特許第5988314号(P5988314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5988314多結晶ボディに貫通穴及び皿穴を作成する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988314
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】多結晶ボディに貫通穴及び皿穴を作成する方法
(51)【国際特許分類】
   B23H 9/14 20060101AFI20160825BHJP
   B23H 7/38 20060101ALI20160825BHJP
   B23H 7/02 20060101ALI20160825BHJP
   B23H 5/00 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   B23H9/14
   B23H7/38 Z
   B23H7/02 K
   B23H5/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-555418(P2013-555418)
(86)(22)【出願日】2011年12月22日
(65)【公表番号】特表2014-506195(P2014-506195A)
(43)【公表日】2014年3月13日
(86)【国際出願番号】US2011066717
(87)【国際公開番号】WO2013112117
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2014年10月27日
(31)【優先権主張番号】61/428,884
(32)【優先日】2010年12月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516053969
【氏名又は名称】ダイヤモンド イノヴェーションズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100133008
【弁理士】
【氏名又は名称】谷光 正晴
(72)【発明者】
【氏名】ラジャ コウンターニャ
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス トーマス デューズ
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−290306(JP,A)
【文献】 特表2007−517678(JP,A)
【文献】 特開2002−047068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 9/14
B23H 5/00
B23H 7/02
B23H 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともひとつの超硬質インサートに少なくともひとつの貫通穴及び皿穴を作成する方法であって、
第1の主面及び対向する第2の主面を有するボディを用意するステップと、
ボディにレーザーを用いて少なくともひとつのパイロット・ホールを形成するステップであって、少なくともひとつのパイロット・ホールはボディの第1の主面から対向する第2の主面まで延びるステップと、
ワイヤ放電加工機(WEDM)を用いてパイロット・ホールを切削して真直な円筒状部分とトップ円錐状部分を生成するステップと、
放電研磨機(EDG)を用いてボディの少なくとも一方の側に皿穴を形成するステップと、
少なくともひとつの超硬質インサートをボディから切断して貫通穴と皿穴を含む仕上げられたインサートを形成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
トップ・テーパーを作り、トラップされた円錐状部分を作るステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ボディの炭化物基板に制限されたカーブした皿穴を機械加工するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ボディに多数のパイロット・ホールが形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
円錐状部分がWEDMによって上向きに形成され、さらに、WEDMのトップ・ノズルをオフにし、WEDMのボトム・ノズルをオンにするステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記方法はPCBN又はPCD層の厚さ及び組成と無関係であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
貫通穴とインサートの内接円の同心度が0.02mmであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
仕上げられたインサートは切断プロセスの間にカットされた逃げ角を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
仕上げられたインサートが貫通穴、皿穴、及び逃げ角の存在によって0.08mmの研磨ストックを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
少なくともひとつの超硬質インサートに少なくともひとつの貫通穴及び皿穴を作成する方法であって、
第1の主面及び対向する第2の主面を有するボディを用意するステップと、
ボディにレーザーを用いて少なくともひとつのパイロット・ホールを形成するステップであって、少なくともひとつのパイロット・ホールはボディの第1の主面から対向する第2の主面まで延びるステップと、
ワイヤ放電加工機(WEDM)を用いてパイロット・ホールを切削して真直な円筒状部分とトップ円錐状部分を生成するステップと、
放電研磨(EDG)を用いてボディの少なくとも一方の側に皿穴を形成するステップと、
トップ・テーパーを生成し、それによってトラップされた円錐状部分を生成するステップと、
少なくともひとつの超硬質インサートをボディから切断して貫通穴と皿穴を含む仕上げられたインサートを形成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
少なくともひとつの超硬質インサートに少なくともひとつの貫通穴及び皿穴を作成する方法であって、
第1の主面及び対向する第2の主面を有するボディを用意するステップと、
ボディにレーザーを用いて少なくともひとつのパイロット・ホールを形成するステップであって、少なくともひとつのパイロット・ホールはボディの第1の主面から対向する第2の主面まで延びるステップと、
ワイヤ放電加工機(WEDM)を用いてパイロット・ホールを切削して真直な円筒状部分とトップ円錐状部分を生成するステップと、
放電研磨(EDG)を用いてボディの少なくとも一方の側に皿穴を形成するステップと、
ボディの炭化物基板に制限されたカーブした皿穴を機械加工するステップと、
少なくともひとつの超硬質インサートをボディから切断して貫通穴と皿穴を含む仕上げられたインサートを形成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多結晶立方晶窒化硼素(PCBN)や多結晶ダイアモンド(PCD)のインサートなどの超硬質材料に貫通穴及び皿穴を生成する方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
進展しつつある切削工具の分野において、望ましい切削インサートには、刃が超硬質物質である工具も含まれ、仕上がりのインサートの製造でろう付けなどの工程は排除される。この条件は、超硬質材料の均一な一体ボディから形成される完全中実(fully solid)インサートによって部分的に満たされる。通常、これらのインサートは、インサートの上面と下面の両方に切れ刃を有し、その利用の経済的な利益をそれによって高めている。言い換えると、それらはほとんどが「ネガティブ」の工具形状(geometry)で用いられる、すなわちインサートの側面が上面と下面の両方に直交する形状で用いられる傾向がある。
【0003】
しかし、いくつかのシナリオでは「ポジティブ」の工具形状のインサートが必要になる、すなわち、側面が上面又は下面に直交せず、鋭角の刃先角(acute included angle)を含む切れ刃だけしか使用できないという状況がある。これらのインサートでは、鋭角の切れ刃が固い層に隣接するインサートの上面に現れる。切削工具の原料としては、超硬質等級の材料を層状に用いる方が経済的である。この場合、普通は0.5〜20mmの厚さの最上層だけが超硬質材料を含んでいる。残りの下方部分は炭化タングステン/コバルト複合材料で構成される。超硬質材料の層は焼結工程の間に炭化物の層と一体化される。
【0004】
硬度の他に、2つの層の重要な違いは、炭化物の層は放電プロセスで容易に機械加工できるということである。このような原材料設計によって完全中実インサートにおけるPCBNの付随的な冗長性がなくなる。
【0005】
「ポジティブ」のインサートで、インサートを工具ホルダー又はカートリッジ・ポケットに切削力に対向して配置するために固定用の穴が必要になる。さらに、そのようなインサートの側面を要求される逃げ角になるように研磨する必要がある。切れ刃において逃げ角は正のすくい角と鋭角の刃先角を生ずる。
【0006】
これを実現するために、現行のやり方では、炭化物インサートの研磨されたポケットに層状の超硬質チップをろう付けし、さらに最終寸法にまで研磨するという方法を用いる。炭化物インサートにおける固定用の穴が、工具ホルダー又はカートリッジ・ポケットにインサートを位置決めする役目をする。したがって研磨しなければならない超硬質材料の量は、チップの側方寸法のオーダーであり、インサート自身の寸法のオーダーではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この工程デザインは厳しい制限を課す。例えば、よりアグレッシブな切削条件では、より大きなチップをインサートにろう付けすることが要求される。しかし、炭化物インサート自身でチップに利用できるスペースはそれ自体小さいであろう。もうひとつの考えられるシナリオは、例えば、チタンの機械加工などでチップにおける切削温度が高くなってチップのろう付けがはがれるほどになるということである。
【0008】
これらの問題に対するひとつの解決は、一体の固定用の穴を有するインサートである。そのようなインサートはまた、使用できる刃の数を、上面におけるただひとつのコーナ切れ刃からすべてのコーナ切れ刃に増やす。また、これはさらにコンパクトにすることも可能にする。例えば、ミーリングカッターにおいて、完備した固定用の穴がトップ・クランプ(クランプオン式)を不要にすることで新たなスペースが生じ、与えられた直径でより多くのインサートを搭載することが可能になる。カッターのインサートの数が増えると、切削においてより大きな送り速度が可能になり、生産性が高められる。
【0009】
しかし、完備した固定用の穴は研磨すべき超硬質材料の量がインサート自身の寸法のオーダーになるということを意味し、やはり研磨のコストと時間の増加につながる。このコストを減らすために、次のようにいくつかのステップが必要になる、すなわち、1)工具研磨機にかけられる原型インサートができるだけ最終の望ましい形と寸法に近いこと、及び2)インサートでの研磨ストックの量をWEDMやレーザーなどのインサート切断プロセスで生ずる表面下損傷の深さにまで減らすこと、が必要である。これを達成するために、原型インサートを生成する製造プロセスはすべての幾何形状誤差をなくすように設計される。
【0010】
幾何形状の3つの重要な規準は、a)完備した固定用の穴の軸のインサート条件に対する直交性、b)インサートの内接円との貫通穴の同心性、及びc)エッジ損傷の貫通穴入口への近さ、という3つである。規準a)とb)は、インサートの各側での研磨ストックの量が同じになるようにするために重要である。規準c)は、切れ刃に適当な面取り及び/又は研ぎを行ってかつインサート自身の完全性を保つのに十分な量の超硬質材料があるようにするために重要である。インサートの切断と貫通穴の仕上げの作業が同じWEDM加工機で同じセットアップで行われるなら、a)とb)はどちらも除いてもよい。穴の輪郭を作るプロセスがWEDM加工のみを用い、電極による放電を用いない場合、規準c)は除いてもよい。
【0011】
多結晶ボディからの原型インサートの切断が、インサート側面に仕上がりの研磨されたインサートの逃げ角を与えるように行われるならば、工具研磨プロセスで除去される研磨材料の部分はWEDMで除去されて仕上がりの切削工具にはどんな影響も及ぼさないので、研磨のコストと時間の顕著な節約が達成される。
【0012】
言い換えると、WEDMプロセスは、電極を用いる放電プロセスに比べて超硬質材料にきわめて小さな局所的な損傷しか与えないので、WEDMプロセスの柔軟性を十分に活用することが重要である。超硬質材料を切削しつつワイヤを傾けることができる能力は、完備した固定用の穴を有する超硬質インサートの製造でこれまで活用されていなかった大きな利便性である。
【0013】
しかし、ひとつの問題は、ワイヤで切断される表面で、切断されたパーツが上向きに凹である場合、切断されたパーツが重力で落下してワイヤの電気的な短絡を引き起こす傾向があることである。製造プロセスの設計はこの重要な因子を考慮に入れなければならない。
【0014】
単純さと一様性のために、製造プロセスはすべての等級のPCBNとPCDに関して標準的であることが必要である。等級によって大きく異なるひとつのプロセスは電極を用いる放電研磨であるが、WEDMプロセスでもわずかな違いはあると考えられる。製造するインサートのロットのサイズが大きく、繰り返されるものである場合、例えば標準のISO仕様のインサートなど、では、一回限りの場合と異なり、この必要は特に大きくなる。硬い層での電極による放電を排除することが、この目標を達成するための最も大きな一歩である。このようなプロセス設計は仕上がり工具製造プロセスを大きく単純化し、インサートを大量に製造する場合、規模による経済性を与える。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本方法は、多結晶超硬質材料、特に多結晶ダイアモンド及び多結晶窒化硼素、が炭化タングステン/コバルト複合材料の基板にかぶせられ、その対向する側のそれぞれに主面を有するボディから複数の工具インサートを製造するものである。この方法は、ボディに少なくとも2つの穴を同時に生成する工程を含み、各穴は一般に一方の主面から対向する主面まで延びている。穴は、レーザー加工機、ワイヤ放電加工機、及び放電研磨機を用いて生成される。ボディが穴の間で逃げ角と共に切断されて複数の工具インサートが製造される。
【0016】
本方法の利点は、穴の輪郭全体にわたる放電研磨を用いることがきわめて少ないことである。製造されたインサートは超硬質材料の等級に関わりなくISO標準を満たす。また複数の電極を必要とせず、ディスクの利用が最大になる。逃げ角によってインサートを切り離すことによって、仕上げ工具によるインサートの研磨がきわめて少なくなる。
【0017】
上述のような一般的記述も以下の詳細な説明も、例示的かつ説明的なものであることは言うまでもなく、請求される実施形態のさらに詳しい記述を意図している。
【0018】
以下の詳細な説明は添付図面を参照して読むことができる。添付図面では、同じ要素は同じ参照数字によって表される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ある実施形態を示す多結晶超硬質材料のディスクの等角図である。
図2】超硬質多結晶ディスクにおける穴のパタンから個々のインサートを切り離すプロセスを示す図1の実施形態の等角図である。
図3】このボディから切り離されたひとつのインサートを示す等角図である。
図4図3のインサートの断面図である。
図5】実施形態のインサートを、母体からインサートが切り出された後で穴を作成する別の方法で形成されたインサートを比較した写真である。
図6】実施形態のインサートを、ボディの超硬質表面上で直接行った放電研磨プロセスによるエッジの劣化を示すトップ・テーパーなしのインサートと比較した写真である。
図7a】ある実施形態の製造工程のシーケンスを示し、母体と穴の位置での軸を示す図である。
図7b】ある実施形態の製造工程のシーケンスを示し、レーザー加工機によってパイロット・ホールがあけられたボディを示す図である。
図7c】ある実施形態の製造工程のシーケンスを示し、貫通穴の仕上げとトップ・テーパーの切削を示す図である。
図7d】ある実施形態の製造工程のシーケンスを示し、皿穴の仕上げを示す図である。
図8】捕捉された内側円錐状部分をいくつかの径方向セグメントに切断するプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(定義)
別に定めない限り、ここで用いられるすべての技術用語と科学用語は、一般に、本発明が属する技術分野の当業者が普通に理解すると同じ意味を有する。
【0021】
本明細書で用いられる場合、以下の用語の各々はこのセクションでそれと結びつけられた意味を有する。
【0022】
「穴」とは、物体の中への、そして貫通する円筒状並びに非円筒状の開口を指す。
【0023】
「皿穴」とは、穴の入口の下の非円錐状のカーブした拡がりを指す。
【0024】
「WEDM」とは、ワイヤ放電加工機を指す。
【0025】
「EDG」とは、放電研磨機を指す。
【0026】
「レーザー」とは、レーザー加工機を指す。
【0027】
「硬い層」とは、インサートの厚さのうち超硬質材料を含む部分を指す。
【0028】
「炭化物層」とは、硬い層に隣接する厚さ部分を指す。
【0029】
「パイロット・ホール」とは、最終的に必要な円筒状の貫通穴より小さな直径で、WEDMのワイヤが通ることができる最初の穴を指す。
【0030】
「内接円」とは、インサートが多角形である場合はインサートのすべての辺と接し、インサートが丸い場合はインサートの境界と合致する仮想的な円を指す。
【0031】
「超硬質材料」とは、少なくとも約4000のヌープ硬さを有する材料を指す。これは焼結された多結晶ダイアモンドやその他のダイアモンド、ダイアモンド様物質、立方晶窒化硼素、及びウルツァイト型窒化硼素、を含む。
【0032】
ある実施形態は、対向する側のそれぞれに主面を有する超硬質材料のボディから複数の工具インサートを作る方法であって、ボディに複数の間隔をあけた穴と皿穴を生成するステップを含み、各穴は一般に第1の主面から対向する第2の主面まで延びている。
【0033】
超硬質材料は、一般に、多結晶ダイアモンド(PCD)又は多結晶CBN(PCBN)であり、超硬合金(cemented carbide)基板などの基板に接着されている。基板に接着された超硬質材料をボディと定義する。基板が存在するとき、穴と皿穴は一般に多結晶超硬質材料と基板の両方を通って延びている。インサートを生成するための穴の間の切断も、多結晶超硬質材料と基板の両方を通って延びている。ボディは一般に直径が約50mmから約65mmの範囲の大きさであるディスクの形をとる。
【0034】
パイロット・ホールはレーザー加工機を用いて作ることができ、レーザーはそれに曝露された表面を貫通しその下にある物質に貫通穴を穿つ。この開口がワイヤ放電加工機と放電研磨機を用いて望みの形に広げられる。ボディはレーザー加工機、ワイヤ放電加工機、及び放電研磨機から座標基準を失うことなく運ばれるので、穴と皿穴は同心性を損なうことなく生成される。
【0035】
次に、添付図面を参照して実施形態について説明する。最初に、図1を参照すると、多結晶超硬質材料のボディ10は主面12と対向する主面14を有する。少なくともひとつのパイロット・ホール又は複数のパイロット・ホール16がボディ10に生成される。穴は主面12から対向する主面14まで延びている。
【0036】
ボディ10から、例えばEDMカッティング又はレーザー・カッティングを用いて、線18に沿ってインサートを切断することにより複数の工具インサートが生成される(図2を見よ)。これによって49の工具インサートが、それぞれ多角形又は曲線形状で、生成される。各インサートには中心に位置する貫通穴又は皿穴16がそれを通って延びている。こうして各インサートはねじ又はピン・ロックなどの固定手段によって工具ホルダーに固定できる。インサートの厚さは約1.5mmから約5.0mmまでの範囲にあり、貫通穴の直径は約2.15mmから約8.0mmまでの範囲にあり、貫通穴の直径の許容誤差は約+/-0.02mmであり、同心度は約0.02mm未満又は約0.02mmである。インサートの内接円の許容誤差は約0.02mmである。
【0037】
仕上がりの工具インサートが図3に示されており、多結晶超硬質材料の層12を含み、それが基板14,典型的には超硬合金基板に接着されている。貫通穴又は皿穴16が層12の上面から基板14の底面まで延びている。穴又は皿穴16は、上面で直径が広くなっており、ねじの頭を収容できる凹みを形成している。
【0038】
ボディに少なくともひとつの穴又は皿穴を作り出す方法は、図7aから7dまでに示された工程を含む。図7aでは、ボディ28がホルダーとパレットを有する専用固定装置に固定されており、それがボディの位置と向きを高い精度で決めている。同じパレットが、レーザー加工機、WEDM,及びEDGという3つのマシンの各々に設置されている。この専用固定装置はまた、穴の軸とインサート上面の直交性を高精度で保証する。
【0039】
少なくともひとつのパイロット・ホール28がレーザーを用いて形成されて、28からボディ30を生成する。レーザーは、Lasag Lasers, Buffalo Grove, IL製のLASAGレーザーであってよい。図7bに示されるように、パイロット・ホールはボディ10の第1の主面12から対向する第2の主面14まで延びている。次に、図7cに示されるように、真直な穴26とトップ・テーパー22がWEDMを用いて形成されてボディ32が得られる。
【0040】
図7dに示されるように、EDGによってカーブした非円錐状の皿穴面24が形成されてボディ34が得られる。この工程で、EDGは表面14で終わる炭化物基板だけを削るということに注意したい。最後に、ボディはWEDM上で図2の線18に沿って切断し、図示のように表面18に沿ってインサートのレリーフが形成される。
【0041】
この方法は、穴の輪郭全体に対する放電研磨の使用をきわめて少なくしている。これは、異なる等級のPCDとPCBNが電気的な侵食に対して異なる抵抗を示すからである。
【0042】
ボディはマシンからマシンへ搬送しても基準は失われることがなく、各マシンにおける位置と向きが維持できる。これによって上述のような複数の電極の必要がなくなる。複数の電極を用いると、ボディにおいて個々のインサートを配置できるよりも大きな間隔で電極を配置することになりやすく、ボディの利用が減少するという結果になる。この方法における搬送可能という特徴は、また、各マシンにおけるパーツ・スケジュール設定にも有益であり、異なるマシンを同時に働かせることが可能になる。穴の同心性と直交性はWEDMの位置決め精度のオーダーで正確である。
【0043】
表面22が形成される間に穴の内側に形成される円錐状部分(図7cと7d)及び仕上がりのインサート自身はWEDMのノズルを適当に位置決めし調整することによって上向きに動かされる。特に、トップ・ノズルは自動的にシャットオフさせられ、ボトム・ノズルは圧力が高められるため、電気的な短絡の危険なしに、捕捉されたピースが吐き出される。電気的な短絡は、過剰な停止時間とオペレータの介入をもたらす。図8に示されるように、捕捉された円錐状部分による短絡は、円錐状部分をセグメントに切断して、セグメント又は破片のそれぞれが貫通穴26の円筒状部分より小さくなるようにしても回避できる(図7cと7d)。これによって破片は重力によって穴を通って落下することができ、製造工程でのワイヤの短絡が防止される。
【0044】
EDGは超硬質ディスクの炭化物基板だけを侵食するので、このプロセスはすべての等級のPCBNとPCDで同一である。これによってコストは低く抑えられ、プロセスの流れはきわめて単純で管理しやすくなる。すべての等級のPCBNとPCDで、生産時間は同一である。WEDM自身でカットされた逃げ面でインサートを切り離すことで、インサートの工具研磨を減らすことが可能になる。
【0045】
この方法は、ねじ又はピン・ロック形態で使用できる工具インサートを製造する利点がある。インサートを製造するときも使用するときも、切削ポイントに対する固定穴の位置に関して最高の精度がえられる。精密機械加工には切削工具材料が使用されるので、最適な性能を得るためには正確さがきわめて重要である。
【0046】
図5はこの方法で達成される同心性の精度を示す。高い精度の同心性は仕上げ研磨でインサートに許される研磨ストック(研磨代)を最小にするために必要である。研磨ストックが少ないほど、研磨のコストと時間の負担が少なくなる。
【0047】
この方法で得られるインサートは、部分的に円筒状の穴を有するインサートに関するISO標準に厳密に合致している。ISO6987:1998「部分的に円筒状の固定穴を有し、角が丸められた刃先割出可能な硬い材料のインサートの寸法」を参照されたい。
【0048】
図6は、本方法によって得られた入口部分の従来方法に比べて優れたエッジ品質を示す。前述のように、EDGプロセスは硬い層を侵食しないので、硬い層は表面22を作り出すWEDMプロセスから無傷で残される。本方法のプロセス設計の関連した利点は、インサートを工具ホルダーに固定するねじのテーパーが付いた表面は、表面22の下の炭化物皿穴だけにとどまるということである。したがって、硬い層は、工具の性能に妨げとなりうる締め付け作用によって加わる応力を受けない。
【実施例】
【0049】
図3図4に示されるような複数の切削インサートが、高いCBN含有量の多結晶PCBNの層を超硬合金基板に接着したディスクから製造された。ディスクは専用固定装置に保持され、レーザー加工機、WEDM、及びEDGの間で運ばれた。加工時間は穴あたり3分であった。その後、ディスクは18の穴の間の切断線に沿って切断され、それぞれ図3図4に示されるタイプの切削インサートが製造された。切断はWEDMを用いて行われた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図7(d)】
図8