(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988453
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】ダイ供給装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/67 20060101AFI20160825BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
H01L21/68 E
H01L21/78 Y
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-507084(P2014-507084)
(86)(22)【出願日】2012年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2012057863
(87)【国際公開番号】WO2013145114
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】保坂 英希
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 友則
(72)【発明者】
【氏名】小見山 延久
(72)【発明者】
【氏名】柘植 邦明
【審査官】
鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/128981(WO,A1)
【文献】
特開平09−017841(JP,A)
【文献】
特開平10−070143(JP,A)
【文献】
特開2006−332417(JP,A)
【文献】
特開2010−129949(JP,A)
【文献】
特開2005−032827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のダイに分割するようにダイシングされたウエハが貼着された伸縮可能なダイシングシートを張設したウエハ張設体と、前記ダイシングシートの下方に配置された突き上げピンを上下動させる突き上げ機構とを備え、吸着ノズルを下降させて前記ダイシングシート上のダイを吸着してピックアップする際に、該ダイシングシートのうちの吸着しようとするダイの貼着部分を前記突き上げピンで突き上げて該ダイの貼着部分を該ダイシングシートから剥離させ、該吸着ノズルに該ダイを吸着して該ダイシングシートからピックアップするダイ供給装置において、
前記ダイシングシート上のダイをカメラで撮像して得られた画像を処理して該ダイの位置を認識する画像処理手段と、
前記ダイシングシート上のダイのうち、前記カメラで撮像するダイ(以下「撮像ダイ」という)を1個おき又は複数個おきに設定し、前記撮像ダイについては前記画像処理手段により該撮像ダイの位置を認識して該撮像ダイの突き上げ動作及び吸着動作を実行し、前記カメラで撮像しないダイ(以下「非撮像ダイ」という)については前記撮像ダイの認識位置を基準にして該非撮像ダイの位置を推定して該非撮像ダイの突き上げ動作及び吸着動作を実行する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記ダイシングシート上のダイの良否を示すウエハマッピングデータに基づいて良品ダイと不良ダイとを判別して、良品ダイについてのみ突き上げ動作及び吸着動作を行い、不良ダイについては突き上げ動作及び吸着動作を行わず、
不良ダイが所定数以上連続して並んでいる場合は、前記撮像ダイに設定された不良ダイについては、撮像のみ行って前記画像処理手段により該不良ダイの位置を認識し、
不良ダイが所定数以上連続して並んでいない場合は、不良ダイが前記撮像ダイに設定されても撮像しないことを特徴とするダイ供給装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記画像処理手段により前記撮像ダイの位置を認識する毎に該撮像ダイの位置を基準にして次の撮像ダイの位置を推定し、次の撮像ダイを撮像するときに該撮像ダイの推定位置を目標撮像位置として該撮像ダイを前記カメラで撮像して該画像処理手段により該撮像ダイの位置を認識することを特徴とする請求項1に記載のダイ供給装置。
【請求項3】
複数のダイに分割するようにダイシングされたウエハが貼着された伸縮可能なダイシングシートを張ったウエハ供給体と、前記ダイシングシートの下方に配置された突き上げピンを上下動させる突き上げ機構とを備え、吸着ノズルを下降させて前記ダイシングシート上のダイを吸着してピックアップする際に、該ダイシングシートのうちの吸着しようとするダイの貼着部分を前記突き上げピンで突き上げて該ダイの貼着部分を該ダイシングシートから剥離させ、該吸着ノズルに該ダイを吸着して該ダイシングシートからピックアップするダイ供給装置において、
前記ダイシングシート上のダイをカメラで撮像して得られた画像を処理して該ダイの位置を認識する画像処理手段を備え、
前記ダイシングシート上のダイの良否を示すウエハマッピングデータに基づいて良品ダイと不良ダイとを判別し、不良ダイが所定数以上連続して並んでいる場合は、該不良ダイを1個おき又は複数個おきに前記カメラで撮像して前記画像処理手段により該不良ダイの位置を認識し、該不良ダイの位置を基準にして次に撮像するダイの位置を推定し、次のダイを撮像するときに該ダイの推定位置を目標撮像位置として該ダイを前記カメラで撮像して該画像処理手段により該ダイの位置を認識することを特徴とするダイ供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングされたウエハが貼着された伸縮可能なダイシングシートを張設したウエハ張設体からダイを供給するダイ供給装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年、特許文献1(特開2010−129949号公報)に記載されているように、ダイを供給するダイ供給装置を部品実装機にセットして、部品実装機でダイを回路基板に実装するようにしたものがある。このダイ供給装置は、複数のダイに分割するようにダイシングされたウエハが貼着された伸縮可能なダイシングシートを張設したウエハパレットと、前記ダイシングシートの下方に配置された突き上げピンとを備え、吸着ノズルを下降させて前記ダイシングシート上のダイを吸着してピックアップする際に、該ダイシングシートのうちの吸着しようとするダイの貼着部分を該突き上げピンで突き上げて該ダイの貼着部分を該ダイシングシートから部分的に剥離させながら、該吸着ノズルに該ダイを吸着して該ダイシングシートからピックアップするようにしている。
【0003】
この場合、ダイシングシートは、ダイをピックアップしやすいように、XY方向に均一に拡張(エキスパンド)されて各ダイ間に隙間があけられているため、ダイシングシート上の各ダイの位置は、ダイシングシートの拡張量によって変化する。このため、ダイ供給装置には、ダイの位置を画像認識するためのカメラが搭載され、ダイシングシート上のダイを吸着する前に、吸着対象のダイを上方からカメラで撮像して該ダイの位置を認識してから、該ダイの突き上げ動作及び吸着動作を実行するようにしている。
【0004】
また、特許文献2(特開2005−32827号公報)では、1枚のウエハの中に不良ダイが含まれることを考慮して、ウエハ全体の画像を全体カメラで撮像して不良ダイを認識し、不良ダイについては画像処理を行わず、良品ダイについてのみ、個別カメラで撮像して良品ダイの位置を画像認識してからピックアップ動作を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−129949号公報
【特許文献2】特開2005−32827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2では、不良ダイについては画像処理を行わず、良品ダイについてのみ画像処理を行うようにしているが、良品ダイの数に比べて不良ダイの数は遥かに少ないため、不良ダイの画像処理を省略するだけでは、ウエハ1枚当たりの合計撮像画像処理時間を短縮する効果が小さく、ウエハ1枚当たりのダイ供給時間を短縮する効果が小さい。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ウエハ1枚当たりの合計撮像画像処理時間を短縮する効果を大きくできて、ウエハ1枚当たりのダイ供給時間を短縮する効果を大きくできるダイ供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、複数のダイに分割するようにダイシングされたウエハが貼着された伸縮可能なダイシングシートを張設したウエハ張設体と、前記ダイシングシートの下方に配置された突き上げピンを上下動させる突き上げ機構とを備え、吸着ノズルを下降させて前記ダイシングシート上のダイを吸着してピックアップする際に、該ダイシングシートのうちの吸着しようとするダイの貼着部分を前記突き上げピンで突き上げて該ダイの貼着部分を該ダイシングシートから剥離させ、該吸着ノズルに該ダイを吸着して該ダイシングシートからピックアップするダイ供給装置において、前記ダイシングシート上のダイをカメラで撮像して得られた画像を処理して該ダイの位置を認識する画像処理手段と、前記ダイシングシート上のダイのうち、前記カメラで撮像するダイ(以下「撮像ダイ」という)を1個おき又は複数個おきに設定し、前記撮像ダイについては前記画像処理手段により該撮像ダイの位置を認識して該撮像ダイの突き上げ動作及び吸着動作を実行し、前記カメラで撮像しないダイ(以下「非撮像ダイ」という)については前記撮像ダイの認識位置を基準にして該非撮像ダイの位置を推定して該非撮像ダイの突き上げ動作及び吸着動作を実行する
制御手段とを備え、前記制御手段は、前記ダイシングシート上のダイの良否を示すウエハマッピングデータに基づいて良品ダイと不良ダイとを判別して、良品ダイについてのみ突き上げ動作及び吸着動作を行い、不良ダイについては突き上げ動作及び吸着動作を行わず、更に、(1)不良ダイが所定数以上連続して並んでいる場合は、前記撮像ダイに設定された不良ダイについては、撮像のみ行って前記画像処理手段により該不良ダイの位置を認識し、(2)不良ダイが所定数以上連続して並んでいない場合は、不良ダイが前記撮像ダイに設定されても撮像しないことを特徴とするものである。
【0009】
一般に、ウエハ張設体の製造元から提供される製品仕様(例えば、ウエハのサイズ、ダイのサイズ、ダイの間隔、ダイの配置情報等)のデータを用いれば、ダイシングシート上の各ダイの位置を推定できるが、製品ばらつき(ダイシングシートの拡張のばらつきやウエハのXY方向の傾き等)によってダイの推定位置に誤差が生じる。また、ダイの吸着位置や突き上げ位置が多少ずれていても、そのずれ量が小さければ、ダイを十分に吸着可能である。
【0010】
これらの事情を考慮して、本発明では、カメラで撮像する撮像ダイを1個おき又は複数個おきに間欠的に設定し、撮像ダイについては画像処理手段により該撮像ダイの位置を認識して該撮像ダイの突き上げ動作及び吸着動作を実行し、カメラで撮像しない非撮像ダイについては、撮像ダイの認識位置を基準にして該非撮像ダイの位置を推定して該非撮像ダイの突き上げ動作及び吸着動作を実行するようにしたものである。このようにすれば、カメラで撮像するダイの数をダイシングシート上のダイの総数の半分以下に低減できるため、ウエハ1枚当たりの合計撮像画像処理時間を大幅に短縮することができて、ウエハ1枚当たりのダイ供給時間を短縮する効果を大きくできる。しかも、非撮像ダイについては、撮像ダイの認識位置を基準にして該非撮像ダイの位置を推定するため、該非撮像ダイの位置の推定誤差を小さくすることができ、非撮像ダイの突き上げ動作及び吸着動作も安定して行うことができる。
【0011】
一般に、ダイシングシート上のダイの中には不良ダイが含まれるため、製造元から、ダイシングシート上のダイの良否を示すウエハマッピングデータ(ウエハマップデータとも呼ばれる)が提供される場合が多い。このような場合は、ウエハマッピングデータに基づいて良品ダイと不良ダイとを判別し、良品ダイについてのみ突き上げ動作及び吸着動作を実行するようにすれば良い。
【0012】
この場合、不良ダイについては、全ての不良ダイの画像処理を行わないように
することが考えられるが、不良ダイが連続して並んでいる場合は、連続して並ぶ不良ダイの数が多くなると、次に撮像する良品ダイまでの距離が長くなり、それに応じて次に撮像する良品ダイの位置の推定誤差が大きくなるため、次の良品ダイをカメラで撮像する際に、間違った位置のダイを次の良品ダイと誤判定してしまう可能性がある。
【0013】
この対策として、不良ダイについては、突き上げ動作及び吸着動作を行わないが、不良ダイが所定数以上連続して並んでいる場合は、該不良ダイを1個おき又は複数個おきにカメラで撮像して、画像処理手段により該不良ダイの位置を認識し、該不良ダイの位置を基準にして次に撮像するダイ(不良ダイ又は良品ダイ)の位置を推定し、次のダイを撮像するときに該ダイの推定位置を目標撮像位置として該ダイをカメラで撮像して該画像処理手段により該ダイの位置を認識するようにしても良い。このようにすれば、不良ダイが連続して多く並んでいるために、次に撮像する良品ダイまでの距離が長い場合でも、不良ダイ
を1個おき又は複数個おきにカメラで撮像して該不良ダイの位置を認識して、該不良ダイの認識位置を基準にして次に撮像する不良ダイ(又は良品ダイ)の位置を推定するという処理を繰り返すことで、次に撮像する良品ダイの位置の推定誤差を小さくすることができ、間違った位置のダイを次の良品ダイと誤判定することを未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は本発明の一実施例におけるダイ供給装置の外観斜視図である。
【
図2】
図2は突き上げユニットとその周辺部分の外観斜視図である。
【
図4】
図4は突き上げ動作時に突き上げポットを吸着位置まで上昇させた状態を示す一部破断拡大図である。
【
図5】
図5は突き上げ動作時に突き上げポットから突き上げピンを突出させた状態を示す一部破断拡大図である。
【
図6】
図6は撮像ダイと非撮像ダイと不良ダイとの位置関係を説明する図である。
【
図7】
図7はダイの配列が歪んでいる場合の撮像ダイと非撮像ダイと不良ダイとの位置関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、
図1を用いてダイ供給装置11の構成を概略的に説明する。
【0016】
ダイ供給装置11は、マガジン保持部22(トレイタワー)、パレット引き出しテーブル23、XY移動機構25、突き上げユニット28(
図2参照)等を備え、パレット引き出しテーブル23を部品実装機(図示せず)に差し込んだ状態にセットされる。
【0017】
ダイ供給装置11のマガジン保持部22内に上下動可能に収納されたマガジン(図示せず)には、ウエハ張設体30を装着したウエハパレット32が多段に積載され、生産中にマガジンからウエハパレット32がパレット引き出しテーブル23上に引き出されるようになっている。
図3に示すように、ウエハ張設体30は、ウエハを碁盤目状にダイシングして形成したダイ31を貼着した伸縮可能なダイシングシート34を、円形の開口部を有するウエハ装着板33にエキスパンドした状態で装着したものであり、該ウエハ装着板33がパレット本体35にねじ止め等により取り付けられている。
【0018】
突き上げユニット28(
図2参照)は、ウエハパレット32のダイシングシート34下方の空間領域をXY方向に移動可能に構成されている。そして、ダイシングシート34のうちのピックアップ(吸着)しようとするダイ31の貼着部分をその下方から突き上げポット37の突き上げピン39(
図4、
図5参照)で局所的に突き上げることで、当該ダイ31の貼着部分をダイシングシート34から部分的に剥離させてダイ31をピックアップしやすい状態に浮き上がらせるようにしている。
【0019】
この突き上げユニット28は、サーボモータ(図示せず)を駆動源として突き上げユニット28全体が上下動するように構成されている。ダイピックアップ動作時には、突き上げユニット28が上昇して突き上げポット37の上面がウエハパレット32のダイシング
シート34にほぼ接触する所定のシート吸着位置まで上昇すると、ストッパ機構(図示せず)によって突き上げユニット28の上昇が止まり、更に上昇動作を続けると、突き上げポット37の上面から突き上げピン39(
図4、
図5参照)が上方に突出して、ダイシングシート34のうちのピックアップしようとするダイ31の貼着部分を突き上げるようになっている。この場合、駆動源となるサーボモータの回転量を調整することで、突き上げピン39の突き上げ高さ位置(突き上げ量)を調整できるようになっている。
【0020】
図1に示すように、XY移動機構25には、吸着ヘッド41とカメラ42とが組み付けられ、該XY移動機構25によって吸着ヘッド41とカメラ42が一体的にXY方向に移動するように構成されている。吸着ヘッド41には、ダイシングシート34上のダイ31を吸着する吸着ノズル43(
図4、
図5参照)が上下動するように設けられている。カメラ42は、ダイシングシート34上のダイ31を上方から撮像してその撮像画像を画像処理することで、吸着ノズル43で吸着しようとするダイ31の位置を認識できるようになっている。
【0021】
ダイ供給装置11の制御装置(図示せず)は、特許請求の範囲でいう画像処理手段
及び制御手段として機能し、ダイシングシート34上のダイ31のうち、吸着しようとするダイ31をカメラ42で撮像して得られた画像を処理して該ダイ31の位置を認識して、該ダイ31の突き上げ位置及び吸着位置を決定し、
図5に示すように、ダイシングシート34のうちのピックアップ(吸着)しようとするダイ31の貼着部分をその下方から突き上げポット37の突き上げピン39で局所的に突き上げることで、当該ダイ31の貼着部分をダイシングシート34から部分的に剥離させてダイ31をピックアップしやすい状態に浮き上がらせながら、該ダイ31を吸着ノズル43で吸着してピックアップする。
【0022】
ところで、ウエハ張設体30の製造元から提供される製品仕様(例えば、ウエハのサイズ、ダイ31のサイズ、ダイ31の間隔、ダイ31の配置情報等)のデータを用いれば、ダイシングシート34上の各ダイ31の位置を推定できるが、製品ばらつき(ダイシングシート34の拡張のばらつきやウエハのXY方向の傾き等)によってダイ31の推定位置に誤差が生じる。また、ダイ31の吸着位置や突き上げ位置が多少ずれていても、そのずれ量が小さければ、ダイ31を十分に吸着可能である。
【0023】
これらの事情を考慮して、本実施例では、
図6に示すように、ダイシングシート34上のダイ31のうち、カメラ42で撮像するダイ31(以下「撮像ダイ」という)を、例えば1個おき(又は複数個おき)に間欠的に設定し、撮像ダイについては画像処理により該撮像ダイの位置を認識して該撮像ダイの突き上げ動作及び吸着動作を実行し、カメラ42で撮像しないダイ31(以下「非撮像ダイ」という)については、隣接する前回撮像済みの撮像ダイの認識位置を基準にして該非撮像ダイの位置を推定して該非撮像ダイの突き上げ動作及び吸着動作を実行する。
【0024】
ここで、非撮像ダイの位置を、隣接する前回撮像済みの撮像ダイの認識位置を基準にして推定する方法は、前回撮像済みの撮像ダイの認識位置と、次の情報(a) 〜(d) 等を用いて幾何学的に算出すれば良い。
【0025】
(a) 前回撮像済みの撮像ダイから、対象となる非撮像ダイまでのダイ31の数
(b) ダイ31のサイズ
(c) 隣り合うダイ31の間隔
(d) ウエハのXY方向の傾き(ダイ31の配列の傾き)
【0026】
本実施例のように、非撮像ダイの位置を隣接する前回撮像済みの撮像ダイの認識位置を基準にして推定すれば、カメラ42で撮像するダイ31の数をダイシングシート34上の
ダイ31の総数の半分以下に低減できるため、ウエハ1枚当たりの合計撮像画像処理時間を大幅に短縮することができて、ウエハ1枚当たりのダイ供給時間を短縮する効果を大きくできる。しかも、非撮像ダイの位置を隣接する前回撮像済みの撮像ダイの認識位置を基準にして推定することで、該非撮像ダイの位置の推定誤差を小さくすることができ、非撮像ダイの突き上げ動作及び吸着動作も安定して行うことができる。
【0027】
一般に、ダイシングシート34上のダイ31の中には不良ダイが含まれるため、製造元から、ダイシングシート34上のダイ31の良否を示すウエハマッピングデータが提供される場合が多い。そこで、本実施例では、ウエハマッピングデータに基づいて良品ダイと不良ダイとを判別し、良品ダイについてのみ突き上げ動作及び吸着動作を行うようにしている。
【0028】
この場合、不良ダイについては、全ての不良ダイの画像処理を行わないように
することが考えられるが、不良ダイが連続して並んでいる場合は、連続して並ぶ不良ダイの数が多くなると、次に撮像する良品ダイまでの距離が長くなる。このため、
図7に示すように、ダイ31の配列が歪んでいる場合には、次に撮像する良品ダイまでの距離が長くなると、次に撮像する良品ダイの位置の推定誤差が大きくなる。このため、次の良品ダイをカメラで撮像する際に、間違った位置のダイ31を次の良品ダイと誤判定してしまう可能性がある。
【0029】
この対策として、本実施例では、不良ダイについては、突き上げ動作及び吸着動作を行わないが、不良ダイが所定数以上(例えば2個以上又は3個以上)連続して並んでいる場合は、該不良ダイを1個おき(又は複数個おき)にカメラ42で撮像して、画像処理により該不良ダイの位置を認識し、該不良ダイの位置を基準にして次に撮像するダイ31(不良ダイ又は良品ダイ)の位置を推定し、次のダイ31を撮像するときに該ダイ31の推定位置を目標撮像位置として該ダイ31をカメラ42で撮像して画像処理により該ダイ31の位置を認識するようにしている。
【0030】
このようにすれば、不良ダイが連続して多く並んでいるために、次に撮像する良品ダイまでの距離が長い場合でも、不良ダイを1個おき(又は複数個おき)にカメラ42で撮像して該不良ダイの位置を認識して、該不良ダイの認識位置を基準にして次に撮像する不良ダイ(又は良品ダイ)の位置を推定するという処理を繰り返すことで、次に撮像する良品ダイの位置の推定誤差を小さくすることができ、間違った位置のダイ31を次の良品ダイと誤判定することを未然に防止できる。
【0031】
尚、本実施例では、非撮像ダイの位置を推定する際に、該非撮像ダイに隣接する撮像ダイの認識位置として、前回撮像済みの撮像ダイの認識位置を用いて該非撮像ダイの位置を推定するようにしたが、ダイシングシート上の吸着済みのダイの認識位置をメモリに記憶しておいて、位置推定対象の非撮像ダイに最も近いダイが吸着済みのダイである場合に、該吸着済みのダイの認識位置を基準にして次に撮像するダイの位置を推定するようにしても良い。
【0032】
また、本実施例では、良品ダイの撮像間隔と不良ダイの撮像間隔を同一に設定したが、不良ダイの撮像間隔を良品ダイの撮像間隔よりも長く設定しても良い。
【0033】
また、本実施例では、良品ダイと不良ダイの両方を間欠的にカメラ42で撮像して該ダイの位置を認識するようにしたが、例えば、良品ダイの吸着位置・突き上げ位置の許容誤差が小さいために、間欠的に撮像したのでは、良品ダイの吸着位置・突き上げ位置の要求精度を満たせない場合には、良品ダイについては、全ての良品ダイをカメラ42で撮像して該ダイの位置を認識し、不良ダイについては、不良ダイが所定数以上(例えば2個以上又は3個以上)連続して並んでいる場合に、該不良ダイを間欠的にカメラ42で撮像して
、画像処理により該不良ダイの位置を認識し、該不良ダイの位置を基準にして次に撮像するダイ(不良ダイ又は良品ダイ)の位置を推定し、次のダイを撮像するときに該ダイの推定位置を目標撮像位置として該ダイをカメラ42で撮像して画像処理により該ダイの位置を認識するようにしても良い。
【0034】
また、本実施例のダイ供給装置11は、XY移動機構25によって吸着ヘッド41とカメラ42が一体的にXY方向に移動するように構成したが、吸着ヘッド41とカメラ42がX方向のみに移動し、且つ、ウエハパレット32がパレット引き出しテーブル23上をY方向に移動することで、撮像対象・吸着対象となるダイ31の位置がXY方向に移動するように構成しても良い。
【0035】
その他、本発明は、ダイ供給装置11の構成やウエハパレット32の構成を適宜変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
11…ダイ供給装置、22…マガジン保持部、23…パレット引き出しテーブル、25…XY移動機構、28…突き上げユニット、30…ウエハ張設体、31…ダイ、32…ウエハパレット、33…ウエハ装着板、34…ダイシングシート、37…突き上げポット、39…突き上げピン、41…吸着ヘッド、42…カメラ、43…吸着ノズル