(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属ガラスナノワイヤが、複数本の金属ガラスナノワイヤが絡み合ったファイバー状態であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属ガラスナノワイヤの製造方法。
【背景技術】
【0002】
歴史的に触媒反応の研究はとても古く、20世紀初頭の窒素の固定方法であるアンモニア合成まで遡るが、現在では日常生活品などの化学製品の原料、医薬品、食品,農薬肥料の合成等、広範囲にわたり触媒が用いられている。また、工場から排出される二酸化炭素や自動車の排気ガスの低減も触媒の役割となっており、地球温暖化や酸性雨問題などの深刻な地球規模の環境破壊問題を解決する糸口として、触媒に対する期待が一段と高まっている。
【0003】
触媒反応は固体表面で進行するので、反応効率を高めるためには表面積を拡張することが必要である。パラジウムなどの高価な貴金属が活性触媒として用いられる場合は、一般的に、1〜100nm程度のナノ微粒子にして、アルミナ、シリカゲル、セラミックなどの多孔質担体表面に担持して使用されている。
【0004】
近年、原子分解能を有する様々な顕微鏡法の発展により、新しいナノ構造が発見され、量子論的効果などのナノスケール電子現象も解明されつつあり、さらにこれらのナノ領域に特有の材料特性を積極的に実用化し活用しようとするナノテクノロジー研究が精力的に推進されている。「ナノテク」と呼ばれ一般的な知名度を得たナノテクノロジー研究ではあるが、ナノテクが工業的に実用化された成功例は非常に限定的である。これはナノ構造創製のための複雑な生産技術や、その微小なナノサイズの故にハンドリングが非常に難しい事にある。例えば、将来的に電子デバイスやナノ電子機械システムの部品材料として有望視され、実際、一部では既に実用化され競争的な研究開発が進められているカーボンナノチューブ(carbon nanotube;CNT)においては、アレイ状ではあるが、多層CNTでメートル級〔非特許文献1〕、単層CNTでミリ単位〔非特許文献2〕長さの合成法が漸く開発された。
【0005】
一方、CNTの機械的特性に着目してみると原子間力顕微鏡によって測定された引張り強度は63GPaという驚異的な値が報告されているが、その強度測定は10μm程度の短い長さのCNTに対して実施されたものである〔非特許文献3〕。同様な結果が透過電子顕微鏡観測からも確かめられているが、くびれを伴わない破壊過程が観測されることから、その破壊には欠陥サイトが関与していることが報告されている〔非特許文献4〕。また、究極のトランジスタ素子として活用が期待されている単結晶シリコンナノワイヤは依然として長尺化は困難であり、このような制限は結晶質ナノワイヤに共通した問題としてナノワイヤの本格的な実用化への足かせとなっている。
【0006】
この長尺化問題を克服する重要なポイントは、これまでの1次元ナノワイヤはすべて結晶相から構成されていることにある。一般に結晶質材料は、たとえナノサイズであっても転位、点欠陥、双晶、粒界などの様々な欠陥サイトを含み、これらの欠陥サイトの存在は高強度のナノワイヤを長尺化する際に重大な影響を及ぼす。
【0007】
これに対して本発明者が発見した金属ガラスナノワイヤ〔非特許文献5、特許文献1〕はアモルファス構造から構成されるため、転位などの欠陥サイトの影響を受けることがなく超高強度を保持できる。さらにガラス質に特有な過冷却液体領域における超塑性加工を利用できる利点があり、これまで結晶質材料をベースとしたナノワイヤでは困難であったミリ単位以上の長尺で高強度のナノワイヤの作製が可能である。更に金属ガラス材料はその合金構成によって様々な優れた機能性を有するため、それらの優れた機能的なナノ構造の創製は、触媒を始め、高性能デバイス、精密工学機器等の技術開発に大いに貢献できる。
【0008】
東北大学の井上グループは、通常の金属やアモルファス合金には見られない明瞭なガラス転移を示す金属ガラスの過冷却液体状態を安定化することにより、極めてサイズの大きな「バルク状の金属ガラス」を創出し、日本発の新素材材料として世界的な注目を集めている。金属ガラスは転位がないため塑性変形に対する抵抗が強く、超高強度、高弾性伸び、低ヤング率、高耐食性等の優良な材料特性を実現している。最新の報告では直径30ミリのZr基バルク金属ガラスの製造に成功している〔非特許文献6〕。
【0009】
一方、これら金属ガラスの機械的特性は、精密微小機械やマイクロマシーン部品としての機械的強度要求を十分に満たしており、その実用化が近年急速に進みつつあり、超精密ギヤ(直径0.3mm)を内蔵した世界最小ギヤードモータの材料として実用化している〔非特許文献7〕。このモータの耐久負荷テストでは鉄鋼(SK4)ギヤに比べ約100倍の寿命が得られることが報告されている。
【0010】
これら金属ガラスナノワイヤの製造方法として、本発明者は、リボン状または棒状の金属ガラスを、その端部で上下に固定せしめ且つその下端部を牽引することを可能とし、酸化を防止できる雰囲気中において、その下端部の牽引下、(a)移動式熱加熱フィラメントを当該リボン状または棒状の金属ガラス試料に対し垂直に接触させる、(b)上下端に電極を固定し通電と破断直前に通電を遮断する、又は(c)当該リボン状または棒状の金属ガラス試料をレーザー加熱する、のいずれか一を施し、金属ガラスを過冷却液体領域まで急速加熱せしめ、形成された金属ガラスナノワイヤを急速冷却することにより、当該ナノワイヤの金属ガラス状態を維持せしめて、金属ガラスナノワイヤを製造する方法を既に特許出願〔特許文献2〕しているが、この方法は大量生産には適していない。
【0011】
一方、アモルファス合金から効率よく針状粒子を製造する方法として、内壁面が部分的に凹没してなる凹部を有する筒状体を用い、該筒状体の前記内壁面に沿って冷却液を旋回させることにより発生した冷却液流に、急冷固化によりアモルファス合金になり得る組成の溶融金属を、前記冷却液流に向けて落下または噴出させる方法が知られているが、この方法により製造される金属粉末は、平均外径が10μm、平均長さは1mm程度であり、触媒として用いられるには、更なる細径化や長尺化が望まれる〔特許文献3〕。
【0012】
また、金属ガラスナノワイヤが触媒として用いられる場合、比表面積を大きくするためには、細径化された金属ガラスナノワイヤが複数本用いられることが好ましい。しかしながら、触媒活性を高めるためには、複数本の金属ガラスナノワイヤから構成される金属ガラスナノファイバーが用いられる必要があるが、直径がナノレベルまで細くなればなるほど、製造された金属ガラスナノワイヤの取り扱いが難しくなり、個々の金属ガラスナノワイヤを製造し、次いで金属ガラスナノファイバーを形成して触媒として利用することが困難であるという問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、溶融した金属ガラス又はその母合金を、過冷却状態においてガスアトマイズすることで、金属ガラスナノワイヤにアモルファス状態の構造を保持せしめたまま、直径が非常に小さな金属ガラスナノワイヤ、並びに、複数本の金属ガラスナノワイヤが絡み合った状態の金属ガラスナノワイヤが製造できることを特徴としている。以下、本発明の製造方法、該製造方法により製造された金属ガラスナノワイヤ及び複数本の金属ガラスナノワイヤが絡み合った状態の金属ガラスナノワイヤ、並びに複数本の金属ガラスナノワイヤが絡み合った状態の金属ガラスナノワイヤを含む触媒についてさらに具体的に説明する。
【0029】
まず、本明細書中、金属ガラス(metallic glass)〔ガラス合金(glassy alloy)ともいう〕とは、アモルファス合金〔amorphous alloy〕の一種であるが、ガラス転移点が明瞭に現れるものを指しており、このガラス転移点を境界として高温側にある過冷却液体領域を示す点で、従来のアモルファス合金とは区別されるものである。すなわち、金属ガラスの熱的挙動を、示差走査熱量計を用いて調べると、温度上昇にともないガラス転移温度(T
g)を過ぎると吸熱温度領域が現れ、結晶化温度(T
x)近傍で発熱ピークを示し、さらに加熱すると融点(T
m)で吸熱ピークが現れる。金属ガラスの組成成分によって各温度点は異なる。過冷却液体温度領域(ΔT
x)は、ΔT
x=T
x−T
gで定義され、ΔT
xが50〜130℃と非常に大きいことが、冷却液体状態の安定性が高く結晶化を回避しアモルファス状態を維持できる。従来のアモルファス合金ではこのような熱的挙動は見られずT
gが明確に現れない。
【0030】
金属ガラスナノワイヤとは、金属ガラスがナノサイズの1本のワイヤ状になったものを指す。また、複数本の金属ガラスナノワイヤが絡み合った状態とは、前記金属ガラスナノワイヤが少なくとも2本以上絡み合ってファイバー状態になったものをいい、以下においては、この状態の金属ガラスナノワイヤを金属ガラスナノファイバーと記載することもある。
【0031】
本発明で用いられる「ナノ」とは、三次元空間を表すディメンジョンx,y,zのうちの少なくとも二つがナノサイズであることを意味する場合を指すものと理解してよく、ここで「ナノサイズ」とは1000ナノメートル(nm)以下の大きさのことを指しており、典型的には100nm以下の大きさを指すものであってよい。本発明で「ナノサイズ」とは、金属ガラスの種類に応じて1000nm以下の大きさの中から、様々なサイズとすることも可能であり、典型的には100nm以下の大きさのものも包含される。本発明の金属ガラスナノワイヤでは、ワイヤの直径が上記「ナノサイズ」であることを指すと理解してよい。以上から明らかなごとく、本発明の金属ガラスナノワイヤは、ディメンジョンの一つ、例えば、長さが上記ナノサイズ以上であってよく、例えば、1マイクロメートル(μm)以上の大きさであるものも包含される。
【0032】
バルク状の金属ガラスを作製するためには、過冷却液体状態で安定している必要があり、これを実現するための組成として、
(1)3成分以上の多元系であること、
(2)主要3成分の原子寸法比が互いに12%以上異なっていること、
(3)主要3成分の混合熱が互いに負の値を有していること、
が経験則として報告されている(A.Inoue,Stabilization of metallic supercooled liquid and bulk amorphous alloys,Acta Mater.,48,279−306(2000)参照)。
【0033】
金属ガラス材料の組成としては、様々な例が知られており、例えば、特開平3−10041号公報、特開平3−158446号公報、特開平7−252559号公報、特開平9−279318号公報、特開2001−254157号公報、特開2001−303218号公報、特開2004−42017号公報、特開2007−92103号公報、特開2007−247037号公報、特開2007−332413号公報、特開2008−1939号公報、特開2008−24985号公報、米国特許第5429725号明細書などに開示されている物が挙げられる。
【0034】
金属ガラスとしては、Ln−Al−TM、Mg−Ln−TM、Zr−Al−TM(ここで、Lnは希土類元素、TMは遷移金属を示す)系等が見出されているのをはじめとして、最近までに数多くの組成が報告されている。ガラス合金としては、Mg基、希土類金属基、Zr基、Ti基、Fe基、Ni基、Co基、Pd基、Pd−Cu基、Cu基、Al基などのバルクガラス合金が包含されてよい。
【0035】
過冷却液体領域の温度幅が広く、加工性に優れるアモルファス合金として、X
aM
bAl
c(X:Zr,Hf,M:Ni,Cu,Fe,Co,Mn、25≦a≦85、5≦b≦70、0≦c≦35)が知られており、例えば、特開平3−158446号公報などを参照することができる。
【0036】
Zr基金属ガラスは、合金の中でZrを他の元素よりも多く含有し、Zr以外に、第4族元素(例えば、Zr以外のTi,Hfなど)、第5族元素(例えば、V,Nb,Taなど)、第6族元素(例えば、Cr,Mo,Wなど)、第7族元素(例えば、Mnなど)、第8族元素(例えば、Feなど)、第9族元素(例えば、Coなど)、第10族元素(例えば、Ni,Pd,Ptなど)、第11族元素(例えば、Cu,Agなど)、第13族元素(例えば、Alなど)、第14族元素(例えば、Siなど)、第3族元素(例えば、Y、ランタノイド元素など)などからなる群から選択された1種又は2種以上の元素を含有するものが挙げられる(元素の周期表は、IUPAC Nomenclature of Inorganic Chemistry,1989に基づく、以下同様)。典型的な場合では、Zrの含有量は、Zr以外に含有せしめる元素によっても異なるが、合金全体に対して40質量%以上、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。具体的には、Zr
50Cu
40Al
10(以下、下付数字は原子%を示す。)、Zr
55Cu
30Al
10Ni
5、Zr
60Cu
20Al
10Ni
10、Zr
65Cu
15Al
10Ni
10、Zr
65Cu
18Al
10Ni
7、Zr
66Cu
12Al
8Ni
14、Zr
65Cu
17.5Al
7.5Ni
10、Zr
48Cu
36Al
8Ag
8、Zr
42Cu
42Al
8Ag
8、Zr
41Ti
14Cu
13Ni
10Be
22、Zr
55Al
20Ni
25、Zr
60Cu
15Al
10Ni
10Pd
5、Zr
48Cu
32Al
8Ag
8Pd
4、Zr
52.5Ti
5Cu
20Al
12.5Ni
10、Zr
60Cu
18Al
10Co
3Ni
9等が挙げられる。これらの中でも、Zr
65Cu
18Al
10Ni
7、Zr
50Cu
40Al
10、Zr
65Cu
15Al
10Ni
10、Zr
48Cu
32Al
8Ag
8Pd
4、Zr
55Cu
30Al
10Ni
5等のZr基ガラス合金が特に好ましいものとして挙げられる。
【0037】
金属ガラスとして、PdとPtとを必須元素とする金属ガラスが報告されており、例えば、特開平9−279318号公報などを参照することができる。また、金属ガラス材料としては、Ni
72−Co
(8-x)−Mo
x−Z
20(x=0,2,4又は6原子%、Z=メタロイド元素)が知られており、例えば、米国特許第5429725号明細書などを参照することができる。Pdの他、Nb,V,Ti,Ta,Zrなどの金属が水素透過性能を有することが知られており、このような金属を中心とする金属ガラスは、水素選択透過性を発揮し得る。
【0038】
さらに、金属ガラスとして、Nb−Ni−Zr系、Nb−Ni−Zr−Al系、Nb−Ni−Ti−Zr系、Nb−Ni−Ti−Zr−Co系、Nb−Ni−Ti−Zr−Co−Cu系、Nb−Co−Zr系や、Ni−V−(Zr,Ti)系、Ni−Cr−P−B系、Co−V−Zr系、Cu−Zr−Ti系などが挙げられ、例えば、特開2004−42017号公報などを参照することができる。具体的には、Ni
60Nb
15Ti
15Zr
10、Ni
65Cr
15P
16B
4等のNb−Ni−Ti−Zr系ガラス合金、Ni−Cr−P−B系ガラス合金などが特に好ましいものとして挙げられる。
【0039】
本発明においては、好適な金属ガラスとして、金属ガラスが複数の元素から構成され、その主成分として少なくともFe,Co,Ni,Ti,Zr,Mg,Cu,Pdのいずれかひとつの原子を30〜80原子%の範囲で含有するものが挙げられる。さらに、第6族元素(Cr,Mo,W)を10〜40原子%、第14族元素(C,Si,Ge,Sn)を1〜10原子%の範囲で、各グループから少なくとも1種類以上の金属原子を組み合わせてもよい。また、鉄族元素に、目的に応じて、Ca,B,Al,Nb,N,Hf,Ta,Pなどの元素が10原子%以内の範囲で添加されてあってもよい。これらの条件により、高いガラス形成能を有するものであってよい。
【0040】
本発明において用いる金属ガラスの好適なものとして、金属ガラス中のFe含有量としては、30〜80原子%が好適である。上記の金属ガラス組成は安定なアモルファス相の金属ガラス層を形成すると同時に加工の低温化にも貢献し、均一なガラス組織と結晶質金属組織の層状構造を、形成することができる。好ましい組成としては、例えば、Fe
76Si
9.6B
8.4P
6、Fe
43Cr
16Mo
16C
15B
10、Fe
75Mo
4P
12C
4B
4Si
1、Fe
52Co
20B
20Si
4Nb
4、Fe
72Al
5Ga
2P
11C
6B
4等が挙げられる。
【0041】
また、本発明において用いる金属ガラスの好適なものとして、Fe
100-a-b-cCr
aTM
b(C
1-XB
XP
y)
c〔ただし、式中、TM=V,Nb,Mo,Ta,W,Co,Ni,Cuの少なくとも一種以上、a,b,c,x,yは、それぞれ5原子%≦a≦30原子%,5原子%≦b≦20原子%,10原子%≦c≦35原子%,25原子%≦a+b≦50原子%,35原子%≦a+b+c≦60原子%,0.11≦x≦0.85,0≦y≦0.57〕で示される組成を有するものが挙げられる。当該金属ガラスは、例えば、特開2001−303218号公報などを参照できる。
【0042】
当該金属ガラスとしては、軟磁性Fe基金属ガラス合金であってよく、例えば、特開2008−24985号公報並びにそこで引用されている全ての特許文献及び参考文献を参照できる。軟磁性金属ガラス合金としては、例えば、Fe−(Al,Ga)−メタロイド系、(Fe,Co,Ni)−(Zr,Hf,Nb,Ta)−B系、(Fe,Co)−Si−B−Nb系、(Fe,Co)−Ln−B系、Fe−Si−B−P−(C)系などが包含されてよい。また、硬磁性金属ガラス合金も知られており、そうした硬磁性金属ガラス合金としては、例えば、Fe−Nd−B系、Fe−Pr−B系、Fe−Pt−B系などが包含されてよい。
【0043】
Co基金属ガラスとしては、例えば、特開2007−332413号公報並びにそこで引用されている全ての特許文献及び参考文献を参照できる。Ni基金属ガラスとしては、例えば、特開2007−247037号公報並びにそこで引用されている全ての特許文献及び参考文献を参照できる。
【0044】
Ti基金属ガラスとしては、例えば、特開平7−252559号公報、特開2008−1939号公報並びにそこで引用されている全ての特許文献を参照できる。好ましい組成としては、例えば、Ti
50Cu
25Ni
15Zr
5Sn
5、Mg
50Ni
30Y
20等が挙げられる。
【0045】
本発明においては、これらの金属ガラスが溶融され、過冷却状態においてガスアトマイズされるが、金属ガラスに代え、その母合金を用いてもよい。通常、金属ガラスの製造過程は、始めに目的とする組成比に金属元素を秤量し、均一な元素分布状態を得るため十分に溶解して母合金を製造する。金属ガラスは、この母合金を再度溶解して液体急冷することにより製造される。本発明におけるガスアトマイズ装置は、母合金を十分に溶融することができ、これを用いて金属ガラスナノワイヤ、及び金属ガラスナノファイバーを製造することができる。
【0046】
本発明の製造方法により製造された金属ガラスナノワイヤには、様々な形状の金属ガラスナノワイヤが包含されてよく、さらに、金属ガラスの種類により各種の形態のものが許容されるが、例えば、ナノスケールの、細線、ファイバー(ナノファイバー)、フィラメント、ロッド(ナノロッド)などが挙げられる。
【0047】
当該金属ガラスナノワイヤにおいては、細線の直径は1000nm以下の大きさであり、典型的には、100nm以下の大きさ、あるいは、50nm以下の大きさをもつものが挙げられる。そして、金属ガラスナノファイバーは、これらの金属ガラスナノワイヤが絡み合って構成されている。
【0048】
該金属ガラスワイヤの直径は、金属ガラスの種類により各種のサイズとすることも可能であり、1000nm以下の大きさの中から、様々なサイズとすることも可能であり、例えば、10nm以下の大きさのものも包含される。当該金属ガラスナノワイヤの細線長さとしては、1μm以上とすることも可能であり、10μm又はそれ以上、例えば、0.1mm又はそれ以上、1.0cm又はそれ以上のものも得られる。
【0049】
さらに、別の具体例の一つでは、本金属ガラスナノワイヤとしては、直径がおおよそ50〜100nmで、細線の長さがおおよそ20〜300μmのものが挙げられる。また、別の具体例では、本金属ガラスナノワイヤは、直径がおおよそ100〜500nmで、細線の長さがおおよそ300〜10,000μmのものが挙げられる。さらなる具体例の一つでは、本金属ガラスナノワイヤとしては、直径がおおよそ500〜1000nmで、細線の長さがおおよそ500〜10,000μmのものが挙げられる。上記金属ガラスナノワイヤなどの線材の太さは、必ずしも全て同一である必要はなく、ある程度は大小であるものも包含されてよい。
【0050】
次に、本発明のガスアトマイズに用いられる装置について説明する。
図1は、本発明に適用可能なガスアトマイズ装置の一例を示した図である。
【0051】
ガスアトマイズ装置1は、原料となる金属ガラス又は母合金を入れるサファイアるつぼ2、該サファイアるつぼ2の外周に巻かれ、金属ガラス又は母合金を溶融する誘導加熱コイル3、溶融した金属ガラス又は母合金を噴出口4に送る溶融流5、ガス注入口6を少なくとも含む装置である。誘導加熱コイル3で金属ガラス合金を加熱して融点以上へ溶融した後、過冷却温度領域まで過冷却して粘性を高めた溶融流5は、図示されていない圧力発生装置によりサファイアるつぼ2上部の圧力と噴出口4下部との圧力差が
0.0098〜0.049N/mm2(0.1〜0.5kgf/cm
2)となるように設定された噴出圧力でガス拡散ゾーン7に向かって噴出・急冷される。溶融流5は、ガス注入口6から注入された高圧のガスにより、ガス拡散ゾーン7内でアトマイズされることにより、金属ガラスナノワイヤ及び金属ガラスナノファイバーが製造される。金属ガラスナノワイヤ及び金属ガラスナノファイバーは、ガスアトマイズ装置1の下部にある図示されていないチャンバー内に堆積される。
【0052】
一般的に、ガスアトマイズで粉末を製造する際には、表面張力により球形の形状を得るため原料の粘性を低くする必要がある。従って、高品質の粉体を製造するために原料を融点以上の高温で液相状態にして用いるが、本発明においては、溶融した金属ガラスが溶融流5となり噴出口4から噴出され、ガス拡散ゾーン7でアトマイズされる際に、過冷却液体状態であることが必要である。金属ガラスの過冷却液体温度は、用いられる金属ガラスの組成により異なるが、アモルファス状態を維持しつつ、適度な粘性を有することから金属ガラスの形状をワイヤ形状へ容易に変化させることができる。そのため、金属ガラスの溶融流5は、噴出圧力によりガス拡散ゾーン7へ噴出され、高圧ガス圧力によりアトマイズされる。これにより、ナノワイヤやナノファイバーをはじめ、シート状、楕円状、球状、西洋梨形等、様々な形状の金属ガラスが形成される。
【0053】
金属ガラスナノワイヤのアスペクト比(ナノワイヤ長さ/ナノワイヤ直径)は、噴出口4から噴出される際の金属ガラスの温度により調整することができる。
図2は、金属ガラスの温度とアスペクト比の関係を表すシミュレーショングラフと実測値との関係を表すものであり、
図2中、横軸のTmは金属ガラスの融点、Tは金属ガラスの温度を示し、縦軸のLは金属ガラスナノワイヤの長さ、Dは金属ガラスナノワイヤの直径を表し、○は後述する実施例5及び6の実測値である。なお、金属ガラスの融点(Tm)は材料によって異なる為、温度(T)で割ることで、何れの金属ガラス材料であっても、融点と同じ温度の時は1となるように規格化した。
【0054】
図2のシミュレーショングラフは、経験的に確認されている曳糸性の概念である下記数式(1)から以下のように求められる。
【0056】
上記数式(1)中、Lは曳糸長、Dは金属ガラスナノワイヤの直径、Vは曳糸速度、η(T)は粘度、γ(T)は表面張力を表す。
【0057】
上記γ(T)は、一般的にEotvos’法と呼ばれる下記数式(2)で表される。
【0059】
上記数式(2)中、T
Cはγ(T
C)=0を満たす臨界温度、V
mは体積、k
γはEotvos定数を表し、γ(T
C)は温度と直線関係にあることを示している。
【0060】
対照的に、金属ガラスのη(T)は、Vogel−Fulcher−Tammann則(VFT)で、下記数式(3)で表される。
【0062】
上記数式(3)中、η
0は無限温度の粘度、D
*はフラジリティー要素、T
0はVFT温度を表す。上記数式(3)より、η(T)は、温度が下がるほど指数関数的に増加することが明らかである。
【0063】
アスペクト比(L/D)を求める下記数式(4)は、数式(2)及び(3)を数式(1)に代入することで求められる。
【0065】
図2は、上記数式(4)の温度(T)を変化させた時のシミュレーション結果を示している。
【0066】
Fe
76Si
9.6B
8.4P
6とZr
50Cu
40Al
10のパラメータであるkγ・Vm
-2/3、T
C、η
0、D
*及びT
0は、静電浮上法(“Arai,T. Thesis(Gakusyuin University,2010). For Fe−MG, we used γ(T)=1.06×10-3(3061−T) and η(T)=4×10
-5exp{7×657/(T−657)”、及び“Yokoyama,Y.;Ishikawa,T.;Okada,J.T.;Watanabe,Y.;Nanao,S.;Inoue,A.J.Non−Cryst.Solids 2009,355,317−322. For Zr
50Cu
40Al
10, we used γ(T)=1.9×10
-4(9393−T) and η(T)=4×10
-5exp{11×496/(T−496)”参照)によって決定した。
【0067】
Zr
65Al
10Ni
10Cu
15、Pd
43Ni
10Cu
27P
20、Pt
57.5Cu
15Mo
14Er
2C
15B
6及びAu
49Ag
5.5Pd
2.3Cu
26.9Si
16.3について、η(T)のパラメータは“Schroers,J.Acta.Mater.2008,56,471−478”で報告されている数値を用い、γ=1N/mのケースを想定した。
【0068】
対照として、SiO
2及びZr、Fe、Pd、Ptの純金属について、融点上にプロットした。前記対照のT及びTmは、“Iida,T.;Guthrie,R.I.L. The physical properties of liquid metals.(Clarendon Press,Oxford,(1988)p.120−184.”、 “Angell,C.A. Science 1995,267,1924−1935.”、 “Walker,D.;Mullins Jr.,O.Contrib.Mineral.Petrol.1981,76,455−462.”、及び“Kaptay,G.Z. Metallkd. 2005,96,1−8.”に記載されている値を用いた。
【0069】
図2から明らかなように、Zrベースの金属ガラスナノワイヤのアスペクト比は、噴出口4から噴出される際の金属ガラスの温度が融点と同じ場合は約100であるが、噴出される際の金属ガラスの温度を下げると(Tm/T>1)、アスペクト比は指数関数的に大きくなる。
【0070】
一方、Fe
76Si
9.6B
8.4P
6及び純金属の噴出口4から噴出される際の温度を融点(Tm)と同じ温度にすると、アスペクト比は1になる。したがって、用いる金属材料の融点に応じて噴出口4から噴出される際の金属ガラスの温度を変えることにより、アスペクト比を変化させることができる。
【0071】
前記の通り金属ガラスとアモルファス合金の違いは、過冷却液体状態の有無であるので、本発明は過冷却液体状態を持つ金属ガラスの全てに適用されるが、ΔT
xが大きい金属ガラスほど、粘性流動による超塑性加工が促進される。したがって、金属ガラスナノワイヤを製造するには、材料としてΔT
xが大きい程好ましい。特に、金属ガラスナノファイバーは、複数本の金属ガラスナノワイヤが絡み合って構成されるので金属ガラスナノワイヤが大量に製造されることが好ましく、用いられる金属ガラスは、ΔT
xがより大きいことが好ましい。これらの観点から、前記で例示した金属ガラスのなかでも、金属ガラスナノワイヤを製造するには、ΔT
xが50℃程度のFe系が好ましく、更に、金属ガラスナノファイバーを製造するには、ΔT
xが100℃程度のZr系がより好ましい。
【0072】
本発明のガスアトマイズ法に用いられるガスは、アルゴン、ヘリウム、窒素などのガス、であれば特に限定されないが、それらの中でも、不活性で、また経済面から、アルゴンがより好ましい。
【0073】
本発明では、加熱により過冷却液体状態にある金属ガラスが高圧の不活性ガスによりガス拡散ゾーンにおいて粉砕され、金属ガラスナノワイヤが製造されることから、不活性ガスの圧力が高いほど、金属ガラスナノワイヤが製造されやすい。また、金属ガラスナノファイバーは、複数本の金属ガラスナノワイヤが絡み合ってから構成されることから、金属ガラスナノファイバーを製造するためには金属ガラスナノワイヤが大量に製造されることが好ましく、不活性ガスの圧力が高い方が好ましい。そのため、ガス圧力は、用いられる金属ガラスの粘度により異なるが、一般的に、
0.98N/mm2(10
kgf
/c
m2)以上が典型的で、
6.9N/mm2(70
kgf
/c
m2)以上が好ましい。更に、金属ガラスナノファイバーを製造するには、
6.9N/mm2(70
kgf
/c
m2)以上が典型的で、
8.8N/mm2(90
kgf
/c
m2)以上が好ましい。また、ガス圧の上限は、ガスボンベの圧力上限である
10N/mm2(105
kgf
/c
m2)が一般的であるが、金属ガラスナノワイヤ、金属ガラスナノファイバーが製造できる範囲内であれば、特に限定はされない。
【0074】
本金属ガラスナノワイヤは、ナノマテリアル(NMS)の鍵となる材料であり、電極材、モーター材料、ナノエレクトリニクス材料、ナノ医療デバイス、ナノセンサー、オプティカル材料などとして有用である。金属ガラスナノワイヤは、例えば、磁気材料、セミコンダクターの配線、電極材などを含め、医療機器、ナノテクノロジー応用機器、磁気材料、エレクトリニクス機器などにおいて利用できる。本金属ガラスナノワイヤ、金属ガラスナノファイバーなどは、その機械的強度が局所的な欠陥・転位に影響されず、ナノ領域において超高強度材料、超弾性伸び材料として有用である。
【0075】
金属ガラス、特にバルク金属ガラスは、粘い金属であり、高い引張強度、大きな弾性限界値を示し、破壊強度も大きく、高靭性を示すなど、高硬度、高弾性で、非常に高強度の材料で、優れた耐食性、耐磨耗性を示す。金属ガラスは、低ヤング率を示し、平滑性、転写性も有する材料で、高比表面積材料でもあり、高透磁率、耐傷性もあり、磁性材料としても有望である。金属ガラスは、その優れた機械強度、耐食性、表面平滑性、精密鋳造性、超塑性などの優れた特性を生かし、それを電磁弁、アクチュエータ、スプリング部材、位置センサー、受信センサー、磁気センサー、張力センサー、歪センサー、トルクセンサー、圧力センサーなどの用途利用も期待され、内視鏡・ロータブレータ・血栓吸引カテーテルなどの医療機器、精密工学機器、産業用小型・高性能デバイスを含めた産業機器、検査ロボット、産業用ロボット、マイクロファクトリーなどへの応用も考えられている。金属ガラス材料は、さらに、例えば、切削工具、バネ材料、高周波トランス、チョークコイル、高速機構部材、精密機械部品、精密光学部材、宇宙材料、電極材料、燃料電池部材、輸送機器部材、航空機部材、精密医療機器、原子力プラント、生体材料、化学プラントなどへの用途・適用が期待できる。したがって、金属ガラスナノワイヤなどは、上記金属ガラスの特性を生かす分野やマイクロマシーンや半導体・精密電子部品の分野など広範な分野での利用が期待される。
【0076】
また、ナノワイヤはナノ電子機械システム構築を行う際の重要な構成材料要素である。よって、金属ガラスの持つ超高強度、超弾性伸び、超軟磁性などの優れた特性を、ナノ領域で、本発明の金属ガラスナノワイヤなどを使用して活用することが可能であり、ナノ電子機械システムの基板材料としてのみでなく、磁気インピーダンス効果を利用したナノ磁気センサー、水素吸蔵による抵抗値変化を敏感検出できる水素センサー利用できる。
【0077】
さらに、本発明の金属ガラスナノファイバーは、原料やガスアトマイズの条件を調製することにより、金属ガラスナノファイバーが成長して大きな塊となり、ピンセット等で容易に取り扱うことができるようになる。また、金属ガラスナノファイバーは、金属ガラスナノワイヤが絡み合ったものであるので比表面積が大きく、担体に固定せずに単独でも用いることができるので、触媒として好適である。また、金属ガラスナノファイバーは、高分子ファイバーやガラスファイバーとは異なり金属材料をベースとしているので燃料電池電極、イオンフィルターに利用できる。
【0078】
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。
【実施例】
【0079】
<金属ガラスの調製>
(Fe系金属ガラスの調製)
東洋電化工業製の市販のフェロシリコン(Si:〜76.6wt%)約34.9g、フェロボロン(〜14.6wt%)約78.2g、フェロ燐(〜23.4wt%)約74.3gと工業用純鉄312.6gを秤量し、高周波溶解炉を用いて高真空に真空引きの後、Arガス中において溶解を行った。充分に溶解を行った後に銅鋳型に流し込んで固め、Fe
76Si
9.6B
8.4P
6を作成した。
【0080】
(Zr系金属ガラスの調製)
市販の金属元素を目的組成に秤量し、充分な真空状態を得た後Ar雰囲気で充満させたアーク溶解炉を用いて合金化を行った。アーク溶解法においては、充分な均一状態が得られるように、一つの溶解合金量を40g以下に限定し、最低4回は反転させて再溶解を繰り返し、Zr
65Cu
18Al
10Ni
7を得た。
【0081】
(実施例1)
上記(Fe系金属ガラスの調製)で調製したFe
76Si
9.6B
8.4P
6の組成を有する金属ガラス40gをガスアトマイズ装置(真壁技研(株):小型ガスアトマイズ装置 VF−RQP−100)のるつぼ2に入れ、誘導加熱コイル3で1300Kの溶湯とし、該るつぼ2の底にある噴出口4を通して
0.029N/mm2(0.3kgf/cm
2)の噴出圧力で溶融流5噴出させ、ガス拡散ゾーン7において
1.8N/mm2(18kgf/cm
2)の高圧アルゴンガスを用いて、るつぼ2内の溶湯が無くなるまで噴霧した。
図3は、実施例1で得られた金属ガラスナノワイヤの走査電子顕微鏡(scanning electron microscopy;SEM)写真である。球状粒子、不規則形状の薄片、楕円状の金属ガラス粒子と共に、金属ガラスナノワイヤが形成されることが確認された。形成された金属ガラスナノワイヤ数の平均密度は1.9本/mm
2、球状の金属ガラス粒子の平均粒子径は8.8μmであった。
【0082】
(実施例2)
ガス圧を、
4.1N/mm2(42kgf/cm
2)とした以外は、実施例1と同様に金属ガラスのガスアトマイズを行った。形成された金属ガラスナノワイヤ数の平均密度は7.2本/mm
2、球状の金属ガラス粒子の平均粒子径は7.1μmであった。
【0083】
(実施例3)
ガス圧を、
6.9N/mm2(70
kgf
/cm
2)とした以外は、実施例1と同様に金属ガラスのガスアトマイズを行った。形成された金属ガラスナノワイヤ数の密度は20.5本/mm
2、球状の金属ガラス粒子の平均粒子径は5.1μmであった。
【0084】
(実施例4)
ガス圧を、
9.3N/mm2(95kgf/cm
2)とした以外は、実施例1と同様に金属ガラスのガスアトマイズを行った。
図4(B)は、実施例4で得られた金属ガラスナノワイヤのSEM写真である。不規則形状の薄片はほとんど見られず、球状粒子、楕円状の金属ガラス粒子と共に、金属ガラスナノワイヤが形成されていることが確認された。形成された金属ガラスナノワイヤの密度は30.5本/mm
2、球状の金属ガラス粒子の平均粒子径は4.5μmであった。
図4(C)は、
図4(B)のSEM写真の金属ガラスナノワイヤの一部を拡大したものである。形成された金属ガラスナノワイヤの直径は、110nmであった。
図4(D)は、
図4(B)のSEM写真の金属ガラスナノファイバー部分を拡大したものである。直径50μmの球状粒子に金属ガラスナノワイヤが絡みついて金属ガラスナノファイバーが局所的に形成されていることが確認された。
【0085】
図5は、実施例1〜4で製造された、金属ガラスナノワイヤの平均密度及び金属ガラス粒子の平均粒子径の関係を表す図である。
図5から明らかなように、ガス圧が高いほど、金属ガラス粒子の直径が小さくなると共に、単位面積当たりの金属ガラスナノワイヤの平均密度が大きくなる。
【0086】
(実施例5)
上記(Zr系金属ガラスの調製)で調製したZr
65Cu
18Al
10Ni
7の組成を有する金属ガラス40gを実施例1と同様のガスアトマイズ装置のるつぼ2に入れ、誘導加熱コイル3で1100Kの溶湯とし、該るつぼ2の底にある噴出口4を通して
0.029N/mm2(0.3kgf/cm
2)の噴出圧力で溶融流5を噴出させ、ガス拡散ゾーン7において
10N/mm2(105kgf/cm
2)の高圧アルゴンガスを用いて、るつぼ2内の溶湯が無くなるまで噴霧した。
図6は、実施例5で得られた金属ガラスナノファイバーの走査電子顕微鏡写真である。実施例5で形成された金属ガラスナノファイバーを形成する個々のワイヤの直径は、50〜200nmでほぼそろっていた。また、
図7は、実施例5で得られた金属ガラスナノファイバーの写真であり、金属ガラスの超高強度と高弾性を保持したナノワイヤで構成されているので、約1cmの塊として得られ、ピンセットで容易に取り扱うことができた。
【0087】
図8は、実施例5で得られた金属ガラスナノファイバーのX線回折の結果を表すもので、アモルファス構造を示す緩やかな単一のピーク(ハローピーク)が確認された。また、
図9は、実施例5で得られた金属ガラスナノファイバーの示差走査熱量測定を表すもので、649Kに明確なガラス転移点のピークが確認された。以上により、実施例5で得られた金属ガラスナノファイバーは、アモルファス構造を持ちガラス質を維持していることが確認された。
【0088】
また、
図6の走査電子顕微鏡写真から任意の10本の金属ガラスナノワイヤを選択してアスペクト比を調べ、
図2のシミュレーショングラフ上にプロットしたところ(Tm/T=1.04)、シミュレーションとほぼ同じ結果となり、アスペクト比のシミュレーションと実測値がほぼ同じになることが確認できた。
【0089】
(実施例6)
金属ガラスの溶湯温度を1150Kとした以外は、実施例5と同様に金属ガラスナノファイバーを形成し、任意の10本の金属ガラスナノワイヤを選択してアスペクト比を調べ、
図2のシミュレーショングラフ上にプロットしたところ(Tm/T=1.00)、シミュレーションとほぼ同じ結果となり、アスペクト比のシミュレーションと実測値がほぼ同じになることが確認できた。