特許第5988366号(P5988366)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5988366-積層型圧電素子 図000002
  • 特許5988366-積層型圧電素子 図000003
  • 特許5988366-積層型圧電素子 図000004
  • 特許5988366-積層型圧電素子 図000005
  • 特許5988366-積層型圧電素子 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988366
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】積層型圧電素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/047 20060101AFI20160825BHJP
   H01L 41/083 20060101ALI20160825BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20160825BHJP
   H01L 41/297 20130101ALI20160825BHJP
【FI】
   H01L41/047
   H01L41/083
   H01L41/09
   H01L41/297
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-217049(P2012-217049)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-72357(P2014-72357A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】脇田 慎也
【審査官】 上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−164082(JP,A)
【文献】 特開平09−162451(JP,A)
【文献】 特開2000−133851(JP,A)
【文献】 特開2004−207633(JP,A)
【文献】 特開2004−260136(JP,A)
【文献】 特開2005−005680(JP,A)
【文献】 特開2004−297041(JP,A)
【文献】 特開2008−034542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/047
H01L 41/083
H01L 41/09
H01L 41/297
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体層と内部電極層とが複数積層された積層体を備え、
前記内部電極層は銀とパラジウムとを含有し、前記内部電極層を積層方向から見た端部に中央部よりも前記パラジウムの含有比率が高いパラジウム高含有領域を有しており、
前記パラジウム高含有領域において、前記パラジウムの含有比率に勾配を持たせるように前記中央部側から外側に向かって前記パラジウムの含有比率が徐々に高くなっていることを特徴とする積層型圧電素子。
【請求項2】
前記積層体の側面に沿って前記内部電極層を構成する正極および負極の両方の端部が配置されており、前記両方の端部に前記パラジウム高含有領域を有していることを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電素子。
【請求項3】
前記パラジウム高含有量領域を有する前記端部は前記積層体の側面から内側に引っこんだ位置にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層型圧電素子。
【請求項4】
前記積層体の側面から内側に引っこんだ前記端部の平面視による端面形状が波形であることを特徴とする請求項に記載の積層型圧電素子。
【請求項5】
前記積層体の側面から内側に引っこんだ前記端部と前記側面との間の隙間に樹脂が埋め込まれていることを特徴とする請求項または請求項に記載の積層型圧電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車エンジンの燃料噴射装置、インクジェット等の液体噴射装置、XYテーブルの精密位置決め装置等に用いられる圧電アクチュエータなどの積層型圧電素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型圧電素子として、圧電体層と内部電極層とが複数積層された積層体を備えた構造のものが一般に知られている。
【0003】
なお、従来の積層型圧電素子では、内部電極層として一般に銀とパラジウムとを含有するもの(Ag/Pd電極)が使用され、当該内部電極層の端部の少なくとも一部が積層体の側面に露出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−188430号公報
【特許文献2】特開2002−299710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような積層型圧電素子では、長時間高い電圧で駆動すると、露出している内部電極層の端部と圧電体層の端部との界面に応力が集中してマイクロクラックが生じ、徐々に圧電体層中を横切るようにクラックが伸展して積層型圧電素子の絶縁性が低下し、結果として変位量が低下するおそれがあった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、マイクロクラックの発生およびクラックの進展が抑制された積層型圧電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の積層型圧電素子は、圧電体層と内部電極層とが複数積層された積層体を備え、前記内部電極層は銀とパラジウムとを含有し、前記内部電極層を積層方向から見た端部に中央部よりも前記パラジウムの含有比率が高いパラジウム高含有領域を有しており、前記パラジウム高含有領域において、前記パラジウムの含有比率に勾配を持たせるように前記中央部側から外側に向かって前記パラジウムの含有比率が徐々に高くなっていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の積層型圧電素子は、前記積層体の側面に沿って前記内部電極層を構成する正極および負極の両方の端部が配置されており、前記両方の端部に前記パラジウム高含有領域を有していることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の積層型圧電素子は、前記パラジウム高含有量領域を有する前記端部は前記積層体の側面から内側に引っこんだ位置にあることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の積層型圧電素子は、前記積層体の側面から内側に引っこんだ前記端部の平面視による端面形状が波形であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の積層型圧電素子は、前記積層体の側面から内側に引っこんだ前記端部と前記側面との間の隙間に樹脂が埋め込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
内部電極層の端部におけるPd比率が高いと、内部電極層の端部と圧電体層の端部磁器との接合強度が下がるので、内部電極層の端部と圧電体層の端部との界面に応力が集中してマイクロクラックが生じても、この界面に沿ってクラックが伸展して応力が緩和され、圧電体層を横切るクラックの発生を抑制することができる。したがって、絶縁性が低下せず、積層型圧電素子の変位量を長期間安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は本発明の積層型圧電素子の実施の形態の概略斜視図であり、(b)は(a)に示す積層型圧電素子をA−A線で切断した断面の一例の要部拡大図である。
図2図1(a)に示す積層型圧電素子をA−A線で切断した断面の他の例の要部拡大図である。
図3図1(a)に示す積層型圧電素子をA−A線で切断した断面の他の例の要部拡大図である。
図4図3に示すB−B線で切断した断面の一例の要部拡大図である。
図5】本発明の積層型圧電素子の実施の形態の他の例を示す要部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の積層型圧電素子の実施の形態の例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1(a)は本発明の積層型圧電素子の実施の形態の概略斜視図であり、図1(b)は図1(a)に示す積層型圧電素子をA−A線で切断した断面の一例の要部拡大図である。
【0017】
図1に示す積層型圧電素子1は、圧電体層2と内部電極層3とが複数積層された積層体4を備え、内部電極層3は銀とパラジウムとを含有しており、内部電極層3を積層方向から見た端部に中央部よりもパラジウムの含有量が多いパラジウム高含有領域31を有している。
【0018】
積層型圧電素子1は、圧電体層2と内部電極層3とが複数積層された積層体4を含んでいる。
【0019】
積層体4を構成する圧電体層2は、圧電特性を有するセラミックスで形成されたもので、このようなセラミックスとして、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO−PbTiO)からなるペロブスカイト型酸化物、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)などを用いることができる。この圧電体層2の厚みは、例えば3〜250μmとされる。
【0020】
積層体4を構成する内部電極層3は、圧電体層2を形成するセラミックスと同時焼成により形成されたもので、圧電体層2と交互に積層されて圧電体層2を上下から挟んでおり、積層順に正極および負極が配置されることにより、それらの間に挟まれた圧電体層2に駆動電圧を印加するものである。この形成材料として、銀とパラジウムとを含有する導体(例えば銀−パラジウム合金を主成分とする導体)を用いることができる。
【0021】
なお、図1に示すように、必要により、内部電極層3の正極および負極(もしくはグランド極)の一方の端部と電気的に接続されるようにして、積層体4の側面には導体層5が設けられている。この導体層5は、例えば銀とガラスからなるペーストを塗布して焼き付
けて形成されたものである。導体層5の厚みは、例えば5〜500μmとされる。
【0022】
また、図示しないが、導体層5の表面上には、導電性接合材を介して外部電極が取り付けられるのがよい。外部電極としては、銅、鉄、ステンレス、リン青銅等からなる板状体であり、例えば幅0.5〜10mm、厚み0.01〜1.0mmに形成されたものである。積層体4の伸縮により生じる応力を緩和する効果の高い形状として、例えば長手方向(積層方向)に垂直な幅方向にスリットの入った形状、網目状に加工された金属板などであってもよい。また、スリットにかえてまたはスリットとともに孔、特に幅方向に延びる孔が設けられた構成であってもよい。このスリットおよび孔が積層体4の積層方向に複数配置されているのが好ましく、特に圧電体層2と内部電極層3とが交互に積層された領域(活性部)に対応する位置に複数配置されているのが好ましい。
【0023】
導電性接合材としては、半田や、例えばAg粒子やCu粒子など導電性の良好な導電粒子を含んだエポキシ樹脂やポリイミド樹脂であるのが好ましい。導電性接合材は、例えば5〜500μmの厚さに形成される。
【0024】
そして、図1(b)に示すように、内部電極層3は圧電セラミックスとの反応性が低い銀とパラジウムとを含有する導体(例えば銀−パラジウム合金を主成分とする導体)からなるものであって、内部電極層3を積層方向から見た端部に中央部よりもパラジウムの含有量が多いパラジウム高含有領域31を有している。
【0025】
内部電極層3の端部におけるPd比率が高いと、内部電極層3の端部と圧電体層2の端部との接合強度が下がるので、内部電極層3の端部と圧電体層2の端部との界面に応力が集中してマイクロクラックが生じても、この界面に沿ってクラックが伸展して応力が緩和され、圧電体層2を横切るクラックの発生を抑制することができる。したがって、絶縁性が低下せず、積層型圧電素子1の変位量を長期間安定させることができる。
【0026】
なお、パラジウム高含有領域31ではない中央部における銀とパラジウムの含有量の比(Ag:Pd)が質量比で65:35〜98:2の範囲である場合に、パラジウム高含有領域31におけるパラジウムの含有量の比(質量比)は、中央部におけるパラジウムの含有量の比(質量比)よりも0.5ポイント以上好ましくは1ポイント以上多くなっているのが好ましい。
【0027】
また、パラジウム高含有領域31の幅(積層体4の側面に垂直な方向における奥行)は1〜10μmであるのが好ましい。
【0028】
ここで、パラジウム高含有領域31において、中央部側から外側に向かってパラジウムの含有量が徐々に多くなっているのが好ましい。Pd比率に勾配を持たせることで圧電体層2と内部電極層3との界面の接合強度も勾配を持たせることができるので、クラックの伸展を一気に進めずに徐々にクラックを伸展させることができる。一気に進んで急に接合状態が変化すると、進む向きが変わって圧電体層2を横切るように進んでしまう可能性があるが、この構成によればそのようなおそれはなくなる。したがって、絶縁性が低下せず、変位量を長期間安定させることができる。
【0029】
また、図2に示すように、積層体4の側面に沿って内部電極層3を構成する正極および負極の両方の端部が配置されており、両方の端部にパラジウム高含有領域31を有しているのが好ましい。内部電極層3の端部におけるPd比率が高いと抵抗が大きくなるので、積層方向から見た積層体4の端部の変位量が積層体4の中央部よりも小さくなる。その結果、応力集中する積層体4の側面の応力を緩和することができる。したがって、絶縁性が低下せず、変位量を長期間安定させることができる。さらに、内部電極層3の端部におけ
るPd比率が高いことで、Agのマイグレーションを抑止できる。
【0030】
また、図3に示すように、パラジウム高含有量領域31を有する端部は積層体4の側面から内側に引っこんだ位置にあるのが好ましい。ここで、引っこんだ位置は、積層体4の側面から例えば1〜100μmの距離にある。積層方向から見た積層体4の端部に位置する圧電体層2間に隙間41を設けることで、応力集中する積層体4の側面の応力を緩和することができる。したがって、絶縁性が低下せず、変位量を長期間安定させることができる。さらに、異なる極の積層体4の側面を経由した内部電極層3間の距離を延ばすことで、Agのマイグレーションを抑制できる。
【0031】
また、図4に示すように、積層体4の側面から内側に引っこんだ端部の平面視による端面形状が波形であるのが好ましい。引っ込めた内部電極層3の端面形状が波形であることで、内部電極層3の先端部近傍では電界が分散され、圧電体層2の絶縁性の低下が抑制できるから、長期間変位量が安定する。なお、波形の山から谷までの深さが、例えば1〜30μmあるのが効果的である。
【0032】
また、図5に示すように、積層体4の側面から内側に引っこんだ端部と側面との間の隙間41に絶縁体61が埋め込まれているのが好ましく、特に絶縁体61として樹脂が埋め込まれているのが好ましい。ここで樹脂としては、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は弾性が高いので、積層体4の側面の応力を緩和することができる。したがって、絶縁性の低下が生じないので、長期間変位量が安定する。さらに、水蒸気の結露等による水分の内部電極層3への侵入を防ぐので、Agのマイグレーションを抑制する。
【0033】
なお、図5に示すように、積層体4の側面には絶縁膜62が設けられる場合がある。このような場合において、この絶縁膜62を例えば上述の樹脂で形成するとき、積層体4の側面に上記の絶縁膜62を形成するのと同時に、隙間に絶縁体61を埋め込むようにして、同じ材料からなる絶縁体61と絶縁膜62とを備えた構成としてもよい。
【0034】
次に、本実施の形態の積層型圧電素子1の製造方法について説明する。
【0035】
まず、圧電体層2となるセラミックグリーンシートを作製する。具体的には、圧電セラミックスの仮焼粉末と、アクリル系,ブチラール系等の有機高分子からなるバインダーと、可塑剤とを混合してセラミックスラリーを作製する。そして、ドクターブレード法、カレンダーロール法等のテープ成型法を用いることにより、このセラミックスラリーを用いてセラミックグリーンシートを作製する。圧電セラミックスとしては圧電特性を有するものであればよく、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO−PbTiO)からなるペロブスカイト型酸化物等を用いることができる。また、可塑剤としては、フタル酸ジブチル(DBP),フタル酸ジオクチル(DOP)等を用いることができる。
【0036】
次に、内部電極層3となる導電性ペーストを作製する。具体的には、銀−パラジウム合金の金属粉末にバインダーおよび可塑剤を添加混合することによって導電性ペーストを作製する。この導電性ペーストを上記のセラミックグリーンシート上に、スクリーン印刷法を用いて内部電極層3のパターンで塗布する。
【0037】
さらに、この導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを複数枚積層し、所定の温度で脱バインダー処理を行なった後、900〜1200℃の温度で焼成し、平面研削盤等を用いて所定の形状になるよう研削処理を施すことによって、交互に積層された圧電体層2および内部電極層3を備えた積層体4を作製する。
【0038】
なお、積層体4は、上記の製造方法によって作製されるものに限定されるものではなく、圧電体層2と内部電極層3とを複数積層してなる積層体4を作製できれば、どのような製造方法によって作製されてもよい。
【0039】
その後、必要により、銀を主成分とする導電性粒子とガラスとを混合したものに、バインダー,可塑剤および溶剤を加えて作製した銀ガラス含有導電性ペーストを、導体層5のパターンで積層体4の側面にスクリーン印刷法等によって印刷後、乾燥させた後、650〜750℃の温度で焼き付け処理を行ない、導体層5を形成する。
【0040】
ここで、パラジウム高含有領域31を作製する方法として、内部電極層3を形成する導電性ペーストの塗布の際に、パラジウム高含有領域31となる部分の導電性ペーストにパラジウムを多く含ませる方法が挙げられる。そのためには、その部分だけパラジウムが過剰になったペーストを印刷したり、一旦内部電極層3の中央部の比率の導電性ペーストを全体に印刷した後、パラジウム高含有領域31を形成する部位にパラジウムが過剰になった導電性ペーストを重ね塗りしたりすればよい。
【0041】
その他の方法として、一旦焼成した積層体4をエッチングして銀を選択的に除去または減少させるようにしてもよい。このとき、エッチング液として、圧電体層2を溶かさないアルカリ系(シアン化ナトリウム系など)のエッチング液を用いるのがよい。また、エッチング液の濃度を30%以下として、液温を30℃以下にするのがよい。さらに、エッチング液を攪拌せずに静かに10秒以上の時間をかけてエッチングを行うことよい。
【0042】
また、パラジウム高含有量領域31を有する端部は積層体4の側面から内側に引っこんだ位置にあるようにするには、導電性ペーストの塗布領域を調整したり、エッチングしたりすればよい。
【0043】
また、積層体4の側面から内側に引っこんだ端部の平面視による端面形状が波形であるようにするには、例えばエッチングの方法を採用すればよい。
【0044】
また、内部電極層3が積層体4の側面から引っ込んで形成される隙間に絶縁体61を埋め込むには、例えばエポキシ、シリコーン、ポリイミド等の樹脂をスクリーン印刷法により印刷し乾燥する方法や、テトラオキシシラン等のシリコーン系の溶液にディッピングして乾燥する方法などが挙げられるが、どのような製造方法によって作製されてもよい。
【実施例】
【0045】
本発明の実施例の積層型圧電素子を以下のようにして作製した。
【0046】
まず、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrTiO)を主成分とする圧電体セラミックスの粉末にバインダー及び可塑剤を混合したセラミックスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmの圧電体層となるセラミックグリーンシートを作製した。
【0047】
次に、銀−パラジウム合金にバインダーを加えて作製した内部電極層となる導電性ペーストを、セラミックグリーンシートにスクリーン印刷法により印刷したセラミックグリーンシートを260枚積層し、その上下に導電性ペーストなしのセラミックグリーンシートを各20枚積層して積層成形体を作製した。
【0048】
次に、所定の大きさとなるようにダイシングソーマシンで切断した後、積層成形体を400℃で脱脂し、1000℃で3時間焼成して積層焼結体を作製した。得られた積層焼結体は直方体状であり、その大きさは、端面が縦5mm、横5mmであり、高さが35mm
であった。
【0049】
次に、銀粉末およびガラス粉末にバインダーを加えて銀ガラス含有導電性ペーストを作製し、これを積層焼結体の側面にスクリーン印刷法によって印刷し、800℃の温度で焼き付け処理して導体層を形成し、積層型圧電素子を作製した。
【0050】
次に、シアン化ナトリウム系のアルカリ性エッチング液に積層型圧電素子を1分間浸漬した後、積層型圧電素子を純水で30分間洗浄して、エッチングによる銀の除去または減少によってパラジウム高含有領域を形成するとともに、内部電極層が積層体の側面から内側に引っこんだ端部を形成した。このときのエッチング深さ(積層体の側面から内部電極層の端部までの距離)は2μmで、パラジウム高含有領域の幅(積層体の側面に垂直な方向の奥行き)が3μmであった。
【0051】
次に、積層体の側面にエポキシ樹脂からなる絶縁膜を、スクリーン印刷法により20〜80μmの厚みに印刷し乾燥して、形成した。
【0052】
以上の方法で作製された積層型圧電素子について、50℃の環境下で電圧200V、周波数10Hz、Duty50の矩形波で、100万サイクルの連続駆動試験を実施した。
【0053】
その結果、変位特性は初期値より、ほとんど変化が無かった。これは、圧電体層を横切るようなクラックを抑制できたことによるものと思われる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・積層型圧電素子
2・・・圧電体層
3・・・内部電極層
31・・・パラジウム高含有領域
4・・・積層体
41・・・隙間
5・・・導体層
61・・・絶縁体
62・・・絶縁膜
図1
図2
図3
図4
図5