(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記包装袋は、前記フィルム状注出ノズルの基端部分外表面を、包装袋本体の上端部内表面に融着接合させることにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の滴下式包装体。
前記フィルム状注出ノズルは、相互に重なり合う表裏の軟質積層フィルムを、基端辺を除く周縁部分で融着接合することによって形成されてなり、包装袋本体内の液状物の注出を、該包装袋本体の傾動または反転下で、該液状物の水頭圧によって内表面どうしを離隔して前記先端開口を開放させると共に、前記包装袋本体が液状物の注出量に応じて収縮変形することで包装袋内に外気を取り込むことなく行う一方、
液状物の注出の停止と同時に包装袋を起立復帰することで、液状物の水頭圧の作用から解放されることに加え、その液状物の薄膜が残存することで濡れた内表面どうしが、前記包装袋本体の収縮変形に基づいて吸着し、前記先端開口を自動的に封止するセルフシール逆止機能を具えるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の滴下式包装体。
前記保護袋は、包装袋本体の上端部から延在させて形成され、かつ前記フィルム状注出ノズルを収容してなり、そしてフィルム状注出ノズルの基端部と前記引裂き誘導疵との間に幅方向に延びて設けられた切り離し線によって、上部を切り離し可能にしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の滴下式包装体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜5に記載されたこれらの従来技術では、滴下容器内への外気や異物の進入を阻止するための構成部品が多く、容器の構造が複雑で、容器コストの増加が否めないという問題点があった。
【0007】
しかも、特許文献1、2に記載された容器は、点眼薬の注出通路に設けたフィルターに目詰まりが生じる他、フィルター内で菌類が繁殖する等の問題があった。
【0008】
また、特許文献3、4に記載された容器では、外層を押圧した後の空気の圧縮変形を介して点眼薬の滴下をもたらすことから、その滴下に到るまでのタイムラグが大きい他、その滴下のために大きな力が必要であり、とくに、内層内の点眼薬が少なくなって、内層の減容量が多くなった場合に、滴下が非常に困難になるという問題点があった。
【0009】
そして、特許文献5に記載された容器では、スクイズボトルを直接的に押圧して点眼薬を滴下させるため、外気の吸入なしにスクイズボトルを圧潰変形させることが難しく、点眼薬の滴下中に、逆止弁を経て外気が進入するおそれが高いという問題点があった。
【0010】
この発明は、特許文献1〜5に記載されたこれらの従来技術が抱える、上述したような問題点を解決することを課題とするものである。具体的には、構造を簡単にしてコストを十分に低く抑えるとともに、流通時などの使用開始前において、注出口が菌類等の付着によって汚損されることがなく、また使用開始後において、大気や異物等の侵入を抑制し、さらには、点眼薬等を所期した通りに正確に滴下することのできる滴下式包装体、および該滴下式包装体を弾性枠部材内に収納し、自立性を付与すると共に、液状の被包装物の所要の滴下を可能にした滴下式包装構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、包装袋本体の上端部に、先細り注出通路を有するフィルム状注出ノズルが突設されている包装袋内に、液状物を充填してなる滴下式包装体であって、前記フィルム状注出ノズルは、その先端部近傍に、直線状、折線状または曲線状の引裂き誘導疵を有し、該引裂き誘導疵に沿ったフィルム状注出ノズルの先端部分の切り取りによって形成される注出通路の開口縁が、直線状傾斜もしくはフィルム状注出ノズルの突設方向に折線状または曲線状に突出した形状
を有し、かつ使用開始まで保護袋内に収納されている先端部分の外表面の少なくとも一部と、対応する該保護袋の内表面とが互いに融着接合されていて、前記保護袋の切り取りと同時に、該フィルム状注出ノズルの先端部が、前記引裂き誘導疵に沿って切り離されて開封状態となるように構成されていることを提案するものである。
【0012】
なお、本発明の滴下式包装体の、より好ましい解決手段は、
(1)前記包装袋は、前記フィルム状注出ノズルの基端部分外表面を、包装袋本体の上端部内表面に融着接合させることにより形成されていること、
(2)前記フィルム状注出ノズルは、相互に重なり合う表裏の軟質積層フィルムを、基端辺を除く周縁部分で融着接合することによって形成されてなり、包装袋本体内の液状物の注出を、該包装袋本体の傾動または反転下で、該液状物の水頭圧によって内表面どうしを離隔して前記先端開口を開放させると共に、前記包装袋本体が液状物の注出量に応じて収縮変形することで包装袋内に外気を取り込むことなく行う一方、液状物の注出の停止と同時に包装袋を起立復帰することで、液状物の水頭圧の作用から解放されることに加え、その液状物の薄膜が残存することで濡れた内表面どうしが、前記包装袋本体の収縮変形に基づいて吸着し、前記先端開口を自動的に封止するセルフシール逆止機能を具えるものであること
、
(3)前記保護袋は、包装袋本体の上端部から延在させて形成され、かつ前記フィルム状注出ノズルを収容してなり、そしてフィルム状注出ノズルの基端部と前記引裂き誘導疵との間に幅方向に延びて設けられた切り離し線によって、上部を切り離し可能にしたこと、
(
4)前記保護袋は、前記包装袋全体を覆うように設けられてなり、幅方向に延びて設けた切り離し線によって、開封可能にしたこと
、
(5)前記包装袋本体内に、袋内に充填した液状物の体積の2vol.%以上に相当する量のガスを封入したこと、
である。
【0013】
また、本発明は、前記のいずれか一の滴下式包装体と、該滴下式包装体を収納するための弾性枠部材とからなる滴下式包装構造体であって、前記滴下式包装体を弾性枠部材内に収納し、該弾性枠部材とともに傾動もしくは反転することによって、前記滴下式包装体内に充填された液状物が、フィルム状注出ノズルの注出通路を通して滴下注出されることを特徴とする滴下式包装構造体を提案するものである。
【0014】
なお、前記滴下式包装構造体は、前記弾性枠部材が、包装袋本体に対応する部分に設けた押圧力作用部と、前記先細り注出通路に対応する部分に位置し、該注出通路の両側部で相互に当接する支点部と前記先細り注出通路の先端に形成される開口に対応する部分に設けた開閉作動部と、を具えることがより好ましい解決手段となる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の滴下式包装体では、フレキシブル包装袋本体の上端部に突設したフィルム状注出ノズルの先端部分の切り取りによって形成される開口縁が、直線状傾斜もしくはフィルム状注出ノズルの突設方向に突出した形状からなるため、包装体を傾動あるいは反転させると、該包装体から発生した液滴は、フィルム状注出ノズルの開口縁を、傾斜下端部あるいは突出方向に向かって、その先端部まで滑り落ちた後、該先端部位置から落下することになる。そのため、この発明によれば、液滴を目的とする位置に正確に滴下させることができる。
【0016】
さらに、前記フィルム状注出ノズルが、セルフシール機能を有する逆止注出ノズルからなる場合には、包装袋内からの液状物の注出に当たって、フレキシブル包装袋本体が収縮変形、潰れ変形等することで、袋内へ外気を取り込むことがなく、また、注出の停止に当たっては、包装体を起立姿勢に復帰させた際に、袋内の液状物によって濡れたフィルム状注出ノズルの注出通路内表面どうしが、その液状物の薄膜の介在下で自動的に直ちに密閉することで、包装体内への外気の進入を有効に防止することができる。したがって、前記逆止注出ノズルによれば、袋内の液状物に防腐剤等を添加することなしに、その液状物を、酸化、菌類汚損等から長期間にわたって十分に保護することができる。
また、前記逆止注出ノズルによれば、液状物の注出通路にフィルターを設けるまでもなく、包装体内への外気の進入を十分に防止することができるので、フィルターの目詰まり、フィルター内での菌類の繁殖等のおそれがない。
【0017】
また、この発明によれば、包装用積層フィルムからなるフレキシブルな包装袋本体とフィルム状注出ノズルの少ない部品点数で、簡単な構造の、安価な滴下容器を提供することができる。
【0018】
さらに、本発明によれば、前記フィルム状注出ノズル部分あるいは包装体全体を、少なくとも上部の切り取りが可能な保護袋によって覆うことで、使用開始までフィルム状注出ノズルの外部への露出を阻止することができる。そのため、滴下式包装体の流通時や取り扱い時等において、フィルム状注出ノズルに菌類や埃等が付着することがなく、使用開始まで衛生性および安全性を保つことができる。
【0019】
また、本発明によれば、フィルム状注出ノズルの先端部分の少なくとも一部を、前記保護袋の内表面に融着接合することで、保護袋の開封と同時に、フィルム状注出ノズルを引裂き開封することができる。そのため、滴下式包装体の使用開始にあたり、フィルム状注出ノズルの先端部分(開口部分)に手指で触れる必要がなく、衛生性を保つことができる。
【0020】
さらに、本発明の滴下式包装体を、弾性枠部材内に収納してなる滴下式包装構造体によれば、該弾性枠部材とともに傾動もしくは反転させることによって、該包装体内に充填された液状物を、前記フィルム状注出ノズルの注出通路を通して滴下して注出させることができるので、前記フィルム状注出ノズルの先端開口は、弾性枠部材によって密閉され、該弾性枠部材に押圧力を作用させるまでは開放されないため、滴下式包装体内への外気や異物等の進入を有効に防止することができる。
しかも、この弾性枠部材によれば、滴下式包装体の潰れ変形した形態とは関係なく、該滴下式包装体に所要に応じた自立姿勢を付与することができる。
【0021】
なお、前記弾性枠部材が、滴下式包装体の、包装袋本体に対応する部分に設けた押圧力作用部と、前記フィルム状注出ノズルの、先細り注出通路に対応する部分に位置し、該注出通路の両側部で相互に当接する支点部と、前記先細り注出通路の先端に形成される開口に対応する部分に設けた開閉作動部とを具える場合には、袋内の残量の多少にかかわらず、弾性枠部材をテコの原理に基づいて開閉させ、滴下式包装体内の液状物を、その自重によって自然流下等させることにより、小さなタイムラグの下で、十分円滑に滴下させることができる。
【0022】
また、本発明の滴下式包装体では、外気の袋内への進入が阻止されるため、袋内の液状物の注出に伴って、フレキシブル包装袋本体の表裏の積層フィルムは、相互に密着し、収縮していく。そのため、本発明では、包装袋内に、大気圧下で袋内に充填した液状物の体積の2vol.%以上に相当する量のガス、たとえば袋内の液状物が酸化等の反応を起こすおそれがあるか否かに応じて、不活性ガス、活性ガス等の所要のガスを封入することが好ましい。これによれば、袋内の液状物の残量が少なくなったとしても、前記ガスが、包装袋本体の表裏の積層フィルムの相互の密着力を緩和し、表面側の積層フィルムと、裏面側の積層フィルムとを大きく離隔変位させるとともに、袋内の液状物の注出に当って、前記封入ガスが、該ガスの占有スペース内への袋内の液状物の流入を誘導(置換)し、液状物の注出を円滑なものとすることができる。
【0023】
このように、包装体内にガスを封入すれば、フィルム状注出ノズルが、セルフシール機能を有する逆止注出ノズルからなる場合であっても、液状物の、フィルム状注出ノズルの注出通路への到達が十分迅速なものとなり、また注出通路を大きく開放させることができるため、袋内の液状物の全量を注出することができる。したがって、袋内の液状物の残量が減少したとしても、液状物の注出動作の開始から、液状物が実際に注出されるまでのタイムラグが有効に抑制され、液状物の注出時のストレスを効果的に減じることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下にこの発明の実施形態を図面に示すところに基づいて説明する。
図1に示す透明な包装体1は、延伸ベースフィルム層をおよびシーラント層を具え、蒸着層、中間層等を具えることもある包装用の積層フィルムからなるフレキシブル包装袋本体2と、相互に重なり合う半折りした一枚の、または二枚の、表裏の軟質積層フィルムからなり、基端辺3を除く全周縁部分を、図に斜線を施して示すように融着接合し、その融着接合部4の中央部分に、包装袋本体2から離れるにつれて先細りとなる注出通路5を区画してなるフィルム状注出ノズル6とからなる包装袋8内に、所要の液状物を、液中シール、夾雑物シール等によって抜気状態で充填することにより形成される。
なお、フィルム状注出ノズル6は、その基端部分の外表面を、包装袋本体2から突出する姿勢で、包装袋本体2の内表面に、
図1では、シール部7により包装袋本体2の全長にわたって融着接合させる。図に斜線を施して示す部分が融着接合部である。
【0026】
図示の包装袋本体2は、液状物の充填包装状態で三方シール状態とされているが、これを四方シール状態とすることもでき、また背貼りシール包装袋とすることもできる。
また、包装袋本体2と注出ノズル6は、
図1に示すようにそれぞれ別体からなる他、相互に重なり合う半折りした一枚の、または二枚の、表裏の積層フィルムによって一体に形成してもよい。
【0027】
なお、注出ノズル6は、延伸ベースフィルム層(ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、EVOH等)と、これを挟んで積層したそれぞれのシーラント層(ポリエチレン、ポリプロポピレン、アイオノマー、EVA、EVOH等)とを具える積層フィルムにより形成することが好ましい。この積層フィルムは、フラット性に優れるため、上記したように包装袋本体2と注出ノズル6とを一体に形成する場合にも好適に用いることができる。
【0028】
注出ノズル6の先細り注出通路5の先端を封止する融着接合部4aは、手指による引裂きを容易にするため、
図1に示すように幾分面積の大きい把持部とすることが好ましい。この融着接合部4aを、それの基部に設けた引裂き誘導疵10に沿って引裂き除去することで注出通路5の先端に開口を形成することができる。
また、融着接合部4a基端部の、引裂き誘導疵10の始端となる位置には、該引裂き誘導疵10に沿った引裂きを容易にするため、V字状等のノッチ9を設けてもよい。
【0029】
図1の実施形態では、引裂き誘導疵10を傾斜させて形成したことにより、この引裂き誘導線10に沿った融着接合部4aの切り取りによって形成される注出ノズル6先端の開口縁17もまた、直線状に傾斜した形状になる。
このような包装体1を傾動あるいは反転させて、前記注出ノズル6先端の開口から液状物を滴下すると、液状物の液滴は、
図2(a)の拡大図にあるように、注出ノズル6先端の開口縁17の幅方向略中央位置(開口が最も広くなる部分)から発生し、傾斜した開口縁17を下方側に向かって滑り落ちた後、突出先端部17aに滞留して落下することになる。そのため、この包装体1によれば、液滴を常に目的とする位置へ正確に滴下することができる。
【0030】
引裂き誘導疵10は、
図2(a)に示すような直線状の他、折線状(
図2(b))または曲線状(
図2(c))とすることができる。この場合には、引裂き誘導疵10を、注出ノズル6の開口縁17が、注出ノズル6の突設方向に向かって突出するように設けると共に、その開口縁17の突出先端部17aが1つだけ形成されるようにする。これによれば、注出ノズル6先端の開口から発生した液滴が、1の突出先端部17aに集中することになるため、上記と同様に、液滴を常に目的とする位置へ正確に滴下させることができるという効果が期待できる。
【0031】
なお、液滴の大きさは、引裂き誘導線10の傾斜角度や曲率半径によって調整することができる。例えば、
図1の場合には、傾斜角度θが大きくなると、液滴の発生から突出先端部17aまでの到達時間が早くなるため液滴が小さくなり、一方、傾斜角度θが小さくなると、液滴の発生から突出先端部17aまでの到達時間が遅くなるため、液滴が大きくなる。傾斜角度θは、液状被包装物の種類や用途等によって決定し、好ましくは5〜45°、より好ましくは10〜30°とする。
【0032】
また、引裂き誘導疵10が曲線状からなる場合には、該引裂き誘導疵10を、注出ノズル6の開口縁17の突出先端部17aが、幅方向略中央位置よりも、いずれか一方側に偏って位置するように設けることが好ましい。この場合には、
図3に示すように、注出ノズル6の開口縁17の幅方向略中央位置(A点)から発生した液滴は、曲線からなる開口縁17を、落下速度を増加しながら突出先端部17aに向かって滑り落ちた後(B点)、突出先端部17a(C点)付近でカーブが緩やかになると落下速度が減速し、重力によって下方へ引っ張られるようになる。これにより、開口縁17と液滴との付着力が弱まり、液滴は進行方向へ飛び出すようにして、引きちぎられて順次、落下することになる。
そのため、包装体内から滴下した液状物は、突出先端部17aおよびその周辺に滞留することがなく、開口縁17に液状物が付着したり、液だれが発生するおそれがなく、開口縁17の衛生性を保つことができる。
【0033】
なお、引裂き誘導疵10は、レーザ光線等をもって連続的もしくは間欠的に設けた溶融痕などの、適宜の形状および数の疵にて形成することができる。このような引裂き誘導疵10の、深さや長さ、その他の寸法は、積層フィルムの厚さや構成材料などに応じて選択する。
【0034】
図4は、包装体1の他の実施形態を示す平面図である。
図4(a)の包装体1では、包装袋本体2を構成する包装用積層フィルムを、注出ノズル6の表面側および裏面側のそれぞれを全体に覆うように延長させて形成した保護袋20が設けられている。保護袋20は、その外縁部分の対向する内表面側のシーラント層どうしが図に斜線で示すように融着接合されてなり、該保護袋20によって注出ノズル6の外部への露出が完全に防止されている。
この保護袋20には、使用に際してその上部を切り取り、注出ノズル6を外部に露出させるための切取線22を設けることが好ましい。
図4(a)では、切取線22が、注出ノズル6の基端部と引裂き誘導疵10との間に、保護袋20を幅方向に横断するように設けられてなり、該切取線22に沿って保護袋20の上部が切り取れるようになっている。
【0035】
なお、保護袋20は、少なくとも注出ノズル6を覆うように設ければよく、これによって使用開始まで注出ノズル6の外部への露出を抑制することができ、注出ノズル6の衛生性と安全性を保持することができる。
【0036】
図4(b)は、保護袋20を包装体1の全体を覆うように形成した場合を例示したものである。図では、包装体1と保護袋20が下部シール部によって融着されて一体化しているが、保護袋20と包装体1とをそれぞれ別体として構成してもよい。
図4(b)のように包装体1と保護袋20とを一体化させた場合には、切取線22を、注出ノズル6の基端部と引裂き誘導疵10との間に、保護袋20を幅方向に横断するように設けることで、注出ノズル6のみを外部に露出させることができる。包装体1と保護袋20とをそれぞれ別体として形成した場合には、包装体1全体を保護袋20から取り出して使用することができる。
【0037】
また、
図4のように注出ノズル6の注出通路5の先細り先端部を折り曲げると共に、融着接合部4aを折り曲げ方向に突出した形状とすれば、矢印で示す方向への引っ張りによって簡単に注出ノズル6の先端部分を切り取ることができる。
【0038】
さらに、注出ノズル6先端の融着接合部4aの少なくとも一部を保護袋20の内表面側のシーラント層に融着(融着部21)させた場合には、切取線22に沿って保護袋20の上部を切り取った際に、融着部21によって融着接合部4aが引っ張られて、引裂き誘導疵10を介して注出ノズル6が引裂き開封されることになる。したがって、保護袋20の引裂き開封と同時に、注出ノズル6が開口されることになり、注出ノズル6の先端部分を手指等によって触れる必要がなく、注出ノズル6の衛生性および安全性を担保することができる。
【0039】
なお、切取線22は、積層フィルムの幅方向へ−(マイナス)状に延在させて設けた一本の疵、ミシン目状に穿設した複数の疵、その幅方向に間隔をおいて設けた複数の小孔状の疵、あるいはレーザ光線等をもって連続的もしくは間欠的に設けた溶融痕などの、適宜の形状および数の疵にて形成することができる。このような引裂き誘導疵の、深さや長さ、その他の寸法は、積層フィルムの厚さや構成材料などに応じて選択する。
【0040】
また、注出ノズル6の注出通路5には、
図5に示すように表裏の積層フィルムを融着させてなる隔壁16を設けてもよい。この隔壁16によって、包装袋本体2部分から注出通路5への液状物の流入、通過に対して抵抗が生じ、液状物の、注出ノズル6の先端開口部18への過剰な進入が防止され、滴下量をコントロールすることができる。なお、隔壁16の長さや幅、数等は、包装体1の容量や滴下量等に応じて決定する。
【0041】
さらに、注出ノズル6は、セルフシール機能を有する逆止注出ノズルであることが好ましい。これによれば、
図1に斜線を施して示すような三方シール状態、または図示しない四方シール状態とされたフレキシブルな包装袋本体2が、液状物の注出量に相当する体積だけ収縮ないしは潰れ変形することで、包装体1内に外気を取り込むことなく液状物を注出することができる一方、液状物の注出の停止と同時に包装体1を起立復帰することで、液状物の薄膜の介在によって濡れた先細り注出通路5の内表面どうしが、前記包装袋本体2の収縮変形に基づいて相互に吸着し、注出ノズル6の先端開口18を自動的に密閉封止する。そのため、袋内の液状物の繰り返しの注出に当たっても、包装体1内へ、注出ノズル6を経て外気や異物等を取り込むおそれがなく、包装体1内の液状物を、酸化、菌類汚損等から長期間にわたって十分に保護することができる。
【0042】
なお、上記のように注出ノズル6が、セルフシール逆止機能を有する場合には、包装体1内への外気の侵入が抑制されるため、液状物の吐出量に応じて包装体1が収縮変形することになる。そのため、袋内の液状物の残量が少なくなってくると、液状物の水頭圧だけでは注出ノズル6の注出通路5を開口させることができなくなり、液状物が注出ノズル6の先端開口18から注出されるまでのタイムラグが大きくなったり、液状物の全量を注出できないおそれがある。
【0043】
そこで、本発明では、包装体1内に、大気圧下で袋内へ充填した液状物の体積の2vol.%以上のガス、たとえば袋内の液状物が酸化等の反応を起こすおそれがあるか否かに応じて、不活性ガス、活性ガス等の所要のガスを封入することが好ましい。これによれば、包装体1内の液状物の残量が少なくなったとしても、前記ガスが、包装袋本体2の表裏の包装用積層フィルムの相互の密着力を緩和し、表面側の包装用積層フィルムと、裏面側の包装用積層フィルムとを大きく離隔変位させるとともに、袋内の液状物の注出に当って、前記封入ガスが、該ガスの占有スペース内への液状物の流入を誘導(置換)し、液状物の注出を円滑なものとすることができる。なお、ガスの封入量は、包装体1内の液状物の充填量が減少されてしまうこと、および注出通路5から液状物を注出するに当たって、封入ガスもまた注出通路5から流出する危険性があることから、包装体1内に充填した液状物の40vol.%以下とすることが好ましい。
【0044】
次に、本発明の包装体1を収納し、滴下式包装構造体を構成するのに好適な弾性枠部材11の一実施例を、
図6に略線横断面図として示す。
図6では、弾性枠部材11は、ほぼコ字状をなす上下のそれぞれの板状体を主体とし、包装体1の両側部を覆うそれぞれの側壁11aおよび、包装体1の底部(図では右端)を覆う底壁11bを具える。その他、弾性枠部材11は、先細り注出通路5の少なくとも一方の側部、図では両側部で、上下の板状体が相互に当接する支点部12と、先細り注出通路5の先端に形成される開口に対応する部分に位置し、後述する押圧作用部への押圧力の作用および解放に基づいて、先細り注出通路5の先端開口18を開放し、そして密閉する開閉作動部13とを具える。
【0045】
なお、弾性枠部材11は、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル等の弾性材料により形成することが好ましい。
また、側壁11aおよび底壁11bは、例えば、弾性枠部材11の上下の板状体よりも軟質な材料を用いたり、壁厚を薄くしたり、折れ線を予め形成しておく等して、後述するように押圧作動部へ押圧力を加えた際に変形できるようにしてもよい。
【0046】
図6に仮想線で示すキャップ14は、弾性枠部材11の支点部12から開閉作動部13までの間を全体的に覆い、開閉作動部13を、注出通路5に形成される先端開口18を密閉状態に保持するべく機能する。かかるキャップ14は、弾性枠部材11に螺合させることの他、摩擦掛合させることもできる。
【0047】
図7は、弾性枠部材11を幅方向の中央部で、厚み方向に切断した際の断面状態を示す略線断面図である。この弾性枠部材11は、図に示すように、支点部12および開閉作動部13、液状物を充填包装した包装体1の外表面、より直接的には、包装袋本体2に対応して位置して、それの外表面から常に離隔し、弾性枠部材11の力点として機能する押圧力作用部15を具える。
【0048】
開閉作動部13は、押圧力作用部15へ押圧を加えない状態においては、
図7(a)に示すように、注出通路5の先端を上下から強く挟持し、該先端開口18を密閉する。
一方、押圧力作用部15へ押圧力Fを加えた場合には、
図7(b)に示すように、支点部12を支点として、弾性枠部材11が揺動して変位して、作用点としての開閉作動部13を、白抜矢印Aで示す方向に開放するように動作する。なお、支点部12は、図に示すように弾性枠部材11を構成する上下の板状体と同じ弾性材料で、それと一体に形成する他、バネ部材を用いたり、ヒンジ構造としてもよい。
【0049】
そして、開閉作動部13には、
図7に示すように、注出ノズル6の外表面に当接し、注出通路5に形成される先端開口18を開閉させる開閉突起13aを設けることが好ましい。また、支点部12間の、先細り注出通路5に重なる一以上の領域には、これも
図7に示すように、注出ノズル6の外表面に当接して、液状物の流量をコントロールする流量調整突起12aを設けることが好ましい。
【0050】
なお、流量調整突起12aは、液状物の注出ノズル6内への過剰の流入を抑制するととともに、とくに、押圧力作用部15へ押圧力Fを加えると、
図7(b)に示すように、流量調整突起12aの押圧力作用部15側端部が、注出通路5に近接する方向に変位するため、滴下式包装構造体を反転等させた状態で、注出ノズル6の先端開口18を開放させたとしても、液状物の流下が抑制され、液状物を適量だけ吐出させることができる。
【0051】
さらに、フィルム状注出ノズル6が、セルフシール機能を有する逆止注出ノズルである場合には、注出通路5内に袋内の液状物が過剰に侵入したり、液状物が侵入した状態で長期に保持されることがないため、注出通路5が膨らむ方向に永久変形するおそれがなく、逆止機能を有効に発揮させることができるという効果も期待できる。
【0052】
流量調整突起12aおよび開閉突起13aはともに、弾性枠部材11と同種の材料にて形成することができ、これによれば、突起12a、13aの形成を容易にするとともに、容器コストを低く抑えることができる。
これに対し、開閉突起13aは、弾性枠部材11よりも軟質の弾性材料、例えばゴム等にて形成することもでき、これによれば、開閉突起13aが、先細り注出通路5の先端開口18を挟む位置において、相互に密着して当接し、該先端開口18を強い力で挟持して密閉することができるため、液状物の意図しない漏出を防止することができる。
【0053】
図7(c)は、キャップ14を、
図7(a)の弾性枠部材11に摩擦掛合させた場合の断面図である。このように摩擦掛合キャップ14をもって、開閉作動部13を、図の上下方向により強く挟持した場合には、注出通路5に形成される先端開口18をより効果的に密閉することができ、キャップ14の掛合中は、袋内の液状物の意図しない漏出を確実に防止することができる。
【0054】
ここで好ましくは、開閉作動部13の正面形状を、上方もしくは下方に凸となる湾曲形状もしくは三角山形状として、開閉作動部13を横方向に直線状に延在させる場合に比べ、開閉作動部13と、フィルム状注出ノズル6との接触長さを長くする。
これによれば、開閉作動部13の面圧が小さくても、注出ノズル6の先端部に形成される先端開口18を容易に密閉することができる。
【0055】
弾性枠部材11を、少なくとも包装体1の両面を挟む板状体にて構成したときは、弾性枠部材11の製造をより容易にして、容器コストを一層安価なものとすることができる。
【0056】
なお、弾性枠部材11は、
図6で述べたように、両側部を側壁11aにて、底部を底壁11bにて閉止した箱状体で構成することもできる。これによれば、包装体1の、弾性枠部材11からの食み出しを有効に防止して、包装体1をより効果的に保護することができる。
そして、箱状体からなる弾性枠部材11は、スリットを設ける等して、弾性枠部材11の所要に応じた開閉を可能とすることで、液状物を消尽した包装体1の交換を十分容易なものとすることができる。
【0057】
ここで、包装袋本体2および弾性枠部材11をともに透明体としたときは、包装体1内の液状物の残量を外部から、容易にかつ確実に視認することができ、包装体1の交換を適切なタイミングで行うことができる。
なお、キャップ14は、螺合キャップとすることもでき、これによっても滴下式包装構造体の構造を十分簡単なものとして、注出通路5に形成される先端開口の密閉保持を簡易に実現することができる。
【0058】
図8は、以上のような滴下式包装構造体を、注出ノズル6としてセルフシール機能を有する逆止注出ノズルを用いて、点眼容器として使用した場合を例示する断面図である。
ここでは、注出ノズル6の先細り注出通路5に形成した先端開口18を、下方に向けた姿勢として弾性枠部材11の押圧力作用部15を、図に矢印で示すように押圧することで、該弾性枠部材11の開閉作動部13、ひいては先端開口18を開放して、包装体1内の点眼薬をそれの自重に基づいて、先端開口18から一滴分(約0.03g)滴下させることができる。
この一方で、滴下の停止は、押圧力作用部15への押圧を解放することに基づく、開閉作動部13による先端開口18の閉止をもって行うことができる。
【0059】
この場合、包装体1より直接的にはフレキシブルな包装袋本体2は、注出ノズル6のセルフシール逆止機能によって点眼薬の滴下体積分だけ収縮変形、潰れ変形等することになるので、包装袋本体2は、そこへ外気を取り込むことなしに液滴の滴下を行うことができる。
【0060】
また、点眼薬の所要の滴下を終えて、弾性枠部材11を、注出通路5の先端開口18が上方に向く姿勢に復帰させると、好ましくは内表面に濡れ処理が施された注出通路5は、その内表面どうしが点眼薬による薄膜の介在下で密着して密閉するため、点眼薬の滴下の終了後においても、包装袋本体2内への外気の進入が十分に防止されることになる。
したがって、この滴下式包装構造体では、点眼薬への防腐剤の添加なしに、点眼薬を酸化、菌類汚損等から長期間にわたって十分に保護することができる。
【0061】
ここで、点眼薬に濡れた注出通路5の密閉は、毛管現象による点眼薬の拡散や、点眼薬の一部が注出通路5から包装袋本体2内へ戻流する際に、その注出通路5へ負圧が及ぶこと等によって行われることになる。このことは、点眼薬の滴下に伴って収縮変形、つぶれ変形等した包装袋本体2が元形状に復帰しようとすることに起因する負圧を注出通路5内に及ぼすことによってアシストされることになる。
【0062】
包装袋8内へ充填包装する液状物は、点眼薬の他、点滴液、その他の薬剤、液状の飲食品、化粧液、消毒液、液体洗剤、化学品等とすることもできる。