(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、操作に伴う静電容量の変化を検知することで、操作位置を判断する静電容量式の入力装置が存在している。
【0003】
静電容量式の入力装置は、スイッチやロータリーエンコーダー等の操作部や操作方法が決まっている入力装置とは異なり、使用者の直感的な入力操作ができるので様々な機器に応用範囲が広がっており、使用される環境も多様になりつつある。
【0004】
特許文献1では、入力装置において、操作に伴う容量変化が大きい領域を定義し、加重平均を行うことで操作位置を算出する構成が開示されている。
【0005】
以下、
図12から
図14を用いて、特許文献1に記載の入力装置について説明する。
図12は、従来技術の入力装置900の構成を示す図である。
図13は従来技術の入力装置900の動作タイミング図である。
図14は従来技術の入力装置900の領域抽出と加重平均の様子を示す図である。
【0006】
特許文献1に記載の入力装置900は、
図12に示すように、人の指やペンなどの検出対象によって操作を行う検出パネル911と、検出パネル911の駆動電極913を駆動する駆動手段921と、検出パネル911の検出電極914からの電荷もしくは電流を測定する電流測定手段931と、駆動電極913と検出電極914との間に挟持する絶縁手段912と、電流測定手段931で測定した電流の値から検出対象の物体の位置を演算により求める座標演算手段951と、全体の状態および工程を管理する制御手段971と、により構成されている。
【0007】
駆動手段921は、各駆動電極913の電圧を変化させることにより駆動電極913と検出電極914の交点に形成される静電容量に充放電を行い、電流測定手段931が駆動電極913と検出電極914の交点に形成される静電容量の充放電電流を測定することで、駆動電極913と検出電極914の交点に形成される静電容量を測定する。
【0008】
図13に示すように、静電容量を測定する際に複数サイクルの駆動と電流測定を行う場合には、ノイズの影響を分散させるためには複数回の測定を累積する必要がある。
【0009】
領域抽出では、駆動電極913と検出電極914の各交点の静電容量に対応した値から、指やペンなどにより押されている範囲を抽出し、加重平均により指示位置を計算する。
【0010】
図14は、領域抽出と加重平均の様子を示している。
図14において、縦線と横線は、それぞれ駆動電極913と検出電極914の座標を表している。交点にある黒丸の大きさは、各交点の静電容量の値に対応している。点線で囲まれた範囲は、静電容量が所定の値より大きい隣接した交点の集まりであり、例えば一本の指などの一つの指示体による静電容量の変化範囲に対応する。X印は、指示座標として加重平均により算出した位置である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施形態]
以下に本発明の実施形態における入力装置100について説明する。
【0026】
まず始めに本発明の実施形態における入力装置100の構成について
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は入力装置100の外観模式図であり、
図2は入力装置100の構成を示すブロック図である。
【0027】
入力装置100は、
図1に示すように、複数の容量検出部1aを有する座標入力部1と、座標入力部1に接続された容量計測部2と、容量計測部2に接続された制御部3と、を備えている。
【0028】
入力装置100は、
図1に示すように、操作者の指等が近接または接触することで入力操作を行なう座標入力部1を有しており、座標入力部1の入力操作面に沿って容量検出部1aがX方向にM個、X方向と直交するY方向にN個がマトリクス状に設けられている(M、Nは自然数とする)。
【0029】
容量検出部1aは静電容量を有しており、操作者が入力操作を行なうために座標入力部1に指等を接触すると、接触された位置およびその近傍にある容量検出部1aの静電容量が増加する。
【0030】
入力装置100は、
図2に示すように、座標入力部1と、座標入力部1に接続された容量計測部2と、容量計測部2に接続された制御部3と、を備えている。
【0031】
容量計測部2は、複数の容量検出部1a毎の静電容量を計測し、計測した静電容量をアナログ信号からデジタル信号へ変換した、Analog‐to‐Digital Convertion信号(ADC信号)を計測信号として制御部3へ出力する。
【0032】
制御部3は容量計測部2を制御し、容量検出部1a毎の計測信号を取得するとともに、取得した計測信号を容量検出部1aの座標情報に対応させる。この計測信号を用いて第1データ信号を算出し、この第1データ信号の演算の結果に基づいて制御信号を出力する。
【0033】
また入力装置100は、外部機器5にインターフェイス部4を介して接続され、外部機器5から入力装置100の動作用電力を供給されるとともに、制御部3から出力される制御信号を外部機器5に出力し、外部機器5から出力される入力装置100への制御信号を制御部3に出力する。
【0034】
次に第1実施形態における入力装置100の動作について
図3を用いて説明する。
図3は第1実施形態に係る入力装置100の動作概要を示すフローチャートである。
【0035】
まず制御部3は手順S1で、容量計測部2を制御して容量検出部1a毎の計測信号を取得し、計測信号と所定の基準値との差分値を第1データ信号とし、容量検出部1aの座標情報に対応させて、制御部3に含まれる第1データ信号記憶領域に記憶する。
【0036】
次に、手順S2では、第1データ信号に雑音除去処理を行なって第2データ信号を得て、容量検出部1aの座標情報に対応させて、制御部3に含まれる第2データ信号記憶領域に記憶する。
【0037】
手順S3では、第2データ信号に平滑化処理を行なって第3データ信号を得て、容量検出部1aの座標情報に対応させて、制御部3に含まれる第3データ信号記憶領域に記憶する。
【0038】
手順S4では、手順S3で得られた第3データ信号から操作位置を算出し、操作位置に対応した制御信号を出力する。
【0039】
図3のフローチャートで示された処理手順は制御回路に内蔵されたタイマ機能などによって定期的に繰り返して動作を行なう。
【0040】
次に、
図3のフローチャートに示した手順S1から手順S4の処理について
図4から
図11を用いて詳細に説明する。
【0041】
図4は、
図3に示したフローチャートの手順S1の詳細な処理手順を示したフローチャートである。
【0042】
制御部3は、
図4のフローチャートで示された手順S1_1で、計測信号を取得する対象となる容量検出部1aについて、X方向にm番目、Y方向にn番目の位置を座標情報(m,n)とすると、座標情報(m,n)に初期値(例えば、m=1,n=1)を設定し、手順S1_2で、座標情報(m,n)に対応した容量検出部1aの計測信号(ADC(m,n))を取得する。
【0043】
手順S1_3では、手順S1_2で取得された計測信号(ADC(m,n))から所定の基準値(BASE)との差分値(AD(m,n))を算出する。
【0044】
手順S1_4では、手順S1_3で算出した差分値(AD(m,n))を制御部3に含まれる第1データ信号記憶領域に記憶する。
【0045】
手順S1_5で座標情報(m,n)のmの値を1増加させ、手順S1_6でmの値を最大値Mと比較する。mの値が最大値Mを超えていなければ手順S1_2に戻って、更新された次の座標の座標情報(m+1,n)に対応した容量検出部1aの計測信号(ADC(m+1,n))を取得し、上記と同様に手順S1_2から手順S1_6までを、mの値が最大値Mより大きくなるまで繰り返す。
【0046】
手順S1_6でmの値を最大値Mと比較し、mの値が最大値Mを超えた場合、手順S1_7でmの値を初期値(例えば1)に戻し、nの値を1増加させ、手順S1_8でnの値を最大値Nと比較する。nの値が最大値Nを超えていなければ手順S2に戻って、更新された次の座標の座標情報(m,n+1)に対応した容量検出部1aの計測信号(ADC(m,n+1))を取得し、上記と同様に手順S1_2から手順S1_8までを、nの値が最大値Nより大きくなるまで繰り返す。
【0047】
手順S1_8でnの値を最大値Nと比較し、nの値が最大値Nを超えた場合、X方向にM個、X方向と直交するY方向にN個がマトリクス状に設けられているM×N個全ての容量検出部1aを走査し、それぞれの容量検出部1aの計測信号(ADC(m,n))の取得と、差分値(AD(m,n))の算出及び記憶が完了したことになるので、
図2のフローチャートの手順S1の動作を終了する。
【0048】
図5は、
図4に示したフローチャートの動作によって取得した計測値に関する説明図で、
図5(a)は手順S1_2で取得した計測値の例を示している。
図5(b)は
図5(a)の値を等高線グラフで表している。説明を簡単にするために、m及びnはそれぞれ1から8までの値をとり、全てで64個のデータで構成している。
【0049】
図5では、m=4、n=5に相当する位置が操作されているため、当該位置に相当する座標及びその近傍座標の値が大きくなっており、m=5、n=4に相当する座標に入力操作に伴う信号に雑音が重畳され、操作による接触と同じ値となっており、m=7、n=2に相当する位置の値を取得した際には、入力操作と離れた位置に、入力操作位置と同じ値の雑音が入力された例を表している。
【0050】
図6は、
図4に示したフローチャートの動作で算出した差分値に関する説明図で、
図6(a)は手順S1_2で取得した計測値から差分値を計算した例を示している。
図6(b)は
図6(a)の値を等高線グラフで表している。差分値を計算するための基準値は128として計算を行なっている。
【0051】
図7は、
図3に示したフローチャートの手順S2の詳細な処理手順を示したフローチャートである。
【0052】
制御部3は、
図7のフローチャートで示された手順S2_1で、雑音除去処理を行なう際の注目座標の座標情報を初期値(m=1,n=1)に設定し、手順S2_2で、前述した手順S1_3で算出した注目座標に対応した差分値(AD(m,n))と、この注目座標に近接する4つの近接座標に対応した差分値(AD(m−1,n)、AD(m+1,n)、AD(m,n−1)、AD(m,n+1))の値を第1データ信号の記憶領域から取得する。
【0053】
mの値が1の場合とnの値が1の場合及び、mの値が最大値Mの場合とnの値が最大値Nの場合は、注目座標の外側に容量検出部1aが存在しない。そのため、mの値が1の場合とnの値が1の場合近接する4つの近接座標に対応した差分値のうち(m−1,n)及び(m,n−1)に対応する差分値が存在しない。また、mの値が最大値Mの場合とnの値が最大値Nの場合は、注目座標に近接する4つの近接座標に対応した差分値のうち(m+1,n)(m,n+1)に対応する差分値が存在しない。よって、あらかじめ決めてある固定の値を存在しない近接座標に対応した差分値として以下の手順をすすめる。
【0054】
手順S2_3では、取得した4つそれぞれの近接座標に対応した差分値と注目座標に対応した差分値との差の絶対値を算出し、手順S2_3で算出した4つの近接座標に対応した差分値と注目座標に対応した差分値との差の絶対値が、手順S2_4から手順S2_7でそれぞれ異常検出閾値と比較される。
【0055】
手順S2_4から手順S2_7で、全ての近接座標に対応した差分値と注目座標に対応した差分値との差の絶対値も異常検出閾値(256)以上であると判断された場合には手順S2_8に移行する。
【0056】
手順S2_4から手順S_7で、全ての近接座標のうちいずれかに対応した差分値と注目座標に対応した差分値との差の絶対値が異常検出閾値より小さいと判断された場合は手順S2_9に移行する。
【0057】
手順S2_8では、4つの近接座標に対応した差分値の平均値を算出し、手順S2_2で取得した注目座標に対応した差分値(A1)を算出した平均値に置き換えて手順S2_9へ移行する。
【0058】
手順S2_9では、手順S2−2から手順S2_7または手順S2_8までで得られた注目座標に対応した差分値(A1)を雑音除去処理後の第2データ信号(NR(m,n))として制御部3の第2データ信号の記憶領域に記憶し、手順S2_10に移行する。
【0059】
手順S2_10で座標情報(m,n)のmの値を1増加させ、手順S2_11でmの値を最大値Mと比較する。mの値が最大値Mを超えていなければ手順S2_2に戻って、更新された次の座標の座標情報(m+1,n)を注目座標として対応した差分値(AD(m+1,n))と、注目座標に近接する4つの近接座標に対応した差分値(AD(m,n)、AD(m+2,n)、AD(m+1,n−1)、AD(m+1,n+1))を第1データ信号の記憶領域から取得し、上記と同様に手順S2_2から手順S2_10までを、mの値が最大値Mより大きくなるまで繰り返す。
【0060】
手順S2_11でmの値を最大値Mと比較し、mの値が最大値Mを超えた場合、手順S2_12でmの値を初期値に戻し、nの値を1増加させ、手順S2_13でnの値を最大値Nと比較する。nの値が最大値Nを超えていなければ手順S2_2に戻って、更新された次の座標の座標情報(m,n+1)を注目座標として、注目座標(m,n+1)に対応した差分値(AD(m,n+1))と、注目座標に近接する4つの近接座標に対応した差分値(AD(m−1,n+1)、AD(m+1,n+1)、AD(m,n)、AD(m,n+2))を第1データ信号の記憶領域から取得し、上記と同様に手順S2_2から手順S2_12までを、nの値が最大値Nより大きくなるまで繰り返す。
【0061】
手順S2_13でnの値を最大値Nと比較し、nの値が最大値Nを超えた場合、X方向にM個、X方向と直交するY方向にN個がマトリクス状に設けられているM×N個全ての容量検出部1a毎の雑音除去処理および記憶が完了したことになるので、
図2のフローチャートの手順S2の動作を終了する。
【0062】
図8は
図7の雑音除去処理で算出した雑音除去処理後の値に関する説明図であり、
図6に示した手順S1で算出した差分値(AD(m,n))に対して、上述した手順S2の雑音除去処理を行なった結果を示す図である。尚、注目座標に近接する4つの近接座標に対応した差分値が存在しない場合、固定の値として0(零)を存在しない近接座標に対応した差分値として計算を行なっている。
【0063】
図8(a)は
図6(a)に示した差分値(AD(m,n))に雑音除去処理を行なった結果得られた第2データ信号の値(NR(m,n))であり、
図8(b)は
図8(a)の第2データ信号の値を等高線グラフで表したものである。雑音除去処理を行なうための異常値検出閾値は
図7の手順S2_4から手順S2_7と同じ値(256)を用いて計算を行なっている。
【0064】
図8に示す通り、
図5で示した計測データで入力されたm=7、n=2に相当する位置に入力された、入力操作と離れた位置の雑音が効果的に低減されている。
【0065】
以上のように、1回の走査で得られたX方向にM個、X方向と直交するY方向にN個がマトリクス状に設けられているM×N個全ての容量検出部1aに対応した差分値から、注目座標(m,n)に対応した差分値(AD(m,n))と、近接する4つの近接座標に対応した差分値(AD(m−1,n)、AD(m+1,n)、AD(m,n−1)、AD(m,n+1))を比較する。注目座標に対応した差分値が、近接する4つの近接座標に対し大きな差が有る場合は、注目座標に対応した差分値が雑音によるものと判断し、4つの近接座標に対応した差分値の平均値を算出し、注目座標に対応した差分値を算出した平均値に置き換えるので、累積処理を行なわなくても効果的に雑音除去処理を行うことができる。
【0066】
図9は、
図3に示したフローチャートの手順S3の詳細な処理手順を示したフローチャートである。
【0067】
制御部3は、
図9のフローチャートで示された手順S3_1で、平滑化処理を行なう際の注目座標の座標情報を初期値(m=1,n=1)に設定し、手順S3_2で、前述した手順S2で算出した注目座標に対応した雑音除去処理後の第2データ信号(NR(m,n))と、注目座標に近接する8つの近接座標に対応した雑音除去処理後の第2データ信号(NR(m−1,n−1)、NR(m−1,n)、NR(m−1,n+1)、NR(m,n−1)、NR(m,n+1)、NR(m+1,n−1)、NR(m+1,n)、NR(m+1,n+1))の値を第2データ信号の記憶領域から取得する。
【0068】
座標入力部1の外周に沿った位置に存在する容量検出部1aに対応した座標をしめす、mの値が1の場合とnの値が1の場合及び、mの値が最大値Mの場合とnの値が最大値Nの場合は、注目座標の外側に容量検出部1aが存在しない。つまり、mの値が1の場合とnの値が1の場合近接する4つの近接座標に対応した雑音除去処理後の第2データ信号のうち(m−1,n)及び(m,n−1)に対応する雑音除去処理後の第2データ信号が存在しない。また、mの値が最大値Mの場合とnの値が最大値Nの場合は、注目座標に近接する4つの近接座標に対応した雑音除去処理後の第2データ信号のうち(m+1,n)(m,n+1)に対応する雑音除去処理後の第2データ信号が存在しない。そのため、あらかじめ決めてある固定の値を存在しない近接座標に対応した雑音除去処理後の第2データ信号として以下の手順をすすめる。
【0069】
手順S3_3では、取得した注目座標に対応した雑音除去処理後の第2データ信号と、8つの近接座標に対応した雑音除去処理後の第2データ信号を、ガウス関数に基づいた重み付けとなる(式1)の計算式にて加重平均の値(AV(m,n))を算出する。
【0070】
(式1)
AV(m,n)=[4×NR(m,n)+2×{NR(m−1,n)+NR(m,n−1)+NR(m,n+1)×NR(m+1,n)}+NR(m−1,n−1)+NR(m−1,n+1)+NR(m+1,n−1)+NR(m+1,n+1)]/16
手順S3_4では、手順S3−3で計算した注目座標の加重平均の値AV(m,n)を平準化処理後の第3データ信号(AV(m,n))として制御部3に含まれる第3データ信号記憶領域に記憶し、手順S3_5に移行する。
【0071】
手順S3_5で座標情報(m,n)のmの値を1増加させ、手順S3_6でmの値を最大値Mと比較し、mの値が最大値Mを超えていなければ手順S3_2に戻って、更新された次の座標の座標情報(m+1,n)を注目座標として対応した雑音除去処理後の第2データ信号(NR(m+1,n))と、注目座標に近接する8つの近接座標に対応した雑音除去処理後の第2データ信号(NR(m,n−1)、NR(m,n)、NR(m,n+1)、NR(m+1,n−1)、NR(m+1,n+1)、NR(m+2,n−1)、NR(m+2,n)、NR(m+2,n+1))の値を第1データ信号の記憶領域から取得し、上記と同様に手順S3_2から手順S3_5までを、mの値が最大値Mより大きくなるまで繰り返す。
【0072】
手順S3_6でmの値を最大値Mと比較し、mの値が最大値Mを超えた場合、手順S3_7でmの値を初期値に戻し、nの値を1増加させ、手順S3_8でnの値を最大値Nと比較する。nの値が最大値Nを超えていなければ手順S3_2に戻って、更新された次の座標の座標情報(m,n+1)を注目座標として対応した雑音除去処理後の第2データ信号(NR(m,n+1))と、注目座標に近接する8つの近接座標に対応した雑音除去処理後の第2データ信号(NR(m−1,n)、NR(m−1,n+1)、NR(m−1,n+2)、NR(m,n)、NR(m,n+2)、NR(m+1,n)、NR(m+1,n+1)、NR(m+1,n+2))の値を第1データ信号の記憶領域から取得し、上記と同様に手順S3_3から手順S3_7までを、nの値が最大値Nより大きくなるまで繰り返す。
【0073】
手順S3_8でnの値を最大値Nと比較する。nの値が最大値Nを超えた場合、X方向にM個、X方向と直交するY方向にN個がマトリクス状に設けられているM×N個全ての容量検出部1a毎の平滑化処理および記憶が完了したことになるので、
図3のフローチャートの手順S3の動作を終了する。
【0074】
図10は
図9の平滑化処理で算出した平滑化処理後の値に関する説明図であり、
図8に示した手順S2で算出した第2データ信号の値(NR(m,n))から、上述した手順S3の平滑化処理を行なった結果を示す図である。尚、注目座標に近接する8つの近接座標に対応した第2データ信号が存在しない場合、固定の値として0(零)を存在しない近接座標に対応した第2データ信号の値として計算を行なっている。
【0075】
図10(a)は
図8(a)に示した第2データ信号の値(NR(m,n))をガウス関数に基づいて重み付けされた加重平均によって平滑化処理を行なった結果得られた第3データ信号の値(AV(m,n))である。
図10(b)は
図10(a)の第3データ信号の値を等高線グラフで表したものである。
【0076】
図10に示す通り、ガウス関数に基づいて重み付けされた加重平均によって平滑化処理しているので、
図5で示した計測データで入力されたm=5、n=4に相当する座標に入力された入力操作に伴う信号に重畳された雑音が効果的に低減され、
図5で示した操作者によって操作されているm=4、n=5に相当する位置だけが極大値となっている。
【0077】
以上のように、注目座標に対応した雑音除去処理後の第2データ信号(NR(m,n))と、注目座標に近接する8つの近接座標に対応した雑音除去処理後の第2データ信号(NR(m−1,n−1)、NR(m−1,n)、NR(m−1,n+1)、NR(m,n−1)、NR(m,n+1)、NR(m+1,n−1)、NR(m+1,n)、NR(m+1,n+1))の値を第2データ信号の記憶領域から取得して、平滑化処理を行なうので、雑音の影響が少ない加重平均処理を行うことができる。
【0078】
また、平滑化処理はガウス関数に基づく加重平均処理であるので、操作位置の座標に対応した第3データが最も大きな値となり、操作位置から距離が離れた箇所の第3データが操作位置の座標から離れるほど小さな値となり、操作位置からの距離に対応した平滑化が可能となる。このことから、操作位置の検出精度を高くすることができる。
【0079】
図11は、
図3に示したフローチャートの手順S4の操作位置算出処理の詳細な手順を示したフローチャートである。
【0080】
制御部3は、
図11のフローチャートで示された手順S4_1で、操作位置の算出を行なうための最大値保持メモリ(AVmax)と、最大値の座標情報を記憶するメモリ(Pmax)の値を消去(0に設定)する。
【0081】
手順S4_2では、操作位置算出を行なう座標情報を初期値(m=1,n=1)に設定し、手順S4_3で座標情報に対応した平滑化処理後の第3データ信号(AV(m,n))の値を第3データ信号の記憶領域から取得する。
【0082】
手順S4_4では、手順S4_3で取得した平滑化処理後の第3データ信号(AV(m,n))の値を、取得した平滑化処理後の第3データ信号(AV(m,n))の最大値を保存する最大値保持メモリ(AVmax)の値と比較を行ない、取得した平滑化処理後の第3データ信号(AV(m,n))の値が最大値保持メモリ(AVmax)の値以下の場合は手順S4_7に移行する。また、最大値保持メモリは手順S4_1の処理によって初期値は0に設定されている。
【0083】
手順S4_4で、平滑化処理後の第3データ信号(AV(m,n))の値が最大値保持メモリ(AVmax)の値より大きい場合は手順S4_5で最大値保持メモリ(AVmax)に平滑化処理後の第3データ信号(AV(m,n))の値を記憶し、手順S4_6で当該第3データ信号(AV(m,n))の座標情報を最大値の座標情報を記憶するメモリに記憶し(Mmax=m、Nmax=n)、手順S4_7に移行する。
【0084】
手順S4_7で座標情報(m,n)のmの値を1増加させ、手順S4_8でmの値を最大値Mと比較する。mの値が最大値Mを超えていなければ手順S4_3に戻って、更新された次の座標情報(m+1,n)に対応した平滑化処理後の第3データ信号(AV(m+1,n))の値を第3データ信号の記憶領域から取得し、mの値が最大値Mより大きくなるまで、手順S4_4から手順S4_7までを繰り返す。
【0085】
手順S4_8でmの値を最大値Mと比較し、mの値が最大値Mを超えた場合、手順S4_9でmの値を初期値に戻し、nの値を1増加させる。手順S4_10でnの値を最大値Nと比較し、nの値が最大値Nを超えていなければ手順S4_3に戻って、更新された座標情報(m,n+1)に対応した平滑化処理後の第3データ信号(AV(m,n+1))の値を第3データ信号の記憶領域から取得し、上記と同様に手順S4_4から手順S4_9までを、nの値が最大値Nより大きくなるまで繰り返す。
【0086】
手順S4_10でnの値を最大値Nと比較し、nの値が最大値Nを超えた場合、X方向にM個、X方向と直交するY方向にN個がマトリクス状に設けられているM×N個全ての容量検出部1a毎の平滑化処理および記憶が完了したことになるので、手順S4_11へ移行する。
【0087】
手順S4_11では、最大値保持メモリ(AVmax)の値と操作による接触を判断するための接触閾値との比較を行ない、最大値保持メモリ(AVmax)の値が接触閾値より大きい場合には手順S4_12に移行し、最大値保持メモリ(AVmax)の値が接触閾値以下の場合には手順S4_13に移行する。
【0088】
手順S4_12では、手順S4_11で操作による接触有と判断されたので、最大値の座標情報を記憶するメモリ(Mmax,Nmax)に対応した制御信号を出力して
図2のフローチャートの手順S4の動作を終了する。
【0089】
手順S4_13では、手順S4_11で操作による接触無と判断されたので、無入力に対応した制御信号を出力して
図2のフローチャートの手順S4の動作を終了する。
【0090】
以上のように、平滑化処理後の第3データ信号(AV(m,n))の値を第3データ信号の記憶領域から取得して最大値をもとめて、操作による接触を判断する。接触有と判断された場合は最大値の座標情報を記憶するメモリ(Mmax,Nmax)に対応した制御信号を出力する。また接触無と判断された場合は、無入力に対応した制御信号を出力するので、操作位置に応じた出力を得ることができるので座標入力動作を行うことができる。
【0091】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る入力装置100によれば、複数の容量検出部1aを有し、操作体が操作を行う座標入力部1と、複数の容量検出部1a毎の静電容量を計測し、計測した静電容量をAD変換して計測信号として出力する容量計測部2と、容量計測部2を制御し、計測信号を容量検出部1aの座標情報と関連付けて取得するとともに、計測信号と基準値との差分値である第1データ信号を算出し、この第1データ信号を演算するとともに、演算の結果に基づいて制御信号を出力する制御部と、を有している。更に制御部3は、第1データ信号に対して雑音除去処理を行い、雑音除去処理を行った結果を第2データ信号として座標情報と関連付けて記憶する第1の演算と、座標情報と関連付けて記憶された第2データ信号に対して平滑化処理を行い、前記平滑化処理を行なった結果と座標情報とを関連付けて第3データ信号とする第2の演算と、を行うとともに、第3データ信号を用いて操作位置を算出する。そのため、雑音の影響を抑圧して正確な操作位置の座標を算出することができ、複数回のデータ累積を行なうことなく演算が可能なため、応答時間が速いので操作への追従性が良く操作性の高い入力装置を提供することができる。
【0092】
雑音除去処理は、座標情報に含まれる1つの注目座標と、注目座標に近接する複数の近接座標と、に関連付けられた第1データ信号を使用し、平滑化処理は、座標情報に含まれる1つの注目座標と、注目座標に近接する複数の近接座標と、に関連付けられた第2データ信号を使用するので、特定の座標だけが異常な値となるような雑音をより効果的に除去することができる。
【0093】
平滑化処理はガウス関数に基づく加重平均処理であるので、操作位置の座標に対応した第3データが最も大きな値となり、操作位置から距離が離れた箇所の第3データが操作位置の座標から離れるほど小さな値となり、操作位置からの距離に対応した平滑化が可能となる。このことから、操作位置の検出精度を高くすることができる。
【0094】
雑音除去処理は、注目座標に関連付けられた第1データ信号と複数の近接座標に関連付けられた第1データ信号との差が異常判断閾値以上になった場合に、注目座標に関連付けられた第1データ信号の値を複数の近接座標に関連付けられた第1データ信号の平均値で置き換えるので、複数回のデータ累積を行なうことなく効果的に雑音除去を行なうことができる。
【0095】
以上のように、本発明の実施形態に係る入力装置を具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0096】
(1)本実施形態において、入力装置100と外部機器5はインターフェイス部4を介して接続する例を示して説明したが、インターフェイス部4を具備せず制御部3と外部機器5が直接接続されて構成されていても良い。
【0097】
(2)本実施形態における雑音除去処理において、4つの近接座標に対応した差分値と注目座標に対応した差分値との差の絶対値が全て異常検出閾値以上であると判断された場合に4つの近接座標に対応した差分値の平均値を算出する例を示して説明を行なったが、いずれか1つの近接座標に対応した差分値と注目座標に対応した差分値との差の絶対値が異常検出閾値以上であると判断された場合に近接座標に対応した差分値の平均値を算出しても良く、また近接座標に対応した差分値と注目座標に対応した差分値との差の絶対値が異常検出閾値を越えるものが多い場合に近接座標に対応した差分値の平均値を算出するようにしても良い。
【0098】
(3)本実施形態における雑音除去処理において注目座標の差分値(AD(m,n))に対し近接する4つの近接座標を(m−1,n)、(m+1,n)、(m,n−1)、(m,n+1)として動作の説明を行ったが、近接する4つの近接座標を(m−1,n−1)、(m−1,n+1)、(m+1,n−1)、(m+1,n+1)としても良く、また近接する8つの座標(m−1,n−1)、(m−1,n)、(m−1,n+1)、(m,n−1)、(m,n+1)、(m+1,n−1)、(m+1,n)、(m+1,n+1)に対応した差分値を用いて雑音除去処理を行なっても良い。
【0099】
(4)本実施形態において、制御部3で使用するデータについて具体的な数値を示して説明を行なったが、組込む機器や想定される使用状態に合わせ適宜値を変えて実施しても良く、固定の値で例示した数値も周囲温度や動作環境の変動等に応じて補正等を行なうように変更して実施しても良い。
【0100】
(5)本実施形態において、雑音除去処理や平滑化処理について累積処理を行なわない動作例で説明を行なったが、追従性を損なわない程度の軽微な累積処理を併用して雑音処理や平滑化処理を行なうように構成しても良い。