(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1端面(2)と、該第1端面(2)と対向する第2端面(3)と、該第1端面(2)と該第2端面(3)とを接続する周側面(4)と、を備え、前記第1端面(2)と前記第2端面(3)とを貫通するように定められる軸線(O)を有する切削インサート(1)であって、
前記第1端面(2)と前記第2端面(3)とを貫通するように、取付穴(5)が形成されており、
前記第1端面(2)と前記周側面(4)との交差稜線には、少なくとも切れ刃(8)が形成されており、
前記第2端面(3)は、少なくとも1つの傾斜部(3a)を有し、
前記軸線(O)に対して略直角で且つ前記切れ刃(8)上のいずれか一点を通過する仮想平面(P1)を定めるとき、前記傾斜部(3a)は、前記周側面(4)側から前記軸線(O)を含み前記切れ刃(8)に対応する前記周側面(4)と略平行な方向に延在する仮想平面(V2)側に向かうにつれ、前記仮想平面(P1)側から離間するように傾斜し、
前記傾斜部(3a)と前記取付穴(5)との間には、前記軸線(O)に沿う方向に突き出した突出部(5b)が形成されている、
ことを特徴とする切削インサート(1)。
前記軸線(O)を含む平面によって切断された断面において、前記突出部(5b)の端面(5c)と側面(5d)との交差領域を通り且つ前記軸線(O)と平行な仮想直線(L4)と、前記取付穴(5)の内周面(5e)に沿った仮想直線(L5)と、の間の距離(S)は、前記取付穴(5)の全周に関して、0.5mm以上1.5mm以下の範囲にある、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の切削インサート(1)。
前記軸線(O)を含む平面によって切断された断面において、前記突出部(5b)の端面(5c)の仮想直線(L6)と、前記取付穴(5)の内周面(5e)に沿った仮想直線(L5)と、がなす内角(ε)は、85度以上である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の切削インサート(1)。
回転軸(RA)を有し、少なくとも1つのインサート取付座(13)が形成された工具ボデー(12)を備え、該インサート取付座(13)に切削インサートが着脱自在に装着される、刃先交換式回転切削工具(11)であって、
前記切削インサートは、請求項1から10のいずれかに記載の切削インサート(1)である、
ことを特徴とする刃先交換式回転切削工具(11)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」のような用語を用いるが、これらは理解を容易にするように用いられるに過ぎず、本発明を限定することを意図しない。
【0011】
本実施形態の切削インサート1は、
図1から
図5に示されているように、略四角形板状であり、短辺側の幅は約5mm、最大厚さは約3mmである。また、長辺側の長さは約8mmで、その内、主切れ刃8の長さは約7mmである。切削インサート1の各部の寸法はこれに限定されることはない。切削インサート1は、略四角形形状を有する第1端面2と、第1端面2に対向するように配置された第2端面3と、第1端面2と第2端面3とを接続する周側面4と、から基本的に構成されている。第1端面2の略中央部と第2端面3の略中央部とを貫通するように、中心軸線Oが定められる取付穴5が設けられている。この中心軸線Oは、本来的には切削インサート1の中心軸であり、本実施形態では切削インサート1の中心軸線と取付穴5の中心軸線とが一致しているが、これに限定されることはない。切削インサート1は、中心軸線Oの周りに、180°回転対称に構成されている。
【0012】
第1端面2は、第1端面2に対向する方向から見て(つまり
図2において)、4つの湾曲したコーナ部6と、それら各々コーナ部6の間に形成された4つの辺部7と、から構成された略四角形形状をなしている。4つの辺部7は、2つの長辺部7aと2つの短辺部7bとから構成されている。各々の長辺部7aは互いに対向しており、各々の短辺部7bも互いに対向するように配置されている。また、4つのコーナ部6は、切削に関与する2つのコーナ部(以下、切削コーナ部)6aと、切削に関与しない2つのコーナ部(以下、非切削コーナ部)6bと、から構成されている。切削に関与する切削コーナ部6aと切削に関与しない非切削コーナ部6bとは、長辺部7a又は短辺部7bを間に介して交互に配置されている。したがって、本実施形態の切削インサート1は、
図2において、中心軸線Oに関して180°回転対称の略四角形状をなしているのであるが、本発明はこれに限定されることはなく、三角形状や五角形状など他の形状であっても構わない。また、周側面4は、長辺部7aに隣接している第1側面部4aと、短辺部7bに隣接している第2側面部4bと、コーナ部6に隣接している第3側面部(コーナ側面部)4cと、から構成されている。これらの面の形状や大きさに関しては適宜変更することができる。
【0013】
第1端面2と周側面4との交差稜線部には、複数の切れ刃が形成されている。1つの切れ刃領域(または切れ刃セクション)は、主切れ刃8と、コーナ切れ刃9と、副切れ刃10と、から構成されている。主切れ刃8は、長辺部7aに相当する交差稜線部(つまり第1端面2の部分と第1側面部4aとの交差稜線部)の全体に亘って形成されている。すなわち、主切れ刃8は、互いに対して隣り合う2つの切削コーナ部6a及び非切削コーナ部6bの間に亘って延在している。コーナ切れ刃9は、切削コーナ部6aに相当する交差稜線部(つまり第1端面2の部分と第3側面部4cとの交差稜線部)の全体に亘って形成されている。コーナ切れ刃9の一方の端部は、主切れ刃8の一方の端部に接続している。副切れ刃10は、短辺部7bに相当する交差稜線部(つまり第1端面2部分と第2側面部4bとの交差稜線部)の一部に形成されている。すなわち、副切れ刃10は、互いに対して隣り合う2つの切削コーナ部6a及び非切削コーナ部6bの間において、切削コーナ部6aから始まって非切削コーナ6b方向に一定距離進んだ位置まで形成されており、非切削コーナ6bに接続してはいない。副切れ刃10の一方の端部は、コーナ切れ刃9の主切れ刃8と接続している方とは異なる端部に接続している。したがって、本実施形態の1つの切れ刃においては、主切れ刃8と、コーナ切れ刃9と、副切れ刃10と、がこの順番で連続して接続している。また、副切れ刃10と非切削コーナ6bとの間に内刃を形成してもよい。内刃は、ランピング加工等の掘り込み加工において使用される切れ刃である。内刃は、第1端面2に対向する方向から見て(
図2参照)、切削コーナ部6aに近づくにつれ切削インサート1の外方に傾斜するように形成されてもよい。
【0014】
ここで、主切れ刃8につらなる第1側面部4aに対向する側から切削インサート1をみた図である
図4と、副切れ刃10につらなる第2側面部4bに対向する側から切削インサート1をみた図である
図5と、を参照する。
図4及び
図5に示されているように、第1端面2と第2端面3との間において中心軸線Oに対して直角に延びる平面を定め、その平面を中間平面Mと定義する。なお、ここでは、中間平面Mは、全周に亘って周側面4を横断するように延びる。主切れ刃8は、2つの切削コーナ部6a、非切削コーナ部6b間において、中間平面Mとの距離が変化するように形成されている。具体的には、主切れ刃8は、切削コーナ部6aから非切削コーナ部6b方向に進むにつれ、第1端面2側から第2端面3側(すなわち、中間平面M側)に漸次近接するように直線状に延伸している。また、副切れ刃10も、2つの切削コーナ部6a、非切削コーナ部6b間において、中間平面Mとの距離が変化するように形成されている。具体的には、副切れ刃10は、切削コーナ部6aから非切削コーナ部6b方向に進むにつれ、第1端面2側から第2端面3側(すなわち、中間平面M側)に漸次近接するように直線状に延伸している。前述したように、副切れ刃10は、短辺部7bの全体に形成されているのではなく、その一部分にのみ形成されていることに注意する。そして、コーナ切れ刃9は、隣接する主切れ刃8と、隣接する副切れ刃10とを互いに滑らかにつなぐように延在する。したがって、コーナ切れ刃9が、中心軸線Oに平行な方向である切削インサート厚さ方向にて、最も中間平面Mから離れた位置にある。本実施形態の切削インサート1において、各切れ刃8,9,10は上記のような形状を有しているのであるが、本発明はこれに限定されることはなく、他の形状も可能である。
【0015】
主切れ刃8は、被削材の加工側面を主に切削する機能を有する切れ刃である。副切れ刃10は、被削材の加工底面を切削する機能を有する切れ刃である。コーナ切れ刃9は、被削材の加工側面と加工底面との間にある隅部を切削する機能を有する切れ刃である。本実施形態は、主切れ刃8と副切れ刃10とが平面視にて略直角に交差する、いわゆる、直角肩削りを行うことが可能なタイプの切削インサートであるが、本発明はこれに限定されることはない。
【0016】
第1端面2の一部は、対応する切れ刃8,9,10に関してすくい面2aとして機能する。すくい面2aは、第1端面2のうち各々の切れ刃8,9,10に隣接した部分であり、切れ刃8,9,10から離間するにつれて中間平面Mに漸次近接する傾斜面となっている。すくい面2aには、正のすくい角が付与されている。また、第1端面2の取付穴5周りは、平坦な中央平面2bを形成している。周側面4の一部は、対応する切れ刃8,9,10に関して逃げ面として機能する。具体的には、主切れ刃8に隣接する第1側面部4aは、その全体が逃げ面として機能する。副切れ刃10に隣接する第2側面部4bは、その全体ではなく、副切れ刃10が直接的に接続している部分4dのみが逃げ面として機能する。コーナ切れ刃9に隣接する第3側面部4cは、その全体が逃げ面として機能する。
【0017】
主切れ刃8の逃げ面として機能する第1側面部4aは、第1端面2側から第2端面3側に向けて、上側部分4a1と、下側部分4a2と、が接続して構成されている。上側部分4a1は、第2側面4bに対向する方向から見たとき、第1端面2側から第2端面3側に向かうにつれ、中心軸線Oから漸次離間するように傾斜している。これは
図6(a)に表されている。
図6(a)は、軸線Oを含むと共に、
図2において主切れ刃に略直交する面での断面図を示す。
図6(a)に示されているように、上側部分4a1は、逃げ角αが負となるように形成されている。ここで、逃げ角αは、中心軸線Oに対して平行で且つ主切れ刃8に沿うように定められる仮想直線L1と上側部分4a1との交差角のことを意味しており、
図6(a)において、上側部分4a1が仮想直線L1より左側に位置するときの角度を正としている。したがって、上側部分4a1は、第1端面2側から第2端面3側に向かうにつれ、仮想直線L1から切削インサート外方側へ漸次離間するように形成されていると言える。本実施形態の場合、逃げ角αは−15度であるが、本発明はこれに限定されることはなく、状況に応じて適宜変更することが可能である。これに対し、上側部分4a1に接続している下側部分4a2は、逃げ角がゼロとなるように構成されている。すなわち、下側部分4a2は、
図6(a)に示されているように、仮想直線L1と平行の位置関係にある。しかし、本発明はこれに限定されることはなく、下側部分4a2の逃げ角は適宜変更することが可能である。
【0018】
このように、本実施形態の切削インサート1においては、第1側面部4aが、第1端面2側から第2端面3側に向かって、上側部分4a1と下側部分4a2とが接続して構成されているが、本発明はこの形状に限定されはしない。すなわち、第1側面部4aは、単一の面から構成されていてもよいし、3つ以上の面が接続するように構成されていてもよい。
【0019】
一方、副切れ刃10の逃げ面として機能する部分4dを有する第2側面部4bは、
図7に示されているように、第1端面2側から第2端面3側に向かうにつれ、中心軸線Oを含み
図2におけるVII−VII断面に直交する仮想平面、すなわち、VI(a)―VI(a)断面を画定する仮想平面V1に漸次近接するように傾斜している。すなわち、第2側面部4bのうち、逃げ面として機能する部分(具体的には
図2において外方に凸状である部分)4dは、逃げ角βが正となるように形成されている。ここで、逃げ角βは、中心軸線Oに対して平行で且つ副切れ刃10に沿うように定められる仮想直線L2と第2側面部4bの逃げ面部分4dとの交差角のことを意味しており、
図7において、逃げ面部分4dが仮想直線L2より右側に位置するときの角度を正としている。したがって、第2側面分4bのうち、逃げ面として機能する部分4dは、第1端面2側から第2端面3側に向かうにつれ、仮想直線L2側から切削インサート内方側へ漸次離間するように形成されていると言える。本実施形態の場合、逃げ角βは5度であるが、本発明はこれに限定されることはなく、状況に応じて適宜変更することが可能である。また、コーナ切れ刃9の逃げ面として機能する第3側面部4cは、
図2等から理解されるように、主切れ刃8側に位置する部分では逃げ角が負となり、副切れ刃10側に位置する部分では逃げ角が正となるように形成されている。すなわち、第3側面部4cの逃げ角は、徐々に変化する部分を有する。したがって、第3側面部4cは、第1側面部4aと第2側面部4bとを滑らかに接続する。
【0020】
また、第2側面部4bの一部分は、工具ボデー12に設けられたインサート取付座13の側壁面14bと当接する面として機能する。
【0021】
第2端面3は、略V字形状の断面を有するように構成され、その上で、取付孔5の開口部5a周辺が突き出すように構成されている。以下に、第2端面3の構成を詳細に説明する。第2端面3は、
図6(b)に示されているように、第1側面部4a側から中心軸線Oを含み
図2におけるVII―VII断面と平行な仮想平面V2側に向かうにつれ、仮想平面P1から漸次離間するような2つの傾斜部3aを有している。仮想平面V2は、回転中心軸Oを含み主切れ刃8に対応する周側面4の一部と略平行な方向に延在する仮想平面であり、本実施形態では、回転中心軸Oを含み切削インサート1をその長手方向に沿って2等分割する仮想平面ということもできる。ここで、
図6(b)は、
図6(a)の断面に平行な面での断面図を示す。仮想平面P1とは、中心軸線Oに対して直角で且つ主切れ刃8上のいずれか一点を通過するように定められる平面である。傾斜部3aは、第1側面部4aの下側部分4a2にそれぞれ接続している。第2端面3は、第2側面部4bに対向する方向から見て(
図5参照)、略V字形状となっている。2つの傾斜部3aの間には、それぞれの傾斜部3aを接続するように平坦部3bが形成されている。しかしながら、この平坦部3bは必須の構成ではない。第2側面部4b側から中心軸線Oに対して直角になる方向で見て(すなわち、
図6(b)において)、傾斜部3aの傾斜角度θは15度であり、2つの傾斜部3aにおいてその大きさは同一となっている。ここで、傾斜角度θは、中心軸線Oに対して直角で且つ2つの傾斜部3aの延長面同士の交差点を通過する仮想直線L3と傾斜部3aとの交差角として表しており、
図6(b)において、傾斜部3aが仮想直線L3より上側に位置するときの角度を正としている。本実施形態において、2つの傾斜部3aの延長面同士がなす内角δは150度である。また、この第2端面3は、工具ボデー12に設けられたインサート取付座13の底壁面14aと当接する着座面として機能するのであるが、実際に底壁面14aと当接するのは2つの傾斜部3aのみであり、平坦部3bは当接することがないように構成されている。
【0022】
本実施形態の切削インサート1においては、
図3、4、5及び6(a)に示されているように、取付穴5の第2端面3側の開口部5aが、傾斜部3aから切削インサート外方に向かって突出する形状を有している。すなわち、開口部5aを含む取付穴5の周辺領域が、中心軸線Oに沿う方向において、切削インサート外方に向かって突き出すような突出部5bとして構成されている。突出部5bの端面5cは、平坦な面より構成されており、中心軸線Oに対して略直角に延在している。本実施形態では、突出部5bが平坦部3bと一体的に構成されている。したがって、
図5より理解されるように、突出部5bの端面5cと平坦部3bとが、一つの平面上にあるように構成されている。しかしながら、突出部5bはこの形状に限定されることはなく、突出部5bと平坦部3bとが別々に形成される構成であってもよい。
【0023】
また、
図6(a)に示されているように、中心軸線Oを通過し且つ中心軸線Oと平行な面(すなわち、中心軸線Oを含む平面)によって切断された断面において、突出部5bの端面5cと突出部5bの側面5dとの交差部を通り且つ中心軸線Oと平行な仮想直線L4と、取付穴5の内周面5eに沿った仮想直線L5と、の間の距離Sは、取付穴5の全周に亘って0.5mm以上1.5mm以下の範囲にあることが好ましい。また、
図6(a)に示されているように、突出部5bの端面5cの仮想直線L6と、取付穴5の内周面5eに沿った仮想直線L5と、がなす内角εは、取付穴5の全周に亘って85度以上であることが好ましい。
【0024】
また、
図6(b)に示されているように、2つの傾斜部3aの延長面同士は中心軸線O上で交差しており、
図8(
図3と同じ)に示されているように、第2端面3に対向する方向から切削インサート1を見たとき、2つの傾斜部3aの延長面同士の交差線Xは切削インサート1の長手方向に伸長する直線として規定される。さらに、
図8に示されているように、中心軸線Oを中心として、交差線Xから15度ほど回転した位置に基準線Yを規定する。基準線Yは中心軸線Oを起点として、交差線Xから全ての方向に規定されているので、中心軸線Oから放射状に4本の基準線Yが規定される。本実施形態の突出部5bは、2つの傾斜部3aの各々において、2つある基準線Y間に亘って延在している。すなわち、突出部5bの端面5cが、2つの傾斜部3aの各々において、2つある基準線Yの間の150度の領域に亘って、途絶えることなく連続して形成されている。本実施形態はこの構成に限定されることはないが、突出部5bが少なくともこのような領域に亘って存在していることが好ましい。
【0025】
切削インサート1は、超硬合金、サーメット、セラミック、又は単結晶ダイヤモンド、ダイヤモンドあるいは立方晶窒化硼素を含有する超高圧焼結体といった硬質材料、又はそれらにPVDまたはCVDコーティング膜を施したものから作製されることができる。
【0026】
次に、上記実施形態の切削インサート1を着脱自在に装着した刃先交換式回転切削工具11について、
図9から
図14を参照しながら説明する。
【0027】
本実施形態の刃先交換式回転切削工具11は、工具ボデー12を備える。工具ボデー12では、その先端側から後端側に延びる回転軸線RAが定められる。ここで、先端側とは、工具ボデー12のうち、切削インサート1が装着される方の端部のことを指し、後端側とは、その反対側に位置する端部のことを指す。刃先交換式回転切削工具11は、回転軸線RA周りに、回転方向K前方側に、回転可能に構成されている。
【0028】
工具ボデー12は、回転軸線RAに沿って延びる略円筒状をした全体形状を有している。工具ボデー12の先端側には、複数のインサート取付座13が形成されている。本実施形態では、2つのインサート取付座13が形成されているが、インサート取付座13の数は1つであっても3つ以上であってもよい。各インサート取付座13は、回転軸線RA周りの回転方向K前方に開くと共に、先端側及び外周側に開くように形成されている。
【0029】
インサート取付座13は、切削インサート1の第2端面3の傾斜部3aと当接可能な底壁面14aと、切削インサート1の第2側面部4bのうち第3側面部4d以外の箇所と当接可能な側壁面14bと、を備える。底壁面14aは、2つの分割された面部分を備え、それぞれが切削インサート1の2つの傾斜部3aと当接するように構成されている。したがって、底壁面14aの2つの分割面部を延長した延長面同士がなす角度は、切削インサート1の2つの傾斜部3を延長した延長面同士がなす角度εとほぼ等しい。また、2つの底壁面14aの間にはぬすみ部(すなわち、円弧状の凹部)が設けられている。また、底壁面14aは、基本的に切削インサート1の傾斜部3aと同様の形状または対応した形状を有していて、傾斜部3aに対応する大きさを有する。底壁面14aは、回転方向Kの前方を向く。底壁面14aの略中央には、切削インサート1を固定するための固定ねじ15を挿入するためのねじ穴16が形成されている。側壁面14bは、工具先端方向を向いており、切削インサート1の第2側面部4bの平坦な面と当接することが可能な形状及び大きさを有している。
【0030】
さらに、各々のインサート取付座13の工具回転方向K前方側には、切削によって生じた切りくずを排出するための切りくずポケット17が設けられている。
【0031】
このインサート取付座13に、固定ねじ15が取付穴5を通してねじ穴16にねじ込まれることで、切削インサート1は取り付けられる。このとき、切削インサート1の平坦部4a及び突出部5bはインサート取付座13には接触していない。
【0032】
次に、本実施形態の切削インサート1及び刃先交換式回転切削工具11の作用及び効果について説明する。
【0033】
本実施形態の切削インサート1は、傾斜部3aが周側面4側から回転中心軸Oを含み主切れ刃8に対応する周側面4の一部と略平行な方向に延在する仮想平面V2側に向かうにつれ、仮想平面P1側から離間するように傾斜し、傾斜部3a上における取付穴5の周辺領域には、中心軸線Oに沿う方向において、切削インサート外方に向かって突き出した突出部5bが形成されているため、次の効果を得ることができる。すなわち、突出部5bを設けることによって、取付穴5の内周面5eと傾斜部3aとが鋭く交差する領域又はそれらの間が非常に狭い(幅が非常に薄い)領域が生じることがないため、切削インサート1の第2端面3側の取付穴5周りの強度が、従来技術と比較し大幅に向上している。そのため、切削インサート1のクランプ時において応力が集中しやすい取付穴5周りの損傷が顕著に抑制されるという効果が得られる。また、切削インサート1の中心軸線Oに直角に交差する方向において、取付穴5周辺の厚さを大きくすることが可能となるので、切削インサート1全体の剛性が向上するという効果も得られる。
【0034】
また、中心軸線Oを通過し且つ中心軸線Oと平行な面(すなわち、中心軸線Oを含む平面)によって切断された断面(
図6(a))において、突出部5bの端面5cと側面5dとの交差領域を通り且つ中心軸線Oと平行な仮想直線L4と、取付穴5の内周面5eに沿った仮想直線L5と、の間の距離Sは、0.5mm以上1.5mm以下の範囲にあることが好ましい。この距離Sが0.5mmよりも小さい場合、突出部5bの幅が短くなりすぎて切削インサート1の剛性を向上させる効果が小さくなってしまう。一方、この距離Sが1.5mmよりも大きい場合、突出部5bが傾斜部3aに対して大きくなりすぎる。傾斜部3aは着座面として機能するので、突出部5bによって着座領域が減少してしまい、着座安定性が損なわれる可能性がある。
【0035】
また、中心軸線Oを通過し且つ中心軸線Oと平行な面(すなわち、中心軸線Oを含む平面)によって切断された断面において、突出部5bの端面5cの仮想直線L6と、取付穴5の内周面5eに沿った仮想直線L5と、がなす内角εは、85度以上であることが好ましい。この内角εが85度よりも小さいと、取付穴5の開口部5aの稜線が鋭角になりすぎてしまい、欠損を抑制するという効果が減少してしまう可能性がある。また、内角εは、90度以上であることがより好ましい。内角εが直角又は鈍角になることによって、取付穴5の開口部5a領域の強度が顕著に増大するからである。
【0036】
本実施形態においては、第2端面3が2つの傾斜部3aが交差した略V字形状を主要構成として有しているが、本発明はこれに限定されることはなく、第2端面3が1つ又は3つ以上の傾斜面3aを有する構成であっても効果を発揮することが可能である。しかしながら、第2端面3がV字形状の場合は、取付穴5周りの肉厚が著しく減少し、切削インサート1の強度不足が問題となるので、本発明による効果が特に大きい。また、傾斜部3aは、平面ではなく湾曲面であってもよいし、平面と湾曲面とから構成されていてもよい。また、第1端面2と周側面4との交差稜線部に形成される切れ刃セクション8,9,10の数はn個(nは1以上の整数)であればよい。本実施形態の場合、第1端面2及び第2端面3は、それぞれ、中心軸線O周りに、2回回転対称に形成されているので、2つの切れ刃セクション8,9,10を有している。
【0037】
また、突出部5bは、第2端面3に対向する方向から切削インサート1を見たとき、2つの傾斜部3aの延長面同士の交差線Xが中心軸線Oを通過しており、中心軸線Oを中心として交差線Xから15度ほど回転した位置に複数の基準線Yを規定するとき、突出部5bの端面5cは、2つの傾斜部3aの各々において、基準線Y間に亘って150度の範囲に延在していることが好ましい。すなわち、突出部5bは、2つの傾斜部3aの各々において、2つある基準線Yの間の150度の領域に亘って、途絶えることなく連続して形成されていることが好ましい。このような範囲に突出部5bが設けられることによって、取付穴5周りの切削インサート1の厚みを広範囲に亘って十分に確保することができるので、切削インサート1の剛性が格段に向上する。基準線Yが交差線Xから15度よりも大きな角度で規定された場合(すなわち、基準線Y間の角度が150度より小さくなる場合)、突出部5bが延在する範囲が小さくなるけれども、本発明の効果をある程度達成することは可能である。しかしながら、上記数値範囲の方がより大きな効果を得ることができる。
【0038】
また、傾斜部3aに隣接する側面部分(本実施形態では第1側面部4a)の逃げ角を負にすることが好ましい。これによって、第2端面3がV字形状でありながらも第2端面3に近い領域における取付穴5周りの幅を大きくすることができるので、切削インサート1の剛性を向上するという効果が一層高まる。
【0039】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明は種々の変更が可能であり、本願の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、置換、変更が可能である。
底面に傾斜面を有しながらも、底面のねじ穴周りの強度の高い切削インサートを提供する。本発明の切削インサート1には、第1端面2と第2端面3とを貫通するように、取付穴5が形成されており、第1端面2と周側面4との交差稜線上には、切れ刃8,9,10が形成されている。第2端面3は、傾斜部3aを有し、軸線Oに対して略直角で且つ切れ刃8,9,10上のいずれか一点を通過する仮想平面P1を定めるとき、傾斜部3aは、周側面4側から軸線O側に向かうにつれ、仮想平面P1側から離間するように傾斜している。傾斜部3aにおける取付穴5の周辺領域には、軸線Oに沿う方向に突き出した突出部5bが形成されている。