(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988227
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】歩行補助装置
(51)【国際特許分類】
A45B 3/04 20060101AFI20160825BHJP
A61H 3/00 20060101ALI20160825BHJP
A45B 3/00 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
A45B3/04 D
A61H3/00 A
A45B3/00 B
【請求項の数】11
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-58656(P2015-58656)
(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公開番号】特開2016-159133(P2016-159133A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2015年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】513038233
【氏名又は名称】東興電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 正臣
【審査官】
遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3128818(JP,U)
【文献】
特開2012−035076(JP,A)
【文献】
米国特許第08922759(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45B 3/04
A45B 3/00
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行時に患者の足元に目印を作るレーザー発振器と、レンズ又はプリズム、ミラーを内蔵する光源部、指令信号に基づいて前記レーザー発振器を回転移動させる電動モーターを内蔵する駆動部、患者と杖の向きを感知して前記駆動部に指令信号を送るマイコンと傾きと力の向きを感知する重力センサーおよび患者の進行方向を判断するジャイロセンサーと、現在位置を示すGPSと、音・音声を発するスピーカーを内蔵する電子制御部と、前記光源部、前記駆動部、前記電子制御部を搭載する搭載部と、レーザー発振器を冷却するファンと、光源の入り切りを制御するスイッチを内蔵する先端部を有する事を特徴とする歩行補助装置。
【請求項2】
請求項1の杖は地面を突いた時に、電子制御部にある重力センサーが、前に突こうとする杖の移動によって生じた力の向きを感知して、進行方向の向きを記憶する、その後記憶した方向に対して現在の方向がずれが生じていないかをジャイロセンサーにより判断し、ずれが生じている場合は、駆動部に進行方向へ戻すための補正値を送り、駆動部の電動モーターにより、光源部を回転移動させることで、傾きを戻し進行方向に目印を維持できる機能を特徴とする歩行補助装置。
【請求項3】
請求項1の光源部には患者の足元に歩行の目印となる光を出すレーザー発振器があり、レーザー発振器には人間の眼に対する視感度が高い緑色を使用する事で、屋外でも視認しやすい点と眼に対する負担が少ない機能を特徴とする歩行補助装置。
【請求項4】
請求項1の光源部のレーザー発振器は光の強弱を調整でき、暗い場所では低出力になり、明るい場所では高出力となる機能を特徴とする歩行補助装置。
【請求項5】
請求項1の光源部のレーザー発振器には、先端部分にレンズ、プリズム、ミラーが搭載しており、光の目印の描写を変えることが出来る機能を特徴とする歩行補助装置。
【請求項6】
請求項1の駆動部には、電子制御部からの指令に基づき、光源部を電動モーターにより回転移動させる機能を特徴とする歩行補助装置。
【請求項7】
請求項1の電子制御部には、ジャイロセンサーにより方向の変化を感知し、重力センサーにより杖を前に出した時の力の向きを感知する機能を特徴とする歩行補助装置。
【請求項8】
請求項1の電子制御部にはGPSが搭載されており、患者の居場所を無線LAN、IP電話回線網、ISM無線等へ送信する機能を特徴とする歩行補助装置。
【請求項9】
請求項1の電子制御部には音声、音を記憶、再生する機能を特徴とする歩行補助装置。
【請求項10】
請求項1の搭載部の形状は、人に接触した場合の事を踏まえて角を丸めた形状を特徴とする歩行補助装置。
【請求項11】
請求項1の先端部にはスイッチがあり、杖が地面に接地するとスイッチが入り、光源部から光の目印が描かれる機能を特徴とする歩行補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
歩行障害を持つ患者に対して歩くことを補助する歩行補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行障害とはパーキンソン病患者に多くみられ、全身の筋肉が堅くこわばり緊張し動きが悪い、姿勢を保つのが難しい等の症状が発生し、歩行や日常生活動作が不安定・困難になるものである。その一方で、パーキンソン病の患者は歩けないわけではなく、歩き始めの足を踏み出すきっかけがあれば歩行を続けることができる面もあった。
【0003】
患者は介護者からの声掛けを合図にして歩行する方法、介護者に支えて貰い歩行する方法、歩きまわる範囲内に障害物や目印を設置して歩行の目印とする方法、杖の内部に障害物を収納し歩行開始時に足元に展開する方法、杖に光源を搭載し足元に光の目印を作る方法等によりきっかけを掴み歩行を行うことは出来た。
【0004】
しかしながら、このような歩行には問題があり、介護者から助けてもらう場合は介護者の身体的負担が大きく、高齢化社会に伴い患者が増加した場合、介護者の負担はさらに増加する可能性がある。歩行範囲に目印を設置する場合は、予め設置する手間と病院内のリハビリ施設や家等決められたルートしか歩行する事が出来ない。
【0005】
杖を使用する場合は、体の震え等により杖の向きが進行方向と異なってしまう事で歩けなくなる事、その状態から焦りや不安によりバランスを崩して転倒してしまい大変危険である。又、杖は使用者が操作や初期設定を覚える手間がある。杖の方法毎にも問題があり、杖の内部に棒状の障害物を収納する方法は、患者が誤って障害物に足を引っ掛けて転倒してしまう危険性や幅のせまい道や人通りが多い場所では展開する事が難しい。杖に光源を搭載する方法は、日中の屋外での使用時は太陽の光により目印となる光が見えなくなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−34568号公報
【特許文献2】特開2011−229838号公報
【特許文献3】特開2004−73436号公報
【特許文献4】特開2003−164544号公報
【特許文献5】特開2002−113057号公報
【特許文献6】特開2001−149426号公報
【特許文献7】特開平11−309187号公報
【特許文献8】特開2005−312736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこれらの課題を鑑みてなされたもので、患者に自立して歩行を促し介護者の助けがなくても歩行ができる事と患者の歩行時における介護者の負担を軽減する事ができる杖を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、歩行時に患者の足元に目印を作るレーザー発振器と、レンズ又はプリズム、ミラーを内蔵する光源部、指令信号に基づいて光源を回転移動させる電動モーターを内蔵する駆動部、患者と杖の向きを感知して駆動部に指令信号を送るマイコンと、傾きと力の向きを感知する重力センサーと、方向を判断するジャイロセンサーと、現在位置を示すGPSと、音や音声を発するスピーカーを内蔵する電子制御部、上記部品を搭載する搭載部、光源の入り切りを制御するスイッチを内蔵する先端部を有する事を特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、歩行開始時に足元の目印となる光をつくるために杖を突いた時に、電子制御部にある重力センサーは杖を前に突こうとする杖の移動によって生じた力の向きを感知して進行方向の向きを記憶する。記憶した方向に対して現在の方向がずれているかジャイロセンサーにより判断し、ずれが生じている場合は、駆動部に進行方向へ戻すための補正値を送り、光源部を回転させることで傾きを戻し、進行方向に目印を維持できる機能を特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、光源部には患者の足元に歩行の目印となる光を出すレーザー発振器があり、光源には人間の眼に対する視感度が高い緑色のレーザーを使用する事で、屋外でも視認しやすい点と眼に対する負担が少ない点を特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、光源部のレーザー発振器の光の強弱を調整でき、暗い場所では低出力になり、明るい場所では高出力となる機能を特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、光源部のレーザー発振器の先端にレンズ、プリズム、ミラーを搭載しており、これ等を用いることで、光の目印の描写を変えることが出来る機能を特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、駆動部には電子制御部からの指令に基づき、光源部をモーターにより回転移動させる機能を特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、電子制御部のジャイロセンサーにより方向の変化を感知し、重力センサーにより杖を前に出した時の力の向きを感知する機能を特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、電子制御部はGPSが搭載されており、患者の居場所を無線LAN、IP電話回線網、ISM無線へ送信する機能を特徴とする。
【0016】
請求項9の発明は、電子制御部には音声や音を記憶、再生する機能を特徴とする。
【0017】
請求項10の発明は、装置の意匠と内部構成は、搭載部は光源部、駆動部、電子制御部が搭載されており、形状は人に接触した場合の事を踏まえて角を丸めた形状とし、杖本体に装着される機能を特徴とする。
【0018】
請求項11の発明は、先端部にはスイッチがあり、杖が地面に接地するとスイッチが入り、光源から光の目印が描かれる事を機能を特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、患者が前に歩き出そうとする進行方向に、杖の目印がの進行方向と一致することで、患者の目印に対する不安を取り除き、患者に対して歩行を促す際に有効な歩行補助装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明を実施するための形態の全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【実施例】
【0022】
杖本体1は中空の管であり、軽量で曲げ強度の高いカーボンパイプ、アルミ合金等の金属材料で形成される。杖本体1の管の部分に搭載部2が取り付けられ、杖の最下部に先端部4が取り付けられる。
【0023】
搭載部2には光源部5、電子制御部6、駆動部13からなる。光源部5にはレーザー発振器39とレンズ、プリズム、ミラー等が内蔵され、駆動部13とは連結されている。電子制御部6には基板11、電池、マイコン37、GPS32、スピーカー35、ファン12、重力センサー30、ジャイロセンサー31が内蔵されており動作の制御を行う。駆動部13には電動モーター38が内蔵されており、光源部5のレーザー発振器を回転させる。先端部4にはスイッチ33が内蔵されている。
【0024】
先端部4のスイッチ33は杖の最下部に取り付けられており、杖が地面と接触するとスイッチが入り、光源部5のレーザー発振器39が動作する。レーザー発振器39の連続使用は熱暴走による破損に繋がるため、レーザー発振器39の動作と連動して、冷却用のファン12がレーザー発振器39を冷却する。
【0025】
杖が前に突こうとするときに発生する反動を重力センサー30が感知し、その方向を進行方向の基準とし電子制御部6に保存する。方向が変化した場合、ジャイロセンサー31が基準からずれたことを感知し、電子制御部6から駆動部13にずれた分を補正するように命令を出し、駆動部13の電動モーターが回転する。駆動部13と光源部5はジョイント14により連結および動作が連動しており、光源部5が作る目印3の位置を補正する。杖を地面から離すとスイッチ33が切られ、電子制御部6に保存された基準も消去する。
【0026】
杖の使用時にはGPS32が起動し、現在位置を無線LAN、IP電話回線網、ISM無線等により送信をする。
【0027】
杖の使用時にはスピーカー35により、録音された音声・音を再生することができる。
【0028】
杖を使用する方法について説明する。歩行を開始する際に、杖を前に突き光源から光の目印3を作る。この目印3は杖の方向が変わっても、杖を地面から離さない限り進行方向と同じ方角を示す。
【0029】
パーキンソン病等の患者は、どうやって足を踏み出していいか分からない為、この目印3を作成することで足をまたぐ基準を持ち、足を踏み出すことが可能となる。又、スピーカー35からの音声や音により、介護者からの声掛けと同じように合図を貰う事で、歩行を促すことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は老人や障害者の歩行を補助する介護の分野で利用される。
【符号の説明】
【0031】
1 杖本体
2 搭載部
3 目印
4 先端部
5 光源部
6 電子制御部
10 レーザー発振器
11 基板
12 ファン
13 駆動部
14 ジョイント
20 方向修正前の目印
30 重力センサー
31 ジャイロセンサー
32 GPS
33 スイッチ
34 GPS情報発信
35 スピーカー
36 電池
37 マイコン
38 電動モーター
39 レーザー発振器