(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記検出部による検出結果に基づいて、さらに前記インバータ部から出力される電圧値を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力伝送システム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施形態に係る電力伝送システムのブロック図であり、
図2は本発明の実施形態に係る電力伝送システム100を車両に搭載した例を模式的に示す図である。本発明の電力伝送システム100は、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両搭載電池への充電のためのシステムに用いるのに好適である。このために、車両の底面部においては、受電を行うことを可能にする受電アンテナ210が配されてなる。
【0018】
本実施形態に係る電力伝送システム100では、上記のような車両に対して電力を非接触で伝送するため、当該車両を停車させることが可能な停車スペースに設けられる。車両充電用のスペースである当該停車スペースには、本実施形態に係る電力伝送システム100の送電アンテナ140などが地中部に埋設されるような構成となっている。車両のユーザーは本実施形態に係る電力伝送システムが設けられている停車スペースに車両を停車させて、送電アンテナ140から車両に搭載されている受電アンテナ210に対して、電磁場を介し電気エネルギーを伝送する。
【0019】
本実施形態に係る電力伝送システム100は、上記のような利用形態であることから、送電アンテナ140と受電アンテナ210との間の位置関係が電力伝送を行うたびに変化し、最適な電力伝送効率を与える周波数についてもこれに伴い変化することとなる。そこで、車両停車後、すなわち、送電アンテナ140と受電アンテナ210と間の位置関係がフィックスした後、実際の充電の電力伝送を行う際には、送電アンテナに入力される電圧の位相と、電流の位相との関係により最適周波数を決定するようにしている。
【0020】
車両充電設備(送電側)における整流昇圧部120は、商用電源などのAC電源部110からの交流電圧を一定の直流に変換するコンバータと、このコンバータからの出力を所定の電圧に昇圧するものである。この整流昇圧部120で生成される電圧の設定は送電制御部150から制御可能となっている。
【0021】
インバータ部130は、整流昇圧部120から供給される直流電圧から所定の交流電圧
を生成して、送電アンテナ140に入力する。
図3は本発明の実施形態に係る電力伝送システムのインバータ部を示す図である。インバータ部130は、例えば
図3に示すように、フルブリッジ方式で接続されたQ
A乃至Q
Dからなる4つの電界効果トランジスタ(FET)によって構成されている。
【0022】
本実施形態においては、直列接続されたスイッチング素子Q
Aとスイッチング素子Q
Bの間の接続部T1と、直列接続されたスイッチング素子Q
Cとスイッチング素子Q
Dとの間の接続部T2との間に送電アンテナ140が接続される構成となっており、スイッチング素子Q
Aとスイッチング素子Q
Dがオンのとき、スイッチング素子Q
Bとスイッチング素子Q
Cがオフとされ、スイッチング素子Q
Bとスイッチング素子Q
Cがオンのとき、スイッチング素子Q
Aとスイッチング素子Q
Dがオフとされることで、接続部T1と接続部T2との間に矩形波の交流電圧を発生させる。
【0023】
上記のようなインバータ部130を構成するスイッチング素子Q
A乃至Q
Dに対する駆動信号は送電制御部150から入力されるようになっている。また、インバータ部130を駆動させるための周波数は送電制御部150から制御することができるようになっている。
【0024】
上記のようなインバータ部130からの出力は送電アンテナ140に供給される。この送電アンテナ140は、インダクタンス成分を有するコイルから構成されており、対向するようにして配置される車両搭載の受電アンテナ210と共鳴することで、送電アンテナ140から出力される電気エネルギーを受電アンテナ210に送ることができるようになっている。
【0025】
なお、インバータ部130からの出力を、送電アンテナ140に入力する際には、いったん、不図示の整合器によってインピーダンスを整合させるようにしてもよい。整合器は所定の回路定数を有する受動素子から構成することができる。
【0026】
本発明の実施形態に係る電力伝送システムでは、電力伝送システム100の送電側の送電アンテナ140から、受電側の受電アンテナ210へ効率的に電力を伝送する際、送電アンテナ140の共振周波数と、受電アンテナ210の共振周波数とを同一とすることで、送電側アンテナから受電側アンテナに対し、効率的にエネルギー伝達を行うようにしている。
【0027】
インバータ部130に対する入力される電圧V
1及び電流I
1、インバータ部130から出力される電圧V
2及び電流I
2は送電制御部150によって計測されるようになっている。これにより、送電制御部150は、計測される電圧V
1及び電流I
1からインバータ部130に入力される入力電力(W
1=V
1×I
1)、及び、計測される電圧V
2及び電流I
2か
らインバータ部130から出力される出力電力(W
2=V
2×I
2)を取得することができ
るようになっている。
【0028】
また、送電制御部150では、上記のような構成によりインバータ部130から出力される電圧V
2の位相、電流I
2の位相についても検出されるようになっている。
【0029】
送電制御部150は、CPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理部を有しており、検出された電圧V
2の位相、及び電流I
2の位相の差を演算する。
【0030】
送電制御部150は、整流昇圧部120によって出力される直流電圧の電圧と、インバータ部130で出力される交流電圧の周波数を制御して、実際の充電の電力伝送を実行す
るが、このような制御を行う際には制御プログラム160が参照されることによって周波数などが決定される。制御プログラム160は、記憶手段に記憶され、送電制御部150によって参照可能に構成されている。
【0031】
また、通信部170は車両側の通信部270と無線通信を行い、車両との間でデータの送受を可能にする構成である。通信部170によって受信したデータは送電制御部150に転送され処理されるようになっている。また、送電制御部150は所定情報を、通信部170を介して車両側に送信することができるようになっている。
【0032】
次に、車両側に設けられている電力伝送システム100の構成について説明する。車両の受電側のシステムにおいて、受電アンテナ210は、送電アンテナ140と共鳴することによって、送電アンテナ140から出力される電気エネルギーを受電するものである。
【0033】
受電アンテナ210で受電された交流電力は、整流器220において整流され、整流さ
れた電力は充電器230を通して電池240に蓄電されるようになっている。充電器230は充電制御部250からの指令に基づいて電池240の蓄電を制御する。
【0034】
充電器230から電池240に対して入力される電圧V
3及び電流I
3は充電制御部25
0によって計測されるようになっている。計測された電圧V
3及び電流I
3により、充電制御部250は、充電器230を制御して、電池240の適切な充電プロファイルに沿うよ
うに電池240の充電を制御することができるように構成されている。充電器230には
、電流センサおよび電圧センサが設けられており、出力電圧をフィードバック制御することにより、電池240を定電流充電モード、定電力充電モード、定電圧充電モードのいずれかの充電モードで充電させるかを選択することができるようになっている。
【0035】
充電制御部250はCPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理部を有しており、図示されている充電制御部250と接続される各構成と協働するように動作する。
【0036】
充電制御部250と接続されている充電プロファイル260は 電池240の充電プロファイルを記憶すると共に、充電制御部250をこのプロファイルに沿って動作させるためのアルゴリズムが記憶されている。
図5は電池240の充電プロファイル260を示す図である。この充電プロファイル260は電池240の充電プロファイルの一例を示すものであり、電池240を充電するためには、その他のプロファイルを用いるようにしてもよい。
【0037】
また、
図5では電池240の蓄電量がほとんどない状態からの充電プロファイルを示すものである。この充電プロファイル260においては、まず一定の電力P
constで電池2
40の充電を行う定出力充電(CP制御)が行われる。次に、電池240の端部電圧がVfとなったら、一定の充電電圧を維持する定電圧充電(CV制御)が行われる。そして、定電圧充電時、電池240に流れこむ電流がI
minとなったら、充電を終了する。
【0038】
また、通信部270は車両側の通信部270と無線通信を行い、送電側システムとの間でデータの送受を可能にする構成である。通信部270によって受信したデータは充電制御部250に転送され処理されるようになっている。また、充電制御部250は所定情報を、通信部270を介して送電側に送信することができるようになっている。例えば、充電制御部250は、定電力(CP)充電モード、或いは定電圧(CV)充電モードのどの充電モードで、電池240の充電を行っているかに係る情報を車両充電設備側のシステムに送信することができるようになっている。
【0039】
以上のように構成される電力伝送システム100において、インバータ部130から送電アンテナ140に入力される電圧V
2と、送電アンテナ140に流れる電流I
2の関係を
図4に基づいて説明する。
【0040】
図4(A)は、電圧V
2と電流I
2の位相差が所定値内にある場合を示しており、この場合、送電アンテナ140から受電アンテナ210に対して効率的に電力伝送を行うことが可能となると共に、さらに、送電アンテナ140に流れる電流も許容範囲内に収束する。
【0041】
また、
図4(B)は電圧V
2の位相より電流I
2の位相が、所定の値より遅れている場合を示しており、この場合、送電アンテナ140から受電アンテナ210に対して効率的に電力伝送を行うことができず、さらに、送電アンテナ140に流れる電流も増大する。
【0042】
また、
図4(C)は電圧V
2の位相より電流I
2の位相が、所定の値より進んでいる場合を示しており、この場合、送電アンテナ140から受電アンテナ210に対して効率的に電力伝送を行うことができず、さらに、送電アンテナ140に流れる電流も増大する。
【0043】
次に、以上のように構成される電力伝送システム100におけるインバータ部130の制御処理のフローについて説明する。
【0044】
図6は本発明の実施形態に係る電力伝送システムにおけるインバータ制御処理のフローチャート(その1)を示す図であり、
図5の(I)の期間におけるインバータ部130の制御の際に用いられるものである。この
図5の(I)の期間では、インバータ部130の出力を0から目標電力値までに上昇させる出力上昇制御が実行される。このようなフローは送電制御部150によって実行されるものであり、制御プログラム160に記憶されてなるものである。また、送電制御部150はこのフローに基づいて、整流昇圧部120及びインバータ部130の制御を行う。
【0045】
図6において、ステップS100でインバータ制御処理が開始されると、続く、ステップS101では、電圧V
2の位相より電流I
2の位相が、所定値以上遅れているか否かが判定される。
【0046】
ステップS101における判定がYESである場合にはステップS105に進み、インバータ部130における駆動周波数を所定量下げる制御を行う。一方、ステップS101における判定がNOである場合にはステップS102に進む。
【0047】
ステップS102では、電圧V
2の位相より電流I
2の位相が、所定値以上進んでいるか否かが判定される。ステップS102における判定がYESである場合にはステップS104に進み、インバータ部130における駆動周波数を所定量上げる制御を行う。一方、ステップS102における判定がNOである場合には、ステップS103に進み、インバータ部130から出力される電圧を所定量上げる制御を行う。
【0048】
ステップS106では、インバータ部130から出力される電力値が目標値まで到達したか否かが判定され、当該判定がYESである場合には、次に定電力充電モード時の制御(フローその2)へと移行する。一方、当該判定がNOである間は、電力値が目標値となるまでステップS101乃至ステップS106の間をループする。
【0049】
図7は本発明の実施形態に係る電力伝送システムにおけるインバータ制御処理のフローチャート(その2)を示す図であり、
図5の(II)の期間におけるインバータ部130の制御の際に用いられるものである。この
図5の(II)の期間では、定電力充電モード(CPモード)に対応するような制御が実行される。このようなフローは送電制御部15
0によって実行されるものであり、制御プログラム160に記憶されてなるものである。また、送電制御部150はこのフローに基づいて、整流昇圧部120及びインバータ部130の制御を行う。
【0050】
図7において、ステップS200でインバータ制御処理が開始されると、続く、ステップS201では、電圧V
2の位相より電流I
2の位相が、所定値以上遅れているか否かが判定される。
【0051】
ステップS201における判定がYESである場合にはステップS205に進み、インバータ部130における駆動周波数を所定量下げる制御を行う。一方、ステップS201における判定がNOである場合にはステップS202に進む。
【0052】
ステップS202では、電圧V
2の位相より電流I
2の位相が、所定値以上進んでいるか否かが判定される。ステップS202における判定がYESである場合にはステップS204に進み、インバータ部130における駆動周波数を所定量上げる制御を行う。一方、ステップS202における判定がNOである場合には、ステップS203に進み、インバータ部130から出力される電力が目標値より大きいか否かが判定される。
【0053】
ステップS203における判定がYESである場合にはステップS206に進み、インバータ部130から出力する電圧を所定量下げる。一方、ステップS203における判定がNOである場合にはステップS207に進み、インバータ部130から出力する電圧を所定量上げる。
【0054】
ステップS208では、定電力充電モードが終了したか否かが判定される。当該判定がYESである場合には、次に定電圧充電モード時の制御(フローその3)へと移行する。一方、当該判定がNOである間は、定電力充電モード時の制御を継続するように、ステップS201乃至ステップS208の間をループする。
【0055】
図8は本発明の実施形態に係る電力伝送システムにおけるインバータ制御処理のフローチャート(その3)を示す図であり、
図5の(III)の期間におけるインバータ部130の制御の際に用いられるものである。この
図5の(III)の期間では、定電圧充電モード(CVモード)に対応するような制御が実行される。このようなフローは送電制御部150によって実行されるものであり、制御プログラム160に記憶されてなるものである。また、送電制御部150はこのフローに基づいて、整流昇圧部120及びインバータ部130の制御を行う。
【0056】
図8において、ステップS300でインバータ制御処理が開始されると、続く、ステップS301では、電圧V
2の位相より電流II
2の位相が、所定値以上遅れているか否かが判定される。
【0057】
ステップS301における判定がYESである場合にはステップS305に進み、インバータ部130における駆動周波数を所定量下げる制御を行う。一方、ステップS301における判定がNOである場合にはステップS302に進む。
【0058】
ステップS302では、電圧V
2の位相より電流II
2の位相が、所定値以上進んでいるか否かが判定される。ステップS302における判定がYESである場合にはステップS304に進み、インバータ部130における駆動周波数を所定量上げる制御を行う。一方、ステップS302における判定がNOである場合には、ステップS303に進み、定電圧充電モードが終了したか否かが判定される。当該判定がYESである場合には、ステップS306に進み処理を終了し、一方、当該判定がNOである間は、定電圧充電モード時
の制御を継続するように、ステップS301乃至ステップS306の間をループする。
【0059】
以上のような本発明に係る電力伝送システムによれば、インバータ部130から前記送電アンテナ140に入力される電圧の位相と、前記送電アンテナ140に流れる電流の位相とを検出する検出部による検出結果に基づいて、インバータ部130における周波数を制御する構成であるので、各種の負荷変動に基づく、電流電圧の位相差の変動に応じて、適切にインバータ部130における周波数を制御することができ、電力伝送効率の低下を抑制することが可能となると共に、送電アンテナ140に想定以上の大電流が流れることがなく、システムを安定的に運用することが可能となる。
【0060】
ここで、ワイヤレス電力伝送システムにおける伝送効率の極値を与える周波数について説明する。前記システムの電力伝送時においては、伝送効率の極値を与える周波数が2つ存在することがある。このような2つのうちのいずれの周波数を選択する方がシステムにとって最適であるかについて説明する。
【0061】
図9は送電アンテナ140と受電アンテナ210とを近接させたときの送電効率の周波数依存性例を示す図である。
【0062】
磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムにおいては、
図9に示すように、第1極値周波数f
m、第2極値周波数f
eの2つがあるが、電力伝送を行うときには、これらのいずれかの周波数でこれを行うことが好ましい。
【0063】
図10は第1極値周波数における電流と電界の様子を模式的に示す図である。第1極値周波数においては、送電アンテナ140のコイルに流れる電流と、受電アンテナ210のコイルに流れる電流とで位相が略等しくなり、磁界ベクトルが揃う位置が送電アンテナ140のコイルや受電アンテナ210のコイルの中央部付近となる。この状態を、送電アンテナ140と受電アンテナ210との間の対称面に対して磁界の向きが垂直となる磁気壁が生じているものとして考える。
【0064】
また、
図11は第2極値周波数における電流と電界の様子を模式的に示す図である。第2極値周波数においては、送電アンテナ140のコイルに流れる電流と、受電アンテナ210のコイルに流れる電流とで位相がほぼ逆となり、磁界ベクトルが揃う位置が送電アンテナ140のコイルや受電アンテナ210のコイルの対称面付近となる。この状態を、送電アンテナ140と受電アンテナ210との間の対称面に対して磁界の向きが水平となる電気壁が生じているものとして考える。
【0065】
なお、以上のような電気壁や磁気壁などの概念に関しては、居村岳広、堀洋一「電磁界共振結合による伝送技術」IEEJ Journal,Vol.129,No.7,2009、或いは、居村岳広、岡部浩之、内田利之、堀洋一「等価回路から見た非接触電力伝送の磁界結合と電界結合に関する研究」IEEJ Trans.IA,Vol.130,No.1,2010などに記載されているものを本明細書においては準用している。
【0066】
本発明において、極値を与える周波数として、第1極値周波数、第2極値周波数の2つがある場合については、送電アンテナ140と受電アンテナ210との間の対称面に電気壁が生じる極値周波数を選定する理由について説明する。
【0067】
図12は2つの極値を与える極値周波数のうち磁気壁が生じる極値周波数(第1周波数)での特性を示す図である。
図12(A)は電池240(負荷)の負荷変化変動に伴う送電側の電圧(V
1)、電流(I
1)の変動の様子を示す図であり、
図12(B)は電池240(負荷)の負荷変化変動に伴う受電側の電圧(V
3)、電流(I
3)の変動の様子を示す
図である。
図12に示すような特性によれば、受電側で電池240(負荷)の負荷増大と共に、電圧が増大する特性があることがわかる。
【0068】
以上のような磁気壁が生じる周波数においては、電池240側からみて受電アンテナ210が定電流源として見えるものである。このような受電アンテナ210が定電流源のように動作する周波数で、電力伝送を行った場合に、仮に負荷側である電池240などの不具合により緊急停止が起きたとすると、受電アンテナ210の両端部の電圧が上昇してしまうこととなる。
【0069】
一方、
図13は2つの極値を与える極値周波数のうち電気壁が生じる極値周波数(第2周波数)での特性を示す図である。
図13(A)は電池240(負荷)の負荷変化変動に伴う送電側の電圧(V
1)、電流(I
1)の変動の様子を示す図であり、
図13(B)は電池240(負荷)の負荷変化変動に伴う受電側の電圧(V
3)、電流(I
3)の変動の様子を示す図である。
図13に示すような特性によれば、受電側で電池240(負荷)の負荷増大と共に、電流が減少する特性があることがわかる。
【0070】
以上のような電気壁が生じる周波数においては、電池240側からみて受電アンテナ210が定電圧源として見えるものである。このような受電アンテナ210が定電圧源のように動作する周波数で、電力伝送を行った場合に、仮に負荷側である電池240などの不具合により緊急停止が起きたとしても、受電アンテナ210の両端部の電圧が上昇することはない。したがって、本発明に係る電力伝送システムによれば、負荷が急激に低下した際に電圧が高圧になることがなく、安定して電力伝送を行うことが可能となるのである。
【0071】
図12の特性においては、受電側の電池240(負荷)にとっては、充電回路が電流源として見えることとなり、
図13の特性においては、受電側の電池240(負荷)にとっては、充電回路が電圧源として見えることとなる。負荷が増大することに伴い、電流が減少する
図13に示す特性の方が、電池240(負荷)にとっては好ましいので、本実施形態においては、第1極値周波数、第2極値周波数の2つがある場合については、送電アンテナ140と受電アンテナ210との間の対称面に電気壁が生じる極値周波数を選定するようにしている。
【0072】
このような本発明に係る電力伝送システムによれば、伝送効率の極値を与える周波数が2つ存在することがある場合でも、電力伝送時の最適な周波数を迅速に決定することができ、効率的な電力伝送を短時間で行うことが可能となる。
【0073】
また、2つの極値を与える周波数が2つある場合に、送電アンテナ140と受電アンテナ210との間の対称面に電気壁が生じる極値周波数を選定すると、電池240(負荷)にとって、充電回路が電圧源として見えるので、充電制御により電池240への出力が変動した際にインバータ部130の出力も伴って増減するために扱いやすい、というメリットがある。また、充電制御部250が緊急停止した際にも供給電力も自動的に最小化するため無駄な装置も必要ない。
【0074】
また、2つの極値を与える周波数が2つある場合に、送電アンテナ140と受電アンテナ210との間の対称面に電気壁が生じる極値周波数を選定すると、充電制御部250からみて整流器220が電圧源として見えるので、充電制御により電池240への出力が変動した際に整流昇圧部120の出力も伴って増減するために扱いやすい、というメリットがある。
【0075】
これに対して、2つの極値を与える周波数が2つある場合に、送電アンテナ140と受電アンテナ210との間の対称面に磁気壁が生じる極値周波数を選定すると、充電制御部
250が出力を小さくした際に伴って供給電圧を制御する必要がありそのための通信手段や検知手段が必要となり、コストがかかることとなる。
【0076】
ただし、本発明に係る電力伝送システムにおけるインバータ部の周波数制御方法は、極値が2つとなる送電アンテナ140と受電アンテナ210との間の対称面に、電気壁が生じる極値周波数を選定する場合、磁気壁が生じる極値周波数を選定する場合のいずれにも利用することができるし、さらに、共振点付近での極値が1つしかない場合でも有効に利用することができる。