特許第5988294号(P5988294)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988294
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】食品切断装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/28 20060101AFI20160825BHJP
   B26D 3/24 20060101ALI20160825BHJP
   B26D 1/03 20060101ALI20160825BHJP
   B26D 7/06 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   B26D3/28 620P
   B26D3/24 Z
   B26D1/03
   B26D7/06 A
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-168003(P2012-168003)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-24172(P2014-24172A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(72)【発明者】
【氏名】内田 淳也
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02789606(US,A)
【文献】 特開昭48−038587(JP,A)
【文献】 特開2007−136592(JP,A)
【文献】 実開昭52−142983(JP,U)
【文献】 特開2002−095431(JP,A)
【文献】 特開昭52−148668(JP,A)
【文献】 特開昭53−107462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/28
B26D 1/03
B26D 3/24
B26D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象食品を載置する食品載置台と、
上記食品載置台に載置された上記対象食品を位置規制する位置規制部材と、
上記食品載置台を対象食品供給位置から切断後の上記対象食品の放出位置まで往復移動させる駆動機構と、
上記駆動機構によって上記食品載置台とともに移動させられる上記対象食品の移動軌跡内に配置されていることによって上記対象食品を輪切り状に切断する切断刃と、を有し、
上記位置規制部材は、上記食品載置台に軸を中心にして上記食品載置台の食品載置面上に突出する態様と上記食品載置面から退避する態様との間で回転可能に支持されるとともに上記食品載置面上に突出して上記食品載置台に上記対象食品を位置規制するように回転付勢されており、
上記食品載置台が上記対象食品の放出位置まで移動したとき上記位置規制部材を付勢力に抗して回転させ上記対象食品の位置規制を解除して上記対象食品を上記食品載置台から放出させる当たり部材を備えている食品切断装置。
【請求項2】
上記駆動機構は、上記食品載置台の姿勢と移動軌跡を規制するカムを有し、上記カムは、上記食品載置台の姿勢を水平方向の姿勢から傾斜した姿勢に連続して変化させる円弧部と、上記食品載置台の傾斜した姿勢を保って上記食品載置台を直線的に移動させる直線部を有する請求項1記載の食品切断装置。
【請求項3】
上記位置規制部材を上記食品載置台に回転可能に支持する軸は上記位置規制部材とともにレバーを一体に有していて、上記食品載置台が上記対象食品の放出位置まで移動した態様において上記レバーが上記当たり部材に当たり上記位置規制部材を付勢力に抗して回転させる請求項1または2記載の食品切断装置。
【請求項4】
上記位置規制部材と上記食品載置台との間に弾性部材が介在し、上記弾性部材によって上記位置規制部材が上記食品載置台に上記対象食品を位置規制するように回転付勢されている請求項1、2または3記載の食品切断装置。
【請求項5】
上記位置規制部材は、上記位置規制部材を上記食品載置台に回転可能に支持する軸に一体に設けられた複数の腕を有してなり、上記腕の回転付勢力により上記腕と上記食品載置台との間で上記対象食品を挟み込む構成になっている請求項1乃至4のいずれかに記載の食品切断装置。
【請求項6】
上記位置規制部材の付勢方向への回転位置は、上記食品載置台に載置される上記対象食品に上記位置規制部材が当接することにより、上記象食品の太さに対応して規制される請求項1乃至5のいずれかに記載の食品切断装置。
【請求項7】
複数の上記腕はそれぞれ上記対象食品を押圧する縁部に複数の突起を有していて、上記食品載置台に載置される上記対象食品の太さに対応して上記複数の突起の少なくとも一つが上記象食品を押圧する請求項5または6記載の食品切断装置。
【請求項8】
上記食品載置台が上記対象食品供給位置にあるとき上記位置規制部材を付勢力に抗して回転させる第2の当たり部材を有している請求項1乃至7のいずれかに記載の食品切断装置。
【請求項9】
上記位置規制部材を上記食品載置台に回転可能に支持する軸は上記位置規制部材とともにレバーを一体に有していて、上記レバーの一端側に上記当たり部材が当たりまたは上記レバーの他端側に上記第2の当たり部材が当たることにより、上記レバーは付勢力に抗して回転する請求項8記載の食品切断装置。
【請求項10】
上記位置規制部材の付勢方向への回転位置を段階的に選択することができる回転位置選択機構を有している請求項1乃至9のいずれかに記載の食品切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば巻き寿司などの棒状の食品を所定の幅に輪切り状に切断する食品切断装置に関するもので、動作の確実性を高めるための工夫を施したものである。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケット、コンビニエンスストア、回転寿司店などで提供される例えば巻き寿司などは、自動機によって棒状に成形され、さらに、所定の幅に輪切り状に切断される。棒状の巻き寿司などを包丁によって手作業で輪切りにしていたのでは多大の労力と時間を要するとともに、輪切りの幅寸法がばらつくので、食品切断装置が用いられている。食品切断装置には、固定した切断対象食品に対し切断刃を移動させて切断するものと、固定した切断刃に対し切断対象食品を移動させて切断するものがある。また、切断刃の支持形態によって、片持ち形式のもの、両持ち形式のものに分類することができる。以下、従来の食品切断装置の例について説明する。
【0003】
特許文献1には、固定した切断対象食品に対し切断刃を回転させながら当てることにより切断対象食品を輪切りにする食品切断装置が記載されている。上記切断刃は、回転軸に対し直交させて固着された複数の切断刃からなり、回転軸に片持ち状に固着された構造、すなわち回転刃になっている。
【0004】
特許文献2には、固定した切断対象食品である海苔巻寿司等に対し切断刃を移動させながら当てることにより海苔巻寿司等を輪切りにする海苔巻寿司等の切断装置が記載されている。上記切断刃は、刃物枠に複数平行に配置して長さ方向両端を保持した両持ち状のもので、刃物枠を複数の切断刃とともにリンク機構により移動させて海苔巻寿司等を切断する構成になっている。
【0005】
特許文献3には、固定した切断刃に対し切断対象食品である巻き寿司を移動させて切断する巻き寿司の切断装置が記載されている。上記切断刃は、刃物枠に複数平行に配置して長さ方向両端を保持したものすなわち両持ち状にしたもので、上記刃物枠をフレームに固定している。上記巻き寿司はこれを受け台に載せ、この受け台を上方に移動させることにより巻き寿司に切断刃を徐々に食い込ませながら巻き寿司を輪切り状に切断する構成になっている。切断刃を固定し、切断刃に対し対象食品を相対移動させることによって対象食品を輪切り状に切断する食品切断装置は、特許文献4にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−244496号公報
【特許文献2】特開平7−31392号公報
【特許文献3】特許第4368024号公報
【特許文献4】特開2006−68848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の発明によれば、切断対象食品を載置台に載せ、その場で回転刃の回転により切断する形式になっているから、切断対象食品のセットと切断後の食品の取り出しを同じ位置で行うことができ、作業性は良い。しかし、載置台に載せられた切断対象食品を回転刃が横切るため、切断対象食品を回転刃が横切るときは載置台の周辺に手を差し入れることができないように安全機構を設けて安全性を確保する必要がある。また、切断刃は回転軸に片持ち的に固着されるため、刃の厚みを大きくして所定の強度を持たせる必要があり、切断対象食品に対する切れ味が、両持ち型の切断刃を用いる場合と比較すると若干劣る。したがっ、海苔巻き寿司のような柔らかい切断対象食品の場合、切断時に加わる圧力で型崩れを生じることがある。この点、両持ち型の切断刃は、長さ方向両端部で支持されるため、切断刃の厚みを薄くして切れ味を高めることができ、切断対象食品の型崩れを少なくすることができる。
【0008】
特許文献2記載の発明は、切断対象食品を載置台に載せ、次に切断刃を一方向に移動させることにより切断対象食品を切断し、そのあと切断刃は原位置に向かって復動するようになっている。したがって、切断刃が復動するとき、切断された対象食品が残っていると切断刃が復動する途中で上記対象食品に当たるため、切断刃が復動る前に切断した対象食品を載置台から取り出す必要がある。よって、特許文献2記載の発明によれば、切断刃の移動によって切断対象食品を切断した後、対象食品の取り出し操作を行い、次に切断刃の復帰操作を行う必要があり、操作が面倒になる難点がある。
【0009】
特許文献3および特許文献4記載の発明によれば、切断対象食品である巻き寿司を載せた受け台を移動させて切断刃により巻き寿司を切断したあと、受け台を原位置まで復帰させるためには、その前に、切断された巻き寿司を受け台から取り出す必要がある。そうしなければ、切断された巻き寿司が原位置に戻ってしまい、また、戻る途中で、切断された巻き寿司に切断刃が当たるからである。したがって、巻き寿司を切断した後、巻き寿司の取り出し操作を行い、次に切断刃の復帰操作を行う必要があり、操作が面倒になる。また、装置を稼働させるためのスイッチ操作は、巻き寿司を切断するために受け台を移動させるためのスイッチ操作と、受け台を原位置に復帰させるためのスイッチ操作の2回の操作が必要であり、この点からも操作が面倒になる難点がある。また、装置の下側にある受け台に巻き寿司を載せる操作は、装置の下側にある受け台に対して行うので、操作性の問題はないが、切断された巻き寿司は装置上部の奥側に移動しているため、複数に分離された巻き寿司を取り出すときの作業性が悪いという難点がある。
【0010】
そこで、本発明者らは、両持ち状に固定した切断刃に対し、対象食品を載せた食品載置台を移動させて対象食品を切断するようにした食品切断装置であって、切断された食品は自然に食品載置台から放出されるように構成を工夫し、もって、食品の切断後、復帰操作をしなくても食品載置台を原位置に復帰させることができ、切断後の食品の取り出しも容易な食品切断装置について先に提案した。特願2011−020830に係る発明がそれで、対象食品を載置する食品載置台と、上記食品載置台に載置された対象食品を位置規制する位置規制部材と、上記食品載置台を移動させる駆動機構と、上記駆動機構によって上記食品載置台とともに移動させられる上記対象食品の移動軌跡内に配置されていることによって上記対象食品を輪切り状に切断する切断刃と、を備えている。上記食品載置台は、上記対象食品が上記切断刃で切断されるときの姿勢が傾斜した姿勢となるように上記駆動機構によって移動させられる。上記位置規制部材は、切断後の上記対象食品が上記食品載置台の傾斜した姿勢に沿って上記食品載置台の移動軌跡外に降下するように上記対象食品の位置規制を解除する構成になっている。
【0011】
上記出願に係る食品切断装置によれば、装置の動作を開始させるスイッチなどを1回操作して食品載置台を往復動作させれば、食品の切断および食品載置台の復帰まで完結させることができ、操作性および作業能率を向上させることができる。また、切断後の食品は操作者の手許に降下させることが可能であり、切断後の食品の取り出し作業が容易になる、という利点もある。
【0012】
上記出願の明細書および図面に記載した食品切断装置における食品載置台と位置規制部材は、以下に述べるように構成されかつ動作するようになっている。位置規制部材は上記食品載置台に対して水平軸を中心にして回転可能に支持されて重量バランスを保った姿勢を保持するように構成され、位置規制部材の姿勢が変わると、食品載置台の位置規制部材に対する相対的な姿勢が変わるようになっている。食品載置台が切断前の食品の載置姿勢をとっているときは、位置規制部材の突起が食品載置台の前部上面側に進出する。食品載置台に載置する食品の径方向の大きさによって、位置規制部材の突起の食品載置台の前部上面側への突出量が異なり、食品の径方向の大きさが異なっても食品載置台上に食品を保持することができるようになっている。食品が食品載置台とともに移動して切断刃で所定の大きさに切断された後、食品載置台に対する位置規制部材の相対的な姿勢の変化によって上記突起が食品載置台の上面から退避し、食品がその重力によって食品載置台から放出される。
【0013】
上記位置規制部材は、食品載置台に対する姿勢が重量バランスによって変化する構成になっていて、位置規制部材の姿勢が不安定である。食品を食品載置台に位置規制すべき動作態様では位置規制部材が確実に食品を位置規制し、食品を食品載置台から放出すべき態様では位置規制部材が食品載置台の載置面から確実に退避すべきで、位置規制部材は節度よく動作することが望ましい。
【0014】
本発明は、上記従来の食品切断装置の技術的課題を解決すること、すなわち、食品載置台に対して位置規制部材が、食品を位置規制すべき動作態様ではそれにふさわしい態様を、食品を食品載置台から放出すべき動作態様ではそれにふさわしい態様を、節度をもって確実にとることができる食品切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る食品切断装置は、
対象食品を載置する食品載置台と、
上記食品載置台に載置された上記対象食品を位置規制する位置規制部材と、
上記食品載置台を対象食品供給位置から切断後の上記対象食品の放出位置まで往復移動させる駆動機構と、
上記駆動機構によって上記食品載置台とともに移動させられる上記対象食品の移動軌跡内に配置されていることによって上記対象食品を輪切り状に切断する切断刃と、を有し、
上記位置規制部材は、上記食品載置台に軸を中心にして上記食品載置台の食品載置面上に突出する態様と上記食品載置面から退避する態様との間で回転可能に支持されるとともに上記食品載置面上に突出して上記食品載置台に上記対象食品を位置規制するように回転付勢されており、
上記食品載置台が上記対象食品の放出位置まで移動したとき上記位置規制部材を付勢力に抗して回転させ上記対象食品の位置規制を解除して上記対象食品を上記食品載置台から放出させる当たり部材を備えていることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
位置規制部材は、食品載置面上に突出して食品載置台に対象食品を位置規制するように回転付勢されているため、対象食品は位置規制部材の回転付勢力により食品載置台に確実に位置規制される。食品載置台が対象食品の放出位置まで移動したときは対象食品が切断刃で所定の大きさに切断されており、位置規制部材は当たり部材に当たって付勢力に抗して回転させられ、切断済みの対象食品の位置規制を解除して対象食品をスムーズに放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る食品切断装置の実施例を示す外観斜視図である。
図2】側面カバーを除去した状態の上記実施例を示す右側面図である。
図3】上記実施例の食品載置台と位置規制部材の部分を示す右側面図である。
図4】上記食品載置台と位置規制部材の部分を示す斜視図である。
図5】上記食品載置台と位置規制部材の部分の異なる作動態様を図2に準じて示す右側面図である。
図6】上記食品載置台と位置規制部材の部分の異なる作動態様を図4に準じて示す斜視図である。
図7図5に示す作動態様に続き上記食品載置台と位置規制部材の部分のさらに異なる作動態様を図2に準じて示す右側面図である。
図8】上記食品載置台と位置規制部材の部分のさらに異なる作動態様を図4に準じて示す斜視図である。
図9図7に示す作動態様に続き上記食品載置台と位置規制部材の部分のさらに異なる作動態様を図2に準じて示す右側面図である。
図10図9に示す作動態様に続き上記食品載置台と位置規制部材の部分のさらに異なる作動態様を図2に準じて示す右側面図である。
図11図10に示す作動態様に続き上記食品載置台と位置規制部材の部分のさらに異なる作動態様を図2に準じて示す右側面図である。
図12図8に示す作動態様に続き上記食品載置台と位置規制部材の部分のさらに異なる作動態様を図4に準じて示す斜視図である。
図13】上記食品載置台と位置規制部材の部分のさらに異なる作動態様を図4に準じて示す斜視図である。
図14】上記食品載置台と位置規制部材の部分のさらに異なる作動態様を図4に準じて示す斜視図である。
図15】上記食品載置台と位置規制部材の部分のさらに異なる作動態様を図4に準じて示す斜視図である。
図16】本発明に係る食品切断装置の別の実施例の要部を示す外観斜視図である。
図17】上記別の実施例の要部を異なる作動態様で示す外観斜視図である。
図18】上記別の実施例の要部をさらに異なる作動態様で示す外観斜視図である。
図19】上記別の実施例の要部をさらに異なる作動態様で示す外観斜視図である。
図20】上記別の実施例の要部をさらに異なる作動態様で示す外観斜視図である。
図21】上記別の実施例の要部をさらに異なる作動態様で示す外観斜視図である。
図22】上記別の実施例の要部をさらに異なる作動態様で示す外観斜視図である。
図23】本発明に係る食品切断装置のさらに別の実施例の要部を示す外観斜視図である。
図24】上記さらに別の実施例の要部を異なる作動態様で示す外観斜視図である。
図25】上記さらに別の実施例の要部をさらに異なる作動態様で示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る食品切断装置のいくつかの実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0019】
図1において、食品切断装置は、上端部が切断対象食品(以下、単に「食品」という)10の供給部、前面下部が食品10の排出部となっている。食品切断装置の前面は上記供給部と排出部を除き前面パネル15で覆われ、左右両側面はそれぞれ側面カバー14で覆われている。この装置の動作開始前は上記供給部に食品載置台5があり、この食品載置台5に、食品10、例えば、寿司飯が海苔で巻かれた柱状の海苔巻きを水平方向の姿勢で載置するように構成されている。食品載置台5に食品10を載置し、スタートスイッチを押すと、食品載置台5が駆動機構によって装置の前側下部に向かって移動させられる。食品載置台5の移動の途中で食品10が切断刃によって輪切り状に切断され、上記排出部に排出されるように構成されている。排出された食品10は、食品載置台5から放出されて受け取り部材8で受け取られ、受け取り部材8が斜め下方にスライドし、食品載置台5は駆動機構によって原位置に復帰するように構成されている。
【0020】
次に、上記食品切断装置の内部構造を詳細に説明する。図2乃至図4において、食品切断装置は、ベース1と、ベース1の左右両端部に結合されて互いに平行に垂直方向に立ち上がった左右の側板4と、各側板4の後端部を連結する背板20を有している。これらベース1、左右の側板4および背板20で食品切断装置の骨格をなしている。装置の前寄りの位置に切断刃2がほぼ垂直方向の姿勢で配置されている。切断刃2は、食品10を一定間隔で切断するために、保持枠により複数本が一定間隔で互いに平行に保持されている。上記保持枠が左右の側板4に上下方向に固定された一対のガイドレールに沿って落とし込まれることにより、切断刃2は上記左右の側板4間に固定されている。切断刃2は、前記特願2011−020830の明細書および図面に記載されている構成と同じ構成を採用することができ、本発明の要旨をなすものでもないから、詳細な説明は省略する。
【0021】
前記食品載置台5は、図2図3図4に示すように、上側のほぼ半分の側面形状がL字形に形成され、L字の水平辺と垂直辺に相当する部分で形成される角隅部に切断前の食品10を載置することができるようになっている。より具体的には、上記L字の水平方向に延びる部分が食品10の食品載置面51、上記L字の垂直方向に延びる部分が食品10に対する背面受け52となっている。
【0022】
食品載置台5を背面受け52の下方において左右方向に貫いて水平軸55が設けられ、水平軸55に位置規制部材7が垂直面内において回転可能に支持されている。位置規制部材7は食品10を食品載置台5上に位置決めする部材であって、図3図4に示すように、複数枚のL字形の腕71を主体として構成されている。各腕71は、図4に示すように、L字の水平辺に相当する部分(以下「水平部」という)が水平軸55から食品載置台5の前方に向かって延び、L字の垂直辺に相当する部分(以下「垂直部」という)が上方に向かって立ち上がっている。複数の腕71は同じ姿勢を保って水平軸55に一体に固着されている。各腕71は水平軸55の回転に伴って全体が食品載置面51から食品載置台5内に退避した態様と、上記垂直部が食品載置面51上に突出した態様との間で回転することができる。食品載置台5には、各腕71の上記回転を許容するスリット59が形成されている。
【0023】
位置規制部材7と食品載置台5との間には、食品載置台5に対して位置規制部材7を回転付勢する弾性部材が介在している。図示の実施例では、弾性部材としてコイルばね120が用いられている。図3に示すように、水平軸55はコイルばね120のコイル部分を貫通していて、コイルばね120の両端部が食品載置台5と位置規制部材7を構成する一つの腕71に掛け止められ、食品載置台5に対して各腕71が回転付勢されている。各腕71の回転付勢の向きは、各腕71の垂直部が食品載置面51から上方に突出する向きである。
【0024】
図3に示すように、各腕71の垂直部には、この垂直部が立ち上がって食品載置面51から上方に突出した態様における後ろ側の縁部に、上から順に三つの突起76、77、78が形成されている。上記三つの突起76、77、78が形成されている各腕71の後ろ側の縁部は、食品載置台5に載置される食品を押圧する縁部である。各腕71が上記付勢力で限界位置まで回転した状態では、三つの突起76、77、78のすべてが食品載置面51から上方に突出するようになっている。また、この回転態様で突起78の下方の上記垂直部がスリット59の端縁に当接することにより、付勢力による各腕71からなる位置規制部材7の回転が規制されるようになっている。
【0025】
各腕71の三つの突起76,77,78は、食品載置台5に載置される食品10の前方に進出することにより、食品10が食品載置面51上を前方に向かって移動することを阻止し、食品10を所定の位置に位置規制するストッパの役目をする。食品の横断面の大きさは、例えば大、中、小の3段階に分けることができる。これまで説明してきた食品10は小サイズの食品である。図13は小サイズの食品10が食品載置面51と背面受け52で形成される角隅部に載置されているときの食品載置台5に対する位置規制部材7の相対回転態様を示している。この態様では、位置規制部材7を構成する各腕71が付勢力で回転し、各腕71の三つの突起76,77,78のうち最も下の突起78が食品10を前側から後ろに向かって押している。食品10は、上記各腕71の突起78と食品載置台5の背面受け52で挟み込まれ、食品載置台5の食品載置面51上に安定に保持される。上記各腕71は、各腕71の突起78が食品10に当たることにより、付勢力による回転が阻止される。
【0026】
図14に示すように、中サイズの食品101が食品載置台5に載置されると、各腕71の回転付勢力でその突起77が食品101の前端下縁部に当たり、食品101を前側から後ろに向かって押す。食品101は、上記各腕71の突起77と食品載置台5の背面受け52で挟み込まれ、食品載置台5の食品載置面51上に安定に保持されるとともに、各腕71の付勢力による回転を阻止する。
【0027】
図15に示すように、大サイズの食品102が食品載置台5に載置されると、各腕71の回転付勢力でその突起76が食品102の前端下縁部に当たり、食品102を前側から後ろに向かって押す。食品102は、上記各腕71の突起77と食品載置台5の背面受け52で挟み込まれ、食品載置台5の食品載置面51上に安定に保持されるとともに、各腕71の付勢力による回転を阻止する。
以下、特に説明がない限り、食品は小サイズの食品10として説明を続ける。
【0028】
位置規制部材7を構成する各腕71は、食品10が切断刃2で切断されたあと各腕71による食品10の位置規制を解除し、切断された食品10を食品載置台5から放出する態様をとるように構成されている。図2図4などに示すレバー30と、当たり部材11は、切断された食品10を食品載置台5から放出するために、位置規制部材7を構成する各腕71を、食品載置面51から食品載置台5内に退避させる態様をとらせるための部材である。レバー30は、食品載置台5の左右両側面から突出している前記水平軸55の両端部に互いに同じ姿勢で固着されていて、水平軸55および各腕71がレバー30と一体となって回転するようになっている。レバー30がストッパ11と共働し、各腕71が付勢力に抗して回転し、切断された食品10を放出する動作については、本実施例の動作の説明で詳細に説明する。
【0029】
食品載置台5に載置されている食品10を前記切断刃2で切断するために、食品載置台5には切断刃2が進入することができるスリット58が形成されている。スリット58は切断刃2の数および設置位置に対応した数および位置に設けられる。本実施例では、図4などに示すように、食品の分割数を4個、6個、8個のいずれかを選択することができるように、左右方向中央のスリットを中心にして上記の分割数にそれぞれ対応した位置にスリット58が形成されている。各スリット58は、切断刃2を迎え入れて食品10を確実に切断することができるように、前記底面受け51および背面受け52を含む広い範囲にまたがって深く切り込まれている。
【0030】
食品載置台5の左右方向両側の底部には、食品載置台5の後ろ寄りにそれぞれ二つのピン53、54が取り付けられている。左右のピン53は軸55と平行をなす共通の仮想直線上に位置し、同様に左右のピン54も軸55と平行をなす共通の仮想直線上に位置している。ピン54はピン53よりも後ろ側に位置している。左右のピン53と左右のピン54はそれぞれ食品載置台5を貫通した軸で構成してもよい。食品載置台5は、図示の実施例では金属板を折り曲げかつ打ち抜き加工することによって製作されているが、例えばフッ素系の樹脂を切削加工して製作してもよい。
【0031】
図3図4などに示すように、食品載置台5には、載置される食品の長さ方向両端位置を規制する規制板56が背面受け52の両端部に設けられている。規制板56は樹脂による一体成形品で、その基部を背面受け52に装着し、固定ねじ60で所定の取り付け位置に固定するようになっている。規制板56の取り付け位置は上記背面受け52に沿ってずらすことができる。食品が例えば海苔巻き寿司であるとすれば、海苔の寸法は205mm×185mmに規格化されているため、海苔を横長にして巻くか、縦長にして巻くかによって切断前の海苔巻き寿司の長さが変わる。そこで、一対の規制板56の間隔を海苔巻き寿司の長さに合致するように調整する。
【0032】
次に、図2図5図7などに示す食品載置台5の駆動機構6について詳細に説明する。図2図5図7などに示すように、左の側板4の内面側には駆動源としてのモータ61が固定され、モータ61の出力軸に固着されたギヤ62は、軸64に固着されたギヤ63と噛み合っている。軸64は左右の側板4にまたがって回転可能に支持されていて、左右の側板4を貫通した軸64の両端部にはそれぞれ駆動アーム65が固着されている。モータ61の回転駆動力は、ギヤ62,63を介して軸64に伝達され、軸64と一体の各駆動アーム65を各側板4の外側面と平行をなす面内において回転駆動するように構成されている。各駆動アーム65は軸64の回転中心を通る直線に沿って長孔66を有していて、この長孔66に、食品載置台5の前記二つのピン53,54のうち前側のピン53が嵌っている。したがって、各駆動アーム65が軸64とともに軸64を中心にして回転駆動されると、長孔66を画する側面でピン53が押され、各駆動アーム65の回転に伴って食品載置台5も移動させられるようになっている。
【0033】
食品載置台5の左右両側にある上記二つのピン53,54はカム溝91に嵌っていてカムフォロワとして機能している。食品載置台5の高さ位置および姿勢は二つのピン53,54の高さ位置および相対的な高さの違いによって決まり、二つのピン53,54の相対的な高さ位置関係はカム溝91の形によって決まる。図示の例では、カム溝91は側板4に形成されている。カム溝91は、これをカム板に形成し、カム板を側板4に固着してもよい。
【0034】
カム溝91は、食品載置台5とともに移動する食品10が切断刃2に接触し始めると、食品10に対する切断刃2の進入角度が連続的に変化するように食品載置台5の姿勢を連続して変化させる円弧部93を有している。カム溝91はまた、食品10に切断刃2が侵入した後は食品載置台5の姿勢を一定に保って食品載置台5を直線的に移動させる直線部94を有している。上記円弧部93を上記二つのピン53,54が通るとき、食品10に対する切断刃2の進入角度の連続的な変化が、食品10の切断刃2に対する相対速度を早めるように、上記円弧部93の面(図5図7において下側の面)が凸面に形成されている。
【0035】
切断刃2はほぼ垂直方向の姿勢を保って固定されているのに対し、カム溝91の上記直線部94は適宜の角度傾いていて、直線部94に沿って食品載置台5が上から斜め下に向かって移動するとき、食品載置台5はお辞儀をしたように傾斜した姿勢すなわち前傾姿勢をとっている。この前傾姿勢をとっている食品載置台5に保持された食品10に切断刃2が上記傾斜角度に対応した角度で接しながら食い込むようになっている。
【0036】
カム溝91は、上端部が上記円弧部93に続く円弧部92になっている。この円弧部92に上記二つのピン53,54があるとき、図2に示すように食品載置台5は最も上位にあり、かつ、食品載置面51が水平の姿勢よりも僅かに奥側が下がった姿勢になって、食品10の受け入れ姿勢をとるようになっている。駆動機構6は、モータ61からカム溝91に至る構成部分を含んでいる。
【0037】
ここで、上記二つのピン53,54がカム溝91に沿って移動するときの食品載置台5の姿勢および位置の変化について説明しておく。上記のように食品10の受け入れ姿勢をとっている食品載置台5に食品10を載置し、駆動機構6を作動させると、二つのピン53,54がカム溝91の円弧部92から円弧部93に移動し、さらに直線部94に移動する。ピン53,54が上記円弧部93を通るとき、ピン53の高さ位置がピン54の高さ位置よりも徐々に低くなり、食品載置台5の姿勢が前傾姿勢になるとともに前傾角度が徐々に大きくなる。食品載置台5が姿勢を変化させているとき、食品載置台5に載置されている食品10が切断刃2に接触し始めるように、切断刃2、食品載置台5、ピン53,54、カム溝91相互の位置関係が設定されている。
【0038】
ピン53,54は、上記円弧部93を通過した後はカム溝91の直線部94に導かれ、食品載置台5は上記の前傾姿勢のままで前述のように上から斜め下に向かって直線状に移動し、切断刃2で食品が切断される。切断された食品10は次に説明する受け取り部材8で受け取られ、続いて駆動機構6が逆向きに作動して食品載置台5を原位置に復帰させる。
【0039】
次に、前記受け取り部材8を含む切断後の食品10の受け取り部の構成について簡単に説明する。図2図5などに示すように、装置の前側下部に設けられている切断後の食品10の受け取り部の主要な構成部材は受け取り部材8である。受け取り部材8は、斜め下に向かって滑り落ちてくる切断後の食品10を受け取る受け取り部82と、前記側板4に斜めに形成されているガイド溝81に沿って受け取り部材8を摺動させる摺動部83を有している。ガイド溝81は、前述のように前傾した食品載置台5の前傾角度に近い角度で傾斜している。受け取り部材8は、切断された食品を受け取るべく、図5に示すようにガイド溝81の上端部まで移動した態様と、受け取った食品を取り出しやすいように、ガイド溝81の下端部まで移動した態様(図2参照)をとることができる。
【0040】
このような受け取り部材8の動作は、モータ61を駆動源とする食品載置台5の駆動機構6の動作に同期して行われるようになっているが、受け取り部材8の駆動機構は本発明に必須のものではないから詳細な説明は省略する。
【0041】
図2図5に示すように、側板4の内側面には食品載置台5の上から斜め下への移動行程の終端部分において前記レバー30の先端部が摺接し、位置規制部材7を付勢力に抗して回転させる当たり部材11が固着されている。レバー30は食品載置台5の左右に対をなして設けられており、この対をなすレバー30に対応して当たり部材11も左右の側板4にそれぞれ固着されている。各当たり部材11は四角柱状の部材で、垂直方向に向けた姿勢で固着されている。各当たり部材11は、食品載置台5の下方への移動行程の終端近くからレバー30の先端部が当たり部材11に当たり始めるように、レバー30の移動軌跡内に配置されている。食品載置台5がさらに下降するにしたがってレバー30の先端部が当たり部材11に摺接しながら押され、レバー30と実質一体の前記各腕71が付勢力に抗し軸55を中心に回転させられ、各腕71の前記垂直部が食品載置台5内に沈み込んでいく。
【0042】
食品載置台5が下降限界位置まで移動すると、レバー30も当たり部材11の下端近くに当接して、各腕71が付勢力に抗した最大回転位置になり、各腕71全体が食品載置台5内に沈み込むようになっている。図11図12はこのときの態様を示している。食品載置台5の食品載置面51から各腕71の垂直部が退避することになるため、切断刃2で切断された食品10は食品載置面51から放出される。図10に示すように上記食品10は上昇態様をとっている受け取り部材8の受け取り部82で受け取られる。駆動機構6がさらに作動することにより受け取り部材8は下降し、受け取り部82で受け取られている食品10を容易に取り出すことができる。図2図5図10図11などに示している例では、小さいサイズの2個の食品10が食品載置台5に2段重ねで載置され、1回の切断動作で2個の食品10が切断されて受け取り部材8で受け取られる様子を示している。
【0043】
次に、以上のように構成されている実施例の動作を説明する。図1図3図4は動作開始前の初期状態を示しており、食品載置台5は二つのピン53,54がカム溝91の上側終端部の円弧部92にあって切断前の食品の載置姿勢をとっている。この態様では位置規制部材7を構成する各腕71が付勢力により回転し、各腕71の垂直部が食品載置台5の食品載置面51から上方に立ち上がっている。そこで、各腕71を付勢力に抗し押し下げて上記垂直部を食品載置面51から退避させた状態で食品載置台5に食品を載置する。各腕71の押し下げ力を解除すると、各腕71が付勢力により回転してその垂直部が食品載置面51から立ち上がり、各腕71の垂直部と食品載置台5の背面受け52との間で食品を挟み込む。
【0044】
食品載置台5に載置される食品が小サイズの食品10であれば、各腕71はその最も下の突起78が食品10に当接するまで回転し、食品載置面51から大きく立ち上がる。各腕71と食品載置台5の背面受け52との間に、小サイズの食品10の高さよりも十分大きな高さの間隔が生じるため、既に述べたように、2個の食品10を重ねて載置することができる。重ねられた2個の食品10は各腕71の付勢力で食品載置台5に安定に保持される。
【0045】
次に、スタートボタンを操作すると、モータ61が起動され、駆動機構6が作動を開始する。ギヤ列61,62、軸64を経て作動機構6の駆動アーム65が図2において反時計方向に回転駆動され、その長孔66に嵌っている食品載置台5のピン53がカム溝91に沿って移動させられる。ピン53とともにピン54もカム溝91に沿って移動し、食品載置台5の高さ位置と姿勢が二つのピン53、54の高さ位置および相互の高さ位置の違いによって定まる。ピン53、54がカム溝91の円弧部93の位置にさしかかると、ピン53の高さ位置がピン54の高さ位置に対して連続的に低くなり、もって、食品載置台5が前傾姿勢をとるとともに前傾姿勢が徐々に深くなる。
【0046】
このように、食品載置台5が前傾姿勢をとり始める位置は、食品10が切断刃3に接触し始めるときである。食品10と切断刃3の接触開始当初は、食品10に対する切断刃3の進入角度を連続的に変化させて切断刃3と食品10の相対速度を速めるようになっている。こうして切断開始当初の食品10への切断刃3の進入を容易にし、食品10の切断時に食品10に加わる圧力を小さくして食品10の変形を低減することができるように工夫されている。
【0047】
食品載置台5のピン53、54がカム溝91の直線部94に至ると、食品載置台5は最大の前傾角度を保ったまま上記直線部94に沿って斜め下方に移動する。この間、食品載置台5に載置されている食品10は、その前方に進出している各腕71で食品載置台5から滑落することが阻止されている。このようにして、垂直方向に両持ち状に固定された切断刃2に対し、食品載置台5とともに食品10が斜め下方に相対移動することにより、切断刃2が一定の相対速度によって食い込み、食品10が輪切り状に切断される。図5はこのようにして食品10が切断されている途中の作動態様を示している。
【0048】
食品載置台5のピン53、54がカム溝91の直線部94に沿ってさらに下方に向かって駆動され、食品載置台5がさらに下方に移動すると、図7に示すようにレバー30の先端部が当たり部材11の背面に接触する。食品載置台5がさらに下方に移動することにより、図9に示すように食品10の切断が進行するにしたがって上記レバー30の先端は当たり部材11に摺接しながらさらに押され、各腕71は付勢力に抗して回転させられる。図6は各腕71の付勢力に抗した回転の途中の状態を示しており、各腕71の垂直部が食品載置台5の内方に向かって徐々に沈みつつある。
【0049】
図8図10は食品載置台5がさらに下方に移動した態様を示しており、上記レバー30の先端は当たり部材11に摺接しながらさらに押され、各腕71は付勢力に抗して回転させられる。図8に示すように、各腕71の垂直部は食品載置台5の内方に向かってさらに沈み込む。
【0050】
図11図12は、食品載置台5が下方への移動限界まで移動した態様を示しており、レバー30の先端部が当たり部材11に押され、各腕71は付勢力に抗した最大回転位置まで回転させられる。この時点では2個の食品10の切断が完了していて、最大の前傾姿勢をとっている食品載置台5の食品載置面51から各腕71が退避することにより、切断済みの食品10が食品載置台5から放出される。また、食品10の切断が完了するまでは受け取り部材8が上昇位置にあり、切断が完了して放出される食品10を受け取り部材8が受け取る。食品10の切断完了後、食品載置台5が下方への移動限界まで移動する間に、受け取り部材8は食品10を受け取ったまま図11に示すように食品取り出し位置まで下降する。
【0051】
上記のように食品載置台5が下方への移動限界まで移動すると、これをリミットスイッチあるいはセンサなどで検出し、この検出信号でモータ61を逆転させ、食品載置台5を原位置に復帰させる。この復帰動作で位置規制部材7を構成する各腕71、レバー30も付勢力で復帰する。受け取り部材8は、食品載置台5の復帰動作では上昇せず、図5に示すように、切断刃2による食品の切断動作タイミングに合わせて上昇する。
【0052】
図14に示すように、中サイズの食品101が食品載置台5に載置されると、各腕71はその突起77で食品101を食品載置台5の背面受け52に向かって押し、この背面受け52と上記突起77との間で食品101を挟み込む。また、図15に示すように、大サイズの食品102が食品載置台5に載置されると、各腕71はその突起76で食品102を食品載置台5の背面受け52に向かって押し、この背面受け52と上記突起76との間で食品101を挟み込む。
【0053】
このようにして中サイズの食品101あるいは大サイズの食品102を保持した食品載置台5が駆動機構6によって駆動されると、前述の動作と同様に動作しながら、食品101または102が切断され、受け取り部材8に受け渡される。
【0054】
以上説明した第1の実施例によれば、食品10を食品載置台5の食品載置面51上に載置して位置決めするための位置規制部材7を構成する各腕71は、食品載置面51上に突出して食品載置台5に食品を位置規制するように回転付勢されているため、食品10を食品載置台5に安定に保持することができる。また、食品載置台5が食品放出位置まで移動したとき、位置規制部材7を付勢力に抗して回転させ、食品の位置規制を解除して食品10を食品載置台5から放出させる当たり部材11を備えているため、面倒な操作を行うことなく、切断済みの食品を取り出すことができる。
【実施例2】
【0055】
前記第1の実施例では、食品供給位置において、位置規制部材7を構成する各腕71を、付勢力に抗し手動操作することにより食品載置面51から退避させて食品10を食品載置台5に供給する必要があった。以下に述べる第2の実施例では、食品供給位置において各腕71を食品載置面51から自動的に退避させる機構を設けることにより操作性を向上させている。
【0056】
図16乃至図22において、前記背板20の左右両側には、食品載置台5の位置および姿勢によって左右一対の前記レバー30の後端部と協働する第2の当たり部材40が固着されている。ただし、図16乃至図22では片方の第2の当たり部材40のみが描かれている。第2の当たり部材40は、食品載置台5が食品供給位置付近にあるときにのみレバー30と協働する位置に配置されている。
【0057】
第2の当たり部材40は、その上面がレバー30の後端部と協働するようになっていて、第2の当たり部材40の上面は、庇状に前方に延び出た部分に形成された緩やかな前傾傾斜面41と、この前傾傾斜面41に続く水平面42からなる。食品載置台5の前記ピン53,54がカム溝91の直線部94にあって食品載置台5が前傾しているときは、図16に示すように、レバー30は第2の当たり部材40から離間している。したがって、レバー30およびこれと一体の各腕71は付勢力により回転し、各腕71の垂直部は食品載置面51から最大限立ち上がっている。
【0058】
食品載置台5の前記ピン53,54がカム溝91の円弧部93にあって食品載置台5の食品載置面51がほぼ水平になると、図17に示すように、レバー30の後端部が第2の当たり部材40の傾斜面41に当たり始める。食品載置台5がさらに後退してピン53,54がカム溝91の上記円弧部93に続く終端部の円弧部92に移動すると、図18に示すように、レバー30の後端部が上記傾斜面41に摺接しながら押され、レバー30が付勢力に抗して回転させられる。これにより各腕71の垂直部が食品載置台5の内方に向かって沈み始める。
【0059】
図19は食品載置台5がさらに後退した状態を示している。レバー30の後端部は第2の当たり部材40の傾斜面41と水平面42との境界付近に接していて、各腕71はその突起76のみが食品載置面51から突出する程度まで食品載置台5の内方に向かって沈み込む。食品載置台5が限界位置まで後退すると、図20に示すようにレバー30の後端部は当たり部材40の水平面42に接する。レバー30は付勢力に抗した回転限界位置まで回転させられ、各腕71の全体が食品載置台5の食品載置面51から食品載置台5の内方に退避する。
【0060】
このように、第2の実施例によれば、食品供給位置でレバー30と協働して各腕71を食品載置台5の食品載置面51から退避させるように構成されているため、各腕71を付勢力に抗し手動で退避させる必要がなく、操作性と作業能率を向上させることができる。供給された食品を切断すべく食品載置台5が駆動されると、図22に示すように、レバー30が第2の当たり部材40から離間して各腕71が付勢力により回転し、食品載置面51から各腕71の垂直部が立ち上がることにより食品載置台5に食品10が保持される。
【0061】
図21図22は、小さいサイズの食品10を食品載置台5に載置した状態を示しており、第1の実施例と同様に、各腕71の最も下側の突起78で食品10を食品載置台5の背面受け52に押し付けている。中サイズの食品を食品載置台5に載置した場合は各腕71の上下方向中央の突起77で食品を食品載置台5の背面受け52に押し付ける。大サイズの食品を食品載置台5に載置した場合は各腕71の最も上の突起76で食品を食品載置台5の背面受け52に押し付ける。
【0062】
第2の実施例によれば、食品供給位置において位置規制部材7を構成する各腕71を食品載置面51から自動的に退避させる第2の当たり部材40を設けたため、食品載置台5に食品を載置するときの操作が簡略化され、操作性を向上させることができる。
【実施例3】
【0063】
位置規制部材7を構成する各腕71の付勢力による回転限界を、切断しようとする食品のサイズに合わせて設定することができるようにしてもよい。図23乃至図25に示す第3の実施例がその例である。図23乃至図25において、食品載置台5の側面には、レバー30の近傍において、位置規制部材7の付勢力による回転限界位置を切り替えることができる回転位置選択機構110が設けられている。回転位置選択機構110は板状の部材からなるストッパ111を主体としてなる。
【0064】
ストッパ111は軸孔を有していて、この軸孔が前記軸55で貫通されることにより軸55を中心に回転することができる。ストッパ111は、上記軸孔を中心とする円弧に沿って3つの孔113、114、115を図23乃至図25において時計回りにこの順に有している。食品載置台5の側面にはピンが水平方向の姿勢で植えられており、上記ピンに3つの孔113,114、115の一つを選択して嵌めることにより、軸55を中心とするストッパ111の回転位置を選択することができる。上記ピンの先端部分には雄ねじが形成されていて、3つの孔113,114、115の一つが選択されて上記ピンが嵌められた状態で上記ピンにナット116がねじ込まれることにより、選択されたストッパ111の回転位置が維持される。ストッパ111には、その一部が切り起こされることによってレバー30に対する規制爪112が形成されている。
【0065】
上記孔113は、食品載置台5に載置される食品が小サイズの食品である場合に対応するもの、上記孔114は、食品載置台5に載置される食品が中サイズの食品である場合に対応するもの、上記孔115は、食品載置台5に載置される食品が大サイズの食品である場合に対応するものである。
【0066】
図23は小サイズの食品10に対応する孔113が選択されて上記ピンが嵌められた態様を示している。この態様では、アーム30およびこれと一体の各腕71が付勢力で限界位置近くまで回転してアーム30の側面が規制爪112に当たり、各腕71の付勢力による回転が規制されている。小サイズの食品10は各腕71の突起78と食品載置台5の背面受け52との間に挟み込まれて食品載置台5に保持される。
【0067】
図24は中サイズの食品101に対応する孔114が選択されて上記ピンが嵌められた態様を示している。この態様では、アーム30の付勢力による回転範囲が図23に示すアーム30の付勢力による回転範囲よりも制限され、各腕71の突起78は食品載置台5内に退避し、突起76、77が食品載置台5の食品載置面51上に突出している。各腕71と食品載置台5の背面受け52の間に中サイズの食品101を載置すると、各腕71の付勢力により、各腕71の突起77と上記背面受け52との間に食品101が挟み込まれて食品載置台5に保持される。
【0068】
図25は大サイズの食品102に対応する孔115が選択されて上記ピンが嵌められた態様を示している。この態様では、アーム30の付勢力による回転範囲が図24に示すアーム30の付勢力による回転範囲よりもさらに制限され、各腕71の突起78、77は食品載置台5内に退避し、突起76のみが食品載置台5の食品載置面51上に突出している。各腕71と食品載置台5の背面受け52の間に大サイズの食品102を載置すると、各腕71の付勢力により、各腕71の突起76と上記背面受け52との間に食品102が挟み込まれて食品載置台5に保持される。
【0069】
図23図24図25に示す何れの態様にせよ、スタートボタンの操作によって駆動機構6を作動させ、食品載置台5を前述のように往復移動させることにより、食品載置台に載置されている食品が切断され、排出部から前記受け取り部材8に排出される。排出部では、前述のとおり、当たり部材11にレバー30が摺接して各腕71が付勢力に抗し回転させられ、各腕71が食品載置台5食品載置面51から食品載置台5内に退避して、切断された食品が食品載置面51から放出される。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る食品切断装置は、主として海苔巻きなどの巻き寿司を主な対象食品として想定しているが、円柱状、角柱状、あるいは棒状の食品を輪切り状に切断するものである。したがって、本発明装置によって切断することができる対象食品は、巻き寿司のほか、蒲鉾、竹輪などの練り製品、その他のある程度の長さを有する食品の切断にも使用可能である。
【符号の説明】
【0071】
2 切断刃
5 食品載置台
6 駆動機構
7 位置規制部材
8 受け取り部材
10 対象食品
11 当たり部材
30 レバー
40 第2の当たり部材
51 食品載置面
55 軸
110 回転位置選択機構
120 付勢部材(コイルばね)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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