特許第5988312号(P5988312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988312
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】アノードアッセンブリ及びその方法
(51)【国際特許分類】
   C23F 13/02 20060101AFI20160825BHJP
   C23F 13/18 20060101ALI20160825BHJP
   E04B 1/64 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   C23F13/02 A
   C23F13/02 L
   C23F13/18
   C23F13/02 Z
   E04B1/64 Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-537212(P2013-537212)
(86)(22)【出願日】2011年11月8日
(65)【公表番号】特表2014-501846(P2014-501846A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】GB2011052166
(87)【国際公開番号】WO2012063056
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年10月9日
(31)【優先権主張番号】1018830.8
(32)【優先日】2010年11月8日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511094370
【氏名又は名称】グラス,ガレス
(73)【特許権者】
【識別番号】511094417
【氏名又は名称】デヴィソン,ナイジェル
(73)【特許権者】
【識別番号】511094392
【氏名又は名称】ロバーツ,エイドリアン
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】グラス,ガレス
(72)【発明者】
【氏名】デヴィソン,ナイジェル
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ,エイドリアン
【審査官】 向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/043113(WO,A2)
【文献】 国際公開第2009/081452(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 13/00〜13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
犠牲金属素子、活性剤、裏込材、及び少なくとも1つのスペーサを使用するコンクリート内の鋼を保護する方法において、
犠牲アノードアッセンブリをそこに設置する目的で、前記コンクリート内にアノードキャビティを形成するステップと、
前記犠牲金属素子及び活性剤を前記アノードキャビティ内の前記裏込材に配置するステップと、
前記スペーサを用いて前記活性剤を前記アノードキャビティの側面から間隔を離して配置するステップと、
前記コンクリート内の前記鋼を保護するために、前記犠牲金属素子に連結された少なくとも1つの導電体を用いて、前記犠牲金属素子から前記コンクリート内の前記鋼へと電流を流すステップとを含み、
前記裏込材が柔軟な粘性裏込材で、設置プロセスが完了する前に硬化せず、
前記裏込材が前記犠牲金属の溶解による生成物を収容し、
前記犠牲金属素子が鋼よりも貴でない金属を含み、
前記少なくとも1つのスペーサが、圧縮下で配置される弾性のあるスペーサであることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記少なくとも1つのスペーサが前記犠牲金属素子を保持し、且つ前記アノードキャビティ内の前記活性剤が、前記アノードキャビティの内側で面する表面から間隔を離した関係にあることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記少なくとも1つのスペーサが、内側で面する前記アノードキャビティの表面より外側に放射状に延伸する複数の部材を有し、前記アッセンブリが前記アノードキャビティ内に配置されると、これらの部材が内側で面する前記アノードキャビティの表面と係合することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、前記スペーサが前記犠牲金属素子及び活性剤を前記アノードキャビティの少なくとも1つの面の中心に配置することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、前記犠牲金属素子及び前記活性剤が前記アノードキャビティ内に配置される前に、前記活性剤が前記犠牲金属素子に組み合わされることを特徴とする方法。
【請求項6】
犠牲アノードアッセンブリの有効期間を延長する方法であって、
犠牲金属素子の活性を維持するために、活性剤を用いて鋼よりも貴でない前記犠牲金属素子を組み合わせて、前記犠牲アノードアッセンブリを形成するステップと、
前記犠牲アノードアッセンブリの有効期間を延長するために、酸素、水蒸気、及び二酸化炭素のうち少なくとも1つが実質的に存在しない包装内に、前記犠牲アノードアッセンブリを封印するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記包装に少なくとも酸素及び水蒸気が実質的に存在しないことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート内に形成されるキャビティにアッセンブリが埋め込まれ、更に具体的には前記キャビティが前記アッセンブリを収容する目的で機械的に形成される、犠牲アノードアッセンブリを使用するコンクリート内の鋼の保護に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造は、鉄筋の腐食により、度々劣化に悩まされる。これは、しばしばコンクリートの塩化不純物又は炭酸化により引き起こされる。コンクリート内の鋼の腐食を抑制するために、犠牲アノードが利用される。コンクリート内のキャビティに埋め込まれる犠牲アノードアッセンブリは、典型的には、鋼よりも貴でない(電気化学的には鋼より陰性の強い)亜鉛等の犠牲金属、犠牲金属の活性を保つための活性剤、犠牲金属溶解による生成物を収容する裏込材、犠牲金属素子と鋼又は電源とを連結するための延伸性のある長尺の金属導電体を含む。
【0003】
ある場合(一般的に消耗活性剤が使用されている場合)には、裏込材及び活性剤が犠牲金属及び導電体と共に工場で組み合わせられ、次にこのアッセンブリは、コンクリート内に形成されたキャビティのセメント質モルタルに埋め込むことで、その場で設置される。腐食による損傷の結果形成されるキャビティ内では、キャビティがコンクリートの効力や特性を回復するためのコンクリート修復材に相当に充填される前に、犠牲アノードアッセンブリが鋼に繋がれる。他の場合では、(例えばドリルで開けられた穴等の)アノードキャビティが犠牲アノードアッセンブリを設置する目的で機械的に形成されることがあり、この場合アノードキャビティは実質的にアッセンブリで満たされる(American Concrete Institute発行のRepair Application Procedure 8参照 www.concrete.org/general/RAP−8.pdf)。
【0004】
より最近の進展に、犠牲アノードアッセンブリのアノードキャビティ内での組み合わせがある。例えば、犠牲金属素子がアノードキャビティ内の裏込材に直接埋め込まれることがある(国際公開第2010/043908号パンフレット)。アノードキャビティはまた、隣接する損傷していないコンクリート内の鋼を保護するために、腐食による損傷の結果形成されるより大きなキャビティ内で開口されることがある(国際公開第2010/043908号パンフレット)。
【0005】
鉄筋コンクリート構造に埋め込まれる犠牲アノードは、鉄筋の保護に用いられる場合は活性化される必要がある。犠牲アノードの活性剤は、消耗活性剤又は触媒活性剤と称されることがある。
【0006】
消耗活性剤の例として、ヒドロオキシイオンがある。この物質は犠牲金属素子と反応して可溶物を生成する。この形式での活性化の問題点は、犠牲アノードアッセンブリが機能する期間もまた、提供される活性剤の量に依存することである。これらの活性剤は通常、アノードアッセンブリと裏込材との組み合わせに先行して組み合わせられる。別の問題としては、カリウム及び水酸化ナトリウム等のいくつかの活性剤はコンクリートの周囲の組成物と反応して、アルカリ骨材反応として知られる有害な膨張効果をもたらし得ることがある。
【0007】
触媒活性剤の例として、ハロゲン化物イオン及び硫酸塩イオンがある(国際公開第2006/043113号パンフレット)。これらのイオンは犠牲金属素子上の不動態皮膜を不安定にするが、このプロセスでは実質的に消費されない。犠牲アノードアッセンブリが機能する期間は、これらの活性剤の量には依存しない。しかしながら、この形式での活性化の問題点は、これらの活性剤が鉄筋にも同様に激しく作用することである。
【0008】
犠牲アノードアッセンブリは、度々電源を用いて印加電流処理を行うことがある(国際公開第2006/097770号)。これはコンクリートに存在する塩化物を犠牲金属素子へと引き出すことに用いられ、アノードアッセンブリを活性化することができる。この場合、犠牲金属素子の活性化は、既にコンクリート内に存在する激しい汚染物質を使用してのみ達成され得る。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、一旦犠牲アノードアッセンブリがコンクリート内に形成されたアノードキャビティに配置されると、鉄筋を触媒媒介物又は触媒活性剤との強固な接触による危険に晒さないようにして、触媒活性媒介物又は触媒活性剤を使用する方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、犠牲アノードアッセンブリがコンクリート内に形成されたアノードキャビティに配置される際に、コンクリートを消耗活性媒介物との強固な接触による危険に晒さないようにして、消耗活性剤を使用する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様において、本発明は、犠牲金属素子、活性剤、裏込材、及び少なくとも1つのスペーサを使用する、コンクリート内の鋼を保護する方法であって、
犠牲アノードアッセンブリをそこに取り付ける目的で、コンクリートにアノードキャビティを形成するステップと、
そのキャビティ内の裏込材に犠牲金属素子及び活性剤を配置するステップと、
スペーサを用いて、活性剤をアノードキャビティの側面から間隔を離して配置するステップと、
犠牲金属素子に連結された少なくとも1つの導電体を用いて、犠牲金属素子からコンクリート内の鋼まで電流を流し、コンクリート内の鋼を保護するステップとを含み、
裏込材は柔軟な粘性裏込材で設置プロセスが完了する前に硬化せず、
且つ裏込材は犠牲金属溶解による生成物を収容し、且つ犠牲金属素子が鋼よりも貴でない金属を含む方法を提供する。
【0012】
犠牲金属素子及び活性剤は、アノードキャビティ内に埋め込まれる前に、共に組み合わされることが好ましい。活性媒介物は、犠牲金属素子へのコーティング、又は犠牲金属素子との混合の用途で用いられ得る。活性化コーティングには、結合剤及び活性媒介物が含まれる。結合剤の例の1つに硫酸カルシウムがあり、それは活性剤としても機能する。結合剤の他の例には屋外用金属塗料があり、それは有機溶剤で薄めることができる。この場合、結合剤は不活性であり、不活性結合剤の分量は乾燥時の塗料の重量に対して20%を下回ることが好ましい。
【0013】
活性媒介物又は活性剤は、コンクリート内の犠牲アノード向けの活性剤として任意の既知のもので良い。活性媒介物は、触媒活性媒介物であることが好ましい。好適な活性媒介物又は活性剤の例は、国際公開第2006/043113号パンフレットにおいて開示されている。
【0014】
犠牲金属素子に含まれる活性媒介物の分量は好ましくは必要最少量であるべきで、それはアノードキャビティ全体に活性媒介物が均一に供給される場合に、コンクリート内の鋼又はアノードキャビティが形成されるコンクリートに対して重大な腐食のリスクをもたらすのに不十分な濃度にまで希薄化されるようにするためである。それにより、犠牲金属素子が消費される際に活性剤により鋼にもたらされる何れの腐食のリスク、又はコンクリートにもたらされるリスクは、ごく僅かになる。
【0015】
スペーサは、弾力性のあるものが好ましい。弾力性は、金属又はプラスチックを使用することで得られ得る。スペーサは弾力性のあるプラスチックスペーサであり得る。金属スペーサは絶縁されていることが好ましく、それはポリマを使用することで得られる。スペーサは非伝導性物質を含むことが好ましい。このスペーサは、弾力性をもたらす、又は弾力性のある構成要素を絶縁するのに十分なポリマを含み得る。
【0016】
スペーサは、結合機構を用いて犠牲金属素子に結合されることが好ましい。このスペーサは、アノードキャビティ内に埋め込まれる前に、犠牲金属素子及び活性剤と共に組み込まれることが好ましい。
【0017】
スペーサは、犠牲金属素子が設置され得る場所の中に穿孔又は開口部を有する、ハウジングスペーサであることが好ましい。使用の際には、スペーサはキャビティ内で犠牲金属素子との間隔の離れた配置を維持することが好ましい。スペーサは、犠牲金属素子及び活性剤をアノードキャビティの壁面より離れた状態に維持又は保持することが好ましい。このことは、スペーサがキャビティ内に配置される際に、スペーサが犠牲金属素子をきつく押さえ、且つアノードキャビティの壁面間に圧力をかけられるように、コンクリート内のアノードキャビティおよびスペーサの大きさを設定することで得られる。この例においてスペーサはアノードキャビティ内で圧縮下にあり、スペーサと壁面との間の圧力により、スペーサが摩擦を利用して壁面を押さえる結果が得られる。
【0018】
アノードキャビティは3面を持つ空間である。スペーサは犠牲金属素子及び活性剤を、アノードキャビティの少なくとも1つの面の中心に設置することが好ましい。スペーサは犠牲金属素子及び活性剤を、アノードキャビティの2つの面の中心に設置することがあり得る。
【0019】
裏込材は、コンクリートのキャビティに埋め込まれる犠牲アノードに使用される任意の既知の裏込材で良い。例えば、裏込材はアノードアッセンブリを設置する際に水と混合されてペーストを生成する粉末であり得、その一例として、微量の空気を取り込んだセメントモルタルのペーストがあげられる。裏込材の他の例が、国際公開第2007/039768号で開示されている。裏込材は少なくとも48時間は柔軟性及び粘性を保持することが好ましく、且つ裏込材の容器、又はより具体的にはカートリッジ内での保存を実践できるように、(例えば1箇月等)更に長い期間その効力を保持することがより好ましい。そのような裏込材の一例は、石灰モルタルのペーストである。裏込材はアノードキャビティ内に配置されることが好ましく、また組み合わせられた犠牲金属素子、活性剤、及びスペーサは、キャビティの裏込材内に圧入されることが好ましい。
【0020】
アノードキャビティは、コンクリート内でコアリング若しくはドリルで開けられた穴、又は切削された溝状のものであることが好ましい。犠牲金属素子は、亜鉛又は亜鉛合金からなることが好ましい。犠牲金属素子から鋼まで電流を流すために、犠牲金属素子には導電体が取り付けられる。導電体は鋼又はチタン製の電線であり得る。犠牲金属素子は、導電体部分の周辺に鋳込まれることが好ましい。導電体はガルバニック電流を供給するために鋼に直接取り付けられることがあり、又はガルバニック電流に先行して印加電流を供給するために、電源を介して鋼に連結されることがある。導電体が鋼の近辺に直接連結される場合、その導電体は長さが250mmを超える、長尺で延伸性のあるものであることが好ましい。
【0021】
別の態様において、本発明は第1の態様で説明した方法で使用される鉄筋コンクリートの保護装置を提供し、アノードアッセンブリ及び単独の裏込材を含む鉄筋コンクリート保護材において、
アノードアッセンブリは犠牲金属素子、活性剤、及び少なくとも1つのスペーサを含み、
且つ少なくとも1つのスペーサは、犠牲アノードアッセンブリの中心から外側限界まで延伸される、複数の外側へと延伸する部材を有し、且つ
少なくとも1つのスペーサは、活性剤と外側に延伸する部材の2つの隣接する外側限界を繋ぐ線との間に、少なくとも1つの空間を画定し、且つ
犠牲金属素子は鋼よりも貴でない金属を含み、且つ裏込材は柔軟な粘性裏込材で、前記少なくとも1つのスペーサ及び活性剤により画定された空間に充填される。
【0022】
犠牲金属素子/活性剤アッセンブリの試作品製作過程において、これらのアッセンブリが空気との接触で劣化し得ることが見出された。このことにより、活性剤を収容する犠牲アノードアッセンブリの有効期間が限定される。本発明の更なる目的は、一旦犠牲金属素子及び活性剤が空気及び/又は空気中の水分に晒されると通常劣化する、活性剤を収容する犠牲アノードアッセンブリの有効期間を延長する方法を提供することである。
【0023】
別の態様において、本発明は犠牲アノードアッセンブリの有効期間を延長する方法を提供し、その方法は、
犠牲アノードアッセンブリを形成するために犠牲金属素子の活性を維持する活性剤と共に、鋼よりも貴でない犠牲金属素子を組み込むステップと、
犠牲アノードアッセンブリの有効期間を延長するために、犠牲アノードアッセンブリを酸素、水蒸気、及び二酸化炭素のうち少なくとも1つが実質的に存在しない容器に封印するステップとを含む。
【0024】
鋼よりも貴でない犠牲金属素子及び活性剤を含む犠牲アノードアッセンブリの有効期間を延長する方法の1つでは、アノードアッセンブリは容器に配置され、その容器は真空化により空気が吸い出され、また容器への開口部は封印されている。
【0025】
好ましいプロセスは真空包装として知られ、食品加工業界で使用されている。この場合、容器は袋状になる。この袋は少なくとも1面にくぼみを持ち、真空下での袋から外への空気の流れを促進する。必要な真空状態に達すると、袋の開口部はプラスチックの加熱と溶解とを共に用いて封印される。
【0026】
スペーサ及び長尺のコネクタは、犠牲金属素子及び活性剤と共に組み込まれ得る。プラスチックの袋を形成するプラスチックには、真空包装のプロセスで穴が開くことは起きてはならず、袋に穴が開くことを防止するために2つ以上のプラスチック層が利用され得る。
【0027】
活性剤及び単数又は複数のアノードアッセンブリが真空包装される場所では、アッセンブリはプラスチック袋内の不活性ガスにより封印されることがある。例えば、酸素及び/又は水蒸気は、袋内のアノードアッセンブリの寿命を維持するためにプラスチック袋内のガスより除去されることがある。不活性ガスの例には、乾燥窒素及びアルゴンがあげられる。
【0028】
犠牲金属素子、活性剤、柔軟な粘性裏込材、及び導電体を含む1つ以上の犠牲アノードアッセンブリを使用する、コンクリート内の鋼を保護する方法では、鋼をコンクリートパッチ修復領域に晒し、パッチ修復領域に隣接するコンクリート内に、犠牲アノードアッセンブリをそこに設置する目的で、コアリング又はドリルで開けられた穴を成すアノードキャビティを形成し、犠牲金属素子及び活性剤をキャビティ内の裏込材に埋め込み、スペーサを用いて活性剤をアノードキャビティの内側で面する表面から間隔を離して配置し、且つ、犠牲金属素子が埋め込まれる前に犠牲金属素子と共に組み込まれ、犠牲金属素子を鋼まで重ね継ぎすることなく接続するために十分な長さのある長尺で延伸性のある導電体を用いて、犠牲金属素子をパッチ修復の隣接箇所に晒される鋼に連結することを伴うことがある。活性剤は触媒活性剤であることが好ましく、且つ活性剤とコアリング又はドリルで開けられた穴の壁面との間に裏込材が充填された空間を生成するために、スペーサが触媒活性剤及び犠牲金属素子と共に組み合わせられることが好ましい。触媒活性剤及びスペーサは犠牲金属素子と共に組み合わせられることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
ここで、例示として図面を参照することにより本発明をさらに説明することとする。
【0030】
図1図1は、スペーサ、犠牲金属素子、活性剤、及び導電体を含むアッセンブリの断面を示す。
図2図2は、図1において説明されるスペーサの等角図を示す。
図3図3は、図1において説明されるスペーサの上面図を示す。
図4図4は、犠牲アノードアッセンブリの用途を図示する、修復された鉄筋コンクリート要素の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、長尺で延伸性のある導電体4及び円筒形の本体1、フィン又は外側に延伸する部材2、及び小片又は突出部5を含むスペーサと共に円筒形の犠牲金属素子3を含む、アッセンブリの一例を示す。犠牲金属素子は触媒活性媒介物6が塗布され得て、或いは、触媒活性媒介物が犠牲金属素子に含まれるか、後に多孔性のアッセンブリに射出され得る。スペーサの突出部5は犠牲金属素子と接触し、且つスペーサと犠牲金属素子との間に溝を生成し、電解質が犠牲金属素子の多くの表面をコンクリートと連結することを可能にする。コイル状の長尺で延伸性のある導電体4は、設置の際に追加の導電体を重ね継ぎする必要がなく、犠牲金属素子の鋼への連結を促進する。
【0032】
図2及び図3は、図1のスペーサの更なる観点を提示する。この例におけるスペーサは一般的に長尺で円形の本体1を含み、その本体には先端部と後端部とがある。スペーサの中心にある穿孔は、犠牲金属素子3のスペーサ内への挿入を促進する。犠牲アノードアッセンブリが電解質の裏込材を用いて設けられたアノードキャビティ内に挿入されると、裏込材は犠牲金属素子3と隣接するコンクリートとの間にコミュニケーションをもたらす。スペーサは犠牲金属素子3を囲むか、少なくとも部分的に包むか覆うようにされ、且つ犠牲金属素子4の先端部の表面を同後端部の表面と同様にコンクリートとの直接の接触を防止し、つまり、一般的に図1に示されるように、犠牲金属素子3の先端部の表面は、コンクリートとの直接の接触を回避するために、軸方向に内側に、且つスペーサの先端部から離されて配置される。
【0033】
スペーサの外側表面には複数の放射状に外側に延伸する保持部材又はフィン2があり、それがスペーサのスペーシング及び一般的にセンタリングを促進し、それにより、キャビティ内での犠牲アノードアッセンブリの保持と同様に、アノードキャビティの壁面又は内側で面する表面に対して放射状になる、犠牲アノードアッセンブリのセンタリングが促進される。この例において、これらの部材2は犠牲アノードアッセンブリの後端部から先細りになっており、それによりアッセンブリのアノードキャビティへの挿入が促進される。これらの部材は外側限界まで延伸され、その外側限界と裏込材が充填され得る犠牲アノードアッセンブリの活性剤との間に空間を生成する。
【0034】
スペーサの内側表面には1つ又はそれ以上の小片、突出部、又は環状の部材5があり、それらは犠牲金属素子3をスペーサに結合し、連結し、且つ保持するために犠牲金属素子3に形成された少なくとも1つの環状の溝又は凹部との係合のために配置されている。犠牲金属素子3をスペーサに確実に結合又は連結する他の多くの型の従前の結合機構又は装置が、本発明の精神及び領域より逸脱することなく、少なくとも1つの環状の溝又は凹部34、1つ又はそれ以上の小片、突出部、又は環状の部材の代わりに活用できることを理解されたい。例えば、スペーサの内側表面に形成されたはめ合わせ用の溝、穴、凹部、又は刻み目と係合する別の突出部が、犠牲金属素子3の外部に形成される場合がある。
【0035】
図1には、確実でありながら比較的緩い相互連結を促進するように犠牲金属素子3の環状の溝又は凹部内に受容される、スペーサ本体1の内側表面にサポートされる複数の小片、突出部、又は環状の部材5が示されている。環状の溝は、犠牲金属素子3の外側表面とスペーサ本体1の内側表面との間に形成される。この溝により、電解質の裏込材は犠牲金属素子のコンクリートとの直接的接触並びに電気化学的結合及び連結を行うことができる。
【0036】
スペーサの内部表面と犠牲金属素子の外部表面との間にある溝は、伝導性を有する少量の電解質の裏込材が少なくとも部分的に充填されるのに十分な大きさであることが好ましい。スペーサと犠牲金属素子との間に溝を設け、且つ溝の内部に浸透するのに十分柔軟な伝導性を有する電解質の裏込材を利用することにより、そうでなければスペーサがもたらす犠牲アノードアッセンブリの電流出力における思わしくない影響は、僅かなものとなる。この影響は、裏込材の伝導性及び純度の高さ、並びに活性媒介物の存在に依存する。電流出力におけるスペーサの影響は、溝の幅が約1mmで、且つ石灰パテが裏込材として使用されている場合、重大ではない。電流出力におけるスペーサの影響を緩和する他の方法には、スペーサ本体1の内部に付加的な穴又は隙間を形成するものがある。
【0037】
スペーサはプラスチックを用いて形成されることが好ましい。そのプラスチックは、犠牲金属素子の重量により損壊しないよう、十分に硬い必要がある。コンクリート内に形成される円筒形のキャビティは、犠牲アノードアッセンブリを受容するために、典型的には直径が最大50mm、且つ深さが最大300mmになる。射出成型法を用いたプラスチックのスペーサの製造に利用され得るプラスチックの例には、アセチル及びポリプロピレンがある。
【0038】
上述した犠牲アノードアッセンブリが一般的に円筒形の形状をしている一方、このアッセンブリはまた、三角形、四角形、五角形、六角形、又は他の望ましい形状の横断面を有することができることを理解されたい。
【0039】
活性媒介物又は活性剤6が介在しない、又は塗布若しくは組み込み以前の状況での、犠牲金属素子3についての課題の1つは、一般的に酸素及び水蒸気が存在する中で活性媒介物又は活性剤を犠牲金属素子に塗布又は犠牲金属素子と混合すると、即座に活性媒介物又は活性剤6が犠牲金属素子3と反応し始めることである。更に、二酸化炭素がまた犠牲金属素子と反応して、犠牲金属素子に金属炭酸塩保護層が形成されることが理解されよう。このような反応を最小化するためには、一般的に反応性ガスが存在しない環境下で、又は犠牲金属素子を触媒活性媒介物又は活性剤と化合させてから短期間内に容器内で、塗布済みの犠牲金属素子3又は活性媒介物若しくは活性剤を構成要素とする犠牲金属素子を包装することが必要であり、例えば、典型的にはこれらの要素同士を組み合わせて、又は化合してから14日以内に包装する。
【0040】
犠牲アノードアッセンブリのガス不在下で包装する好ましい方法は、犠牲アノードアッセンブリが真空のプラスチック袋又は容器内で真空封入される、従来からの真空包装処理である。他の犠牲アノードアッセンブリの不活性包装の方法としては、多量の窒素又はアルゴン等の非活性ガスの中で犠牲アノードアッセンブリが包装され、それらのガスは封印された容器内で犠牲アノードアッセンブリと共に封印される等と予見又は予想されている。犠牲アノードアッセンブリの包装に好適な容器の例には、密封されたプラスチック袋、硬質又は軟質のプラスチック容器、金属製の容器等がある。
【0041】
図4は、犠牲金属素子11、及びアノードキャビティ14内に配置された裏込材13内に埋め込まれたスペーサ12の一例であり、アノードキャビティは、例えば、機械的にドリルで開けられたか除芯された、又はコンクリート要素20内で形成された、直径が28mmで深さが50mmの穴であって良い。犠牲金属素子11は、触媒活性媒介物又は触媒活性剤を塗布され得る。アノードキャビティ14は、腐食による損傷のために形成された隣接するキャビティ15に開口されている。この隣接するキャビティ15内では、棒鋼16が露出され、且つ従来の方法で洗浄されている。長尺で延伸性のあるコネクタ17は、犠牲金属素子11から、棒鋼16に連結されコンクリート20内に配置されている鉄筋(図示されない)まで電気防食電流を送出するために、犠牲金属素子11を棒鋼16と相互連結する。
【0042】
この例において犠牲アノードアッセンブリを設置するために、コアリング又はドリルによりキャビティ14がコンクリート20内に設けられる。続いて、十分な分量の柔軟な電解質の裏込材13が、キャビティ20内に配置される。次に、事前に組み合わされた犠牲アノードアッセンブリを収容する、封印された真空の容器が開放され、コネクタ17のキャビティ14外部への配置を維持するためにスペーサ12の先端を先にして、キャビティ14内に配置された裏込材13内に犠牲アノードアッセンブリが挿入される。事前に組み合わせられた犠牲アノードアッセンブリが利用できない場合、次に犠牲アノードアッセンブリは、犠牲アノードアッセンブリとしてキャビティ内に挿入されるために、好ましくはその場で組み合わせられることが必要とされる。コネクタ17は、次いで棒鋼16の望ましい場所に、従前の方法で連結される。
【0043】
長尺で延伸性のあるコネクタ17の第1の端部は犠牲金属素子11内部で形成されるか又は埋め込まれ、そうでなければ犠牲金属素子11に連結され、一方で長尺で延伸性のある導電体17のその反対側にある第2の端部は棒鋼16との確実な電気的クランピング又は連結を促進するのに十分な長さを有し、例えば従前のケーブル紐18を経由して、確実且つ常設的な方法で電気的連結を行い、且つ維持する。鋼又はステンレススチール製の連結線も同様に、連結を確実にするために使用され得る。犠牲アノードアッセンブリが、一般的に上述の通りに設置されると、犠牲アノードアッセンブリ及び棒鋼の双方がコンクリート修復素材19内に埋め込まれ、且つコンクリート修復素材19で十分に被覆されるために、隣接するキャビティ15には適切なコンクリート修復素材19が充填される。このような修復の間に、キャビティ14はキャビティ15の外縁部周辺のコンクリート20に典型的には500mmおきにドリルで開けられ、それら各々のキャビティ内に犠牲アノードアッセンブリが配置され、上述の通りに、望ましいガルバニック電流保護を提供するように連結される。
【0044】
犠牲金属素子11は鋼よりも貴でない金属であり、亜鉛又は亜鉛合金の何れかを含むことが好ましい。犠牲金属素子11は円筒形の本体として鋳造されることが好ましいが、犠牲金属素子4は正多角形の角柱等、多種の形状又は外形に形成されても良いことを理解されたい。犠牲金属素子11は一般的に長辺方向に均一の横断面を有するが、犠牲金属素子11の横断面は特定の用途によって変動することがあり得る。直径が28mmで長さが50mmのキャビティに収まるよう設計されている犠牲金属素子11は、典型的には18mmの直径又は幅及び40mmの長さを有する。
【0045】
保持部材2(図3を参照)が内側で面するキャビティ14の表面と係合し且つそれにより多少偏向することが可能になるように、キャビティ14の直径は保持部材2の外径より小さくなることが好ましく、それが頭上のキャビティであっても、キャビティ14内で犠牲アノードアッセンブリを摩擦力で保持することを理解されたい。典型的には、キャビティ14は犠牲アノードアッセンブリの軸方向の総合的な長さより多少長い長さを有する。
【0046】
長尺で延伸性のあるコネクタ17は、犠牲金属素子11の鋼への都合よい連結を促進し、設置プロセスの間に追加のコネクタを重ね継ぎする必要なく直接犠牲金属素子11に連結する。コネクタ17は鋼又はチタン製の電線であり得る。コネクタ17は典型的には、250mm〜400mmの間の長さ、及び0.7mm〜2mmの間の直径を有する。コネクタ17は犠牲金属素子11の後端部内に少なくとも部分的に埋め込まれ、犠牲金属素子1の全体的な長さを延伸できることが好ましい。更に好ましくは、犠牲金属素子1はコネクタ17の少なくとも一部の周辺に鋳込まれ、コネクタ17は犠牲金属素子11の後端部より適切な長さで外側に延伸され、鋼16を有するコネクタ17の遠隔自由端の容易な連結が促進される。
【0047】
一例において、犠牲金属素子11は触媒活性媒介物又は触媒活性剤と共に組み合わせられる。つまり、犠牲金属素子11の外側表面の何れかが、例えばハロゲン化物イオンと硫酸イオンとを含む混合物等の触媒活性媒介物又は活性剤を塗布され、又別の方法では、触媒活性媒介物又は活性剤が密接に混合されて犠牲金属素子の内部で全体に拡散される。
【0048】
犠牲金属素子に含まれる触媒活性媒介物又は活性剤の分量は、好ましくは犠牲金属素子とコンクリートとの間に望ましいイオンの流れをもたらすのに十分であるべきだが、ひとたび犠牲金属素子が消費された後では、鋼に対して触媒活性媒介物又は活性剤が重大な腐食のリスクを生成するには不十分でなくてはならない。触媒活性媒介物又は活性剤の分量は、キャビティ14内で均一に配給されるのであれば、触媒活性媒介物又は活性剤がコンクリート20内に埋め込まれた鋼に対して腐食のリスクをもたらすには不十分な濃度に希薄化される量であることが好ましい。塩化物活性剤であれば、アノードキャビティ1立方メートルあたり1.6kg未満の塩化物活性剤の量に値する。
【0049】
理想的には、触媒活性媒介物又は活性剤は、犠牲アノードアッセンブリの出荷のための包装及びそれに続く販売又は設置の前に、犠牲金属素子に塗布されるか、又は犠牲金属素子内に組み入れられる。これにより、現地で設置前に触媒活性媒介物又は活性剤が各犠牲金属素子に手動で塗布されるか、設置後に多孔性のアノード本体内に射出される場合と比べて、設置場所でのキャビティ内の犠牲アノードアッセンブリの設置プロセスをより早く処理することができる。
図1
図2
図3
図4