(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記扉体の上段部の略全面に、正面視で略U字状の開口部が形成され、この開口部に前記フラップゲートが嵌め合わされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の防潮水門。
【背景技術】
【0002】
従来、
図12に示すように、河川1に設置されて、扉体2の上動時Uに水路3を開くとともに、扉体2の下動時Dに水路3を閉じるように開閉制御される防潮水門4がある(特許文献1参照)。
【0003】
この防潮水門は、津波や高潮の対策として設置されているもので、
図12(a)のように、常時は扉体2を上動させて水路3を開いている。そして、
図12(b)のように、津波や高潮が押し寄せる直前に扉体2を下動させて水路3を閉じることで、津波や高潮が河川の上流側に遡上するのを阻止するものである。
【0004】
ところで、扉体2を越波して河川の上流側に遡上した津波や高潮の押し波は、やがて引き波として河川の下流側に戻ってくることから、引き波を海側に排除するために、扉体2を上動させて水路3を開いておく必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特に地震に起因する津波では、地震に伴う停電等で防潮水門4の扉体2を開制御できない場合が生じる。また、作業員が防潮水門4の扉体2を開制御する作業ができない場合も生じる。
【0007】
このような場合、引き波やがれき等の浮遊物が防潮水門4の上流側に溜まるので、洪水被害や交通網の麻痺のような弊害が発生するおそれがある。
【0008】
また、高潮が押し寄せる直前に扉体2を下動させて水路3を閉じた後、河川の上流側の大雨による出水が発生した場合も、出水や流木等の浮遊物が防潮水門4の上流側に溜まるおそれもある。
【0009】
そのため、防潮水門4の扉体2を開制御できない場合であっても、引き波や出水を海側に排除できる、いわゆる内水排除の対策が必要になる。
【0010】
なお、想定外の高さの津波に対応するために、防潮水門4の高さ(ゲート高さ)を高くすることが考えられるが、景観の阻害や不経済の問題がある。仮に、ゲートを高くした場合でも、防波堤等から越波した津波が河川を通って防潮水門4の設置場所に引き波として集まるため、いずれにしても、防潮水門4には、引き波や出水、すなわち内水排除の対策が不可欠となる。
【0011】
本発明は、前記問題を解消するためになされたもので、扉体を開制御できない場合であっても、内水排除が確実に行えるようにした防潮水門を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は、河川に設置されて、扉体の上動時に水路を開くとともに、扉体の下動時に水路を閉じるように開閉制御される防潮水門において、前記扉体は、上段部と下段部とに区分けされ、前記上段部は、フラップゲートで構成され、このフラップゲートは、前記下段部の上部に下端部がヒンジ結合されて、河川方向に起き上がる起立・全閉位置と、海側方向に倒れる倒伏・全開位置とに揺動自在に支持され、前記フラップゲートにカウンタウェイトが連結され、このカウンタウェイトにより、フラップゲートは、常時は起立・全閉位置に保持されるとともに、河川側からの水圧が作用している間は、倒伏・開き方向に揺動するようにバランスされていることを特徴とする防潮水門を提供するものである。
【0013】
本発明によれば、扉体の上段部は、扉体の下段部にヒンジ結合したフラップゲートで構成して、河川方向に起き上がる起立・全閉位置と、海側方向に倒れる倒伏・全開位置とに揺動自在に支持する。そして、フラップゲートにカウンタウェイトを連結し、カウンタウェイトにより、フラップゲートを、常時は起立・全閉位置に保持するとともに、河川側からの水圧が作用している間は、倒伏・開き方向に揺動するようにバランスさせている。
【0014】
したがって、防潮水門の扉体を開制御できない場合であっても、河川側からの水圧によって、フラップゲートが自動的に無動力で倒伏・開き方向に揺動することで、扉体の上段部に開口部が形成されるようになる。
【0015】
これにより、引き波(出水)や浮遊物は、扉体の上段部の開口部を通過して海側に確実に排除されるようになる(内水排除)。この結果、引き波等が防潮水門の上流側に溜まりにくくなって、洪水被害や交通網の麻痺のような弊害が発生するおそれが少なくなる。
【0016】
また、扉体の上段部をフラップゲートで構成できるから、扉体の上段部の開口部を大きくすることが可能になるので、引き波等を開口部からスムーズに海側に排除することができる。
【0017】
さらに、扉体の上段部をフラップゲートで構成するだけであるから、既設の水門であっても、扉体を交換するだけで簡単に適用することができる。
【0018】
前記扉体の下段部の海側の面に、上下揺動自在に支持されたレバー部材が設けられ、前記カウンタウェイトは、前記レバー部材の一端部に取付けられ、このレバー部材の他端部と前記フラップゲートとがリンク部材で連結されて、前記フラップゲートに河川側から水圧が作用している間は、前記フラップゲートの倒伏・開き方向の揺動でリンク部材を介してレバー部材がカウンタウェイトを持ち上げながら略横向き方向に揺動され、前記フラップゲートに河川側から水圧が作用しなくなったときは、前記カウンタウェイトの重量で前記レバー部材が略下向き方向に揺動されて、前記リンク部材を介してフラップゲートが起立・全閉位置に揺動されるようになる構成とすることができる。
【0019】
この構成によれば、カウンタウェイトとレバー部材は、扉体の下段部の海側の面を利用することで、扉体の下段部に合理的に設けることができる。また、カウンタウェイトのレバー部材は、リンク部材を介して扉体に連結しているから、レバー部材とリンク部材との簡単な機械的連結構造となるので、作動の信頼性が高まるとともに、製造・据付けのコストも安価にできる。さらに、フラップゲートが起立・全閉位置に揺動されているときは、レバー部材は略下向き方向に揺動されているから、カウンタウェイトのモーメントが小さくなる。したがって、河川側からの水位若しくは水圧が低くても、フラップゲートが倒伏・開き方向にスムーズに揺動するようになる。
【0020】
前記扉体の海側の面に、前記フラップゲートが起立・全閉位置では引き下げられ、倒伏・全開位置では引き上げられるロープ部材が設けられ、前記カウンタウェイトは、前記ロープ部材の下端部側に複数個に分割されて取付けられ、各分割カウンタウェイトは、前記フラップゲートが倒伏・開き方向に揺動するときは、前記ロープ部材で上から順に持ち上げられ、前記フラップゲートが起立・閉じ方向に揺動するときには、下から順に水路の底面に積み上げられるようになっており、前記フラップゲートに河川側から水圧が作用している間は、前記フラップゲートの倒伏・開き方向の揺動でロープ部材を介して分割カウンタウェイトが上から順に持ち上げられ、前記フラップゲートに河川側から水圧が作用しなくなったときは、前記分割カウンタウェイトの重量で、前記ロープ部材を介してフラップゲートが起立・全閉位置に揺動されるようになる構成とすることができる。
【0021】
この構成によれば、カウンタウェイトとロープ部材は、扉体の海側の面を利用することで、扉体に合理的に設けることができる。また、カウンタウェイトは、ロープ部材を介して扉体に連結しているから、簡単な機械的連結構造となるので、作動の信頼性が高まるとともに、製造・据付けのコストも安価にできる。さらに、フラップゲートが起立・全閉位置に揺動されているときは、分割カウンタウェイトの内、上の分割カウンタウェイトだけでフラップゲートを起立・全閉位置に揺動させるように設定すれば、カウンタウェイトが軽くなる。したがって、河川側からの水位若しくは水圧が低くても、フラップゲートが倒伏・開き方向にスムーズに揺動するようになる。
【0022】
前記扉体の上段部の略全面に、正面視で略U字状の開口部が形成され、この開口部に前記フラップゲートが嵌め合わされている構成とすることができる。
【0023】
この構成によれば、扉体の上段部のほぼ全面をフラップゲートで構成できるから、扉体の上段部の開口部を大きく確保できるので、引き波等を開口部から、よりスムーズに海側に排除することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、防潮水門の扉体を開制御できない場合であっても、内水排除が確実に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態の防潮水門であり、(a)は水路を開いた扉体の上動時の斜視図、(b)は水路を閉じた扉体の下動時の斜視図である。
【
図2】
図1の防潮水門であり、水路を閉じた扉体の下動時にフラップゲートを開いた斜視図である。
【
図3】扉体であり、(a)は側面図、(b)は背面図である。
【
図4】レバー式カウンタウェイトの実施形態であり、(a)はフラップゲートが起立・全閉位置の側面図、(b)はその背面図である。
【
図5】レバー式カウンタウェイトの実施形態であり、(a)はフラップゲートが45度半開位置の側面図、(b)はその背面図である。
【
図6】レバー式カウンタウェイトの実施形態であり、(a)はフラップゲートが倒伏・全開位置の側面図、(b)はその平面図である。
【
図7】ロープ式カウンタウェイトの実施形態であり、(a)はフラップゲートが起立・全閉位置の側面図、(b)はその背面図である。
【
図8】ロープ式カウンタウェイトの実施形態であり、(a)はフラップゲートが80度半開位置の側面図、(b)はその背面図である。
【
図9】ロープ式カウンタウェイトの実施形態であり、(a)はフラップゲートが60度半開位置の側面図、(b)はその背面図である。
【
図10】ロープ式カウンタウェイトの実施形態であり、(a)はフラップゲートが倒伏・全開位置の側面図、(b)はその平面図である。
【
図11】ロープ式カウンタウェイトにおけるカウンタウェイトと開度との関係を示すグラフである。
【
図12】防潮水門であり、(a)は扉体開時の正面図、(b)は扉体閉時の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、背景技術と同一構成・作用の箇所は、同一番号を付して詳細な説明を省略する。
【0027】
図1は防潮水門10であり、(a)は水路3を開いた扉体11の上動時Uの斜視図、(b)は水路3を閉じた扉体11の下動時Dの斜視図である。
図2は防潮水門10であり、水路3を閉じた扉体11の下動時Dにフラップゲート12を開いた斜視図である。
図3は扉体11であり、(a)は側面図、(b)は背面図である。
【0028】
図1および
図2のように、防潮水門10は、河川1に設置されて、扉体11の上動時Uに水路3を開くとともに〔
図1(a)参照〕、扉体11の下動時Dに水路3を閉じるように開閉制御される〔
図1(b)参照〕。
【0029】
扉体11は、ほぼ均等な高さで上段部11Aと下段部11Bとに区分けされている。この扉体11の上段部11Aの略全面には、
図3のように、正面視で略U字状の開口部11aが形成され、この開口部11aにフラップゲート12が嵌め合わされている。
【0030】
このフラップゲート12は、下段部11Bの上部に下端部が複数のヒンジ金具13で結合されて、扉体11の下動時Dに、河川方向に略垂直に起き上がる起立・全閉位置Cと、海側方向に略90度で倒れる倒伏・全開位置Oとに揺動自在に支持されている。
【0031】
図3のように、扉体11の上段部11Aと下段部11Bの両側面には、複数のローラ15がそれぞれ取付けられ、各ローラ15が防潮水門10の内側に形成されたガイド溝(不図示)でガイドされることで、扉体11が上下動するようになっている(ローラゲート)。なお、防潮水門10は、ローラゲートに限るものではなく、スライドゲートのような引き上げ式ゲートでも適用可能である。
【0032】
扉体11の上段部11Aの上部両側にはシーブ(溝車)16がそれぞれ取付けられ、各シーブ16に防潮水門10の上部に設置された電動ドラムのロープ(いずれも不図示)が掛け回されて、電動ドラムによるロープの巻き取り・巻き戻し操作によって、扉体11が電動で上下動するようになっている。
【0033】
図4〜
図6は、フラップゲート12を起立・全閉位置Cに保持するレバー式カウンタウェイト18の実施形態であり、
図4(a)はフラップゲート12が起立・全閉位置Cの側面図、(b)はその背面図である。
図5(a)はフラップゲート12が45度半開位置の側面図、(b)はその背面図である。
図6(a)はフラップゲート12が倒伏・全開位置Oの側面図、(b)はその平面図である。
【0034】
図4のように、扉体11の下段部11Bの海側の面の両側には、軸部材20で上下揺動自在に支持されたく字状のレバー部材17がそれぞれ設けられている。
【0035】
カウンタウェイト18は、各レバー部材17の一端部17aに取付けられ、このレバー部材17の他端部17bとフラップゲート12の背面のブラケット12bとがリンク部材19で連結されている。
【0036】
そして、フラップゲート12が
図4の起立・全閉位置Cでは、海側からの津波や高潮による押し波aは、扉体11全体で止められて、河川の上流側に遡上するのが阻止されるようになる。
【0037】
一方、
図5及び
図6のように、フラップゲート12に河川側からの引き波(出水を含む。以下単に引き波と称する。)bの水圧が作用すると、フラップゲート12は倒伏・開き方向に揺動する。このとき、リンク部材19を介してレバー部材17がカウンタウェイト18を持ち上げながら略横向き方向に揺動されるようになる。
【0038】
その後、フラップゲート12に河川側からの引き波bの水圧が作用しなくなったときは、
図4のように、カウンタウェイト18の重量でレバー部材17が略下向き方向に揺動されて、リンク部材19を介してフラップゲート12が起立・全閉位置Cに揺動されるようになる。
【0039】
すなわち、カウンタウェイト18は、フラップゲート12を常時は起立・全閉位置Cに保持するとともに、河川側からの引き波bの水圧が作用している間は、フラップゲート12を倒伏・開き方向に揺動させるようにバランスさせるものである。
【0040】
前記のように防潮水門10を構成すれば、扉体11の上段部11Aは、扉体11の下段部11Bにヒンジ結合したフラップゲート12で構成して、河川方向に起き上がる起立・全閉位置Cと、海側方向に倒れる倒伏・全開位置Oとに揺動自在に支持する。
【0041】
そして、フラップゲート12にカウンタウェイト18を連結し、カウンタウェイト18により、フラップゲート12を、常時は起立・全閉位置Cに保持するとともに、河川側からの引き波bの水圧が作用している間は、倒伏・開き方向に揺動するようにバランスさせている。
【0042】
したがって、防潮水門10の扉体11を開制御できない場合であっても、引き波bの水圧によって、フラップゲート12が自動的に無動力で倒伏・開き方向に揺動することで、扉体11の上段部11Aに開口部11aが形成されるようになる。
【0043】
これにより、引き波bや浮遊物は、扉体11の上段部11Aの開口部11aを通過して海側に確実に排除されるようになる(内水排除)。この結果、引き波bが防潮水門10の上流側に溜まりにくくなって、洪水被害や交通網の麻痺のような弊害が発生するおそれが少なくなる。
【0044】
また、扉体11の上段部11Aをフラップゲート12で構成できるから、扉体11の上段部11Aの開口部11aを大きくすることが可能になるので、引き波bや浮遊物を開口部11aからスムーズに海側に排除することができる。
【0045】
さらに、扉体11の上段部11Aをフラップゲート12で構成するだけであるから、既設の水門であっても、扉体11を交換するだけで簡単に適用することができる。
【0046】
また、レバー式カウンタウェイト18の場合、カウンタウェイト18とレバー部材17は、扉体11の下段部11Bの海側の面を利用することで、扉体11の下段部11Bに合理的に設けることができる。さらに、カウンタウェイト18のレバー部材17は、リンク部材19を介して扉体11に連結しているから、レバー部材17とリンク部材19との簡単な機械的連結構造となるので、作動の信頼性が高まるとともに、製造・据付けのコストも安価にできる。
【0047】
さらにまた、フラップゲート12が起立・全閉位置Cに揺動されているときは、レバー部材17は略下向き方向に揺動されているから、カウンタウェイト18のモーメントが小さくなる。したがって、河川側からの引き波bの水位若しくは水圧が低くても、フラップゲート12が倒伏・開き方向にスムーズに揺動するようになる。
【0048】
また、扉体11の上段部11Aのほぼ全面をフラップゲート12で構成できるから、扉体11の上段部11Aの開口部11aを大きく確保できるので、引き波bや浮遊物を開口部11aから、よりスムーズに海側に排除することができる。
【0049】
図7〜
図11は、フラップゲート12を起立・全閉位置Cに保持するロープ式カウンタウェイト18(A〜C)の実施形態であり、
図7(a)はフラップゲート12が起立・全閉位置Cの側面図、(b)はその背面図である。
図8(a)はフラップゲート12が80度半開位置の側面図、(b)はその背面図である。
図9(a)はフラップゲート12が60度半開位置の側面図、(b)はその背面図である。
図10(a)はフラップゲート12が倒伏・全開位置Oの側面図、(b)はその平面図である。
図11はカウンタウェイト18(A〜C)と開度との関係を示すグラフである。
【0050】
図7のように、扉体11の海側の面の両側には、フラップゲート12が起立・全閉位置Cでは引き下げられ、倒伏・全開位置Oでは引き上げられるロープ部材21がそれぞれ設けられている。
【0051】
具体的には、フラップゲート12の外側面の上部に、背面方向に突出するブラケット22が取付けられている。また、上段部11Aの開口部11aの内側面の上部に、起立・全閉位置Cのフラップゲート12の外側面と対向して、上転向シーブ23Aが取付けられ、下段部11Bの上部に、背面方向に突出する下転向シーブ23Bが取付けられている。
【0052】
ロープ部材21は、上端部がブラケット22に連結されて、上転向シーブ23Aと下転向シーブ23Bとに掛け回され、カウンタウェイト18のシーブ24に掛け回されてUターンし、下端部が下段部11Bの上部に連結されている。
【0053】
カウンタウェイト18は、複数個(本例では3個)に分割されて、例えば、上部の分割カウンタウェイト18Aは総重量の30%、中部の分割カウンタウェイト18Bは総重量の30%、下部の分割カウンタウェイト18Cは総重量の40%に設定している。
【0054】
カウンタウェイト18のシーブ24は、上部の分割カウンタウェイト18Aに取付けられていて、各分割カウンタウェイト18A〜18Cは、連結具25で順次に持ち上げ可能、かつ積み上げ可能に連結されている。
【0055】
そして、各分割カウンタウェイト18A〜18Cは、フラップゲート12が倒伏・開き方向に揺動するときは、ロープ部材21で上から順に持ち上げられ、フラップゲート12が起立・閉じ方向に揺動するときには、下から順に水路3の底面に積み上げられるようになっている。
【0056】
本例の場合、フラップゲート12が起立・全閉位置Cに揺動されているときは、分割カウンタウェイト18A〜18Cの内、上部の分割カウンタウェイト18Aだけでフラップゲート12を起立・全閉位置Cに揺動させるように設定している。
【0057】
すなわち、
図11のグラフを参照すれば、
図7の起立・90度全閉位置Cと
図8の80度半開位置との間は、分割カウンタウェイト18Aの重量(30%)がロープ部材21に作用するように設定している。また、
図8の80度半開位置と
図9の60度半開位置との間は、分割カウンタウェイト18A,18Bの重量(計60%)がロープ部材21に作用するように設定している。さらに、
図9の60度半開位置と
図10の倒伏・全開位置Oとの間は、分割カウンタウェイト18A,18B,18Cの重量(計100%)がロープ部材21に作用するように設定している。
【0058】
そして、フラップゲート12が
図7の起立・全閉位置Cでは、海側からの津波や高潮による押し波aは、扉体11全体で止められて、河川の上流側に遡上するのが阻止されるようになる。
【0059】
一方、
図8、
図9および
図10のように、フラップゲート12に河川側からの引き波bの水圧が作用すると、フラップゲート12は倒伏・開き方向に揺動する。このとき、ロープ部材21が引き上げられて、各分割カウンタウェイト18A〜18Cは、ロープ部材21で上から順に持ち上げられるようになる。
【0060】
その後、フラップゲート12に河川側からの引き波bの水圧が作用しなくなったときは、
図7のように、各分割カウンタウェイト18A〜18Cの重量でロープ部材21が引き下げられて、各分割カウンタウェイト18A〜18Cは、下から順に水路3の底面に積み上げられるようになる。
【0061】
すなわち、カウンタウェイト18A〜18Cは、フラップゲート12を常時は起立・全閉位置Cに保持するとともに、河川側からの引き波bの水圧が作用している間は、フラップゲート12を倒伏・開き方向に揺動させるようにバランスさせるものである。
【0062】
前記のように防潮水門10を構成すれば、前述のレバー式カウンタウェイト18と同様の作用効果に加えて、カウンタウェイト18A〜18Cとロープ部材21は、扉体11の海側の面を利用することで、扉体11に合理的に設けることができる。
【0063】
また、カウンタウェイト18A〜18Cは、ロープ部材21を介して扉体11に連結しているから、簡単な機械的連結構造となるので、作動の信頼性が高まるとともに、製造・据付けのコストも安価にできる。
【0064】
さらに、フラップゲート12が起立・全閉位置Cに揺動されているときは、分割カウンタウェイト18A〜18Cの内、上の分割カウンタウェイト18Aだけでフラップゲート12を起立・全閉位置に揺動させるように設定すれば、カウンタウェイト18Aが軽くなる。したがって、河川側からの引き波bの水位若しくは水圧が低くても、フラップゲート12が倒伏・開き方向にスムーズに揺動するようになる。