(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988448
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】食肉練り製品の成形用器具及び成形方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/00 20160101AFI20160825BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20160825BHJP
A22C 7/00 20060101ALI20160825BHJP
A22C 11/00 20060101ALI20160825BHJP
A22C 13/00 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
A23L13/00 E
A23L13/60 A
A22C7/00 Z
A22C11/00
A22C13/00 B
A22C13/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-186622(P2014-186622)
(22)【出願日】2014年9月12日
(65)【公開番号】特開2016-54729(P2016-54729A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】504038192
【氏名又は名称】株式会社大多摩ハム小林商会
(74)【代理人】
【識別番号】100119585
【弁理士】
【氏名又は名称】東田 潔
(72)【発明者】
【氏名】小林 和人
【審査官】
坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−033885(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0196611(US,A1)
【文献】
特開2010−268745(JP,A)
【文献】
特開2005−018532(JP,A)
【文献】
特開2004−358062(JP,A)
【文献】
特開昭54−032679(JP,A)
【文献】
実用新案登録第3170719(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 13/00
A23L 13/60
A21B 1/00−7/00
A22C 7/00
A22C 11/00
A22C 13/00
A21C 1/00−15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FROSTI(STN)
FSTA(STN)
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
練り肉を充填し、加熱処理して所定の形状に成形する食肉練り製品の成形用器具であって、
所定の耐熱性と薄肉成形可能な可撓性を有し、充填された練り肉の加熱後に熱凝着がなく、前記充填された練り肉から成形物を損傷することなく容易に離型させることが可能な弾性材料からなる一対の成形型本体と、
前記成形型本体を収納し、所定の耐熱性を有する剛性材料からなる一対の外筐体と、を有し、
前記成形型本体の非充填側の表面形状と前記外筺体の成形型本体収納側表面形状とが相互に密接嵌合し、前記成形型本体の充填側の表面形状の如何を問わず、前記密接嵌合する双方の対向面が一定の表面形状を形成し、
前記練り肉が充填された一対の成形型本体を各々収納した一対の外筺体を合体し、これを加熱して、前記成形型本体から前記充填された練り肉を離型することにより、一体の練り肉製品を生成可能とすることを特徴とする成形用器具。
【請求項2】
前記一対の外筺体に対して、前記一対の成形型本体の収納を各々の定位置で整合させる本体位置決め手段と、
前記一対の外筺体を定位置で合体させるための外筺体位置決め手段と、を備え、
前記本体位置決め手段と外筺体位置決め手段によって、一対の成形型本体を収納した一対の外筺体は、密接に合体する対向面が形成されることを特徴とする請求項1記載の成形用器具。
【請求項3】
前記成形型本体は、不均一な肉厚で形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の成形用器具。
【請求項4】
前記成形体本体は、所定の肉厚の範囲内で形成されることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の成形用器具。
【請求項5】
前記一対の成形型本体を収納した一対の外筺体の加熱時に、充填された練り肉の膨張圧に対して、前記密接な合体の状態を保持する保持手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の成形用器具。
【請求項6】
練り肉を所定の成形型に充填し、加熱処理して所定の形状に成形する食肉練り製品の成形方法であって、
所定の耐熱性と薄肉成形可能な可撓性を有し、充填された練り肉の加熱後に熱凝着がなく、前記充填された練り肉から成形物を損傷することなく容易に離型させることが可能な弾性材料からなる一対の成形型本体に所定の処理を施した原材料となる練り肉を充填する工程と、
前記充填された一対の成形型本体を所定の耐熱性を有する剛性材料からなる一対の外筐体に収納する工程と、
前記充填された成形型本体を収納した一対の外筺体を密接に合体させる工程と、
前記密接に合体させた外筺体を加熱時の膨張圧に対して、密接な合体の状態を保持する保持手段によって保持させる工程と、
前記保持された外筺体を所定の設定温度及び所定の設定時間加熱する工程と、
前記加熱された成形型本体から充填された練り肉を離型させる工程と、を有することを特徴とする食肉練り製品の成形方法。
【請求項7】
前記設定温度を70℃〜80℃とし、前記設定時間を90分〜180分とすることを特徴とする請求項6記載の食肉練り製品の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜肉、魚肉等の食肉練り製品の成形用器具及び成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、需要者の購買意欲を喚起させる等の目的で、食料加工品を所望の型に形成する成形型及び成形方法が多数提案されていた。成形加工前の状態では、一定の形状を保持できない粘ちゅう性を有する原材料の場合、成形型に充填し、加熱等の処理により固化させるが、その際、原材料の表面の一部が成形型に付着するために、成形型から離型した際に、成形物の一部が欠損し、成形不良になるという不具合があった。これは、前記原材料が、畜肉、魚肉などの食肉練り製品を原材料とする場合に顕著に発生するが、その原因は、これらの食肉に含有されるたんぱく質が加熱によって成形型の内表面に熱凝着するためである。
【0003】
前記熱凝着は、成形型が単純な形状(たとえば、円筒形)であっても生じる不具合である。需要者の購買意欲を喚起させる等の目的のために、複雑かつ繊細な形状で成形して差別化を図ろうとすれば、前記成形不良の問題は、より重大な課題として認識されているのが現状である。
【0004】
かかる不具合に対して、従来、たとえば、成形型内で成形した成形物を、損傷することなく、容易に取り出すために、成形型を弾性成形膜で構成し、当該弾性成形型に1箇所以上の切れ目を設け、この切れ目で弾性成形型を拡げることにより、成形物を取り出すことができるようにした弾性成形型が提案されていた(たとえば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、成形型を加熱することで流動化する固形物(たとえば寒天、ゼラチン等)からなる型にゾル状又は液状の食品素材を密着させ、加熱して食品素材を凝固させるとともに前記固形物を流動化し除去することで、前記食品素材を成形する方法が提案されていた(たとえば、特許文献2参照。)。
【0006】
さらに、ゴム又はシリコン等の柔軟な材料で形成された菓子成形器であって、菓子成形器を両側から引っ張って該菓子成形器の周面部を変形させるための少なくとも2つの摘み部を有する菓子成形器が提案されていた(たとえば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−46757号公報
【特許文献2】特開2000−316553号公報
【特許文献3】特開2004−154381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記特許文献1にかかる先行技術では、切れ目を設けることにより、成形型が脆弱になるおそれがあり、特に、畜肉のソーセージの場合、加熱、燻煙、冷却等過酷な環境下に晒されるため、切れ目から型が破損する可能性があった。また、加熱時の膨張で切れ目が拡大して切れ目から練り肉が流出し、バリを発生させ、成形不良を起こすという不具合もあった。
【0009】
また、前記特許文献2にかかる先行技術では、成形の都度、成形型を形成する必要があり、生産性の低下が問題となる可能性があった。
【0010】
さらに、前記特許文献3にかかる先行技術では、シリコン等、柔軟な材料で成形型を形成しているが、ソーセージのように、加熱時に膨張する食品素材の場合、膨張圧によって柔軟な成形型は原型を維持できなくなり、所望の型に成形することができないという問題があった。
【0011】
なお、複雑かつ繊細な形状は、当然、手技によって成形することも可能ではあるが、手技に依存する成形方法では、個々人のスキルに依存する結果、安定的に同一の形状が形成できるとは限らず、成形する形状が複雑になればなるほど、生産性が低下する。また、手技の場合は、少なからず、切削等によって生じる切りくずが生じ、経済的な問題も生じる。結果、手技による成形では、製品の販売コストの高騰につながるおそれがあった。
【0012】
また、成形型から成形物を離型しやすくするために、所定の離型剤を成形型内表面に塗布する方法が多数提案されているが、塗布工程が追加されることにより、手間、コストの問題が生じるうえ、成形型の形状が凹凸のない単純な形状であればともかく、複雑かつ繊細な形状の場合は、均一な塗布が困難となり、十分な効果が期待できない。
【0013】
そこで、上記問題点に鑑み、本発明は、食肉練り製品の複雑かつ繊細な成形を低コスト、かつ、高い生産性で簡易に実現する成形用器具及び成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかる成形用器具は、練り肉を充填し、加熱処理して所定の形状に成形する食肉練り製品の成形用器具であって、
所定の耐熱性と薄肉成形可能な可撓性を有し、充填された練り肉の加熱後に
熱凝着がなく、前記充填された練り肉から成形物を損傷することなく容易に離型させることが可能な弾性材料からなる一対の成形型本体と、
前記成形型本体を収納し、所定の耐熱性を有する剛性材料からなる一対の外筐体と、を有し、
前記成形型本体の非充填側の表面形状と前記外筺体の成形型本体収納側表面形状とが相互に密接嵌合し、前記成形型本体の充填側の表面形状の如何を問わず、前記密接嵌合する双方の対向面が一定の表面形状を形成し、
前記練り肉が充填された一対の成形型本体を各々収納した一対の外筺体を合体し、これを加熱して、前記成形型本体から
前記充填された練り肉を離型することにより、一体の練り肉製品を生成可能とすることを最も主要な特徴とする。
【0015】
この構成によれば、成形型本体に充填された加熱後の練り肉製品は、成形型本体が可撓性を有する弾性材料であるため、成形物を損傷することなく、容易に取り出すことができるとともに、加熱時の膨張に対しては、外筐体によって成形型の変形を阻止し、形状を保持することができる。また、成形型の収納時における成形型と外筐体の対向面は一定の表面形状を有しているため、成形型の充填側の形状を変更しても、外筐体は汎用的に使用することができる。
【0016】
前記一対の外筺体に対して、前記一対の成形型本体の収納を各々の定位置で整合させる本体位置決め手段と、前記一対の外筺体を定位置で合体させるための外筺体位置決め手段と、を備え、前記本体位置決め手段と外筺体位置決め手段によって、一対の成形型本体を収納した一対の外筺体は、密接に合体する対向面を形成するようにしてもよい。
【0017】
前記成形型本体は、複雑かつ繊細な形状を成形するための型であるため、肉厚は不均一であってもよい。ただし、肉厚は、成形型本体を形成する素材に応じて、成形物を損傷しないように、簡単に押し出して離型可能な範囲内である。また、複雑かつ繊細な形状を適宜製造するため、成形型は短時間で生成できるものであることが好ましい。よって、前記成形型本体は、光造形を利用して成型できるものであることが望ましい。
【0018】
なお、前記のとおり成形型本体を収納した外筐体を密接に合体させても、加熱時には原材料となる練り肉は、含有する空気や水分等により膨張して、外筐体の合体面が分離方向に浮上する可能性がある。外筐体が分離方向に浮上すると、成形型本体も分離し、分離によって生じた空間に練り肉が隆起し、合体部分近傍が歪な形状となる。そこで、保持手段によって前記密接な合体状態を保持するようにすればよい。
【0019】
本発明にかかる食肉練り肉製品の成形方法は、練り肉を所定の成形型に充填し、加熱処理して所定の形状に成形する食肉練り製品の成形方法であって、
所定の耐熱性と薄肉成形可能な可撓性を有し、充填された練り肉の加熱後に
熱凝着がなく、前記充填された練り肉から成形物を損傷することなく容易に離型させることが可能な弾性材料からなる一対の成形型本体に所定の処理を施した原材料となる練り肉を充填する工程と、
前記充填された一対の成形型本体を所定の耐熱性を有する剛性材料からなる一対の外筐体に収納する工程と、
前記充填された成形型本体を収納した一対の外筺体を密接に合体させる工程と、
前記密接に合体させた外筺体を加熱時の膨張圧に対して、密接な合体の状態を保持する保持手段によって保持させる工程と、
前記保持された外筺体を所定の設定温度及び所定の設定時間加熱する工程と、
前記加熱された成形型本体から充填された練り肉を離型させる工程と、を有することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、食肉練り製品の複雑かつ繊細な成形を低コスト、かつ、高い生産性で簡易に実現することができるという効果を奏する。
【0021】
特に、原材料となる練り肉を直接充填する成形型本体は、可撓性を有する弾性材料であるため、複雑かつ繊細なデザインの成形型本体を自在に生成でき、型抜き時には、成形型本体自体を押圧することで簡単に離型させることができ、作業効率が向上するという効果を奏する。
【0022】
一方、加熱時には、直接成形型本体を加熱せず、耐熱性を有する剛性材料からなる外筐体に収納してから加熱するため、加熱時の膨張による変形を抑制することができ、高精度の成形を実現することができるという効果を奏する。
【0023】
成形型本体の非充填側の表面形状と前記外筺体の成形型本体収納側表面形状とが相互に密接嵌合し、成形型本体の充填側の表面形状の如何を問わず、密接嵌合する双方の対向面が一定の表面形状を形成するため、成形型本体のデザインが異なっても汎用的に外筐体を利用することができ、低コスト化、高生産性を実現することができるという効果を奏する。
【0024】
なお、成形型本体は、光造形を利用して成形することにより、成形型本体の生成時間を大幅に短縮することができ、多様なデザインを適時生産することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明にかかる1対の成形型本体を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【
図2】
図2は、本発明にかかる1対の外筐体を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側断面図である。
【
図3】
図3は、外筐体に成形型本体を収納する作用を示す図であり、(a)は外筐体を合体させる前の状態を示す図、(b)は外筐体を合体させた状態を示す図である。
【
図4】
図4は、合体させた外筐体を保持する保持具の例を示す図である。
【
図5】
図5は、成形型本体に充填された練り肉の加熱後、成形型本体を離型した状態を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明にかかる成形方法を説明したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1(a)(b)を参照して、1は、成形型本体である。成形型本体は、割り型11、12に分割され、ともにカップ型(凹型)の充填部11a、12aを有する。充填部11a、12aには、食肉練り製品を充填する。ここで、食肉練り製品とは、畜肉、魚肉等のミンチを塩せき及び香辛料、調味料を添加して混練等による下処理を施したものをいう。本実施の形態では、畜肉のソーセージを例として説明するが、本発明によって成形される対象は、これに限定する趣旨ではない。
【0027】
通常、ソーセージは、天然腸やセルロース系のケーシングに充填して製造されるが、本発明では、流動性のある練り肉を所定の形状、特に、複雑かつ繊細な形状に成形することを目的とする。ソーセージ等、一般に練り肉は、脂肪、水分が含まれるが、肉自体に含有されるたんぱく質は、加熱すると熱変性し、充填する前記ケーシングに熱凝着するため、
加熱された練り肉をケーシングから離型する際に、ソーセージ表面が損傷する可能性がある。したがって、前記のような通常のケーシングでは複雑かつ繊細な形状に成形することは困難である。
【0028】
本実施の形態では、薔薇の形状を模したソーセージを製造するための型を例示的に示した。薔薇の花は、比較的薄い花びらが幾重にも重なり、上面から見て左右非対称の形状をなす。なお、割り型11の充填部11aは、花びら側の成形型であり、割り型12の充填部12aは、萼片側の成形型としている。
【0029】
図1(a)で示す通り、割り型11、12の充填部11a、12a側の上端周縁部11b、12bは、前記のとおり、非対称な形状であるため、肉厚が不均一である。不均一な肉厚であっても、加熱後のソーセージ等成形物を損傷することなく、離型させるために、成形型本体1は、薄肉成形可能な可撓性を有する弾性材料によって生成される必要がある。また、肉厚は、容易に前記離型させることができると同時に、成形型本体1自体が離型時に割裂等によって損傷しない程度の肉厚が必要となる。発明者の努力の結果、たとえば、シリコン材(食品型用シリコン)の場合、最薄の肉厚が5mmから最厚の肉厚が30mmの範囲内で成形された成形型であれば、前記諸条件、すなわち、加熱後の熱凝着がなく、かつ、剥離性が良好であり、容易に離型させることができ、さらに、複数回の使用に対して、耐久性もあることがわかった。また、前記食品型用シリコンは、200℃までの耐熱性を有するものもあり、加熱処理についても対応することができる。
【0030】
かかる肉厚の微細な寸法の制限に対応させて成形型本体1を生成するために、光造形を利用した成形は好適である。光造形(いわゆる3D光造形)の場合、切削加工等では難しい複雑な曲面、中空構造等を高精度かつ短時間で生成することができる。また、切削加工の際に生じる切削アールが生じないため、リアリティのある曲面を成形することが可能になる。たとえば、所望の形状をデジタルデータ化し、当該デジタルデータをもとに3D光造形によって紫外線硬化アクリル樹脂を積層し、紫外線レーザを照射して原型マスターを作成する。原型マスターは、所望の形状に成形したソーセージを前記アクリル樹脂で模して成型したものである。次いで、後述する外筐体に前記原型マスターを入れて、外筐体と原型マスターとの間に前記シリコン材を流し込み、硬化させ、脱型すれば成形型本体1が完成する。前記デジタルデータがあれば、成形型本体1の完成までの所要日数は1日前後である。
【0031】
なお、上端周縁部11b、12bの径方向外側(充填部11a、12aの上面開口の中心と反対方向)に、後述する外筐体への収納を定位置で整合させる位置決め凸部11c、12cが突設されている。
【0032】
成形型本体1は、前記のとおり、前記原型マスターと後述する外筐体との間にシリコン材を流し込むことによって形成されるため、
図1(b)で示す通り、外表面11d、12dは、充填部11a、12bの形状の如何にかかわらず、一定の形状を有する。
【0033】
本実施の形態では、割り型11、12は、いずれも凹型であるが、食肉を成形する所望の形状によっては、一方が凸型のコアで、他方が凹型のキャビティを形成するものであってもよい(図示せず)。
【0034】
図2(a)(b)を参照して、2は、成形型本体1を収納する外筐体である。外筐体2も、割り型11、12に対応して、外筐体パーツ21、22に分離されている。外筐体2は、前記したとおり、成形体本体1を収納し、加熱時の練り肉の膨張圧による成形体本体1の変形を阻止する。したがって、外筐体2は、耐熱性を有し、かつ、前記膨張圧に抗する剛体から成るものであればよく、たとえば、ポリアミド樹脂、アルミニウムなどが好適であるが、前記性質を有するものであれば、特に素材は限定しない。
【0035】
本実施の形態では、外筐体2は、枠体21a、22aによって全体略立方体に形成され、
図2(a)で示す通り、上面は、後述する合体時のパーティング面を形成する。矩形状のパーティング面の対角線上に対向する角部には、前記合体時の位置決め手段としてのガイド孔21bとガイドピン22bが形成されている。
図2(a)で、外筐体パーツ21のA−A‘線の側断面図が、
図2(b)の外筐体パーツ21であり、
図2(a)の外筐体パーツ22のB−B’線の側断面図が、
図2(b)の外筐体パーツ22である。本実施の形態では、
図2(b)で示す通り、外筐体パーツ21にガイド孔21b、外筐体パーツ22にガイドピン22bを形成したが、逆であってもよい。
【0036】
パーティング面の中央には、割り型11、12を収納するテーパー状の収納部21c、22cが形成されている。収納部21c、22cは、前記3D光造形による生成過程で説明した通り、外筐体2の収納部21c、22cと原型マスターとの間に前記シリコン材を流し込んで成形型本体1を生成するため、収納部21c、22cの表面形状がそのまま成形型本体1の外表面11d、12dとして転写される。したがって、成形型本体1の充填部11a、12a側の形状の如何を問わず、成形型本体1の外表面11d、12dは、一定形状で形成されるため、外筐体2は、多様な成形型本体1のいずれであっても汎用的に使用することができる。
【0037】
収納部21c、22cの径方向外側には、前述した位置決め凸部11c、12cに対応する凸部挿入部21d、22dが形成されている。
【0038】
収納部21c、22cの下端には、割り型11、12の収納時に、割り型11、12と収納部21c、22cとの空隙に介在する空気を排出する空気抜き孔21e、22eが開口されている。
【0039】
次に、
図3により、本発明に係る成形型の作用を説明する。
図3(a)は、成形型本体1の割り型11に、下処理した練り肉Mを充填した状態で、外筐体パーツ21の収納部21cに収納するところを示したものである。収納するときは、位置決め凸部11cを凸部挿入部21dに挿入する位置で収納する。収納時、割り型11の外表面11と、外表面11の対向面となる収納部21cとは、前記した通り、転写の関係で形成されているため、略密接嵌合する。割り型11を収納部21cに密接嵌合して収納すると、外筐体2の枠体21aのパーティング面、成形体本体1の割り型11の上端周縁部11b及び充填された練り肉Mの上面が、面一の平面状に形成される。ただし、前記のとおり、コアとキャビティで成形型本体1を形成した場合は、パーティング面に対してコア型は凸状になる。
【0040】
なお、
図3(a)は、割り型11を収納部21cに収納する状態を示したが、割り型12を収納部22cに収納する場合も同様である(図示せず)。
【0041】
収納部21c、22cに対して割り型11、12を収納した後、
図3(b)で示す通り、ガイド孔21bをガイドピン22bに挿入する位置で両者を合体させる。上記の通り、双方の対向するパーティング面は面一に形成され、密接に合体させることができる。
【0042】
ところで、前記加熱時の膨張圧について、割り型11、12の上端周縁部11b、12bの径方向の内圧に対しては、外筐体パーツ21、22が割り型11、12の形状を維持するように作用するが、前記パーティング面の合体と反対方向に向かう圧力、すなわち、膨張圧が外筐体パーツ21、22を分離する方向に作用する場合、合体によって形成されたパーティングラインの間から外方向に練り肉が隆起し、所望の形状の成形を阻害する。そこで、前記密接な合体の状態を保持するために、保持具3を外装すればよい。前記密接な合体の状態を保持する作用を奏するものであれば、保持具3の形態は特に限定しない。したがって、たとえば、外筐体パーツ21、22を所定のロック装置で錠止するもの、バイスによって所定の圧力で挟持するもの、紐帯等で緊結するもの、箱状のものに格納するもの、等いずれであってもよい。本実施の形態では、箱状のものに格納するものの例として、
図4で示す通り、既存のリテイナーを利用したものを示した。リテイナーは、蝶番によって回動自在に開閉可能な格子状の箱型格納体で、閉塞状態を保持するためにロック装置によって施錠が可能な構成を有する。外筐体2の外寸をリテイナーに過不足なく収納できるように設計すれば、既存のリテイナーを保持具3として利用することができる。
【0043】
図5は、前記加熱後、割り型11から離型させて、成形物(薔薇型のソーセージ)Pを露出させた状態を示したものである。本発明にかかる成形用器具を利用すれば、薔薇のような複雑かつ繊細な形状を簡易かつ短時間である程度量産することが可能になる。
【0044】
図6は、本発明に係る食肉練り製品の成形方法の例を示すフロー図である。以下、適宜、
図1、
図2を参照して説明する。
【0045】
まず、原料肉をミンチするとともに、保水性、結着性の向上を図るために、塩せきし、適宜、香辛料、調味料等を加え、練り肉の下処理を行う(S1)。
【0046】
下処理がなされた練り肉を成形型本体1の割り型11、12に各々充填する(S2)。通常のソーセージの場合、ケーシングを真空充填機のノズルに外嵌し、リテイナーを被せてから充填するが、本発明に係る成形方法では、割り型11、12に摺切り一杯に充填する。充填する成形型本体1は、本実施の形態でも例示した通り、薔薇のような複雑かつ繊細な形状であるため、微細な部分にも十分に練り肉が満たされるように、練り肉は極柔なものが好ましい。
【0047】
練り肉が充填された割り型11、12を各々対応する外筐体2の外筐体パーツ21、22に収納する(S3)。収納方向は、位置決め凸部11c、12cと凸部挿入部21d、22dとが各々整合する位置である。
【0048】
前記収納後、外筐体パーツ21、22を各々のパーティング面が対向する方向に密接に合体させる(S4)。合体は、ガイド孔21bとガイドピン22bとが対応する位置でガイドピン22bをガイド孔21bに挿通して行う。
【0049】
合体して充填した成形型本体1を有する外筐体2を保持具3に格納し(S5)、保持具3ごと加熱する(S6)。加熱は、蒸煮、騰煮等、特に限定しないが、衛生面を考慮し、蒸煮による加熱が好ましい。ソーセージの日本農林規格(農林水産省告示第1096号)によれば、ソーセージの加熱は、中心部の温度を63℃で30分間加熱するか、これと同等以上の効力を有する方法と規定されているが、本発明に係る成形器具を使用する場合は、設定温度を70℃〜80℃とし、加熱時間は90分〜180分とすることが好ましい。この場合、中心部の温度は、75℃前後になる。
【0050】
加熱後、冷却し、保持具3から外筐体2を取り出して、割り型11、12から各々離型する(S7)。離型は、割り型11、12の外表面11d、12dから、押し出せば簡易かつ付着なく取り出すことができる。
【符号の説明】
【0051】
1 成形型本体
2 外筐体
3 保持具
11、12 割り型
11a、12a 充填部
11b、12b 上端周縁部
11c、12c 位置決め凸部
11d、12d 外表面
21、22 外筐体パーツ
21a、22a 枠体
21b、22b ガイド孔、ガイドピン
21c、22c 収納部
21d、22d 凸部挿入部
21e、22e 空気抜き孔
M 練り肉
P 成形物