【文献】
畑陽一郎,スマートジャパン,太陽光も「ロボ」の時代、空撮自在・異常検知,日本,アイティメディア株式会社,2014年 9月17日,インターネット,URL,http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1409/16/news158.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された検査装置は、太陽電池モジュールを保持する架台と走行部とを係合させて移動するため、架台の形状によっては使用できない場合がある。また、特許文献1に開示された検査装置は、架台から離れて移動することはできないため、山間部に建設された太陽光発電所など、多数の架台が互いに離れて設置されている太陽光発電設備においては架台ごとに検査装置を設ける必要があり、設置やメンテナンスの費用が高額となる。
【0008】
そこで本発明は、太陽電池モジュールの設置位置や配列構造にかかわらず、太陽発電モジュールの洗浄の要否を容易に且つ低コストで判断し、効率よく洗浄等のメンテナンスを行うことができる太陽光発電設備のメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に従えば、
複数の太陽電池モジュールが電気的に直列接続されたストリングを複数有する太陽光発電設備のメンテナンス方法であって、
前記複数のストリングの少なくとも1つのストリングの表面画像を無人飛行体に搭載された撮像装置を用いて取得することと、
前記取得した表面画像に基づいて前記少なくとも1つのストリングの汚染状態を判断することと、
前記少なくとも1つのストリングを洗浄する必要があるか否かを、前記汚染状態に基づいて判断することと、
前記少なくとも1つのストリングのうち、洗浄を要すると判断されたストリングを構成する太陽電池モジュールの光沢度を計測することと、
光沢度の測定後に、洗浄を要すると判断されたストリングを構成する前記太陽電池モジュールの表面を洗浄することとを含むメンテナンス方法が提供される。
【0010】
本発明の方法によれば、ストリングの洗浄の要否判断を無人飛行体に搭載された撮像装置を用いて取得した画像に基づいておこなっている。そのため洗浄の要否判断を低コストで行うことができる。また、必要と判断されたストリングについてのみ洗浄作業を行うためメンテナンスの効率もよい。
【0011】
本発明の方法は、前記太陽電池モジュールの表面の洗浄後に、洗浄前に光沢度を計測した太陽電池モジュールの光沢度を再度計測することを更に含んでも良い。洗浄度に再度計測を行い洗浄前の計測値と比較することで、洗浄の効果を確認することができる。
【0012】
本発明の方法は、前記複数のストリングの少なくとも1つの異常を電気的計測により検出することを更に含んでもよく、前記撮像装置を用いて表面画像を取得する際には、異常が検出されたストリングの表面画像を取得してもよい。異常が検出されたストリングのみを撮像の対象とすることで、メンテナンスの効率を更に高めることができる。
【0013】
本発明の方法において、前記少なくとも1つのストリングの近傍にはカラーコードが配置されていてもよく、前記撮像装置を用いた前記少なくとも1つのストリングの表面画像の取得は、前記少なくとも1つのストリングを構成するすべての太陽電池モジュールの表面と前記カラーコードとを、他の太陽電池モジュールの表面を撮像することなく連続的に撮像することを含んでもよい。また本発明の方法において、前記少なくとも1つのストリングの近傍には2つのカラーコードが配置されていてもよく、前記撮像装置を用いた前記少なくとも1つのストリングの表面画像の取得は、前記2つのカラーコードの一方と、前記少なくとも1つのストリングを構成するすべての太陽電池モジュールの表面と、前記2つのカラーコードの他方とを、他の太陽電池モジュールの表面を撮像することなく順次撮像することを含んでもよい。この方法を用いることにより、ストリングと撮像された画像との対応関係を明確とすることができる。
【0014】
本発明の方法は、前記カラーコードを目印として、前記撮像装置により取得された画像の中から前記少なくとも1つのストリングの表面画像を抽出することを更に含んでもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のメンテナンス方法は太陽電池モジュールの設置位置や配列構造にかかわらず、容易に且つ低コストで太陽発電モジュールの洗浄の要否を判断し、効率よく洗浄等のメンテナンスを行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
本発明の実施形態について、
図1〜
図9を参照して説明する。
【0018】
初めに、本実施形態のメンテナンス方法が適用される太陽光発電設備の一例として、太陽光発電所SFの構成例を説明する。
【0019】
太陽光発電所SFは、
図1に示す通り、複数の区画SECに分割して配置された多数の太陽電池モジュールMを含む。
図1においては、横方向に2列、縦方向に5列の区画SECが示されているが、これは太陽光発電所SFの一部分であり、太陽光発電所SFは実際には更に多くの太陽電池モジュールM及び区画SECを有している。太陽光発電所SFの出力はその有する太陽電池モジュールMの枚数に比例して大きくなる。
【0020】
図1に示す太陽光発電所SFにおいては、区画SECごとに、横方向に12枚、縦方向に2枚の太陽電池モジュールMが配置されている(
図2)。各太陽電池モジュールMは、太陽光をより効率よく受けることができるように、架台Fによって、地表に対して所定の傾きで保持されている。
【0021】
太陽光発電所SFにおける電気的接続は次の通りである。まず、区画SEC内に横一列に配置された12枚の太陽電池モジュールMが直列に接続され、ストリングSTが形成されている(
図2)。そして、
図3に示す通り、複数のストリングSTは接続箱JBで並列に接続され、接続箱JBも同様に集電箱CBで並列に接続されている。集電箱CBは、パワーコンディショナPCに接続されている。
【0022】
以上の構成により、各太陽電池モジュールMにおいて発電された直流電力は、接続箱JB及び集電箱CBを介して集約されたのち、パワーコンディショナPCに送電される。そして、パワーコンディショナPCにおいて交流電力に変換され、外部に送電される。
【0023】
上記した太陽光発電所SFの構成は一例であり、区画SEC内の太陽電池モジュールMの枚数や配置、ストリングSTを形成する太陽電池モジュールMの枚数や配置は太陽光発電所によって様々である。また、上記した太陽光発電所SFは集電箱CB及びパワーコンディショナPCを一つのみ有していたが、メガソーラ等の出力の大きい太陽光発電所は、集電箱CB及びパワーコンディショナPCを複数備えている。
【0024】
次に、本実施形態のメンテナンス方法について説明する。
【0025】
本実施形態のメンテナンス方法は、
図4のフローチャートに示す通り、ストリングの異常を検知するストリング異常検知工程S101と、異常が検知されたストリングSTの表面を撮像するストリング撮像工程S102と、撮像した画像をストリング配置図上に展開する表面状態表示工程S103と、ストリング配置図上に展開した画像に基づいてストリングの汚染状態を評価する汚染状態評価工程S104と、評価した汚染状態に基づいてストリング洗浄の要否を判断する洗浄要否判断工程S105と、洗浄が必要であると判断されたストリングに含まれる太陽電池モジュールMの光沢度を計測する光沢度計測工程S106と、洗浄が必要であると判断されたストリングに含まれる太陽電池モジュールMの洗浄を行う洗浄工程S107と、洗浄した太陽電池モジュールMの光沢度を計測する光沢度再計測工程S108とを含む。
【0026】
<ストリング異常検知工程>
ストリング異常検知工程S101では、ストリングSTごとに発電量や電流‐電圧特性曲線(I‐V曲線)等の計測を行い、異常を有するストリングSTを特定する。
【0027】
発電量やI‐V曲線の計測は、ストリングSTに接続された接続箱JBに設けられた端子を用いて行うことができる。異常の有無の判断は、例えば発電量が所定の閾値以下であるか否かに基づいて行うことができる。あるいは、I‐V曲線の形状の理想形状からの乖離の程度に基づいて判断することもできる。
【0028】
<ストリング撮像工程>
ストリング撮像工程S102では、撮像装置を搭載した無人飛行体を使用して、ストリング異常検知工程S101において特定されたストリングSTを構成する太陽電池モジュールMの表面を撮像する。無人飛行体は無線操作の可能な任意の無人飛行体(ラジコンヘリ、ドローン等)であってよく、撮像装置は動画撮影が可能な任意の撮像装置(ビデオカメラ等)であってよい。撮像装置は、無人飛行体の底部に取り付けられており、その撮像装置のアングルやズームなどの設定は、手動又は遠隔操作により調整することができる。
【0029】
無人飛行体を使用してストリングSTを構成する太陽電池モジュールMの表面を撮像する際には、ストリングST単位で動画撮影が行われるように無人飛行体を操作する。換言すれば、ストリングSTを構成するすべての太陽電池モジュールM(本実施形態では12枚)の表面が、ストリングSTを構成しない他の太陽電池モジュールMの表面を撮影することなく連続的に撮影されるように無人飛行体を操作する。
【0030】
具体的には例えば、
図5の経路R1で示す通り無人飛行体を蛇行させて、縦方向に配列されたストリングST
1、ST
2、ST
3、ST
4の表面(各ストリングを構成する太陽電池モジュールMの表面)をそれぞれひとまとまりの動画として撮影する。或いは、
図5の経路R2で示す通り無人飛行体を直線的に飛行させて、横方向に配列されたストリングST
5、ST
6の表面(各ストリングを構成する太陽電池モジュールMの表面)をそれぞれひとまとまりの動画として撮影する。
【0031】
ここで、ストリングSTを保持する架台Fの各ストリングSTの両端部に対応する位置には、
図2に示す通り、予め各ストリングに1対1で対応するカラーコードCDが貼付されている。したがって、ストリングSTを構成するすべての太陽電池モジュールMの表面を連続的に撮影して得られるひとまとまりの動画は、その直前及び直後に対応するカラーコードCDの映像を有している。カラーコードについては後述する。
【0032】
無人飛行体は手動で操作しても良く、GPSを使用して自動操縦を行っても良い。
【0033】
<表面状態表示工程>
表面状態表示工程S103では、ストリング撮像工程S102で撮像されたストリングSTを構成する太陽電池モジュールMの表面画像を、ストリングSTの配置図の上に表示する。その具体的な手順の一例は次の通りである。
【0034】
まず、ストリング撮像工程S102で撮像された動画を、各ストリングSTごとに分割して抽出する。ストリングSTを構成するすべての太陽電池モジュールMの表面を連続的に撮影して得られるひとまとまりの動画は、上記の通り、その直前及び直後にカラーコードCDの映像を有している。したがってカラーコードCDを目印として動画を分割することで、各ストリングSTと動画との対応関係を把握しながら動画の分割及び抽出を行うことができる。
【0035】
具体的には、動画の内、ストリングST
1(
図5)に対応するカラーコードCDに挟まれたひとまとまりの動画はストリングST
1を構成する太陽電池モジュールMの表面画像として抽出することができ、ストリングST
2(
図5)に対応するカラーコードCDに挟まれたひとまとまりの動画はストリングST
2を構成する太陽電池モジュールMの表面画像として抽出することができる。
【0036】
カラーコードCDは任意に設定してよいが、例えば0〜9の各数字ごとに異なる色を割り振り、この色の組合せによりストリングSTの番号を表示することができる。その他、カラーコードCDは、各太陽光発電設備におけるストリングSTの管理方法(区分方法)に応じて適宜設定することができる。
【0037】
次に、ストリングSTごとに分割、抽出した動画から、ストリングST内の太陽電池モジュールMの表面状態を示す静止画を、各太陽電池モジュールMごとに取り出し、これをストリングSTの配置図上に表示する。表示の一例を
図6に示す。
【0038】
図6は、太陽光発電所SFの一区画SECに含まれる2つのストリングSTの配置図であり、その上に、各ストリングSTに含まれる12枚の太陽電池モジュールMの表面状態を示す静止画を表示したものである。この表示例においては、上側のストリングSTにおいては、左から7枚目までの太陽電池モジュールMは、その表面のほぼ全域に塵が堆積しており、残る5枚の太陽電池モジュールMについても、その表面のほぼ半分の領域に塵が堆積している。一方で、下側のストリングSTにおいては、左から4枚目までの太陽電池モジュールMの表面全域に塵が堆積しているが、左から5〜7枚目の太陽電池モジュールMでは表面の約3割の領域に塵が堆積しているのみであり、残る太陽電池モジュールMについては塵の堆積は見られない。
【0039】
<汚染状態評価工程>
汚染状態評価工程S104では、表面状態表示工程S103で表示した画像に基づいて太陽電池モジュールの汚染状態の評価を行う。
【0040】
評価は、太陽電池モジュールの汚染状態が、
図7の分類表のレベル0〜5のいずれに属するかを決定することにより行う。この決定は様々な方法で行うことができるが、一例として太陽電池モジュールMの表面にどの程度の領域に塵が堆積しているか(すなわち堆積率)に基づいて決定を行うことができる。具体的には例えば、塵の堆積が太陽電池モジュールMの0パーセント以上且つ10パーセント未満の領域にしかなければ「清浄」と判断し、塵の堆積が10パーセント以上且つ20パーセント未満の領域であれば「やや清浄」と判断し、塵の堆積が20パーセント以上且つ40パーセント未満の領域であれば「やや汚れている」と判断し、塵の堆積が40パーセント以上且つ60パーセント未満の領域であれば「汚れている」と判断し、塵の堆積が60パーセント以上且つ80パーセント未満の領域であれば「大変汚れている」と判断し、塵の堆積が80パーセント以上の領域であれば「非常に汚れている」と判断する。その後、
図7の分類表に基づいて、各太陽電池モジュールMの汚染レベルを決定する。
【0041】
太陽電池モジュールMの汚染状態が、
図7の分類表のレベル0〜5のいずれに属するかを決定するその他の方法として、太陽電池モジュールM上に塵がどの程度の厚さで堆積しているかに基づいて決定を行うことができる。具体的には例えば、分類表の汚染レベル0〜5と対応づけられた太陽電池モジュールM表面の状態を示す見本(色見本)を6つ準備してこれを用いる。太陽電池モジュールMの表面上に堆積する塵が厚くなるにしたがって、太陽電池モジュールMの表面は本来の色から白っぽい塵の色に近づいていく。そのため、レベル0に対応する見本(色見本)は太陽電池モジュールMの本来の色を示し、レベル5を示す見本(色見本)は塵の白っぽい色を示す。表面状態表示工程S103で表示した太陽電池モジュールMの表面画像のうち最も塵が多く堆積している部分の色と色見本とを比較することによって、太陽電池モジュールMの汚染レベルを決定することができる。
【0042】
またその他の方法として、上記した塵の堆積率に基づく決定方法と塵の厚さに基づく決定方法とを組み合わせた方法を用いることもできる。具体的には例えば、ある太陽電池モジュールMに対して、堆積率に基づく方法と塵の厚さに基づく方法の両方を適用し、各方法により求められた汚染レベルの単純平均を当該太陽電池モジュールMの汚染レベルとすることができる。
【0043】
上記のうち、堆積率に基づく方法により決定した、
図6のストリングSTの汚染レベルを
図8に示す。上側のストリングSTにおいては、左から7枚目までの太陽電池モジュールMは、その表面のほぼ全域に塵が堆積しているため「モジュール表面の状態」は「非常に汚れている」であり、
図7の分類表より「汚染レベル」は「5」である。残る5枚の太陽電池モジュールMについては、その表面のほぼ半分の領域に塵が堆積しているため「モジュール表面の状態」は「汚れている」であり、
図7の分類表より「汚染レベル」は「3」である。
【0044】
下側のストリングSTにおいては、左から4枚目までの太陽電池モジュールMは、その表面のほぼ全域に塵が堆積しているため、上側のストリングSTの左から7枚目までの太陽電池モジュールMと同様に「汚染レベル」は「5」である。左から5〜7枚目の太陽電池モジュールMは表面の約3割の領域に塵が堆積しているため「モジュール表面の状態」は「やや汚れている」であり、
図7の分類表より「汚染レベル」は「2」である。残る太陽電池モジュールMについては塵の堆積は見られないため「モジュール表面の状態」は「清浄」であり、
図7の分類表より「汚染レベル」は「0」である。
【0045】
<洗浄要否判断工程>
洗浄要否判断工程S105においては、汚染状態評価工程S104で求めた太陽電池モジュールMの汚染レベルに基づいて、ストリングSTの洗浄の要否を判断する。
【0046】
この工程における洗浄の要否判断は、ストリングSTに含まれる太陽電池モジュールMの内、所定枚数以上の太陽電池モジュールMの汚染レベルが、所定のレベル以上であるか否かに基づいて行われる。
【0047】
具体的には例えば、ストリングSTに含まれる12枚の太陽電池モジュールMの内、半数(6枚)以上の太陽電池モジュールMの汚染レベルが4以上であるか否かに基づいて行うことができる。この場合は、
図8に示す2つのストリングSTの内、上側のストリングSTは洗浄が必要であると判断されるが、下側のストリングSTは洗浄が不要であると判断される。或いは、汚染の進行の初期段階で洗浄作業を行うことを望む場合にはストリングSTに含まれる12枚の太陽電池モジュールの内3分の1(4枚)以上の太陽電池モジュールMの汚染レベルが3以上であるか否かに基づいて洗浄の要否を判断してもよい。この場合は、
図8に示す2つのストリングSTはともに洗浄が必要であると判断される。このように、閾値とする太陽電池モジュールMの枚数及び汚染レベルは、洗浄をどの程度の頻度で行うかに基づいて任意に設定することができる。
【0048】
<光沢度計測工程>
光沢度計測工程S106においては、洗浄要否判断工程S105において洗浄が必要であると判断されたストリングSTについて、光沢計を用いた光沢度計測を行う。
【0049】
光沢度計測は、洗浄が必要であると判断されたストリングSTのそれぞれから、汚染レベルの高い太陽電池モジュールMを所定の数だけ選び出し、これらについて行う。計測は、太陽電池モジュールMの表面の内、特に汚染されている部分を対象として行うことが望ましい。次いで、計測対象としたすべての太陽電池モジュールMの光沢度のうちの最大値Max1及び最小値Min1を記録し、更に計測対象としたすべての太陽電池モジュールMの光沢度の平均値Ave1を記録する。
【0050】
<洗浄工程>
洗浄工程S107においては、洗浄要否判断工程S105において洗浄が必要であると判断されたストリングSTの洗浄を行う。この時、洗浄が必要であると判断されたストリングSTに含まれる太陽電池モジュールMのすべてを洗浄対象としてもよく、あるいは洗浄が必要であると判断されたストリングSTに含まれる太陽電池モジュールMのうち、所定の汚染レベル以上のもの(例えば汚染レベル1以上のもの)のみを洗浄対象としてもよい。
【0051】
洗浄の方法は任意であるが、一例として、洗剤を塗布した後、温水を高圧で吹き付けてリンスする。周辺に交通量の多い道路が存在する太陽光発電設備では、排気ガスに含まれる油分がバインダの役割をはたして塵等を太陽電池モジュールMの表面に固着させている可能性が高い。また、周辺に森林等の多くの樹木が生える地域が存在する場合も、樹木から飛散される花粉の油分がバインダの役割をはたして塵等を太陽電池モジュールMの表面に固着させている可能性が高い。よって、これらの場合には洗剤を使用して油分を除去することが好ましい。
【0052】
<光沢度再計測工程>
光沢度再計測工程S108では、光沢度計測工程S108において光沢度計測の対象とした太陽電池モジュールMについて、光沢計を用いた光沢度計測を再度行う。
【0053】
次いで、光沢度計測工程S106と同様に、計測対象としたすべての太陽電池モジュールMの光沢度のうちの最大値Max2及び最小値Min2を記録し、更に計測対象としたすべての太陽電池モジュールMの光沢度の平均値Ave2を記録する。
【0054】
次いで、光沢度計測工程S106で記録した最大値Max1、最小値Min1、平均値Ave1と、光沢度再計測工程S107で記録した最大値Max2、最小値Min2、平均値Ave2とをそれぞれ比較し、洗浄により光沢度が回復したことを確認し、記録する。
【0055】
本実施形態のメンテナンス方法の効果は次の通りである。
【0056】
本実施形態のメンテナンス方法では、発電量や電流‐電圧特性曲線(I‐V曲線)等の計測により異常を有するストリングSTを容易に特定することができる。また異常が検知されたストリングSTのみを対象として無人飛行体を用いた撮像を行うため、すべてのストリングSTを撮像する場合に比べて、撮像に基づく洗浄要否判定を効率よく行うことができる。
【0057】
本実施形態のメンテナンス方法では、ストリングSTを構成する太陽電池モジュールMの表面状態を、無人飛行体を用いた撮像に基づいて把握している。したがって、太陽光発電設備内における太陽電池モジュールM及びストリングSTの配置がどのような態様であっても、ストリングSTを構成する太陽電池モジュールMの表面状態を容易に短時間で把握することができる。
【0058】
本実施形態のメンテナンス方法では、ストリングSTを保持する架台Fの、ストリングSTの両端部に対応する位置にカラーコードCDが貼付されており、ストリングSTと対応するカラーコードCDとが一連の映像に収まるように無人飛行体で撮像を行っている。したがって撮像した画像がどのストリングSTの画像であるかを、カラーコードCDを目印として容易に特定することができる。また、カラーコードCDを使用することにより、架台Fにアラビア数字等でストリング番号を表記する場合に比べて動画を分割する際の視認性が高くなるため、動画の分割をより的確に行うことができる。
【0059】
本実施形態のメンテナンス方法では、無人飛行体を使用して撮像した画像に基づいてストリングSTの汚染状態を評価し、この評価に基づいてストリングSTの洗浄の要否を判断している。したがって、ストリングSTの洗浄の要否を容易に且つ素早く行うことができる。
【0060】
上記の実施形態のメンテナンス方法において、以下に述べるような変形態様を行ってもよい。
【0061】
(1)無人飛行体に赤外線カメラも搭載し、ストリング撮像工程と平行して太陽電池モジュールMの表面を赤外線カメラで撮像してもよい。これにより、太陽電池モジュールMの表面温度を観察することができる。太陽電池モジュールMの表面温度情報は、不具合の早期発見のために大変有益であり、例えばホットスポット(局所的に発熱している箇所)の発見を太陽電池モジュールM内の不具合の特定につなげることができる。
【0062】
(2)上記実施形態のメンテナンス方法のストリング撮像工程において、動画撮影に代えて静止画の連続撮影を行っても良い。
【0063】
(3)上記実施形態のメンテナンス方法においては、架台のストリングSTの両端部に対応する位置にそれぞれカラーコードCDを貼付していたがこれには限られない。カラーコードCDはストリングSTの一端側にのみ貼り付けられていてもよいし、カラーコードCDが貼り付けられていなくてもよい。カラーコードCDを使用しない場合であっても、無人飛行体の飛行経路に基づき、撮影した画像とストリングSTとの対応を特定することができる。
【0064】
(4)上記実施形態においては、ストリングST内には太陽電池モジュールMが一列に配置されていたが、ストリングST内の太陽電池モジュールMは一列に配置されるとは限らず、例えば
図9に示すように2列に配置されることもある。
【0065】
このような場合にも、経路R3(
図9)に示す通り、まず1列目の太陽電池モジュールMを撮像したのち、Uターンして2列目の太陽電池モジュールMを撮像するように無人飛行体を操作することにより、ストリングSTを構成するすべての太陽電池モジュールMを、他の太陽電池モジュールMの表面を撮影することなく連続的に撮影することができる。
【0066】
図9においては、架台Fの左端に貼付された2つのカラーコードCDは左側のストリングSTと対応しており、架台Fの右端に貼付された2つのカラーコードCDは右側のストリングSTと対応している。したがって経路R3に沿って無人飛行体を飛行させて撮像を行った場合も、ストリングSTを構成するすべての太陽電池モジュールMの表面を連続的に撮影して得られるひとまとまりの動画は、その直前及び直後に、対応するカラーコードCDの映像を有する。
【0067】
(5)上記実施形態のメンテナンス方法において、表面状態表示工程S103を省くこともできる。太陽電池モジュールMの静止画をストリングSTの配置図上に表示することなく、撮像した画像をモニタ等で観察して、汚染状態を評価することができる。
【0068】
(6)上記実施形態のメンテナンス方法の汚染状態評価工程S104においては、太陽電池モジュールMの表面を塵が覆っている割合や塵の厚さに基づいて太陽電池モジュールMの汚染状態を評価していたがこれには限られない。
【0069】
太陽電池モジュールMの汚染状態を評価するその他の方法として、例えば参照情報との比較に基づいて評価を行うことができる。太陽電池モジュールMの汚染の原因としては、主に土砂や花粉等の塵(粉体)及び鳥の糞が知られている。したがって、これらによって汚染された太陽電池モジュールMの様子と当該太陽電池モジュールMの汚染レベルとを対応付けた参照情報を予め準備することで、汚染状態評価工程S104においては、表面状態表示工程S103で表示された太陽電池モジュールMの表面画像と参照情報との比較に基づいた汚染レベル評価が可能となる。
【0070】
参照情報の収集方法の一例は次の通りである。まず、汚染された太陽電池モジュールMの表面状態を撮像した後、当該太陽電池モジュールMの光沢度を計測する。次に計測した光沢度(またはこれから求められる光沢度比(後述))に基づいて、
図7の分類表から当該太陽電池モジュールMの汚染レベルを特定する。そして、特定した汚染レベルを表面状態の画像と関連付けて記憶する。この作業を様々な汚染状態にある太陽電池モジュールMに対して行うことにより、充実した参照情報を作成することができる。
【0071】
また、汚染レベルの特定をどのような方法で行う場合であっても、上記実施形態のメンテナンス方法を実施するたびに、汚染状態評価工程S104において太陽発電モジュールMの表面画像と、当該太陽発電モジュールの汚染レベルとの対応関係が決定される。これらの対応関係を、次回以降のメンテナンス時の参照情報として蓄積することができる。
【0072】
また、表面状態表示工程S103で表示された太陽電池モジュールMの表面画像と参照情報の比較は、画像マッチングを実行可能なソフトウェアを用いて行ってもよい。
【0073】
(7)上記実施形態のメンテナンス方法の光沢度計測工程S106において、洗浄対象であるストリングSTを構成する太陽電池モジュールMの光沢度を計測した後に、求めた光沢度を予め求めておいた標準モジュールの光沢度(新品状態の太陽電池モジュールMの光沢度。本実施形態では50)で除算し、光沢度比を求めてもよい。同様に光沢度再計測工程S108においても、光沢度比を求めてもよい。光沢度比の比較によっても、光沢度の回復を確認することができる。
【0074】
(8)上記実施形態のメンテナンス方法の光沢度計測工程S106及び光沢度再計測工程S108において、光沢計を用いた光沢度計測に加えて、洗浄対象であるストリングSTの電流‐電圧特性曲線(I‐V曲線)や発電量の計測を行っても良い。特に光沢度再計測工程S108においてI‐V曲線や発電量を計測してストリング異常検知工程S101での計測結果と比較することで、洗浄による太陽電池モジュールMの性能回復を確認することができる。
【0075】
(9)上記実施形態のメンテナンス方法において、ストリング異常検知工程S101を省いても良い。例えば太陽光発電設備の定期メンテナンスとして、ストリング異常検知工程S101を行うことなく、太陽光発電設備のすべてのストリングST又は所定のストリングSTに対してストリング撮像工程S102以下の工程を行うこともできる。
【0076】
本発明の特徴を維持する限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【解決手段】複数の太陽電池モジュールが電気的に直列接続されたストリングを複数有する太陽光発電設備のメンテナンス方法は、前記複数のストリングの少なくとも1つのストリングの表面画像を無人飛行体に搭載された撮像装置を用いて取得することと、前記取得した表面画像に基づいて前記少なくとも1つのストリングの汚染状態を判断することと、前記少なくとも1つのストリングを洗浄する必要があるか否かを、前記汚染状態に基づいて判断することと、前記少なくとも1つのストリングのうち、洗浄を要すると判断されたストリングを構成する太陽電池モジュールの光沢度を計測することと、光沢度の計測後に、洗浄を要すると判断されたストリングを構成する前記太陽電池モジュールの表面を洗浄する。