【実施例1】
【0015】
図1は本発明の実施例1に係る受信装置を説明するためのブロック図である。この受信装置は、受信系統A 11、受信系統B 12、ADC111,116、FFT部112,119、等化器113,121、雑音算出部114,120、合成部115、バンドストップフィルタ117、干渉波周波数検出器118、判定器122、消失部123、FEC部124で構成されている。
【0016】
まず、受信系統A 11について説明する。
受信系統A 11の受信アンテナ101にて受信された信号は、AGC部102に入力される。AGC部102は、入力された信号を非線形フィルタA105より入力された利得調整信号に基づいて受信信号レベルを所定のレベルになるよう利得を調整し、利得調整された受信信号を周波数変換器103と検波器104に入力する。検波器104は、入力された信号のレベルを検出し、検波結果を非線形フィルタA105に出力する。周波数変換器103は、IF帯へのダウンコンバートおよりチャンネル選択フィルタリングを行う。
【0017】
次に、受信系統B 12について説明する。
受信系統A 11の受信アンテナ101と同様に、受信系統B 12の受信アンテナ106から受信された信号はAGC部107に入力される。AGC部107は、入力された信号を非線形フィルタB110より入力された利得調整信号に基づいて受信信号を所定のレベルに調整し、周波数変換器108と検波器109に出力する。検波器109は、入力された信号のレベルを検出し、信号を非線形フィルタB110に出力する。
【0018】
受信系統Bでは断続的に混入する干渉波のレベルのみに利得調整を追従させるため、非線形フィルタB110から出力する利得調整信号は干渉波が混入している時の検波信号を用いることで干渉波混入時であっても、アナログ素子による相互変調歪が生じることはない。
受信アンテナ106は、干渉源の方向が判っていれば、感度指向性のヌル点を干渉源に向けるとよい。そのようにすると、希望波の信号源に対しては利得が最大ではなくなるが、希望波に対する干渉波のレベルの比が圧縮され、C/Nは改善する。
【0019】
周波数変換器103と10
9の構成は同じであり、同じ局部信号が共通に与えられうる。検波器104と108には、RMS(Root Mean Square)型或いは対数型の電力検出器で、応答時間が、OFDMの帯域幅の逆数より大きく、干渉波混入間隔(又は混入期間)より短く、OFDMシンボル長に比べ長すぎないもの、つまりOFDM信号自体のピークには敏感でないが、干渉波は直ちに検出でき、希望波の変動にも追従できるものが用いられる。例えば干渉波の混入間隔5 ms、希望波のフェージング周期を25 msとすると、応答時間(及び後述のADC301のサンプル周期)は0.5 ms程度が望ましい。
【0020】
次に、各受信系統の周波数変換器103、108以降の処理について説明する。
受信系統A 11では周波数変換をされた信号をADC111に入力し、デジタル信号に変換する。デジタル信号に変換された信号はFFT部112に出力される。なお、各受信系統の信号は、FFT部119に入力される時には同相及び直交成分からなる複素信号になっている必要があり、ADC111の前又は後でアナログ又はデジタル直交検波が行われるものとする。
FFT部112では入力された信号を周波数領域の信号に変換し、等化器113と雑音算出部114へ出力する。等化器113では入力された信号の振幅と位相を補正して合成部115に出力する。
【0021】
雑音算出部114では入力された信号に含まれる雑音振幅を算出し、合成部115に出力する。雑音算出方法は、例えば、既知信号であるパイロット信号を用いて雑音振幅を推定する方法がある。すなわち、伝送路は数シンボルでは時間的に大きく変動しないため、連続する2シンボルのパイロット信号を減算することで受信信号に含まれる雑音振幅を算出する。その他にも受信点と理想受信点との距離の平均を用いる方法などもある。雑音振幅は、例えばOFDMシンボルと同じ頻度で算出され出力されることが望ましい。
【0022】
受信系統B 12では周波数変換された信号をADC116に入力する。ADC116は、入力された信号をデジタル信号に変換し、バンドストップフィルタ117と干渉波周波数検出器118に出力する。バンドストップフィルタ117は、後述する干渉波周波数検出器118より入力された干渉波周波数位置を示す信号を基にADC116より入力された信号に対して干渉波の周波数を遮断するフィルタを適応する。過大な干渉波が混入した周波数を除去してからFFT部119に出力すると、FFTによるC/Nの劣化が低減されることが期待できる。
【0023】
干渉波周波数検出器118は、入力された信号を周波数スペクトル分析し、信号レベルが信号レベルの平均値を基に設定したしきい値を超えた周波数を、干渉波が混入した周波数として認識し、干渉波周波数と干渉波の振幅を示す信号をバンドストップフィルタ117と消失部123に出力する。この周波数スペクトル分析は、FFT処理の前に適切な窓関数を施したり、走査範囲を広げるためにより大きなポイント数を用いたりする点で、FFT部
112などとは異なる。つまり、干渉波周波数検出器118の出力は、それと時間的に対応するOFDMシンボルの判定結果が消失部123で処理されるタイミングに間に合えばよく、干渉波周波数検出器118の動作及び出力周期がOFDMシンボル周期と一致している必要はない。
【0024】
FFT部119は、入力された信号を周波数領域の信号に変換して雑音算出部120と等化器121へ出力する。雑音算出部120は雑音算出部114と同様に、入力された信号から雑音振幅を算出し、合成部115へ出力する。
【0025】
等化器121は、等化器113と同様に入力された信号の振幅と位相を補正して合成部115へ出力する。
合成部115は、各受信系統の雑音算出部114、120にて算出した雑音振幅に基づいて、二つの受信系統の信号を合成し、判定器122へ出力する。
合成方法として、雑音振幅の少ない受信系統の信号を選択する方法や、雑音振幅が小さいほど大きくなるような重みづけを各受信系統の信号に行って加算する方法などがある。合成は基本的にはOFDMシンボル単位で行われる。
【0026】
判定器122は、入力された信号を判定して判定結果に誤り訂正尤度を付随し、消失部123へ出力する。尤度は、入力信号と判定結果との差の大きさ(EVM:Error Vector Magnitude)等から算出される。
【0027】
消失部123は、干渉波周波数検出器118から入力された信号を基に、干渉を受けた周波数の誤り訂正尤度を干渉波の振幅に応じて変更し、FEC部124へ出力する。例えば、干渉波の振幅が大きい場合はその誤り訂正尤度を小さな値もしくは“0”(対数尤度であれば負の無限大)にすることで、干渉波により影響を受けた信号の誤り訂正尤度を下げる。
【0028】
FEC部124は、入力された信号にデインターリーブ処理を行い、判定結果に対して誤り訂正尤度に基づいた誤り訂正を行う。
以上の回路を用いることで、干渉波が混入している時と干渉波が混入していない時、共に最適にレベル調整された信号を用いて誤り訂正を行うことができ、伝送性能を向上させることができる
。
【0029】
図2は、実施例1の受信装置の非線形フィルタA105のブロック図である。
非線形フィルタA105では、入力された信号をADC201がデジタル信号に変換し、多段のシフトレジスタ202と減算器203、平均算出部204、セレクタ部206に出力する。シフトレジスタ部202では入力された信号を時間T
1ごとに順次、次のレジスタへ移動させ、各レジスタの値を平均算出部204へ出力する。
【0030】
平均算出部204では平均値を算出し、算出結果を減算器203へ出力する。減算器203ではADC201から入力された現在の検波信号と平均算出部204から入力された過去(シフトレジスタ部202で保持)の検波信号の平均値の減算を行い、しきい値比較器205へ出力する。この減算結果は現在の検波信号が過去に対してどの程度急激に変化したかを表している。
【0031】
しきい値比較器205では予め設定されたしきい値と入力された減算結果を比較し、しきい値を超えた場合には急激なレベル変動が生じているため、干渉波が混入したものと判断してセレクタ部206に対して出力するフラグを“Hi”にする。しきい値を超えない場合は干渉波が混入していないものと判断してフラグを“Lo”にする。セレクタ部206ではしきい値比較器より入力されたフラグに従い、ADC201から入力された現在の検波信号とシフトレジスタ部202から入力された過去の検波信号から一つの信号を選択して出力する。
【0032】
次に、セレクタ部206での選択基準について
図7eで説明する。
図7は、従来技術と実施例1の受信装置の利得制御を説明するタイミングチャートである。
フラグが“Lo”の時は現在の検波信号を出力し、フラグが“Hi”の時はフラグが“Hi”になる前の検波信号を選択して目標値比較器207へ出力する。
図7eに示す記号ABCは
図2のセレクタ206のシフトレジスタ202からの入力信号の記号を示す。
【0033】
これにより、干渉波が混入し検波信号が大きく変動した際、利得が干渉波レベルに追従しないような保護機能を持たせることができる。また、シフトレジスタ部202のレジスタ数により保存できる過去の検波信号数を可変することができ、保護できる期間を変えることができる。レジスタ数および時間T
1(ADC201のサンプルレート)により決まるこの保護期間は、干渉波の混入期間より長く設定することが望ましい。
【0034】
目標値比較器207では入力された値と予め設定された目標値を比較し、その結果を基に検波信号が目標値に近づくような利得調整信号を生成し、ループフィルタ208へ出力する。ループフィルタ208では入力された信号の低周波成分を抽出し、DAC(Digital to Analog Converter)部209へ出力する。
【0035】
このループフィルタ208は発振の抑制を目的とするため、ループフィルタ605と同様の時定数である。DAC209では入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換してAGC部102へ出力する。
このように、非線形フィルタA105は、妨害波がないときは最新の検波信号が、妨害があるときは妨害を受ける直前の検波信号をフィードバック信号とするものである。
【0036】
図3は、実施例1の受信装置の非線形フィルタBのブロック図である。
非線形フィルタB110では、入力された値をADC301へ入力する。ADC301は、入力された信号をデジタル信号に変換し、シフトレジスタ部302と最大値検索部303に出力する。シフトレジスタ部302は、入力された信号を時間T
2ごとに順次、次のレジスタへ移動させ、各レジスタに保存された値を最大値検索部303へ出力する。
【0037】
最大値検索部303は、入力された値の最大値を検索し、ループフィルタ304へ出力する。これにより入力された値の最大値を用意されたシフトレジスタ302のレジスタ数だけ保持する機能を有することができる。
【0038】
ここで、先に述べたように非線形フィルタB110では常に干渉波が混入していた時の検波信号を用いる。つまり、シフトレジスタ302のレジスタ内に干渉波混入時の検波信号が確実に存在している必要があり、時間T
2は干渉波混入期間より短くなければならず、シフトレジスタ302のレジスタ数はそれによる保持期間が干渉波の混入する間隔より長くなるように設定しなければならない。更に、干渉波のレベル変動に良く追従させるため、可能であれば、干渉波の混入する間隔の2倍未満であることが好ましい。代表的な干渉源であるレーダーのほとんどは周期的に動作し、その周期は良く知られているので、このようにレジスタ数を設定することは容易である。例えば干渉波の混入期間50 usとすると、時間T
2(ADC301のサンプルレート)は25 us程度とする。
【0039】
受信系統BのAGC107は常に干渉波のレベルに対して最適な利得に制御することができ、アナログ素子の非線形歪を生じにくくすることができる。ループフィルタ304では入力された信号の低周波成分を抽出してDAC305へ出力する。このループフィルタ304も発振を抑制することを目的とするため、ループフィルタ208、605と同様の時定数である。DAC305では入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換してAGC部107へ出力する。
【実施例3】
【0041】
図5は本発明の実施例3に係る受信装置の構成を説明するためのブロック図である。
アンテナ101にて受信された信号はAGC部102へ入力される。AGC部102からFFT部1
12までの構成及び動作は、以下に述べる点を除き、実施例1等とほぼ同様であり、説明を省略する。
本例の受信装置は、干渉波周波数検出器118に代えて、干渉波周波数検出器518を備える。干渉波周波数検出器518は、FFT部112にて周波数領域の信号に変換された信号から、OFDMシンボル周期で、干渉を受けたサブキャリアの有無およびそのサブキャリア周波数を検知して、消失部123に出力する。干渉波周波数検出器518は、サブキャリア毎に、当該OFDMシンボルにおける全サブキャリアの平均電力を基に設定したしきい値を超えるか、或いは、過去の1乃至複数のOFDMシンボルにおける当該サブキャリアの電力(平均電力)との比や差がしきい値を越えるかを検査し、いずれかが超えていれば干渉を受けていると判断する。強力なレーダーの干渉を受けた場合、サブキャリアが全滅していることもあるが、それを漏れなく検出することができなくても、本実施例は効果がある。
【0042】
消失部123では干渉波周波数検出器118から出力された信号を元に干渉波が混入した周波数及び時間の信号の誤り訂正尤度を、固定の小さな値もしくは“0”にしてFEC部124へ出力する。
FEC部124は、入力された信号にデインターリーブ処理を行い、判定結果に対して誤り訂正尤度に基づいた誤り訂正を行う。このデインタリーブ処理は、複数のOFDMシンボルに跨るような処理である(つまり、インタリーブ長は1OFDMシンボルからの復調ビット数より大きい)。多くのレーダーの発振期間は、OFDMシンボルより長く、通常、数シンボルに亘る。インタリーブが、干渉波混入期間より長い複数のOFDMシンボルに亘るようにすると、誤りが回復できる。
【0043】
以上の処理により受信系統が一つの場合でも、干渉波が混入し受信信号レベルが大きく変動した場合であっても、AGC部102の利得が干渉波レベルに追従することなく、干渉が混入していない期間の利得制御は最適値を維持することが可能となる。
また、干渉波が混入している期間については、誤り訂正尤度を低減させることにより、干渉波の影響を受けて劣化した信号を用いないことで効率的な誤り訂正処理が可能となり、符号誤り率を低減することができる。
【実施例4】
【0044】
図8は、実施例4に係る非線形フィルタ550のブロック図である。本例の非線形フィルタ550は、実施例1乃至3の非線形フィルタA105に代えて使用される。非線形フィルタA105と共通の構成は説明を省略する。
セレクタ501は、しきい値比較器205が干渉波有と判断し“Hi”を出力している間、シフトレジスタ202の1段目の出力、すなわち前回のサンプルタイミング時に自己が出力していた検波信号を選択し、“Lo”を出力している間、ADC201からの現在の検波信号を選択して出力する。これにより、シフトレジスタの1段目だけで、干渉波が混入していない時の検波信号を保持し続けることができる。
【0045】
しきい値比較器502は、ADC201からの現在の検波信号が、AGC部のゲインを最小にしたとしても周波数変換器103やADC111を飽和させ所要C/Nを満たせなくなるレベルを超えているか否かを判断し、それに応じた論理値(“Hi”と“Lo”)を出力する。
【0046】
AND器503は、しきい値比較器205からの論理値と、雑音有無を示す論理値が入力され、それらの論理積を出力する。雑音有無標識は、雑音算出部114等がOFDMシンボルタイミング毎に算出する雑音振幅、或いはそれから導かれるC/N値をしきい値処理することで得られる。算出される雑音振幅には1OFDMシンボル以上の遅延があるため、後述のセレクタの選択状態に応じて、しきい値も遅延させて切り替えた方が良い。雑音有無標識は、想定される干渉波混入周期内にしきい値を越えた雑音があった場合に“Hi”(真)が保持されることが望ましい。
【0047】
係数乗算器504は、ループフィルタ208の出力に所定の係数αを乗算して、セレクタ505に出力する。この係数は、しきい値比較器205が干渉波有と判断し且つ雑音有を示す論理値が入力された時に適用されることを意図しており、通常は1未満の正の数である。
【0048】
セレクタ505は、AND器503の出力が“Hi”の時に係数乗算器504からの入力を、“Lo”の時にループフィルタ208からの入力を選択し、セレクタ508に出力する
。
【0049】
D−FF(Flip Flop)506は、クロックとしてOFDMシンボルタイミング信号が入力される都度、しきい値比較器502からの信号を保持して、AND器507に出力する。
AND器507は、しきい値比較器502からの信号と、D−FF506で遅延された信号とを入力され、それらの論理積をセレクタ508に出力する。
セレクタ508は、AND器507からの信号が“Hi”であれば0(とり得る最小値)を、“Lo”であればセレクタ505からの信号を選択し、DAC20
9に出力する。
【0050】
このような構成にすると、しきい値比較器502の出力が“Hi”となったまま最初のOFDMシンボル境界に達したときにAGCのゲインが最小値に切り替わり、しきい値比較器502の出力が“Lo”に変わるとすぐさまループフィルタ208からの信号に戻る。
【0051】
以上説明した実施例により、本発明の受信装置は、干渉波が混入した時には、受信機は
図7bのような受信信号のレベル変動を受けることになる。希望波は伝搬路の変化に伴い変化を受けるが、その変化は干渉波の混入間隔に比べ緩やかな変動である。そこで独立の利得調整機能を有する複数の受信系統を用いて、
図7dに示すように、受信系統Aの利得を希望波の変動のみに追従させ、受信系統Bの利得を干渉波のレベルのみに追従させる。つまり、受信系統A11は干渉波が混入した場合であっても、干渉波レベルに利得を追従させないことにより干渉波が混入しなくなった際にも最適な利得を維持する。逆に受信系統B 12は干渉波のレベルに追従するような制御を行うことで干渉波が混入している期間であってもアナログ素子の非線形歪が生じることがないような制御を行う。そして、各受信系統の利得調整された信号に対して復調処理を行い、干渉波が混入している期間と混入していない期間で受信系統を切替える。又は、各系統の信号を重み付け合成することで、瞬時において最適な利得で調整された信号を用いて誤り訂正を行うことができる。
【0052】
さらに、上述の実施例により、本発明の受信装置は干渉波が混入する時と干渉波が混入しない時のどちらにも最適な利得で調整された受信信号を用いて誤り訂正を行うことができる。