【実施例】
【0021】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0022】
実施例
(1)血漿中糖鎖不全IgA1の測定値を健常者群とIgA腎症(腎生検による)群とを対比した結果は、Kidney Int,2007,71:1148−1154に報告されており、その選択性は90.0%であるが、感度は76.5%と報告されている。
一方、本発明者の以前の検討によれば、血漿中糖鎖不全IgA1特異的IgGを用いて診断を行った結果、IgA腎症と健常者で感度95%、特異度88%であった(J Clin Invest,2009,119:1668−1677)。
(2)今回、IgA腎症患者135名及び健常者74名の以下のマーカーを用いてロジスティック回帰モデル解析を行った。
(a)IgA(ELISA法)
以下ELISAプレートはNunc社のMaxiSorpプレートを使用することとする。
1)抗ヒトIgA抗体<F(ab’)
2 fragments of goat anti−human IgA (α chain−specific)(Jackson ImmunoResearch Labs)>をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を用いて1μg/mlに調整し、ELISAプレートの各ウェルに100μLずつ添加して4℃で一晩インキュベートし、プレートをコーティングする。
2)PBSに0.05%のTween20を添加して作成した0.05%PBS−Tween溶液(PBS−T)を用いてプレートを3回洗浄する。(以下特に記載がなければ、プレートの洗浄にはPBS−Tを使用するものとする)
3)PBS−Tに1%のbovine serum albumin(BSA)(Sigma Aldrich社)を添加して作成した1%BSA+PBS−T溶液を200μLずつ各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートしてプレートをブロッキングする。
4)プレートを5回洗浄する。
5)PBS−Tで至適濃度に希釈したヒト血清を各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートする。
6)プレートを5回洗浄する。
7)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識した酵素標識抗ヒトIgA抗体<HRP conjugated F(ab’)
2 fragment of goat IgG anti−human IgA(BioSource社)>をPBS−Tを用いて10000倍に希釈し、100μLずつ各ウェルに添加する。37℃で2時間インキュベートし、酵素標識を行う。
8)プレートを5回洗浄する。
9)発色基質液<0.05Mのクエン酸リン酸緩衝液(pH5.0)にo−フェニレンジアミン(OPD)(Sigma Aldrich)を加えて作成した、0.4mg/ml OPD溶液>を100μLずつ各ウェルに添加して5分間室温で待ち発色する。1規定の硫酸で反応を止める。
10)SpectraMax 340PC(Molecular Devices)を用いて吸光度を測定する(490nm)。
結果を
図1に示す。
【0023】
(b)糖鎖不全IgA1(ELISA法)
1)抗ヒトIgA抗体をPBSを用いて2.5μg/mlに調整し、ELISAプレートの各ウェルに100μLずつ添加して4℃で一晩インキュベートし、プレートをコーティングする。
2)プレートを3回洗浄する。
3)1%BSA+PBS−T溶液を200μLずつ各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートし、プレートをブロッキングする。
4)1%BSA+PBS−Tで1回洗浄する。
5)1%BSA+PBS−Tを用いて至適濃度に希釈したヒト血清を各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートする。
6)プレートを5回洗浄する。
7)Neuraminidase(Roche Diagnostic Corp.,Indianapolis,IN)を0.1M酢酸緩衝液(pH5)を用いて10mU/mlに調整し、各ウェルに100μLずつ加え、37℃で3時間インキュベートする。
8)プレートを7回洗浄する。
9)ビオチンで標識されたHelix aspersa aggulutininレクチン(HAAレクチン)(Sigma−Aldrich)を1%BSAで500倍に希釈し、各ウェルに100μLずつ添加して37℃で2時間インキュベートする。
10)プレートを7回洗浄する。
11)Extra−Avidin(Sigma−Aldrich)を1%BSAで2000倍に希釈し、100μLずつウェルに添加して37℃で1時間インキュベートする。
12)プレートを5回洗浄する。
13)発色基質液を用いて15分間発色する。1規定の硫酸で発色を停止する。
14)SpectraMax 340PC(Molecular Devices)を用いて吸光度を測定する(490nm)。
結果を
図2に示す。
【0024】
(c)IgA−IgG免疫複合体(ELISA法)
1)抗ヒトIgG抗体<F(ab’)
2 fragments of goat anti−human IgG(Fcγ−specific)(Jackson ImmunoResearch Labs)>をPBSを用いて2μg/mlに調整し、ELISAプレートの各ウェルに100μLずつ添加して4℃で一晩インキュベートし、プレートをコーティングする。
2)プレートを3回洗浄する。
3)1%BSA+PBS−Tを200μLずつ各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートしてプレートをブロッキングする。
4)プレートを5回洗浄する。
5)PBS−Tで至適濃度に希釈したヒト血清を各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートする。
6)プレートを5回洗浄する。
7)HRP酵素標識抗ヒトIgA抗体をPBS−Tを用いて10000倍に希釈し、100μLずつ各ウェルに添加する。37℃で2時間インキュベートし、酵素標識を行う。
8)プレートを5回洗浄する。
9)発色基質液を用いて5分間発色する。1規定の硫酸で反応を止める。
10)SpectraMax 340PC (Molecular Devices)を用いて吸光度を測定する(490nm)。
結果を
図3に示す。
【0025】
(d)糖鎖不全IgA1特異的IgA(ELISA法)
1)糖鎖異常IgA1のFab領域・ヒンジ部をPBSで1.0μg/mlに調整し、4℃で一晩インキュベートしプレートをコーティングする。
2)プレートを3回洗浄する。
3)2%BSA+PBS−Tを200μLずつ各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートしてプレートをブロッキングする。
4)プレートを5回洗浄する。
5)PBS−Tで至適濃度に希釈したヒト血清を各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートする。
6)プレートを5回洗浄する。
7)Fc領域特異的マウス抗ヒトIgA抗体<mouse monoclonal antibody to human IgA(Fc specific)(Applied Biological Materials Inc.)>をPBS−Tで0.5μg/mlに調整し、各ウェルに100μLずつ添加し37℃で2時間インキュベートする。
8)プレートを5回洗浄する。
9)ペルオキシダーゼで酵素標識された抗マウスIgG抗体<Peroxidase−conjugated AffiniPure Goat Anti−Mouse IgG(H+L)(Jackson Immuno Research)>をPBS−Tで20000倍に希釈し、各ウェルに100μLずつ添加し、37℃2時間でインキュベートする。
10)プレートを5回洗浄する。
11)発色基質液を用いて15分間発色する。1規定の硫酸で反応を停止する。
12)SpectraMax 340PC(Molecular Devices)を用いて吸光度を測定する(490nm)。
結果を
図4に示す。
【0026】
(e)血中クレアチニン(酵素法)
病院内での通常診療における検査値を解析に用いた。
(f)尿タンパク(色素比色法(PR法)法)
病院内での通常診療における検査値を解析に用いた。
(g)尿クレアチニン(酵素法)
病院内での通常診療における検査値を解析に用いた。
(h)血尿(顕微鏡による尿枕査検査)
病院内での通常診療における検査値を解析に用いた。
(i)年齢
年齢は、そのまま解析に用いた。
(j)性別
性別は、男性を1、女性を2として解析に用いた。
【0027】
用いたロジスティック回帰モデルは、実際には、透析解析ソフトに変数を入力し、自動的に算出されるものであるが、ロジスティックモデルの計算式を以下に示す。
【0028】
Logistic Modelの式
linear[Disease controls]
=14.2350544801213+7.14919944200643*[log10[IgA]]−8.16397534243733*[log10[IC]]−11.500619743005*[log10[Gd−IgA1]]−1.61624064247939*[log10[IgA_Ab]]+0.0963574200319827 *年齢+Match(性,F,−0.168203090685077,M,0.168203090685077,.)+0.970074322201317*[UPg/g・Cr]+Match([血尿(グレード)],
1, 0,
2, −2.0608093453328,
3, −4.65833943037708,
4, −3.57252039573291,
5, −4.25579711208701,
6, −23.3605604156569,
7, −3.28855535257912,
8, −4.77171339597052,
.)
+0.88016525651911*[log10[S−Cre]]
注1:Match(var,A,a,B,b,C,c…z)は、変数varの値がAならa,Bならb,…,どれでもないのならzをとる関数
注2:数字は出力リストの中でパラメータ推定値の表の中の推定値の欄の数字。資料とするなら桁数は小数点以下3桁程度にする。
Prob[Disease controls]=1/(1+Exp(−[linear[Disease controls]]))
Prob[IgAN]=1/(1+Exp([linear[Disease controls]]))
【0029】
得られた結果を
図5に示す。その結果、
図5より、選択性81%、感度91%の高率でIgA腎症が判定できた。