特許第5988498号(P5988498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988498
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】自動扉
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/649 20150101AFI20160825BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   E05F15/649
   E05B49/00 F
   E05B49/00 R
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-40576(P2013-40576)
(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公開番号】特開2014-169536(P2014-169536A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2014年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】592061599
【氏名又は名称】株式会社近計システム
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(72)【発明者】
【氏名】秦 武
(72)【発明者】
【氏名】山中 龍太
(72)【発明者】
【氏名】泉田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】長谷 和志
(72)【発明者】
【氏名】山崎 亮
【審査官】 多田 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭48−016214(JP,Y1)
【文献】 実開平03−020682(JP,U)
【文献】 特開昭61−266791(JP,A)
【文献】 米国特許第5974737(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00−15/79
E05B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動扉であって、
筐体と、
筐体に支持され、横方向に伸縮する上下一対の屈伸リンク機構と、
各屈伸リンク機構のみによって支持され、横方向に往復移動する扉と、
各屈伸リンク機構を伸縮させる単一の駆動部材と、
を備え、
各屈伸リンク機構は、それぞれ、
筐体に対して揺動可能な基端アームと、
この基端アームの遊端部に対して揺動可能な先端アームと
を備え、
駆動部材は、各屈伸リンク機構の基端アームの双方と連動連結し、各基端アームを互いに逆方向に揺動させ、
各屈伸リンク機構における基端アームと先端アームの屈折姿勢は、互いに反対向きであり、
自動扉は、さらに
基端アームの揺動に連動して、先端アームを基端アームに対して基端アームの揺動方向と逆方向に揺動させ、先端アームの先端部を横方向に往復移動させる屈伸連動機構を
備え、
先端アームの先端部に扉が連結されている自動扉。
【請求項2】
請求項1に記載の自動扉において、
駆動部材は、正逆両方向に回転する縦向きの駆動軸であり、
駆動軸は、各基端アームに一体に連結された回転支軸とそれぞれベベルギヤ機構を介して連動連結されており、
駆動軸は、各基端アームが正逆反対方向に揺動するように各基端アームと連動連結する自動扉。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動扉において、
各先端アームがそれぞれ扉と連結する連結支点を横方向に位置ずれさせている自動扉。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の自動扉において、
屈伸連動機構は、
基端アームの揺動中心と同心に配置され、筐体に固定されている固定ギヤと、
基端アームに対する先端アームの揺動中心と同心に配置され、先端アームと一体に連結されている従動ギヤと、
基端アームに回転自在に支持され、固定ギヤと従動ギヤの間に位置し、固定ギヤおよび従動ギヤの双方と噛み合う中間ギヤと、
を備えている自動扉。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の自動扉において、
通行者および物体を感知する検知エリアが扉に沿った平面である面センサを備えている自動扉。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の自動扉において、
各屈伸リンク機構は、扉を片持ち支持し、扉を浮かせた状態で移動させる自動扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティゲート等に利用される自動扉に関する。
【背景技術】
【0002】
自動扉としては、例えば特許文献1に示されるように、縦軸心周りに回動かつ通路方向に前後移動するよう構成したものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2007/013255号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の自動扉は、単一の円形ギヤを回動させて扉を回動および前後移動させることで、前進移動する通行者(通行物)の背後に回り込むように扉を作動させるので、単一の通行者だけの通行を許容することができる。しかしながら、扉を円滑に作動させるためには高い精度でギヤ駆動を行わせる必要があり、メンテナンスに手数の掛かるものとなっていた。
【0005】
また、扉が複雑に、かつ、大きい領域で移動するために、扉への接近を光学的に検知して扉の開閉制御を行うような場合、作動する扉が検知エリアに入り込んで誤検知の一因になるおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、比較的簡単な構造で、扉を小さい移動領域で円滑に開閉作動させることができるとともに、通行者等の接近を検知するセンサを誤検知のない状態で設置することも容易な自動扉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
(1)すなわち、本発明に係る自動扉は、
筐体と、
筐体に支持され、横方向に伸縮する上下一対の屈伸リンク機構と、
各屈伸リンク機構によって支持され、横方向に往復移動する扉と、
各屈伸リンク機構を伸縮させる単一の駆動部材と、
を備え、
各屈伸リンク機構は、それぞれ、
筐体に対して揺動可能な基端アームと、
この基端アームの遊端部に対して揺動可能な先端アームと
を備え、
駆動部材は、各屈伸リンク機構の基端アームの双方と連動連結し、各基端アームを互いに逆方向に揺動させ、
各リンク機構における基端アームと先端アームの屈折姿勢は、互いに反対向きであり、
自動扉は、さらに
基端アームの揺動に連動して、先端アームを基端アームに対して基端アームの揺動方向と逆方向に揺動させ、先端アームの先端部を横方向に往復移動させる屈伸連動機構を
備え、
先端アームの先端部に扉が連結されている自動扉である。
【0008】
[作用・効果]本発明によれば、筐体は、例えば通路脇に設置される。筐体には上下一対の屈伸リンク機構が装備される。扉は上下の屈伸リンク機構のみによって片持ち支持され、浮いた状態、あるいは、吊られた状態となる。屈伸リンク機構の伸縮により、扉はその扉面内に沿って平行に横移動する。扉の動き自体はスライド移動といった単純な動作であるので、円滑に通路を開閉できる。また、屈伸リンク機構は扉を浮かせた状態で移動させるので、扉を案内または支持するレール等が不要である。よって、扉を静かに開閉できる。
【0009】
また、各屈伸リンク機構も、基端アームと先端アームを屈伸揺動可能に連結した比較的に単純な構造であるので、長期間に亘って故障少なく作動させることができる。
【0010】
上下の屈伸リンク機構が扉を支えるため、扉の重量が両基端アームを下向きに揺動させる力として作用する。ここで、駆動部材は、各基端アームを正逆反対方向に揺動させるように各基端アームと連動連結しているので、両基端アームの下向き揺動力が駆動部材に対して相反する方向に働き、相殺される。この結果、駆動部材に扉の重量に基づく負荷は掛からない。このため、駆動部材を作動させ始めるときの負荷や、駆動部材を作動させているときの負荷は、回動各部の摩擦抵抗程度となり、小さくて済む。よって、扉を一層円滑に移動させることができる。
【0011】
なお、各リンク機構における基端アームと先端アームの屈折姿勢が互いに反対向きであるとともに、基端アームの揺動に連動して、先端アームを基端アームに対して基端アームの揺動方向と逆方向に揺動させる屈伸連動機構を備えているので、駆動部材の回転によって各基端アームを互いに反対方向に回転させると、各リンク機構は同調して伸縮する。
【0012】
また、扉は、横引き開閉するので、扉の移動動域は、扉面を含む平面内に収まる。よって、通行者等の接近を検知する光学式の検知センサを設置しても、開閉作動する扉が検知センサの検知エリアに入り込むことはなく、扉に接近した通行者や通行物のみを誤検知なく検知することが可能となる。
【0013】
(2)上述した発明において、駆動部材は、正逆両方向に回転する縦向きの駆動軸であり、駆動軸は、各基端アームに一体に連結された回転支軸とそれぞれベベルギヤ機構を介して連動連結されていることが好ましい。
【0014】
この構成によると、上下の基端アームを相反する方向に揺動させる駆動部材と屈伸リンク機構との連動構造を、加工および組付けが容易なものとして構成することができる。
【0015】
(3)上述した発明において、各先端アームがそれぞれ扉と連結する連結支点を横方向に位置ずれさせていることが好ましい。
【0016】
屈伸リンク機構が伸縮するとき、各部の機械加工誤差や部材に微細な撓み変形などによって、上下の連結支点が互いに接近あるいは離間させようとする力が働くことがある。ただし、各連結支点は扉にそれぞれ連結されているので、連結支点間の直線距離(以下、適宜に「芯間距離」という)は一定に保持され、これが変動することは禁止されている。本構成では、扉と連結する各連結支点を横方向にずらしているので、上下の連結支点が互いに接近あるいは離間させようとする力が発生すると、この力は偶力として扉に作用して、扉は傾動し、芯間距離が一定に保たれたまま、連結支点の上下方向における間隔が変わる。このように、各連結支点の上下方向の変動が起こっても、扉が傾動することによって変動を許容することができるので、屈伸リンク機構はロック状態に陥ることなく円滑に伸縮作動を継続することができる。
【0017】
(4)上述した発明において、屈伸連動機構は、基端アームの揺動中心と同心に配置され、筐体に固定されている固定ギヤと、基端アームに対する先端アームの揺動中心と同心に配置され、先端アームと一体に連結されている従動ギヤと、基端アームに回転自在に支持され、固定ギヤと従動ギヤの間に位置し、固定ギヤおよび従動ギヤの双方と噛み合う中間ギヤと、を備えていることが好ましい。
【0018】
この構成によると、基端アームが揺動されると、先端アームが基端アームに対して基端アーム揺動方向と逆方向に揺動して、先端アームの先端部を好適に横移動させることができる。
【0019】
さらに、基端アームの揺動中心と先端アームの揺動中心の距離と、先端アームの揺動中心と連結支点の距離とを同一に設定し、従動ギヤのピッチ径を固定ギヤのピッチ径の2分の1に設定し、かつ、基端アームと先端アームとを鉛直線に対して正逆同角度に設定することで、先端アームの揺動に伴う先端アームの揺動中心の上下移動および連結支点の上下移動が相殺され、連結支点が水平に横移動する。
【0020】
(5)上述した発明において、通行者および物体を感知する検知エリアが扉に沿った平面である面センサを備えていることが好ましい。
【0021】
この構成によると、扉は横方向に往復移動するのみであるので、面センサの検知エリアを扉面に沿って近接した領域に設定したり、扉面と略平行な平面に設定することができる。これにより、扉への通行者等の接近や、扉付近の通行者等を感知できる。また、扉が作動しても扉が検知エリアに進入することがないので、面センサは、常に、人または物を確実に検知できる。よって、扉をより安全に作動させることができるとともに、不正な通過についても見逃すことがなく、適切に検知できる。
【発明の効果】
【0022】
このように、本発明によれば、比較的簡単な構造で、扉を小さい移動領域で円滑かつ軽快に開閉作動させることができるとともに、通行者等の接近を検知するセンサを誤検知のない状態で設置することも容易な自動扉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る自動扉の全体斜視図である。
図2】自動扉の一部を切り欠いた正面図である。
図3】自動扉の一部を切り欠いた平面図である。
図4】自動扉の側面図である。
図5】ベース板を省略した開閉構造の正面図である。
図6】開閉構造の斜視図である。
図7】開閉構造の別実施例を示す正面図である。
図8】開閉構造の更に別の実施例を示す正面図である。
図9】開閉構造の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
図1は本発明に係る自動扉1の全体斜視図を示し、図2は自動扉1の正面図を示し、図3は自動扉1の平面図を示す。本実施例の自動扉1は、セキュリティゲートとして利用される。隔壁2で仕切られたセキュリティ領域Aの出入り口となる通路Tの左右両脇に筐体3が立設配備される。両筐体3にはそれぞれ扉4が装備されている。左右一対の扉4は、それぞれ横向きに出退移動可能である。なお、「横向き」、「横方向」とは、図2に示すような正面視において、扉4の左右方向である。扉4が、往復スライド移動することにより、通路Tが開閉される。
【0026】
図4図6に、扉4の開閉構造を示す。以下、これらの図を参照して開閉構造を詳細に説明する。なお、左右の扉の開閉構造は左右対称に構成されているので、一方(右方)の開閉構造についてのみ説明する。
【0027】
各筐体3の内部にはベース板5が立設されている。筐体3とベース板5は一体に連結されている。ベース板5の背面側における上下二箇所に2組の屈伸リンク機構6が装備されている。各屈伸リンク機構6は横方向に伸縮可能である。これら屈伸リンク機構6が扉4を支持している。両屈伸リンク機構6が同調して屈伸することによって、扉4を左右に平行移動させる。
【0028】
各屈伸リンク機構6は、基端アーム7と先端アーム8とから構成されている。基端アーム7は、前後向きの(すなわち、横向きと直交する水平な向き)基端支点a周りに揺動可能にベース板5に支持さている。基端支点aは、筐体3に対する基端アーム7の搖動中心である。先端アーム8は、基端アーム7の遊端部に、前後向きの屈折支点b周りに屈折揺動可能に支持されている。屈折支点bは、基端アーム7に対する先端アーム8の揺動中心である。各先端アーム8の先端には、連結支軸9が連結支点c周りに遊転自在に支持されている。各連結支軸9には扉4が連結固定されている。これにより、扉4は上下の屈伸リンク機構6によって片持ち支持される。扉4は通路Tの床から浮いた状態に保たれる。扉4を案内するためのレール等、扉4と摺動する部材は一切ない。屈伸リンク機構6のみによって扉4が支持され、浮いた状態で開閉作動する。このため、扉4の移動時における騒音を低減でき、通路Tを静かに開閉することができる。
【0029】
各屈伸リンク機構6における基端支点aには、ベース板5に挿通される回転支軸10が横向きに配備されている。回転支軸10は、ベース板5に回転自在に支持されている。この回転支軸10の一端に基端アーム7が一体連結されている。回転支軸10の他端には、受動ベベルギヤ11が固着されている。
【0030】
ベース板5の前面側には駆動軸12が縦向きに配備されている。この駆動軸12の上下には駆動ベベルギヤ13が固着されている。各駆動ベベルギヤ13は、上下の受動ベベルギヤ11にそれぞれ咬合されている。駆動軸12の下端部は、カップリング14を介して減速機付きの電動モータ15に連動連結されている。電動モータ15の正逆転駆動によって、駆動軸12は正・逆両方向に回転する。駆動軸12の回転に連動して、上下の回転支軸10が回転する。このように、駆動軸12と各回転支軸10は、駆動ベベルギヤ13と受動ベベルギヤ11とからなるベベルギヤ機構を介して連結されている。
【0031】
ここで、駆動軸12に連結される上下の駆動ベベルギヤ13は、互いに逆向きの姿勢で上下の受動ベベルギヤ11に咬合されている。これにより、駆動軸12が一方向に回転すると、上下の回転支軸10は互いに逆向きに回転し、上下の基端アーム7は互いに逆向きに揺動する。上下の基端アーム7の揺動角度は略等しい。
【0032】
ベース板5の背面側にはさらに、基端支点aと同心となるように固定ギヤ16が配置されている。固定ギヤ16はベース板5に固定されている。基端アーム7の遊端部には、屈折支点b周りに回動自在に屈折支軸17が挿通支承されている。この屈折支軸17の一端には先端アーム8が一体連結されており、他端には従動ギヤ18が固着されている。さらに、基端アーム7には中間ギヤ19が遊転自在に軸支されている。中間ギヤ19は、固定ギヤ16と従動ギヤ18との間に配置され、双方のギヤ16、18と咬み合う。すなわち、従動ギヤ18は、中間ギヤ19を介して固定ギヤ16と連動連結されている。従動ギヤ18のピッチ径は固定ギヤ16のピッチ径の2分の1に設定されている。
【0033】
基端アーム7における支点a−b間距離と、先端アーム8おける支点b−c間距離は、同一に設定されている。互いに連結される基端アーム7および先端アーム8は、鉛直線に対して対称姿勢となるように設定されている。
【0034】
ベース板5に対して基端アーム7が揺動すると、屈折支軸17およびこれに連結された先端アーム8が基端アーム7に対して揺動する。先端アーム8の揺動角度は、基端アーム7の揺動角度の2倍となり、先端アーム8の揺動方向は、基端アーム7の揺動方向と逆方向となる。先端アーム8の先端部に備えられた連結支軸9は直線横移動する。
【0035】
上下の屈伸リンク機構6の屈折姿勢(基端アーム7と先端アーム8との屈曲形状)は互いに逆向きに設定されている。本実施例では、上方の屈伸リンク機構6が谷折りに屈曲しており、下方の屈伸リンク機構6が山折りに屈曲している。
【0036】
このため、上下の基端アーム7が互いに逆向きに揺動すると、各連結支軸9がともに同じ方向に進退移動する。すなわち、駆動軸12が回転すると、上下の屈伸リンク機構6が同調して屈伸し、扉4が平行に横移動する。
【0037】
ところで、扉4の全重量は上下の屈伸リンク機構6に掛かる。各基端アーム7にはそれぞれ下向きに揺動させようとする力が作用し、各回転支軸10にはそれぞれ同じ向きに回転させるようとする力が作用する。各回転支軸10に作用する力は駆動軸12にも伝わるが、常に相殺される。例えば、一方の回転支軸10が駆動軸12に対して正方向に回転させようとする力を作用させるときには、必ず、他方の回転支軸10は駆動軸12に対して逆方向に回転させようとする力を作用させる。この結果、各回転支軸10を回転させようとする2つの力は、駆動軸12において常に打ち消し合い、見かけ上、駆動軸12には扉4の重みが作用することはない。
【0038】
よって、電動モータ15によって駆動軸12を回転させなければ、扉4の重みによって駆動軸12が回転することはないので、扉4を静止させた状態を安定的に保つことができる。また、扉4の移動を開始するときは、電動モータ15の起動負荷が小さくて済むので、扉4の開閉作動を円滑に開始できる。また、扉4の移動中においても、扉4の位置によって電動モータ15の負荷が変わらないので、スムーズな扉4の移動を実現できる。
【0039】
さらに、本実施例では、駆動部材として比較的に軽量な駆動軸12を採用しているので、駆動軸12の回転による慣性モーメントが小さい。よって、駆動軸12の回転・停止の切り替えを円滑に行うことができ、扉4の移動・停止を一層円滑に切り替えることができる。
【0040】
また、扉4の重量は各基端アーム7に掛かるのみならず、先端アーム8にも掛かる。すなわち、先端アーム8には、基端アーム7に対して下向きに揺動させようとする力が作用する。この力は、屈折支軸17、従動ギヤ18および中間ギヤ19を介して、固定ギヤ16に作用し、固定ギヤ16によって受け止められる。このように、扉4の重量の一部を筐体3と一体に構成される固定ギヤ16が支えているので、屈伸リンク機構6のみによっても扉4を好適に支持できる。
【0041】
上述した扉4の支持構造では、扉4を手動で軽く押し動かすことが可能である。ただし、電動モータ15が、減速機によって駆動相手側からの逆操作が不能であるので、扉4は電動モータ15が作動を停止した時点で固定され、手動では開閉することができないものとなる。
【0042】
また、屈折姿勢が相反する上下の屈伸リンク機構6が同調して屈伸駆動される際、各支点部での微細なあそびや部材の撓み変形、ギヤ咬合部でのバックラッシュ等によって、上下の連結支点cが僅かに上下に脈動的に変位されようとする。ここで、上下の連結支点cが鉛直線上に設置されていると、連結支点cに連結された扉4が連結支点cの互いに接近あるいは離間する変位を阻止する突っ張り部材として働き、連結支点cの上下変位が許容量を超える場合には、屈伸リンク機構6が作動不能なロック状態となって扉4の開閉が阻止されてしまう。
【0043】
そこで、本発明においては、図5に示すように、上下の屈伸リンク機構6における基端支点aを横方向に少しずらして設置することで、上下の連結支点cを小距離dだけ横方向にずらして位置させ、この横方向にずらされた上下の連結支点cの連結支軸9に、閉じ状態の両扉4が傾くことなくこと付き合わされるように連結固定されている。
【0044】
図5において、上下の連結支点cが互いに接近する方向に変位した際には、扉4が上下の連結支点cから反時計方向の偶力を受けて傾動する。逆に、上下の連結支点cが互いに離間する方向に変位した際には、扉4が上下の連結支点cから時計方向の偶力を受けて傾動する。いずれの場合も、扉4が傾動することによって、一定の芯間距離で扉4に連結された上下の連結支点cの上下変位を許容し、屈伸リンク機構6がロック状態に陥ることなく円滑に開閉作動することができる。
【0045】
次に、上記自動扉の利用形態の一例を説明する。
【0046】
セキュリティゲートとして利用されるこの例の自動扉1においては、筐体3の適所に照合装置21が備えられている。この照合装置21には周知の各種認証システムを利用することができる。例えば、磁気カード、ICカード、などのデータ記憶媒体を利用するものや、顔、網膜、諮問、などの画像データ、その他の測定データを照合用データとして利用するもの、等を適宜選択することができる。
【0047】
また、筐体3には、一対の光式の面センサ22が配備されている。各面センサ22は、扉4の表側(前面側)と裏側(背面側)に沿った通路T上の検知エリアにおける通行者または通行物の存否を検知する。
【0048】
面センサ22は、扉4の扉面(扉4を正面視したときに表れる前面または背面)と略平行な垂直面内にレーザ光またはLED光を照射スキャンして、その反射の有無によって扉4への通行者や障害物等の物体の接近を検知する。そして、扉4を開放したときに、両方の面センサ22によって通行者が検知エリアから外れたことを検知すると、扉4を自動的に閉じ作動させる。あるいは、照合装置21によって認知された特定の通行者が扉4に接近したことを一方の面センサ22で検知すると、扉4を自動的に開放作動させ、その通行者が検知エリアから外れたことを他方の面センサ22で検知すると、扉4を自動的に閉じ作動させる。
【0049】
なお、この例では、筐体3が低く構成されているので、筐体3の上に侵入防止用のガード柵23が立設されている。また、面センサ22を左右の筐体3の双方に配置し、各面センサ22の検知エリアを対向する筐体3の上方領域またはガード柵23の設置領域にまで及ぶよう設定している。これにより、筐体3およびガード柵23を乗り越えてセキュリティ領域Aへ侵入しようとする不審者を検知することができる。面センサ22が不審者を検知した場合には警報装置が作動するように構成されている。
【0050】
また、駆動軸12の回転量が、スリット付きディスク24とこれの外周部に対向させた光センサ25とからなるロータリエンコーダ26によって検出され、その検出データに基づいて扉4の位置や開閉作動速度、等が演算計測され、扉4が閉じ位置および開放位置に到達した際のモータ停止制御、あるいは、扉4が移動中に事故などによって停止したような場合の警報制御などが行われる。
【0051】
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0052】
(1)駆動軸12と電動モータ15とを連結するカップリング14を、手動操作によって連結解除状態に保持可能なクラッチ機能を備えた構造に構成すると、事故による給電停止や電動モータ15自体の故障、等によって電動モータ15が作動不能となったような非常時に、カップリング14のクラッチを切り操作することで、手動で扉4を開くことが可能となる。
【0053】
(2)屈伸リンク機構6を駆動操作する手段としては、上記のように駆動軸12およびベベルギヤ機構を利用する他に種々の構造を利用することが可能である。例えば、図7に示すように、上下の屈伸リンク機構6における各回転支軸10に操作アーム27をそれぞれ連結し、各操作アーム27を、上下の屈伸リンク機構6の間に配備した駆動アーム28の両端に連係リンク29を介して連動連結し、駆動アーム28の正逆揺動によって両回転支軸10を相反する方向に揺動させることもできる。この場合、単一の駆動部材としての駆動アーム28を作動させる駆動源としては電動モータ15のみならず電動シリンダを利用することもできる。
【0054】
この例においても、駆動アーム28と駆動源との間に動力伝達を断続する手段を装備しておくことで、非常時には伝動を遮断して駆動アーム28を自由状態にし、扉4を手動で開くことができる。
【0055】
(3)また、図8に示すように、上下の屈伸リンク機構6における各回転支軸10にウオームホイール30を連結固定するとともに、駆動部材としての駆動軸12に各ウオームホイール30にそれぞれ咬合するウオームギヤ31を設け、かつ、両ウオームギヤ31のピッチ角を逆に設定することで、駆動軸12の回転によって両回転支軸10を相反する方向に回動させることもできる。この場合、電動モータ15は減速機を備えないもの、あるいは、減速比の小さい減速付きのものにして、駆動軸12を高速回転させることで扉4を適度の速さで開閉作動させることができる。
【0056】
ウオームホイール30側からの回動操作が不能なこの例では、扉4を手動操作して開くことができないので、電動モータ15が作動不能となった非常時には、クラッチ機能付きのカップリング14をクラッチ切り状態に切換えて、別途準備しておいた非常時用操作ハンドルなどを用いて駆動軸12を手動で回転させることで扉4を開くようにしておくとよい。
【0057】
(4)筐体3自体を隔壁2に対して縦向き支点周りに旋回させる動力機構を別途に備えて、通常は筐体3を適宜ロック機構で正規の設置位置に固定しておき、扉4を駆動開放できなくなった非常時や、大型の機材などをセキュリティ領域Aに搬入出する際に、ロックを解除して筐体3ごと自動扉1を旋回移動させ、通路Tを大きく開放することが可能となる。
【0058】
(5)上記のように旋回可能な筐体3、あるいは、扉4を支持したベース板5を、別の電動モータなどで駆動旋回可能に構成し、扉4の上記横移動開閉と筐体3の旋回とを組み合わせて通路Tを大きく自動開閉することも可能である。
【0059】
(6)上下の連結支点cの上下変位に起因するロック状態の現出を回避する他の手段として、例えば、図9に示すように、下方の連結支点cで連結支軸9と扉4を固定し、上方の連結支点cでは、連結支軸9を扉4に形成した上下長孔32に挿通して、上下の連結支点cの芯間距離が変化するのを許容する構造とすることも考えられ、この場合は、上下の連結支点cを鉛直線上に設置することができるものとなる。ただし、この構造においては、扉4の重量が上下融通のない下方の連結支点cに集中し、上方の連結支点cは扉4の立ち姿勢を保持するだけのものとなってしまうので、少なくとも扉重量を支える側の屈伸リンク機構6およびその駆動構造の強度を大きくする必要があるとともに、上方の連結支点cでは製作誤差や上下の摺動変位に伴う摩耗、等によって扉4がガタつくことを防止する対策を講じておくことが望まれる。
【0060】
(7)屈伸リンク機構6の屈伸ストロークを大きいものにすれば、一方の扉4だけを備えた片開きの自動扉とすることもできる。
【0061】
(8)本発明に係る自動扉1は、不特定の通行者の接近を感知して自動で解放作動する単なる自動開閉扉として使用することもできる。
【符号の説明】
【0062】
1 … 自動扉
3 … 筐体
4 … 扉
5 … ベース板
6 … 屈伸リンク機構
7 … 基端アーム
8 … 先端アーム
9 … 連結支軸
10 … 回転支軸
11 … 受動ベベルギヤ(ベベルギヤ機構)
12 … 駆動軸(駆動部材)
13 … 駆動ベベルギヤ(ベベルギヤ機構)
16 … 固定ギヤ(屈伸連動機構)
17 … 屈折支軸
18 … 従動ギヤ(屈伸連動機構)
19 … 中間ギヤ(屈伸連動機構)
22 … 面センサ
28 … 駆動アーム(駆動部材)
a … 基端支点
b … 屈折支点
c … 連結支点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9