特許第5988478号(P5988478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988478
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】高速回転吸引ロール及び洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 1/04 20060101AFI20160825BHJP
   B08B 1/02 20060101ALI20160825BHJP
   B08B 5/04 20060101ALI20160825BHJP
   B21B 45/02 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   B08B1/04
   B08B1/02
   B08B5/04 A
   B21B45/02 330
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-75287(P2012-75287)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-202542(P2013-202542A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】391044797
【氏名又は名称】株式会社コーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100130074
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 繁元
(72)【発明者】
【氏名】白勢 健司
(72)【発明者】
【氏名】山田 純也
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−045471(JP,A)
【文献】 特開平06−039436(JP,A)
【文献】 特開2007−301488(JP,A)
【文献】 特開平07−113577(JP,A)
【文献】 特開2008−114981(JP,A)
【文献】 特開2000−193153(JP,A)
【文献】 特開平07−323307(JP,A)
【文献】 特開2004−142936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/04
B08B 1/02
B08B 5/04
B21B 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の対象物に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の流体を除去、搾取、洗浄する為の高速回転吸引ロールにおいて、前記高速回転吸引ロールはロール部及び台座を有し、前記台座は前記ロール部が外周に形成される本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A及び継ぎ手部Bを有し、前記本体部は開口部が形成されていると共に、外周に前記開口部に連通する孔部が開設されており、少なくとも前記継ぎ手部Aには中空部が形成され、前記中空部は前記開口部と連通されており、前記開口部は前記継ぎ手部A近傍の開口面積が前記継ぎ手部B近傍の開口面積より小にて形成された作用部を有すると共に、前記継ぎ手部A側からの吸引力により流体が前記継ぎ手部Bから前記継ぎ手部Aに向かって流通することを特徴とする高速回転吸引ロール。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなる高速回転吸引ロールにおいて、開口部の開口面積は継ぎ手部Bから継ぎ手部Aに近づくほど大から小に徐変する作用部を有することを特徴とする高速回転吸引ロール。
【請求項3】
請求項1記載の構成よりなる高速回転吸引ロールにおいて、開口部は継ぎ手部Bから継ぎ手部Aに向かって、段階的に開口面積が縮小する作用部を有することを特徴とする高速回転吸引ロール。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の構成よりなる高速回転吸引ロールにおいて、本体部の内部に筒体が挿入されると共に、前記筒体に孔部及び作用部が形成されていることを特徴とする高速回転吸引ロール。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の構成よりなる高速回転吸引ロールにおいて、該ロールの継ぎ手部A側及び/又は継ぎ手部B側に回転バランスを補正する重量補正手段が施されていることを特徴とする高速回転吸引ロール。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載された高速回転吸引ロールと、該高速回転吸引ロールを回転駆動する駆動手段、及び真空ポンプを少なくとも有する洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にラインスピードが700mpm以上の高速ラインで使用される高速回転吸引ロールと、この高速回転吸引ロールを搭載した洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールに関して、種々のロールが開発されており、継ぎ手部A側から継ぎ手部B側に向かって、圧縮流体を噴射し、開口部の断面積を変化させることによって開口部に負圧を発生させ、ロール部に吸収された液体をロールの外部に排出してロールの耐用期間の長期化を図る発明が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、高速対応の真空吸液ロールとして、透孔及び空洞部を備えた軸本体と、この軸本体に設けた毛細管作用及び吸水作用をなすポーラス孔を多数有するロール本体と、軸本体の連通孔に設けた真空接続配管系とを備え、空洞部の収れん部に傘状のスペーサーコアを設けた発明が知られている(特許文献2)。
【0004】
また、一方の端部が吸引側の筒状ロール軸部、他方の端部が気体導入側の筒状ロール軸部に狭窄形成され、胴壁には多数の透孔が配設された中空のロール胴部の外面にポーラス状不織布を巻装するとともに、ロール胴部内の吸引側に流体増速機構を設けた吸液ロールであって、吸引側の筒状ロール軸部を真空接続管に接続すると共に、気体導入側の筒状ロール軸部を気体導入配管に接続した発明が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−301488号公報
【特許文献2】特開平7−113577号公報
【特許文献3】特開平7−323307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術においては、ロールの外部に排出される液体は、継ぎ手部B側より液体として直接、洗浄装置の内部に放出される為、洗浄装置の内部が流体のミスト等により汚染され、作業環境が悪化するという課題を有していた。
【0007】
また、上記特許文献2に開示されている技術においては、スペーサーコアは設置の仕方によっては不安定で空洞部の収れん部から外れやすく、ベンチュリー効果を長期間に亘って発揮することができないという課題を有していた。
【0008】
また、上記特許文献3に開示されている技術においても、吸液ロールの空洞部に設置された流体増速機構は、吸液ロールの回転中に空洞部から外れやすく、ベンチュリー効果を長期間に亘って発揮することができないという課題を有していた。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決する為になされたもので、作業環境の汚染を防ぐと共に、ラインスピードが700mpm以上の高速ラインで使用される場合においても長期間に亘って良好な吸液性能が発揮される高速回転吸引ロールと、この高速回転吸引ロールを搭載した洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決する為に、請求項1の発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の対象物に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の流体を除去、搾取、洗浄する為の高速回転吸引ロールにおいて、前記高速回転吸引ロールはロール部及び台座を有し、前記台座は前記ロール部が外周に形成される本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A及び継ぎ手部Bを有し、前記本体部は開口部が形成されていると共に、外周に前記開口部に連通する孔部が開設されており、少なくとも前記継ぎ手部Aには中空部が形成され、前記中空部は前記開口部と連通されており、前記開口部は前記継ぎ手部A近傍の開口面積が前記継ぎ手部B近傍の開口面積より小にて形成された作用部を有すると共に、前記継ぎ手部A側からの吸引力により流体が前記継ぎ手部Bから前記継ぎ手部Aに向かって流通することを特徴としている。上記構成によって、ベルヌーイの定理により、継ぎ手部A側の圧力エネルギーを最小にすることができ、負圧を最大にすることができることから吸引力を最大にすることができる。したがって、ロールの高速回転時において、遠心力よりも吸引力を大きくすることができるので、作業環境を汚染することなく、長期間に亘って優れた吸液性能を発揮することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載の構成よりなる高速回転吸引ロールにおいて、開口部の開口面積は継ぎ手部Bから継ぎ手部Aに近づくほど大から小に徐変する作用部を有することを特徴としている。上記構成によって、圧力損失を防ぎつつ、効率的に負圧を発生させることができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1記載の構成よりなる高速回転吸引ロールにおいて、開口部は継ぎ手部Bから継ぎ手部Aに向かって、段階的に開口面積が縮小する作用部を有することを特徴としている。上記構成によって、開口部の開口面積を徐変させる加工よりも安価に加工することができ、製造コストを抑えることができる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の構成よりなる高速回転吸引ロールにおいて、本体部の内部に筒体が挿入されると共に、前記筒体に孔部及び作用部が形成されていることを特徴としている。上記構成によって、筒体の内部に作用部を加工できる為、筒体が形成されていない場合に比べて、作用部を容易かつ安価に加工する事ができる。また、本体部の内部に筒体を挿入する為、筒体を着脱して交換する事が可能となる。また、異なる開口面積を有する複数の筒体を順次挿入した場合には、作用部に段差を形成する事ができる為、段階的に開口面積が縮小する作用部を形成する事ができる。また、筒体には孔部が形成されてある為、ロール片内の油分等の流体をロールの外部に除去できる。また、筒体に樹脂を使用した場合には、軽くすることができ、加工も容易なことから製造コストを抑えることができると共に、ロールの重量バランスを極力平衡に保つことができる。また、筒体に樹脂の発泡体を使用した場合には、発泡体が外に広がろうとするため、本体部と筒体との隙間を無くすことができる。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の構成よりなる高速回転吸引ロールにおいて、該ロールの継ぎ手部A側及び/又は継ぎ手部B側に回転バランスを補正する重量補正手段が施されていることを特徴としている。上記構成によって、高速回転時の回転ブレを抑制することができる。
【0015】
請求項6の発明は、洗浄装置の発明であって、請求項1から5のいずれか1項に記載された高速回転吸引ロールと、該高速回転吸引ロールを回転駆動する駆動手段、及び真空ポンプを少なくとも有することを特徴としている。上記構成によって、ロールの高速使用時においても優れた吸液性能を発揮することができる洗浄装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明では、作業環境を汚染することなく、高速使用時においても長期間に亘って優れた吸液性能を発揮することができる。また、請求項2の発明では、圧力損失を防ぎ、効率的に負圧を発生することができる。また、請求項3の発明では、製造コストを抑えることができる。また、請求項4の発明では、筒体が形成されていない場合に比べて、作用部を容易かつ安価に加工する事ができる。また、請求項5の発明では、ロールの重量バランスを極力平衡に保つことができ、回転ブレを抑制することができる。また、請求項6の発明では、ロールの高速使用時においても優れた吸液性能を発揮することができる洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る高速回転吸引ロールの第1実施形態を示す正面図。
図2図1の断面図。
図3】本発明に係る高速回転吸引ロールの第2実施形態を示す断面図。
図4】本発明に係る高速回転吸引ロールの第3実施形態を示す断面図。
図5図4で説明した筒体の他例を示す断面図。
図6図5で説明した筒体の他例を示す断面図。
図7】本発明に係る高速回転吸引ロールが搭載された洗浄装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び図2を用いて、本発明に係る高速回転吸引ロールについて説明する。
【0019】
図1及び図2において、高速回転吸引ロール1は、台座3、止め金具5、プレート6、及び複数のロール片4a、4bからなるロール部2より構成されている。台座3は、鉄、SUS、アルミニウム等の金属材料からなり、外周にロール部2が形成されていると共に、開口部10を有する本体部7、及び本体部7の両方の端部に連接され中空部11を有する継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9から形成されている。ロール部2は、不織布からなる複数のロール片4a、4bが台座3を構成する本体部7の外周に積層されると共に、重ね合わされて形成されており、両側から止め金具5、及びプレート6にて挟み付けられて形成されている。止め金具5は、ネジ止めのロックナットが使用されている。
【0020】
図2において、台座3を構成する本体部7の外周には、複数の円形の孔部14が千鳥状に開設されている。孔部14は、本体部7の有する開口部10に連通している。また、ロール片4bの下部には、複数の円形の孔部14を連結するように、本体部7の円周方向外周に複数本の流体導入溝部16が形成されてある。また、継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9には、中空部11が設けられていると共に、一方の端部には、ロータリージョイント(図示せず)が接続されるネジ部12が形成されており、他方は本体部7の端部に、溶接による接合部15を介して連接されている。
【0021】
また、本体部7の開口部10は、両側の中空部11と連通しており、開口部10は継ぎ手部A8側近傍の開口面積が継ぎ手部B9側近傍の開口面積より小にて形成された作用部13を有している。そして、継ぎ手部A8側からの吸引力により流体が継ぎ手部B9側から継ぎ手部A8側に向かって流通して、高速回転吸引ロール1の外部に排出される。
【0022】
上述のように、流体を継ぎ手部B9側から継ぎ手部A8側に向かって流通させるためには、継ぎ手部A8側からの吸引力を、高速回転吸引ロール1の高速回転に伴い発生する遠心力よりも大きくする必要があり、本発明ではベルヌーイの定理を利用した構造とすることによって、遠心力<吸引力という状態を実現している。
【0023】
以下、ベルヌーイの定理について簡単に説明する。ベルヌーイの定理は、エネルギー保存の法則であり、開口部10の任意のいずれの地点においても、流体の(位置エネルギー)+(運動エネルギー)+(圧力エネルギー)=一定という式が成立する。したがって、継ぎ手部B9側近傍(開口部10の開口面積が最大の地点、以下、B点という。)と、継ぎ手部A8側近傍(開口部10の開口面積が最小の地点、以下、A点という。)のいずれにおいても位置エネルギーと、運動エネルギーと、圧力エネルギーの総和は一定である。ここで、B点とA点において、流体の位置エネルギーを比較した場合に、流体は横一線に流れるだけなので、A点とB点における位置エネルギーは等しくなる(A=B)。
【0024】
次に、流体の運動エネルギーを比較した場合、B点は開口面積が開口部10の中で最大の為、流速は最も遅く、運動エネルギーは最小となる。一方、A点は開口面積が開口部10の中で最小の為、流速は最も速く、運動エネルギーは最大となる。したがって、運動エネルギーは、(A>B)である。
【0025】
次に、流体の圧力エネルギーを比較した場合、上述のとおり、位置エネルギーは、(A=B)であり、運動エネルギーは、(A>B)であるから、ベルヌーイの定理によって、圧力エネルギーは、(A<B)となる。即ち、開口部10における流体の圧力エネルギーはB点で最大となり、A点で最小となる。
【0026】
したがって、流体の出口側であるA点において流体の圧力エネルギーが最小になるということは、負圧として見た場合には、負圧の値は最大となる。また、負圧が大きくなるということは、吸引力が大きくなるということなので、高速回転吸引ロール1の高速回転時においても、遠心力<吸引力という状態を実現し、液体を吸引することが可能となる。
【0027】
ここで、第1実施形態における作用部13は、開口部10の開口面積が継ぎ手部B9側から継ぎ手部A8側に近づくほど大から小に徐変する構成としており、このように構成することによって、圧力損失を防ぎつつ、効率的に負圧を発生させることができる。
【0028】
尚、高速回転吸引ロール1の継ぎ手部A8側及び継ぎ手部B9側には、回転バランスを補正する重量補正手段17、18を設けている。この重量補正手段17、18は、高速回転時の回転ブレを抑制するためのものであり、継ぎ手部B9側のように、錘であってもよいし、継ぎ手部A8側のように、空洞であってもよい。また、重量補正手段17、18は、高速回転吸引ロール1の継ぎ手部A8側又は継ぎ手部B9側のいずれか一方に設けても回転ブレを抑制することができるものである。
【0029】
ロール部2の両端部に固定されるプレート6、及び止め金具5は鉄、SUS、アルミニウム等の金属材料からなると共に、概円環状に形成されてあり、止め金具5の内周に形成されたネジ部C26は、継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9の外周に形成されたネジ部B25に嵌合され、固定される。
【0030】
図3は、本発明に係る高速回転吸引ロールの第2実施形態を示す断面図である。第2実施形態の高速回転吸引ロール1aは、作用部13a以外は第1実施形態と同様の構成となっているので、同一の構成の説明は省略する。作用部13aは、開口部10が継ぎ手部B9側から継ぎ手部A8側に向かって、段階的に開口面積が縮小する構成となっている。このような構成によって、開口部10の開口面積を徐変させる第1実施形態の加工よりも安価に加工することができ、製造コストを抑えることができる。
【0031】
図4は、本発明に係る高速回転吸引ロールの第3実施形態を示す断面図である。第3実施形態の高速回転吸引ロール1bは、本体部7aの内部に筒体7bが挿入されると共に、筒体7bに孔部14b及び作用部13bが形成されている。本体部7aの外周には、複数の円形の孔部14aが開設されてあり、孔部14aは孔部14bと連通して形成されてある。このように構成することによって、筒体7bの内部に作用部13bを加工できる為、筒体7bが形成されていない場合に比べて、作用部13bを容易かつ安価に加工する事ができる。また、本体部7aの内部に筒体7bを挿入する為、筒体7bを着脱して交換する事が可能となる。また、筒体7bに樹脂を使用した場合には、軽くすることができ、加工も容易なことから製造コストを抑えることができると共に、ロールの重量バランスを極力平衡に保つことができる。また、筒体7bに樹脂の発泡体を使用した場合には、発泡体が外に広がろうとするため、本体部7aと筒体7bとの隙間を無くすことができる。
【0032】
尚、第3実施形態における筒体7bに形成されている作用部13bは、第1実施形態と同様に、開口部10の開口面積が継ぎ手部B9側から継ぎ手部A8側に近づくほど大から小に徐変する構成としているが、第2実施形態と同様に、作用部13bを開口部10が継ぎ手部B9側から継ぎ手部A8側に向かって、段階的に開口面積が縮小する構成としてもよいものである。
【0033】
図5は、第3実施形態で説明した筒体の他例を示す断面図である。図5に示す筒体7c、7d、7eは、3個に分割された分割片であり、各々の分割片に、孔部14c、14d、14e、及び作用部13c、13d、13eが形成されている。そして、筒体7c、7d、7eを、図4の第3実施形態で説明した本体部7aに順次挿入することによって、高速回転吸引ロールが組み立てられるようにしている。このように、筒体を分割片とすることによって、作用部の加工が容易となり、製造コストを低減させることができる。
【0034】
図6は、図5で説明した筒体の他例を示す断面図である。図6に示す筒体7f、7g、7hは、3個に分割された分割片であり、各々の分割片に、孔部14f、14g、14h、及び作用部13f、13g、13hが形成されている。作用部13fは、開口面積が除片する事無く、同一の内径にて形成されてある。作用部13g、13hにおいても、作用部13fと同様の構成にて形成されてある。また、開口面積は、13hが最も大きく、次いで13g、13fの順に、小さく形成されてある。そして、筒体7f、7g、7hを、図4の第3実施形態で説明した本体部7aに順次挿入することによって、高速回転吸引ロールが組み立てられるようにしている。この時、作用部13f、13g、13h間に段差を形成する事ができる為、段階的に開口面積が縮小する作用部を形成する事ができる。筒体7f、7g、7hを組み立てる事により、段階的に開口面積が縮小する作用部を一体的に加工する事が無く、作用部の加工が容易となり、製造コストを低減させることができる。
【0035】
次に、本発明の高速回転吸引ロールの吸引性能について試験した。下記に示した要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0036】
実施例1は、第1実施形態に示した作用部を有する高速回転吸引ロールの場合である。実施例2は、第1実施形態で示した作用部を有する高速回転吸引ロールであって、吸引力が弱くなった状態においてコンプレッサーを介して継ぎ手部B側から圧縮流体を間欠的に導入した場合である。実施例3は、第2実施形態に示した作用部を有する高速回転吸引ロールの場合である。実施例4は、第2実施形態で示した作用部を有する高速回転吸引ロールであって、吸引力が弱くなった状態においてコンプレッサーを介して継ぎ手部B側から圧縮流体を間欠的に導入した場合である。比較例1は、作用部を有していない継ぎ手部B側から継ぎ手部A側までの間が直線的な開口部の吸引ロールの場合である。
【0037】
ロールの外形は、実施例1〜4及び比較例1を、φ100×φ70×F300×L580の寸法に統一した。線圧は、5kgf/cmとした。速度は、600、700、800、900、1000(mpm)の5段階で試験した。(Fはロール部の全長、Lはロールの全長)
【0038】
テスト方法は、水道水を噴射し、真空ポンプを作動させてロール内部の水を吸引させた後(真空圧は、−77.8KPa)、配管からの吸水状態を観察した。評価基準は、吸引する場合は、○、吸引するが、吸水量が少ない場合は、△、全く吸引しない場合は、×で示した。
【0039】
【表1】
【0040】
上記の試験結果より、開口部の開口面積が継ぎ手部B側から継ぎ手部A側に近づくほど大から小に徐変する作用部を有する第1実施形態の高速回転吸引ロールを使用することによって、ラインスピードが700mpm以上の高速ラインでの使用が可能なことが確かめられた。これは、ベルヌーイの定理に基づくベンチュリー効果が奏功しているものと考えられる。また、コンプレッサーを介して継ぎ手部B側から圧縮流体を間欠的に導入すれば、800mpm〜900mpmの範囲の高速ラインにおいても使用が可能であることが確かめられた。
【0041】
また、開口部の開口面積が継ぎ手部B側から継ぎ手部A側に向かって、段階的に縮小する作用部を有する第2実施形態の高速回転吸引ロールを使用しても第1実施形態の作用部と同等の使用が可能であることが確かめられた。
【0042】
図7を用いて、本発明に係る高速回転吸引ロールを搭載した洗浄装置について説明する。なお、構成の説明を容易にする為に、各部品の軸受け部や、支持部品の図示、説明は省略することとする。また、高速回転吸引ロールは、ラインスピードが700mpm以上の高速ラインにおいて、高速回転して鋼板に付着した水分や油分を除去するために用いられるものとする。
【0043】
高速回転吸引ロール61a、61bは、洗浄装置60に上下一対で設置され、上部に位置する高速回転吸引ロール61aの台座63の両端部、すなわち継ぎ手部A68、及び継ぎ手部B69に一定の圧力が加えられ、駆動手段64により矢印の方向に回転駆動し、上部の高速回転吸引ロール61aと下部の高速回転吸引ロール61bの間を、両面に油分等(図示せず)が付着した連続した長尺状の鋼板70が白抜き矢印の方向に送出されている。また、継ぎ手部A68の端部にはロータリージョイント66が挿入されると共に、配管65を介して真空ポンプ67に連接されている。上部に位置する高速回転吸引ロール61aは鋼板70の表面から油分等を除去し、下部に位置する高速回転吸引ロール61bは鋼板70の裏面から油分等を除去する。油分等が付着した鋼板70は、ロール部62と接触し、ロール部62を構成する不織布の有する極細繊維間に発生する空隙部による毛細管現象により、油分等がロール部62に吸い上げられると共に、ロール部62の空隙に放出される。なお、ロール61a、61bは、前述した第1実施形態の高速回転吸引ロール1と同一である。また、鋼板70は、ピース状であっても、何ら支障はない。
【0044】
上記の如くの高速回転吸引ロール61a、61bの状態において、真空ポンプ67を稼働して真空吸引力を作用させると、ロール部62に負圧が付加され、ロール部62に吸収された油分等は、流体となり、流体は、流体溝部、及び孔部を通り、開口部に流れ込み、継ぎ手部A68に形成された中空部から配管65を通り、高速回転吸引ロール61a、61bの外部に吸引されて、放出される。流体は、真空ポンプ67にてフィルター(図示せず)を介し、図示しない配管を通り、洗浄油タンクへ再び送出される。従って、ロール部62の吸液飽和状態が解消され、吸排機能が持続する為、高速回転吸引ロール61a、61bは長期間に亘って、鋼板70に付着した油分等を、確実に除去することができる。
【0045】
上記の如く構成された洗浄装置60は、長期間に亘って、鋼板70から油分等を確実に除去することができる高速回転吸引ロール61a、61bが搭載されていることから、優れた油分除去性能が発揮される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の高速回転吸引ロールは、主に、ラインスピードが700mpm以上の高速ラインにおいて、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する目的以外にも、長期間に亘り、高温下で優れた液体の除去性能を必要とする高速回転吸引ロールとして、広く好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1、61a、61b 高速回転吸引ロール
2、62 ロール部
3、63 台座
4a、4b ロール片
5 止め金具
6 プレート
7、7a 本体部
7b、7c、7d、7e、7f、7g、7h 筒体
8、68 継ぎ手部A
9、69 継ぎ手部B
10 開口部
11 中空部
12 ネジ部
13、13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13h 作用部
14、14a、14b、14c、14d、14e、14f、14g、14h 孔部
16 流体導入溝部
60 洗浄装置
64 駆動手段
65 配管
66 ロータリージョイント
67 真空ポンプ
70 鋼板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7