【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様において、本発明は、犠牲金属素子、活性剤、裏込材、及び少なくとも1つのスペーサを使用する、コンクリート内の鋼を保護する方法であって、
犠牲アノードアッセンブリをそこに取り付ける目的で、コンクリートにアノードキャビティを形成するステップと、
そのキャビティ内の裏込材に犠牲金属素子及び活性剤を配置するステップと、
スペーサを用いて、活性剤をアノードキャビティの側面から間隔を離して配置するステップと、
犠牲金属素子に連結された少なくとも1つの導電体を用いて、犠牲金属素子からコンクリート内の鋼まで電流を流し、コンクリート内の鋼を保護するステップとを含み、
裏込材は柔軟な粘性裏込材で設置プロセスが完了する前に硬化せず、
且つ裏込材は犠牲金属溶解による生成物を収容し、且つ犠牲金属素子が鋼よりも貴でない金属を含む方法を提供する。
【0012】
犠牲金属素子及び活性剤は、アノードキャビティ内に埋め込まれる前に、共に組み合わされることが好ましい。活性媒介物は、犠牲金属素子へのコーティング、又は犠牲金属素子との混合の用途で用いられ得る。活性化コーティングには、結合剤及び活性媒介物が含まれる。結合剤の例の1つに硫酸カルシウムがあり、それは活性剤としても機能する。結合剤の他の例には屋外用金属塗料があり、それは有機溶剤で薄めることができる。この場合、結合剤は不活性であり、不活性結合剤の分量は乾燥時の塗料の重量に対して20%を下回ることが好ましい。
【0013】
活性媒介物又は活性剤は、コンクリート内の犠牲アノード向けの活性剤として任意の既知のもので良い。活性媒介物は、触媒活性媒介物であることが好ましい。好適な活性媒介物又は活性剤の例は、国際公開第2006/043113号パンフレットにおいて開示されている。
【0014】
犠牲金属素子に含まれる活性媒介物の分量は好ましくは必要最少量であるべきで、それはアノードキャビティ全体に活性媒介物が均一に供給される場合に、コンクリート内の鋼又はアノードキャビティが形成されるコンクリートに対して重大な腐食のリスクをもたらすのに不十分な濃度にまで希薄化されるようにするためである。それにより、犠牲金属素子が消費される際に活性剤により鋼にもたらされる何れの腐食のリスク、又はコンクリートにもたらされるリスクは、ごく僅かになる。
【0015】
スペーサは、弾力性のあるものが好ましい。弾力性は、金属又はプラスチックを使用することで得られ得る。スペーサは弾力性のあるプラスチックスペーサであり得る。金属スペーサは絶縁されていることが好ましく、それはポリマを使用することで得られる。スペーサは非伝導性物質を含むことが好ましい。このスペーサは、弾力性をもたらす、又は弾力性のある構成要素を絶縁するのに十分なポリマを含み得る。
【0016】
スペーサは、結合機構を用いて犠牲金属素子に結合されることが好ましい。このスペーサは、アノードキャビティ内に埋め込まれる前に、犠牲金属素子及び活性剤と共に組み込まれることが好ましい。
【0017】
スペーサは、犠牲金属素子が設置され得る場所の中に穿孔又は開口部を有する、ハウジングスペーサであることが好ましい。使用の際には、スペーサはキャビティ内で犠牲金属素子との間隔の離れた配置を維持することが好ましい。スペーサは、犠牲金属素子及び活性剤をアノードキャビティの壁面より離れた状態に維持又は保持することが好ましい。このことは、スペーサがキャビティ内に配置される際に、スペーサが犠牲金属素子をきつく押さえ、且つアノードキャビティの壁面間に圧力をかけられるように、コンクリート内のアノードキャビティおよびスペーサの大きさを設定することで得られる。この例においてスペーサはアノードキャビティ内で圧縮下にあり、スペーサと壁面との間の圧力により、スペーサが摩擦を利用して壁面を押さえる結果が得られる。
【0018】
アノードキャビティは3面を持つ空間である。スペーサは犠牲金属素子及び活性剤を、アノードキャビティの少なくとも1つの面の中心に設置することが好ましい。スペーサは犠牲金属素子及び活性剤を、アノードキャビティの2つの面の中心に設置することがあり得る。
【0019】
裏込材は、コンクリートのキャビティに埋め込まれる犠牲アノードに使用される任意の既知の裏込材で良い。例えば、裏込材はアノードアッセンブリを設置する際に水と混合されてペーストを生成する粉末であり得、その一例として、微量の空気を取り込んだセメントモルタルのペーストがあげられる。裏込材の他の例が、国際公開第2007/039768号で開示されている。裏込材は少なくとも48時間は柔軟性及び粘性を保持することが好ましく、且つ裏込材の容器、又はより具体的にはカートリッジ内での保存を実践できるように、(例えば1箇月等)更に長い期間その効力を保持することがより好ましい。そのような裏込材の一例は、石灰モルタルのペーストである。裏込材はアノードキャビティ内に配置されることが好ましく、また組み合わせられた犠牲金属素子、活性剤、及びスペーサは、キャビティの裏込材内に圧入されることが好ましい。
【0020】
アノードキャビティは、コンクリート内でコアリング若しくはドリルで開けられた穴、又は切削された溝状のものであることが好ましい。犠牲金属素子は、亜鉛又は亜鉛合金からなることが好ましい。犠牲金属素子から鋼まで電流を流すために、犠牲金属素子には導電体が取り付けられる。導電体は鋼又はチタン製の電線であり得る。犠牲金属素子は、導電体部分の周辺に鋳込まれることが好ましい。導電体はガルバニック電流を供給するために鋼に直接取り付けられることがあり、又はガルバニック電流に先行して印加電流を供給するために、電源を介して鋼に連結されることがある。導電体が鋼の近辺に直接連結される場合、その導電体は長さが250mmを超える、長尺で延伸性のあるものであることが好ましい。
【0021】
別の態様において、本発明は第1の態様で説明した方法で使用される鉄筋コンクリートの保護装置を提供し、アノードアッセンブリ及び単独の裏込材を含む鉄筋コンクリート保護材において、
アノードアッセンブリは犠牲金属素子、活性剤、及び少なくとも1つのスペーサを含み、
且つ少なくとも1つのスペーサは、犠牲アノードアッセンブリの中心から外側限界まで延伸される、複数の外側へと延伸する部材を有し、且つ
少なくとも1つのスペーサは、活性剤と外側に延伸する部材の2つの隣接する外側限界を繋ぐ線との間に、少なくとも1つの空間を画定し、且つ
犠牲金属素子は鋼よりも貴でない金属を含み、且つ裏込材は柔軟な粘性裏込材で、前記少なくとも1つのスペーサ及び活性剤により画定された空間に充填される。
【0022】
犠牲金属素子/活性剤アッセンブリの試作品製作過程において、これらのアッセンブリが空気との接触で劣化し得ることが見出された。このことにより、活性剤を収容する犠牲アノードアッセンブリの有効期間が限定される。本発明の更なる目的は、一旦犠牲金属素子及び活性剤が空気及び/又は空気中の水分に晒されると通常劣化する、活性剤を収容する犠牲アノードアッセンブリの有効期間を延長する方法を提供することである。
【0023】
別の態様において、本発明は犠牲アノードアッセンブリの有効期間を延長する方法を提供し、その方法は、
犠牲アノードアッセンブリを形成するために犠牲金属素子の活性を維持する活性剤と共に、鋼よりも貴でない犠牲金属素子を組み込むステップと、
犠牲アノードアッセンブリの有効期間を延長するために、犠牲アノードアッセンブリを酸素、水蒸気、及び二酸化炭素のうち少なくとも1つが実質的に存在しない容器に封印するステップとを含む。
【0024】
鋼よりも貴でない犠牲金属素子及び活性剤を含む犠牲アノードアッセンブリの有効期間を延長する方法の1つでは、アノードアッセンブリは容器に配置され、その容器は真空化により空気が吸い出され、また容器への開口部は封印されている。
【0025】
好ましいプロセスは真空包装として知られ、食品加工業界で使用されている。この場合、容器は袋状になる。この袋は少なくとも1面にくぼみを持ち、真空下での袋から外への空気の流れを促進する。必要な真空状態に達すると、袋の開口部はプラスチックの加熱と溶解とを共に用いて封印される。
【0026】
スペーサ及び長尺のコネクタは、犠牲金属素子及び活性剤と共に組み込まれ得る。プラスチックの袋を形成するプラスチックには、真空包装のプロセスで穴が開くことは起きてはならず、袋に穴が開くことを防止するために2つ以上のプラスチック層が利用され得る。
【0027】
活性剤及び単数又は複数のアノードアッセンブリが真空包装される場所では、アッセンブリはプラスチック袋内の不活性ガスにより封印されることがある。例えば、酸素及び/又は水蒸気は、袋内のアノードアッセンブリの寿命を維持するためにプラスチック袋内のガスより除去されることがある。不活性ガスの例には、乾燥窒素及びアルゴンがあげられる。
【0028】
犠牲金属素子、活性剤、柔軟な粘性裏込材、及び導電体を含む1つ以上の犠牲アノードアッセンブリを使用する、コンクリート内の鋼を保護する方法では、鋼をコンクリートパッチ修復領域に晒し、パッチ修復領域に隣接するコンクリート内に、犠牲アノードアッセンブリをそこに設置する目的で、コアリング又はドリルで開けられた穴を成すアノードキャビティを形成し、犠牲金属素子及び活性剤をキャビティ内の裏込材に埋め込み、スペーサを用いて活性剤をアノードキャビティの内側で面する表面から間隔を離して配置し、且つ、犠牲金属素子が埋め込まれる前に犠牲金属素子と共に組み込まれ、犠牲金属素子を鋼まで重ね継ぎすることなく接続するために十分な長さのある長尺で延伸性のある導電体を用いて、犠牲金属素子をパッチ修復の隣接箇所に晒される鋼に連結することを伴うことがある。活性剤は触媒活性剤であることが好ましく、且つ活性剤とコアリング又はドリルで開けられた穴の壁面との間に裏込材が充填された空間を生成するために、スペーサが触媒活性剤及び犠牲金属素子と共に組み合わせられることが好ましい。触媒活性剤及びスペーサは犠牲金属素子と共に組み合わせられることが好ましい。