特許第5988316号(P5988316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本製鋼所の特許一覧

特許5988316溶融金属の測温装置および溶融金属の測温方法
<>
  • 特許5988316-溶融金属の測温装置および溶融金属の測温方法 図000002
  • 特許5988316-溶融金属の測温装置および溶融金属の測温方法 図000003
  • 特許5988316-溶融金属の測温装置および溶融金属の測温方法 図000004
  • 特許5988316-溶融金属の測温装置および溶融金属の測温方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988316
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】溶融金属の測温装置および溶融金属の測温方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/14 20060101AFI20160825BHJP
   G01K 13/02 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   G01K1/14 E
   G01K13/02
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-136168(P2014-136168)
(22)【出願日】2014年7月1日
(65)【公開番号】特開2016-14573(P2016-14573A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2015年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 茂
(72)【発明者】
【氏名】梶川 耕司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 史生
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−209094(JP,A)
【文献】 実開昭57−068532(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/14
G01K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属中の温度を測温する温度検知部と、
前記温度検知部が備えられた温度検知部本体と、
前記温度検知部による前記測温が可能な状態に前記温度検知部本体を保持し、かつ、少なくとも前記溶融金属の凝縮方向への前記温度検知部本体の移動を可能にする保持部と、 前記温度検知部本体に対し、前記凝縮方向に抗する方向に負荷を与える負荷付与部を有し、
前記負荷付与部が、前記凝縮方向に移動する温度検知部本体に対し、前記凝縮方向に抗する方向に弾性力を与える弾性部材であることを特徴とする溶融金属の測温装置。
【請求項2】
前記弾性部材が、前記保持部と前記温度検知部本体との間に介在して設けられていることを特徴とする請求項記載の溶融金属の測温装置。
【請求項3】
前記弾性部材が、合金鋼、ステンレス鋼、Ni基超合金のいずれかによって構成されていることを特徴とする請求項またはに記載の溶融金属の測温装置。
【請求項4】
溶融金属中の温度を測温する温度検知部と、
前記温度検知部が備えられた温度検知部本体と、
前記温度検知部による前記測温が可能な状態に前記温度検知部本体を保持し、かつ、少なくとも前記溶融金属の凝縮方向への前記温度検知部本体の移動を可能にする保持部と、 前記温度検知部本体に対し、前記凝縮方向に抗する方向に負荷を与える負荷付与部を有し、
前記負荷付与部が、前記温度検知部本体に対し、一定の前記負荷を与えるものであることを特徴とする溶融金属の測温装置。
【請求項5】
溶融金属中の温度を測温する温度検知部と、
前記温度検知部が備えられた温度検知部本体と、
前記温度検知部による前記測温が可能な状態に前記温度検知部本体を保持し、かつ、少なくとも前記溶融金属の凝縮方向への前記温度検知部本体の移動を可能にする保持部と、 前記温度検知部本体に対し、前記凝縮方向に抗する方向に負荷を与える負荷付与部を有し、
前記保持部は、前記温度検知部本体が保持された際に溶融金属に対し前記温度検知部本体が浮遊方向に移動するのを停止するストッパを有することを特徴とする溶融金属の測温装置。
【請求項6】
前記ストッパは、前記温度検知部本体に設けられ、前記温度検知部本体が前記保持部に保持された際に前記保持部の一部に係止する形状を有することを特徴とする請求項記載の溶融金属の測温装置。
【請求項7】
溶融金属中の温度を測温する温度検知部と、
前記温度検知部が備えられた温度検知部本体と、
前記温度検知部による前記測温が可能な状態に前記温度検知部本体を保持し、かつ、少なくとも前記溶融金属の凝縮方向への前記温度検知部本体の移動を可能にする保持部と、 前記温度検知部本体に対し、前記凝縮方向に抗する方向に負荷を与える負荷付与部を有し、
前記温度検知部は、温度検知を行う熱電対を有することを特徴とする溶融金属の測温装置。
【請求項8】
溶融金属中の温度を測温する温度検知部を有する温度検知部本体を、溶融金属による浮遊方向への移動を規制し、かつ前記溶融金属の凝固収縮方向への移動を許容した状態で測温可能に保持し、
前記凝固収縮方向に抗する方向に前記温度検知部本体に負荷を与えつつ前記温度検知部による溶融金属の温度を連続的に測温することを特徴とする溶融金属の測温方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融中の金属の温度測定を可能にした溶融金属の測温装置および溶融金属の測温方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳鉄や鋼などの製造工程では、転炉や電気炉などで溶製された溶融金属を金型で鋳造し凝固させて鋳塊を得ている。この場合、重量が数トン以上の大型鋳塊になると、溶融金属が凝固するまでには長時間を要するため、凝固過程においてミクロ偏析やマクロ偏析などの化学成分の不均質が生じる。このような化学成分の不均質は、凝固後の鋳塊から製造される各種製品の機械的性質を悪化させる原因となるため、できるだけ少ない方が望ましい。
一般に、このような化学成分の不均質を少なくするために、鋳型の形状や鋳造温度および鋳造速度などの製造条件を適正化するための検討が行われている。近年、これらの検討には数値シミュレーションが多く用いられているが、計算精度を向上させるためには鋳型に鋳造した溶融金属中の各位置における温度を精度良く把握する必要がある。
【0003】
これまでに、溶融金属の温度を連続的に測定する方法としては、種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1には、下端が閉塞された筒状の保護管内に熱電対を挿入し、保護管の下部側を溶融金属中に浸漬させて浮遊させ、保護管に重錘を設けることで浸漬深さを変化させながら溶融金属の温度を測定する方法が提案されている。
また、特許文献2には、内部に熱電対素線が挿入され、浸漬される溶融金属よりも融点の高い金属で形成されたフローターを備え、溶融金属に浸漬された場合に、前記フローターの浮力により浮遊させる溶融金属用フローティング熱電対プローブが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−313369号公報
【特許文献2】特開2004−85432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記した特許文献1で提案された測定方法、特許文献2で提案された測定装置では、凝固開始前の溶融金属中の温度を連続的に温度測定することはできるものの、温度測定位置が変化してしまう問題が生ずる。その理由は、溶融金属の温度を検知する部分が浮遊した状態のため、溶融金属が凝固する際に生じる凝固収縮によって温度を検知する部分が鋳塊の中心部などへ向かって移動してしまうからである。これにより、特許文献1および特許文献2に示される方法や装置では、溶融金属が凝固を終了するまでの間、一定の浸漬深さで連続的に溶融金属の温度を測定することができない。
【0006】
このような問題を解決する手段としては、例えば重力に直角な方向に熱電対が移動しないように、熱電対を収納している保護管の側面にガイドを設けるなどして固定することが考えられる。しかし、熱電対が収納されている保護管を溶融金属に浮遊させているためにこれらの固定治具を溶融金属の表面に極めて近い位置まで設置しなくてはならず、固定治具の材料が溶融金属よりも融点の高いものに限定されてしまう。したがって、溶融金属よりも融点の高い材料を使用した固定治具では、溶融金属が融点の高い低合金鋼のような材料では測定が困難である。
また、熱電対が収納されている保護管を重力方向および重力に直角な方向のいずれにも移動しないように固定することも考えられるが、溶融金属が凝固する際には保護管と溶融金属が固着するために凝固収縮によって引張応力が生じ、熱電対および保護管が破断してしまう問題がある。
よって、溶融金属が凝固終了するまでの間、溶融金属の凝固収縮による熱電対の移動を極力抑え、かつ凝固収縮によって生じる熱電対や保護管への引張応力を緩和できる手段が要望されている。
【0007】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、溶融金属の測温中に、測温を行う温度検知部の測定位置を安定させ、かつ溶融金属が凝固する際に温度検知部に対する引張応力を緩和することができる溶融金属の測温装置および溶融金属の測温方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の溶融金属の温度測定装置のうち、第1の本発明は、
溶融金属中の温度を測温する温度検知部と、
前記温度検知部が備えられた温度検知部本体と、
前記温度検知部による前記側温が可能な状態に前記温度検知部本体を保持し、かつ、少なくとも前記溶融金属の凝縮方向への前記温度検知部本体の移動を可能にする保持部と、 前記温度検知部本体に対し、前記凝縮方向に抗する方向に負荷を与える負荷付与部を有し、
前記負荷付与部が、前記凝縮方向に移動する温度検知部本体に対し、前記凝縮方向に抗する方向に弾性力を与える弾性部材であることを特徴とする。
【0010】
の本発明の溶融金属の測温装置は、前記第の本発明において、前記弾性部材が、前記保持部と前記温度検知部本体との間に介在して設けられていることを特徴とする。
【0011】
の本発明の溶融金属の測温装置は、前記第または第の本発明において、前記弾性部材が、合金鋼、ステンレス鋼、Ni基超合金のいずれかによって構成されていることを特徴とする。
【0012】
の本発明の溶融金属の測温装置は、
溶融金属中の温度を測温する温度検知部と、
前記温度検知部が備えられた温度検知部本体と、
前記温度検知部による前記側温が可能な状態に前記温度検知部本体を保持し、かつ、少なくとも前記溶融金属の凝縮方向への前記温度検知部本体の移動を可能にする保持部と、 前記温度検知部本体に対し、前記凝縮方向に抗する方向に負荷を与える負荷付与部を有し、
前記負荷付与部が、前記温度検知部本体に対し、一定の前記負荷を与えるものであることを特徴とする。
【0013】
の本発明の溶融金属の測温装置は、
溶融金属中の温度を測温する温度検知部と、
前記温度検知部が備えられた温度検知部本体と、
前記温度検知部による前記側温が可能な状態に前記温度検知部本体を保持し、かつ、少なくとも前記溶融金属の凝縮方向への前記温度検知部本体の移動を可能にする保持部と、 前記温度検知部本体に対し、前記凝縮方向に抗する方向に負荷を与える負荷付与部を有し、
前記保持部は、前記温度検知部本体が保持された際に溶融金属に対し前記温度検知部本体が浮遊方向に移動するのを停止するストッパを有することを特徴とする。
【0014】
の本発明の溶融金属の測温装置は、前記第の本発明において、前記ストッパは、前記温度検知部本体に設けられ、前記温度検知部本体が前記保持部に保持された際に前記保持部の一部に係止する形状を有することを特徴とする。
【0015】
の本発明の溶融金属の測温装置は、
溶融金属中の温度を測温する温度検知部と、
前記温度検知部が備えられた温度検知部本体と、
前記温度検知部による前記側温が可能な状態に前記温度検知部本体を保持し、かつ、少なくとも前記溶融金属の凝縮方向への前記温度検知部本体の移動を可能にする保持部と、 前記温度検知部本体に対し、前記凝縮方向に抗する方向に負荷を与える負荷付与部を有し、
前記温度検知部は、温度検知を行う熱電対を有することを特徴とする。
【0016】
の本発明の溶融金属の測温方法は、溶融金属中の温度を測温する温度検知部を有する温度検知部本体を、溶融金属による浮遊方向への移動を規制し、かつ前記溶融金属の凝固収縮方向への移動を許容した状態で測温可能に保持し、
前記凝固収縮方向に抗する方向に前記温度検知部本体に負荷を与えつつ前記温度検知部による溶融金属の温度を連続的に測温することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、溶融金属の凝固収縮に際し、負荷付与部による負荷によって温度検知部本体の移動が抑えられ、さらに凝固収縮による引張応力が大きくなると、負荷付与部による負荷に抗して温度検知部本体が移動することができ、引張応力による温度検知部や温度検知部本体に対する損傷を防止し、連続した溶融金属の温度測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態における測温装置が溶融金属中に設置された状態を示す図である。
図2】同じく、測温装置の保持部分を拡大した図である。
図3】同じく、測温装置が凝固した状態の金属中に設置された状態を示す図である。
図4】本発明の他の実施形態における測温装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態における測温装置を図1〜3に基づいて説明する。
なお、図中10は、金属を鋳込む鋳型を模したものであり、11は溶融金属を示している。
測温装置1は、端子線2が先端を露出するように保護管3内に挿入されており、端子線2の基端側で熱電対4に接続されている。これにより熱電対4は、溶融金属と接触することなく測定を行うことが可能になる。保護管3は、温度測定部本体に相当し、端子線2および熱電対4は温度測定部を構成している。熱電対4で発生する電流は、ケーブル5を通して温度測定回路(図示しない)に入力され、電流に相当する測定温度を観察することができる。
【0020】
鋳型10の上方開放部には、保持板12が設置されており、保持板12には、保持筒13が固定されている。保持筒13は、内側に向けた保持側フランジ13Aを上部に有する筒形状に形成され、保護管移動穴12Aが形成された保持板12の上面にネジ13Bなどによって取り付けられている。保護管3は、保護管移動穴12Aおよび保持側フランジ13A内の穴を通して上下方向に移動可能になっている。
上記保持板12および保持筒13は、本発明の保持部に相当する。なお、保持板12を用いることなく、鋳型の一部形状を利用して保持筒などを設置することも可能であり、その場合、保持部としては保持板に相当するものを必要としない。
【0021】
また、保護管3の外周面には、保持筒13の筒内に配置され、保持側フランジ13Aの下側に位置する保護管フランジ3Aを有している。この実施形態では保護管フランジ3Aは保護管移動穴12Aの径よりも大径になっている。
保護管フランジ3Aは、保持側フランジ13Aの内周穴よりも大きい外径を有し、上方への移動は、保持側フランジ13Aの下面に保護管フランジ3Aの上面が当接(係止)することで規制される。すなわち、保持側フランジ13Aは本発明のストッパに相当する。保持側フランジ13Aと保護管フランジ3Aとの位置関係は、溶融金属の測温時に温度測定部が溶融金属11に対し適正な位置になるようにそれぞれの設置位置や相互の設置位置が設定されている。なお、本発明のストッパ形状は上記フランジの対面によるものに限定されるものではなく、移動を規制できるものであれば適宜の構成とすることが可能である。
【0022】
また、保護管フランジ3Aの下面と、保持板12の保護管移動穴12Aの周囲の板上面との間に、外力が加わっていない状態または圧縮された状態でコイルスプリング6が介在されている。圧縮状態でコイルスプリング6を配置する場合、さらなる圧縮が可能である。したがって、保護管3は、保護管フランジ3Aの上面が保持側フランジ13Aの下面に当接している位置からコイルスプリング6が圧縮可能な範囲まで上下方向に移動が可能になっている。コイルスプリング6は、溶融金属が凝固収縮する方向に抗する弾性力を温度測定部本体に付与するものであり、本発明の負荷付与部に相当する。
また、保護管3では、保持筒13の上方側で、熱電対4が端子線2に電気的に接続されており、熱電対4の出力はケーブル5に接続されている。
【0023】
次に、測温装置による測温状態を説明する。
保護管3の先端側が、溶融金属11中に浸漬された状態になると、浮力を受けるため、保護管3は保護管フランジ3A上面が保持側フランジ13A下面に当接した状態になり、移動が規制される。なお、保護管3は、コイルスプリング6の伸長力によって当初から保護管フランジ3A上面が保持側フランジ13A下面に当接した状態になっているものであってもよい。
溶融金属11の温度は、端子線2を伝熱して熱電対4で生じる電流によって温度の測定が行われる。なお、熱電対は、温度測定部本体の内側にあって、溶融金属の内部に配置して測温される構造とすることも可能である。
【0024】
溶融金属の温度は、溶融金属が凝固完了前まで連続して測定することができる。
一方、溶融金属の凝固が開始されると、凝固収縮によって液面が低下する。ただし、保護管3にはコイルスプリング6によって凝固収縮の方向に抗する弾性力が与えられており、その移動量を小さくする。特に凝固収縮が大きくなるのに従って弾性力が大きくなるため、保護管3の移動を長い時間に亘って抑制することができる。
さらに凝固収縮が大きくなると、保護管3に対する引張応力が大きくなるため、引張応力がコイルスプリング6の応力に勝り、コイルスプリング6が圧縮されて保護管3が下方に移動する。この段階では、溶融金属11の温度が相当に低下しており、温度測定の意義が小さいため保護管3の移動は測定精度に殆ど影響しない。このように、最終的には保護管3が溶融金属11の凝固収縮によって移動できるため、引張応力によって保護管3等に与えられる損傷を回避することができる。
【0025】
なお、保護管3を保持するコイルスプリング6は、溶融金属からの輻射熱に耐えうる金属が望ましく、例えば合金鋼、ステンレス鋼、Ni基超合金などが望ましい。保持板12の材質も溶融金属からの輻射熱に耐えうる金属が望ましいが、耐火物等の非金属材料を用いてもよい。
凝固収縮による熱電対保護管3の移動量は溶融金属の種類によって変化する。したがって、溶融金属の種類が変わる場合には、設置するコイルスプリング6の圧縮可能長さを変更することで保護管3に作用する引張応力を確実に吸収することができる。
【0026】
なお、上記実施形態では、負荷付与部としてコイルスプリングを示したが、これに限定されるものではなく、板バネ、ねじりバネ、さらばねなどの適宜の弾性部材を用いることができる。
【0027】
(実施形態2)
上記実施形態では、負荷付与部には弾性部材を用いており、弾性部材に加わる応力によって温度測定部本体に付与される負荷の大きさが変化している。ただし、負荷付与部としては、一定の負荷を温度測定部本体に付与できるものであってよい。
以下に、その実施形態を説明する。なお、前記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
【0028】
温度測定装置1Aは、端子線2が先端を露出するように保護管3内に挿入されており、端子線2の上端側で熱電対4に接続されている。
鋳型10の上方開放部には、保持板12が設置され、保持板12には、保持筒13が固定されている。保持筒13は、内側に向けた保持側フランジ13Aを有する筒形状に形成され、保護管移動穴12Aが形成された保持板12上面にネジ13Bなどによって取り付けられている。保護管3は、保護管移動穴12Aおよび保持側フランジ13A内の穴を通して上下方向に移動可能になっている。
【0029】
保護管3の外周面には、保持筒13の筒内に配置され、保持側フランジ13Aの下側に位置する保護管フランジ3Aを有している。保護管フランジ3Aは、保持側フランジ13Aの内側穴よりも大きい外径を有し、上方への移動が保持側フランジ13Aで規制されている。
【0030】
さらに、この実施形態では、保護管3に上方から垂らした移動ケーブル20が接続されている。移動ケーブル20は、保護管3への接続位置よりも上方で横方向に配置した回転ローラ21および回転ローラ22間に掛け渡されており、移動ケーブル20の他端側は、回転ローラ22を介しておもり23がつり下げられている。このおもり23によって保護管3には、溶融金属11の凝固方向に抗する方向に一定の負荷を付与することができる。おもり23の重さを適宜設定することで保護管3が移動し始める時期を設定することができる。
したがって、移動ケーブル20、回転ローラ21、22、おもり23は、本発明の負荷付与部に相当する。
【0031】
この実施形態においても、溶融金属の測定中に凝固収縮によって液面が低下する状態になっても、保護管3の移動を極力防止し、おもり23の重さを超える一定の大きさで引張応力が発生する場合は、保護管3が下方に移動して引張応力による破損を回避することができる。
また、おもりに変えて保護管3にアクチュエータなどによって所定の方向に負荷を付与することも可能である。
【0032】
なお、上記各実施形態では、溶融金属の凝固方向が下方であるものについて説明したが、鋳型の形状や測温位置によって凝固方向が下方に限定されるものではない。
また、温度の連続測定は、常時測温をしていることが必要とされるものではなく、時間をおいて常時または複数回測定する場合も含まれる。
【0033】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の説明に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 測温装置
1A 測温装置
2 端子線
3 保護管
3A 保護管フランジ
4 熱電対
5 ケーブル
6 コイルスプリング
10 鋳型
11 溶融金属
12 保持板
12A 保護管移動穴
13 保持筒
13A 保持側フランジ
13B ネジ
20 移動ケーブル
21 回転ローラ
22 回転ローラ
23 おもり
図1
図2
図3
図4