特許第5988211号(P5988211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988211
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20160825BHJP
【FI】
   H02J50/12
【請求項の数】6
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2012-218323(P2012-218323)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-73016(P2014-73016A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】591261509
【氏名又は名称】株式会社エクォス・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100157118
【弁理士】
【氏名又は名称】南 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100094787
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100097777
【弁理士】
【氏名又は名称】韮澤 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100091971
【弁理士】
【氏名又は名称】米澤 明
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】山川 博幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健一郎
【審査官】 杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−63324(JP,A)
【文献】 特開2010−68657(JP,A)
【文献】 特開2010−73976(JP,A)
【文献】 特開2010−183810(JP,A)
【文献】 特開2010−200571(JP,A)
【文献】 特開2010−252497(JP,A)
【文献】 特開2011−50140(JP,A)
【文献】 特開2011−142748(JP,A)
【文献】 特開2012−178530(JP,A)
【文献】 特開2012−178531(JP,A)
【文献】 特開2012−178959(JP,A)
【文献】 特開2012−178960(JP,A)
【文献】 特開2012−178529(JP,A)
【文献】 特開2013−211932(JP,A)
【文献】 特開2013−211933(JP,A)
【文献】 特開2014−64442(JP,A)
【文献】 特表2009−501510(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0110741(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/037821(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/142417(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 11/18
H01F 38/14
H02J 7/00
H02J 50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタンス成分L1固定容量のキャパシタンス成分C1である直列共振器を構成し、交流電力が入力される送電アンテナと、
スイッチング素子からなり直流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換して前記送電アンテナに出力するインバーター部と、
インダクタンス成分L2固定容量のキャパシタンス成分C2である直列共振器を構成し、前記送電アンテナから電磁場を介して電磁気的エネルギーを受電する受電アンテナと、
前記受電アンテナからの出力を直流電力に整流して出力する整流部と、
前記整流部からの出力を入力するための負荷と、から少なくともなり、
前記インバーター部からの出力が直接前記送電アンテナに入力されると共に、前記受電アンテナからの出力が直接整流部に入力される電力伝送システムであって、
前記送電アンテナと前記受電アンテナとの間の結合係数がkである場合を含む時に、負荷抵抗値RがRmin≦R≦Rmaxを満たす範囲で利用されるとき、
【数2】
及び
【数6】
及び
【数8】
の関係を有することを特徴とする電力伝送システム。
【請求項2】
【数9】
であることを特徴とする請求項1に記載の電力伝送システム。
【請求項3】
インダクタンス成分L1固定容量のキャパシタンス成分C1である直列共振器を構成し、交流電力が入力される送電アンテナと、
スイッチング素子からなり直流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換して前記送電アンテナに出力するインバーター部と、
インダクタンス成分L2固定容量のキャパシタンス成分C2である直列共振器を構成し、前記送電アンテナから電磁場を介して電磁気的エネルギーを受電する受電アンテナと、
前記受電アンテナからの出力を直流電力に整流して出力する整流部と、
前記整流部からの出力を入力するための負荷と、から少なくともなり、
前記インバーター部からの出力が直接前記送電アンテナに入力されると共に、前記受電アンテナからの出力が直接整流部に入力される電力伝送システムであって、
前記送電アンテナと前記受電アンテナとの間の結合係数がkである場合を含む時に、
前記送電アンテナから前記受電アンテナに対して、それぞれ異なる電力値で送電するn個のモードを有し、
第hモード(ただし、h=1、2、…、n)で送電中の負荷抵抗値がRhであり、
抵抗値Rhのうち、最大のものがRhmaxであり、最小のものがRhminであるとき、
【数2】
及び
【数6】
及び
【数12】
の関係を有することを特徴とする電力伝送システム。
【請求項4】
【数11】
であることを特徴とする請求項3に記載の電力伝送システム。
【請求項5】
前記送電アンテナが無指向性であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電力伝送システム。
【請求項6】
前記受電アンテナが指向性であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴方式によってワイヤレスで電力の送受を行う電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源コードなどを用いることなく、ワイヤレスで電力(電気エネルギー)を伝送する技術の開発が盛んとなっている。ワイヤレスで電力を伝送する方式の中でも、特に注目されている技術として、磁気共鳴方式と呼ばれるものがある。この磁気共鳴方式は2007年にマサチューセッツ工科大学の研究グループが提案したものであり、これに関連する技術は、例えば、特許文献1(特表2009−501510号公報)に開示されている。
【0003】
磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムは、送電側アンテナの共振周波数と、受電側アンテナの共振周波数とを同一とし高いQ値(100以上)のアンテナを用いることで、送電側アンテナから受電側アンテナに対し、効率的にエネルギー伝達を行うものであり、電力伝送距離を数十cm〜数mとすることが可能であることが大きな特徴の一つである。
【0004】
上記のような磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムは、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両搭載電池への充電に応用することが検討されている。このようなワイヤレスなシステムを、上記のような車両に用いることで、車両への給電のために、電源コネクタや電源線などを取り扱う必要がなくなるからである。
【0005】
例えば、特許文献2(特開2010−68657号公報)には、一方のアンテナを電気自動車のような移動体の底面部に搭載し、地上に設けた他方のアンテナから、ワイヤレスで電力伝送を行い、伝送された電力を電気自動車の電池に充電することが開示されている。
【0006】
また、上記のような磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムに用いるアンテナの具体的な構成についてもこれまでいくつか提案がされてきた。例えば、特許文献3(特開2010−73976号公報)には、ワイヤレスで給電回路から受電回路へ電力を送信するワイヤレス電力伝送装置の、前記給電回路及び受電回路にそれぞれ設けられる通信コイルの構造において、比誘電率が1よりも大きい材質のプリント基板と、前記プリント基板の第1の層に設けられ、少なくとも1ループをなす導電パターンで形成された一次コイルと、前記プリント基板の第2の層に設けられ、渦巻き形状をなす導電パターンで形成された共鳴コイルと、を備えることを特徴とするワイヤレス電力伝送装置の通信コイル構造が開示されている。
【特許文献1】特表2009−501510号公報
【特許文献2】特開2010−68657号公報
【特許文献3】特開2010−73976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
磁気共鳴方式の電力伝送システムを電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両搭載電池への充電に応用する場合においては、受電側における負荷が電池となるが、電池の充電の場合、定電圧充電モードに移行すると、電池の電圧が一定なので、充電電力によって入力インピーダンスが変化する。
【0008】
電池への充電電力が大きければ入力インピーダンスは低く、充電電力が小さければ入力インピーダンスは高くなる。
【0009】
受電側におけるアンテナは、効率の面から、電池の充電電力に応じた入力インピーダンスに近いインピーダンスに設定することが望ましい。
【0010】
一方、送電側における電源から見た送電側アンテナへの入力インピーダンスは、効率の面から高ければ高いほどよい。これは電源の内部抵抗分により電流の2乗比例でロスが発生するためである。
【0011】
しかしながら、特許文献2に開示された従来の電力伝送システムにおいては、送電側アンテナの回路定数、受電側アンテナの回路定数の設定で上述の事項が考慮されておらず、必ずしも効率の良い電力伝送を行っていなかった、という問題がある。
【0012】
また、磁気共鳴方式の電力伝送システムを電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両に対する電力供給に用いる場合においては、送電用のアンテナは地中部に埋設され、また、受電用のアンテナは車両の底面部にレイアウトされることが想定される。
【0013】
しかしながら、特許文献3記載の構造のアンテナは、金属体からなる車両の底部に設置すると、電力伝送中にアンテナから漏洩した磁界が金属体に進入し、金属体内において当該磁界で誘導される電流によって、車両の底部を加熱させてしまう、という問題があった。
【0014】
また、電力伝送中にアンテナから漏洩し金属体に進入する磁界によって、システムの電力伝送効率が抑制される、という問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記問題を解決するために、本発明に係る電力伝送システムは、インダクタンス成分L1固定容量のキャパシタンス成分C1である直列共振器を構成し、交流電力が入力される送電アンテナと、スイッチング素子からなり直流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換して前記送電アンテナに出力するインバーター部と、インダクタンス成分L2固定容量のキャパシタンス成分C2である直列共振器を構成し、前記送電アンテナから電磁場を介して電磁気的エネルギーを受電する受電アンテナと、前記受電アンテナからの出力を直流電力に整流して出力する整流部と、前記整流部からの出力を入力するための負荷と、から少なくともなり、前記インバーター部からの出力が直接前記送電アンテナに入力されると共に、前記受電アンテナからの出力が直接整流部に入力される電力伝送システムであって、前記送電アンテナと前記受電アンテナとの間の結合係数がkである場合を含む時に、負荷抵抗値RがRmin≦R≦Rmaxを満たす範囲で利用されるとき、
【0016】
【数2】
及び
【0017】
【数6】
及び
【0018】
【数8】
の関係を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る電力伝送システムは、
【0020】
【数9】
であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る電力伝送システムは、インダクタンス成分L1固定容量のキャパシタンス成分C1である直列共振器を構成し、交流電力が入力される送電アンテナと、スイッチング素子からなり直流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換して前記送電アンテナに出力するインバーター部と、インダクタンス成分L2固定容量のキャパシタンス成分C2である直列共振器を構成し、前記送電アンテナから電磁場を介して電磁気的エネルギーを受電する受電アンテナと、前記受電アンテナからの出力を直流電力に整流して出力する整流部と、前記整流部からの出力を入力するための負荷と、から少なくともなり、前記インバーター部からの出力が直接前記送電アンテナに入力されると共に、前記受電アンテナからの出力が直接整流部に入力される電力伝送システムであって、前記送電アンテナと前記受電アンテナとの間の結合係数がkである場合を含む時に、前記送電アンテナから前記受電アンテナに対して、それぞれ異なる電力値で送電するn個のモードを有し、第hモード(ただし、h=1、2、…、n)で送電中の負荷抵抗値がRhであり、
抵抗値Rhのうち、最大のものがRhmaxであり、最小のものがRhminであるとき、
【0022】
【数2】
及び
【0023】
【数6】
及び
【0024】
【数12】
の関係を有することを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る電力伝送システムは、
【0026】
【数11】
であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る電力伝送システムは、前記送電アンテナが無指向性であることを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る電力伝送システムは、前記受電アンテナが指向性であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
また、本発明に係る電力伝送システムにおいては、送電アンテナの回路定数と、受電アンテナの回路定数とが上記の式(2)及び式(6)及び式(7)を満たすようにされているために、受電側システムで電池204の充電を行う場合に、効率的な電力伝送を行うことが可能となる。
【0030】
また、本発明に係る電力伝送システムによれば、車両底面に受電アンテナを装着した場合でも、少なくとも受電アンテナに指向性があるので、電力伝送中に受電アンテナから漏洩し車両底部の金属体に進入する磁界を低減することが可能となり、車両底部を加熱させてしまうことがなく、加えて、システムの電力伝送効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係る電力伝送システムのブロック図である。
図2】電力伝送システムのインバーター部を示す図である。
図3】送電アンテナ105(受電アンテナ201)の分解斜視図である。
図4】受電アンテナ201・受電アンテナ201による電力伝送の様子を示す断面の模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る電力伝送システム100の等価回路を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るアンテナのコイルを造形するために利用される基材300を示す図である。
図7】基材300に形成されるメインコイルの概要を模式的に示す図である。
図8】基材300に形成されるサブコイルの概要を模式的に示す図である。
図9】基材300に導体線400を巻回する際のパターンの1例を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係るアンテナを示す図である。
図11】メインコイル造形用突片320を設ける意義を説明する図である。
図12】本発明の他の実施形態に係るアンテナを示す図である。
図13】本発明の他の実施形態に係るアンテナを示す図である。
図14】本発明の他の実施形態に係るアンテナを示す図である。
図15】本発明の他の実施形態に係るアンテナの等価回路を示す図である。
図16】本発明の他の実施形態に係るアンテナのコイルを造形するために利用される基材300を示す図である。
図17】本発明の他の実施形態に係るアンテナにおける第2基材500の取り付けを説明する図である。
図18】基材300に導体線400を巻回する際のパターンの1例を示す図である。
図19】本発明の他の実施形態に係るアンテナに用いるスパイダーコイルを説明する図である。
図20】本発明の他の実施形態に係るアンテナに用いるソレノイドコイルを説明する図である。
図21】本発明の他の実施形態に係る電力伝送システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る電力伝送システムのブロック図である。なお、本発明に係るアンテナは、電力伝送システムを構成する受電側のアンテナと送電側のアンテナのいずれにも適用可能であるが、以下の実施形態においては受電側のアンテナに本発明のアンテナを適用した例につき説明する。
【0033】
本発明のアンテナが用いられる電力伝送システムとしては、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両への充電のためのシステムが想定されている。電力伝送システムは、上記のような車両に対して電力を非接触で伝送するため、当該車両を停車させることが可能な停車スペースに設けられる。車両充電用のスペースである当該停車スペースには、送電アンテナ105などが地中部に埋設されるような構成となっている。車両のユーザーはこの電力伝送システムが設けられている停車スペースに車両を停車させて、車両に搭載されている受電アンテナ201と、前記送電アンテナ105とを対向させることによって電力伝送システムからの電力を受電する。車両を停車スペースに停車させる際には、車両搭載の受電アンテナ201が、送電アンテナ105に対して最も伝送効率が良い位置関係となるようにする。
【0034】
電力伝送システムでは、電力伝送システム100側の送電アンテナ105から、受電側システム200側の受電アンテナ201へ効率的に電力を伝送する際、送電アンテナ105の共振周波数と、受電アンテナ201の共振周波数とを同一とすることで、送電側アンテナから受電側アンテナに対し、効率的にエネルギー伝達を行うようにする。
【0035】
電力伝送システム100におけるAC/DC変換部101は、入力される商用電源を一定の直流に変換するコンバータである。このAC/DC変換部101からの出力は高電圧発生部102において、所定の電圧に昇圧されたりする。この電圧調整部102で生成される電圧の設定は主制御部110から制御可能となっている。
【0036】
インバーター部103は、高電圧発生部102から供給される高電圧から所定の交流電圧を生成して、整合器104に入力する。図2は電力伝送システムのインバーター部を示す図である。インバーター部103は、例えば図2に示すように、フルブリッジ方式で接続されたQA乃至QDからなる4つの電界効果トランジスタ(FET)によって構成されている。
【0037】
本実施形態においては、直列接続されたスイッチング素子QAとスイッチング素子QBの間の接続部T1と、直列接続されたスイッチング素子QCとスイッチング素子QDとの間の接続部T2との間に整合器104が接続される構成となっており、スイッチング素子QA
とスイッチング素子QDがオンのとき、スイッチング素子QBとスイッチング素子QCがオ
フとされ、スイッチング素子QBとスイッチング素子QCがオンのとき、スイッチング素子QAとスイッチング素子QDがオフとされることで、接続部T1と接続部T2との間に矩形波の交流電圧を発生させる。なお、本実施形態においては、各スイッチング素子のスイッチングによって生成される矩形波の周波数の範囲は20kHz〜数1000kHz程度で
ある。
【0038】
上記のようなインバーター部103を構成するスイッチング素子QA乃至QDに対する駆動信号は主制御部110から入力されるようになっている。また、インバーター部103を駆動させるための周波数は主制御部110から制御することができるようになっている。
【0039】
整合器104は、所定の回路定数を有する受動素子から構成され、インバーター部103からの出力が入力される。そして、整合器104からの出力は送電アンテナ105に供給される。整合器104を構成する受動素子の回路定数は、主制御部110からの指令に基づいて調整することができるようになっている。主制御部110は、送電アンテナ105と受電アンテナ201とが共振するように整合器104に対する指令を行う。なお、整合器104は必須の構成ではない。
【0040】
送電アンテナ105は、誘導性リアクタンス成分を有するコイルから構成されており、対向するようにして配置される車両搭載の受電アンテナ201と共鳴することで、送電アンテナ105から出力される電気エネルギーを受電アンテナ201に送ることができるようになっている。
【0041】
電力伝送システム100の主制御部110はCPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理部である。この主制御部110は、図示されている主制御部110と接続される各構成と協働するように動作する。
【0042】
また、通信部120は車両側の通信部220と無線通信を行い、車両との間でデータの送受を可能にする構成である。通信部120によって受信したデータは主制御部110に転送され、また、主制御部110は所定情報を通信部120を介して車両側に送信することができるようになっている。
【0043】
次に、車両側に設けられている構成について説明する。車両の受電側のシステムにおいて、受電アンテナ201は、送電アンテナ105と共鳴することによって、送電アンテナ105から出力される電気エネルギーを受電するものである。このような受電アンテナ201は、車両の底面部に取り付けられるようになっている。
【0044】
受電アンテナ201で受電された交流電力は、整流部202において整流され、整流された電力は充電制御部203を通して電池204に蓄電されるようになっている。充電制御部203は主制御部210からの指令に基づいて電池204の蓄電を制御する。より具体的には、整流部202からの出力は充電制御部203において、所定の電圧値に昇圧又は降圧されて、電池204に蓄電されるようになっている。また、充電制御部203は電池204の残量管理なども行い得るように構成される。
【0045】
主制御部210はCPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理部である。この主制御部210は、図示されている主制御部210と接続される各構成と協働するように動作する。
【0046】
インターフェイス部230は、車両の運転席部に設けられ、ユーザー(運転者)に対し所定の情報などを提供したり、或いは、ユーザーからの操作・入力を受け付けたりするものであり、表示装置、ボタン類、タッチパネル、スピーカーなどで構成されるものである。ユーザーによる所定の操作が実行されると、インターフェイス部230から操作データとして主制御部210に送られ処理される。また、ユーザーに所定の情報を提供する際に
は、主制御部210からインターフェイス部230に対して、所定情報を表示するための表示指示データが送信される。
【0047】
また、車両側の通信部220は送電側の通信部120と無線通信を行い、送電側のシステムとの間でデータの送受を可能にする構成である。通信部220によって受信したデータは主制御部210に転送され、また、主制御部210は所定情報を通信部220を介して送電システム側に送信することができるようになっている。
【0048】
電力伝送システムで、電力を受電しようとするユーザーは、上記のような送電側のシステムが設けられている停車スペースに車両を停車させ、インターフェイス部230から充電を実行する旨の入力を行う。これを受けた主制御部210は、充電制御部203からの電池204の残量を取得し、電池204の充電に必要な電力量を算出する。算出された電力量と送電を依頼する旨の情報は、車両側の通信部220から送電側のシステムの通信部120に送信される。これを受信した送電側システムの主制御部110は高電圧発生部102、インバーター部103、整合器104を制御することで、車両側に電力を伝送するようになっている。
【0049】
次に、以上のように構成される電力伝送システム100で用いるアンテナの具体的な構成について説明する。以下、受電アンテナ201に本発明の構成を採用した例について説明するが、本発明のアンテナは送電アンテナ105に対しても適用し得るものである。
【0050】
図3は本発明の実施形態に係る送電アンテナ105(受電アンテナ201)の分解斜視図であり、図4は本発明の実施形態に係る送電アンテナ105・受電アンテナ201による電力伝送の様子を示す断面の模式図であり、図4における矢印は磁力線を模式的に示している。
【0051】
なお、以下の実施形態では、送電アンテナ105・受電アンテナ201におけるコイル体270が矩形平板状のものであることを例に説明するが、本発明のアンテナはこのような形状のコイルに限定されるものではない。例えば、コイル体270として円形平板状のものなども利用し得る。このようなコイル体270は、送電アンテナ105・受電アンテナ201における磁気共鳴アンテナ部として機能する。この「磁気共鳴アンテナ部」は、コイル体270のインダクタンス成分のみならず、その浮游容量に基づくキャパシタンス成分、或いは意図的に追加したコンデンサに基づくキャパシタンス成分をも含むものである。
【0052】
なお、本発明に係る電力伝送システム100においては、送電アンテナ105の回路定数(インダクタンス成分、キャパシタンス成分)と、受電アンテナ201の回路定数とは、あえて異なるように構成することで、伝送効率を向上させるようにしている。送電アンテナ105の回路定数及び受電アンテナ201の回路定数を異なるように構成する場合、例えば、コイル体270などの概略の形状は同一で、寸法が異なるものを用いることでこれを実現することができる。
【0053】
ケース体260は、受電アンテナ201の誘導性リアクタンス成分を有するコイル体270を収容するために用いられるものである。このケース体260は、例えばポリカーボネートなどの樹脂により構成される開口を有する箱体の形状をなしている。ケース体260の矩形状の底板部261の各辺からは側板部262が、前記底板部261に対して垂直方向に延在するようにして設けられている。そして、ケース体260の上方においては、側板部262に囲まれるような上方開口部263が構成されている。ケース体260にパッケージされた受電アンテナ201はこの上方開口部263側で車両本体部に取り付けられる。ケース体260を車両本体部に取り付けるためには、従来周知の任意の方法を用い
ることができる。なお、上方開口部263の周囲には、車両本体部への取り付け性を向上するために、フランジ部材などを設けるようにしても良い。
【0054】
コイル体270は、ガラスエポキシ製の矩形平板状の基材271と、この基材271上に形成される渦巻き状の導電部272とから構成されている。渦巻き状をなす導電部272の内周側の第1端部273、及び外周側の第2端部274には不図示の導電線路が電気接続される。これにより、受電アンテナ201によって受電した電力を整流部202へと導けるようになっている。このようなコイル体270はケース体260の矩形状の底板部216上に載置され、適当な固着手段によって底板部216上に固着される。
【0055】
コイル体270上には、コイル体270と第1距離d1離間されてフェライト基材28
0が配されている。フェライト基材280としては、比抵抗が大きく、透磁率が大きく、磁気ヒステリシスが小さいものが望ましい。フェライト基材280は、ケース体260に対して適当な手段により固着されることで、コイル体270の上方に第1距離d1の空間
を空けて配されるようになっている。このようなレイアウトにより、送電アンテナ105側で発生する磁力線は、フェライト基材280を透過する率が高くなり、送電アンテナ105から受電アンテナ201への電力伝送において、車両本体部を構成する金属物による磁力線への影響が軽微となる。
【0056】
また、ケース体260の上方開口部263においては、前記上方開口部263を覆うような矩形平板状のアルミニウム基材290が、フェライト基材280の上方に第2距離d2をおいて配されるようになっている。このようなアルミニウム基材290に用いる金属
材料としてはアルミニウム以外の金属を用いることも可能である。
【0057】
本実施形態においては、アルミニウム基材290が前記上方開口部263を覆うように配されることで、コイル体270に対する車両本体金属部の影響を抑制することが可能となり、受信アンテナ201のアンテナとしての特性を確定することが可能となる。本実施形態によれば、アンテナの特性が確定しているために、受信アンテナ201を取り付ける車種に関わりなく、同様の電力伝送特性を期待することが可能となり、アンテナとしての汎用性が広がることとなる。
【0058】
また、本実施形態においては、受電アンテナ201は上方開口部263にある車体取り付け部265を利用して車両本体部に取り付けられる。このような車体取り付け部265の構造は従来周知のものを適宜用いることができる。なお、上方開口部263の周囲には、車両本体部への取り付け性を向上するために、フランジ部材などを設けるようにしても良い。
【0059】
以上のように本発明のアンテナは、主面を有する絶縁性の基材271上に所定の導電部272が形成されてなるコイル体270と、コイル体270上にコイル体270と第1距離d1離間されて配されるフェライト基材280と、フェライト基材280上にフェライ
ト基材280と第2距離d2離間されて配されるアルミニウム基材290と、アルミニウ
ム基材290上に配される車体取り付け部265と、を有している。
【0060】
次ぎに、以上のように構成される送電アンテナ105・受電アンテナ201それぞれの回路定数(インダクタンス成分、キャパシタンス成分)について説明する。図5は本発明の実施形態に係る電力伝送システム100の等価回路を示す図である。
【0061】
図5に示す等価回路において、送電アンテナ105のインダクタンス成分がL1、キャ
パシタンス成分がC1、抵抗成分がRt1であり、受電アンテナ201のインダクタンス成
分がL2、キャパシタンス成分がC2、抵抗成分がRt2であり、送電アンテナ105と受電
アンテナ201との間の相互インダクタンスがMであることを示している。また、RL
電池204の内部抵抗を示している。また、送電アンテナ105と受電アンテナ201との間の結合係数はkによって示される。
【0062】
また、本実施形態においては、送電アンテナ105は、インダクタンス成分L1、キャ
パシタンス成分C1である直列共振器を、また、受電アンテナ201は、インダクタンス
成分L2、キャパシタンス成分C2である直列共振器を構成するものと考える。
【0063】
まず、磁気共鳴方式の電力伝送では、電力伝送システム100側の送電アンテナ105から、受電側システム200側の受電アンテナ201へ効率的に電力を伝送する際、送電アンテナ105の共振周波数と、受電アンテナ201の共振周波数とを同一とすることで、送電側アンテナから受電側アンテナに対し、効率的にエネルギー伝達を行うようにしている。このための条件は、下式(1)によって表すことができる。
【0064】
【数1】
これを、インダクタンス成分がL1、キャパシタンス成分がC1、インダクタンス成分がL2、キャパシタンス成分がC2のみの関係で示すと、下式(2)に要約することができる。
【0065】
【数2】
また、送電アンテナ105のインピーダンスは下式(3)により、また、受電アンテナ201のインピーダンスは下式(4)により、表すことができる。なお、本明細書においては、下式(3)及び下式(4)によって定義される値をそれぞれのアンテナのインピーダンスとして定義する。
【0066】
【数3】
【0067】
【数4】
磁気共鳴方式の電力伝送システム100の受電側システムにおいて、電池204が定電圧充電モードに移行すると、電池204の電圧が一定なので、充電電力によって入力インピーダンスが変化する。電池204への充電電力が大きければ入力インピーダンスは低く、充電電力が小さければ入力インピーダンスは高くなる。受電側における受電アンテナ201は、効率の面から、電池204の充電電力に応じた入力インピーダンスに近いインピーダンスに設定することが望ましい。
【0068】
一方、送電側における電源から見た送電アンテナ105への入力インピーダンスは、効率の面から高ければ高いほどよい。これは電源の内部抵抗分により電流の2乗比例でロスが発生するためである。
【0069】
以上のことから、(3)式で示される送電アンテナ105のインピーダンスと、(4)式で示される受電アンテナ201のインピーダンスとの間には、下式(5)の関係が満たされることが望ましい。
【0070】
【数5】
これを、インダクタンス成分がL1、キャパシタンス成分がC1、インダクタンス成分がL2、キャパシタンス成分がC2のみの関係で示すと、下式(6)に要約することができる。
【0071】
【数6】
以上のように、本発明に係る電力伝送システム100においては、送電アンテナ105の回路定数と、受電アンテナ201の回路定数とが上記の式(2)及び式(6)を満たすようにされているために、受電側システムで電池204の充電を行う場合に、効率的な電力伝送を行うことが可能となる。
【0072】
送電アンテナ105の回路定数と、受電アンテナ201の回路定数におけるインダクタンス成分の観点から、上記の式(2)及び式(6)のような各関係を成立させるためには、基材271上に形成される渦巻き状の導電部272の寸法、レイアウト、及び、磁性体など補助部材の調整を行うことを挙げることができる。
【0073】
より具体的には、図3に示す導電部272のパターンで説明すると、送電アンテナ105の導電部272の長辺、短辺のいずれか、あるいは両方を受電アンテナ201のそれらよりも大きくして導電部272の全長を長くする、或いは、送電アンテナ105の導電部272の巻き数を受電アンテナ201のそれよりも多くする、送電アンテナ105の適所にフェライト等の磁性体を追加する、等が考えられる。
【0074】
次ぎに、本発明の他の実施形態について説明する。先の実施形態においては、送電アンテナ105及び受電アンテナ201が共に、無指向性のアンテナを用いていた。
【0075】
受電アンテナ201が車両の底面部にレイアウトされる場合、電力伝送中にアンテナから漏洩した磁界が金属体に進入し、金属体内において当該磁界で誘導される電流によって、車両の底部を加熱させてしまう、という問題がある。そこで、本実施形態においては、特に、受電アンテナ201に、指向性を有するアンテナを用いるようにしている。なお、送電アンテナ105及び受電アンテナ201が双方に、指向性のアンテナを用いるようにしてももちろん良い。
【0076】
以上のような電力伝送システム100によれば、車両底面に受電アンテナ201を装着した場合でも、少なくとも受電アンテナ201に指向性があるので、電力伝送中に受電アンテナ201から漏洩し車両底部の金属体に進入する磁界を低減することが可能となり、
車両底部を加熱させてしまうことがなく、加えて、システムの電力伝送効率を向上させることができるのである。
【0077】
次に、他の実施形態に係る電力伝送システム100で用いる指向性アンテナの具体的な構成について説明する。以下、このアンテナは、送電アンテナ105及び受電アンテナ201の双方に適用し得るものである。
【0078】
なお、以下の実施形態では、アンテナを構成するコイルに係る構成について詳しく説明するが、磁気共鳴方式で電力伝送を行うアンテナは、コイルのインダクタンス成分のみならず、その浮游容量に基づくキャパシタンス成分、或いは意図的に追加したコンデンサに基づくキャパシタンス成分をも含むものである。
【0079】
また、本実施形態に係るアンテナは、メインコイルMCと、複数のサブコイルSCからなるアンテナであり、メインコイルMCによる磁界を、複数のサブコイルSCによる磁界で補正することで、アンテナとしての指向性を持たせるようになっている。
【0080】
まず、アンテナを構成するコイルを造形するために利用される基材300の構成について説明する。図6は本発明の実施形態に係るアンテナのコイルを造形するために利用される基材300を示す図である。なお、本実施形態においては、この基材300としては略円形であるものを例にとり説明するが、これに限定されるものではない。
【0081】
基材300は、第1面301と、これと表裏の関係にある第2面302とを有する基板状の部材であり、例えばポリカーボネートやポリプロピレンなどの誘電正接が小さい材料を用いて構成することが好ましい。
【0082】
この基材300は、略円形の平板部をなす基部310と、この基部310から放射状に延出する複数の突片とから構成されている。
【0083】
これらの突片としては、メインコイル造形用突片320とサブコイル造形用突片330の2種類があり、基部310の周囲に、メインコイル造形用突片320とサブコイル造形用突片330とが交互に配列されるようになっている。なお、本実施形態においては、1個のメインコイル造形用突片320と、1個のサブコイル造形用突片330とが交互に、基部310周囲に配列される構成を例に説明しているが、このような例に限らず、例えば、後述する図18のように、連続した任意の個数のメインコイル造形用突片320と、1個のサブコイル造形用突片330とが交互に、基部310周囲に配列される構成や、これとは逆に、1個のメインコイル造形用突片320と、連続した任意の個数のサブコイル造形用突片330とが交互に、基部310周囲に配列される構成や、更には、連続した任意の個数のメインコイル造形用突片320と、連続した任意の個数のサブコイル造形用突片330とが交互に、基部310周囲に配列される構成についても本発明の範疇に含まれるものである。
【0084】
メインコイル造形用突片320は、基部310から放射状に延出する方向と略平行な2つの側部322と、基材300の外縁に相当する縁部325とを有している。また、サブコイル造形用突片330も、基部310から放射状に延出する方向と略平行な2つの側部332と、基材300の外縁に相当する縁部335とを有している。
【0085】
メインコイル造形用突片320は、第1面301又は第2面302のいずれか一方側に導体線400が通され、導体線400を係止するために利用される。これにより、導体線400でメインコイルMCの形状が維持される。サブコイル造形用突片330は、導体線400を巻回するために利用され、これにより導体線400でサブコイルSCの形状が維
持される。また、サブコイル造形用突片330で巻回された導体線400の一部や、サブコイル造形用突片330で係止される導体線400は、メインコイルMCとしても機能する。
【0086】
以上のような、基材300を利用して、導体線400で形成されるメインコイルMCと、サブコイルSCの概要について説明する。図7は基材300に形成されるメインコイルMCの概要を模式的に示す図であり、図8は基材300に形成されるサブコイルSCの概要を模式的に示す図である。
【0087】
図7及び図8において、平面Pは、基材300の第1面301を含む面であり、第1軸
は平面Pの法線である。また、第2軸は平面P内に含まれる軸である。
【0088】
メインコイルMCは、第1軸を中心として、これを周回する導体で形成されるものとして定義することができる。
【0089】
図7の例では、メインコイルMCは、第1軸を中心として平面P内で渦巻き状をなす導
体により構成されているが、メインコイルMCは、第1軸を中心として、これを周回する導体により形成されればどのようなものであってもよい。例えば、メインコイルMCは、第1軸を中心として巻回されるソレノイド状のコイルであっても構わない。また、メインコイルMCの導電部としては、導体線ではなく、基材300に印刷した導体を用いることなども可能である。
【0090】
上記のように構成されるメインコイルMCは、ある瞬間tに流れる電流Iによって、図
7に示すような向きの磁界Hmが形成される。
【0091】
一方、サブコイルSCは、第2軸を中心として、これを周回する導体で形成されるものとして定義することができる。
【0092】
図8では、サブコイルSCは、第2軸を中心としたソレノイド状のコイルにより形成される例を示しているが、サブコイルSCは、第2軸を中心として、これを周回する導体により形成されればどのようなものであってもよい。
【0093】
本実施形態に係るアンテナにおいては、上記のようなサブコイルSCとして、8個設けられるようになっているが、設けるサブコイルSC数に特に制限があるわけではない。
【0094】
図面の最も右にあるサブコイルSCについては、ある瞬間tに流れる電流Iによって形
成される磁界Hsが図示してある。他のサブコイルSCについても、このサブコイルSCと同じように、第1軸から離れる方向に向いた磁界Hsが形成される。なお、いずれのサブコイルSCの磁界Hsのスカラー量は共通である。
【0095】
本実施形態に係るアンテナにおいては、ある瞬間tに流れる電流Iによって形成される
磁界は、1つのメインコイルMCにより形成される磁界Hmと、8つのサブコイルSCにより形成される磁界Hsの合成により形成された合成磁界が発生する。
【0096】
このような合成磁界においては、平面Pの上面側では磁界Hmと磁界Hsとが相殺し、平面Pの上面側では磁界Hmと磁界Hsとが強め合うこととなるので、アンテナ全体により発生する磁界は、平面Pの下面側に広がる磁界となり、指向性が付与されたものとなる。
【0097】
このような本実施形態に係るアンテナを、送電アンテナ105と受電アンテナ201に
適用すると、車両に搭載される側において、電力伝送中にアンテナから漏洩し車両底部の金属体に進入する磁界を低減することが可能となり、車両底部を加熱させてしまうことがなく、加えて、システムの電力伝送効率を向上させることができる。
【0098】
次に、以上のように定義されるメインコイルMC、サブコイルSCを、基材300で造形する際の導体線400の巻回パターンの1例について図9を参照して説明する。
【0099】
本実施形態においては、サブコイル造形用突片330に、透磁率と比抵抗が高いフェライト材料などの強磁性体材料からなる磁性コア350を取り付けた上で、図9に示すパターンで導体線400を巻回していく。導体線400としては、複数の導体素線を集合させた撚り線を用いている。
【0100】
図9において、導体線400に示された矢印は、巻回する際の順序を示している。例えば、図中(a)から、導体線400を巻回し始めたとすると、まず、(a)から(b)にかけては、メインコイル造形用突片320の第1面301側において、導体線400を係止させる。
【0101】
続いて、(b)から(c)の区間においては、導体線400は、サブコイル造形用突片330の第2面→サブコイル造形用突片330の第1面→サブコイル造形用突片330の第2面のように、サブコイル造形用突片330の周囲に略1周半分にわたって巻回される。
【0102】
サブコイル造形用突片330で上記のように巻回されるコイルは、全体としてサブコイルSCとしての磁界を形成すると共に、サブコイル造形用突片330の第2面側に巻回されている導体線400分は、メインコイルMCとしての磁界も形成することとなる。
【0103】
以上のような巻回パターンにより、(c)→(d)→(e)→・・・と順次巻回する。基材300の全ての突片に対して基材300の周囲1周分、上記のよう巻回パターンでの巻回を行い、再び(a)に戻ったときには、突片が基部310から延出する方向に、ずらして、巻回を進めていく。
【0104】
上記のようにして、基材300の周囲に略5周分の巻回を行ったものが、図10である。図10は本発明の実施形態に係るアンテナを示す図である。なお、基材300の周囲に巻回する巻回数はこれに限定されるものではない。
【0105】
以上のような指向性のあるアンテナは、メインコイルMCと、複数のサブコイルSCと、を有するアンテナであり、メインコイルMCによる磁界を、複数のサブコイルSCによる磁界で補正する。このような本実施形態に係るアンテナによれば、車両底面にアンテナを装着した場合でも、アンテナ全体により発生する磁界には指向性があるので、電力伝送中にアンテナから漏洩し車両底部の金属体に進入する磁界を低減することが可能となり、車両底部を加熱させてしまうことがなく、加えて、システムの電力伝送効率を向上させることができる。
【0106】
ここで、本実施形態に係るアンテナにおいて、メインコイルMCの寄与によって形成されるインダクタンスLmと、複数のサブコイルSC(図の例では8個のサブコイルSC)の全ての寄与によって形成されるインダクタンスLsとの間には、Ls≦Lm≦2.5Lsの関係を持たせることが好ましい。
【0107】
これは、本実施形態に係るアンテナを車両の底部に搭載し、送電アンテナ105と受電アンテナ201とを、実用範囲で向き合わせたときに、所定以上の電力伝送効率が得られ
るインダクタンスLmとインダクタンスLsとの関係である。
【0108】
上記のような関係を成立させるためには、第1の方法としては、メインコイルMCを構成する周回する導体線400の配置を調整することを挙げることができる。図10に示す巻回パターンで説明すると、基材300の略中心Oと、導体線400との間の距離(図10におけるr)を種々調整することでインダクタンスLmを変更し、前記関係を満たすようにする。
【0109】
また、第2の方法としては、サブコイルSCを構成する周回する導体線400の配置を調整することを挙げることができる。より具体的には、サブコイル造形用突片330の形状・大きさを種々調整することで、サブコイル造形用突片330での導体線400の巻回形状を変えインダクタンスLsを変更し、前記関係を満たすようにする。
【0110】
また、第3の方法としては、メインコイルMCの周回数及びサブコイルSCの周回数を調整することで、前記関係を満たすようにすることを挙げることができる。
【0111】
さらに、第4の方法としては、メインコイルMC又はサブコイルSCのいずれかの周回数を調整することで、前記関係を満たすようにすることを挙げることができる。
【0112】
図9に示す巻回パターンで、サブコイルSCの周回数を調整する方法を説明する。例えば、図9に示す巻回パターンにおいて、(b)から(c)の区間においては、導体線400をサブコイル造形用突片330に巻回する際に、導体線400を略1周半分巻回するようにしていたが、例えば、サブコイルSCのインダクタンスLsを増加させようとする場合、サブコイル造形用突片330に巻回する導体線400を略2周半分とすることで、サブコイルSCのインダクタンスLsを調整することができる。
【0113】
また、第5の方法としては、サブコイルSCを構成する導体の内周側に、磁性コア350を設けたり、或いは、これを省いたりすることでインダクタンスLsを変更し、前記関係を満たすようにすることを挙げることができる。
【0114】
さらに、第6の方法としては、サブコイルSCを構成する導体の内周側には磁性コア350を設けると共に、この磁性コア350の透磁率を調整したり、磁性コア350の大きさ及び形状を調整したりすることでインダクタンスLsを変更し、前記関係を満たすようにすることを挙げることができる。
【0115】
次に、メインコイル造形用突片320を設けるメリットについて説明する。図11はメインコイル造形用突片320を設ける意義を説明する図である。図11(A)はメインコイル造形用突片320が設けられている本実施形態に係るアンテナの巻回パターンを説明する図であり、図11(B)はメインコイル造形用突片320が設けられていない比較例に係るアンテナの巻回パターンを説明する図である。
【0116】
また、図11(C)は基材300における各部の定義を説明する図である。基材300の略中心Oと、メインコイル造形用突片320(又はサブコイル造形用突片330)の縁部335の中間点とを通る線に対する垂線が、メインコイル造形用突片320(又はサブコイル造形用突片330)を横切る長さを、突片の「幅」として定義する。
【0117】
また、基材300の略中心Oと、メインコイル造形用突片320(又はサブコイル造形用突片330)の縁部335の中間点とを通る線が、基部310の端部から縁部335まで通る距離を、突片の「長さ」として定義する。
【0118】
図11(A)と図11(B)とを比較するとわかるように、メインコイル造形用突片320が設けられている本実施形態に係るアンテナにおいては、導体線400は、基材300の略中心Oを中心とした円により近い形状となる。これにより、メインコイル造形用突片320が設けられている場合には、メインコイルMCの寄与により発生するインダクタンスLmをより増大させることが可能となる。
【0119】
また、本実施形態においては、図11(C)に示すように、メインコイル造形用突片320及びサブコイル造形用突片330の幅は、基材300の外周縁に近いほど広くなるように構成することが好ましい。このように構成することで、基材300の主面に対して垂直な方向以外に放射される磁界の成分をより低減することが可能となると共に、導体線400が、基材300の略中心Oの方向へよる力が発生するためアンテナの振動強度を増大させることができる。
【0120】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図12は本発明の他の実施形態に係るアンテナを示す図である。
【0121】
これまで、説明した実施形態においては、磁性コア350は、サブコイル造形用突片330の長さ以下であったが、本実施形態においては、磁性コア350の長さがサブコイル造形用突片330の長さより長く設定されると共に、基材300の基部310側に延在するようにしてサブコイル造形用突片330に取り付けられることを特徴としている。基材300の基部310側に延在した磁性コア350の部分は、図12においてPとして示されている部分である。
【0122】
このような磁性コア350の長さ、配置によれば、基材300の中央に近い部分における磁界の漏れを低減することで、アンテナの指向性をより高めることが可能となる。
【0123】
また、図13は本発明の他の実施形態に係るアンテナを示す図である。図13に示す実施形態においては、磁性コア350の長さがサブコイル造形用突片330の長さより長く設定されると共に、サブコイル造形用突片330の縁部335から延在するようにしてサブコイル造形用突片330に取り付けられることを特徴としている。サブコイル造形用突片330の縁部335から延在した磁性コア350の部分は、図13においてQとして示されている部分である。
【0124】
このような磁性コア350の長さ、配置によれば、基材300の外周縁に近い部分における磁界の漏れを低減することで、アンテナの指向性をより高めることが可能となる。
【0125】
なお、図12に示す実施形態と図13に示す実施形態を組み合わせた実施形態によっても、上記のようなアンテナの指向性を高める効果をよりいっそう期待することができる。
【0126】
また、本実施形態に係るアンテナにおいては、磁性コア350をそれぞれの独立した別体のものとして複数用意して、個別の磁性コア350を、それぞれのサブコイル造形用突片330に取り付けることがよく、基材300の中心部で連結されたような一体側の磁性コアを用いることは好ましくない。
【0127】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図14は本発明の他の実施形態に係るアンテナを示す図であり、図14(A)は他の実施形態アンテナのメインコイルMCを構成する部分を、また、図14(B)は他の実施形態のアンテナのサブコイルSCを構成する部分をそれぞれ示している。本実施形態に係るアンテナは、図14(A)と図14(B)とを重ね合わせたものである。
【0128】
また、図15は、本発明の他の実施形態に係るアンテナの等価回路を示す図である。図15において、LmはメインコイルMCによって形成されるインダクタンスであり、Lsはそれぞれ個別のサブコイルSCによって形成されるインダクタンスである。
【0129】
これまで説明した実施形態においては、1つ基材300を用いて、図9に示す巻回パタ
ーンによって、アンテナのメインコイルMCと、サブコイルSCと同時的に形成していた。
【0130】
これに対して、図14及び図15に示す実施形態では、2つ基材300を用いて、それぞれの基材300に、メインコイルMCと、サブコイルSCとを独立的に形成している。
【0131】
図14(A)において、導体線400は、メインコイル造形用突片320及びサブコイル造形用突片330に係止されながら、渦巻き状に巻回されることで、まさに図7の模式図に示すメインコイルMCが形成されることとなる。
【0132】
一方、サブコイルSCの形成には、サブコイル造形用突片330のみが利用される。本実施形態では、図14(B)に示すように、磁性コア350が取り付けられたサブコイル造形用突片330に、導体線400を巻き付けて、各サブコイル造形用突片330でそれぞれ独立したサブコイルSCを形成する。これらのサブコイルSCは、模式的には図8に示されるものと同等である。また、これらのサブコイルSCは、図15に示すように直列に接続される。
【0133】
さらに、図15に示すように、サブコイルSCの直列接続は、メインコイルMCとも直列接続される。なお、図15に示すように各コイルを接続する際には、図7及び図8で説明したような磁界が発生するように、これを行う。さらに、図14(A)のメインコイルMCと図14(B)のサブコイルSCとを、それぞれ重ね合わせて近接させることで、他の実施形態に係るアンテナが構成される。このような他の実施形態に係るアンテナによっても、これまで説明した実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0134】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図16は本発明の他の実施形態に係るアンテナのコイルを造形するために利用される基材300を示す図である。図16において、先の実施形態と同様の参照番号が付されている構成については、同様のものであるので説明を省略する。
【0135】
他の実施形態に係るアンテナが、最初に説明した実施形態に係るアンテナと異なる第1の点は、最初に説明した実施形態に係るアンテナにおいては、基材300の周囲に、メインコイル造形用突片320とサブコイル造形用突片330とが交互に配列されているのに対して、他の実施形態に係るアンテナにおいては、基材300の周囲に、連続した複数個のメインコイル造形用突片320と1個のサブコイル造形用突片330とが交互に配列されることである。
【0136】
特に、他の実施形態に係るアンテナにおいては、基材300の周囲に、連続して配列されるメインコイル造形用突片320の数が、奇数個であることが望ましい。図16に示す実施形態においては、連続して配列されるメインコイル造形用突片320の数は3個である。
【0137】
上記のように、基材300の周囲に連続して配列されるメインコイル造形用突片320の数を奇数個としておくと、図18に示すように導体線400を巻回する際に、導体線400が第1面301から第2面302へ、また、第2面302から第1面301へと、渡されるパターンが、基材300の周囲全周にわたり一様となるため、アンテナの製造効率
が向上する。
【0138】
また、他の実施形態に係るアンテナが、最初に説明した実施形態に係るアンテナと異なる第2の点は、第2基材500が用いられる点である。図17は本発明の他の実施形態に係るアンテナにおける第2基材500の取り付けを説明する図である。
【0139】
基材300同様、第2基材500は、第1面501と、これと表裏の関係にある第2面502とを有する基板状の部材であり、例えばポリカーボネートやポリプロピレンなどの誘電正接が小さい材料を用いて構成することが好ましい。
【0140】
この第2基材500は、略中央の平板部をなす基部510と、この基部510から放射状に延出する複数のサブコイル造形用突片530とから構成されている。第2基材500のサブコイル造形用突片530は、基材300のサブコイル造形用突片330とで磁性コア350を挟持するため、及び、導体線400を巻回するために利用される。
【0141】
図17に示すように、基材300のサブコイル造形用突片330には、透磁率と比抵抗が高いフェライト材料などの強磁性体材料からなる磁性コア350を取り付けた上で、さらに、第2基材500を磁性コア350の上に取り付けて、基材300のサブコイル造形用突片330と第2基材500のサブコイル造形用突片530とで、磁性コア350を挟持させる。
【0142】
さらに、他の実施形態に係るアンテナにおいては、基材300のサブコイル造形用突片330と第2基材500のサブコイル造形用突片530の外周囲に導体線400が巻回されることで、サブコイルSCの形状が維持される。これにより、造形されるサブコイルSCを構成する導体線400と、第2軸との間の距離は、基材300のみを使う場合に比べて増加し、その結果インダクタンス成分も増加することとなる。
【0143】
次に、他の実施形態に係るアンテナにおいて、メインコイルMC、サブコイルSCを、基材300及び第2基材500で造形する際の導体線400の巻回パターンの1例について図18を参照して説明する。
【0144】
図18において、導体線400に示された矢印は、巻回する際の順序を示している。例えば、図中(a)から、導体線400を巻回し始めたとすると、まず、(a)から(b)にかけては、メインコイル造形用突片320の第1面301側において、導体線400を係止させる。
【0145】
続いて、(b)から(c)の区間においては、導体線400は、基材300のサブコイル造形用突片330の第2面→第2基材500のサブコイル造形用突片530の第1面→基材300のサブコイル造形用突片330の第2面のように、基材300のサブコイル造形用突片330及び第2基材500のサブコイル造形用突片530の周囲に略1周半分にわたって巻回される。
【0146】
サブコイル造形用突片330で上記のように巻回されるコイルは、全体としてサブコイルSCとしての磁界を形成すると共に、サブコイル造形用突片330の第2面側に巻回されている導体線400分は、メインコイルMCとしての磁界も形成することとなる。
【0147】
続いて、(c)から(d)にかけては、メインコイル造形用突片320の第1面301側において、導体線400を係止させる。
【0148】
続く、(d)から(e)にかけては、メインコイル造形用突片320の第2面302側
において、導体線400を係止させる。
【0149】
続く、(e)から(f)にかけては、メインコイル造形用突片320の第1面301側において、導体線400を係止させる。
【0150】
以上のような巻回パターンにより、さらに(g)→(h)→(i)→・・・と順次巻回する。基材300、第2基材500の全ての突片に対して基材300の周囲1周分、上記のよう巻回パターンでの巻回を行い、再び(a)に戻ったときには、突片が基部310から延出する方向に、ずらして、巻回を進めていく。
【0151】
以上のように構成される他の実施形態に係るアンテナにおいても、これまでに説明したアンテナと同様の効果を享受することが可能であると共に、磁性コア350が2つの突片に挟持されるので製造性がよく、さらに、基材300のみを利用する場合に比べ、インダクタンス成分を増加させることも可能となる。
【0152】
以上、本実施形態に係るアンテナは、メインコイルMCと、複数のサブコイルSCと、を有し、メインコイルMCによる磁界を、複数のサブコイルSCによる磁界で補正するアンテナであり、このような本実施形態に係るアンテナによれば、車両底面にアンテナを装着した場合でも、アンテナ全体により発生する磁界には指向性があるので、電力伝送中にアンテナから漏洩し車両底部の金属体に進入する磁界を低減することが可能となり、車両底部を加熱させてしまうことがなく、加えて、システムの電力伝送効率を向上させることができる。
【0153】
以上、指向性を持たないアンテナ、及び、指向性を有するアンテナの、2種類のタイプのアンテナを用いる例について説明したが、インダクタンス成分L1、キャパシタンス成
分C1である送電アンテナと、インダクタンス成分L2、キャパシタンス成分C2である受
電アンテナと、の間に、
【0154】
【数2】
及び
【0155】
【数6】
の関係を有する限りにおいては、どのようなアンテナを用いることもできる。
【0156】
例えば、本発明に係る電力伝送システム100においては、スパイダーコイルを用いたアンテナやボビンの周囲に巻回されたソレノイドコイルを用いるアンテナも好適に利用することができる。以下、これらのアンテナの具体的な構成について説明する。これらのアンテナは、送電アンテナ105及び受電アンテナ201の双方に適用し得るものである。なお、磁気共鳴方式で電力伝送を行うアンテナは、コイルのインダクタンス成分のみならず、その浮游容量に基づくキャパシタンス成分、或いは意図的に追加したコンデンサに基づくキャパシタンス成分をも含むものである。
【0157】
図19は本発明の他の実施形態に係るアンテナに用いるスパイダーコイルを説明する図
であり、図19(A)はスパイダーコイルを造形するために利用される基材600を示す図であり、図19(B)は基材600に導体線400を巻回する際のパターンの1例を示す図であり、図19(C)はスパイダーコイルを示す図である。
【0158】
図19(A)に示す図では、基材600としては略円形であるものを例にとり説明するが、これに限定されるものではない。
【0159】
基材600は、第1面601と、これと表裏の関係にある第2面602とを有する基板状の部材であり、例えばポリカーボネートやポリプロピレンなどの誘電正接が小さい材料を用いて構成することが好ましい。
【0160】
この基材600は、略円形の平板部をなす基部610と、この基部610から放射状に延出する複数のコイル造形用突片620とから構成されている。
【0161】
コイル造形用突片620は、第1面601又は第2面602のいずれか一方側に導体線400が通され、導体線400を係止するために利用される。これにより、導体線400でスパイダーコイルの形状が維持される。
【0162】
次に、以上のような基材600で造形する際の導体線400の巻回パターンの1例について図19(B)を参照して説明する。導体線400としては、複数の導体素線を集合させた撚り線を用いることが好ましい。
【0163】
図19(B)において、矢印はコイルを巻回する際の順序を示している。例えば、図中(a)に示すコイル造形用突片620に導体線400を係止することにより、導体線400を巻回し始めたとすると、まず、(a)に示す2つのコイル造形用突片620にかけては、コイル造形用突片620の第1面601側において、導体線400を係止させる。
【0164】
続いて、(b)に示す2つのコイル造形用突片620にかけては、コイル造形用突片620の第2面602側において、導体線400を係止させる。
【0165】
逆に、(c)に示す2つのコイル造形用突片620にかけては、コイル造形用突片620の第1面601側において、導体線400を係止させる。
【0166】
以上のように、2つのコイル造形用突片620毎に、導体線400を係止させる面を、第1面601側、第2面602側と交互に変える巻回パターンにより、(c)→(d)→(e)→・・・と順次巻回する。このような巻回パターンとすることにより、インダクタンス成分Lが大きいアンテナを形成することが可能となる。
【0167】
逆に、インダクタンス成分Lが大きいアンテナを形成する場合には、1つ1つのコイル造形用突片620毎に、導体線400を係止させる面を、第1面601側、第2面602側と交互に変える巻回パターンが好ましい。
【0168】
図19(C)は本発明の他の実施形態に係るアンテナに用いるスパイダーコイルを示す図であるが、このようなアンテナを送電アンテナ105、受電アンテナ201として用いることで、本発明を実現することもできる。
【0169】
また、図20は本発明の他の実施形態に係るアンテナに用いるソレノイドコイルを説明する図であり、図20(A)はソレノイドコイルの斜視図であり、図20(B)はソレノイドコイルを用いたアンテナを、送電アンテナ105、受電アンテナ201として利用して、本発明を実現した様子を説明する図である。
【0170】
ボビン700は、導体線400が周囲に巻回されたとき、導体線400をソレノイドコイル状に造形するものであり、例えばポリカーボネートやポリプロピレン、ABS樹脂などの誘電正接が小さく、剛性を有する材料を用いて構成することができる。
【0171】
本実施形態においては、ボビン700の周囲に巻回されたソレノイドコイルかなるアンテナを、図20(B)に示すように対向配置させて利用することができ、このようなアンテナを送電アンテナ105、受電アンテナ201として用いることでも、本発明を実現することもできる。
【0172】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。これまで説明した実施形態においては、送電アンテナ105のインピーダンスと受電アンテナ201のインピーダンスとの間の関係について説明したが、以下の実施形態においては、さらに電池204の内部インピーダンスとの関係についても言及する。
【0173】
受電側システムにおいて、電池204に対して効率的に充電が行える条件として、受電アンテナ201のインピーダンスと、電池204のインピーダンスとが整合していることを挙げることができる。
【0174】
すなわち、本実施形態では、式(2)及び式(6)の条件に加えて、さらに、式(4)の受電アンテナ201のインピーダンスと電池204のインピーダンスRとの間に、
【0175】
【数7】
の関係を持たせることで、受電側システムで電池204の充電を行う場合、システム全体として、効率的な電力伝送を行うことを可能としている。
【0176】
なお、特許請求の範囲においては、電池204については負荷と表現され、電池204のインピーダンスRは、負荷抵抗値として表現されている。
【0177】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。上記のように、電池204のインピーダンスRに実質的な変化がなく定数として見なせる場合には、上記の実施形態のように式
(2)及び式(6)及び式(7)の条件を満たせば、効率的な電力伝送を行うことを可能であるが、電池204のインピーダンスが変動する場合には、次のように考えるとよい。
【0178】
すなわち、本実施形態では、電池204のインピーダンスRがRmin≦R≦Rmaxを満たす範囲で利用されるとき、式(2)及び式(6)の条件に加えて、さらに、式(4)の受電アンテナ201のインピーダンスと電池204のインピーダンスRとの間に、
【0179】
【数8】
の関係を持たせることで、受電側システムで電池204の充電を行う場合、システム全体として、効率的な電力伝送を行うことを可能としている。
【0180】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。先の実施形態同様、電池204のインピーダンスが変動する場合には、次のように受電アンテナ201のインピーダンスを定めると、システムのロバスト性を向上させることが可能となる。
【0181】
すなわち、本実施形態では、電池204のインピーダンスRがRmin≦R≦Rmaxを満たす範囲で利用されるとき、式(2)及び式(6)の条件に加えて、さらに、式(4)の受電アンテナ201のインピーダンスと電池204のインピーダンスRとの間に、
【0182】
【数9】
の関係を持たせることで、受電側システムで電池204の充電を行う場合、システム全体として、効率的な電力伝送を行うことを可能としている。さらに、本実施形態においては、式(4)の受電アンテナ201のインピーダンスとして、電池204のインピーダンスRの平均値が採用されることで、送電アンテナ105と受電アンテナ201との間の位置
ずれなどの要因変化に対するロバスト性を向上している。
【0183】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。送電側システムから受電側システムに対して、異なる電力値で電力伝送を行うモードを有するよう場合に好適な実施形態について説明する。
【0184】
送電アンテナ105から受電アンテナ201に対して第1の電力値を送電する第1モードと、送電アンテナ105から受電アンテナ201に対して第2の電力値を送電する第2モードと、を有するような場合で、前記第1モードで送電中の電池204のインピーダンスがR1であり、前記第2モードで送電中の電池204のインピーダンスがR2であるとき
、本実施形態では、式(2)及び式(6)の条件に加えて、さらに、式(4)の受電アンテナ201のインピーダンスと電池204のインピーダンスRとの間に、
【0185】
【数10】
の関係を持たせることで、受電側システムで電池204の充電を行う場合、システム全体として、効率的な電力伝送を行うことを可能としている。
【0186】
本実施形態においては、式(4)の受電アンテナ201のインピーダンスとして、第1モードで送電中の電池204のインピーダンスR1と第2モードで送電中の電池204のインピーダンスR2との平均値が採用されることで、モード間の変化に対するロバスト性を向上している。
【0187】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。先の実施形態においては、送電アンテナ105から受電アンテナ201に対して電力伝送を行うモードが2つの場合について説明したが、本実施形態では、このような電力伝送のモードがnある場合について説明する。
【0188】
電力伝送のモードがnある場合には以下のように一般化することができる。すなわち、送電アンテナ105から受電アンテナ201に対して、それぞれ異なる電力値で送電する
n個のモードを有し、第hモード(ただし、h=1、2、…、n)で送電中の電池204のインピーダンスがRhであるとき、本実施形態では、式(2)及び式(6)の条件に加
えて、さらに、式(4)の受電アンテナ201のインピーダンスと電池204のインピーダンスRとの間に、
【0189】
【数11】
の関係を持たせることで、受電側システムで電池204の充電を行う場合、システム全体として、効率的な電力伝送を行うことを可能としている。
【0190】
なお、上記の前提として、インピーダンスRhのうち、最大のものがRhmaxであり、最
小のものがRhminであるときには、
【0191】
【数12】
の関係が満たされるようにすることが好ましい。
【0192】
本実施形態においては、式(4)の受電アンテナ201のインピーダンスとして、それぞれのモードで送電中の電池204のインピーダンスの平均値が採用されることで、モード間の変化に対するロバスト性を向上している。
【0193】
これまで説明したように、式(3)の送電アンテナ105と式(4)の受電アンテナ201のインピーダンスとの間には、
【0194】
【数5】
の関係があると電力伝送効率に好適であることを説明したが、式(3)の送電アンテナ105のインピーダンスの値を高くするとしても、その上限値は電力伝送システムの構成に依存して決まることとなる。
【0195】
より具体的には、インバーター部103を構成するスイッチング素子の耐圧値と、送電アンテナ105から伝送する電力値とに基づいて、
【0196】
【数3】
の上限値を定めるようにするとよい。
【0197】
上記のようなインバーター部103のスイッチング素子の耐圧値としては、スイッチング素子で許容される電圧の90%を1つの基準として用いることができる。ただし、電力伝送システムで余裕のある電力伝送を行う場合には、スイッチング素子で許容される電圧の70%を耐圧値とするとよい。
【0198】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図21は本発明の他の実施形態に係る電力伝送システムのブロック図である。
【0199】
本実施形態が図1に係るものと異なる点は、本実施形態に係るシステムでは、整合器が設けられていない点である。すなわち、本実施形態においては、インバーター部103からの出力は直接送電アンテナ105に入力されると共に、受電アンテナ201からの出力は直接整流部202に入力されることを特徴としている。
【0200】
図21に示すような他の実施形態に係る構成によれば、送電アンテナ105と、受電アンテナ201のみのインダクタンス成分、キャパシタンス成分の調整によって、整合器などの回路部を要することなく、効率的な電力伝送を行い得るので、システムのコストを抑制することができる。
【0201】
以上、本発明に係る電力伝送システムにおいては、送電アンテナの回路定数と、受電アンテナの回路定数とが上記の式(2)及び式(6)及び式(7)を満たすようにされているために、受電側システムで電池204の充電を行う場合に、効率的な電力伝送を行うことが可能となる。
【0202】
また、本発明に係る電力伝送システムによれば、車両底面に受電アンテナを装着した場合でも、少なくとも受電アンテナに指向性があるので、電力伝送中に受電アンテナから漏洩し車両底部の金属体に進入する磁界を低減することが可能となり、車両底部を加熱させてしまうことがなく、加えて、システムの電力伝送効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0203】
100・・・電力伝送システム
101・・・AC/DC変換部
102・・・電圧調整部
103・・・インバーター部
104・・・整合器
105・・・送電アンテナ
110・・・主制御部
120・・・通信部
201・・・受電アンテナ
202・・・整流部
203・・・充電制御部
204・・・電池
210・・・主制御部
220・・・通信部
230・・・インターフェイス部
260・・・ケース体
216・・・底板部
262・・・側板部
263・・・(上方)開口部
265・・・車体取り付け部
270・・・コイル体
271・・・基材
272・・・導電部
273・・・第1端部
274・・・第2端部
280・・・フェライト基材
290・・・アルミニウム基材
300・・・基材
301・・・第1面
302・・・第2面
310・・・基部
320・・・メインコイル造形用突片
322・・・側部
325・・・縁部
330・・・サブコイル造形用突片
332・・・側部
335・・・縁部
350・・・磁性コア
400・・・導体線
500・・・第2基材
501・・・第1面
502・・・第2面
510・・・基部
530・・・サブコイル造形用突片
600・・・基材
601・・・第1面
602・・・第2面
610・・・基部
620・・・コイル造形用突片
700・・・ボビン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21