特許第5988175号(P5988175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5988175大腿骨骨折の予防措置または治療措置のためのインプラント装置、その付属品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988175
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】大腿骨骨折の予防措置または治療措置のためのインプラント装置、その付属品
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/76 20060101AFI20160825BHJP
【FI】
   A61B17/76
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-539313(P2013-539313)
(86)(22)【出願日】2011年11月16日
(65)【公表番号】特表2014-500765(P2014-500765A)
(43)【公表日】2014年1月16日
(86)【国際出願番号】FR2011052664
(87)【国際公開番号】WO2012066236
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年10月16日
(31)【優先権主張番号】10306265.9
(32)【優先日】2010年11月17日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】12/952,834
(32)【優先日】2010年11月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513110997
【氏名又は名称】ハイプリヴェンション
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエニー,セシル
(72)【発明者】
【氏名】ツパルスキ,マレック
(72)【発明者】
【氏名】ガンツバーグ,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】アエビー,マックス
(72)【発明者】
【氏名】コープ,ステファン
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−112290(JP,A)
【文献】 特開2008−100020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手軸XX’を規定する長骨(28)を備える大腿骨(10)の骨折の予防措置と、大腿骨頭(14)及び前記長手軸XX’と角度αで交わる長手軸を有する大腿骨頸(22)を備える股関節(12)の骨折の予防措置ためのインプラント装置であって、
長手軸YY’、遠位端Y、及び近位端Y’を有し、前記長手軸YY’が、前記大腿骨頸(22)の前記長手軸沿って配置され、前記遠位端Yが前記大腿骨頭(14)の中に配置され、前記近位端Y’が前記長骨(28)の皮質骨の外側に配置されている、第1のインプラント(36)、
長手軸ZZ’、遠位端Z、及び近位端Z’を有し、前記長手軸ZZ’が、前記長手YY’と交点で交わり、及び前記長手軸XX’と交わるように配置され前記遠位端Zが、前記近位端Z’よりも前記交点Sから近い位置に配置され、前記近位端Z’ が前記長骨(28)の皮質骨の外側に配置され、前記近位端Z’は、前記近位端Y’よりも前記股関節(12)から離れた位置に配置される、第2のインプラント(38)、および
前記第1のインプラント(36)、及び前記第2のインプラント(38)を前記交で固定る固定連結部(40)
を備えることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記第1のインプラント(36)の前記長手軸YY’は、前記長手軸XX’と角度βを作り、前記第2のインプラント(38)の前記長手軸ZZ’は、前記長手軸XX’と角度θを作り、前記角度θの角度値は、前記角度βの角度値よりも大きい角度値であることを特徴とする、請求項1に記載の大腿骨骨折と股関節骨折の予防措置ための装置。
【請求項3】
前記角度βの角度値および前記角度θの角度値は、左大腿骨では91から179°の間であり、右大腿骨では181から269°の間であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の大腿骨骨折と股関節骨折の予防措置ための装置。
【請求項4】
前記交点での前記固定連結(40)は、前記第1のインプラント(36)の前記第2のインプラント(38)への挿入であることを特徴とする、請求項1〜のうちいずれか一項に記載の大腿骨骨折と股関節骨折の予防措置ための装置。
【請求項5】
前記交点での前記固定連結(40)は、前記第2のインプラント(38)の前記第1のインプラント(36)への挿入であることを特徴とする、請求項1〜のうちいずれか一項に記載の大腿骨骨折と股関節骨折の予防措置ための装置。
【請求項6】
前記交点の前記固定連結部(40)は、第2のインプラント(38)に施されたネジ山(44)および前記第1のインプラント(36)の本体部に設けられたネジを切った孔(46)ならびに回転して広がる動きを相殺し、安定して支持するリングを備える、機械的ロックを有する連結部であることを特徴とする、請求項1〜のうちいずれか一項に記載の大腿骨骨折と股関節骨折の予防措置ための装置。
【請求項7】
前記インプラント(36、38)は、中実、中空または部分的に中空のチューブであり、前記チューブの断面の直径は、前記チューブの長さよりも短いとを特徴とする、請求項1〜のうちいずれか一項に記載の大腿骨骨折と股関節骨折の予防措置ための装置。
【請求項8】
少なくとも部分的に中空のチューブから作製された各インプラント(36、38)は、前記インプラント(36、38)を設置した時点で、アクセス可能な近位端から生体適合性のあるセメントタイプの注入可能な組成物を注入するための少なくとも1つの孔(50)を備えることを特徴とする、請求項1〜のうちいずれか一項に記載の大腿骨骨折と股関節骨折の予防措置ための装置。
【請求項9】
各インプラントを構成するチューブの断面は、全長または部分的に円形、楕円形、正方形、六角形、星形、円錐形であり、全長または部分的にネジを切ったもの、あるいはまたこれらを組み合わせた形であることを特徴とする、請求項またはのうちいずれか一項に記載の大腿骨骨折と股関節骨折の予防措置ための装置。
【請求項10】
前記インプラント(36、38)の少なくとも一方は、その場で長さを調整できるように変更可能な長さであることを特徴とする、請求項1〜のうちいずれか一項に記載の大腿骨骨折と股関節骨折の予防措置ための装置。
【請求項11】
前記インプラント(36、38)の表面は、生体適合性および組織細胞の発達を向上させるために、コーティングを備える、または表面処理を施され得ることを特徴とする、請求項1〜1のうちいずれか一項に記載の大腿骨骨折と股関節骨折の予防措置ための装置。
【請求項12】
請求項1〜1のうちいずれか一項に記載の大腿骨骨折と股関節骨折の予防措置ための装置を設置するための付属品であって、
− 様々な周辺部およびインプラント(36、38)を位置決めするための位置決め手段(54)であって、
・ 設置する第1のインプラント(36)の前記長手軸YY’に沿って、第1のガイドチューブ(58)が具体的に示す第1の標的ラインおよび
・ 設置する第2のインプラント(38)の前記長手軸ZZ’に沿って、第2のガイドチューブ(60)が具体的に示す第2の標的ライン
を有する本体部(56)を備える位置決め手段(54)、
− インプラント(36、38)を並進移動させ回転させる可動式固定手段を備える、チューブ形態の捕捉部(64)、
− 前記捕捉部(64)の内部で共軸となるように取り付けられるロッド形態の向き調整部(68)であって、前記捕捉部(64)内で自由に回転し、並進移動し、操作用の柄(66)を有する向き調整部(68)、および
− 前記捕捉部(64)と前記向き調整部(68)との間で取り外し可能なように回転させる駆動手段
を備えることを特徴とする、付属品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腿骨骨折、さらに詳細には股関節骨折の予防措置または治療措置のためのインプラント装置を目的とする。
【0002】
本発明は、その付属品も範囲に含める。
【背景技術】
【0003】
一般に骨は、内部が極めて多孔質の海綿質で構成され、この海綿質は、これよりも硬く機械耐性のあるいわゆる皮質または皮質骨で囲まれている。骨格において、股関節は、強い応力を受ける関節である。大腿骨は、骨盤から膝まで延びている。
【0004】
この大腿骨は、股関節を含み、この股関節は、大腿骨頭、大腿骨頚、この大腿骨頭および大腿骨頸を長骨の本体部に連結する小転子ならびに大転子、骨幹で構成される。
【0005】
この骨は、体重がかかるため、人体の最も長くかつ最も丈夫な骨である。
【0006】
大腿骨の近位端は、特に骨粗鬆症現象の影響を受けるため、この近位部全体の機械耐性が著しく低下する。
【0007】
これは、特に高齢患者に起こることが多い。
【0008】
したがって、骨折は、特に大腿骨頸の2領域および転子領域に起こる。
【0009】
骨折には、いわゆる大腿骨頸の骨頭下骨折、大腿骨頸部横断骨折、転子間骨折、転子下骨折または小転子骨折がある。
【0010】
これらの骨折は、複雑な結果を招くため、高齢者の死因の大半を占める。
【0011】
ある一定の年齢、約50歳を超えると、骨量および骨密度は、特定の領域とりわけ大腿骨頭領域で減少することがあるのに対し、長骨は、その耐性が増すことがわかっている。
【0012】
これと同時に、神経筋の反応は減少し、その結果、突然の応力を受け、生成された運動エネルギーのピークを分散させる役割を担う筋肉は、必要な補償を起こさなくなる。
【0013】
したがって、応力は、脆弱になった股関節に集中するため、衝撃、応力、向き、集中度および極めて多くの要素に応じて、前述した様々なタイプの骨折が引き起こされる。
【0014】
この脆弱性は、大腿骨頸に支えられたこの大腿骨頭の特殊な立体形状が、大腿骨長骨の本体部の長手軸に対してずれた状態にあるために生じる。
【0015】
先行技術における実施手段は、必要に応じて骨折を整復し、折れた部分を安定させて固定することで、骨折を修復するというものである。
【0016】
公知の治療は、大腿骨頭内に設置された髄内釘および圧縮ネジで構成されるシステムを利用するものである。
【0017】
公知の外科分野では、プレートと圧力ネジを組み合わせるシステムまたは該当領域へのセメント注入さえも利用される。
【0018】
驚異的なことだが、先行技術は、大腿骨頭の機械耐性を増大させることによる骨折の予防に関しては極めて貧弱であることがわかっている。
【0019】
米国特許第6679890号明細書を例に挙げることができるが、この文献では、単一の中空インプラントを使用するハイブリッド技術を利用することを想定している。この中空インプラントが大腿骨頸の軸に沿って挿入されたのち、生体適合性のあるセメントがこの中空インプラント内に注入され、前記セメントは、前記インプラントの周囲に分散する。
【0020】
第1のインプラントとは別の第2のインプラントを用いて、大腿骨を構成する長骨軸に沿って長手方向に2重に処置する可能性も想定される。
【0021】
2本のチューブは互いに連結しておらず、第2のチューブは、ガイド用として使用される。
【0022】
この特許出願は、実際には、近位の第1のインプラントを頸部の長手軸に沿って満足のいくようにアンカー固定するように特殊な材料でできた生体適合性のある端部に関するものである。
【0023】
この装置は、骨折の修復には適応しているが、骨折の予防措置についての応用は一切想定されていない。
【0024】
本特許出願の目的を腰の骨折、さらに詳細には様々なタイプの股関節の骨折の修復に適用できるならば、本発明は、特に、リスクのある患者に対してこの大腿骨頭の耐性を強化する予防的な適用に焦点を当てていることがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】米国特許第6679890号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、大腿骨頭、大腿骨頸もしくは転子領域の骨折または損傷を予防するための、股関節の機械耐性を強化することを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0027】
このようにするために、本発明は、2つの交差するインプラントからなるアセンブリおよびこの2つのインプラントを交差点で互いに一体化する手段を利用するものである。
【0028】
さらに、この2つのインプラントは、いずれも長骨の本体部の長手軸と交わる。
【0029】
交点は、ほぼ頸部の下領域にある。
【0030】
さらに詳細には、第1のインプラントは、頸部の軸に沿って向けられ、第2のインプラントは、2つのインプラントの交点を通ってさらに傾斜している。
【0031】
第1のインプラントは、補剛材の機能を備え、第2のインプラントは、脚の機能を備える。
【0032】
次に、添付の図面を参照して、非限定的な様々な実施形態に沿って本発明を詳細に説明するが、これらの図面は、様々な実施形態を示すものである。
【0033】
以下の様々な図がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】股関節の概略図である。
図2】本発明によるインプラント装置の概略図である。
図3】本発明によるインプラント装置を単独で示した概略図である。
図4】脚を形成する第2のインプラントを、補剛材を形成する第1のインプラントに嵌合させて連結する、第1の実施形態の斜視図である。
図5】脚を形成する第2のインプラントを、補剛材を形成する第1のインプラントに嵌合させて連結する、第2の実施形態の斜視図である。
図6A】脚を形成する第2のインプラントを、補剛材を形成する第1のインプラントに、ネジを切って嵌め込み式に連結する、第3の実施形態の全体斜視図である。
図6B】脚を形成する第2のインプラントを、補剛材を形成する第1のインプラントに、ネジを切って嵌め込み式に連結する、第3の実施形態の縦断面図である。
図6C】脚を形成する第2のインプラントを、補剛材を形成する第1のインプラントに、ネジを切って嵌め込み式に連結する、第3の実施形態のスペーサの詳細図である。
図7】インプラントの斜視図である。
図8A】本発明による装置のインプラント手術計画のステップを示す図である。
図8B】本発明による装置のインプラント手術計画のステップを示す図である。
図8C】本発明による装置のインプラント手術計画のステップを示す図である。
図8D】本発明による装置のインプラント手術計画のステップを示す図である。
図8E】本発明による装置のインプラント手術計画のステップを示す図である。
図8F】本発明による装置のインプラント手術計画のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1には、大腿骨10の近位部およびその股関節12を示した。図示した大腿骨は、個人の左足の大腿骨である。
【0036】
この関節は、破線で示した骨盤18の寛骨臼16と協働することができる大腿骨頭14を備えている。
【0037】
大腿骨頭14は、大腿骨頸22の近位端20に担持されているのに対し、大腿骨頸22の遠位端24は、大腿骨長骨28、骨幹と一体化している。大腿骨頸22の長手軸は、大腿骨長骨28の長手軸XX’と角度αを形成する。
【0038】
股関節の大腿骨頭は、さらに、転子、具体的には転子領域34を規定する小転子30および大転子32を備える。
【0039】
これらの様々な領域は、筋肉との連結部位である。
【0040】
この股関節は、重度の機械応力を受ける。
【0041】
外傷性ショックを受ける複数の可能性が存在する。
【0042】
しかしながら、主な2つの原因は、耐えきれない応力、すなわち衝撃、過重負荷によるほぼ垂直な矢印F1に沿った向きの応力から来るものであると考えることができる。垂直軸を、大腿骨の長手軸XX’にほぼ平行な方向に沿って立っている人と考える。
【0043】
F1に沿ったこの応力は、大腿骨長骨の長手軸XX’にほぼ平行に、大腿骨頭の上に直接伝達される。
【0044】
したがって、力のトルクが生じることに気づく。
【0045】
しかし、あらゆる材料と同じように、骨材料には、確かな破壊力に対して弾性限界および塑性限界があり、これは、この骨材料の状態によって異なる。
【0046】
しかし、弾性限界を超えると、損傷、とりわけ亀裂が生じる。しかし、破壊強度に達すると、骨は折れ、この場合のF1に沿った外傷の場合、骨頭下または頸基部タイプの骨折であることがわかる。
【0047】
偶発的な転倒または衝撃の場合、応力は、F2に沿ってより横方向の方へかかる、つまりほぼ転子領域にかかって、転子貫通または転子間タイプの骨折になる。
【0048】
このタイプの外傷を予防するまたは場合によっては回復させるため、本発明による装置の全体構造を図2に示す。
【0049】
このインプラント装置は、第1のインプラント36および第2のインプラント38を備える。これらのインプラントは、全体的に中空または中実の管形状であり、断面が円形であるか円形ではなく、長さが直径を大幅に上回るような寸法である。
【0050】
この2つのインプラントは点で交わり、この交点で2つのインプラントの間を固定連結部40で連結する。
【0051】
この2つのインプラント36、38は傾斜し、それぞれの長手軸YY’およびΖZ’は、大腿骨長骨の長手軸XX’に対して傾斜している、つまり、2つの軸YY’およびZZ’は、いずれもこの長手軸XX’とは一致していない。
【0052】
第1のインプラント36の長手軸はYY’であり、この軸は、軸XX’と角度βを作り、この角度はαとほぼ等しく、第2のインプラントの長手軸はZZ’であり、この軸は、この同じ軸XX’と角度θを作る。図示した構造では、θの角度値は、βの角度値よりも大きい。
【0053】
これらの角度は、左大腿骨の上部分の股関節大腿骨頭を用いて時計回りに考えられ、0°はXX’軸の上部分、X側であり、180°はX’側である。
【0054】
角度θおよびβは、91から179°までの間である。
【0055】
同一人物の右大腿骨の場合、角度θおよびβは、181から269°の間である。
【0056】
特に、軸YY’は、大腿骨頸の長手軸とほぼ一致する。
【0057】
よって、この第1のインプラント36は、大腿骨頭14、大腿骨頸22および大腿骨長骨28を連結する補剛材の役割を果たす。このインプラントは、屈曲に対する耐性を増大させる。この第1のインプラント36は、その遠位端Yが突出することなく大腿骨頭の皮質部分の手前に来て、大腿骨頭の表面がこの大腿骨頭を受ける寛骨臼内で動くのを妨げないように、位置決めされなければならない。この皮質厚は、大きな衝撃を受けた場合にインプラントが場合によっては穴を開けるのを阻止する役割を果たすものでもある。
【0058】
この第1のインプラントの近位端Y’は、皮質を通過し、応力を確実に受けたことを確認するように、軽く突出したままのことがある。
【0059】
実際、応力が矢印F1に沿ってかかるとき、第1のインプラント36は、補剛材のように屈曲に対して働き、嵌め込み部と考えることができる近位端Y’は、皮質の機械耐性のみで制限され、この機械耐性は、この場合、反応の合力が骨の面にかかるために極めて高い。
【0060】
応力が矢印F2に沿ってかかるとき、第1のインプラントは、この場合も中央部で屈曲に対して働く、つまり2箇所への押圧に対する屈曲であり、1箇所は、大腿骨頭内のインプラントの遠位領域であり、もう1箇所の押圧は、皮質内のインプラントの近位領域である。
【0061】
転子領域内でのF2に沿った応力に対する耐性も、同じく強力に補強される。
【0062】
本発明は、脚の機能を果たす第2のインプラント38を用いて前述した構造を作製することで、この機械耐性をさらに一層強力に増大させることを提供する。
【0063】
よって、この第2のインプラント38は、同じくその近位部Z’を大腿骨長骨の皮質内に、股関節からより離れた距離に位置する点に位置決めされる。
【0064】
第2のインプラントの遠位端Zは、交点に位置決めされて固定連結部40を形成する。この端部は、必要に応じてさらに延長してよい。
【0065】
交点は、おおよそ第1のインプラントの中央部と遠位端Y’との間に位置する。
【0066】
ほぼY型の構成が得られる。
【0067】
したがって、第2のインプラント38を介して第1のインプラント36が脚の役割を果たすことがわかる。
【0068】
そのため、応力がF1に沿ってかかるとき、第1のインプラントの屈曲(flexion)に対する耐性は、強化される。なぜなら、「屈曲可能な(flexible)」部分が脚をほぼ中央部分で受け、これによって中央部と近位部との間の部分のレバーアームが短くなるからである。
【0069】
さらに、固定点の周りに力のトルクが生じると考えることができる。矢印F1の方向に沿ってかかった応力F1の大部分は、皮質が受ける。なぜなら、トルクの均衡力は、F1とは逆方向に大腿骨長骨26の皮質面にかかって股関節の方へ向かうからである。
【0070】
一方、F2に沿ってかかった応力および/または衝撃は、前述したように、中央部のちょうど交点にかかり、これによって、第2のインプラント38に部分的に重なっている第1のインプラント36にかかる応力が生じる。よって、これらの応力は、その機械耐性が最も大きい大腿骨長骨の骨膜部まで分散される。
【0071】
図3には、交差角度δが一定になることを示す固定連結部40を概略的に示した。この機械連結部は、様々な実施形態によって様々な形状を取ってよいが、材料の耐性の観点から嵌め込み式のものと考えるのが適当である。
【0072】
よって、第1のインプラント36と第2のインプラント38との間には、並進する相対運動も回転する相対運動もない。
【0073】
固定連結部40は、第1のインプラント36を第2のインプラント38に挿入する形で図4に示されている。この場合、想定した組立は、突起部との弾性係合である。第2のインプラント38に孔を設けてその孔に第1のインプラント36を通すようにしてもよく、これによって実施形態が変化することはない。これも完全に同等の組立である。
【0074】
当業者には、患者の姿勢または形態上の制約に関する必要性、人間工学性に応じた選択肢がある。
【0075】
図5に示した固定連結部40は、第2のインプラント38を第1のインプラント36に挿入することからなるものである。このような構成では、第2のインプラント38に設けた停止部42が連結部の固定および安定を保って、脚の機能を得る。斜めに孔を開けることで、角度ができる。
【0076】
図6A図6Bおよび図6Cに示した第3の一般的な実施形態による固定連結部40は、機械的なロックを有する連結部を備えることからなるものである。この場合、図示した実施形態は、第2のインプラント38に施したネジ山44、および第1のインプラント36の本体部に設けたネジ溝46を備える連結部からなるものである。リング48によって、回転して広がる動きを相殺し、安定して支持することができる。
【0077】
このリングは、自由回転するように取り付けられ、もう一方のインプラントに対して位置決めするように向きを決定される。
【0078】
これらの実施形態は、本発明の範囲を逸脱しないかぎり、他の多くの形態を取ることができ、当業者は、係合手段、円錐型嵌合手段、小さな切り込みの入った嵌合手段を用いたネジ締めで、連結部を修正してよい。
【0079】
インプラント36および38は、どのような実施形態であっても、あらゆる適応した形態だが一般的な形態を取ることができ、これらのインプラントは、中実、中空または部分的に中空のチューブから作製される。その断面は、長さよりも大幅に短い寸法である。
【0080】
おおよその大きさを挙げると、断面の寸法は、3から15mmの間であり、長さは50から150mmである。
【0081】
これらのチューブの断面は、計算または手術の必要性により求められるあらゆる形態を取ることもできる。具体的には、円形、楕円形、正方形、六角形または星形で、全長または部分的に外側にネジを切ったもの、あるいはまたこれらを組み合わせた形でもよい。インプラントは、全長にわたって円錐形でもよい。
【0082】
採用する実施形態に応じて、適応した輪郭を選択する。ネジ締めを想定した場合は、ネジ締めするインプラントは円形断面にせざるを得ないが、第1のインプラントに対しては多角形の断面を採用してもよい。
【0083】
これらのインプラントの外側は、滑らかなもの、輪郭が歯形の溝を施したもの、あるいはねじ山のあるものとすることができ、これは表面全体または部分的に施され、さらには、この外側は、これらの表面状態を組み合わせたものであってもよい。
【0084】
インプラントを構成する各チューブは、図7に示すように、インプラントが全体的または部分的に中空である場合に、外側に通じる孔50を備えていてもよい。これらの孔によって、インプラントを設置した時点で、アクセス可能な近位端から、生体適合性のあるセメントタイプの注入可能な組成物を注入することができる。これらの成分は、その場で硬化する。
【0085】
これらの成分は、以下の3つの目的を有する:
− 孔の外面に分散する注入材料を用いて埋め込んだ領域の周囲にある海綿質を強化すること、
− 接触面積を拡大することによって、骨材料内でインプラントが動かないようにすること、および
− 2つのインプラントの固定連結部40を交点でロックすること。
【0086】
遠位YおよびZは、挿入を進めやすくするために、面取りするか丸くすることが有利である。
【0087】
使用する材料は、ステンレス鋼、チタン、機械耐性の高いポリエーテルエーテルケトンのような荷電ポリマー、または骨の耐性に近くになるように非荷電ポリマーなど、外科分野でよく知られた材料である。
【0088】
同じように、インプラントの表面は、生体適合性、骨への一体化およびヒドロキシアパタイトのような組織細胞の発達を向上させるために、コーティングを備えている、または表面処理を施されてもよい。
【0089】
本発明の改良法によれば、インプラントは、その場で長さを調整できるように、変更可能な長さにすることができる。
【0090】
そのため、外科手術中に埋め込みを行う際に、例えば術者が挿入時の困難に遭遇した場合、術者はインプラントの長さを調整して、皮質外の遠位部から突出した長さを適応させることができる。
【0091】
入れ子式の組立は、ネジピッチのある領域で互いに接続した2つの部分からなるインプラントで構成されることができる。
【0092】
本発明による装置を実装する様子を図8に示す。
【0093】
この説明は、採用する実施形態に応じて適応させる必要があるだろうが、工程はほぼ同じになる。さらに、この重要工程は、概観を対象とするものであり、あらゆる術者がこの種の外科手術を実行できるような、それほど重要でも必要でもなく公知であるあらゆる手術には言及しない。
【0094】
安全性、確実性、質および人間工学性を十分に確保した上で、術者による手術ができるようにするために、特別な付属品を設け、これについては概観を徐々に展開して説明していく。
【0095】
図8Aに示す第1の工程は、大腿骨頸の中央軸に最も近い所にピン52を挿入する様子を示す。この挿入は、大腿骨長骨の軟組織および骨膜を切開した後に、例えば蛍光透視法で制御して行われる。
【0096】
このピンの最初の埋め込みは重要であり、前面でも矢状面でも確認しなければならない。
【0097】
次の図8Bでは、六分儀54を利用して、手術の観点から様々な周辺部ならびにインプラント36および38を位置決めする。
【0098】
この六分儀54は、ピン52の軸に沿って、またこれに伴い設置する第1のインプラントの軸YY’に沿って、第1のガイドチューブ58が具体的に示す標的ラインを有する本体部56を有する。
【0099】
この六分儀は、さらに、図8D図8Eおよび図8Fを見ればわかるように、設置する第2のインプラントの軸ZZ’に沿って、第2のガイドチューブ60が具体的に示す第2の標的ラインも備える。
【0100】
ドリルを用いて軸YY’に沿って穿孔したのち、このようにして設けた凹部62内に第1のインプラント36を受容する。この穿孔ドリルは、ガイドチューブ58によって誘導される。
【0101】
穿孔の深さは、ドリルを挿入する長さで制御され、これは常にガイドチューブ58を介して行われる。
【0102】
このようにして設けられた凹部62の長さは公知のものであるため、第1のインプラント36の長さの決定および/または長さの調節は、術者が行う。
【0103】
図8Cでは、第1のインプラント36を第1の手術計画に沿って部分的に挿入している。
【0104】
インプラント36は、インプラントと同じ直径のチューブである捕捉部64に取り付けられる。採用した実施形態では、捕捉部64は、インプラント36が回転する可動式の固定手段を有する。これらの手段は、この場合、インプラント36の端部に設けられたネジ山のある端部を備え、一方捕捉部64は、その近位端に、このネジ山と合わさる輪郭をしたネジ溝を備える。そのため、インプラント36は、捕捉部64に可動式に固定されるが、これによって術者はこれを並進移動させることができる。この捕捉部64は、六分儀56および第1のガイドチューブ58と協働して、直線が途切れないようになっている。
【0105】
捕捉部は、さらに、直径の短いロッドである向き調整部68を備え、この向き調整部は、捕捉部64の内部で共軸となるように取り付けられ、向き調整部68は、捕捉部64内で自由に回転し、並進移動する。
【0106】
向き調整部68の遠位には、歯が設けられ、この歯は、インプラントの近位部に設けられた、輪郭がこの歯と合わさる切り込みに挿入され、これによって術者は、向き調整部が完全に挿入されたときに回転させることができる。捕捉部と向き調整部との間で取り外し可能なように回転するあらゆるその他の駆動手段を検討できる。
【0107】
向き調整部は、術者が操作しやすいように柄66を有する。
【0108】
第1のインプラント36を部分的に挿入するこの操作は、採用した手術計画に従って行われるため、第2のインプラント38の方は、手術計画の別の工程に従って実施されることができる。
【0109】
図8Dでは、術者は、軟組織および骨膜を切開したのち、前回のようにピンを挿入し、このピンは、交点で凹部62に通じるようになるまで挿入され、必要であればそれを超えて挿入されるが、これは、六分儀の立体形状によってできることである。六分儀の第2のガイドチューブ60により、正しい向きの角度および直線に従うことができる。
【0110】
図8Eでは、第2のインプラント38を受容するようになっている第2の凹部70ができるように、ドリルを用いて穿孔する。
【0111】
第2の凹部70を設けた時点で、第1のインプラント36は、同じくその最終的な位置に全体を挿入される。必要であれば、向き調整部68を嵌合してこれを回転するように操作し、第1のインプラント36をその凹部62内に設置して完全に挿入するのを完成させることができる。
【0112】
第1のインプラントを位置決めすると、今度は第2のインプラント38を図8Fのように挿入する。
【0113】
交点の固定連結部40が、例えば図6Aから図6Cに示したようなネジ締めタイプのものであれば、向き調整部68およびその柄66を用いて、第2のインプラント38を固定連結部40が締まるまでか、完全にネジ締めしてブロックされるまで回転させる。
【0114】
したがって、2つのインプラントは、一体化し、大腿骨内に位置決めされる。
【0115】
このとき、付属品の材料は撤去されてよい。
【0116】
別の手術計画によれば、第1のインプラントは、設置時に全体を最終的な位置に挿入されてよい。
【0117】
次に、第2の凹部70の穿孔を、第1の凹部は第1のインプラント36が占めているため、第1の凹部62に通じないように行う。
【0118】
次に、2のインプラント38を完全に挿入し、この第2のインプラントの挿入により、第1のインプラントに接続するまで、凹部の孔のあいていない部分の軟組織が押される。
【0119】
こうすることで、第1のインプラントを2工程で埋め込まずに済み、第2のインプラントを埋め込む工程を行う際に第1のインプラントが位置決めされるため、この方が好適とすることができる。
【0120】
必要であれば、次の埋め込み手術計画がどのようなものであっても、術者は、前述の説明文に記載したように、有効成分を注入した前記組成物に挿入する方法を用いて、密封および/または強化および/または処理用の生体適合性のある材料を注入することができる。
【0121】
以上に記載した説明文は、特に大腿骨への適用に焦点を当てたものだが、腓骨踝または脛骨踝の骨折、脛骨ピロン骨折、手足の骨折の場合にも用途を見いだすことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F