(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988481
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/02 20060101AFI20160825BHJP
【FI】
G06F3/02 320B
G06F3/02 F
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-146573(P2012-146573)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-10603(P2014-10603A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222934
【氏名又は名称】東洋電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000103747
【氏名又は名称】京セラディスプレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104396
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 信昭
(72)【発明者】
【氏名】野口 義隆
(72)【発明者】
【氏名】伊東 秀章
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 聖
【審査官】
間野 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−243513(JP,A)
【文献】
特開2006−178590(JP,A)
【文献】
特開2000−165223(JP,A)
【文献】
特開2009−111996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/02
G06F 3/02−3/047
H01H 13/00−13/88
H03M 11/04
H03M 11/08−11/14
H03M 11/20−11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面をタッチ操作面とする誘電シートの裏側面側に、第1配線部の一端が接続された第1タッチセンサ部と、第2配線部の一端が接続された第2タッチセンサ部と、が設けられ、
当該第1配線部の他端と当該第2配線部の他端とが電気的に接続されたセンサ制御部と、を含み、
当該第1タッチセンサ部に対するタッチ操作によってオン・オフ信号を出力するように構成されたスイッチ装置において、
当該誘電シートの裏側面側に、当該第2配線部のみに一端が接続され他端が開放されたタッチ配線部が設けられ、
タッチ操作によって当該第1タッチセンサ部もしくは当該第1配線部との間に一方の静電容量が生じた際に、当該タッチ操作によって当該タッチ配線部との間に他方の静電容量が生じるように配され、かつ、
当該センサ制御部は、当該一方の静電容量と当該他方の静電容量とを検出した際に、
当該一方の静電容量を生じさせたタッチ操作が、当該第1タッチセンサ部に対するものか、もしくは当該第1配線部に対するものかを、静電容量の増加幅の大小で区別する信号を出力しつつ、
当該タッチ操作を無効とするように構成されている
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記タッチ配線部は、前記第1配線部と並行に配され、
前記タッチ配線部の他端は前記第1タッチセンサ部の近傍に配されている
ことを特徴とする請求項1記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記第1タッチセンサ部および前記第2タッチセンサ部以外に、n(nは、自然数)個のタッチセンサ部が設けられ、
当該n個のタッチセンサ部の各々に対応するn個の配線部が設けられ、
当該n個の配線部において互いに隣接する配線部間には、前記第1配線部と前記第2配線部との間の構造的・電気的関係と同じ構造的・電気的関係が構築されている
ことを特徴とする請求項1または2記載のスイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチ操作面を有するスイッチ操作部を備え、静電容量方式を入力方式とするスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のスイッチ電極と、これらのスイッチ電極の周囲を包囲する包囲スイッチ電極とを備えるスイッチ装置が開示されている。包囲スイッチ電極には、各スイッチ電極と相似形で僅かに大きな開口群を備え、それぞれの開口の中に1個ずつスイッチ電極が配されている。このように構成されたスイッチ装置は、各スイッチ電極に指が触れたときの検出値が所定の閾値を満足させたときに「オン」となるように設定されている。また、包囲スイッチ電極は、水などの誘電体が触れたときに、「オン」となるようになっている。ここで、スイッチ電極の静電容量の変化が閾値を満足させるが、包囲スイッチ電極に静電容量の変化が認められなければ、スイッチ電極が指で操作されたと判断するように、また、スイッチ電極と包囲スイッチ電極の両者に静電容量の変化が認められたなら包囲スイッチ電極に水等が付着していると判断するように構成されている。
【0003】
特許文献2に開示されたスイッチ装置は、互いに隣接する第1接触スイッチと第2接触スイッチに加え、ダミースイッチを備えている。ダミースイッチは、一部欠落した矩形環状に形成され、第1接触スイッチと第2接触スイッチを、それぞれ別個に包囲するように配されている。ここで、第1接触センサ部から出力があるとき、同時にダミースイッチからも出力があるなら、両接触スイッチ部が同時操作されたものとして、第1接触スイッチの出力を無効とするように構成されている。第2接触スイッチについても、上記同様に作動するようになっている。
【0004】
上記したスイッチ装置は、たとえば、ITO(Indium Tin Oxide)のような透明電極材料から構成され、これらの配線パターンの形成には銀ペーストなどの導電ペーストが用いられることが多い。このようにして構成されるスイッチは、車載のタッチパネル等に応用され、操作されるためのスイッチであるから人目につき易いところに配されるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−141329号(段落0008〜0010、
図8参照)
【特許文献2】特開2009−111996号(段落0021〜0023、
図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スイッチ電極や接触スイッチなどが目につき易いところに配されることは、前述した。ところが、上述したスイッチの類だけではなく、スイッチに付随する配線パターンも、また、目につき易い。スイッチ類であれば目につくのは当然としても、それらが配されるタッチパネル等のデザイン性を保つためには、配線パターンはできるだけ目立たせたくない。目立たせないために、配線パターンの厚みをなるべく薄いものとすることが考えられる。しかし、薄くすると、配線パターンの断面積が小さくなるので、その分、配線抵抗が増加し電気的問題につながりやすい。配線抵抗の増加を抑制するためには、たとえば、配線パターンの幅を広げることが考えられる。しかし、幅を広げると、広げた分だけ静電容量が増えることになり、充分な静電容量を蓄えた配線パターンがスイッチと同じ機能を果たしてしまうことがある。つまり、配線パターンに対するタッチがスイッチに対するタッチと電気的同等に扱われ、これがスイッチ全体の誤動作になるという不都合が生じる。
【0007】
上記した不都合は、操作者がスイッチだけに指を触れさせ、他の部位に触れさせなければ問題にならない。しかし、操作者が触れようと思ったスイッチ以外の部位を誤って触れてしまうことはよくあることであり防ぎようがない。たとえば、カーナビゲーションを操作するつもりだったのに狙いがはずれラジオのスイッチを誤って指で押してしまったり、押すつもりはなかったのに動かした手先がたまたま配線部位に触れオンしていたエアコンをオフさせてしまったりすることは、誰しもが経験する。しかし、このような経験は決して心地よいものではなく、スイッチ装置に対する不信感につながる。本発明は、この観点からなされたものである。すなわち、スイッチ(タッチセンサ部)以外の部位に指先が触れてもスイッチが誤作動することのない信頼性の高いスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、次の構成を備えている。なお、いずれかの請求項記載の発明を説明するに当たって行う用語の定義等は、その記載順に関わりなく、可能な範囲において他の請求項記載の発明にも適用があるものとする。
【0009】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1記載の発明に係るスイッチ装置(以下、適宜「請求項1の装置」という)は、表面をタッチ操作面とする誘電シートの裏側面側に、第1配線部の一端が接続された第1タッチセンサ部と、第2配線部の一端が接続された第2タッチセンサ部と、が設けられ、当該第1配線部の他端と当該第2配線部の他端とが電気的に接続されたセンサ制御部と、を含
み、当該第1タッチセンサ部に対するタッチ操作によってオン・オフ信号を出力するように構成されたスイッチ装置である。ここで、当該誘電シートの裏側面側に、当該第2配線部のみに一端が接続され他端が開放されたタッチ配線部
が設けられ、
タッチ操作によって当該第1タッチセンサ部もしくは当該第1配線部との間に一方の静電容量が生じた際に、当該タッチ操作によって当該タッチ配線部との間に他方の静電容量が生じるように配されている。その上で、当該センサ制御部は、当該一方の静電容量と当該他方の静電容量とを検出した際に、
当該一方の静電容量を生じさせたタッチ操作が、当該第1タッチセンサ部に対するものか、もしくは当該第1配線部に対するものかを、静電容量の増加幅の大小で区別する信号を出力しつつ、当該タッチ操作を無効とするように構成されている。
【0010】
請求項1の装置によれば、タッチ操作面に対するタッチ操作(通常は、誤った操作)が行われると、タッチした操作者の指、指以外の体の一部等の導電体と
当該第1タッチセンサ部もしくは第1配線部との間に誘電シートを挟んで対向するコンデンサ構造が形成され、これによって、一方の静電容量が生じる。当該タッチ操作は、併せてタッチ配線部との間に他方の静電容量を生じさせる。一方の静電容量は第1配線部を介して、他方の静電容量は第2配線部を介して、それぞれセンサ制御部に検出され、これらに伴い、センサ制御部は当該タッチ操作を無効とする。ここで、タッチ配線部がなければ第1配線部に対するタッチ操作(すなわち、一方の静電容量の発生)を第1タッチセンサ部に対するタッチ操作(静電容量の発生)と誤認する恐れがあるが、タッチ配線部があることにより当該タッチ操作が無効とされるため上記誤認の恐れがなくなる。
静電容量の増加幅の大小により、タッチ操作が、第1タッチセンサ部に対するものか、もしくは第1配線部に対するものか、を区別することもできる。以上により、誤作動が少なく信頼性の高いスイッチ装置を提供することができる。なお、タッチ配線部は、第1配線部の全長に亘って配することもできるが、必ずしも全長に亘って配さなければないわけではない。第1タッチセンサ部や第2センサ部、さらには、これらと第1配線部や第2配線部の形状、長さ、さらに相対位置等を考慮したときに、およそ誤った(不要な)タッチが行われるであろう部位のみに設けることもよい。また、本明細書における「第1」と「第2」とは、何れかを区別する趣旨ではなく、何れかを一方としたときの他方を示している。したがって、両者間に主従も依存関係もなく、両者を入れ替えたとしても何ら影響を受けない。
【0011】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2記載の発明に係るスイッチ装置(以下、適宜「請求項2の装置」という)は、請求項1のスイッチ装置であって、前記タッチ配線部は、前記第1配線部と並行に配され、前記タッチ配線部の他端は前記第1タッチセンサ部の近傍に配されている。第1配線部が屈曲部や湾曲部等を有する場合は、タッチ配線部も同じく屈曲部や湾曲部等を有するように構成することが好ましい。すなわち、タッチ配線部は、第1配線部に隣位し、さらに、第1配線部に沿うように構成されることが好ましい。
【0012】
請求項2の装置によれば、請求項1の装置の作用効果に加え、タッチ配線部の他端、すなわち、開放端が第1タッチセンサ部の近傍に配されていることから、第1配線部のほとんどの部分がタッチ配線部に付き添われている。したがって、第1配線部のほとんどの部位において誤ったタッチ操作が無効にされることになり、これによって、より高い信頼性を実現することができる。
【0013】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3記載の発明に係るスイッチ装置(以下、適宜「請求項3の装置」という)は、請求項1または2のスイッチ装置であって、前記第1タッチセンサ部および前記第2タッチセンサ部以外に、n(nは、自然数)個のタッチセンサ部が設けられ、当該n個のタッチセンサ部の各々に対応するn個の配線部が設けられ、当該n個の配線部において互いに隣接する配線部間には、前記第1配線部と前記第2配線部との間の構造的・電気的関係と同じ構造的・電気的関係が構築されている。仮に、n=1であれば、たとえば、上記第2配線部を一方の配線部とみなし、第n配線部を他方の配線部とみなせば、両配線部間に、上記した第1配線部と第2配線部と同じ構造的・電気的関係を構築することができる。
【0014】
請求項3の装置によれば、請求項1または2の装置の作用効果に加え、多数のタッチセンサ部(配線部)を備えるものであっても、配線部に対する誤ったタッチ操作を無効にすることにより、スイッチ装置全体の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
タッチセンサ部以外の部位(配線部)に指先がタッチしてもタッチセンサ部が誤作動することのない信頼性の高いスイッチ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図1に示すパネルスイッチのA−A断面図である。
【
図6】多数のタッチセンサ部を備えるパネルスイッチの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(スイッチ装置の全体構成)
図1および2に示すように、スイッチ装置1は、パネルスイッチ3と制御基板5から構成されている。パネルスイッチ3は、平面視矩形の誘電シート11によって、その表面がカバーされている。誘電シート11は、たとえば、アクリル板やガラス板のような誘電体によって構成され、その表面(
図2に示す最上面)は、操作者が指f(
図2)などをタッチさせるためのタッチ操作面11aになっている。タッチ操作面11aの裏側面11bには、たとえばPET(Polyethylene Terephthalate)フィルムからなる矩形の電極シート13が接着部材(両面テープ等、図示を省略)で貼り付けられている。
【0018】
電極シート13には、透明電極、たとえば、ITO(Indium Tin Oxide)で形成された、第1タッチセンサ部15a(15b)、第1タッチセンサ部15a(15b)に一端が接続された第1配線部17a(17b)、第1タッチセンサ部15a(15b)に隣接する第2タッチセンサ部19a(19b)、第2タッチセンサ部19a(19b)に一端が接続された第2配線部21a(21b)、および、電極シート13の周囲を包囲するように配されたGND配線部23が設けられている。符号31a(31b)は、タッチ配線部31a(31b)を示している。なお、本実施の形態では、誘電シート11の裏側面11b側に電極シート13を配置したが、電極シート13を配置せずに、誘電シート11の裏側面11bにタッチセンサ部、配線部、タッチ配線部を設けてもよい。
【0019】
図1に示すように、制御基板5にはワンチップマイコン7が搭載されている。ワンチップマイコン7の各端子は、コネクタ9を介して電極シート13の各配線部に電気的に接続されている。タッチ配線部31a(31b)については、項を改めて説明する。なお、第1タッチセンサ部15aと第1タッチセンサ部15bと、第1配線部17aと第1配線部17bと、第2タッチセンサ部19aと第2タッチセンサ部19bと、第2配線部21aと第2配線部21bと、さらに、タッチ配線部31aとタッチ配線部31bとは、それぞれ同じ構造のものを対称配置してあるだけなので、各々前者について説明し後者については説明を省略する。
【0020】
(タッチ配線部の構造)
図3に示すように、タッチ配線部31aは、一端と他端とを有し、その一端は第2配線部21aのみ(他の電極に接続されていない)に接続され他方は開放端31at(開放端31btの説明は省略)になっている。より具体的に示すと、タッチ配線部31aは、第2配線部21aの屈曲部から枝分かれして第1配線部17aと並行に突き出すように配されている。タッチ配線部31aの開放端31atは、第1配線部17aの屈曲部近傍に位置している。本実施形態では、第1配線部17a、第2配線部21a、およびタッチ配線部31aの線径(幅)は、1mm前後に設定され、また、第1配線部17aとタッチ配線部31aの間の隙間幅は、0.02〜0.2mmの範囲に設定されている。第1配線部17a等の線径は上記した1mm前後に限られるものではなく、パネルスイッチ3の大きさや個数、さらに、配線の集積度合いなどに合わせ、各々の幅寸法は適宜増減することができる。一方、第1配線部17aとタッチ配線部31a間の隙間幅は、0.2mm以下に設定することが好ましい。上記設定範囲の逸脱を妨げるものではないものの、0.2mm以下とすることが好ましい理由が存在する。その理由とは、すなわち、上記隙間幅であれば、一般人の指の形状や大きさ等に照らし、第1配線部17aに指でタッチしたとき(
図2)、そのままタッチ配線部31aにもタッチせざるを得ないような間隔(第1配線部17aのみに指でタッチすることが難しい間隔)だからである(
図3に2点鎖線で示す指f)。
【0021】
上記構造を有するパネルスイッチ3のタッチ操作面11aに指f(導電体)が近づくと、誘電シート11を電極(たとえば、第2タッチセンサ部15a)指fで挟んだコンデンサ構造が形成され両者間の静電容量が増加する。また、逆にパネルスイッチ3から指が離れると、コンデンサ構造が崩れて両者間の静電容量が減少する。この関係は、タッチ配線部31aを含めた第2タッチセンサ部19a以外の部位についても同じである。したがって、タッチ操作面11aの上から第1配線部17aにタッチ(指を近づけること)が行われると、これに伴いタッチ配線部31aにもタッチが行われたことになり、このとき、指と第1配線部17aとの間、および指とタッチ配線部31aとの間のそれぞれで静電容量が増加することになる。
【0022】
図1に示すワンチップのマイコン7は、内蔵されたROM(Read Only Memory)に内蔵されたソフトウエアを所定のワークエリア内で実行するように構成されている。すなわち、マイコン7は、第1タッチセンサ部15aや第2タッチセンサ部19aに対するタッチに基づく静電容量の増加分を、メモリに記憶された閾値(センサ閾値)と比較し満足したときにスイッチをオンし、次のタッチに基づく静電容量の増加がセンサ閾値を満足したときにスイッチをオフにすることを基本動作としている。ここで、ワンチップマイコンを採用した理由は、そのコンパクトさと配線作業などの容易さにあるが、ワンチップマイコン以外の部材を用いて制御基板5を構成することに何ら問題はない。
【0023】
本実施形態では、上記したセンサ閾値を第1配線部17aとタッチ配線部31aに対するタッチに基づく静電容量の増加分をもってスイッチがオンとオフするように設定されている。第1配線部17aとタッチ配線部31aの占有面積は、第1タッチセンサ部15aと第2タッチセンサ部19aの占有面積よりも狭いことは説明を要しないが、このことは、前二者の方が後二者よりも静電容量の増加幅が小さいことを意味する。これにより、前二者に対応できるようにセンサ閾値を設定しておけば、後二者に対しても対応可能である、というのが、センサ閾値が第1配線部17aとタッチ配線部31aに対応できるように設定された理由である。
【0024】
ここで、マイコン7は、タッチ操作面11aに対するタッチ操作で第1タッチセンサ部15aの静電容量(の増加)がセンサ閾値を満たすことを検出したとき、同じタッチ操作によって第2タッチセンサ部19aの静電容量(の増加)が上記同様にセンサ閾値を満たすことを検出したなら、第1タッチセンサ部15aに対するタッチ操作を無効とするようにプログラムされている。このことは、タッチ操作面11aに対するタッチ操作で第1配線部17aの静電容量(の増加)がセンサ閾値を満たすことを検出したとき、同じタッチ操作によってタッチ配線部31aの静電容量(の増加)が上記同様にセンサ閾値を満たすことを検出したなら、第1タッチセンサ部15aに対するタッチ操作を無効とするように併せてプログラムされていることになる。上述したように本実施形態では、第1タッチセンサ部15a等に対するタッチとタッチ配線部31a等に対するタッチとを区別していないが(後者に対するタッチを前者に対するタッチとみなしている)、前者後者を区別するようにプログラムすることを妨げるものではない。
【0025】
(検出動作例)
図1、2および4を参照しながら、スイッチ装置1の動作について説明する。マイコン7は、操作者によるタッチに基づく第1タッチセンサ部15aの静電容量の増加を常に計測しており(S1)、計測したときはその静電容量増加分がセンサ閾値を満足するどうかを判断する(S3)。S3において、センサ閾値を満足しないのであれば、マイコン7はS1に戻り、再度、第1タッチセンサ部15aの静電容量の増加を計測する。一方、S3において、静電容量の増加がセンサ閾値を満足した場合のマイコン7は、第2タッチセンサ部19aの静電容量を計測する(S5)。第1タッチセンサ部15aとともに、第2タッチセンサ部19aが上記第1タッチセンサ部15aに対するタッチと併せてタッチされていないか(すなわち、誤操作がないか)を確認するためである。
【0026】
S5において、第2タッチセンサ部19aの静電容量の増加を検出したなら、マイコン7は、その静電容量の増加がセンサ閾値を満足するかどうかを判断する(S7)。S7において、第2タッチセンサ部19aの静電容量の増加がセンサ閾値を満足しないと判断したなら、マイコン7は、上記した第1タッチセンサ部15aに対するタッチ操作を有効なものと確定し(S9)、オンまたはオフ信号を送出する(S11)。オンまたはオフ信号の送出は、スイッチ装置
1の基本機能である。
【0027】
他方、S7において、第2タッチセンサ部19aの静電容量がセンサ閾値を満足すると判断したマイコン7は、誤操作があったものとして第1タッチセンサ部15aに対するタッチ操作を無効とする(S15)。ここで、本実施形態では採用していないが、S15の無効処理とともに、たとえば、無効にされた旨を操作者に知らせるための警告音を発したり第1タッチセンサ部15aを点滅させたりするように構成してもよい。
【0028】
ここで、タッチ操作面11aを介して第1配線部17aにタッチ(
図3に2点鎖線で示す指f)が行われたときマイコン7は、第1配線部17aに対するタッチと第1タッチセンサ部15aに対するタッチを区別していないため、当該第1配線部17aに対するタッチを第1タッチセンサ部15aに対するタッチとみなして処理を行う(S1,S2)。第1配線部17aに対するタッチがセンサ閾値を満足したなら、マイコン7は、第2タッチセンサ部19aの静電容量の計測を行う(S5)。このとき、タッチ配線部31aに対するタッチに基づく静電容量の増加を第2タッチセンサ部19aに対するタッチとみなし、第1配線部17aに対するタッチ操作を無効とする(S15)。以上により、第1配線部17aに対するタッチ操作が無効となり、その結果、スイッチ装置1の信頼性が向上する。
【0029】
(本実施形態の第1変形例)
図5に示すパネルスイッチは、
図3に示すパネルスイッチ3と基本的に異ならない。両者が異なる点は、タッチ配線部31aの形状のみである。したがって、
図5においては、
図3において使用する部材番号と同じ部材番号を使用するとともに、説明はタッチ配線部31aについてだけ行うことにする。
【0030】
図5に示すタッチ配線部31aは、第1配線部17aと並行に配されている点は、
図3に示す第1配線部17aと同じである。第1配線部17aは、ほぼ直角に折れる屈曲部を有しており、タッチ配線部31aも同様な屈曲部を有している。ここで、一端が第2配線部19aにのみ接続されたタッチ配線部の他端(開放端31at)は、第1タッチセンサ部15aの近傍に配されている点に、第1変形例の特徴がある。開放端31atが第1タッチセンサ部15aの近傍に配されていることから、第1配線部17aのほとんどの部分がタッチ配線部19aに付き添われている。したがって、ほとんどの部位において、第1配線部17aがタッチ配線部31aから孤立していない。このため、第1配線部31aに対する誤ったタッチ操作のほとんどもしくは全部が無効にされる。このことは、スイッチ装置の用途やタッチセンサ部の個数・形状等にもよるが、スイッチ装置1の誤操作防止における信頼性を高めることに貢献する。
【0031】
(本実施形態の第2変形例)
図6において、符号51aは、第1タッチセンサ部を示す。同じく符号51bは、第1タッチセンサ部51aに隣接する第2タッチセンサ部を示す。第1タッチセンサ部51aに接続された第1配線部53aには、第2配線部53bの屈曲部から枝分かれしたタッチ配線部55aが並行して配されている。符号61a、61bは、それぞれ前掲したマイコン7と同じ働きを担うワンチップのマイクロコンピュータ(マイコン)を示す。
【0032】
図6には、上記した第1タッチセンサ部51aおよび第2タッチセンサ部51b以外に、15個(合計17個)のタッチセンサ部51c〜51s(アルファベット順は連続していない)が設けられ、これらに対応するタッチ配線部55a〜55l(アルファベット順は連続していない)が設けられている。このようにタッチセンサ部51cから始まる他のタッチセンサ部において、互いに隣接する配線部間に、第1配線部53aと第2配線部53bおよびタッチ配線部55aとの間の構造的・電気的関係と同じ構造的・電気的関係が構築されている。すなわち、配線部を複線化するように、タッチ配線部を設けることが好ましい。複雑化することによって、ある配線部に指でタッチしたとき、不可避的に他の配線部にもタッチする可能性(当該タッチを無効とする可能性)をより高め、これが、スイッチ装置全体の信頼性をさらに向上させるからである。
【0033】
また、
図6において、配線部が複線(たとえば、配線部53dと配線部53e)になっている部分に対してさらにタッチ配線部(たとえば、タッチ配線部55c)を配している箇所があるが、これは、隣接するタッチセンサ部に至る配線部の部位(上記例における、配線部53dのうちタッチセンサ部51eとタッチセンサ部51dとの間の部位)の単線化(隣接する配線部がなく単独の状態)を防止するために、隣接するタッチセンサ部(上記例におけるタッチセンサ部51d)の近傍まで延びるタッチ配線部を設けている。すなわち、上記例における配線部53dと配線部53eは、図面右端のマイコン61aからタッチセンサ51eまでは複線化されているが、タッチセンサ51eを過ぎると単線化してしまう。このような単線化をなくす構成にすることによって、誤動作のない信頼性の高いタッチパネルを供給することができる。なお、
図6における各タッチ配線部を各配線部よりも太く表示したが、これは、両者を区別するためのみのためであって、必ずしもタッチ配線部が太くなくてはならないということではない。
【0034】
なお、上記したように第2変形例における第1タッチセンサ部51aおよび第2タッチセンサ部51b以外のタッチセンサ部の数を15個としたが、これに限る必要はなく、スイッチ装置の形態、用途、機能等に合わせてn(nは、自然数)個とすることを妨げない。
【符号の説明】
【0035】
1 スイッチ装置
3 パネルスイッチ
5 制御基板
7 マイコン
9 コネクタ
11 誘電シート
11a タッチ操作面
11b 裏側面
13 電極シート
15a 第1タッチセンサ部
15b 第1タッチセンサ部
17a 第1配線部
17b 第1配線部
19a 第2タッチセンサ部
19b 第2タッチセンサ部
21a 第2配線部
21b 第2配線部
23 GND配線部
31a タッチ配線部
31at 開放端
31b タッチ配線部
31bt 開放端
51a 第1タッチセンサ部
51b 第2タッチセンサ部
51c〜s 第3〜sタッチセンサ部
53a 第1配線部
53b 第2配線部
53c〜s 第3〜s配線部
55a〜l タッチ配線部
61a,61b マイコン