【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
〔実験材料〕
C. reinhardtii の野生株2種(C9株 CC-408 mt-、及びCW15株 CC-400 cw15 mt+)を使用した。両株ともChlamydomonas Center (http://chlamycollection.org/)から入手することができる。
【0030】
実験に使用した遺伝子の遺伝子名とprotein ID(JGI Chlamydomonas reinhardtii 4.0)は、以下の通りである。
【0031】
【表1】
【0032】
〔実験操作〕
(1)培養条件
Na
2EDTA ・ 2H
2O 5 g, ZnSO
4 ・ 7H
2O 2.2 g, H
3BO
3 1.14 g, MnCl
2 ・ 4H
2O 506 mg, FeSO
4 ・ 7H
2O 499 mg, CoCl
2 ・ 6H
2O 161 mg, CuSO
4・ 5H
2O 157 mg, ( NH
4 )
6Mo
7O
24 ・ 4H
2O 110 mg, KOH 1.6gをイオン交換水 1Lへ溶解し、 Hutner’s trace elementsとして4℃に保存しておいた。
【0033】
NH
4Cl 400 mg , CaCl
2 ・ 2H
2O 51 mg, MgSO
4 ・ 7H
2O 100 mg, K
2HPO
4 119 mg, KH
2PO
4 60.3 mg, Hutner’s trace elements 10 mL, 酢酸 1 mL, Tris ( hydroxymethyl ) aminomethane 2.42 gをイオン交換水 998 mLへ溶解し、オートクレーブ滅菌してから液体TAP培地として使用した。プレート培地として使用する場合はINA Agar 12 gをオートクレーブ前に添加した。
【0034】
TAP培地を通常培養の培地として使用し、2030 μE/m
2/sec, 23℃で旋回培養した。リン欠乏培地ではTAP培地から K
2HPO
4, KH
2PO
4をのぞき、窒素欠乏培地では NH
4Clをのぞいた。
(2)脂質抽出
培養液100〜450 mLを800×g, 5分間遠心して、培養細胞を沈殿させ、イオン交換水1 mLに懸濁した後、-80℃ に保存した。
【0035】
凍結細胞を解凍し、クロロホルム 1 mL, メタノール 2 mLを添加し、10分おきに懸濁しながら1時間室温に置いた。800 g, 5分間スイングローターで遠心し、上清 4 mLを回収した。沈殿に1%(W/V)KCl 0.8 mL, クロロホルム 1 mL, メタノール 2 mLを添加し、懸濁した後、800×g, 5分間スイングローターで遠心し、上清 3.8 mLを先ほどの上清とあわせて回収した。上清 7.8 mLにクロロホルム 2 mL, 1%(W/V)KCl 1.2 mLを添加し、懸濁した後、800×g, 5分間スイングローターで遠心し、下層の脂質抽出液を回収した。脂質抽出液を乾燥させ、60 mg/mLになるようにクロロホルム:メタノール=2:1に溶解した後、-20℃ に保存した。
(3)脂質分析
脂質抽出液 50 μLを薄層シリカプレートにスポットし、ヘキサン:ジエチルエーテル:酢酸=160:40:4の展開液で45分間展開した。0.001%プリムリンを用いて、UV照射下でTAGを確認した。TAGがのっている部分のシリカを削り取り、1mM ペンタデカン酸 100 μL, 5% 塩酸/メタノールを500 μLを添加し、懸濁した後、85℃, 1時間静置した。ヘキサン 500 μLを添加し、懸濁した後、800×g, 5分間スイングローターで遠心し、上層のメチルエステル化した脂肪酸を回収した。下層に再びヘキサン500 μLを添加し、懸濁した後、800×g, 5分間スイングローターで遠心し、上層を回収した。メチルエステル化した脂肪酸を乾燥させた後、ヘキサン60 μLに溶解し、ガスクロマトグラフィサンプルとした。ガスクロマトグラフィはSHIMADZU GC-2014にHR-SS-10 (0.25 φ x 0.25 m) (SHINWA CHEMICAL INDUSTRIES, LTD.)を取り付けて行った。
(4)RNA抽出
凍結細胞に3倍量以上のRNA抽出液と3倍量以上の酸性フェノールを加え、凍ったまま超音波破砕(超音波15秒、氷冷30秒)を4回行った。20000×g,5分間, 4℃で遠心し、上清400〜500 μLを回収した。上清に酸性フェノール 300 μL, クロロホルム 300 μLを添加し、懸濁した後、140k rpm,5分間, 4℃で遠心し、上清400〜500 μLを回収し、この操作を5回繰り返した。上清の1/10倍量の3 M 酢酸ナトリウム、1倍量のイソプロパノールを添加し、懸濁した後、20000×g,5分間, 4℃で遠心した。沈殿物に70% エタノール 1 mL加え、20000×g,5分間, 4℃で遠心し、この操作を2回繰り返した後、沈殿物を乾燥させた。乾燥した沈殿を滅菌イオン交換水 400 μLに溶解した後、1 μg/μL以上の濃度の核酸であることを確認した。核酸 40 μLに10×DNase I Buffer 5 μL, DNase I 0.5 μL, 滅菌イオン交換水 4.5 μLを加え、37℃, 30分間静置した。酸性フェノール 50 μL, クロロホルム 50 μLを添加し、懸濁した後、20000×g,10分間, 4℃で遠心し、上清 35 μLを回収した。上清の1/10倍量の3 M 酢酸ナトリウム、1倍量のイソプロパノールを添加し、懸濁した後、20000×g,10分間, 4℃で遠心した。沈殿物に70% エタノール 150 μL加え、20000×g,10分間, 4℃で遠心し、この操作を2回繰り返した後、沈殿物を乾燥させた。乾燥した沈殿を滅菌イオン交換水 50 μLに溶解した後、1 μg/μL以上の濃度のRNAであることを確認した。
(5)cDNAの調製
RNA 1 μgに10 mM dNTP 0.5 μL, 100 mM oligo dT18 0.25 μL, RNase free water 3.65 μLを添加し、65℃, 5分間処理した後、氷上に静置した。さらに5xcDNA Synthesis Buffer 2 μL, 0.1 M DTT 0.5 μL, RNase OUT 0.5μL, Thermo Script RT 0.5 μL, RNase free water 0.5 μLを添加し、50℃, 40分間, 60℃, 20分間, 85℃, 5分間 処理した。得られたcDNAは-20℃ に保管した。
(6)半定量PCR法
LA PCR x10 buffer 1.5 μL, 2.5 mM dNTP 1.2 μL, MgCl
2 1.05 μL, LA Taq 0.075 μL, 5 M ベタイン 1.5 μL, DMSO 0.45 μL, 10 μM primer_F 1.5 μL, 10 μM primer_R 1.5 μL, cDNA 0.2 μL, 滅菌イオン交換水 6.1 μLを懸濁し、PCR反応に用いた。PCR反応条件は以下の2stepで行った。
step1:94℃ 3分間
step2:94℃ 30秒間, 54℃ 30秒間, 72℃ 1分間を1834サイクル
プライマーは以下のものを使用した。
DGAT1_F TGGTGGAATGCGGCTACGGT(配列番号4)
DGAT1_R TCTGTTGAGCTTCTTGCGCA(配列番号5)
DGTT1_F CTATAAGCCAAGCATGGGTG(配列番号6)
DGTT1_R GCGCCTCTGTGGCAAATGCC(配列番号7)
DGTT2_F TGGCTATGTTGACGCTCTTC(配列番号8)
DGTT2_R TCTCTGCGATGCCTCCCACG(配列番号9)
DGTT3_F AGACGGAAGCAGATGGCAGG(配列番号10)
DGTT3_R GACAAAGATGTAGCGCTTGT(配列番号11)
DGTT4_F TTCAAGGAGTGCTGTATGAG(配列番号12)
DGTT4_R GTCAGCTGCAGCGGCGTGAA(配列番号13)
DGTT5_F AGCCCGCACGGCGCCTTCCC(配列番号14)
DGTT5_R TGACGTGTACATCTCCGCAATGC(配列番号15)
UGP3_F CATGAACGTGGTGCAGGAG(配列番号16)
UGP3_R GGTTGGAGACCAGGAAGGTG(配列番号17)
SQD2a_F GGTGCAGGTGTGGAAGAAGG(配列番号18)
SQD2a_R CGTGATGATGTCGGGGATG(配列番号19)
(7)プロモーター配列の獲得
C9株のゲノムを鋳型にPCR反応を行い、プロモーター領域pSQD2a, pDGTT1を得た。得られた約1kbの配列をpMD20-T vector(TAKARA)またはpZErO-2(Invitrogen)へ導入した。
【0036】
2x GC Buffer II 5 μL, 2.5 mM dNTP 1.6 μL, C9株のゲノム 1 μL, LA Taq 0.05 μL, 10 μM primer_F 1 μL, 10 μM primer_R 1 μL, 滅菌イオン交換水 1.35 μLを懸濁し、PCR反応に用いた。
【0037】
PCR反応条件は以下の3stepで行った。
step1 94℃ 2分間
step2 94℃ 45秒間, 55℃ 30秒間, 71℃ 1分30秒間を40サイクル
step3 71℃ 5分間
【0038】
プライマーは以下のものを使用した。
DGTT1_F2 AGCAGCCACACGTAGTTGTC(配列番号20)
DGTT1_R2 CACGAGCTCTAGTTGGTTCA(配列番号21)
SQD2a_F2 CGGGATAGTTGTAGCTGTAG(配列番号22)
SQD2a_R2 CGAAGAGTTGAGGTGTGTGTTC(配列番号23)
(8)DGTT2〜4遺伝子の配列の獲得
リン欠乏時のcDNAを鋳型にPCR反応を行い、 DGTT2〜4遺伝子の全長を得た。得られた約1kbの配列をpMD20-T vector(TAKARA)またはpZErO-2(Invitrogen)へ導入した。PCR反応液の組成は半定量PCR法と同様のものとした。
【0039】
PCR反応条件は以下の3stepで行った。
step1 94℃ 3分間
step2 94℃ 30秒間, 54℃ 30秒間, 72℃ 1分間を41サイクル
step3 72℃ 3分間
プライマーは以下のものを使用した。
DGTT2_F2 ATGGCGATTGATAAAGCACC(配列番号24)
DGTT2_R2 TCAGCTGATGACCAGCGGTC(配列番号25)
DGTT3_F2 ATGGCAGGTGGAAAGTCAAACG(配列番号26)
DGTT3_R2 CTACTCGATGGACAGCGGGC(配列番号27)
DGTT4_F2 ATGCCGCTCGCAAAGCTGCG(配列番号28)
DGTT4_R2 CTACATTATGACCAGCTCCTC(配列番号29)
(9)C. reinhardtii形質転換法
TAP培地で1〜3×10
6 cells/mlになるまで培養したCW15株 50mLに 10%(v/v) Tween 20を50 μL添加して撹拌した。4℃, 800×g, 5分間スイングローターで遠心し、細胞を沈殿させた。上清をのぞいた後、終濃度1×10
8 cells/mlになるように、氷冷した40mM Sucrose/TAPに懸濁した。濃縮細胞 50 μLに0.1 mg/ml コンストラクトDNA 2 μL, キャリアssDNA(Salmon Sperm)1 μLを添加した。細胞懸濁液をエレクトロポレーション用キュベット(1 mm幅)に入れ、2000V/cm, 時定数 5 msecで1回電圧をかけた。40mM Sucrose/TAP 1 mLをキュベットへ添加し、細胞を懸濁した後、1.5 mLチューブへ移した。10〜20 μE/m
2/sec, 23℃で静置した。24時間後、800× g, 5分間遠心し、細胞を沈殿させた。上清をのぞいた後、20%(w/v) コーンスターチ/40mM Sucrose/TAP 0.5 mLを添加し、10 μg/μL ハイグロマイシンを添加したTAPプレートに蒔いた。20〜30 μE/m
2/sec, 23℃で静置し、生えて来たコロニーを形質転換株として新しいハイグロマイシン入りTAPプレートへ植えついだ。
【0040】
〔実験結果〕
(1)TAG/膜脂質合成系の制御検討
モデル藻類C. reinhardtiiでの脂質蓄積に関する知見として、窒素欠乏条件下で脂質が蓄積すること、脂質の中では貯蔵脂質であるTAGが蓄積すること、飽和脂肪酸の割合が増えることが報告されている(BMC Biotechnol. 2011; 11: 7.)。
【0041】
一方で本発明者らがこれまで高等植物で着目してきたリン欠乏条件下での脂質蓄積については詳細な知見は無い。そこで、窒素欠乏とリン欠乏条件下でのTAG蓄積量の比較を行った。
(2)栄養欠乏条件下でのTAG蓄積量の比較
増殖が停止しているstationary phase、増殖が盛んなlogarithmic phase、窒素欠乏条件、リン欠乏条件の比較を行った。
【0042】
logarithmic phase で窒素欠乏条件へ植え継いだ場合、油脂であるTAGの蓄積量が少なく、TAGを得るためには改良が必要であることがわかった。リン欠乏条件へ植え継いだ場合、増殖が窒素欠乏条件下ほど阻害されないこと、C16:4, C18:3などの多価不飽和脂肪酸の割合が減り、相対的に新規合成脂肪酸の割合は増えること、TAG蓄積量が多いことから、TAGの脂肪酸組成を膜脂質に含まれる脂肪酸から大きく改変するのに向いていることを見つけた(
図1、
図2)。
(3)脂質合成鍵遺伝子の探索
Diacylglycerol acyltransferase (DGAT)はTAG生合成の最終ステップを触媒する酵素である。DGATは動物、植物に広く存在する酵素であり、DGAT1, DGAT2の2種類が報告されている。
【0043】
C. reinhardtiiでのDGATについて、公開データベース(JGI Chlamydomonas reinhardtii v4.0)を探索した結果、DGAT1が1種類、DGAT2が5種類(DGTT1-5)存在することがわかった。これらのうちDGTT1についてはN欠乏条件下でmRNA量の変化がみられること、DGTT2およびDGTT3については窒素欠乏条件下でmRNA量の変化が少ないことが報告されている(Plant physiol. 2010, Vol.154, 1737-1752)。
【0044】
C. reinhardtiiのC9株を1×10
5cells/mLになるようにTAP培地250mLへ植え継ぎ、 logarithmic phase(5〜6×10
6cells/mL)で細胞を遠心回収し、リン欠乏培地または窒素欠乏培地で洗浄した後、1×10
5cells/mLになるようにリン欠乏培地または窒素欠乏培地250mLへ植え継いだ。新規脂肪酸由来のTAGが蓄積され始める条件である植え継ぎ後5日目に培養液 1 mLから細胞を遠心機で回収し、-80℃に保管した後、RNAを抽出した。RNAから逆転写反応によりcDNAを得た。cDNAを鋳型にPCRで半定量的に各遺伝子発現を調べた。PCRの結果、DGAT1、DGTT1-4が発現していることが確認できた。DGTT5については発現が確認できなかった(
図3)。
【0045】
C. reinhardtiiではDGAT1,DGAT2が発現していることが確認できたので、DGAT1またはDGAT2の上流に栄養欠乏条件になったときのみ強発現を誘導するプロモーターをつけ、小胞体膜で働くDGATを増やし、小胞体でのTAG蓄積を促進する方法を開発することにした。
(4)制御プロモーター探索
脂質合成鍵遺伝子の探索の時と同様にcDNAを作製し、各遺伝子発現量を比較した(
図3)。比較した遺伝子はTAG生合成に関わる因子であるDGAT1およびDGAT2、本発明者らが以前に発見したSQDG生合成に関わる因子であるUGP3(Okazaki et al Plant Cell 2009)およびSQD2である。
【0046】
図3よりSQD2a,UGP3,DGTT1は栄養欠乏条件で発現上昇が確認された。このうち、SQD2aはリン欠乏条件で特異的に発現上昇が見られ、DGTT1は窒素欠乏、リン欠乏の両方の条件で発現上昇が見られた。DGAT1, DGTT2-4では顕著な発現上昇は確認されなかった。そこでSQD2aとDGTT1のプロモーター領域を制御プロモーターの候補とした。
(5)候補プロモーター(pSQD2a、pDGTT1)による鍵遺伝子制御
SQD2a、DGTT1は公開データベースでは開始コドンが決定できなかったので、cDNAをDNAシークエンスし、開始コドンを決定した。
【0047】
開始コドンを決定したので、そこから約1kb上流までをプロモーター領域pSQD2a、pDGTT1とした。
【0048】
C. reinhardtiiのゲノムを鋳型として、プロモーター領域pSQD2a, pDGTT1をPCRにより増幅した。またC. reinhardtiiのリン欠乏時のcDNAからDGTT2〜4遺伝子の配列を得た。pSQD2a, pDGTT1をDGTT2〜4遺伝子上流に接続し、pSQD2a-DGTT2〜4, pDGTT1-DGTT2〜4とした。変異株選抜用にハイグロマイシン遺伝子耐性遺伝子(HygR)を上流に接続し、HygR-pSQD2a-DGTT2〜4, HygR-pDGTT1-DGTT2〜4を得た(
図6)。
(6)プロモーター(pSQD2a、pDGTT1)とDGAT遺伝子によるTAG増産
これらのコンストラクトをC. reinhardtiiへ形質転換し、ハイグロマイシンで選抜後、各変異株を2030株得た。変異株をリン欠乏条件におき半定量PCRにより各遺伝子の発現上昇が確認された株をさらに選抜した(
図7、
図8、
図9)。
【0049】
各変異株から3株(
図7、
図8、
図9で枠で囲んだ株)について、TAP培地, リン欠乏培地 各250 mLで培養し、TAG蓄積量を調べた(
図10、
図11)。
【0050】
図10、
図11より、HygR-pSQD2a-DGTT4#18,#19においてのみリン欠乏条件下でコントロール株よりも多くのTAG蓄積がみられた。#15はコントロール株と同程度のTAG蓄積しかみられなかったので、
図79で#18,#19と同等の遺伝子発現がみられていた#21を候補株として、再度TAG蓄積を確認した(
図12、
図13)。
【0051】
図12、
図13よりリン欠乏条件下でHygR-pSQD2a-DGTT4株はコントロール株に比べて2〜3倍のTAGが蓄積していることを発見した。これはこれまでに報告のある藻類での強発現プロモーターを付加した油脂合成遺伝子導入による手法の45倍の蓄積であった。本手法は、植物よりもバイオマスの大きい、藻類におけるバイオディーゼル生産や有用脂質生産を実現するために、極めて有用性の高い手法である。
【0052】
さらに、リン欠乏条件下でHygR-pSQD2a-DGTT4株とコントロール株のTAGの脂肪酸組成は
図14に示したように、
図2と同様にC16:4, C18:3などの多価不飽和脂肪酸の割合が減り、相対的に新規合成脂肪酸の割合は増えていた。このことからTAGの脂肪酸組成を膜脂質に含まれる脂肪酸から大きく改変するのに向いていると考えられる。
【0053】
今回の発明で使用したリン欠乏応答プロモーターpSQD2は通常培養時には発現を誘導しないので、油脂蓄積のタイミングをコントロールすることができる。リン欠乏条件下で細胞増殖させながら、油脂蓄積を行わせることができるので、新規脂肪酸合成に適している。これは有用な特殊脂肪酸を蓄積させるにも有効な方法である。