特許第5988285号(P5988285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5988285アンモニアを含む排ガスの処理装置および処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5988285
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】アンモニアを含む排ガスの処理装置および処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/58 20060101AFI20160825BHJP
   B01D 53/75 20060101ALI20160825BHJP
   F25J 1/00 20060101ALI20160825BHJP
   F25J 3/00 20060101ALI20160825BHJP
   C01C 1/02 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   B01D53/58ZAB
   B01D53/75
   F25J1/00 D
   F25J3/00
   C01C1/02 E
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-207103(P2015-207103)
(22)【出願日】2015年10月21日
【審査請求日】2015年12月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596059738
【氏名又は名称】株式会社島川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】松岡 茂
(72)【発明者】
【氏名】金 鍾列
(72)【発明者】
【氏名】田中 峰雄
【審査官】 松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−124156(JP,A)
【文献】 特開昭53−057034(JP,A)
【文献】 特開2000−212644(JP,A)
【文献】 特開平04−326901(JP,A)
【文献】 特表2011−527936(JP,A)
【文献】 特開平09−020515(JP,A)
【文献】 特開平04−347307(JP,A)
【文献】 特開平1−312368(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/132560(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/00−53/96
F25J 1/00−3/00
B01B 1/00−1/08
B01D 1/00−8/00
C01C 1/00−1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを含む排ガスを処理する装置であって、
前記アンモニアの少なくとも一部を固体化させるアンモニア固体化手段と、前記固体化したアンモニアを回収する固体化アンモニア回収手段とを含み、
前記アンモニア固体化手段を複数有し、
前記アンモニア固体化手段内部で前記アンモニアの少なくとも一部を固体化させるアンモニア固体化工程と、
前記アンモニア固体化手段内部の固体化したアンモニアを融解させて、液体アンモニアの状態で前記固体化アンモニア回収手段内部に回収する固体化アンモニア回収工程と、
前記固体化アンモニア回収工程後に、前記アンモニア固体化手段を冷却するアンモニア固体化準備工程と、を行い、
かつ、
前記複数のアンモニア固体化手段のそれぞれにおいて、前記各工程を、他のアンモニア固体化手段と時間をずらして行うことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記アンモニア固体化手段により、前記排ガス中のアンモニアの少なくとも一部を固体化して前記排ガス中から除去することで、前記排ガス中のアンモニアの含有量を低減させる請求項1記載の装置。
【請求項3】
アンモニアを含む排ガスを処理する方法であって、
請求項1または2記載の装置を用い、
前記アンモニア固体化手段内部で前記アンモニアの少なくとも一部を固体化させるアンモニア固体化工程と、
前記アンモニア固体化手段内部の固体化したアンモニアを融解させて、液体アンモニアの状態で前記固体化アンモニア回収手段内部に回収する固体化アンモニア回収工程と、
前記固体化アンモニア回収工程後に、前記アンモニア固体化手段を冷却するアンモニア固体化準備工程と、を含み、
かつ、
前記複数のアンモニア固体化手段のそれぞれにおいて、前記各工程を、他のアンモニア固体化手段と時間をずらして行うことを特徴とする方法。
【請求項4】
前記アンモニア固体化工程により、前記排ガス中のアンモニアの少なくとも一部を固体化して前記排ガス中から除去することで、前記排ガス中のアンモニアの含有量を低減させる請求項記載の方法。
【請求項5】
前記アンモニア固体化準備工程を、前記複数のアンモニア固体化手段の少なくとも一つにおいて常時行う、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
前記アンモニア固体化工程に先立ち、前記排ガス中のアンモニアの一部を液体化して回収するアンモニア液体化回収工程を含み、
前記アンモニア液体化回収工程後に前記排ガス中に残留したアンモニアを、前記アンモニア固体化工程において固体化する、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
さらに、前記アンモニア固体化工程に先立ち、前記排ガスを圧縮する排ガス圧縮工程を含む、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
さらに、前記アンモニア固体化工程または前記アンモニア液体化回収工程に先立ち、前記排ガスを圧縮する排ガス圧縮工程を含む、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを含む排ガスの処理装置および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス中にアンモニアが含まれる場合、アンモニアは毒性を有するため、例えば、国等が定める基準値以下にまで排ガス中のアンモニア濃度を低減する必要がある。
【0003】
排ガス中のアンモニアの除去方法としては、例えば、アンモニアの水に対する溶解性がきわめて高いことを利用して、水に溶かして除去する方法(水スクラバー)がある。また、例えば、アンモニアが塩基性であることを利用して、硫酸と塩を形成させて硫酸アンモニウムとして固体回収する方法(硫酸スクラバー)がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の環境保護に対する要請やISO14000による企業の自主的な化学物質の排出抑制目標等により、排ガス中のアンモニア排出量の抑制が重要な課題となっている。このため、排ガス中のアンモニア含有量を、きわめて低くすることが必要とされる。
【0005】
しかし、水スクラバーまたは硫酸スクラバーを用いた方法で、従来よりもアンモニア含有量を低減させようとすると、排ガスの多段階処理が必要であるため、処理が煩雑となる。例えば、水スクラバーであれば、きわめて大がかりな排水処理システムが必要になる。また、硫酸スクラバーの場合、固体回収した硫酸アンモニウムは、再利用が困難な場合は産業廃棄物として廃棄処理しなければならないため、処理が煩雑でコストがかかる。
【0006】
排ガス中のアンモニア除去の別の方法として、排ガスを冷却し、アンモニアを液体化させてから回収することが考えられる。しかし、この方法の場合、排ガス中のアンモニア濃度はアンモニア液体の蒸気圧に支配されるため、前記要求に応える程度にまで排ガス中のアンモニア含有量を低減することは困難である。また、さらに別の方法として、排ガス中のアンモニアを、燃焼、触媒分解等により除去する方法がある。しかし、この方法では、アンモニアの燃焼、触媒分解等により、別の有毒物質等(窒素酸化物等)が発生するおそれがある。窒素酸化物は大気汚染防止法によって排出基準が定められているため、前記窒素酸化物等の処置装置として脱硝設備等を設置する必要がある。このため、装置のメンテナンス等が煩雑でコストがかかる。
【0007】
以上の理由により、従来の装置および方法では、排ガス中のアンモニア含有量を、前記要求に応える程度にまで低減することは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、排ガス中のアンモニア含有量をきわめて低くすることができる、アンモニアを含む排ガスの処理装置および処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の装置は、アンモニアを含む排ガスを処理する装置であって、前記アンモニアの少なくとも一部を固体化させるアンモニア固体化手段を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の方法は、アンモニアを含む排ガスを処理する方法であって、前記アンモニアの少なくとも一部を固体化させるアンモニア固体化工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、燃焼、触媒分解等の煩雑でコストがかかる装置および方法を用いなくても、アンモニアを単に液体化するのみの方法等と比較して、排ガス中のアンモニア含有量を低くすることが可能である。すなわち、本発明によれば、排ガス中のアンモニア含有量をきわめて低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明による装置および方法の一例を模式的に示す図である。
図2図2は、本発明による装置および方法の別の一例を模式的に示す図である。
図3図3は、本発明による装置および方法において、アンモニア固体化手段を複数用いる場合の、前記アンモニア固体化手段およびそれを用いた固体化アンモニア回収工程の一例を模式的に示す図である。
図4図4は、アンモニアの飽和蒸気圧の計算結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により、なんら限定されない。
【0014】
前述のとおり、アンモニアを水に溶かして除去する方法、アンモニアを液体化させてから回収する方法等では、排ガス中のアンモニア含有量を十分に低減させることは困難であった。
【0015】
本発明者らは、前記問題点についてアンモニアの物性特性の観点から検討を重ねた結果、アンモニアの飽和蒸気圧に問題があることを見出した。そして、この問題を解決するために、アンモニアを固体化させて排ガス中から除去し、または回収することを見出し、本発明に到達した。以下、具体的に説明する。
【0016】
図4のグラフに、アンモニアの飽和蒸気圧の計算結果の一例を示す。ただし、同図は、理論計算結果の一例であって、本発明をなんら限定するものではない。同図において、横軸は、アンモニアの温度(K)であり、縦軸は、飽和蒸気圧(bar)である。同図において、■は、アンモニアの融点(約196Kすなわち−77℃)以上におけるアンモニアの飽和蒸気圧のデータをプロットしたものである。◇は、前記アンモニアの融点以下におけるアンモニアの飽和蒸気圧の計算値である。この計算値は、前記融点以上における飽和蒸気圧の実測データに基づいてアンモニアの温度と飽和蒸気圧との関係の理論式(同図中に記載)を算出し、その理論式に温度を当てはめて飽和蒸気圧を計算した数値である。
【0017】
同図の■で示すように、アンモニアが液体状態では、排ガス中のアンモニアの飽和蒸気圧は、一定値以下には下がらない。このため、排ガス中のアンモニア含有量をそれ以下に低減することは困難である。したがって、アンモニアを水に溶かして除去する方法、および、アンモニアを液体化させてから回収する方法では、排ガス中のアンモニアを除去または回収できる量に限界があった。本発明者らは、この点に着目し、アンモニアを融点以下の温度で固体化させれば、アンモニアの飽和蒸気圧が低いために、排ガス中のアンモニアの除去または回収の効率を向上できることを見出し、本発明に到達した。
【0018】
本発明の装置は、前記アンモニア固体化手段により、前記排ガス中のアンモニアの少なくとも一部を固体化して前記排ガス中から除去することで、前記排ガス中のアンモニアの含有量を低減させる装置であっても良い。この場合、本発明の装置は、アンモニアを含む排ガスを処理する装置(排ガス処理装置)であるとともに、前記排ガス中のアンモニアの含有量を低減するアンモニア含有量低減装置であるということもできる。
【0019】
また、本発明の装置は、さらに、前記固体化したアンモニアを回収する固体化アンモニア回収手段を含んでいても良い。この場合、本発明の装置は、アンモニアを含む排ガスを処理する装置(排ガス処理装置)であるとともに、前記排ガス中のアンモニアを回収するアンモニア回収装置であるということもできる。本発明のアンモニア回収装置は、例えば、前記アンモニア固体化手段を複数有していても良い。なお、本発明において、「固体化したアンモニアを回収する」とは、固体化したアンモニアを固体状態のまま回収しても良いが、例えば、融解させて液体アンモニアにしてから回収するか、または気化させてから回収しても良い。
【0020】
本発明の方法は、前記アンモニア固体化工程により、前記排ガス中のアンモニアの少なくとも一部を固体化して前記排ガス中から除去することで、前記排ガス中のアンモニアの含有量を低減させる方法であっても良い。この場合、本発明の方法は、アンモニアを含む排ガスを処理する方法(排ガス処理方法)であるとともに、前記排ガス中のアンモニアの含有量を低減するアンモニア含有量低減方法であるということもできる。
【0021】
また、本発明の方法は、さらに、前記固体化したアンモニアを回収する固体化アンモニア回収工程を含んでいても良い。この場合、本発明の方法は、アンモニアを含む排ガスを処理する方法(排ガス処理方法)であるとともに、前記排ガス中のアンモニアを回収するアンモニア回収方法であるということもできる。
【0022】
本発明のアンモニア回収方法は、例えば、本発明のアンモニア回収装置を用い、前記アンモニア固体化工程において、前記アンモニア固体化手段内部で前記アンモニアを固体化させ、前記固体化アンモニア回収工程において、前記固体化アンモニア回収手段内部に前記固体化アンモニアを回収しても良い。また、本発明のアンモニア回収方法は、例えば、さらに、前記固体化アンモニア回収工程後に、前記アンモニア固体化手段を冷却するアンモニア固体化準備工程を含んでいても良い。
【0023】
本発明のアンモニア回収方法は、例えば、前記アンモニア固体化手段を複数有する本発明のアンモニア回収装置を用い、前記複数のアンモニア固体化手段のそれぞれにおいて、前記アンモニア固体化工程、前記固体化アンモニア回収工程、および前記アンモニア固体化準備工程を行うとともに、前記複数のアンモニア固体化手段において、前記各工程を、時間をずらして行っても良い。この場合において、前記アンモニア固体化準備工程を、前記複数のアンモニア固体化手段の少なくとも一つにおいて常時行うようにしても良い。
【0024】
本発明の排ガス処理方法は、例えば、前記アンモニア固体化工程に先立ち、前記排ガス中のアンモニアの一部を液体化して回収するアンモニア液体化回収工程を含み、前記アンモニア液体化回収工程後に前記排ガス中に残留したアンモニアを、前記アンモニア固体化工程において固体化しても良い。これにより、例えば、前記排ガス中のアンモニア含有量をさらに低減可能であるか、または、アンモニアの回収効率をさらに向上可能であるという効果が得られる。
【0025】
本発明の排ガス処理方法は、例えば、前記アンモニア固体化工程または前記アンモニア液体化回収工程に先立ち、前記排ガスを圧縮する排ガス圧縮工程を含んでいても良い。これにより、前記排ガス中のアンモニアガスの分圧を高めることができるので、例えば、前記排ガス中のアンモニアの除去効率がさらに高くなり、前記排ガス中のアンモニア含有量をさらに低減可能であるか、または、アンモニアの回収効率をさらに向上可能であるという効果が得られる。
【0026】
本発明の排ガス処理方法によれば、例えば、排ガス中のアンモニア処理効率(回収効率)99.9%以上を確保することも可能である。また、例えば、アンモニアの固化(固体化)温度等を最適化することにより、99.9999%以上の非常に高い処理効率が見込まれる。ただし、これらの数値は例示であり、本発明をなんら限定するものではない。また、前記排ガス中のアンモニア処理効率の目標値は、特に限定されないが、理想的には100%である。前記「処理効率」とは、本発明の排ガス処理装置に導入されたアンモニア量から、本発明の排ガス処理装置から排出されたアンモニア量を減算し、その値を前述の導入されたアンモニア量で除算した値の百分率である。
【0027】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例のみには限定されない。
【実施例1】
【0028】
図1に、本発明の排ガス処理装置およびそれを用いた本発明の排ガス処理方法の一例を示す。同図の装置は、前記アンモニアの少なくとも一部を固体化させるアンモニア固体化手段を含む。また、同図の方法は、前記アンモニア固体化手段により、前記アンモニアの少なくとも一部を固体化させるアンモニア固体化工程を行う。このアンモニア固体化手段および固体化工程により、前記排ガス中のアンモニアの少なくとも一部を固体化して前記排ガス中から除去することで、前記排ガス中のアンモニアの含有量を低減させることができる。したがって、同図の装置は、本発明のアンモニア含有量低減装置でもあり、同図の方法は、本発明のアンモニア含有量低減方法でもある。また、同図の装置は、さらに、前記固体化したアンモニアを回収する固体化アンモニア回収手段を含んでいるため、本発明のアンモニア回収装置でもある。また、同図に示す方法は、前記アンモニア回収手段を用いて前記固体化したアンモニアを回収する固体化アンモニア回収工程を含むため、本発明のアンモニア回収方法でもある。
【0029】
図示のとおり、この装置は、排ガス導入手段10と、圧縮機20と、アンモニア回収手段(貯蔵手段)30、40および50と、熱交換器100、200、300および400とを含む。アンモニア回収手段(貯蔵手段)30、40および50は、特に限定されないが、例えば、アンモニアを貯蔵しておくことができる容器(タンク)等で良い。図示の装置では、液体窒素を用いた冷却により、アンモニアの少なくとも一部を固体化して回収する。なお、図1中において、符号「N2」は、窒素ガスを表し、「LN2」は、液体窒素を表す。「HE」は、Heat Exchangerすなわち熱交換器を表す。図中の符号Aで表す矢印は、アンモニアを含む排ガスまたは前記排ガスからアンモニアが除去された排ガスの経路を示す。符号Bで表す矢印は、前記排ガス中のアンモニアが液体化された液体アンモニアの経路を示す。符号Cで表す矢印は、前記排ガス中のアンモニアが固体化された固体化アンモニア、または、前記固体化アンモニアが融解した液体アンモニアの経路を示す。符号Dで表す矢印は、前記液体窒素が気化した低温の窒素ガス(冷媒)の経路を示す。また、熱交換器中の、縦線の入った四角形は、前記排ガス、または前記低温の窒素ガスが、熱交換器中を通過して冷媒として働くことを表す。図示のように、アンモニアを含む排ガスは、熱交換器100、200、300および400を前記順序で通過し、その途中でアンモニアが液体化および固体化されてアンモニア回収手段(貯蔵手段)30、40および50内に回収(貯蔵)される。そして、アンモニアが除去(回収)された排ガスが、熱交換器300および100を前記順序で通過して大気中に排出される。液体窒素が気化した低温の窒素ガス(冷媒)は、熱交換器400、300および100を前記順序で通過し、または、熱交換器200および100を前記順序で通過し、その後に窒素ガスとなって大気中に排出される。
【0030】
図1の装置を用いた排ガス処理方法は、例えば、以下のようにして行うことができる。以下に説明する方法は、前記排ガス中のアンモニア含有量低減方法であるとともに、前記排ガス中のアンモニア回収方法でもある。まず、排ガス導入手段(ヘッダー)10から、アンモニアを含む排ガスを導入する。排ガス導入手段10は、例えば、工場の生産ラインに直結しており、前記生産ラインから排出される排ガスを、圧縮機(コンプレッサ)20に送り込む。前記排ガスは、アンモニア(NH)を含む以外は特に限定されないが、例えば、アンモニア以外に、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、窒素ガス(N)、水素ガス(H)等の沸点が−196℃(77K)以下のガスのうち1種類または複数種類を含んでいても良い。つぎに、圧縮機20により、前記排ガスを加圧し、圧縮する。つぎに、前記圧縮した排ガスを、熱交換器100に導入し、冷却する。熱交換器100の内部には、前述のとおり、アンモニアが除去された排ガスと、低温の窒素ガス(液体窒素が気化したもの)とが通過して冷媒として働き、それらにより熱交換器100が冷却され、さらに前記アンモニアを含む排ガスが冷却される。このとき、前記排ガスが、前記排ガス中のアンモニア分圧に応じた液化温度に冷却されることで、アンモニアの液化が開始される。前記アンモニアを含む排ガスの、熱交換器100に導入されるときの圧力は、特に限定されないが、例えば0.2〜1.0MPaであり、アンモニアの分圧は、特に限定されないが、例えば、前記排ガスの圧力の1〜20%の圧力であり、温度は、特に限定されないが、例えば20〜40℃である。この排ガスを、熱交換器100で、例えば、−60〜−40℃に冷却する。熱交換器100に導入されるときの前記排ガスの圧力を、なるべく高くしておく(すなわち、高圧に圧縮することで、アンモニアの分圧をなるべく高くする)方が、アンモニアの除去および回収の効率が良くなるが、安全性等も考慮して適切な圧力とすることが好ましい。
【0031】
つぎに、前記アンモニアを含む排ガスを、熱交換器100から熱交換器200に導入し、熱交換器200内部でアンモニアの大部分を液化させる。熱交換器100の内部には、前述のとおり、低温の窒素ガスが通過して冷媒として働き、それらにより熱交換器200が冷却され、さらに前記アンモニアが冷却されて液体化される。前記アンモニアを含む排ガスの、熱交換器200に導入されるときの圧力は、特に限定されないが、例えば0.2〜1.0MPaであり、アンモニアの分圧は、特に限定されないが、例えば0.002〜0.01MPaであり、温度は、特に限定されないが、例えば−60〜−40℃である。この排ガスを、熱交換器200で、例えば、−75〜−65℃に冷却する。前記冷却温度は、例えば、アンモニアの凝固点(融点)である−77℃よりもわずかに高い温度(例えば−75℃)等であっても良い。
【0032】
熱交換器200による冷却で液体化(液化)したアンモニアは、アンモニア回収手段(貯蔵手段)30内部に回収(貯蔵)される。このように、アンモニア固体化工程に先立ち、排ガス中のアンモニアの一部を液体化して回収する工程は、前記「アンモニア液体化回収工程」に該当する。前記液体化したアンモニアは、さらに、より大量のアンモニアを貯蔵可能なアンモニア回収手段(貯蔵手段)50内部に移送されて回収(貯蔵)される。
【0033】
一方、前記液体化されたアンモニアを除去された排ガスは、アンモニア回収手段(貯蔵手段)30から熱交換器300内に導入される。熱交換器300の内部には、前述のとおり、アンモニアが除去された排ガスと、低温の窒素ガスとが通過して冷媒として働き、それらにより熱交換器300が冷却され、さらに排ガスが冷却される。熱交換器300内に導入された前記排ガスには、液体化により除去しきれなかったアンモニアが含まれている。その除去しきれなかったアンモニアを、熱交換器300により冷却して固体化する(アンモニア固体化工程)。これにより、前記排ガス中の前記除去しきれなかったアンモニアが除去される。すなわち、熱交換器300は、本発明の「アンモニア固体化手段」に該当する。熱交換器300に導入されるときの前記排ガスの圧力は、特に限定されないが、例えば0.2〜1.0MPaであり、アンモニアの分圧は、特に限定されないが、例えば0.002〜0.01MPaであり温度は、特に限定されないが、例えば−75〜−60℃である。この排ガスを、熱交換器300で、例えば、−180〜−160℃に冷却する。前記アンモニアの分圧と、アンモニアが固体化されたときのアンモニアの飽和蒸気圧とにより、アンモニアの除去および回収の効率が変動し、最終的に大気中に放出される排ガス中のアンモニア濃度にも影響する。したがって、これを考慮して、適切な温度および圧力を設定することが好ましい。
【0034】
熱交換器300内部で固体化されたアンモニアは、アンモニア回収手段(貯蔵手段)40内部に回収(貯蔵)され、さらに、より大量のアンモニアを貯蔵可能なアンモニア回収手段(貯蔵手段)50内部に移送されて回収(貯蔵)される。なお、固体化されたアンモニアをアンモニア回収手段(貯蔵手段)40内部に回収するとき、固体化アンモニアのまま回収しても良いが、融解させて液体アンモニアにしてから回収しても良い。一方、固体化されたアンモニアが除去された排ガスは、熱交換器300から熱交換器400内に導入され、熱交換器400内を通過する低温の窒素ガスとの熱交換によりさらに冷却される。
【0035】
熱交換器400によりさらに冷却された前記排ガスは、熱交換器300内に戻され、冷媒として働く。この時の前記排ガス(冷媒)の圧力は、特に限定されないが、例えば0.2〜1.0MPaであり、前記排ガス(冷媒)の温度は、特に限定されないが、例えば−185〜−160℃である。
【0036】
熱交換器300から排出された前記冷媒(アンモニアが除去された排ガス)は、熱交換器200内部を通さずに(熱交換器200内部を通すと熱源として働くため)、熱交換器100内に導入される。この時の前記排ガス(冷媒)の圧力は、特に限定されないが、例えば0.2〜1.0MPaであり、前記排ガス(冷媒)の温度は、特に限定されないが、例えば−60〜−40℃である。
【0037】
そして、前記アンモニアが除去された排ガスは、最終的に、熱交換器100から大気中に排出される。排出されるときの前記排ガスの圧力は、特に限定されないが、例えば0.1〜0.5MPaであり、温度は、特に限定されないが、例えば−10〜30℃である。
【0038】
なお、図1において、低温の窒素ガス(液体窒素が気化したもの)の温度および圧力は、特に限定されないが、例えば、圧力が0.2〜0.5MPa、温度が−187〜−170℃の状態で準備しても良い。熱交換器400に導入されるときの前記低温の窒素ガスの圧力は、例えば0.2〜0.5MPa、温度は、例えば−187〜−170℃である。熱交換器300に導入されるときの前記低温の窒素ガスの圧力は、例えば0.2〜0.5MPa、温度は、例えば−187〜−170℃である。熱交換器200に導入されるときの前記低温の窒素ガスの圧力は、例えば0.2〜0.5MPa、温度は、例えば−187〜−170℃である。熱交換器100に導入されるときの前記低温の窒素ガスの圧力は、例えば0.2〜0.4MPa、温度は、例えば−90〜−70℃である。最終的に大気中に放出されるときの前記低温の窒素ガスの圧力は、例えば0.15〜0.2MPa、温度は、例えば−10〜20℃である。
【0039】
また、図2に、本実施例の装置および方法の変形例を示す。図示のとおり、この装置は、図1の装置の構成要素に加え、さらに、冷凍機1000を含む。図中の符号Eで示した矢印は、冷凍機1000から発せられる冷媒の経路である。図示のとおり、前記冷気は、冷凍機1000から発せられて熱交換器200内部を通過し、熱交換器200を冷却する冷媒として働き、再び冷凍機1000内に戻って循環する。液体窒素が気化した低温の窒素ガスは、熱交換器400、300および100の内部を前記順序で通過し、冷媒として働いた後に大気中に放出される。アンモニアが除去されて熱交換器400でさらに冷却された排ガスは、熱交換器300、200および100の内部を前記順序で通過し、冷媒として働いた後に大気中に放出される。これら以外は、図2の装置およびそれを用いた方法(排ガス処理方法およびアンモニア回収方法)は、図1と同様である。
【0040】
図2の装置では、液体窒素に加え、さらに冷凍機を用いて排ガスを冷却するため、液体窒素の使用量を削減することが出来、液体窒素供給設備の小型化が可能である。このため、図2の装置によれば、排ガス中のアンモニア含有量低減およびアンモニア回収を、少ない液体窒素量で行うことが可能である。
【0041】
さらに、本実施例は、図1および2に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、熱交換器の数は、図1および2では4つであるが、さらに増やしても良いし、減らしても良い。また、アンモニア回収手段(貯蔵手段)の数も、図1および2では3つであるが、さらに増やしても良いし、減らしても良い。また、例えば、圧縮機で加圧した排ガスを、膨張タービン等で断熱膨張させることにより冷却しても良い。
【実施例2】
【0042】
図3に、本発明の排ガス処理装置およびそれを用いた本発明の排ガス処理方法において、アンモニア固体化手段を複数用いる場合の、前記アンモニア固体化手段およびそれを用いた固体化アンモニア回収工程の一例を模式的に示す。同図の装置は、図1および2の装置と同様、本発明のアンモニア含有量低減装置および本発明のアンモニア回収装置でもあり、これを用いて本発明のアンモニア含有量低減方法および本発明のアンモニア回収方法を行うことができる。図3において、図1および2と同様の構成要素は、同一の符号で示している。
【0043】
図示のとおり、この装置は、3つの冷却塔10001、10002および10003を有する。冷却塔10001、10002および10003は、互いに同じ構造および機能を有し、それぞれが、図示のとおり、熱交換器300および400を有する。冷却塔10001、10002および10003は、いずれも、排ガス中のアンモニアを固体化させる「アンモニア固体化手段」に該当し、後述するように、それぞれが行う工程を交互に切り替えながら、アンモニアの固体化を行う。固体化したアンモニアは、図1および2と同様に、アンモニア回収手段(貯蔵手段)40内に回収(貯蔵)される。図3において、符号Aで表す矢印は、図1および2と同様、アンモニアを含む排ガスまたは前記排ガスからアンモニアが除去された排ガスの経路を示す。符号Cで表す矢印は、図1および2と同様、前記排ガス中のアンモニアが固体化された固体化アンモニア、または、前記固体化アンモニアが融解した液体アンモニアの経路を示す。また、図3の装置において、前述した構成要素以外の部分は、図示を省略しているが、例えば、図1または2の構成要素(すなわち、排ガス導入手段10、圧縮機20、アンモニア回収手段[貯蔵手段]30および50、熱交換器100および200、冷凍機1000、液体窒素LN2、低温の窒素ガスN2、符号Bで表す矢印[液体アンモニアの経路]、符号Dで表す矢印[低温の窒素ガスの経路]、ならびに符号Eで表す矢印[冷凍機1000から発せられる冷媒の経路])と同じで良い。
【0044】
図3の装置を用いた排ガス処理方法は、例えば、以下のようにして行うことができる。以下に説明する方法は、前記排ガス中のアンモニア含有量低減方法であるとともに、前記排ガス中のアンモニア回収方法でもある。
【0045】
まず、図1および2と同様に、アンモニアを含む排ガスを排ガス導入手段(ヘッダー)10から導入して圧縮機(コンプレッサ)20により加圧(圧縮)し、熱交換器100および200で冷却し、さらに、熱交換器200による冷却で液体化(液化)したアンモニアをアンモニア回収手段(貯蔵手段)30内部に回収(貯蔵)する。そして、前記液体化されたアンモニアが除去された排ガスを、アンモニア回収手段(貯蔵手段)30から熱交換器300内(冷却塔10001、10002および10003内部)に導入する。熱交換器300内(冷却塔10001、10002および10003内部)に導入されるときの前記排ガスの温度は、特に限定されないが、例えば−75〜−60℃である。この排ガスを、冷却塔10001、10002および10003内で、例えば、−180〜−130℃に冷却する。前記アンモニアの分圧と、アンモニアが固体化されたときのアンモニアの飽和蒸気圧とにより、アンモニアの除去および回収の効率が変動し、最終的に大気中に放出される排ガス中のアンモニア濃度にも影響する。したがって、これを考慮して、適切な温度および圧力を設定することが好ましい。冷却塔10001、10002および10003内では、以下に説明するとおり、アンモニア固体化工程(固化)、固体化アンモニア回収工程(固体融解)、およびアンモニア固体化準備工程(固化準備)を、それぞれ行う。
【0046】
まず、図3の冷却塔10001に図示するように、アンモニア固体化工程(固化)を行う。すなわち、冷却塔10001内部で、図1および2と同様に、熱交換器400および300を前記順序で通過する低温の窒素ガス(図3では図示せず、液体窒素が気化したもの)により、前記排ガス中のアンモニアが冷却されて固体化される。なお、前記低温の窒素ガスは、図1または2と同様、熱交換器300を通過した後、熱交換器100(図3では図示せず)を通過して冷媒として働き、その後、大気中に放出される。そして、アンモニアの固体化によりアンモニアが除去された前記排ガスは、図示のとおり、熱交換器300を通過してアンモニア固体化のための冷媒として働く。その後は、前記排ガスは、図1および2と同様、熱交換器200および100(図3では図示せず)を前記順序で通過した後に、大気中に放出される。このようにしてアンモニア固体化工程を行った後に、冷却塔10001内部では、以下に説明する固体化アンモニア回収工程(固体融解)、およびアンモニア固体化準備工程(固化準備)を、前記順序で行う。また、冷却塔10002および10003内部でも、前記アンモニア固体化工程(固化)、固体化アンモニア回収工程(固体融解)、およびアンモニア固体化準備工程(固化準備)の各工程を、他の冷却塔と時間をずらしながら、同様に行う。
【0047】
固体化アンモニア回収工程(固体融解)について、図中の冷却塔10002の図示を用いて説明する。この工程では、前記アンモニア固体化工程で固体化されたアンモニアを、融解(液体化)させてアンモニア回収手段(貯蔵手段)40内部に回収する。アンモニア回収手段(貯蔵手段)40内部に回収(貯蔵)したアンモニアは、図1および2と同様、アンモニア回収手段50(図示せず)内に移送して回収する。その後の排ガスは、放出せずに、そのまま次のアンモニア固体化準備工程(固化準備)およびアンモニア固体化工程(固体回収)に移行し、前述のとおり、アンモニア固体化工程(固体回収)を行った後に前記排ガスを放出する。前記固体化アンモニアを融解させるための熱源は、特に限定されないが、例えば、各熱交換器を通過して冷媒としての役割を終えた窒素ガス(例えば、図1および2に示した、熱交換器100を通過した後の窒素ガス)を、冷却塔10002の上部等から少量導入し、熱源として用いても良い。具体的には、例えば、前記窒素ガス(熱源)を、熱交換器300および400内部と、それ以外の冷却塔10002内部とに通し、冷却塔10002内部の温度を−77℃(アンモニアの融点)以上にして前記固体化アンモニアを融解させる。前記窒素ガス(熱源)の温度は、特に限定されないが、例えば、−10〜20℃程度である。なお、前記窒素ガス(熱源)は、熱源として用いた後は、そのまま大気中に放出しても良いが、その少なくとも一部を、ヘッダー10(図3では図示せず)に導入し、排ガスの圧力および前記排ガス中のアンモニア分圧を調整するために用いても良い。
【0048】
前記固体化アンモニア回収工程(固体融解)後に、冷却塔10003に図示するようにアンモニア固体化準備工程(固化準備)を行う。すなわち、固体化アンモニア回収工程(固体融解)直後で冷却塔が温まっている状態においてアンモニア固体化工程(固化)に移行すると、冷却塔の温度が下がるまでの間はアンモニアを固体化(固化)できない。そうすると、排ガス中のアンモニアを固体化により除去できないまま排出してしまうことになる。したがって、前記固体化アンモニア回収工程(固体融解)後、アンモニア固体化工程(固化)に先立ち、アンモニア固体化準備工程(固化準備)において冷却塔を冷却する。アンモニア固体化準備工程(固化準備)においては、具体的には、例えば、前記アンモニア固体化工程(固化)と同様に、低温の窒素ガス(図3では図示せず、液体窒素が気化したもの)が、熱交換器400および300を前記順序で通過し、冷却塔10003を冷却する。このとき、前記アンモニア液体化回収工程後の排ガスを、例えば、冷却塔10003上部等から冷却塔10003内部に少量流すことにより、冷却塔10003内部にガスの流れを作るとともに冷却塔10003全体を冷却しても良い。このとき冷却塔10003内部に流した前記排ガスは、排出せずにヘッダー10(図3では図示せず)に戻して再度処理する。そして、前記アンモニア固体化準備工程(固化準備)終了後(すなわち、冷却塔10003が十分に冷却された後)に、前記アンモニア固体化工程(固化)に移行する。
【0049】
冷却塔10001、10002および10003では、以上で説明した工程を、例えば、下記表1に記載した順序で行っても良い。下記表1において「固化」は、アンモニア固体化工程(固化)を表し、「融解」は、固体化アンモニア回収工程(固体融解)を表し、「準備」は、アンモニア固体化準備工程(固化準備)を表す。工程1においては、下記表1に記載のとおり、冷却塔10001でアンモニア固体化工程(固化)を、冷却塔10002で固体化アンモニア回収工程(固体融解)を、冷却塔10003でアンモニア固体化準備工程(固化準備)を、それぞれ同時に行う。工程2および3の各工程においても、同様に、下記表1に記載の工程を、各冷却塔で、それぞれ同時に行う。そして、工程1〜3を、この順序で行い、工程3の後に、再度工程1に戻る。
【0050】
【表1】
【0051】
なお、図3において、低温の窒素ガス(液体窒素が気化したもの)の温度および圧力は、特に限定されないが、例えば、圧力が0.2〜0.5MPa、温度が−187〜−170℃の状態で準備しても良い。熱交換器400に導入されるときの前記低温の窒素ガスの圧力は、例えば0.2〜0.5MPa、温度は、例えば−187〜−170℃である。熱交換器300に導入されるときの前記低温の窒素ガスの圧力は、例えば0.2〜0.5MPa、温度は、例えば−187〜−170℃である。最終的に大気中に放出されるときの前記低温の窒素ガスの圧力は、例えば0.15〜0.2MPa、温度は、例えば−10〜20℃である。
【0052】
本発明において、アンモニア固体化工程を行う冷却塔(アンモニア固体化手段)は、1本でも良いが、アンモニア固体化工程の効率化の観点から、図3のように複数本が好ましい。すなわち、1本のみの冷却塔でアンモニア固体化工程を行うと、固体化したアンモニアを回収するまでの間(例えば、図3のアンモニア固体化工程[固化]および固体化アンモニア回収工程[固体融解]の間)は、前記冷却塔内に排ガスを連続的に導入することが困難である。しかし、例えば図3のように、冷却塔10001、10002および10003の3本で、アンモニア固体化工程(固体回収)、固体化アンモニア回収工程(固体融解)、およびアンモニア固体化準備工程(固化準備)を、それぞれ時期(時間)をずらして行えば、前記冷却塔内に排ガスを連続的に導入することができる。すなわち、常に冷却塔10001、10002および10003の3本のうちいずれか(図3では冷却塔10003)がアンモニア固体化準備工程(固化準備)中であるようにしておけば、そのアンモニア固体化準備工程(固化準備)中の冷却塔内に排ガスを導入可能であるため、前記排ガスを冷却塔内に連続的に導入でき、アンモニア固体化工程を効率化できる。前記冷却塔は、図3のように3本でも良いが、例えば2本でも、4本以上の任意の本数でも良い。アンモニア固体化工程の効率化の観点からは、前記冷却塔は3本以上が好ましい。
【0053】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、これに限定されず、種々の変更が可能である。例えば、排ガス導入手段(ヘッダー)、圧縮機(コンプレッサ)、冷凍機等の使用は任意であり、また、これらおよび熱交換器等の各構成要素の数は、前述のとおり、適宜増減可能である。また、各工程における温度、圧力等は、前述の数値に限定されず、例えば、コンピュータソフトウェアによるシミュレーションで、または実験的に適切な数値を選択することができる。各工程(例えば、排ガス中のアンモニアを液体化する工程、固体化する工程等)におけるアンモニアの分圧と、アンモニアの飽和蒸気圧との関係等により、アンモニアの除去および回収の効率が変動するため、これらを考慮して、適切な温度および圧力に設定することが好ましい。
【0054】
また、前述のとおり、従来は、排ガス中のアンモニアは、水に溶かして除去することが行われてきた。しかし、本発明によれば、例えば、水を用いなくてもアンモニアの除去および回収が可能であるため、前記排ガス中に水を嫌う物質が含まれている場合等にも適用できる。ただし、本発明は、水を用いない方法または装置に限定されるものではなく、例えば、水を用いる処理工程または処理手段を併用しても良い。
【0055】
また、本発明によれば、例えば、硫酸スクラバーを用いる方法、アンモニアの燃焼や触媒分解等を用いる方法と異なり、アンモニアをアンモニアのままで回収することができる。このため、例えば、アンモニアの再利用が可能で、かつ、硫酸アンモニウム、窒素酸化物等の処理コストがかからない。ただし、本発明は、これに限定されず、例えば、アンモニアを適宜化学変化させて廃棄処理等しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上、説明したとおり、本発明によれば、燃焼、触媒分解等を用いなくても、アンモニアを単に液体化するのみの方法等と比較して、排ガス中のアンモニア含有量を低くすることが可能である。すなわち、本発明によれば、排ガス中のアンモニア含有量をきわめて低くすることができる。本発明の用途は特に限定されず、アンモニアを含む排ガスの処理が必要な任意の技術分野に広範に適用可能であり、例えば、化学品や医薬品及び電子部品の製造工場やその研究所等からの排ガス処理等に適用できる。
【符号の説明】
【0057】
10 排ガス導入手段(ヘッダー)
20 圧縮機(コンプレッサ)
30、40、50 アンモニア回収手段(貯蔵手段)
100、200、300、400 熱交換器
1000 冷凍機
10001、10002、10003 冷却塔
A 排ガスの経路
B 液体化したアンモニアの回収経路
C 固体化したアンモニアの回収経路
D 液体窒素が気化した窒素ガスの経路
E 冷凍機1000から発せられる冷媒の経路
【要約】
【課題】 本発明は、簡便な方法で、排ガス中のアンモニア含有量をきわめて低くすることができる、アンモニアを含む排ガスの処理装置および処理方法の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明の装置は、アンモニアを含む排ガスを処理する装置であって、前記アンモニアの少なくとも一部を固体化させるアンモニア固体化手段を含むことを特徴とする。本発明の方法は、アンモニアを含む排ガスを処理する方法であって、前記アンモニアの少なくとも一部を固体化させるアンモニア固体化工程を含むことを特徴とする。
【選択図】 なし
図1
図2
図3
図4