て、前記第1剥離フィルム(C)と前記粘着性光学フィルム(D)との間での剥離を生じさせて、上層側の3層(D)〜(F)を、前記フィルム保持用凸部の前記保持領域(iii)上に保持させた状態で、基板本体(A)側に残る下層側の2層(B)、(C)から分離させる第2のステップと、この第2のステップの後に、前記レンズアレイ本体(I)の前記光学面に、前記フィルム保持用凸部の前記保持領域(iii)上に保持された前記3層(D)〜(F)を臨ませた状態で、前記一対のピン/ホールを、前記レンズアレイ本体(I)の前記一対の第1のガイドホール/ガイドピンに通すとともに、前記フィルム保持用凸部を前記3層(D)〜(F)とともに前記第2面の前記凹部に挿入させて、前記3層(D)〜(F)のうちの最下層である前記粘着性光学フィルム(D)の下面を、前記光学面における前記貼着領域(i)上に、前記粘着性光学フィルム(D)の粘着力を以て貼り付ける第3のステップと、この第3のステップの後に、前記一対のピン/ホールを前記一対の第1のガイドホール/ガイドピンから離脱させて、前記粘着性光学フィルム(D)と前記第2剥離フィルム(E)との間での剥離を生じさせて、上層側の2層(E)、(F)を、前記フィルム保持用凸部の前記保持領域(iii)上に保持させたままの状態で、前記貼着領域(i)側に残る前記粘着性光学フィルム(D)から分離させる第4のステップとを順次実行することによって、前記貼着領域(i)上に前記粘着性光学フィルム(D)が前記第2面の前記周辺の領域よりも前記レンズ面側に凹入された状態で貼着された前記レンズアレイを得る点にある。
【0016】
ここで、「剥離強度」とは、「JIS−Z0237、粘着テープ・粘着シート試験方法の90°引きはがし粘着力」に準じた測定法に基づくものである。
【0017】
そして、この請求項1に係る発明によれば、フィルム貼着用治具(III)のフィルム保持用凸部によって、これの保持領域(iii)に保持された粘着性光学フィルム(D)を、レンズアレイ本体(I)の凹入された光学面上に届かせることができるので、光学面における少なくとも一部のレンズ面に対応する貼着領域(i)上への粘着性光学フィルム(D)の貼着を、貼着不良が少ない状態で適正に行うことができる。また、所望の引き剥がし順に応じて、剥離強度が巧妙に配分されたフィルム
担持基板(II)を用いることによって、フィルム
担持基板(II)からフィルム貼着用治具(III)への粘着性光学フィルム(D)の受け渡しと、フィルム貼着用治具(III)からレンズアレイ本体(I)への粘着性光学フィルム(D)の受け渡しといった単純な工程を踏むだけで、粘着性光学フィルム(D)を簡便に貼着することができる。さらに、このとき、フィルム貼着用治具(III)のピン/ホールを、フィルム
担持基板(II)の第2のガイドホール/ガイドピンおよびレンズアレイ本体(I)の第1のガイドホール/ガイドピンによってガイドすることにより、フィルム
担持基板(II)−フィルム貼着用治具(III)間における粘着性光学フィルム(D)の受け渡しと、フィルム貼着用治具(III)−レンズアレイ本体(I)間における粘着性光学フィルム(D)の受け渡しとをスムーズにサポートすることができるため、粘着性光学フィルム(D)の貼着作業がより一層楽になる。さらにまた、このとき、フィルム貼着用治具(III)のピン/ホール、フィルム
担持基板(II)の第2のガイドホール/ガイドピンおよびレンズアレイ本体(I)の第1のガイドホール/ガイドピンのそれぞれの中心を基準として、
担持領域(ii)、保持領域(iii)および貼着領域(i)の位置的・寸法的な整合および第2面の凹部へのフィルム保持凸部の挿入が確保されるように、
担持領域(ii)、フィルム保持用凸部、光学面およびレンズ面の位置・寸法設定がなされていることによって、単純な工程でありながら高精度な粘着性光学フィルム(D)の貼着を実現することができる。また、貼着領域(i)への貼着後の粘着性光学フィルム(D)が、第2面の周辺の領域から突出しないようにすることができるので、貼着後の粘着性光学フィルム(D)に、光伝送体または光電変換装置の取り付けのための応力が作用しないようにすることができる。このようにして、本願の所期の目的を確実に達成することができる。
【0018】
また、請求項2に係るレンズアレイの製造方法の特徴は、請求項1において、更に、前記レンズアレイ本体(I)は、『前記光学面が、z方向から見た場合に、x方向に沿って長尺かつx方向およびz方向に直交する方向(以下、「y方向」と定義する)に沿って短尺な矩形状を呈し、前記一対の第1のガイドホール/ガイドピンの中心同士を結ぶz方向に直交する第1仮想線分が、z方向から見た場合に、x方向に平行であって、前記光学面のy方向における中心線に合致しており、前記第1仮想線分を二等分するy方向に平行な垂直二等分線が、z方向から見た場合に、前記光学面のx方向における中心線に合致する』ものとし、前記フィルム
担持基板(II)は、『前記
担持領域(ii)上の積層物(B)〜(F)が、z”方向から見た場合に、x”方向に沿った外形線部とx”方向およびz”方向に直交する「y”方向」に沿った外形線部とによって構成された矩形状を呈し、前記一対の第2のガイドホール/ガイドピンの中心同士を結ぶz”方向に直交する第2仮想線分が、x”方向に平行である』ものとし、前記フィルム貼着用治具(III)は、『前記フィルム保持用凸部の先端面が、z’方向から見た場合に、x’方向に沿って長尺かつx’方向およびz’方向に直交する「y’方向」に沿って短尺な矩形状を呈し、前記一対のピン/ホールの中心同士を結ぶz’方向に直交する第3仮想線分が、z’方向から見た場合に、x’方向に平行であって、前記フィルム保持用凸部の先端面のy’方向における中心線に合致しており、前記第3仮想線分を二等分するy’方向に平行な垂直二等分線が、z’方向から見た場合に、前記フィルム保持用凸部の先端面のx’方向における中心線に合致する』ものとし、更に、前記レンズアレイ本体(I)、前記フィルム
担持基板(II)および前記フィルム貼着用治具(III)は、『次の(1)〜(8)に示す各条件式
【0019】
(y、y’、y”方向側条件式)
a1+Δy>a1’+Δy’≧b”+Δy” (1)
a2+Δy>a2’+Δy’≧|a”−b”|+Δy” (2)
b”+Δy”>b1+Δy (3)
|a”−b”|+Δy”>|b1−b2|+Δy (4)
(x、x’、x”方向側条件式)
c1+Δx>c1’+Δx’≧d”+Δx” (5)
c2+Δx>c2’+Δx’≧|c”−d”|+Δx” (6)
d”+Δx”>d1+Δx (7)
|c”−d”|+Δx”>|d1−d2|+Δx (8)
但し、各条件式のパラメータは以下のとおりである。
【0020】
<前記レンズアレイ本体(I)側のパラメータ>
a1:前記光学面のy方向における中心位置から前記光学面の外周端におけるx方向に沿った一方の長辺部までのy方向の距離
a2:前記光学面のy方向における中心位置から前記光学面の外周端における前記一方の長辺部にy方向において対向する他方の長辺部までのy方向の距離
b1:前記光学面のy方向における中心位置から前記少なくとも一部のレンズ面の前記投影領域のy方向における最も遠い一端までのy方向の距離
b2:前記少なくとも一部のレンズ面の前記投影領域のy方向の寸法
c1:前記光学面のx方向における中心位置から前記光学面の外周端におけるy方向に沿った一方の短辺部までのx方向の距離
c2:前記光学面のx方向における中心位置から前記光学面の外周端における前記一方の短辺部にx方向において対向する他方の短辺部までのx方向の距離
d1:前記光学面のx方向における中心位置から前記少なくとも一部のレンズ面の前記投影領域のx方向における最も遠い一端までのx方向の距離
d2:前記少なくとも一部のレンズ面の前記投影領域のx方向の寸法
Δy:前記第1のガイドホール/ガイドピンの中心を基準とした前記レンズ面のy方向の位置公差、前記レンズ面のy方向の径公差および前記光学面のy方向の寸法公差の総公差
Δx:前記第1のガイドホール/ガイドピンの中心を基準とした前記レンズ面のx方向の位置公差、前記レンズ面のx方向の径公差および前記光学面のx方向の寸法公差の総公差
【0021】
<前記フィルム貼着用治具(III)側のパラメータ>
a1’:前記フィルム保持用凸部の先端面のy’方向における中心位置から当該先端面の外周端におけるx’方向に沿った一方の長辺部までのy’方向の距離
a2’:前記フィルム保持用凸部の先端面のy’方向における中心位置から当該先端面の外周端における前記一方の長辺部にy’方向において対向する他方の長辺部までのy’方向の距離
c1’:前記フィルム保持用凸部の先端面のx’方向における中心位置から当該先端面の外周端におけるy’方向に沿った一方の短辺部までのx’方向の距離
c2’:前記フィルム保持用凸部の先端面のx’方向における中心位置から当該先端面の外周端における前記一方の短辺部にx’方向において対向する他方の短辺部までのx’方向の距離
Δy’:前記ピン/ホールの中心を基準とした前記フィルム保持用凸部の先端面のy’方向の寸法公差
Δx’:前記ピン/ホールの中心を基準とした前記フィルム保持用凸部の先端面のx’方向の寸法公差
【0022】
<前記フィルム
担持基板(II)側のパラメータ>
a”:前記
担持領域(ii)上の前記積層物(B)〜(F)のy”方向の寸法
b”:前記第2仮想線分から前記積層物(B)〜(F)のy”方向における最も遠い一端までのy”方向の距離
c”:前記積層物(B)〜(F)のx”方向の寸法
d”:前記第2仮想線分を二等分するy”方向に平行な垂直二等分線から前記積層物(B)〜(F)のx”方向における最も遠い一端までのx”方向の距離
Δy”:前記第2のガイドホール/ガイドピンの中心を基準とした前記積層物(B)〜(F)のy”方向の寸法公差
Δx”:前記第2のガイドホール/ガイドピンの中心を基準とした前記積層物(B)〜(F)のx”方向の寸法公差
を満足する』
ものとする点にある。
【0023】
そして、この請求項2に係る発明によれば、(1)〜(8)の各条件式を満足することによって、貼着領域(i)上への粘着性光学フィルム(D)の貼着を更に高精度に行うことができる。
【0024】
さらに、請求項3に係るレンズアレイの製造方法の特徴は、請求項1または2において、更に、前記少なくとも一部のレンズ面は、x方向に沿って整列された同列のレンズ面のうちの一部のレンズ面の場合と、x方向に沿って整列されたレンズ面の列が、y方向に間隔を設けて複数列形成されている場合における一部の列の全てのレンズ面の場合とを含む点にある。
【0025】
そして、この請求項3に係る発明によれば、一部のレンズ面のみに対応した粘着性光学フィルム(D)の貼着を、レンズ面のレイアウトのバリエーションに柔軟に対応しつつ実現することができる。
【0026】
さらにまた、請求項4に係るレンズアレイの製造方法の特徴は、請求項1〜3のいずれか1項において、更に、前記粘着性光学フィルム(D)は、光減衰フィルムである点にある。
【0027】
そして、この請求項4に係る発明によれば、光減衰フィルムの貼着を、簡便かつ高精度に行うことができるとともに、光伝送体の取り付けにともなう光減衰フィルムへの応力の作用を確実に回避することができる。
【0028】
また、請求項5に係るレンズアレイの製造方法の特徴は、請求項1〜4のいずれか1項において、更に、前記粘着性光学フィルム(D)は、複数層構造を有するものである点にある。
【0029】
そして、この請求項5に係る発明によれば、粘着性光学フィルム(D)の光学特性および粘着性等の機能の調整を行いやすくすることができる。
【0030】
さらに、請求項6に係るレンズアレイの製造方法の特徴は、請求項1〜5のいずれか1項において、更に、前記第1のガイドホール/ガイドピンは、前記レンズアレイに光伝送体および/または光電変換装置を取り付ける際における前記光伝送体および/または前記光電変換装置の位置決めに用いられるものである点にある。
【0031】
そして、この請求項6に係る発明によれば、レンズアレイの既存の構造を粘着性光学フィルム(D)の貼着に活用することができるので、コストを更に削減することができる。
【0032】
さらにまた、請求項7に係るフィルム
担持基板(II)の特徴は、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレンズアレイの製造方法に用いられる
フィルム担持基板(II)であって、基板本体(A)のz方向に対応する「z”方向」の一方の表面における前記貼着領域(i)に対応する担持領域(ii)上に、この担持領域(ii)側から順に、接着層(B)、非粘着性の第1剥離フィルム(C)、前記粘着性光学フィルム(D)、非粘着性の第2剥離フィルム(E)および粘着層(F)が積層され、前記第1剥離フィルム(C)と前記粘着性光学フィルム(D)との剥離強度である第1の剥離強度f(C)−(D)が、前記粘着性光学フィルム(D)と前記第2剥離フィルム(E)との剥離強度である第2の剥離強度f(D)−(E)よりも小さく形成され、前記基板本体(A)の前記一方の表面における前記担持領域(ii)の外側領域上であって、前記担持領域(ii)を挟んでx方向に対応する「x”方向」において互いに対向する位置に、前記一対の第1のガイドホール/ガイドピンにそれぞれ対応する一対の第2のガイドホールまたはガイドピンが、z”方向に平行に配設された点にある。
【0033】
そして、この請求項7に係る発明によれば、レンズアレイ本体(I)およびフィルム貼着用治具(III)との協働によって、粘着性光学フィルム(D)に基づく特定の光学特性の付与を、簡便、適正かつ低コストで実現することができる。
【0034】
また、請求項8に係るフィルム
担持基板(II)の特徴は、請求項7において、更に、前記第1剥離フィルム(C)および前記第2剥離フィルム(E)は、いずれも、離型処理面が前記粘着性光学フィルム(D)側に配置され、
【0035】
更に、前記第2のステップにおいて、次の(9)に示す条件式、
但し、
f(A)−(B):前記基板本体(A)と前記接着層(B)との剥離強度である第3の剥離強度
f(B)−(C):前記接着層(B)と前記第1剥離フィルム(C)との剥離強度である第4の剥離強度
f(E)−(F):前記第2剥離フィルム(E)と前記粘着層(F)との剥離強度である第5の剥離強度
f(F)−(III):前記粘着層(F)と前記フィルム貼着用治具(III)との剥離強度である第6の剥離強度
を満足し、
【0036】
更に、前記第4のステップにおいて、次の(10)に示す条件式、
但し、
f(I)−(D):前記レンズアレイ本体(I)と前記粘着性光学フィルム(D)との剥離強度である第7の剥離強度
を満足する点にある。
【0037】
ここで、(9)式および(10)式の右辺に示されるカンマで区切られた複数の剥離強度は、これらの剥離強度の間での大小関係は問わない(大小関係を規定しなくても本請求項の作用効果を適正に奏する)意味であり、実際の大小関係の有無を拘束するものではない(以下、同様)。
【0038】
そして、この請求項8に係る発明によれば、所望の引き剥がし順に応じた剥離強度の配分を確実に実現することができる。
【0039】
さらに、請求項9に係るフィルム貼着用治具(III)の特徴は、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレンズアレイの製造方法に用いられる
フィルム貼着用治具(III)であって、治具本体におけるz方向に対応する「z’方向」の一方の端面であって、前記フィルム担持基板(II)および前記レンズアレイ本体(I)に臨ませるべき端面上に、前記フィルム担持基板(II)および前記レンズアレイ本体(I)の側に向かってz’方向に平行に突設され、その先端面における前記貼着領域(i)および前記担持領域(ii)に対応する保持領域(iii)上に、前記フィルム担持基板(II)および前記レンズアレイ本体(I)と協働して前記粘着性光学フィルム(D)を一時的に保持することが可能とされたフィルム保持用凸部と、前記治具本体の前記一方の端面上における前記フィルム保持用凸部を挟んでx方向に対応する「x’方向」において互いに対向する位置に、z’方向に平行に配設され、前記一対の第1のガイドホール/ガイドピンにそれぞれ対応するとともに、前記一対の第2のガイドホール/ガイドピンにそれぞれ対応する一対のピンまたはホールとを備えた点にある。
【0040】
そして、この請求項9に係る発明によれば、レンズアレイ本体(I)およびフィルム
担持基板(II)との協働によって、粘着性光学フィルム(D)に基づく特定の光学特性の付与を、簡便、適正かつ低コストで実現することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、粘着性光学フィルムに基づく特定の光学特性の付与を、簡便、適正かつ低コストで実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明に係るレンズアレイの製造方法の実施形態について、
図1〜
図27を参照して説明する。
【0044】
<レンズアレイの構成>
図1は、本実施形態におけるレンズアレイの製造方法によって製造されるレンズアレイ1を示す断面図である。また、
図2は、
図1の平面図である。さらに、
図3は、
図1の下面図である。さらにまた、
図4は、後述するレンズアレイ本体(I)の平面図である。
【0045】
図1〜
図3に示すように、レンズアレイ1は、レンズアレイ本体(I)と、粘着性光学フィルム(D)とによって構成されている。
【0046】
ここで、レンズアレイ本体(I)は、平面略長方形状の板状の外観を有しており、板厚方向に相当する方向が、光学面の基準軸の軸方向となる光軸方向に設定されている。以下、光軸方向を、「z方向」と定義する。
【0047】
図1に示すように、レンズアレイ本体(I)は、z方向に互いに間隔を設けて配置された互いに対向する第1面S1と第2面S2とを有している。第1面S1および第2面S2は、ともに、z方向に直交している。
【0048】
そして、
図1および
図3に示すように、第1面S1上には、レンズアレイ本体(I)の長手方向となる所定の整列方向に沿って、互いに同径とされた平面円形状の複数(同図においては12個)のレンズ面2(
図1においては凸レンズ面)が、等ピッチで1列整列形成されている。以下、このレンズ面2の整列方向を、「x方向」と定義する。なお、
図3に示すように、x方向において互いに隣位するレンズ面2同士は、その外周端同士が互いに接するように配置されていてもよい。また、
図3において、各レンズ面2は、第1面S1の中央の所定範囲の位置に、第2面S2側に向かって凹入形成された平面略長方形状の凹部3の底面3a上に形成されている。ただし、底面3aは、第1面S1における凹部3の周辺の部位に対して平行とされている。また、
図1に示すように、各レンズ面2の光軸OAは、互いに平行とされており、勿論、光軸方向であるz方向にも平行とされている。
【0049】
一方、
図1、
図2および
図4に示すように、第2面S2は、x方向に沿って長尺かつx方向およびz方向に直交する方向(以下、「y方向」と定義する)に沿って短尺とされた所定範囲の略矩形状の中央領域4が、これを包囲する矩形枠状の周辺領域5に対して、凹部6を以てレンズ面2側に凹入されている。すなわち、中央領域4は、凹部6の底面4をなしている。そして、この中央領域4は、各レンズ面2を通過する光が事後的(送信用の場合)または事前(受信用の場合)に通過すべき光学面4とされている。
図1に示すように、光学面4は、周辺領域5に対して平行かつz方向に直交する平面に形成されている。また、
図4に示すように、光学面4は、第2面S2上に各レンズ面2をz方向から投影させた場合における投影領域(
図4ハッチング部)2’の全てを包含している。
【0050】
また、
図1、
図2および
図4に示すように、周辺領域5上における光学面4を挟んでx方向において互いに対向する位置には、互いに同径の円形状の開口を有する一対の第1ガイドホール7が、第1面S1側に向かってz方向に平行に穿設されている。各第1ガイドホール7は、
図1および
図3に示すように貫通孔であってもよいし、有底穴であってもよい。
図4に示すように、各第1ガイドホール7の中心同士を結ぶz方向に直交する第1仮想線分L1は、z方向から見た場合に、x方向に平行であって、光学面4のy方向における中心線(光学面4のy方向における中心位置を示す線)に合致している。なお、第1仮想線分L1は、レンズ面2の投影領域2’についてのy方向における中心線にも合致している。また、
図4に示すように、第1仮想線分L1を二等分するy方向に平行な垂直二等分線Bi1は、z方向から見た場合に、光学面4のx方向における中心線(光学面4のx方向における中心位置を示す線)に合致している。なお、垂直二等分線Bi1は、全てのレンズ面2の投影領域2’についてのx方向における中心線にも合致している。
【0051】
このようなレンズアレイ本体(I)は、例えば、射出成形金型を用いたポリエーテルイミド等の透明樹脂材料の射出成形によって一体的に形成するようにしてもよい。
【0052】
さらに、
図1および
図2に示すように、粘着性光学フィルム(D)は、光学面4における各レンズ面2のうちの一部のレンズ面2のみの投影領域2’を包含する貼着領域(i)に、自身の粘着力を以て貼着されている。
図1に示すように、粘着性光学フィルム(D)における露出側(非貼着側)の面(
図1における上面)は、周辺領域5よりもレンズ面2側に凹入されている。この粘着性光学フィルム(D)の具体的な構成は次に述べる。
【0053】
<フィルム
担持基板(II)の構成>
次に、
図5は、本実施形態におけるレンズアレイ1の製造方法に用いるフィルム
担持基板(II)の構成を示す模式図である。また、
図6は、フィルム
担持基板(II)の平面図である。
【0054】
以下、フィルム
担持基板(II)において、x方向に対応する設計がなされた方向(x方向に対応する方向)を「x”方向」と定義し、y方向に対応する設計がなされた方向(y方向に対応する方向)を「y”方向」と定義し、z方向に対応する設計がなされた方向(z方向に対応する方向)を「z”方向」と定義する。
【0055】
図5に示すように、フィルム
担持基板(II)は、粘着性光学フィルム(D)が
担持された基板であり、このフィルム
担持基板(II)は、z”方向に直交する基板本体(A)を有している。そして、この基板本体(A)のz”方向の一方の表面(
図5では上面)における貼着領域(i)に対応する
担持領域(ii)上には、
担持領域(ii)側から上方に向かって順に、接着層(B)、非粘着性の第1剥離フィルム(C)、粘着性光学フィルム(D)、非粘着性の第2剥離フィルム(E)および粘着層(F)が積層されている。
【0056】
また、第1剥離フィルム(C)と粘着性光学フィルム(D)との剥離強度である第1の剥離強度f(C)−(D)は、粘着性光学フィルム(D)と第2剥離フィルム(E)との剥離強度である第2の剥離強度f(D)−(E)よりも小さく形成されている。このような剥離強度の大小関係は、後述する剥離フィルム(C)、(E)の形成材料の調整等によって実現してもよい。加えて、第1剥離フィルム(C)と粘着性光学フィルム(D)の間、または第2剥離フィルム(E)と粘着性光学フィルム(D)の間に、後述する剥離機能層を設けることでも剥離強度の大小関係を調整することができる。例えば、第1剥離フィルム(C)を後述する基材上に剥離機能層が積層された構成とし、かかる剥離機能層を粘着性光学フィルム(D)と隣接させる構成や、第2剥離フィルム(E)を後述する基材上に剥離機能層が積層された構成とし、かかる剥離機能層を粘着性光学フィルム(D)と隣接させる構成が挙げられる。
【0057】
また、
図7(a)に示すように、粘着性光学フィルム(D)は、単層構造に形成してもよく、または、
図7(b)に示すように、複数層構造(同図においてはD1とD2との二層)に形成してもよい。ここで、粘着性光学フィルム(D)を複数層構造に形成する場合には、粘着性光学フィルム(D)の機能を、例えば、光減衰率等についての支配的な層、粘着力等についての支配的な層といった具合に各層に所望の態様で割り当てることもできるので、粘着性光学フィルム(D)の機能の調整が行いやすくなる。この場合に、後述する染料または顔料成分は、複数層構造のいずれか、もしくは全てに加えてもよい。
【0058】
なお、基板本体(A)は、無機材料および有機材料のいずれによって形成してもよく、特に限定されるものではないが、例えば、ガラス板、金属板、プラスチック板、フィルム等を用いることができる。これらの材料は、使用する接着層(B)に応じて適宜選択すればよい。
【0059】
また、接着層(B)としては、例えば、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等の各種熱硬化性樹脂や、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の各種熱可塑性樹脂を使用することができる。これらの樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0060】
また、その他にも、接着層(B)としては、感圧接着剤を使用することができる。感圧接着剤としては、乾燥後も接着性が失われない自着性を有し、加圧により接着する接着剤であれば良いが、特に自着性エマルジョン塗料が望ましい。
【0061】
自着性エマルジョン塗料としては、天然ゴム系接着成分と平滑な表面性を有する有機および無機充填剤等の非接着成分を添加した構成が好ましい。
【0062】
このような天然ゴム系成分としては、生天然ゴムラテックス、加硫天然ゴムラテックス、およびメタクリル酸メチル(MMA)をグラフト重合した天然ゴムラテックス等が挙げられる。加硫天然ゴムラテックスの加硫剤としては、硫黄、含硫黄化合物、有機過酸化物、金属酸化物、有機多価アミン、および変性フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0063】
有機充填剤としては、セルロース粉末、サツマイモ澱粉、じゃがいも澱粉、小麦澱粉、とうもろこし澱粉、コメ澱粉、タピオカ澱粉、スチレンビーズ、メタクリル酸メチルビーズ等が挙げられる。これらの有機充填剤は、平均粒径が5〜30μmと大きいため、感圧接着剤に添加した場合、感圧接着剤層の表面に凹凸を与え、接着力の調整を行うことができ、さらには耐ブロッキング性を向上させ、滑り性を付与することができる。したがって、これらの有機充填剤は、粉末形状で添加するのが好ましい。また、本発明の目的から、これら粒子は、平滑な表面性を有している必要がある。
【0064】
無機充填剤としては、有機充填剤と同様、表面性状が平滑であれば限定されず、種々の微粒子が使用できるが、球状シリカ、ガラスビーズが好ましい。一方、重質炭酸カルシウム、合成シリカ、タルク、カオリンクレー、酸化亜鉛、アルミナ、マイカ等は、無定形であるため好ましくない。
【0065】
また、自着性エマルジョン塗料には、必要に応じて、分散剤、消泡剤、界面活性剤、老化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を添加することができる。
【0066】
さらに、第1剥離フィルム(C)および第2剥離フィルム(E)は、剥離機能層を基材上に積層したものであればよいのであって、その成分と基材の種類は特に限定されるものではない。剥離機能層としては、例えばシリコーン成分もしくはフッ素成分等を含有するものを使用することができる。シリコーン成分としては、シリコーンオイル、シリコーンワニスおよびシリコーン樹脂のいずれの性状のものも本発明に供される。基材は1μm〜1000μm程度の厚さを有するものであれば好ましい。当該範囲であれば、基材が可撓性を有するため製造上有利である。基材の厚みの下限値は、より好ましくは10μmであり、さらに好ましくは20μmである。基材の厚みの上限値は、より好ましくは200μmであり、さらに好ましくは50μmである。これら基材の厚みの下限値および上限値は、好ましい範囲、より好ましい範囲、さらに好ましい範囲を適宜組み合わせることができる。基材としては、紙または樹脂フィルムを使用することが好ましい。これらの紙または樹脂フィルムは可撓性を有する。樹脂フィルムは特に制限されるものではなく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、トリアセチルセルロース、シリコーンゴム、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂フィルム、ポリビニルアルコールフィルム等を使用することができる。
【0067】
剥離フィルム(C)、(E)の種類は、剥離機能層に含まれるシリコーン成分もしくはフッ素成分の量が多いものから順に、軽剥離フィルム、中剥離フィルム、重剥離フィルムとなるが、いずれのものを使用してもよい。なお、剥離フィルムとして離型紙を使用してもよい。
【0068】
また、基材の表面には粘着層、剥離機能層、接着層等を設けるため、その塗布性を向上させる予備処理として、その表面にはコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理的な処理を施すことが好ましい。かかる物理的な処理により剥離強度も上昇するため、剥離強度を高くしたい部分には物理的な処理を施すことが好ましい。
【0069】
さらにまた、粘着性光学フィルム(D)は、染料または顔料を分散させた粘着剤(粘着剤の溶液を塗布、乾燥させたもの)によって構成してもよい。この場合に、染料としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料等を用いてもよい。また、顔料としては、イソインドリノン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、アゾ系、ナフトール系、キノフタロン系、アゾメチン系、ベンズイミダゾロン系、ペリノン系、ピランスロン系、ペリレン系、ヒランスロン系、フタロシアニン系、スレン系、カーボンブラック等を用いてもよい。さらに、粘着剤としては、高分子材料、例えば、アクリル系、エポキシ系、ビニル系、シリコーン系、ゴム系、ウレタン系、メタクリル系、ナイロン系、ビスフェノール系、ジオール系、ポリイミド系、フッ素化エポキシ系、フッ素化アクリル系等の各種粘着剤を使用してもよく、また、必要に応じて、これらを混合したり、硬化剤やフッ素樹脂を加えたりしてもよい。なお、前述のように、粘着性光学フィルム(D)を複数層構造にする場合には、粘着剤と硬化剤との組合わせや配合量等に差を設けることで、互いに異なる機能(例えば、光減衰率や粘着力等)を有するように構成してもよい。
【0070】
染料または顔料の配合量は、光吸収材の仕様によって異なるが、0.01重量%〜10重量%が好ましい。
【0071】
また、粘着性光学フィルム(D)の膜厚は、第2面S2の周辺領域5と光学面4との段差よりも薄く形成することが望ましい。
【0072】
さらに、粘着層(F)は、基本的に粘着性光学フィルム(D)と同様の材料によって構成してもよいが、第2剥離フィルム(E)と粘着層(F)との剥離強度である第5の剥離強度が、第2の剥離強度よりも大きくなるように、粘着性光学フィルム(D)よりも粘着力を大きく形成する必要がある。
【0073】
さらにまた、
図6に示すように、基板本体(A)の上面における
担持領域(ii)の外側領域上であって、
担持領域(ii)を挟んでx”方向において互いに対向する位置には、前述した一対の第1ガイドホール7にそれぞれ対応する互いに同内径の円形状の開口を有する一対の第2ガイドホール10が、基板本体(A)の下面側に向かってz”方向に穿設されている。各第2ガイドホール10は、貫通孔であってもよいし、または、有底穴であってもよい。また、各第2ガイドホール10は、各第1ガイドホール7と同内径であってもよい。
【0074】
また、
図6に示すように、
担持領域(ii)上の積層物(B)〜(F)は、z”方向から見た場合に、x”方向に沿った外形線部とy”方向に沿った外形線部とによって構成された矩形状を呈しており、この形状は、
担持領域(ii)の形状とz”方向において合致して(重なって)いる。
【0075】
さらに、
図6に示すように、各第2ガイドホール10の中心同士を結ぶz”方向に直交する第2仮想線分L2は、x”方向に平行とされている。
【0076】
<フィルム貼着用治具(III)の構成>
次に、
図8は、本実施形態におけるレンズアレイ1の製造方法に用いるフィルム貼着用治具(III)(治具本体)を示す正面図である。また、
図9は、
図8の右側面図である。さらに、
図10は、
図9のA−A断面図である。さらにまた、
図11は、
図8のB−B断面図である。また、
図12は、
図8の要部下面図である。
【0077】
以下、フィルム貼着用治具(III)において、x方向に対応する設計がなされた方向(x方向に対応する方向)を「x’方向」と定義し、y方向に対応する設計がなされた方向(y方向に対応する方向)を「y’方向」と定義し、z方向に対応する設計がなされた方向(z方向に対応する方向)を「z’方向」と定義する。
【0078】
図8〜
図11に示すように、フィルム貼着用治具(III)は、略直方体状の筐体12を有しており、この筐体12の底壁部には、z’方向に沿った貫通孔12a(
図10、
図11参照)が穿設されている。また、
図11に示すように、筐体12の背壁部の前端面上における貫通孔12aの近傍位置には、治具の主要部が搭載されたマウント部14が取り付けられており、このマウント部14の下端面は、貫通孔12aを通って筐体12内部から下方に突出(露出)されている。そして、このマウント部14の下端面は、「z’方向の一方の端面であって、フィルム
担持基板(II)およびレンズアレイ本体(I)に臨ませるべき端面」に相当する。
図8〜
図11に示すように、マウント部14の下端面上には、フィルム保持用凸部15が、フィルム
担持基板(II)およびレンズアレイ本体(I)の側となる下方に向かってz’方向に平行に突設されている。このフィルム保持用凸部15は、その先端面15a(
図8〜
図11では下端面)における貼着領域(i)および
担持領域(ii)に対応する保持領域(iii)(
図12参照)上に、フィルム
担持基板(II)およびレンズアレイ本体(I)と協働して、粘着性光学フィルム(D)を一時的に保持することが可能とされている。フィルム保持用凸部15は、粘着層(F)を適切に粘着させることができる材質(例えば、ポリフェニルサルファイド、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド等)によって形成されている。
【0079】
また、
図8、
図10、
図12に示すように、マウント部14の下端面上におけるフィルム保持用凸部15を挟んでx’方向において互いに対向する位置には、一対の第1ガイドホール7にそれぞれ対応するとともに、一対の第2ガイドホール10にそれぞれ対応する互いに同径の円形状の外周形状を有する一対のピン16が、フィルム
担持基板(II)およびレンズアレイ本体(I)の側(下方)に向かってz’方向に平行に突設されている。各ピン16の外径は、各1ガイドホール7および各第2ガイドホール10の内径よりも僅かに小さく形成されている。
【0080】
さらに、
図12に示すように、フィルム保持用凸部15の先端面15aは、z’方向から見た場合に、x’方向に沿って長尺かつy’方向に沿って短尺な矩形状を呈している。
【0081】
さらにまた、
図12に示すように、一対のピン16の中心同士を結ぶz’方向に直交する第3仮想線分L3は、z’方向から見た場合に、x’方向に平行であって、フィルム保持用凸部15の先端面15aのy’方向における中心線に合致している。また、
図12に示すように、第3仮想線分L3を二等分するy’方向に平行な垂直二等分線Bi3は、z’方向から見た場合に、フィルム保持用凸部15の先端面15aのx’方向における中心線に合致している。
【0082】
また、
図10に示すように、一対のピン16は、筐体12内に配設されたコイルばね等の付勢部材17によって下方に付勢されている。
【0083】
<(I)、(II)、(III)の相関関係>
更に、レンズアレイ本体(I)、フィルム
担持基板(II)およびフィルム貼着用治具(III)は、第1ガイドホール7、第2ガイドホール10およびピン16のそれぞれの中心を基準とした
担持領域(ii)(換言すれば、積層物(B)〜(F))、フィルム保持用凸部15、光学面4およびレンズ面2の位置・寸法設定がなされている。この位置・寸法設定は、
担持領域(ii)に位置・寸法が対応する保持領域(iii)をフィルム保持用凸部15の先端面15a上に確保し、保持領域(iii)に位置・寸法が対応する貼着領域(i)を光学面4上に確保し、第2面S2の凹部6へのフィルム保持用凸部15の挿入を確保することを可能とするものである。
【0084】
より具体的には、レンズアレイ本体(I)、フィルム
担持基板(II)およびフィルム貼着用治具(III)は、次の(1)〜(8)に示す各条件式を満足するように設定されている。
【0085】
(y、y’、y”方向側条件式)
a1+Δy>a1’+Δy’≧b”+Δy” (1)
a2+Δy>a2’+Δy’≧|a”−b”|+Δy” (2)
b”+Δy”>b1+Δy (3)
|a”−b”|+Δy”>|b1−b2|+Δy (4)
(x、x’、x”方向側条件式)
c1+Δx>c1’+Δx’≧d”+Δx” (5)
c2+Δx>c2’+Δx’≧|c”−d”|+Δx” (6)
d”+Δx”>d1+Δx (7)
|c”−d”|+Δx”>|d1−d2|+Δx (8)
但し、各条件式のパラメータは以下のとおりである。
【0086】
<レンズアレイ本体(I)側のパラメータ>
a1:(1)式の左辺に含まれるこのパラメータは、
図13に示すように、光学面4のy方向における中心位置から光学面4の外周端におけるx方向に沿った一方の長辺部までのy方向の距離である。
a2:(2)式の左辺に含まれるこのパラメータは、
図13に示すように、光学面4のy方向における中心位置から光学面4の外周端におけるa1で述べた一方の長辺部にy方向において対向する他方の長辺部までのy方向の距離である。
b1:(3)式の右辺および(4)式の右辺に含まれるこのパラメータは、
図13に示すように、光学面4のy方向における中心位置から前記一部のレンズ面2のみの投影領域2’のy方向における最も遠い一端までのy方向の距離である。
b2:(4)式の右辺に含まれるこのパラメータは、
図13に示すように、前記一部のレンズ面2のみの投影領域2’のy方向の寸法(換言すれば、レンズ面2のy方向の寸法)である。
c1:(5)式の左辺に含まれるこのパラメータは、
図13に示すように、光学面4のx方向における中心位置から光学面4の外周端におけるy方向に沿った一方の短辺部までのx方向の距離である。
c2:(6)式の左辺に含まれるこのパラメータは、
図13に示すように、光学面4のx方向における中心位置から光学面4の外周端におけるc1で述べた一方の短辺部にx方向において対向する他方の短辺部までのx方向の距離である。
d1:(7)式の右辺および(8)式の右辺に含まれるこのパラメータは、
図13に示すように、光学面4のx方向における中心位置から前記一部のレンズ面2のみの投影領域2’のx方向における最も遠い一端までのx方向の距離である。
d2:(8)式の右辺に含まれるこのパラメータは、
図13に示すように、前記一部のレンズ面2のみの投影領域2’のx方向の合計寸法(換言すれば、前記一部のレンズ面2のx方向の合計寸法)である。
Δy:(1)式および(2)式の左辺、(3)式および(4)式の右辺に含まれるこのパラメータは、第1ガイドホール7の中心を基準としたレンズ面2のy方向の位置(中心位置)公差、レンズ面2のy方向の径公差および光学面4のy方向の寸法公差の総公差である。
Δx:(5)式および(6)式の左辺、(7)式および(8)式の右辺に含まれるこのパラメータは、第1ガイドホール7の中心を基準としたレンズ面2のx方向の位置公差、レンズ面2のx方向の径公差および光学面4のx方向の寸法公差の総公差である。
【0087】
<フィルム貼着用治具(III)側のパラメータ>
a1’:(1)式の中辺に含まれるこのパラメータは、
図14に示すように、フィルム保持用凸部15の先端面15aのy’方向における中心位置から先端面15aの外周端におけるx’方向に沿った一方の長辺部までのy’方向の距離である。
a2’:(2)式の中辺に含まれるこのパラメータは、
図14に示すように、フィルム保持用凸部15の先端面15aのy’方向における中心位置から先端面15aの外周端におけるa1’で述べた一方の長辺部にy’方向において対向する他方の長辺部までのy’方向の距離である。
c1’:(5)式の中辺に含まれるこのパラメータは、
図14に示すように、フィルム保持用凸部15の先端面15aのx’方向における中心位置から先端面15aの外周端におけるy’方向に沿った一方の短辺部までのx’方向の距離である。
c2’:(6)式の中辺に含まれるこのパラメータは、
図14に示すように、フィルム保持用凸部15の先端面15aのx’方向における中心位置から先端面15aの外周端におけるc1’で述べた一方の短辺部にx’方向において対向する他方の短辺部までのx’方向の距離である。
Δy’:(1)式および(2)式の中辺に含まれるこのパラメータは、ピン16の中心を基準としたフィルム保持用凸部15の先端面15aのy’方向の寸法公差である。
Δx’:(5)式および(6)式の中辺に含まれるこのパラメータは、ピン16の中心を基準としたフィルム保持用凸部15の先端面15aのx’方向の寸法公差である。
【0088】
<フィルム
担持基板(II)側のパラメータ>
a”:(2)式の右辺および(4)式の左辺に含まれるこのパラメータは、
図15に示すように、
担持領域(ii)上の積層物(B)〜(F)のy”方向の寸法である。これは、換言すれば、
担持領域(ii)のy”方向の寸法である。
b”:(1)式および(2)式の右辺、(3)式および(4)式の左辺に含まれるこのパラメータは、
図15に示すように、第2仮想線分L2から積層物(B)〜(F)(換言すれば、
担持領域(ii))のy”方向における最も遠い一端までのy”方向の距離である。
c”:(6)式の右辺および(8)式の左辺に含まれるこのパラメータは、
図15に示すように、積層物(B)〜(F)(換言すれば、
担持領域(ii))のx”方向の寸法である。
d”:(5)式および(6)式の右辺、(7)式および(8)式の左辺に含まれるこのパラメータは、
図15に示すように、第2仮想線分L2を二等分するy”方向に平行な垂直二等分線Bi2から積層物(B)〜(F)(換言すれば、
担持領域(ii))のx”方向における最も遠い一端までのx”方向の距離である。
Δy”:(1)式および(2)式の右辺、(3)式および(4)式の左辺に含まれるこのパラメータは、第2ガイドホール10の中心を基準とした積層物(B)〜(F)(換言すれば、
担持領域(ii))のy”方向の寸法公差である。
Δx”:(5)式および(6)式の右辺、(7)式および(8)式の左辺に含まれるこのパラメータは、第2ガイドホール10の中心を基準とした積層物(B)〜(F)(換言すれば、
担持領域(ii))のx”方向の寸法公差である。
【0089】
<条件式の意義>
(1)、(2)、(5)および(6)式のそれぞれの中辺と右辺の大小関係がいずれも満足されれば、第2ガイドホール10の中心をピン16の中心に合致させたと仮定した場合に、積層物(B)〜(F)(換言すれば、
担持領域(ii))を、フィルム保持用凸部15の先端面15a上に、y’方向およびx’方向のいずれにおいてもはみ出すことなく重ねることができる。これは、
担持領域(ii)に位置・寸法が対応する保持領域(iii)をフィルム保持用凸部15の先端面15a上に確保できたことに他ならない。
【0090】
また、(1)、(2)、(5)および(6)式のそれぞれの左辺と中辺の大小関係がいずれも満足されれば、ピン16の中心を第1ガイドホール7の中心に合致させたと仮定した場合に、フィルム保持用凸部15の先端面15aを、光学面4上に、y方向およびx方向のいずれにおいてもはみ出すことなく重ねることができる。これは、第2面S2の凹部6へのフィルム保持用凸部15の挿入が確保されていることに他ならない。
【0091】
さらに、第2面S2の凹部6へのフィルム保持用凸部15の挿入が確保されているということは、フィルム保持用凸部15の先端面15a上に確保された保持領域(iii)を、光学面4上に、y方向およびx方向のいずれにおいてもはみ出すことなく重ねることができるということである。
【0092】
ただし、そのように重ねられた保持領域(iii)が、貼着領域(i)に相当すると言えるためには、その領域(iii)が、前記一部のレンズ面2のみの投影領域2’を包含する必要がある。そして、このことは、(3)、(4)、(7)および(8)式をいずれも満足することによって実現することができる。すなわち、保持領域(iii)に位置・寸法が対応する貼着領域(i)を、光学面4上に確保することができる。
【0093】
<実際の製造工程>
以上を前提として、本実施形態においては、以下のステップを順次実行する。
【0094】
(第1のステップ)
第1のステップにおいては、
図16(a)に示すように、水平な作業面s上に載置されたフィルム
担持基板(II)における
担持領域(ii)上の積層物(B)〜(F)に対して、フィルム貼着用治具(III)におけるフィルム保持用凸部15の先端面15aを臨ませる。なお、本ステップおよび次の第2のステップにおいて、x’方向はx”方向と一致し、y’方向はy”方向と一致し、z’方向はz”方向と一致している。
【0095】
そして、この状態で、フィルム貼着用治具(III)の一対のピン16を、フィルム
担持基板(II)の一対の第2ガイドホール10に挿入しながら、フィルム貼着用治具(III)をフィルム
担持基板(II)側に移動させる。このとき、作業面s上(第2ガイドホール10が貫通孔の場合)または第2ガイドホール10の底部(有底穴の場合)に当接した一対のピン16が、付勢手段17(
図10参照)の付勢力に抗する方向に縮むことによって、フィルム保持用凸部15と積層物(B)〜(F)との間隔を次第に詰めることができる。
【0096】
このようなフィルム貼着用治具(III)の操作は、手動で行ってもよいし、専用のアクチュエータを用いて行ってもよい(以下、同様)。
【0097】
これにより、
図16(b)に示すように、フィルム保持用凸部15の保持領域(iii)と、積層物(B)〜(F)の最上層である粘着層(F)の上面とが、粘着層(F)の粘着力を以て貼り合わせられる。
【0098】
このとき、積層物(B)〜(F)がフィルム保持用凸部15によって押しつぶされないように、ピン16の縮退量を規制する何らかの手段を講じても良い。この手段は、例えば、ピン16の一定量以上の縮退を当接力を以て規制するためのストッパをマウント部14に設けることや、アクチュエータに、フィルム貼着用治具(III)の操作量を設定すること等であってもよい。
【0099】
(第2のステップ)
次いで、第2のステップにおいては、
図17(a)に示すように、一対のピン16を一対の第2ガイドホール10から抜出させながら、フィルム貼着用治具(III)をフィルム
担持基板(II)と反対側に移動させる。
【0100】
このとき、第1の剥離強度f(C)−(D)と第2の剥離強度f(D)−(E)との大小関係を以て、第1剥離フィルム(C)と粘着性光学フィルム(D)との間での剥離を生じさせて、
図17(b)に示すように、上層側の3層(D)〜(F)を、フィルム保持用凸部15の保持領域(iii)上に保持させた状態で、基板本体(A)側に残る下層側の2層(B)、(C)から分離させる。
【0101】
より具体的には、第2のステップにおいては、次の(9)式が満足されている。
【0102】
但し、f(A)−(B)は、基板本体(A)と接着層(B)との剥離強度(以下、第3の剥離強度と称する)である。また、f(B)−(C)は、接着層(B)と第1剥離フィルム(C)との剥離強度(以下、第4の剥離強度と称する)である。さらに、f(E)−(F)は、第2剥離フィルム(E)と粘着層(F)との剥離強度(以下、第5の剥離強度と称する)である。さらにまた、f(F)−(III)は、粘着層(F)とフィルム貼着用治具(III)との剥離強度(以下、第6の剥離強度と称する)である。
【0103】
このような第1〜第6の剥離強度の大小関係が満足されることにより、
図17(b)に示す引き剥がし状態を確実に形成することができる。
【0104】
(第3のステップ)
次いで、第3のステップにおいては、
図18(a)に示すように、レンズアレイ本体(I)の光学面4に、フィルム保持用凸部15の保持領域(iii)上に保持された3層(D)〜(F)を臨ませる。なお、本ステップおよび次の第4のステップにおいて、x’方向はx方向と一致し、y’方向はy方向と一致し、z’方向はz方向と一致している。
【0105】
そして、この状態で、フィルム貼着用治具(III)の一対のピン16を、レンズアレイ本体(I)の一対の第1ガイドホール7に挿入しながら、フィルム貼着用治具(III)をレンズアレイ本体(I)側に移動させる。このとき、フィルム保持用凸部15を、3層(D)〜(F)とともに第2面S2の凹部6に挿入させる。
【0106】
これにより、
図18(b)に示すように、3層(D)〜(F)のうちの最下層である粘着性光学フィルム(D)の下面が、光学面4における貼着領域(i)上に、粘着性光学フィルム(D)の粘着力を以て貼り付けられる。
【0107】
(第4のステップ)
次いで、第4のステップにおいては、
図19(a)に示すように、一対のピン16を一対の第1ガイドホール7から抜出させながら、フィルム貼着用治具(III)をレンズアレイ本体(I)と反対側に移動させる。
【0108】
このとき、次の(10)式が満足されている。
【0109】
但し、f(I)−(D)は、レンズアレイ本体(I)と粘着性光学フィルム(D)との剥離強度である第7の剥離強度である。
【0110】
このように、第2の剥離強度が、第5〜第7の剥離強度よりも小さい関係を以て、粘着性光学フィルム(D)と第2剥離フィルム(E)との間での剥離を生じさせて、
図19(b)に示すように、上層側の2層(E)、(F)を、フィルム保持用凸部15の保持領域(iii)上に保持させたままの状態で、貼着領域(i)側に残る粘着性光学フィルム(D)から分離させる。このとき、貼着領域(i)と粘着性光学フィルム(D)との密着性が一番強いことは勿論である。
【0111】
このようにして、貼着領域(i)上に粘着性光学フィルム(D)が第2面S2の周辺領域5よりもレンズ面2側に凹入された状態で貼着されたレンズアレイ1を得る(
図1参照)。
【0112】
本実施形態によれば、フィルム貼着用治具(III)のフィルム保持用凸部15によって、これの保持領域(iii)に保持された粘着性光学フィルム(D)を、レンズアレイ本体(I)の凹入された光学面4上に届かせることができるので、光学面4における一部のレンズ面2のみに対応する貼着領域(i)上への粘着性光学フィルム(D)の貼着を、貼着不良が少ない状態で適正に行うことができる。また、所望の引き剥がし順に応じて、剥離強度が巧妙に配分されたフィルム
担持基板(II)を用いることによって、フィルム
担持基板(II)からフィルム貼着用治具(III)への粘着性光学フィルム(D)の受け渡しと、フィルム貼着用治具(III)からレンズアレイ本体(I)への粘着性光学フィルム(D)の受け渡しといった単純な工程を踏むだけで、粘着性光学フィルム(D)を簡便に貼着することができる。さらに、このとき、フィルム貼着用治具(III)のピン16を、フィルム
担持基板(II)の第2ガイドホール10およびレンズアレイ本体(I)の第1ガイドホール7によってガイドすることにより、フィルム
担持基板(II)−フィルム貼着用治具(III)間における粘着性光学フィルム(D)の受け渡しと、フィルム貼着用治具(III)−レンズアレイ本体(I)間における粘着性光学フィルム(D)の受け渡しとをスムーズにサポートすることができるため、粘着性光学フィルム(D)の貼着作業がより一層楽になる。さらにまた、このとき、(1)〜(8)の各条件式が満足されていることによって、単純な工程でありながら高精度な粘着性光学フィルム(D)の貼着を実現することができる。また、貼着領域(i)への貼着後の粘着性光学フィルム(D)が、周辺領域5から突出しないようにすることができるので、貼着後の粘着性光学フィルム(D)に、光伝送体または光電変換装置の取り付けのための応力が作用しないようにすることができる。なお、
図20は、光伝送体としての複数本の光ファイバ20が収容された光コネクタ21が、周辺領域5に当接するようにして光学面4側に取り付けられ、また、VCSEL等の複数の発光素子22およびフォトディテクタ等の複数の受光素子23が整列形成された光電変換装置24が、レンズ面2側に取り付けられた状態(実使用状態の一例)を示している。
図20によれば、粘着性光学フィルム(D)が光コネクタ21による応力を受けていないことが一目瞭然であろう。また、
図20における第1ガイドホール7(貫通孔)は、光コネクタ21に設けられた位置決め用のピン21aを挿入させることによる光コネクタ21の取り付け位置の位置決めに用いることができるとともに、光電変換装置24(半導体基板上)に設けられた位置決め用のピン24aを挿入させることによる光電変換装置24の取り付け位置の位置決めに用いることができる。
【0113】
<変形例>
上記方法以外にも、本発明には、種々の変形例を適用することができる。
【0114】
(変形例1)
例えば、前述した実施形態においては、粘着性光学フィルム(D)の貼着領域(i)に対応する「一部のレンズ面2」が、x方向に整列された同列のレンズ面2のうちの一部(
図2における左から4つ分)のレンズ面2であったが、
図21に投影領域2’として示すように、x方向に沿って整列されたレンズ面2の列が、y方向に間隔を設けて複数列(2列)形成されている場合における一部の列の全てのレンズ面2を、「一部のレンズ面2」と扱ってもよい。また、図示はしないが、複数列のレンズ面2のうちの各列のそれぞれの一部のレンズ面2を「一部のレンズ面2」と扱ってもよい。
【0115】
(変形例2)
また、
図22(a)に示すように、レンズアレイ本体(I)に、第1ガイドホール7の代わりに、同位置に第1ガイドピン70を突設し、
図22(b)に示すように、フィルム
担持基板(II)に、第2ガイドホール10の代わりに、同位置に第2ガイドピン100を突設し、
図22(c)に示すように、フィルム貼着用治具(III)に、ピン16の代わりに、同位置にホール160を穿設してもよい。
【0116】
この場合に、第1ガイドピン70および第2ガイドピン100の外径は互いに同径としてもよい。また、ホール160の内径は、第1ガイドピン70および第2ガイドピン100の外径よりも僅かに大きく形成すればよい。
【0117】
さらに、この場合には、前述した実施形態を、第1ガイドホール7を第1ガイドピン70に置き換え、ピン16をホール160に置き換え、第2ガイドホール10を第2ガイドピン100に置き換えて適用すればよい。
【実施例】
【0118】
次に、実施例においては、粘着性光学フィルム(D)としての光減衰フィルムを前述した方法(第1〜第4のステップ)によって貼着したレンズアレイ1に対して、光減衰フィルムの光結合損失の安定性を調べる環境試験を行った。
【0119】
なお、本環境試験に用いた本発明のレンズアレイ1は、(1)〜(8)式に該当するパラメータが、以下のように設定されたものである。
【0120】
レンズアレイデータ
(1)式に該当するパラメータ
a1+Δy=0.35±0.03mm、a1’+Δy’=0.3±0.015mm、b”+Δy”=0.28-0.02mm
(2)式に該当するパラメータ
a2+Δy=0.35±0.03mm、a2’+Δy’=0.3±0.015mm、|a”−b”|+Δy”=0.28-0.02mm
(3)式に該当するパラメータ
b”+Δy”=0.28-0.02mm、b1+Δy=0.25±0.005mm
(4)式に該当するパラメータ
|a”−b”|+Δy”=0.28-0.02mm、|b1−b2|+Δy=0.25±0.005mm
(5)式に該当するパラメータ
c1+Δx=1.65±0.03mm、c1’+Δx’=1.6±0.015mm、d”+Δx”=1.58-0.02mm
(6)式に該当するパラメータ
c2+Δx=1.65±0.03mm、c2’+Δx’=1.6±0.015mm、|c”−d”|+Δx”=1.58-0.02mm
(7)式に該当するパラメータ
d”+Δx”=1.58-0.02mm、d1+Δx=1.5±0.005mm
(8)式に該当するパラメータ
|c”−d”|+Δx”=1.58-0.02mm、|d1−d2|+Δx=1.5±0.005mm
このように設定されたレンズアレイ1は、(1)〜(8)式をすべて満足している。
【0121】
また、本環境試験においては、比較例のレンズアレイとして、
図23に示す製造方法によって製造されたものを用いた。具体的には、
図23の製造方法においては、光減衰フィルム26が配置されたフィルムプレート25として、プレート本体の上面中央部に、レンズアレイ本体(I)のx、y方向寸法よりも所定のクリアランスを以て大きく形成された凹部28を有するとともに、この凹部28の底面28a上に、剥離フィルム27および光減衰フィルム26が「一部のレンズ面2」に対応するように積層配置されたものを用意した。そして、このようなフィルムプレート25に対して、レンズアレイ本体(I)をその光学面4を下側に向けた状態で凹部28内に挿入することによって、光学面4上に光減衰フィルム26を貼着させた。
【0122】
そして、本環境試験においては、以上のような本発明および比較例の試料を、温度85℃、湿度85%の環境下に晒し、試験開始から1000時間経過後、2000時間経過後における結合損失を、試験開始直前からの変化量として求めた。結合損失の測定には、
図20に示したようなVCSELと光ファイバとを取り付けた構成を用いた。
【0123】
本環境試験の結果は、
図24に示すものとなった。
【0124】
この
図24の結果によれば、本発明の製造方法によって製造されたレンズアレイ1は、2000時間経過後においても結合損失の悪化は殆ど無く(−0.05dB未満)、高温高湿下における長時間の使用に十分に耐え得ることが分かった。これに対して、
図23の製造方法によって製造されたレンズアレイは、2000時間経過後における結合損失の変化が−0.8dB超過となり、高温高湿下における長時間の使用に到底耐え得ないことが分かった。このような結果は、本発明の製造方法によって、光学面4上への光減衰フィルムの貼着を、皺、気泡、めくれ、浮き等の貼着不良が少なく行うことができることを意味している。
【0125】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更することができる。
【0126】
例えば、前述した実施形態においては、一部のレンズ面2の投影領域2’を包含する領域が貼着領域(i)であったが、
図25および
図26に示す第3の変形例および
図27に示す第4の変形例のように、すべてのレンズ面2の投影領域2’を包含する領域を貼着領域(i)としてもよい。