(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上面に取出し口形成用の環状の裂開用ミシン目線が形成された紙箱の前記上面の内側面に、スリットを有するフィルムシートを、そのスリットが前記裂開用ミシン目線で囲まれる範囲内に位置するようにして貼付された収納箱と、この収納箱内に収納されたティシュペーパーが折り畳み積層されたティシュペーパー束と、を有するティシュペーパー製品であって、前記フィルムシートは、フィルムシート基材と、香料の徐放性が異なる第1香料層と第2香料層とを有し、紙箱底側に対向する面に、前記香料の徐放性が異なる第1香料層と第2香料層とが、ティシュペーパー束に対面するようにして設けられている、ことを特徴とする香り付きティシュペーパー製品。
第1香料層が、香料が封入されたマイクロカプセルを担持させた層であり、かつ、スリットを含むスリット近傍領域に設けられ、第2香料層が、第1香料層に含有する香料よりも揮発性の低い香料を含む香料インキで形成された層であり、
かつ、収納箱の上面の内側面が、ガスバリア性樹脂又はガスバリア性シートによって被覆されている、請求項1記載の香り付きティシュペーパー製品。
【背景技術】
【0002】
複数枚のティシュペーパーからなる束が収納箱内に収納され、その収納箱(カートン箱或いはカートンとも称される)の上面に設けられた取出し口からティシュペーパーを順次一枚(一組とされたものも含む)ずつ引き出して使用するティシュペーパー製品はよく知られる。その取り出し方法は、一枚を取り出すとそれに連続して次ぎの一枚が取出し口から引き出されるポップアップ式となっている。
【0003】
このティシュペーパー製品の中には、香りを発するようにした製品があり、消費者に受け入れられている。この香り付きのティシュペーパー製品は、一時的に強い香りがするものより、継続的にほのかに香るものを消費者が好む傾向にあり、香り付きティシュペーパー製品では、使用開始後にティシュペーパーを使いきるまで安定して継続的にほのかに香りがすることが求められる。
【0004】
従来の香り付きのティシュペーパー製品は、ティシュペーパー自体に香料を塗布するのが一般的であった。
【0005】
しかし、この従来製品は、ティシュペーパーを製造するにあたり製造設備全体に香料の香りが付着することになるため、香り付きティシュペーパーを製造する専用ラインが必要であり、製造コストが高くなるという問題があり、また、香料を塗布するにあたり溶媒が必要であり、その溶媒に水を用いると紙が硬くなり、油性溶媒を用いるとべたつき感のあるものとなるなどの問題があった。
【0006】
さらに、従来製品は、収納箱内で蒸散した香料がカートン原紙にも吸収されてしまうため、保管期間が長期に渡る場合など、開封時には十分な香りが既に得られなくなっていることがあった。
【0007】
このように従来の香り付きティシュペーパー製品については、製造コストが高い、ある程度保管した後の香りの発現が不十分である、ほのかな香りを継続的に安定して発することに関し十分に満足するものとはいえないという問題があり、これらの問題の改善が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の主たる課題は、製造コストが安く、ある程度の保管期間後においても香りが十分に感じられ、しかも、ほのかな香りが継続的に安定して発せられる香り付きティシュペーパー製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した本発明は以下のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
上面に取出し口形成用の環状の裂開用ミシン目線が形成された紙箱の前記上面の内側面に、スリットを有するフィルムシートを、そのスリットが前記裂開用ミシン目線で囲まれる範囲内に位置するようにして貼付された収納箱と、この収納箱内に収納されたティシュペーパーが折り畳み積層されたティシュペーパー束と、を有するティシュペーパー製品であって、前記フィルムシートは、
フィルムシート基材と、香料の徐放性が異なる第1香料層と第2香料層とを有し、紙箱底側に対向する面に、
前記香料の徐放性が異なる第1香料層と第2香料層とが、ティシュペーパー束に対面するようにして設けられている、ことを特徴とする香り付きティシュペーパー製品。
【0011】
〔請求項2記載の発明〕
第1香料層が、香料が封入されたマイクロカプセルを担持させた層であり、かつ、スリットを含むスリット近傍領域に設けられ、第2香料層が、第1香料層に含有する香料よりも揮発性の低い香料を含む香料インキで形成された層であ
り、
かつ、収納箱の上面の内側面が、ガスバリア性樹脂又はガスバリア性シートによって被覆されている、請求項1記載の香り付きティシュペーパー製品。
【0012】
【0013】
〔作用効果〕
本発明のティシュペーパー製品は、フィルムシートの紙箱底側に対向する面に、香料の徐放性が異なる第1香料層と第2香料層とを、ともに露出してティシュペーパー束に対面するように設けた。したがって、第1香料層及び第2香料層から蒸散する香料が収納箱内に広がり、ティシュペーパー束に香りを付与する。ティシュペーパーに直接的に香料を塗布する場合と比較して、ティシュペーパーをほのかに香るようにすることができる。
【0014】
そして、第1香料層を香料が十分に蒸散するまでに時間のかかる層、或いは蒸散期間の長い層とし、第2香料層を初期から香料が蒸散しやすい層とするなど、徐放性に差を持たせることで、ティシュペーパー製品の保管期間による香り低下が回避され、使用開始時には保管期間に関係なく香りを発するようにすることができる。
【0015】
なお、本発明における、徐放性とは、香料が蒸散して香りを発する期間(持続時間)と、香料が蒸散開始するまでの期間とそのメカニズムを含む意味である。
【0016】
特に、本発明では、第1香料層を、香料を封入したマイクロカプセルを担持させた層としてスリットを含むスリット近傍領域に設け、第2香料層を第1香料層における香料よりも揮発性の低い香料を含む香料インキで形成された層とするのがよい。また、香料インキにシリカを配合したり、香料インキで形成した層を塩化ビニリデンなどのガスバリア樹脂でコートしたりするなどして揮発性をコントロールすることができる。
【0017】
香料インキは、油性成分に香料を分散させたものであり、香料の蒸散が緩やかに進行するため、保管期間が長期にわたる場合であっても、ティシュペーパー束に香りが継続的に付与され、長期間保管時における香り低下のおそれが小さい。特に、第1香料層よりも揮発性の低い香料としたり、塩化ビニリデンでコートするなどして揮発性を遅くしたりすることで、その効果が顕著となる。
【0018】
一方、マイクロカプセルに香料を封入した場合には、マイクロカプセルが崩壊しない限り香料が蒸散しない。本発明では、マイクロカプセルをスリット近傍に位置させているため、ティシュペーパー引き出し時にマイクロカプセルとティシュペーパーが摺れてマイクロカプセルが崩壊して香料が蒸散する。したがって、この第1香料層により、使用開始が何時であっても使用開始時から香料による香気の効果が得られる。
【0019】
以上のように第1香料層と第2香料層を設けることで、ある程度保管した後であっても香りの発現が十分であり、また、使用開始後にほのかな香りを継続的に発するようにすることができる。なお、マイクロカプセルに香料を封入した場合には、使用開始から徐々に香料の効果が薄れることになるが、本発明では、香料インキから蒸散される香料によって香気が収納箱内に留まっているため、使用にともなって香気が薄れる感じは低減される。
【0020】
また、本発明においては、紙箱の上面の内側面をガスバリア性樹脂或いはガスバリア性シートにより被覆するのがよい。このようにすると、各香料層から蒸散した香料が紙箱に吸収されず、紙箱内に留まるようになる。特に、上記の第1香料層を香料を封入したマイクロカプセルを担持させた層とし、第2香料層と香料インキにより形成したものと合わせることで、とりわけ継続的かつ安定的にほのかな香りを発するものとなる。
【0021】
すなわち、香料インキからなる第2香料層から発せられる香料が効果的に収納箱内に留まるとともに、十分な濃度で継続的にティシュペーパー束に香りが付与される。よって、保管期間にかかわらず使用開始時に十分に香りが感じられるものとなる。
【0022】
また、使用開始後においても、第1香料層も収納箱内に位置しているため第1香料層に起因する香料も一部収納箱内に放散されるとともに、ティシュペーパー束に香りを付与する。このように収納箱内に香料が留まりティシュペーパー束に香りを付与し続けることで、最後のティシュペーパーに至るまでほのかな香りが持続する。また、収納箱内に香料が留まるため、スリットから香料が少しずつ放散されて箱内からほのかに香りが発せられる製品ともなる。
【0023】
なお、第1香料層の香気と第2香料層の香料を香りが異なるものとすれば、経時的な香気の変化が感じられる製品となる副次的な効果も奏する。
【発明の効果】
【0024】
以上のとおり、本発明によれば、製造コストが安く、ある程度の保管期間後においても香りが十分に感じられ、しかも、ほのかな香りが継続的に安定して発せられる香り付きティシュペーパー製品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次いで、本発明の実施の形態を図面を参照しながら以下に詳述する。
図1〜6に、本発明に係るティシュペーパー製品100を示す。
【0027】
本発明に係るティシュペーパー製品100は、複数枚のティシュペーパー2t,2t…が、折り畳まれ重層されてなるティシュペーパー束2が、上面11に取出し口形成用の環状の裂開用ミシン目線20が形成された収納箱1に収納され、使用時に当該取出し口20Xからティシュペーパー2tを取り出すと、隣接して積層されている下層のティシュペーパーの一部が取出し口20Xから露出されるように構成したものである。
【0028】
本発明に係る収納箱1は、カートン箱やカートンとも呼ばれる直六面体形状の箱体であり、製品外観をなすものである。この収納箱1は、上面11に取出し口20Xを形成するための環状の裂開用ミシン目線20を有する紙箱10と、前記ミシン目線20により囲まれる範囲20aを紙箱内側から覆うフィルムシート30とを有する。
【0029】
紙箱10は、収納箱1の外郭をなす概ね紙製の箱体であり、その大きさ、形状、展開形状等は既知の収納箱の紙箱の構成が採用される。一般的な収納箱の大きさは、概ね長手縁L1が110〜320mm、短手縁L2が70〜200mm、高さL3が40〜150mm程度であり、本発明に係る収納箱1もこの大きさとすることができる。
【0030】
また、紙箱10の基材は、バージンパルプ、古紙パルプ等の各種のパルプを主原料とする既知の紙素材が採用でき、好適な紙箱10の素材は、坪量250〜500g/m
2のコートボール紙である。
【0031】
本実施形態の紙箱10の構造は、
図2、
図3に示すように、底面12と一方の長側面13を糊代部12Aで糊付けして筒状とした後、上面11、底面12及びこれらを連接する長側面13から延出する各フラップF,F…を箱内面側に折り返し、各フラップF,F…の当接部分をホットメルト接着剤等により接着して短側面14を構成した構造となっている。なお、本発明の紙箱10は、この構造に限定されるわけではない。
【0032】
他方、紙箱10の上面に形成される裂開用ミシン目線20は環状をなし、適宜のカットタイ比で構成される。裂開用ミシン目線20は、通常のミシン目線の他、二重ミシン目線、ジッパーミシン目線等で構成することができる。一部分のみ二重ミシン目線としてもよい。
【0033】
本実施形態に係る裂開用ミシン目線20は、紙箱長手方向に延在する長辺21,21とこの長辺21,21の端同士を繋ぐ短手縁に平行な短辺22,22とを有し、裂開用ミシン目線20に囲まれる範囲20aの形状は、収納箱1の長手方向に沿う方向が長い適宜の形状である。一般的には、収納箱1の長手方向に沿うやや細長い角取り矩形、或いはその矩形の長辺21,21の中央部を外方に向かってやや膨張させてアーチ状とし、楕円に近い形状としたものである。図示の形態は後者の例である。
【0034】
他方、フィルムシート30は、前記裂開用ミシン目線20により囲まれる範囲21aより大きく、例えば、矩形や楕円形であり、紙箱上面11の内側面11iにおいて、特に裂開用ミシン目線20の切り剥がしに影響がないように、環状ミシン目線20の外側で図示されない接着剤によって接着されている。このフィルムシート30には、スリット31が形成されており、このスリット31は裂開用ミシン目線20により囲まれる範囲20aで長手方向に沿って位置されている。したがって、
図3、
図4に示すとおり、裂開用ミシン目線20に沿ってその裂開用ミシン目線20で囲まれる範囲20aを切り剥がすことにより、紙箱上面11に取出し口20Xが形成されるとともに、前記フィルムシート30及びそれに形成されたスリット31が取出し口20Xを介して露出される。
【0035】
なお、前記スリット31の長さは、適宜の長さとすることができ、既知の環状ミシン目線20との大きさの関係で適するとされる長さが採用できる。
【0036】
収納箱1に束として収納されているティシュペーパー2tは、図示例のとおり、前記スリット31を介して取出し口20Xから一枚ずつ取り出される。そして、当該スリット31は、取出し口20Xから露出するティシュペーパー2tの一部を支持して収納箱内部に落ち込むことを防止する。
【0037】
ここで、本発明に係るフィルムシート30は、紙箱底側に対向する面に、第1香料層30Aと第2香料層30Bとが設けられている。これらは、ともに収納箱内に収納されているティシュペーパー束2の上面に対面するようにして設けられており、各香料層30A,30Bから蒸散された香料によってティシュペーパー束に香りが付与されるようになっている。図示例は、フィルムシート基材30C上に第2香料層30Bを設け、その第2香料層30B上の一部に第1香料層30Aを設けて、各香料層30A,30Bがともにティシュペーパー束2に対面するようにしている。なお、本発明においては、この形態に限定されず、第1香料層30Aと第2香料層30Bとを積層することなく領域分けして設けてもよい。
【0038】
第1香料層30Aと第2香料層30Bとは、その香料の徐放性が異なるものであり、本実施形態では、第1香料層30Aを、香料を封入したマイクロカプセルを担持させた層として、スリット31を含むスリット近傍領域に設け、スリット31を介してティシュペーパー2tを引き出す際にティシュペーパー2tとの摩擦によってマイクロカプセルが崩壊して内部の香料が蒸散して香りを発するようにし、第2香料層30Bを第1香料層30Aに含有する香料よりも揮発性の低い香料を含み、香料が長期間にわたって継続的に蒸散するようにした香料インキで形成した層として、徐放性を異ならしめている。
【0039】
フィルムシート30のフィルム
シート基材30Cは、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、塩化ビニリデンフィルム、それらのフィルムを適宜積層したラミネートフィルムが例示できる。好ましくは、ガスバリア性に優れる塩化ビニリデンフィルム或いは塩化ビニリデンフィルム層を含む積層フィルムである。フィルム
シート基材をガスバリア性に優れたものとすると、香料層からの香料が裏抜けして紙箱外へ透過し難くなる。このフィルム
シート基材30Cの厚みは、10〜200μmが適し、10μm未満では、強度的に不足し、ティシュペーパー2tの取り出し時において裂けあるいは破断の確率が高くなり、逆に、200μmを超えると、強度の問題はないものの、取り出し難くなり、またコスト高となる。
【0040】
他方、本実施形態の第1香料層30Aは、香料を封入したマイクロカプセルをバインダーに分散させて、グラビア印刷等の適宜の印刷機を用いてフィルム
シート基材上或いは第2香料層上に形成して設けることができる。バインダーとしては、でんぷん、PVA、ウレタン樹脂、アクリル樹脂を使用でき、第1香料層30Aは、これらのバインダーに対して、マイクロカプセルを、例えば2〜20重量%に分散させたものを、固形分量でたとえば2.3〜23g/m
2の塗布量で塗布して形成することができる。
【0041】
本実施形態における第1香料層30Aに用いるマイクロカプセルの形成方法は、本発明では特に限定されない。コアセルベーション法、インサイチュ法、界面重合法等の化学的方法から適宜選択すればよい。マイクロカプセルの壁材の種類も、特に限定されない。ゼラチン、寒天、各種天然ゲル化剤、グリセリン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどを例示することができる。また、マイクロカプセルの構造も特に限定されず、単純単核のものを例示することができる。さらに、マイクロカプセルの平均粒子径も特に限定されず、5〜15μm、好ましくは8〜10μmとすることができる。ただし、マイクロカプセルの平均粒子径が小さすぎると、必要かつ十分な香料を含ませることができなくなる。他方、マイクロカプセルの平均粒子径が大きすぎると、塗布液中における混合時や乾燥時などにおいて、カプセル(壁材)が壊れて、香料が流出してしまうおそれがある。このほか、マイクロカプセルの膜厚も特に限定されず、例えば、0.1〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.5μmとすることができる。ただし、膜厚が薄すぎると、塗布液中における混合時や乾燥時などにおいて、カプセル(壁材)が壊れて、香料が流出してしまうおそれがある。他方、膜厚が厚すぎると、壁材が壊れにくくなる。マイクロカプセルの芯材(香料)の割合は、通常70〜90質量%、好ましくは75〜85質量%であるが、香りの強弱に合わせて調整することができる。
【0042】
また、本実施形態の第1香料層30Aでは、異なる粒子径や膜厚のマイクロカプセルを2種以上混合することによって、マイクロカプセルの崩壊をより制御することができる。すなわち、膜厚が薄いと容易に壊れるため、香料の付与が迅速になされ、他方、膜厚が厚いと容易に壊れないため、香料の付与が迅速になされない、という原理などを利用するものである。
【0043】
他方、本実施形態における第2香料層30Bは、香料を油性溶剤に分散させてバインダーで定着するようにした香料インキをグラビア印刷等の適宜の印刷機を用いてフィルム
シート基材に印刷することで形成することができる。本実施形態では、特に第2香料層30Bを、第1香料層30Aに含有させる香料よりも揮発性の低い香料を用いたうえ、油性溶剤に香料を分散させる態様の香料インキにより形成することで、緩やかに長期に渡って香りを発するようにしている。第2香料層30Bは、固形分量でたとえば2.3〜23g/m
2の塗布量で塗布して形成するのがよい。ここで、本実施形態における、香料インキは、香料をマイクロカプセルに封入したものを用いたものではなく、香料を直接的に油性溶剤に分散させ、これをバインダーにより定着させるようにしたものである。この種の香料インキは、既知の印刷インキの顔料成分の一部を香料に置き換えてものであり、本実施形態ではこれを利用することができる。バインダーの具体例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、マレイン酸エステル共重合体等が例示でき、油性溶剤は、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、プロピレングリコールメチルエーテル等のエーテル類、フェノキシエタノール等の高級アルコール類、グリセリン脂肪酸エステル等のエステル類が例示できる。
【0044】
なお、香料インキにシリカを配合したり、香料インキで形成した層の一部を塩化ビニリデンなどのガスバリア樹脂でコートしたりするなどして揮発性をコントロールしてもよい。
【0045】
ここで、上記第1香料層30A、第2香料層30Bにおける香料は、特に限定されるものではないが、具体例として、リュウゼン香、安息香、海狸香、霊猫香、丁字油、ガルバナム、ジャスミンアブソリュート、ラブタナム、マテ茶、メリロット、ミモザ、ムスクトンキン、ミルラ、オークモスまたはモスドシェーヌ、乳香、ビャクシ香、オリス、バチュリ、ローズマリー油、白檀油、ベチバー油、バイオレットリーフアブソリュートなどの天然香料、高級アルコール、アルデヒド、ベンズアルデヒド、安息香酸、ケイ皮酸、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮アルコール、クマリン、エステル、インドール、ケトン、サリチル酸と関連化合物、テルペノイド、バニリンなどの各種の合成香料あるいはこれらの2つ以上の混合物を挙げることができる。市販品を使用することもできる。
【0046】
なお、第1香料層30Aと第2香料層30Bにおける香料の香りの種類は、同一又は同系統ものであって異なるものであってもよい。第1香料層30Aと第2香料層30Bとの香りが異なる場合には、トップノート、ボトムノートのように、ティシュペーパー製品100の使用開始から使用終了に掛けて、香りが変化するようになり、その変化を感じられる製品となる。
【0047】
他方、本発明の収納箱1においては、上述のとおりティシュペーパー束2に対面するようにしてフィルムシート30に第1香料層30Aと第2香料層30Bとを設け、各香料層30A,30Bから蒸散された香料によってティシュペーパー束2に香りを付与するようにしているため、紙箱10自体に香料が吸収されたり、紙箱10を透過して香料が漏出しないようにして、ティシュペーパー束2に香りが確実に付与されるようにすべく、少なくとも紙箱10の上面11の内側面11iをガスバリア性樹脂又はガスバリア性シートにより被覆するのが望ましい(図中、ガスバリア樹脂層を符号50で示す)。未使用時においてティシュペーパー束2と紙箱上面11の内側面
11iとの間に空間が存在する場合には、紙箱10の短側面14及び長側面13の少なくとも一方についても、未使用時におけるティシュペーパー束2の上面よりも紙箱底面側位置に至るまでガスバリア性樹脂等によって被覆するのがよい。なお、この場合、香料の紙箱10への吸収や透過を抑制する点では短側面14、長側面13の双方に設けるのがよいが、短側面14が各フラップF,F…により組立てられることを考慮して、製造の容易性を重視するのであれば、面積の広い長側面13のみでも効果を奏する。もちろん、底面も含め紙箱の内面すべてをガスバリア性樹脂等で被覆してもよい。
【0048】
このように上面等をガスバリア性樹脂等で被覆すると、例えば、本実施形態であれば、第2香料層から蒸散した香料が、未使用時においては少なくともティシュペーパー束を透過しない限り、紙箱に対して吸収されたり、紙箱を透過したりしない。香料は、ティシュペーパー束を透過する過程でティシュペーパー束に多くが付着されるため、確実にティシュペーパー束に香りが付与され、長期に渡って保管されても香りが低下することがない。
【0049】
紙箱10の当該所定位置をガスバリア樹脂等で被覆する方法は、紙箱組立て前のカートンブランクに対してガスバリア性樹脂を塗布したり、ガスバリア性シートを貼付して積層したりすればよい。ここで、ガスバリア性樹脂としては、エチレン/ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン等が例示でき、ガスバリア性シートとしては、上記ガスバリア性樹脂からなるフィルムシートやこれらの樹脂層を含むラミネートシート、さらに、アルミラミネート層やアルミ蒸着層を有するラミネートフィルムシートが例示できる。好ましくは、製造が容易でありかつコスト安である、塩化ビニリデン樹脂膜を形成するものである。
【0050】
他方、本発明に係るティシュペーパー束2は、方形のティシュペーパー2tが実質的に二つ折りされ、その折り返し片の縁が上下に隣接するティシュペーパーの折り返し内面に位置するようにして、互い違いに重なり合いつつ積層されたものである。なお、ここで実質的にとは、製造上の形成される縁部の若干の折り返しを許容する意味である。
【0051】
この積層構造のティシュペーパー束2は、最上位に位置する一枚の折り返し片を上方に引き上げると、その直下で隣接する他の一枚の折り返し片が、摩擦により上方に引きずられて持ち上げられる。そして、かかる構造のティシュペーパー束2は、その最上面が上述の上面11に取出し口20Xを有する収納箱1の当該上面に向かいあって収納され、前記取出し口20X、特にスリット31から最初の一組(最上面に位置する一組)が引き出されたときに、その直近下方に位置する他の一組の一部が露出される。なお、本発明のおけるティシュペーパー2tの積層枚数が限定されないが、この種の製品の一般的な積層枚数を例示すれば、120〜240組である。
【0052】
このティシュペーパー束2は、マルチスタンド式、ロータリ式の既知のインターフォルダにより製造することができる。
【0053】
他方、ティシュペーパー束2を構成するティシュペーパー2tは、2枚〜3枚の薄葉紙が積層されたプライ構造を有している。
【0054】
その薄葉紙の原料パルプとしては、NBKPとLBKPとを配合したものであり、適宜古紙パルプが配合されていてもよいが、風合いなどの点で、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよい。その場合配合割合としては、NBKP:LBKP=20:80〜80:20がよく、特に、NBKP:LBKP=30:70〜60:40が望ましい。
【0055】
本発明に係るティシュペーパー2tの各プライを構成する薄葉紙1枚あたりの米坪は、好ましくは10〜25g/m
2、より好ましくは11〜16g/m
2である。米坪が10g/m
2未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、使用に耐えうる十分な強度を適正に確保することが困難となる。逆に米坪が25g/m
2を超えると紙全体が硬くなるとともに、ゴワ付き感が生じてしまい肌触りが悪くなる。なお、米坪は、JIS P 8124(1998)の米坪測定方法による。
【0056】
他方、本発明に係るティシュペーパーの紙厚は、2プライの状態で100〜140μm、より好ましくは120〜140μmであるのが望ましい。紙厚が100μm未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、ティシュペーパーとしての強度を適正に確保することが困難となる。また、140μm超では、ティシュペーパーの肌触りが悪化するとともに、使用時にゴワツキ感が生じるようになる。
【0057】
紙厚の測定方法としては、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて2プライの状態で測定するものとする。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。なお、紙厚は測定を10回行って得られる平均値とする。