特許第5988199号(P5988199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988199
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】IgA腎症診断法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20160825BHJP
   G01N 33/70 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   G01N33/53 N
   G01N33/70
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-121791(P2012-121791)
(22)【出願日】2012年5月29日
(65)【公開番号】特開2013-246127(P2013-246127A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】502285457
【氏名又は名称】学校法人順天堂
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 仁
(72)【発明者】
【氏名】富野 康日己
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐介
(72)【発明者】
【氏名】柳川 宏之
【審査官】 赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−163151(JP,A)
【文献】 特開2010−285419(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/042371(WO,A2)
【文献】 国際公開第2010/143422(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/033999(WO,A2)
【文献】 特表2008−501979(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0272101(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも血中IgA値、血中糖鎖不全IgA1値、血中IgA−IgG免疫複合体値、血中糖鎖不全IgA1特異的IgA値及び尿中タンパク値の5種の測定値をロジスティック回帰モデルにより解析することを特徴とするIgA腎症診断のための検査法。
【請求項2】
ロジスティック回帰モデルの変数としてさらに、年齢及び性別を加えて解析する請求項1記載の検査法。
【請求項3】
ロジスティック回帰モデルの変数としてさらに、血中クレアチニン値を加えて解析する請求項1又は2記載の検査法。
【請求項4】
被験者由来、正常者由来、及びIgA腎症以外の腎疾患患者由来の各測定値のロジスティック回帰モデル解析結果を対比することを含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の検査法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IgA腎症を他の腎症と区別して診断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IgA腎症は、世界で最も多い慢性糸球体腎炎であり、糸球体メサンギウム領域へのIgAの沈着を主体とする顆粒状沈着を特徴とするメサンギウム増殖性腎炎、と定義され、約25年の経過で約半数が末期腎不全へと進行する予後不良な疾患である。メサンギウム領域には、しばしばIgGの共沈着がみられる。その発症機序はいまだ十分に解明されておらず、その治療方法も、食事療法、抗血小板薬、降圧薬、副腎皮質ステロイド等による薬物治療が行なわれているが、十分な治療効果は得られていない。
【0003】
IgA腎症は、前記の定義に従い、現在、腎生検により診断されている。しかし、腎生検は、入院を要し、出血・感染のリスクを伴うために患者に対する負担が大きい、片腎の患者には腎生検施行が困難である等の問題がある。従って、採血や採尿などの非侵襲的な検者データによってIgA腎症を診断することは重要課題である。
【0004】
しかし、IgA腎症には、IgA及びIgGがともに沈着する症例、IgAのみが沈着する症例が混在し、非侵襲的診断は困難である。また、IgA腎症患者の血中には、糖鎖不全型IgA1が増加している(非特許文献1)ことが知られている。しかし、糖鎖不全IgA1だけで、本症の病態を説明することは困難であり、糖鎖不全IgA1が高分子の免疫複合体を形成し、腎臓に沈着することが病態において重要であると考えられる。免疫複合体を形成するIgAは糖鎖不全IgA1であり、患者血中には、糖鎖不全IgA1−IgA、および糖鎖不全IgA1−IgG免疫複合体が増加していることが判明し、近年本発明者らは、糖鎖不全IgA1を特異的に認識するIgG抗体を同定し、測定系を樹立した(非特許文献2)。これまでに、IgA腎症患者の血中で増加していると報告がある血中糖鎖不全IgA1や免疫複合体値でも、健常人やIgA腎症以外の腎疾患患者群の血中の値とオーバーラップが認められ、これらのバイオマーカーでは診断に用いることが困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kidney Int, 2007, 71: 1148-1154
【非特許文献2】J Clin Invest, 2009, 119: 1668-1677
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、腎生検に頼ることなく、IgA腎症を高確率で診断できる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、IgA腎症の正確な診断手段を開発すべく、種々の血中バイオマーカー、尿中マーカー等を組み合わせて検討してきたが、従来知られている種々のマーカーを組み合わせても腎生検の結果との相関性は向上しなかった。そこでさらに検討した結果、特定の血中バイオマーカーと尿中マーカーとを組み合わせ、これを変数としてロジスティック回帰モデルによる解析を行ったところ、90%以上の正確さでIgA腎症の診断ができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の[1]〜[4]に関するものである。
[1]少なくとも血中IgA値、血中糖鎖不全IgA1値、血中IgA−IgG免疫複合体値、血中糖鎖不全IgA1特異的IgA値及び尿中タンパク値の5種の測定値をロジスティック回帰モデルにより解析することを特徴とするIgA腎症診断のための検査法。
[2]ロジスティック回帰モデルの変数としてさらに、年齢及び性別を加えて解析する[1]記載の検査法。
[3]ロジスティック回帰モデルの変数としてさらに、血中クレアチニン値を加えて解析する[1]又は[2]記載の検査法。
[4]被験者由来、及びIgA腎症以外の腎疾患患者由来の各測定値のロジスティック回帰モデル解析結果を対比することにより判定するものである[1]〜[3]のいずれか1項記載の検査法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、採血及び採尿により得られる非侵襲的な検査データのみから、IgA腎症を正確に診断できる。これにより、早期の治療が可能になるとともに、治療中の経過観察も患者に負担をかけずに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】血中IgA値測定による判定結果を示す。
図2】血中糖鎖不全IgA1値測定による判定結果を示す。
図3】血中IgA−IgG免疫複合体値測定による判定結果を示す。
図4】血中糖鎖不全IgA1特異的IgA値測定による判定結果を示す。
図5】本発明方法による判定結果の選択性及び感度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の検査法は、少なくとも血中IgA値、血中糖鎖不全IgA1値、血中IgA−IgG免疫複合体値、血中糖鎖不全IgA1特異的IgA値及び尿中タンパク値の5種の測定値をロジスティック回帰モデルにより解析する。本発明の検査法においては、診断をより正確にするために、上記5種に加えて、年齢及び性別をロジスティック回帰モデルの解析変数として追加するのが好ましい。さらに、上記5又は7種に加えて、血中クレアチニン値、血尿の有無を当該解析変数として追加するのが好ましい。
【0012】
血中IgA値は、例えばELISA、放射免疫定量法(RIA)等の免疫測定法により測定することができる。このうち、ELISA法により測定するのが、方法論が確立されており好適である。血中IgA値は、通常血漿を対象として測定され、血漿1ml中の濃度として得られるので、この数値(mg/ml)を直接解析に使用し、ロジスティックモデル解析に使用する。
【0013】
血中糖鎖不全IgA1値は、例えばレクチンを用いたアフィニティクロマト法、ELISA等の免疫測定法により測定することができる。このうち、ELISAにより測定するのが、正確であり好ましい。血中糖鎖不全IgA1値は、精製された糖鎖不全IgA1蛋白を対象として測定され、血中IgA 100ng中に含まれる糖鎖異常IgA1値が吸光度(OD)として得られるので、この数値を血中IgA値と掛け合わせ、血中の糖鎖異常IgA1値を算出し(Units/ml)、ロジスティックモデル解析に使用する。
【0014】
血中IgA−IgG免疫複合体値は、ELISA法より測定することができる。血中IgA−IgG免疫複合体値は、通常血漿を対象として測定され、血漿1ml中の濃度が吸光度(OD)として得られるので、この数値をロジスティックモデル解析に使用する。
【0015】
血中糖鎖不全IgA1特異的IgA値は、ELISA法により測定することができる。ELISAで測定するのが、正確であり好ましい。血中糖鎖不全IgA1特異的IgA値は、通常血漿を対象として測定され、血漿1ml中の濃度が吸光度(OD)として得られるので、この数値をロジスティックモデル解析に使用する。
【0016】
尿タンパク値は、例えば比濁法、色素比色法(PR法、CBB法など)、Lowry法により測定することができる。このうち、色素比色法(PR法)法による測定値を用いるのが簡便である点で好ましい。尿タンパク値は、通常尿1ml中の濃度として得られる。しかし、随時尿中の尿蛋白は尿の比重によって影響を受けるため、1日の尿蛋白排泄量を推定する方法として、通常尿中のクレアチニン値で補正をする。尿中クレアチニン値は、酵素法で測定され、通常1ml中の濃度として得られる。随時尿中の尿蛋白排泄量として、尿中蛋白/尿中クレアチニン値(g/g・Cr)として算出され、この数値をロジスティックモデル解析に使用する。
【0017】
血中クレアチニン値は、例えば酵素法、Jaffe法等により測定することができる。このうち、酵素法による測定値を用いるのが簡便であり好ましい。血中クレアチニン値は、通常血漿を対象として測定され、血漿1ml中の濃度として得られるので、この数値をロジスティックモデル解析に使用する。
【0018】
血尿の程度は尿中赤血球数で判断する。尿中赤血球数は、通常顕微鏡下で目視することで測定できる。尿中赤血球数は、1〜5個/視野を0、6〜10個/視野を1、11〜15個/視野を2、16〜20個/視野を3、21〜25個/視野を4、26〜30個/視野を5、多数/視野を6と定量化してロジスティックモデル解析に使用する。また、年齢はそのままロジスティックモデル解析に使用し、性別は男性を1、女性を2としてロジスティックモデル解析に使用する。
【0019】
ロジスティック回帰モデルによる解析は、市販の統計解析ソフトに含まれる多変量解析(ロジスティック回帰モデル)を用いて、前記5種〜9種の変数を入力して解析すればよい。ロジスティック回帰モデルは、JMP software(SAS Institute Japan株式会社)より入手できる。具体的には、ロジスティック回帰モデルの変数として、血中IgA値、糖鎖異常IgA1値、IgA−IgG免疫複合体値、糖鎖異常IgA1特異的IgA値、尿中蛋白量(尿中蛋白/尿中クレアチニン値)、血中クレアチニン値、尿中赤血球数、年齢、性別を入力し、IgA腎症患者とIgA腎症以外の腎疾患患者の各々の数値を定量化する。
【0020】
得られた解析結果を、健常者についての解析結果、他の腎疾患患者の解析結果と対比すれば、さらに正確な診断が可能である。また、健常者の解析結果、IgA腎症の患者の解析結果、他の腎疾患患者の解析結果を多数データベース化すれば、より正確な診断が可能となる。
【実施例】
【0021】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0022】
実施例
(1)血漿中糖鎖不全IgA1の測定値を健常者群とIgA腎症(腎生検による)群とを対比した結果は、Kidney Int,2007,71:1148−1154に報告されており、その選択性は90.0%であるが、感度は76.5%と報告されている。
一方、本発明者の以前の検討によれば、血漿中糖鎖不全IgA1特異的IgGを用いて診断を行った結果、IgA腎症と健常者で感度95%、特異度88%であった(J Clin Invest,2009,119:1668−1677)。
(2)今回、IgA腎症患者135名及び健常者74名の以下のマーカーを用いてロジスティック回帰モデル解析を行った。
(a)IgA(ELISA法)
以下ELISAプレートはNunc社のMaxiSorpプレートを使用することとする。
1)抗ヒトIgA抗体<F(ab’)2 fragments of goat anti−human IgA (α chain−specific)(Jackson ImmunoResearch Labs)>をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を用いて1μg/mlに調整し、ELISAプレートの各ウェルに100μLずつ添加して4℃で一晩インキュベートし、プレートをコーティングする。
2)PBSに0.05%のTween20を添加して作成した0.05%PBS−Tween溶液(PBS−T)を用いてプレートを3回洗浄する。(以下特に記載がなければ、プレートの洗浄にはPBS−Tを使用するものとする)
3)PBS−Tに1%のbovine serum albumin(BSA)(Sigma Aldrich社)を添加して作成した1%BSA+PBS−T溶液を200μLずつ各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートしてプレートをブロッキングする。
4)プレートを5回洗浄する。
5)PBS−Tで至適濃度に希釈したヒト血清を各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートする。
6)プレートを5回洗浄する。
7)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識した酵素標識抗ヒトIgA抗体<HRP conjugated F(ab’)2 fragment of goat IgG anti−human IgA(BioSource社)>をPBS−Tを用いて10000倍に希釈し、100μLずつ各ウェルに添加する。37℃で2時間インキュベートし、酵素標識を行う。
8)プレートを5回洗浄する。
9)発色基質液<0.05Mのクエン酸リン酸緩衝液(pH5.0)にo−フェニレンジアミン(OPD)(Sigma Aldrich)を加えて作成した、0.4mg/ml OPD溶液>を100μLずつ各ウェルに添加して5分間室温で待ち発色する。1規定の硫酸で反応を止める。
10)SpectraMax 340PC(Molecular Devices)を用いて吸光度を測定する(490nm)。
結果を図1に示す。
【0023】
(b)糖鎖不全IgA1(ELISA法)
1)抗ヒトIgA抗体をPBSを用いて2.5μg/mlに調整し、ELISAプレートの各ウェルに100μLずつ添加して4℃で一晩インキュベートし、プレートをコーティングする。
2)プレートを3回洗浄する。
3)1%BSA+PBS−T溶液を200μLずつ各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートし、プレートをブロッキングする。
4)1%BSA+PBS−Tで1回洗浄する。
5)1%BSA+PBS−Tを用いて至適濃度に希釈したヒト血清を各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートする。
6)プレートを5回洗浄する。
7)Neuraminidase(Roche Diagnostic Corp.,Indianapolis,IN)を0.1M酢酸緩衝液(pH5)を用いて10mU/mlに調整し、各ウェルに100μLずつ加え、37℃で3時間インキュベートする。
8)プレートを7回洗浄する。
9)ビオチンで標識されたHelix aspersa aggulutininレクチン(HAAレクチン)(Sigma−Aldrich)を1%BSAで500倍に希釈し、各ウェルに100μLずつ添加して37℃で2時間インキュベートする。
10)プレートを7回洗浄する。
11)Extra−Avidin(Sigma−Aldrich)を1%BSAで2000倍に希釈し、100μLずつウェルに添加して37℃で1時間インキュベートする。
12)プレートを5回洗浄する。
13)発色基質液を用いて15分間発色する。1規定の硫酸で発色を停止する。
14)SpectraMax 340PC(Molecular Devices)を用いて吸光度を測定する(490nm)。
結果を図2に示す。
【0024】
(c)IgA−IgG免疫複合体(ELISA法)
1)抗ヒトIgG抗体<F(ab’)2 fragments of goat anti−human IgG(Fcγ−specific)(Jackson ImmunoResearch Labs)>をPBSを用いて2μg/mlに調整し、ELISAプレートの各ウェルに100μLずつ添加して4℃で一晩インキュベートし、プレートをコーティングする。
2)プレートを3回洗浄する。
3)1%BSA+PBS−Tを200μLずつ各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートしてプレートをブロッキングする。
4)プレートを5回洗浄する。
5)PBS−Tで至適濃度に希釈したヒト血清を各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートする。
6)プレートを5回洗浄する。
7)HRP酵素標識抗ヒトIgA抗体をPBS−Tを用いて10000倍に希釈し、100μLずつ各ウェルに添加する。37℃で2時間インキュベートし、酵素標識を行う。
8)プレートを5回洗浄する。
9)発色基質液を用いて5分間発色する。1規定の硫酸で反応を止める。
10)SpectraMax 340PC (Molecular Devices)を用いて吸光度を測定する(490nm)。
結果を図3に示す。
【0025】
(d)糖鎖不全IgA1特異的IgA(ELISA法)
1)糖鎖異常IgA1のFab領域・ヒンジ部をPBSで1.0μg/mlに調整し、4℃で一晩インキュベートしプレートをコーティングする。
2)プレートを3回洗浄する。
3)2%BSA+PBS−Tを200μLずつ各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートしてプレートをブロッキングする。
4)プレートを5回洗浄する。
5)PBS−Tで至適濃度に希釈したヒト血清を各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートする。
6)プレートを5回洗浄する。
7)Fc領域特異的マウス抗ヒトIgA抗体<mouse monoclonal antibody to human IgA(Fc specific)(Applied Biological Materials Inc.)>をPBS−Tで0.5μg/mlに調整し、各ウェルに100μLずつ添加し37℃で2時間インキュベートする。
8)プレートを5回洗浄する。
9)ペルオキシダーゼで酵素標識された抗マウスIgG抗体<Peroxidase−conjugated AffiniPure Goat Anti−Mouse IgG(H+L)(Jackson Immuno Research)>をPBS−Tで20000倍に希釈し、各ウェルに100μLずつ添加し、37℃2時間でインキュベートする。
10)プレートを5回洗浄する。
11)発色基質液を用いて15分間発色する。1規定の硫酸で反応を停止する。
12)SpectraMax 340PC(Molecular Devices)を用いて吸光度を測定する(490nm)。
結果を図4に示す。
【0026】
(e)血中クレアチニン(酵素法)
病院内での通常診療における検査値を解析に用いた。
(f)尿タンパク(色素比色法(PR法)法)
病院内での通常診療における検査値を解析に用いた。
(g)尿クレアチニン(酵素法)
病院内での通常診療における検査値を解析に用いた。
(h)血尿(顕微鏡による尿枕査検査)
病院内での通常診療における検査値を解析に用いた。
(i)年齢
年齢は、そのまま解析に用いた。
(j)性別
性別は、男性を1、女性を2として解析に用いた。
【0027】
用いたロジスティック回帰モデルは、実際には、透析解析ソフトに変数を入力し、自動的に算出されるものであるが、ロジスティックモデルの計算式を以下に示す。
【0028】
Logistic Modelの式
linear[Disease controls]
=14.2350544801213+7.14919944200643*[log10[IgA]]−8.16397534243733*[log10[IC]]−11.500619743005*[log10[Gd−IgA1]]−1.61624064247939*[log10[IgA_Ab]]+0.0963574200319827 *年齢+Match(性,F,−0.168203090685077,M,0.168203090685077,.)+0.970074322201317*[UPg/g・Cr]+Match([血尿(グレード)],
1, 0,
2, −2.0608093453328,
3, −4.65833943037708,
4, −3.57252039573291,
5, −4.25579711208701,
6, −23.3605604156569,
7, −3.28855535257912,
8, −4.77171339597052,
.)
+0.88016525651911*[log10[S−Cre]]
注1:Match(var,A,a,B,b,C,c…z)は、変数varの値がAならa,Bならb,…,どれでもないのならzをとる関数
注2:数字は出力リストの中でパラメータ推定値の表の中の推定値の欄の数字。資料とするなら桁数は小数点以下3桁程度にする。
Prob[Disease controls]=1/(1+Exp(−[linear[Disease controls]]))
Prob[IgAN]=1/(1+Exp([linear[Disease controls]]))
【0029】
得られた結果を図5に示す。その結果、図5より、選択性81%、感度91%の高率でIgA腎症が判定できた。
図1
図2
図3
図4
図5