特許第5988496号(P5988496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988496
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】旋盤用の軸受パッド
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/03 20060101AFI20160825BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20160825BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20160825BHJP
   B23B 19/02 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   F16C17/03
   F16C33/10 Z
   F16C17/02 A
   B23B19/02 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-28808(P2013-28808)
(22)【出願日】2013年2月18日
(65)【公開番号】特開2014-156915(P2014-156915A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】早稲塚 孝
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−186000(JP,A)
【文献】 実開平06−035641(JP,U)
【文献】 特公昭40−026673(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/03
B23B 19/02
F16C 17/02
F16C 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋盤用の軸受パッドにおいて、
加工対象物を回転可能に支持する平坦な軸受面と、
前記軸受面に開口した給油口と、
前記給油口と接続するように前記軸受面に形成され、前記加工対象物の回転方向に対して斜めに延在して互いに交差する少なくとも一対の潤滑溝と、を含むことを特徴とする旋盤用の軸受パッド。
【請求項2】
前記一対の潤滑溝の各々は、前記軸受面の周縁端には連通していないことを特徴とする請求項1に記載の旋盤用の軸受パッド。
【請求項3】
前記一対の潤滑溝の各々は、前記軸受面の中心点に対して点対称に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の旋盤用の軸受パッド。
【請求項4】
前記一対の潤滑溝の各々は、前記加工対象物の回転方向に対して、それぞれ45度以上90度未満の範囲で傾いて延在していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の旋盤用の軸受パッド。
【請求項5】
前記軸受面は、前記加工対象物から作用する荷重によって前記加工対象物との接触面が変形する軟質材料によって形成されており、
前記給油口は、前記加工対象物と前記軸受面との接触範囲内に位置し、
前記一対の潤滑溝の各々は、少なくともその一部が前記接触範囲の外側にまで延在していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の旋盤用の軸受パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は旋盤用の軸受パッドに関し、詳しくは、動圧式の大型旋盤用の軸受パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
タービンロータなどの大型旋盤では、ロータの一端をチャックで固定するとともに、該ロータを軸受パッドで回転可能に支持し、回転するロータにバイト(切削工具)を押し当てることでロータを切削する。
【0003】
軸受パッドには、軸受面に保持されている加圧された潤滑油によって加工対象物を支持する静圧式の軸受パッドと、加工対象物と軸受面との相対すべり運動によって潤滑油膜に圧力(動圧)を生じさせ、これによりロータを支持する動圧式の軸受パッドがある。
例えば、特許文献1には、ロータを支持する軸受に静圧パッドを用いたロール旋盤装置に関する発明が開示されている。
【0004】
静圧式の軸受パッドでは、潤滑油を保持するためのポケット部が軸受面に形成されている。このポケット部に保持されている潤滑油がロータとの間から漏れ出ないようにする目的で、静圧式の軸受パッドは、ロータの外周形状に沿った形状に形成される。
これに対して動圧式の軸受パッドでは、潤滑油膜に動圧を発生させるために、ロータと軸受面との隙間をくさび形などの非平行な形状にする必要がある。このため、その軸受面は一般に平坦に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−331068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した静圧式の軸受パッドは、冷却性に優れ、高速回転での旋盤加工が可能であるとの利点を有するが、ロータの外周形状に沿った形状の軸受パッドであるがため、加工対象物の径毎に軸受パッドを準備する必要があり、汎用性に劣るとの欠点がある。一方、上述した動圧式の軸受パッドは、その軸受面が平坦に形成されているため、加工対象物の径に関わらず使用することができるため、汎用性に優れている。
【0007】
しかしながら、上述した動圧式の軸受パッドは、加工対象物と軸受面との間に潤滑油を行き渡らせるのが難しく、静圧式の軸受パッドに比べて冷却性に劣るとの課題があった。
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述したような従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、冷却性能に優れる動圧式の旋盤用の軸受パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態にかかる旋盤用の軸受パッドは、
加工対象物を回転可能に支持する平坦な軸受面と、
前記軸受面に開口した給油口と、
前記給油口と接続するように前記軸受面に形成され、前記加工対象物の回転方向に対して斜めに延在して互いに交差する少なくとも一対の潤滑溝と、を含むことを特徴とする。
【0010】
上記軸受パッドによれば、互いに交差する少なくとも一対の潤滑溝が加工対象物の回転方向に対して斜めに延在しており、給油口から潤滑溝に供給された潤滑油が軸受面に広く行き渡るため、軸受パッドの冷却性に優れる。
【0011】
幾つかの実施形態では、前記一対の潤滑溝の各々は、前記軸受面の周縁端には連通していない。すなわち、潤滑溝の各々は軸受面の周縁端の手前までしか延在しておらず、潤滑溝の端部と軸受面の周縁端とは離間している。
このような構成によれば、潤滑溝を流れる潤滑油が、軸受面の周縁端から軸受パッドの側方に漏れ出ることを防止でき、軸受パッドの冷却性能を高めることができる。
【0012】
幾つかの実施形態では、前記一対の潤滑溝の各々は、前記軸受面の中心点に対して点対称に形成されている。
大型旋盤では、加工対象物は一方向だけでなく両方向に回転する。したがって、一対の潤滑溝を軸受面の中心点に対して点対称となるように形成することで、加工対象物がいずれの方向に回転する場合においても、加工対象物と軸受面との間に同じ様な潤滑油膜を形成することができる。
【0013】
幾つかの実施形態では、前記一対の潤滑溝の各々は、前記加工対象物の回転方向に対して、それぞれ45度以上90度未満の範囲で傾いて延在している。
このように、上述した一対の潤滑溝の各々が、加工対象物の回転方向に対して、それぞれ45度以上90度未満の範囲で傾いて延在していれば、給油口から潤滑溝に供給された潤滑油が軸受面の全体に行き渡らせることができるため、軸受パッドの冷却性を一層向上させることができる。
【0014】
幾つかの実施形態では、前記軸受面は、前記加工対象物から作用する荷重によって前記加工対象物との接触面が変形する軟質材料によって形成されており、前記給油口は、前記加工対象物と前記軸受面との接触範囲内に位置し、前記一対の潤滑溝の各々は、少なくともその一部が前記接触範囲の外側にまで延在している。
このような構成によれば、加工対象物と軸受面との接触範囲内に給油口が位置するため、供給される潤滑油の大半が給油口から噴出せずに潤滑溝を流れる。このため、潤滑溝を介して、潤滑油を効率よく軸受面に広く行き渡らせることができる。
また、一対の潤滑溝の各々は、少なくともその一部が接触範囲の外側にまで延在し、この接触範囲外の部分から潤滑油が漏れ出るようになっている。このため、軸受面に多量の潤滑油が供給され、漏れ出た潤滑油が加工対象物と軸受面との間に行き渡ることで、軸受パッドの冷却性能が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、互いに交差する一対の潤滑溝が加工対象物の回転方向に対して斜めに延在しており、給油口から潤滑溝に供給された潤滑油が軸受面に広く行き渡るため、冷却性に優れる動圧式の大型旋盤用の軸受パッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態にかかるロール旋盤機を示す概略構成図である。
図2】一実施形態にかかるロール旋盤機において、その軸受パッドの配置を示す概略断面図である。
図3】一実施形態にかかる軸受パッドの軸受面を示す平面図である。
図4】参考例にかかる軸受パッドの軸受面を示す平面図である。
図5】一変形例にかかる軸受パッドの軸受面を示す平面図である。
図6】一変形例にかかる軸受パッドの軸受面を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0018】
図1は、一実施形態にかかるロール旋盤機を示す概略構成図である。
図1に示すように、ロール旋盤機1は、加工対象物であるロータWの一端を固定するチャックC、ロータWを旋削するためのバイトB、及び本発明の一実施形態にかかる軸受パッド10、を備えている。そして、チャックCによって固定されているロータWを軸受パッド10によって回転可能に支持し、回転するロータWにバイトBを押し当てることで、ロータWの切削が行われる。
【0019】
図2は、一実施形態にかかるロール旋盤機において、その軸受パッドの配置を示す概略断面図である。
図2に示す例示的な実施形態において、ロール旋盤機1は、3つの軸受パッド10A,10B,10Cによって回転可能に支持される。これら3つの軸受パッド10A,10B,10Cの各々は、加工対象のロータWを回転可能に支持する平坦な軸受面10aをそれぞれ有している。中央の軸受パッド10Aは、ロータWの回転中心Oの真下に配置されており、ロータWを鉛直方向に支持している。軸受パッド10Bは、ロータWに対してバイトBの反対側に配置されており、バイトBが押し付けられることによってロータWに作用する水平荷重を支持している。軸受パッド10Cは、ロータWに対してバイトBと同じ側において、バイトBの下方に位置するように配置されている。そして、軸受パッド10Bの反力に対して、ロータWを支持している。
なお、図中の矢印RはロータWの回転方向を示している。本実施形態では、ロータWは一方向だけでなく両方向に回転する。
【0020】
また、図1および図2に示すように、軸受パッド10および軸受パッド10が載置されている支持台12には、給油路14が形成されている。そして、該給油路14を介して、ロータWと軸受面10aとの間に潤滑油が供給されるようになっている。また、図1に示すように、給油路14はオイルクーラ16と接続されており、オイルクーラ16によって冷却された潤滑油が給油路14によって供給されるようになっている。
【0021】
図3は、一実施形態にかかる軸受パッドの軸受面を示す平面図である。
図3に示す例示的な実施形態の軸受パッド10では、平坦な軸受面10aの中心点Oの位置に、上述した給油路14と連通する給油口24が開口している。また、軸受面10aには、ロータWの回転方向Rに対して斜めに延在して互いに交差する一対の直線状の潤滑溝21,22が形成されている。これら一対の潤滑溝21,22は、中心点Oの位置において互いに直交に交差し、中心点Oの位置に開口している給油口24にそれぞれ連通している。
【0022】
また、図3に示すように、一対の潤滑溝21,22の各々は、軸受面10aの周縁端26には連通していない。すなわち、潤滑溝21,22の各々は、軸受面10aの周縁端26の手前までしか延在しておらず、潤滑溝21,22の端部21a,21b,22a,22bと軸受面10aの周縁端26とは離間している。
【0023】
また、図3に示すように、一対の潤滑溝21,22の各々は、軸受面10aの中心点Oに対して点対称に形成されている。すなわち、潤滑溝21,22の各々は、軸受面10aの中心点Oを対称点として、180度回転した場合に不変である。
また、潤滑溝21,22の溝幅、溝深さ、及び断面形状等は、特に限定されるものではなく、軸受パッド10の形状や材質等に応じて適宜変更可能である。
【0024】
また、軸受面10aは軟質材料によって形成されている。軟質材料としては、例えばホワイトメタル、アルミニウム−スズ合金、銅−鉛合金、青銅などの軟質金属、並びにPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PEEK(ポリエテルエテルケトン)、PI(ポリイミド)などの樹脂系材料が挙げられる。
【0025】
このように、軸受面10aは軟質材料によって形成されているため、軸受面10aは、ロータWから作用する荷重によってロータWとの接触面が変形し、微小な凹みが形成される。このため、ロータWと軸受面10aとが線ではなく面で接触し、図3に示すように接触範囲Sが形成される。
そして、上述した給油口24は、接触範囲S内に位置している。また、上述した一対の潤滑溝21,22の各々は、図3に示すように、少なくともその一部が接触範囲Sの外側にまで延在している。
【0026】
このような軸受パッド10によれば、上述したように、互いに交差する一対の潤滑溝21,22の各々がロータWの回転方向Rに対して斜めに延在しているため、給油口24から潤滑溝21,22に供給された潤滑油が軸受面10aに広く行き渡る。これに対して、例えば図4に示すような、潤滑溝121がロータWの回転方向Rに対して平行に延在し、潤滑溝122がロータWの回転方向Rに対して直交方向に延在する軸受パッド100(参考例)の場合は、潤滑溝122の全体がロータWと軸受面100aとの接触範囲S内にあるため、常にロータWで蓋をされた状態となり、潤滑溝122から潤滑油が供給され難い。また、潤滑溝121から供給される潤滑油は、ロータWと軸受面100aとの間を回転方向に向かって流れるため、供給された潤滑油が軸受面100aに広く行き渡らない。
【0027】
このように、互いに交差する一対の潤滑溝21,22の各々がロータWの回転方向Rに対して斜めに延在していれば、給油口24から潤滑溝21,22に供給された潤滑油が軸受面10aに広く行き渡るため、摺動性が高まることによる摩擦熱の低減効果と、潤滑油自体の冷却効果とが相乗的に発揮される冷却性に優れたロータ旋盤用の軸受パッド10を構成することができる。
【0028】
また上述したように、一対の潤滑溝21,22の各々は、軸受面10aの周縁端26には連通しておらず、潤滑溝21,22を流れる潤滑油が、軸受面10aの周縁端26から軸受パッド10の側方に漏れ出ないようになっている。これにより、潤滑溝21,22に供給された潤滑油が効率的にロータWと軸受面10aとの間に供給され、軸受パッド10の冷却性能を高めることができる。
【0029】
また上述したように、一対の潤滑溝21,22の各々は、軸受面10aの中心点Oに対して点対称に形成されている。ロータ旋盤では、加工対象のロータWは一方向だけでなく両方向に回転せられるが、このような構成によれば、ロータWがいずれの方向に回転する場合においても、ロータWと軸受面10aとの間に同じ様な潤滑油膜を形成することができる。
【0030】
また上述したように、ロータWと軸受面10aとの接触範囲S内に給油口24が位置するため、供給される潤滑油の大半が給油口24から噴出せずに潤滑溝21,22を流れる。このため、潤滑溝21,22を介して、潤滑油を効率よく軸受面10aに広く行き渡らせることができる。
また上述したように、一対の潤滑溝21,22の各々は、少なくともその一部が接触範囲Sの外側にまで延在し、この接触範囲S外の部分から潤滑油が漏れ出るようになっている。このため、軸受面10aに多量の潤滑油を供給することができ、漏れ出た潤滑油がロータWと軸受面10aとの間に行き渡ることで、軸受パッド10の冷却性能が向上する。
【0031】
図5は、一変形例にかかる軸受パッドの軸受面を示す平面図である。図5に示す軸受パッド10は、上述した実施形態と基本的には同様の構成であって、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0032】
上述した実施形態では、一対の潤滑溝21,22は互いに直交に交差していた。すなわち、一対の潤滑溝21,22の各々は、ロータWの回転方向Rに対して、それぞれ45度で傾いて延在していた。しかしながら、本発明の軸受パッド10はこれに限定されない。図5(a)(b)に示すように、潤滑溝21,22の各々はロータWの回転方向Rに対して45度よりも大きいA1,A1´または45度よりも小さいA2,A2´であってもよい。
【0033】
図5(a)(b)に示した両者のうち、図5(a)に示すように、潤滑溝21,22の各々がロータWの回転方向Rに対して45度よりも大きいA1,A1´で傾いて延在している方が、軸受面10aの全体に潤滑油が広く行き渡らせることができる。ここで、A1,A1´の好ましい角度範囲は、45度以上90度未満の範囲である。なお、A1とA1´は、同じ角度でなく、異なる角度であってもよい。
【0034】
図6は、一変形例にかかる軸受パッドの軸受面を示す平面図である
図6(a)に示すように、本発明の一実施形態にかかる軸受パッド10は、回転方向Rに対して斜めに延在して互いに交差する二対の潤滑溝21A,22B、22A,22Bを備えていてもよい。また、一対の潤滑溝21A,22Bに加えて、潤滑溝22Aだけ、または潤滑溝22Bだけを備えていてもよい。また図示しないが、三対の潤滑溝を備えていても良い。要するに、少なくとも一対の潤滑溝を備えていればよい。
【0035】
また、図6(b)に示すように、本発明の一実施形態にかかる軸受パッド10は、回転方向Rに対して斜めに延在して互いに交差する一対の直線状の潤滑溝21a,22bに加えて、これらを接続する潤滑溝23を備えていてもよい。この際、図6(b)に示すように、潤滑溝23の内、回転方向Rと交差する円弧部分23aが接触範囲S外に位置するように構成されていれば、この円弧部分23aから潤滑油が漏れ出すことで、ロータWと軸受面10aとの間に広く潤滑油を行き渡らせることができる。
【0036】
以上のとおり、本発明の少なくとも一実施形態によれば、互いに交差する一対の潤滑溝21,22がロータWの回転方向に対して斜めに延在しており、給油口24から潤滑溝21,22に供給された潤滑油が軸受面10aに広く行き渡るため、冷却性に優れる動圧式のロータ旋盤用の軸受パッド10を提供することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
【0038】
例えば、上述した図2に示すロータ旋盤機1において、ロータWを支持する3つの軸受パッド10A,10B,10Cを、それぞれ異なる態様に構成することもできる。具体的には、中央の軸受パッド10Aは、ロータWの荷重が一番大きく作用するため、軸受面10aの変形を防止するため、他の2つの軸受パッド10B,10Cに比べて、その潤滑溝21,22を小さく(溝深さを浅く又は溝幅を狭く)してもよい。また、潤滑溝21,22の本数を少なくしてもよい。
【0039】
また、上述した実施形態では、潤滑溝21,22は直線状に形成されていたが、潤滑溝21,22の形状はこれに限定されず、例えば波状などの非直線状であってもよい。
【0040】
また、上述した実施形態の軸受面10aを説明する際に用いた「平坦」との用語は、幾何学的な意味で厳密に平坦である状態のみを指すものではなく、軸受面10aがロータWに対して平坦状と見なせる程度に緩やかに湾曲しているものも含む。例えばロータWの半径をR、緩やかに湾曲する軸受面10aの半径をR´とした場合に、R/R´≧10程度であれば、上述した「平坦」に含まれるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の少なくとも一つの実施形態の旋盤用の軸受パッドは、例えばタービンロータなどのロータ旋盤用の軸受パッドとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0042】
1 ロール旋盤機
10 軸受パッド
10a 軸受面
12 支持台
14 給油路
16 オイルクーラ
21,22 潤滑溝
23 潤滑溝
23a 円弧部分
24 給油口
26 周縁端

図1
図2
図3
図4
図5
図6